思い出(健全版)

「お前、この頃彼女できたんだってな」
「え?誰から聞いたんだよそんな話!」

昼休み、ボーっとしているといきなり話しかけられた。こいつは、俺の腐れ縁の幼なじみ、軽葉 裕翔(かるは ゆうと)だ。頭はそんなでもないが、運動ができて、整った顔で、クラスの女子にもそれなりに人気があるらしい。実際、誰かと付き合ってるという話は聞いたことはなかったが。

「誰でもいいだろ?で、どんな子なんだ、カズ?」

そして僕は東條 一都(とうじょう かずと)。裕翔と違って、成績は上の中くらい、一流大学とまでは行かないが、上位の大学を志望している。ただ運動がからっきしダメで、女子の友達がいないわけではないが、恋仲とは無縁だ。そんな僕に、先週突然話しかけてきた女の子がいたんだ。そこから、話をしていこう。

ある日、いつもの帰り道。電車通学の僕は、高校から駅まで20分くらい歩いて帰る。裕翔の方は自転車だけど、部活がない時は駅までは一緒に歩いてだべりながら帰っていく。でも、その日は違った。

「俺、用事があるからさ!ちょっと今日は急ぐわ」
「あ、そうなんだ。じゃあね!」
「ああ!また明日な!」

裕翔は、猛スピードで走って行ってしまい、あっと言う間に視界からいなくなった。前を走っていた乗用車すら追い抜かしていった。

(どんだけ急いでんだ……)

僕は、トボトボと歩き出した。裕翔以外には、友達の付き合いはあまりいいとはいえない僕は、佑都がいない時はほとんどいつも一人だ。寒さが増してきた冬の空を眺めながら、大通りから一本外れた、閑静な住宅街を歩いて行く。帰ってからの勉強のことを考えながら、あまり周りに集中しないでいた僕に、声がかかった。

「あのー……」
「えっ!?」
「ひゃっ!?」

驚いて大声を上げたせいで、その声の主まで驚いてしまったようだった。振り向くと僕と同世代の女の子が、後ろにいた。黒のセミロングに、蝶結びのリボンを一対飾り付けて、制服を着ているけども高校では見たことのない清楚な顔つきをした、可愛い子。その子が、突然僕に話しかけてきたのだ。

「あ、すみません……」
「いえ……」

気を取り直して謝罪をする。しかし、なぜこの子は僕に話しかけてきてるんだろう。

「え、と。それで、何かごようですか?」
「あ、あの、このハンカチ、あなたのですよね?」

見ると、その子の手には確かに僕のハンカチが握られている。いつか無くして、タダのハンカチだからと探すのを諦めていたハンカチだ。

「あ、そうです。でも、どうしてあなたが……」
「羽癒 はるか(うゆ はるか)です。東條くんが学校で落としたのを拾って、それで今まで渡す機会がなくって、ごめんなさい」
「は、はぁ」

ハンカチを渡された。綺麗に洗濯までしてある。でも、今この子……羽癒さん、僕の名前を呼んだ?ハンカチを眺めていると、奥に今まで気づかなかったけど、とんでもなく大きな……胸の膨らみが見えた。

「あ、あ!ごめんなさい、変な所を眺めてしまって!」

こういう時は自分が意図していなかったにしても眺めていたように見えてしまうものだ。そう思って、とっさに誤った。しかし、羽癒さんは、少しだけ恥ずかしがったけど、少し口元が緩んだ。え?

「大丈夫です……私、昔から東條くんのこと、気になってたんです……」
「えっ!?そうなんですか……!?僕なんかを!……ってどうして僕の名前を?」
「好きな人の名前くらい、分かるものなんですよ?学校ってそんなに広くありませんし、ね?」

すこし首を傾けてニコリと微笑むその顔に、胸が貫かれたような感覚が走った。サラサラとした髪から、光の粒が出ているようにすら感じた。これまで感じたことのないこの感覚は……

「今日は、それだけ言えれば……」
「ま、待ってください」

この機会を逃す訳にはいかない。初めての一目惚れの人を、そのまま帰すなんて。

「なん、ですか?」
「お、お礼がしたいので……そ、その……喫茶店にでも行きませんか?」

漫画雑誌を買ったせいで軽くなっていた財布が泣いているような気がしたが、いつものカフェでカフェラテの二人分くらい頼めるだろう。無理を承知で、誘ったのだった。

「いい、ですね!行きましょ!」
「良かった!……」
「あは、こんな笑顔を見せる東條くんなんて初めて見たかも」
「あはは、それはもう……」
「じゃあ、駅前のいつも……東條くんが行っている所に連れてってくれますか?」

少しだけの違和感。少しだけど、羽癒さんの言葉が途切れた。まあ、さっきから感じていることだし、女の子ってそういうものなのかもしれない。

「分かりました、ドタールですけど……」
「構いませんよ。私も、好きですから、ドタール」

駅に着くまでの10分間ほど、ずっとしゃべり続けた。背丈が一緒くらいなので、お互いの表情も歩きながらでもすぐに分かったし、それに、話題も合うし、ぎこちない丁寧語だったのが、カフェに着く頃には普通に喋れるようになっていた。

「羽癒は僕のこと結構知ってるんだね、裕翔でも気づかないことまで」
「それはもう……!……裕翔くんって、ちょっと鈍感なところもあるし」

意外だった。僕のことならともかく、幼馴染のことまで知っているらしい。どこまで観察力が鋭いんだろうと思いつつ、冗談を言ってみた。

「へぇ、裕翔のことまで詳しいんだ。もしかして、本命はそっちだったりするの?」

ちょっと怒るくらいの反応は予測していた。しかし、それ以上だった。羽癒の顔がこれ以上ないほどに歪んだのだ。怒りではなく、吐き気とか、嫌悪の歪みだ。

「ちょ、ちょっと冗談が過ぎたかな……」

とても話しづらい。それに、その言葉に帰ってきたのは、一瞬前までの優しい表情から想像もつかないくらいの鋭い睨みだった。でもそれはすぐに収まって、少し咳払いをしてやっと落ち着いた。

