地下に潜む触手

それは、父である俺と小学生の娘の真奈、二人で買い物に行ったときに起こった。河川敷を歩いていたときに、真奈が何か見つけたのか、土手にあいていた排水口らしき大きなトンネルの方に走って行ってしまったのだ。この前まで、こんなトンネルなどなかったはずなのだが。

「真奈!危ないから中に入ったらダメだぞ!」という俺の制止も聞かず、真奈は暗く大きいそのトンネルの中に入っていってしまった。俺は仕方なく後に続いて、暗闇の中に入った。

「く、くらいなぁ……」中には、電灯の一個すらも付いていない。入ったすぐ先が曲がっているせいで、太陽光すらもあまり届かない。と、だんだん目が慣れてきて、内部が見えるようになる。だが、そこにあったのはただの排水用トンネルではなかった。

俺がいるところから少し先に進んだところで、トンネルは終わっていた。そこから先はとてつもなく広い空間だ。その中で、一カ所だけ淡い光が灯っているところがあって、そこに真奈がぼーっと立っていた。俺とは逆の方向、空間の奥を食い入るように見つめている。こんなところ、早く出たい。さっさと真奈を連れだそう。

「真奈、さあ、出るぞ」と声をかけながら近づいていくが、真奈はやはり空間の奥を見つめている。なにかあるのだろうか?俺よりも視力が良い真奈には、なにか見えているのだろうか。段々不安になってきて、真奈まであと少しというところで、一回足を止めて、真奈の視線の先を見ようとした。

俺はその時になって初めて、空間に微かに聞こえるジュルジュルという粘りけのある何かがうごめく音に気づいたのだった。そして、逃げるにはもう遅すぎた。空間の奥から急に飛び出してきた四本の赤い触手が、真奈の体に絡みついたのだ。一本は胸、もう一本は腰、あとの二本は足に一本ずつ。次の瞬間、真奈は空中に持ち上げられ、一回見えなくなった。

「きゃああああっ!!」という真奈の悲鳴と同時に、ないと思っていた空間の照明が徐々に点灯し始めた。真奈を持ち上げた触手の持ち主は、今まで見た中で一番大きな動物だった象の、数十倍の大きさの赤い塊だった。その表面には無数の血管が走り、ドクンドクンと脈打っている。

さらに照明が明るくなると、その生物の表面にびっしりとニキビのようなブツブツした物が付いているのが分かった。それが何だか俺には分からなかったし、今は真奈の安全の方が重要だった。真奈は、高さ二メートルのあたりで、触手に下半身を固定され、必死で逃げようと、ジタバタ暴れている。

「真奈を放せ!この怪物が!」俺は、真奈の真下に走り、ジャンプすれば届く位置にある、真奈の足をつかんでいた触手に手を伸ばし、引きはがそうとした。だが、急に視界がフッと動き、体がグワッと動かされた。

「な、なにが……」と下を見ると、真奈を捕まえているのと同じような触手が、真奈と同じく、胸と腰と足をつかんでいた。そして、俺の体は宙に浮き、真奈の目の前に、同じ高さで固定されている。

「放せ!放せっ!!」俺は死にものぐるいで拘束から逃れようとしたが、俺の足と同じくらいの太さの触手はびくともしない。触手は赤黒く、怪物の本体と同じように表面に血管が浮き立ち、脈動していた。さらにぬめぬめとした粘液に覆われている。

「って、この粘液、俺の服を溶かして……」粘液は、触れた繊維を溶解させている。真奈の方を見ると、トンネルに入る前には全身を覆っていた服が、今や重要な部分しか隠していない。ただ、粘液が皮膚に触れても溶けるどころか痛みすら感じない。

「どういうことだ……」と、俺が頭を抱えていると、額にぴとっと触れる物があった。紛れもない触手だが、その瞬間、頭の中に声が聞こえてきた。『フフッ……我がトラップにまんまとひっかかったな、人間よ……』声は、ファンタジー映画で出てきそうな黒魔術師の、悪意に満ちた低い物にそっくりだった。

「……っ!」俺の声が、出ない。口は動くが声帯が従ってくれない。

『声は奪わせてもらった。男がわあわあ喚くのは、みっともなくて見ておれん。何か言いたければ、ただ考えれば、我が耳に届こう』怪物が、俺の考えを読んできた。相手は、人間には到底敵わない、いわば天敵だった。

『天敵。そう、天敵だ。我は人間を食らって生きる。お前たちは、これまで食われてきた多くの人間の仲間入りをする、単なるエサに過ぎん』怪物は触手を動かし、俺と真奈を怪物本体のイボイボに近づけた。すると、遠くからは見えなかった中身が、少しだけ見えた。人間だ。人間の顔が、中にある。俺たちも、こいつのようになるのか。