「コホ……ううん、ちょっと、あの人を好きになるのは、無理かなって思っただけだよ」
「そうか、裕翔もかわいそうなやつだな……」
「あのね、やっぱり喫茶店はいいや。また今度会ったら、その時なにかおごってね!じゃあ!」
「え、えっ!?」

彼女は突然走り去った。それが、僕と彼女の奇妙な出会いだった。

その後も、何回か僕たちは出会った。帰り道、休日の散歩、電車の中。そして歩いたり、カラオケに行ったり、映画を見に行ったり、海を見に行ったり、はたまた一緒に勉強したり。彼女と話すときも、他の女子とは違う気のおけない友人のような会話をした。それで、今に至る。

「ふーん?いい子じゃん、その子」
「うん、すごく魅力的で、もう運命の人としか言いようが……」
「……!お前と運命の人になるとかどんな物好きだよ、ま、俺のこと毛嫌いしてるみたいだからなんとも言えないが」

何か裕翔の表情がうかない感じだ。なにか心配事もありそうな顔をしている。

「……。あ、今度その子と会う約束してるんだ」
「……けっ、二人で楽しんでこいよ!」
「ねえ、なにか悩みごとがあるんじゃないか?」
「……ね、ねえよ!少なくともお前みたいなモヤシには何もできねえって!」
「……はいはい」
「別に怒らせる意味で言ったわけじゃないぞ!?」

少し冷たい反応を見せたら、顔を真っ赤にして急に大声を出してきた。何かがおかしい。けどまあ、気のせいかな。裕翔はテンションがおかしい日もあるし。

「分かってるよ。とりあえず今日の宿題やってきた?」
「ぐ、そんなこと聞くのかよ……!やってきてるに決まってるだろ」

このごろ成績が上がってきている裕翔。昔は宿題もおぼつかなかったのに、テストで平均以上を取ることも少なくなくなってきている。どうしたものだろう。だけど、幼なじみの成績が上がることは、嬉しい限りだ。

同じ日、公園での待ち合わせ場所に、彼女はいた。

「おまたせ!」
「待ってないよ、今来たばかりだもの」

いつも通り……じゃない。

「じゃあ、今日はどうしようか」
「あ、今日はその……」

笑顔が消え去り、羽癒の表情が暗い。悪い予感が全身を駆け巡る。

「なに?」
「ごめんなさい、お父さんが転勤で、海外に行かなくちゃならないの!それで!今日は、お別れを!!」

ほとんどヤケのように彼女の口から放たれた言葉が、僕の頭に重く降りかかってきた。

「え、ちょ……」
「さよなら!!」

公園から出て行く彼女の背中を見ることしかできない。その視界すらも、ぼやけていく。

「そ、そんな……」

その場にへたり込んで、少しの間立つことすらできなかった。

冬が終わり、春がきた。最初は授業すら耳に入ってこなかったのが、裕翔のお陰で何とか立ち直ることができた。しかし、羽癒のことは、忘れることはできなかった。

「お、おい、テストの紙回せよ!」
「あ、うん……」
「まさかお前、まだあの子のこと忘れられないのかよ。もう3ヶ月前のことなのに」
「そうだな、もう、忘れなくちゃね」
「とりあえずさっさと回せ」

立ち直ったとはいえ、日常生活が行えるくらいになったまでで、注意力は散漫になってしまい、成績も落ち込んできていた。逆に裕翔は、クラスのトップに踊り出るほどの学力になった。それでも、というより、それもあってか、裕翔は僕のことをかなり心配しているようだった。

「なあ、そろそろけじめを付けろよ!大学いけなくなるぞ!?」
「そうだよね……」
「あのなぁ、俺まで情けなくなってくるんだよ、だからしっかりしてくれよ」
「うん……」

どうしても忘れられない。あの子を、あの子と過ごした夢の様な時間を。

「あの子に、そんなに会いたいか」
「うん……」

裕翔が困り果てている。本当に、申し訳ないけど……

「……じゃあ、会わせて……やるよ……」
「……」

一瞬、理解できなかった。裕翔の言葉の意味が、全く分からなかった。

「……え!?」
「放課後、誰もいなくなるまで教室にいろ、そしたら会わせてやる」

裕翔が耳元でささやいてきても、意味を咀嚼できない。何で彼女に会ったことのない裕翔が、僕に彼女を会わせることができるのか。

「ちょっと待って……それってどういう」
「それでキッパリ忘れろ!分かったな!」
「う……うん……」

放課後。頭の中が混乱したままだった。それと同時に、羽癒 はるかに会えるという興奮で、心臓が強く脈拍を打ちっぱなしだ。裕翔と羽癒の関係が分からない。なんで海外に行ったはずの羽癒に今日突然会えるのかがわからない。もしかして、最初から二人は親類同士で、だから付き合うこともできないし……それに海外に行くといったのは嘘で、親に僕との付き合いを止められただけかもしれない……

色々な考えが頭を渦巻く。いつの間にか、教室には僕一人だけが取り残されていた。そして。

《ガラ……》

教室の扉が開いた。そこには、羽癒が……いなかった。いるのは、僕の幼なじみ。他でもない裕翔だ。裕翔は教壇の上までゆっくり歩き、立ち止まった。

「裕翔、どうして……」
「カズ、すまない……」

なにがすまないのか。結局、彼女とは会えないのか。その謝罪に、来たのか?

「どういう、ことなんだよ……どういうことなんだよ!!?」

教壇まで駆け上がり、裕翔に掴みかかった。僕はその行為が正しいものではないことは、重々承知していた。でも、許せない。僕を騙していた裕翔を許せなかった。だけど、僕は一瞬で突き飛ばされ、最前列の机に体を強く打って動けなくなってしまった。

「結局、僕は羽癒には会えないんだ」
「おい、話は最後まで聞けよ……今彼女は、ここにいる」

僕は体を動かせないまま、周りを見渡した。誰かの姿が見えるどころか、物音一つしない。

「どこにいるんだよ」
「ここだ」

裕翔は、自分の胸に手を当てた。まさか……いやそんなまさか!

「俺が、羽癒 はるかだ」
「嘘だ……嘘だそんなこと!」
「嘘じゃない!その証明を、今からしてやる」

裕翔が、羽癒!?性別も、体格も、それに性格も違……う……?いや、違わない……雰囲気は違ったけど、思考回路は少しも違わなかった……!

「そ、そんな……僕は、僕は信じないぞ……」
「すまない……最初はこんなことになるとは思ってなかったんだ……だが、お前がこんな状態になった以上、つらくても受け止めてくれ」

裕翔は、学ランをバッと脱ぎ捨て、Yシャツも脱ぎ捨てて、下着のシャツだけになった。そして、ズボンのポケットから取り出したカプセルを一つ、水なしでグイッと飲んだ。

「さぁ、見てろよ。その目でしっかりと……うぅっ!!」

腕で体を抱えた裕翔の体の全身から、ゴキゴキと何かが組変わっていく音が聞こえてきた。これは、ハッタリではないということを、物語るような強烈な音が。

「うぐっ!!……ああっ!!!」

全体が短くなり、身長がガクンっと下がった。それに、手足の筋肉もゴリッと音を立てて細くなり、腹からも胸からも同じように筋肉が消えていく。

「ひさし……ぶりだから……うあっ……!!」

髪がバサッと伸び、まさに羽癒のそれになる。

「体……うっ……!あつ……っ!!あぅっ!!」

胸からボンッ!と何かが飛び出してきた。乳房。そうとしか表現できないそれは、再度爆発的に膨張して、シャツを破らん限りに引っ張りあげた。今気づいたが、声もピッチが上がっている。

「ひゃぅっ!!」

シャツがせり上がったせいで見えたウエストがゴキッとくびれた。

「んああああっ!!」

最後に、それまででも巨大だった胸とお尻が自分を包む布を突き破り、ボンッと一回り大きくなって、収まった。

そして、そこには、羽癒 はるか、その人がいた。これまで見たことのないほどの色っぽさを身にまとった彼女が。いや、単に僕が気が付かなかっただけかもしれないけれども。

「ど、どうだ……これで、わかったか」

男口調で話すその人は、羽癒であると同時に、軽葉 裕翔でもあった。否定しようのない事実が、僕の頭につきつけられた。

「どうして、こんなこと……」

それが、僕の最大の疑問点だった。どうして、裕翔は女性化して、僕に話しかけようとしたのか。それに、デートまでした。その時の彼女は、本当に幸せそうだったじゃないか。

「何年も一緒にいて、それで……」
「いや、違う。俺が小さい時に、お前が川から救い出してくれた時があったんだ。お前は覚えてないみたいだが。それがきっかけで、俺はお前のようになろうとしたんだ。強くて、勇敢で。でもいつの間にか、憧れが恋情に変わってたわけだ」
「だからって……」
「女になってまで近寄ろうとしないって?……まあ、そうかもな。でもそうしたってことは、俺の気持ちは思ったより強くって……その……」
「えっ……」

裕翔の表情が変わり始めた。観念したようなものが、段々赤らみを帯びて、何か……願うような顔に。

「だから、カズくんと付き合いたくって……でも私が裕翔だってバレるのが怖かった……でも結婚することになったらどうしようと思って……思い切ってフッちゃったの。そしたらカズくんはどんどん変になっちゃったから……」
「……」

俯いて泣きながら喋る裕翔は、完全に少女だ。もしかしたら、薬の効果かもしれない。もしかしたら、裕翔の元々の性格なのかもしれない。

「こうしないと、私が私じゃなくなっちゃう気がしてね、それで今日バラしちゃったの。気持ち悪いよね、ごめんね……」
「僕は……」
「……」

次に言う一言が、僕の人生、裕翔の人生を左右するものだと理解し、深呼吸した。そして、思い切って、言った。

「裕翔の旦那さんになっても……いいよ」
「えっ……?」

僕は、僕の推測に頼って、言葉を紡ぐしか無かった。

「頑張って、自分じゃない何かを演じる必要なんて無いんだ。僕が好きなら、それでいいと思う。その体がいいなら、その体でいいよ」
「カズくん……。うんっ……!」

裕翔、いやはるかの顔に浮かぶ笑顔を見て、それが正しかったことが分かった。

その後は、裕翔は学校では男、それ以外はもう一人の少女、羽癒 はるかとして暮らし始めた。

「カズくん、今日はどこに遊びに行こっか……おっとしまった」
「まだ男の姿だよ、この頃増えてきたね」

裕翔は照れ笑いして、僕も微笑み返した。

「これからも、よろしくな」
「よろしくね」

桃色の部屋(若返る女・成長する少女8より)

『ワタモテ(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い)』のパロディです。
主人公、黒木智子の妄想で自身が美女になってるシーンがあったりする(同じ声優さんで、実際の智子は低音、妄想の方は高音で演じられてます)のですが、それをもうちょっとゆっくり変身させてみようかなと。では、どうぞ。(途中から視点変更します)


 

ここは、照明のついていない薄暗い部屋。唯一の光源になっている液晶ディスプレイの前に、その少女は座っていた。顔立ちはそれなりに綺麗だが、手入れのされていない黒いボサボサの髪、海の淵のように黒いクマ、腐った魚のような緑の目、女子高生とは思えない格好。それこそが、黒木智子だった。

この少女、容姿をあまり気にしないどころか、性格がねじ曲がっていて、心のなかでは過激な考えを持っているのに、それを外には出さずに、自分の中で悪い方向に膨らませてしまう癖があった。それゆえに他人と素直に会話することが難しく、恋人はおろか、友人まであまりいないという有り様だった。そんな彼女でも、頑張り屋ではあるので、それを認めて、見守ってくれている人は、少なからずいるのだが。

それはさておき、今日も彼女は、暗い部屋でネットサーフィンを楽しんでいるのであった。

「(この子、萌えるわ~めっちゃ可愛いわ~)」

アニメキャラのポスターを見ている彼女は、「大きいお友達」と呼ばれるような部類の人と、考え方が全く変わらない。ゲスな笑みを浮かべ、よだれを垂らしそうになっている彼女は、これでも女子高生なのかと疑いたくなる様子だ。