『そうだ。だが、その前にお前たちの体を作り替えなければならぬ。まずは娘の方からだ。父親のお前には、特等席で見物させてやろう』

真奈に、何をするつもりなのだ!?体を作り替えるだって?なぜそんなことを……

『我は、すべての生物と同じく子孫を残すために生きている。種族を残すために。しかし、不便なことに他の生物の卵子なければ、子供を作ることかなわぬ。それに、子宮も。そのために、体を変形させやすい人間を巣におびきよせ、我が子を身ごもるのに適した形に変えるのだ』

ということは、真奈の子宮や、卵子を使うというわけか!?まだ子供がどうやってできるかもしらない、小さな子の!?

『言っただろう。形を変えると』

怪物からの言葉と同時に、「うあっ……あっ!!」と真奈がうめいた。いつの間にか、もう一本の触手が近づき、真奈の二の腕に触れている。よくみると、その先端には細い針のような物があり、皮膚に突き刺さっている。そして、針が伸びている触手がグニッと膨らんだ。中に何かが詰め込まれているようだ。ま、待て、何かを真奈に注入するつもりなのか!

『ご名答』

「きゃあああっ!!」真奈が金切り声を上げた。触手の方は、今度は縮み始め、怪物の液体が真奈の中に入っていく。液体が、真奈に相当な痛みをあたえている。そして針が刺さっている腕の血管が、緑に光り、その光は全身へと広がっていく。俺は、取り返しの付かないことが起こったことを痛感した。触手は縮み終わると針を抜き、怪物の方へと引っ込んでいった。一方の真奈は緑に光る体を抑えながら、歯を食いしばって悶えている。光は段々と弱まっていったが、その様子は消えるというより、真奈の体になじんでいっていると言った方が正しいように思えた。

「はぅっ……ひぅっ……」

光が完全に消えたと思いきや、まだほのかに光っている真奈の体が、ビクンビクンと痙攣している。それは、心臓の動きに同調しているようにも見える。

『あの液体には、我のマクロファージ、大食細胞が大量に含まれているのだ。この娘の血管の中を通って、全身に送り込まれた。すぐに次の段階に移行するだろう』

「うっ……うぐぅっ……おむねに何かが……」真奈が、露出していた乳首を手で押さえた。すると、手のひらの下で平らだった胸に、プルンッと二つの盛り上がりが生まれた。「あついよぉ……っ」その盛り上がりは、プクッ、プクッと、真奈の手を押しのけながら大きくなる。どうみても女性の乳房だ。あっという間に頭と同じくらいの大きさになったが、まだ成長をやめない。

『人間の雌の授乳器というのは、変形させやすくて助かる。多大な栄養素を送り込むのに、うってつけの種族だ』

また、怪物の方から二本の触手が伸び、膨らむ胸を押しとどめようとする真奈の手を引きはがした。解放された乳房はへそを隠すくらい大きくなり、もはや漫画でも大きすぎると思うほどのサイズになっていた。たぷんたぷんと揺れるそれは、小学生の体とはかなり不釣り合いだった。腕を引き離した触手はそのまま、電光石火の動きで乳首に吸い付いた。「ひゃんっ!」という幼い喘ぎは、俺の股間に効いた。実の娘なのだが、どうしてもエロい。

「ひゃううっ!!」触手は乳房にたまった物を吸い出すと思った。しかしそれは間違っていた。もう巨大どころではない胸が、さらに膨らんだのだ。真奈は首をのけぞらせて痛みに耐えている。おっぱいは、フルフルと揺れながら、やがて体と同じくらいの大きさになっていく。

いつまでも膨張が続くように見えたが、いきなり触手が外され、触手から注入されていたのであろう液体が乳首からピュッと飛び出して、その『段階』は終わり、すぐに次が始まった。

グ、グググッ……

乳房が、音を立てて縮み始めた。まるで、真奈の体に押し込まれていくかのように、ブルブルと震えながらしぼんでいくのだ。すると同時に、おなかの部分が膨らみ始める。「んん~っ……!」真奈は、腹部が張る感覚でも感じているのか、手をおなかに回して膨らみを止めようとする。すると、胸がしぼむスピードが下がり、おなかの膨らみは緩やかになる。

「はぁ……」真奈は安堵のため息をついたが、それもつかの間、頭と同じくらいの大きさに戻っていた胸は、一気に真奈の体に飛び込んでいき、真っ平らになった。と同時に、臨月の妊婦程度のおなかが、二倍程度に急に膨れあがった。「かはっ……!」衝撃が強かったらしく、真奈は口を大きく開け、舌を出して、声にならない叫びを上げた。