「(あ、そろそろアニメが配信される時間だ…)」

スタートメニューの時計を見て、智子はアドレスバーに配信サイトのアドレスを入力しようとする。だが、それを邪魔するようにウィンドウがパッと開いた。

「(ん、ポップアップブロックはしてあるはずなのに…うぜえなあ)」

ウィンドウに書いてあることを読まずに、×ボタンを押す智子。しかしすぐに別のウィンドウが開く。

「(なんなんだよ、うっとおしい…ん?「綺麗にしてやる」?余計なお世話だ!)」

今度はウィンドウに書いてあったことを読んだが、挑発的な文章に、再度×ボタンを押す智子。今度はウィンドウが無数に開き始めた。全てのウィンドウに『無視するな』と書かれている。

「(私としたことが、ブラクラ踏んだか…ふん、こんなの、初心者しかひっかからないっての)」

スタートメニューにマウスカーソルを動かし、ブラウザの全てのウィンドウを閉じようとする智子。

「(あーもう、手間かけさせやがって…ん?)」

フリーズしている。

「(私に対して喧嘩売ってんのか?こうなったら、タスクマネージャーで…)」

智子はショートカットキーでマネージャーを開こうとした。すると、スピーカーから、ガラスや黒板を引っ掻くような、皿を擦るような、とにかく吐き気がするような音がなり始めた。

「な、なんだよっ!」

智子は思わず耳をふさぐ。しかし、次なる苦痛が智子を襲い始めた。

「んんっ!体が、あ、熱いぃっ!」

智子はもがき苦しみ始め、椅子から床にドサッと崩れ落ちた。

「ぎゃああああっ!」

床でじたばたする智子の手足が、なんと伸び始めた。伸びた足は椅子を蹴飛ばし、手は遠かったベッドに当たる。

「か、顔が、燃える、焼けただれるっ!」

智子は顔に熱を感じてそういったが、それは逆に綺麗になっていく。クマは消え去り、瞳は輝きを取り戻し、全体的に大人びていく。ボサボサの髪も、見えない何かにセットされているかのように真っ直ぐ、サラサラなそれに変化する。

「あ゛ぁっ!…ゲホッ!ケホッ!…きゃぁぁっ!」

そのダミ声までもが、変化の対象になり、一オクターブ上がった、華麗な声になる。そして、最後に殆ど無かった胸が唯一の友達である成瀬 優ほどの大きさに、左乳房から順にボンッボンッと大きくなって、痛みが引いていった。

「な、なにが…」

智子は部屋の暗さのせいで何が起こったか分からなかった。

《バーンッ!》

「うっせーんだよ!」

勢い良く扉が開き、智子の弟である智貴が怒声を上げて飛び込んできた。

「ったく、人が寝てる時間に大声で…あれ?」

智貴の前には、いつもの姉とは違う、色気ムンムンの美女が床にへたり込んでいた。

「(え?誰だこの人?姉ちゃんの部屋にいるんだから…いやいや、でもこんなに綺麗なわけが…
でも、この緑の目は…)」
「智貴?」
「えっ!?」

その美女は、申し訳無さそうな顔をして、そのきれいな声で智貴を呼んできた。

「(俺の名前、呼んだよな、こいつ?でもいつもの姉ちゃんなら、『弟』って呼ぶはずなのに、あーもう訳分からん!)姉ちゃん、だよな?」

美女がコクリと頷く。

「俺の知ってる姉ちゃんは、もっと、うーんと、そう、汚いんだけど…」
「…?」

美女は首をかしげ、悲しそうな顔で智貴を見ている。

「(やりづれー…いつもだったら「うっせえ殺すぞ!」的なノリなのに…)」
「智貴、お姉ちゃんが悪いことしちゃったみたいね…」
「い、いや…もういいんだ(一旦部屋に戻って、頭冷やすか…)」
「だから、体で償ってあげる」
「えーっ!?」

いつもの智子も、冗談交じりで、同じ文句で弟を煽っていた。だが、今の智子は何かが違う。

「(いや待て待て待て待て!これは何かの罠だ!そうに違いない!)」

慌てふためく智貴を前に、智子はすっくと立ち上がり、胸がミッチリと詰まったシャツを脱ぎ捨てる。その背丈は、智貴よりも一回り高く、開放された乳房は智貴の目線の高さでフルフルと震えていた。

「罠だ!罠なんだー!」

智貴はいつもの姉との差に耐えられなくなって、その場から逃げ出し、自分の部屋に駆け込んだ。部屋の扉を閉め、その前に勉強机を引っ張ってきて、絶対に開けられないようにした。すぐに、ノックの後に外から声が聞こえた。

「ね、ねー、どうしたの、智貴?入っていい?」
「帰ってくれ!自分の部屋に!」
「そう…」

智貴は、朝になればまた姉と対面しなければならないことを考え、心臓がバクバクして止まらず、寝ることが出来なかった。おかげで、ただでさえ消えない目の下のクマが、次の朝はもっと深いものになっていた。

「お、おはよう…」
「あらー智貴、どうしたの、眠そうね」
「母さん、おはよう」

不安だった智貴の耳に、いつものゲスな声が飛んできた。

「ふっ、どうした弟、夜中アダルト雑誌でも読んでたか~?」
「姉ちゃん…」

智貴は一瞬安心してしまった。前にいるのは、いつもの「汚い」姉だ。

「うっせーな、さっさと食べないと遅刻するぞ」
「図星か、図星なのか~?」

こうして、嵐のような一夜が去ったのだった。

誤算(若返る女・成長する少女8より)

元々>>354-356の発言

サキュバスの圧倒的な力にただサンドバッグ状態になるしかなかった主人公達
しかし主人公パーティーのある一人がサキュバスの足元にある栓のような物を発見した。
そう、まるで空気を入れて膨らませる浮き輪などにある栓である
「もしかして、あの爆乳は…」
そんなことを思い、敵の裏へと回り栓を勢いよく抜いた!

に対してのレスとしてのSSでした。


 

キュポッ!

「これで、どうだ!」

思った通り、サキュバスの顔は困惑に満たされていた。だが、その次の一言でパーティー全員が震撼した。

「いやぁん、そこはまだ抜いちゃダメだったのにぃ・・・
まだキミたちを吸収するには、元気がよすぎるわぁ」
「な、何を言って・・・うわぁっ!」

まず栓を抜いたメンバーがダメージを受ける、というより、精気が抜け、痩せこけていく。それを吸い込むサキュバスもメンバーの血気盛んな精気に耐えられず、苦しげな表情をして、喘いでいる。

「あんっ!いやぁ、ワタシの中で・・・暴れないでぇっ!」

よく見るとサキュバスの体はところどころボコボコと小さな爆発が起きるように膨れたりして全身が蠢いているようだ。

「普段なら、ちゃんと倒してから吸収するから、ああいうのは起こらないんだろうな」
「そうね・・・」

主人公と回復役の少女はその様子をただ見守っていた。そうこうしているうちに栓を抜いたメンバーは完全に骨と皮となり、地面に倒れた。逆にサキュバスはこれまでの爆乳が更に一回り大きくなり、そのレザービキニから飛び出してきそうだった。

「ゴクリ・・・」

主人公は思わず息を呑む。これまでサキュバスの誘惑など軽く退けてきたはずだった。だが、その健康的な肌、メンバーの精気でいまだブルンブルンと揺れる乳房に耐えられなかったのだろう。それを見て、サキュバスが喘ぎつつも嘆くように言った。

「あらぁ?ちょっと・・ふぅっ!・・キミぃ、村を守るって言ってた割に・・くっ・・このチャンスをみす・・んっ!・・みすみす逃す・・なんてねぇ」
「はっ!」

主人公は敵であるサキュバスに諭され、我を取り戻したが、時すでに遅く、主人公からも精気が抜け始めていた。

「あら、キミもそのまま、入ってくるのぉ?」
「く、くらぇっ!フィエリーソード・・ストラ・・イク・・・」

主人公は剣を振り上げたが、その間にも精気が抜けていき、剣をボトッと落としてしまった。

「ちょ、ちょっと、ここまで来たのに!」
「お、俺の・・・力が・・・・」

パーティーの残りの一人の少女が叫ぶが、主人公はそのまま倒れ、動かなくなってしまった。 一方サキュバスは勝ち誇ったような顔をつくろうとしつつも、困惑を極めた表情になった。

「や、やめてぇ!これ以上はぁ、入らないわよぉ!爆発しちゃうぅ!」

しかし容赦なく主人公の精気がサキュバスにつぎ込まれ、その爆乳は超乳と呼ばれる域に達し、その羽根は苦しそうにバタバタと羽ばたく。

「くっ、こうなったらっ!器をつくるしかぁっ!」

サキュバスはハァハァ荒い息を出しながら、その腕を一人残った少女に向けた。少女は腰が抜けて動くことが出来ない。頼ってきた仲間は死んだように倒れ、魔法も回復系しか覚えておらず、腕力も、主人公の持っていた剣を1mmでも動かせないほど弱いものだった。そんな少女に、サキュバスは必死の形相で呪文を唱えた。というか、嬌声を上げた。

「ワタシの、仲間になってぇっ!」

本来なら「我に隷属せよ」と言いたいところだが、先程まであった威厳は消え去り、生きることだけを考えてサキュバスは叫んだ。

そんな願いのようなサキュバスの魔法は、少女に襲いかかった。足がすくんでいる少女は逃げられるはずもなく、それをただ受け身になるしか無かった。

「きゃぁっ!」
「よしっ!後は精・・をっ!ワタシの体、お願いだからぁ、持ってぇっ!」

その時点でサキュバスの元の服は、包んでいた体の体積が異様に増えたせいで破れ散っていた。だがそれすらも直す余裕はない。少女の足元に栓が出来たのを確認すると、サキュバスはその各部が暴れるように震えたり、膨らんだりしている体を、必死に動かして近づき、よたよたしながらそれをキュポッと開けた。

「はぁっ・・・もう限界ぃっ!出て行ってぇっ!」

サキュバスが叫ぶと、精気はサキュバスの体から少女の体に移り始めた。
少女は自分の体とは比べ物にならないほど艶かしい、悪魔のものとはいえ女性の体と、
彼女の悪魔とは思えない必死の形相と叫びに感覚が麻痺していたが、精気が入り始めると途端に叫び始めた。

「あぁっ、私の中に、何か入ってくるぅっ!」
「よかったぁっ・・」

サキュバスは自分の策が功を奏したことに、かなりの安心感を覚えた。自分が生まれてからこれまでなかったほどの嬉しさだった。それもそのはず、勇猛果敢な勇者たちの精気を弱めることなく一気に二人分吸収するなど、聞いたこともない話だったからだ。だが、その間にも、目の前の少女の体が変わり始めた。村の娘と見間違うほどの普通の風貌をした少女の体が、大きくなっていく。

「私の中に、あの人がぁ・・やめっ・・はうっ!」
「そうよぉっ!・・ふぅっ!・・あの子達が・・アナタの・・っ!・・中にっ!」

サキュバスから精気が抜けていくが、それでもサキュバスの中でそれは暴れている。少女の手足はググゥッと伸び、そのきめ細やかで血行が良さそうな色をした肌がさらけ出されていく。もともと少しふっくらしていた胸の部分もムクッムクッとさらに盛り上がり、襟から見える谷間が深くなっていく。少女は元のサキュバスの姿に近い、だが羽と角は生えていない爆乳の美女になっていた。

「うそでしょぉ、これでまだ半分しか出てないのに」

サキュバスは驚愕の言葉を出しながら、面白いものを見るような表情になった。困惑と懇願の表情は姿を消した。

「きゃぁっ、背中から、なにか出てくるっ・・!」
「あら、そろそろ人間じゃなくなるのねぇ」

少女は腕をその巨大になり、まだ膨らみ続ける乳房の下で組み、歯を食いしばっている。その背中から、二対の盛り上がりがバキバキといいながら出てきた。

「い、痛いっ・・助けて、誰か助けてええぇぇぇっ!」

悲痛な叫びとともに、皮膚が剥がれるようなベリベリという音と同時に服がバリッと避け、コウモリのような真っ黒な羽が姿を現した。同時に、破れた服から巨大な乳房がバァンと解放され、タプンタプンと揺れる。

「わぁ、おっきいわねぇ・・そろそろ、精気を出すのも、終わりかなぁ?」

少女の髪はブロンドから燃えるような赤にかわり、いつの間にか羊のような巻かれた角が生えている。その容姿は完全に悪魔のものだ。サキュバスは満足そうな顔で自分とその少女だったものの栓をしなおした。

「あぁんっ、もう閉めちゃうんですかぁ?」

少女の人格も、淫魔的な性欲に満ちたものに変わっていた。痛みに顔を歪ませていたはずの少女は、今は快楽に酔いしれているような、淫らな表情になっている。

「今はだぁめ!また人間の男を倒すまで、おあずけよ」
「仕方ないなぁ・・じゃあっ、これはっ?」

元少女はサキュバスの胸を鷲掴みにし、揉みしだき始めた。

「あぁんっ!もう、思ったより、乱暴な子ねぇ」
「一緒に遊びましょう?お姉さまっ」
「いいわよ、分かったわぁ。どっちが強いか、見せてあ、げ、る」
「お姉さま、だぁいすきぃ!」

元少女は、傷だらけでほぼ布切れになっていた服を破り捨て、「姉」に飛び込んでいった。

その後数日で、近くにあった村はなぜか二人組となった淫魔の餌食となり、二人の英雄は誰にも知られることもなく、白骨化していった。

感染エボリューション 9話

「んっ……朝か……」

美優は、窓の外から聞こえる小鳥のさえずり……ではなくカラスの鳴き声で、ベッドから身を起こした。拉致され、なんとか戻ってきた昨日までのことが、まるで夢であったかのように感じられた。それが現実であったということの証拠は、何一つ無かったのだ。

「朝ごはん食べて……学校いこ……」

しかし、その声にはいつもの元気らしさは無い。沢山の出来事に翻弄され、体力が回復しきっていなかった。重い足取りで、居間へと向かっていくのだった。

「おはよう……あれ?」

学校についた美優は、始業時間ぎりぎりであるのに、伍樹の姿がないのに気づいた。結子は、心配そうな目で空いた席を見つめている。それでも、美優が入ってきて教室がざわつくと、やっと美優の方に目を移し、ニコッと微笑んだ。美優も微笑み返すと、自分の席へと歩いて行く。

「おはよ……」
「おはよう。美優ちゃん、元に戻れたんだね……」
「あ、うん……」

美優は昨夜までに起こったことを打ち明けたかった。しかしそれは、結子を巻き込むことになるのではないかと、その時はためらってしまった。そうこうするうちに、担任の龍崎が教室に入ってきた。

「今日もいい朝だな!出席を取るぞ!」

龍崎の目が、小さな体に戻っている美優に向けられているのを、クラスの誰もが感じ取った。

「ふふふ、じゃあ行くぞ!!青……きぐぅっ……!!」
「僕の名前は青器具じゃないです……」

教室中から笑い声が起きるが、それを結子が制した。

「ちょっと待って、先生変じゃない!?」
「本当だ、何が起こってるの!?」
「悪いものでも食べて当たったのか!?」

龍崎は身を抱えてうずくまってしまった。が、次の瞬間、その頭を覆っている黒い髪の毛がバサァッっと伸びた。

「く、く……苦しいっ!!うがぁっ!!」

今度は逆に胸を前に突き出すようにして痛みを堪える教諭。来ていたジャージが破れ、たくましく鍛えられた胸筋が強調されたのもつかの間、その先にボロンっと突起が現れた。

「いや、やらしい……」
「じゃなくて、先生を保健室に連れて……」
「うああああ!!!」

教室どころか、廊下にまで響き渡る声を出すとともに、教諭の胸の筋肉はゴリッ、ゴリッという音とともに消え去ってしまった。一瞬間を置いて、別の何かが胸から飛び出してきた。

「まさか、あれって……」
「おっぱい、だよね……」

ゴリゴリと萎縮していく胴の上で、その膨らみはブルンブルンと揺れながら前に突き出ていく。そして、破れたジャージからは深い谷間が形成されていくのが見て取れた。何も変化は胸だけではない。ゴツゴツとした顔立ちは鳴りを潜め、面影は残しつつも龍崎の顔は女性そのもののものになっていた。尻は後ろにプリっとでて、体全体の萎縮でぶかぶかになってしまったジャージが引っかかり、ずり落ちないほどの大きさを持つほどだ。

「ちょ、ちょっと、先生が……」
「女の人になってる!」
「しかもかなりデカイぞ!ふがっ!」

デリカシーを知らない男子生徒が女子生徒に殴られる音がしたと同時に、龍崎の変身も終わった。

「せ、先生?大丈夫?」
「……大丈夫?何が?バカなこと言ってないで、座りなさい」
「「えっ!?」」

龍崎は、何もなかったかのようにケロッとした顔で、心配して近寄った生徒を諌めた。

「なになに、何なのよ。みんなしてどうしたの?」
「い、いえ……先生は、男……ですよね?」

同じ生徒が尋ねる。当然、肯定されるはずだった。しかし、

「……あなた、放課後職員室に来なさい。お灸をすえてあげる。分かったら、席に戻りなさい」
「は、はぁ……」

ドスの利いた声で、というより殺気じみた低い声で、叱咤されてしまう。何もかもわけが分からず、クラスにいたほぼ全員が、困惑の表情を浮かべていた。残りは居眠りか、ケータイをいじっているだけだ。

「ふふふふっ、いい表情ねぇ……八戸美優の、クラスメイトさん達……」

突然、唐突に廊下から入ってくるのは、豊満な体型の、キツキツの白衣を何とか羽織っている女性だった。美優には見覚えがあった。というより、忘れ用としても忘れられない顔。つい昨日逃げ出してきたばかりの研究所の所員、二本木頼子だった。体にはチューブが繋がれ、常に何かが吸いだされていた。

「だ、誰?あなたたち、勝手に……」
「寝てなさい」

自分を押し止めようとした龍崎に、二本木はスタンガンを容赦なくかました。そして、生徒の方に振り向くと、研究員らしい説明口調で語りだした。

「先生には、女性化する薬、いいえ。ウィルスを飲んでもらいました。効果こそ違いますが、そこにいる、八戸美優さんが体の中に持っているウィルスと基本的には同じです。そして、私達はウィルスを殺す抗体を持っています……」
「じゃあ、早く戻してあげてください!」
「……話は最後まで聞いてください。一度ウィルスに感染した人間は、研究所で手術を施さないと元には戻せません。先生はそれで直せますが、美優さんに限っては、私達でも手の施しようがありませんでした。もし身柄をお渡しいただけないと、このままウィルスは際限なく広がっていってしまいます」

美優は、二本木が事実と全く異なったことを言っているのに気づいた。昨日、二本木は美優を治療するどころか実験体にし、ウィルスの効果を測ったではないか。彼女は反論しようと席を立とうとした。その時だった。

(フエル……)
《ドクンッ!!》
「きゃあっ……!!!」
「おや、ウィルスの症状がどれだけ苦しいことなのか自分で見せてくれるらしいですよ」

あの衝撃が再び彼女を襲った。机に押し当てた小さな掌がグニグニと形を変え始めていた。

「み、みんな……っ!……うぐっ……!」

その一言ごとに、体の至る部分が成長し始め、服がギチギチと悲鳴を上げる。特に胸の部分はボタンをブチッと一気に吹き飛ばし、一気に爆乳のレベルに達していた。

「危ないから……!逃げてぇっ……!!」

服を破り成長し続ける美優をみて、他の生徒達は何かの化け物を想起したのだろう、悲鳴を上げパニックになりながら教室から出て行った。

「あらあら、感染しにくくなっちゃうじゃないの」
「あなた達は、何が望みなんですか!?」
「結子……っ」

元の体積の何倍にも成長する体全部からくる痛みに耐えながら、美優は結子が一人残ったことに涙を覚えた。結子もそれを見たのか、美優に頷いた。

「大丈夫、私がついてるから」
「結子……!ひゃ……っ」
「美優ちゃん!?」

美優の変身の様子がおかしかった。胸が大きくなるのはいつものことだが、今度は腹部が膨らみ始め、いつのまにか三つ子を孕んだ臨月の妊婦のようになっていた。しかも、まだ中から蹴られるようにボンッボンッと揺れながら膨らみ続けている。

「お、おなか……爆発……しちゃうっ!!」
「ふふっ、いいざまね……!」
「み、美優ちゃんに何を!!」
「私の研究所をオジャンにしてくれた報いよ。スポンサーが社会的地位を失って、なにもかもできなくなった。それで、何もかも、むちゃくちゃにしてやろうってわけ。危険な薬品もたくさん使ってね……でも、今の変身は私のせいでもなんでもない。中にいるウィルスが、暴走でもし始めたんでしょ」
「ぐっ……あ……うっ……!!」

際限なく膨らむ腹からでた球体は、教室の天井につくほどの大きさになり、張り詰めたその表面には血管が浮き出ている。巨大な乳房と合わせて、3つとなった球体は、ブブ……とゴム風船をこするときのような音を出しながら、今にも破裂しそうだ。

(変形……発射用意……)
「えっ……」

その膨らみの下でジタバタとしていた足が、ビシッと直径50cmほど円柱形に変わった。その真中には穴が繰り抜かれ、まるで大砲のようになった。そして。

(発射)
《ブシャァッ!!》

穴から、大量の水が吹き出た。その水圧は、水があたった壁をうがった。その水を蓄えていた美優の体はしぼみ、反動で逆方向に動いていく。

「な、なんなの!こんなこと、プログラムした覚えは……!」

その水流は、向きを変えて二本木に近づいた。

「こ、このままじゃ……見てなさいよ、これからどうなるか!」

たまらず、元研究員は逃げ出していった。しかしそれで水流は止まらず、美優は窓の方向に向かって急速に加速していった。

「ま、まって、このままじゃ!」

なすすべもなく、美優は窓の外に放り出されてしまった。

環境呼応症候群 月給の子

「はぁ……今週もバックダンサーしかやらせてもらえないなんて……それに、1回だけ……」

アイドル、月野興子(つきの おきこ)は、事務所のソファに座り、悩んでいた。それなりのプロポーションに、均整がとれているが、それなりの顔。人気がでるはずもなく、後輩に追い抜かされる日々。焦りを感じつつも何もできない彼女は、引退を考え始めていた。

「OLになった在香の方が給料高いって……こんなはずじゃなかったのに……」

電話のSNSアプリに映る友人の写真を見て溜め息をつく。その時だった。

《ピリッ!》

「ひゃっ!?」

興子は突然体に走った電撃に、飛び上がってしまった。

「な、なに?静電気?……冬は乾燥するもんね、お肌に気をつけないと……」

いつもクリームを塗って保湿している腕を見た興子の口が開いたまま閉じなくなった。なんとその腕は、急激に小さくなっていく。それは、腕だけではなかった。

「え……な……服が、大きく……周りが、大きくなってる!!」

確かに、興子に対して、周りの世界は拡大しているようにみえる。しかしそれは、興子自身が小さくなっているゆえだった。

「え、私、小人になっちゃうの!?」

その発言が間違いであることを、落ち着こうとして触った胸が告げた。Bカップほどあった膨らみが、跡形もなく消え去っていた。彼女は、10歳ほどの少女に若返ってしまったのだ。

「ど、どういうこと!?私……」

言葉を遮るように、急に扉が開いた。そして、興子のプロデューサー、明石が入ってきた。

「ひっ!?」

明石は、興子に気づくと、やれやれといった呆れ顔で話しかけてきた。

「あれ、どこの子かな?うちの事務所に何か用……って月野さん!?」
「あ、私そのその、信じてもらえないと思うんですけど……って、えっ!?」

なぜか自身を認識したプロデューサーに、驚いてしまう興子。

「な、何で私がわかったんですか!?」
「それは、ホクロとか……瞳の色とかかなぁ?それより、どうしたんですかその姿!」
「これは……」
「いや、待って!これは、行けるぞ!!月野さん、これならブレイク間違いなしですよ!!ちょっと歌ってみて!」

明石は、興子を置きっぱなしのテンションだ。

「え、あ、はい。『せんのか~わ~に~、せんのか~わにな』……」
「小さくかわいい、歌がそれなりにいい!それでいて本当は大人!く~っ、これは最高だ!」
「歌はそれなり……」

興子の眉間にシワが寄った。

そして、明石の言ったとおり、その次の日からファンは激増した。『合法ロリアイドル現る!?』『新しいアイドルにアキバが踊る!』『歌の上手さなんて関係ない!』などなど、雑誌に取り上げられることも数えきれなくなった。ステージで歌う事や、握手会も日常的になり、これまでと比較にならないほど脚光を浴びる興子は、あっと言う間にトップアイドルの一人として名を連ねることになった。

「これよ、これが私の望んでたものなのよ……!!」
「どうです?私の言ったとおりでしょう?オファーが後を絶たないんで、管理するのに嬉しい悲鳴をあげてますよ」
「それは私も一緒ですよ……明日で、この姿になって一ヶ月になるかしら……?」
「そうです。その記念として、明日は特別なスケジュールを組んでおきましたよ」

その特別なスケジュールとは、高級フレンチレストランで、二人だけの貸し切りディナーというものだった。明石と興子は、特別にあつらえた衣装を着て、一ヶ月前は考えもしなかった二人での食事を楽しんだ。メインディッシュが終わり、あとはデザートだけというときだった。

「ふふ、美味しい料理でしたね!」
「あの、興子さん。実は、打ち明けたいことがありまして……」
「なんですか?なんでも聞いてあげますよ?」
「け、結婚を前提に、お付き合いしていただけませんか!?」
「えっ!!」

明石の言葉に、興子は胸を貫かれたかのようだった。心臓がドキドキ言って止まらなくなった。そのあまりの強さにうろたえる彼女。

「……無理、ですか……?」
「う、ううん……?そうじゃなくて……ドキドキしちゃって……」
「お答えを、いただけますか……」
「ちょっと待ってください……ね?……なんか、体が火照ってきちゃって……」

火照る、どころではない熱が、彼女の体に溜まってきていた。バクバク脈を打つ心臓から送り出された、熱い血液が全身を駆け巡っていた。

「汗、お拭きしましょうか……」
「そう、ですね……お願い、します……」
「あれ……月野さん……?」

耐えがたい熱をこらえて、興子は聞き返した。

「なん……です……か?」
「大きく、なってませんか……体が」
「えっ……!?」

興子は自分の腕を見た。それは、一ヶ月前とは逆に、風船にポンプで空気を入れているように、ググッと大きくなっていた。

「そ、そんな、元に、戻りたくない……!」

胸に大きな圧迫感を感じてさらに下を見ると、膨らみが形成されて、ムクムクと大きくなっている。興子の中に絶望感が広がっていった。

「いやぁぁあああ!!」
「月野さん!?」

変化を止めたい彼女の意思とは裏腹に、それは加速していく。グッグッと成長を続ける腕はテーブルの上にあった花瓶を突き飛ばし、服をビリビリと引き裂いて膨らみ続ける胸は、プルンプルンといやらしく揺れる。すぐに、興子は元の20代の姿に戻ってしまった。

「も、もう、おしまいだわ……私の……アイドル人生……」

すすり泣きを始める興子。しかし、それだけで終わらなかった。

「えっ……!?」

すでに服から出ていた胸がボワンッ!と一気にFカップほどになり、そこで小休止したあと、Jカップまでまた爆発的に成長した。

「こ、こんなの大きすぎっ……!!」

それを止めようとして腕でギュッと押さえる。乳房はそれを押しのけるようにドワンッ!!と爆発し、Zカップまで膨張して机の上にあるものを全て吹き飛ばしてしまった。

「や、やだぁ……!!」

最後の一押しとばかりに、ドォォォン!!ともう二回り大きくなり、重さに耐え切れなくなった机が足から潰れてしまった。

「こ、こんな体じゃもうお嫁にすら行けないじゃないの!!」
「い、いいぞ……」
「明石さん……?」

プロデューサーの恍惚の表情を見て、疑問を禁じ得ない興子。

「月野さん、立ってみてください」
「は、はい……え、こんなに背が高くなってる……」

彼女の体の他の部分も成長し、2.5m超えの巨体になっていた。一つがバランスボールほどの大きさの胸は大きかったが、足や腕のムチムチとした脂肪は男の性欲をそそるもので、プリっと大きくなった尻はむしゃぶりつきたいという本能を呼び起こすものだ。

「素晴らしいです……!!何で大きくなったのかは、この際どうでもいい!」
「いや、どうでもよくな……」
「豊満な体をしたグラビアアイドル!しかも昨日まで幼女だった!歌もそれなりに歌える!これは行けるぞ!!」
「だから、歌はそれなり……」
「明日からも、頑張りましょうね!一緒に!」

興子は、ハイテンションなプロデューサーに呆れると同時に、笑いがこみ上げてくるのを感じた。

「ふふっ。ええ、頑張りましょう!一緒に……!」

マスターアサシン

ここは中世、ゴーロッパ大陸の南の半島に位置するミランツェ公国。ある銀行家の邸宅で、ひとつの命が生まれようとしていた。看護婦が妊婦を元気づけている。

「ふんばって、あともうちょっと!」
「んぐっ……ううああああっ!!」

そして、元気な産声が部屋中に響いた。その部屋にいた医師と、夫が近づく。看護婦は赤子を取り上げ、その股間に付いているものを見た。

「元気な男の子ですよ!カトローナ!」
「おとこ……のこ……よかった、元気なのね」
「ええ!それはもう……えっ?そんな、バカな!?」
「息子がどうかしたのか!」

看護婦が奇声を発した。それに驚いた夫がほとんど飛びかかるようにして赤子をふんだくった。すぐに顔から血の気が引いていく。

「い、いやそんな……ありえない!」
「何が、起きてるの?モンテローニ!」

モンテローニと呼ばれた夫は、その赤子の股の部分を妻に見せた。

「おちんちんが、縮んで……あ、なくなった……」

大声を上げている子の、その股間からちょこんと飛び出ていた突起が、中に埋もれていってしまったのだ。

「この子は……男の子なの?」
「分からないが……生まれた時男であったのなら、そうしよう……エレンツォ、この子の名前はエレンツォだ!」

モンテローニは、我が子を宙高く持ち上げた。その股間に、喜ぶかのようにボロンっと竿が生えた。

18年後。先の場面と同じ、ミランツェ公国の首都、ミランツェ。交易が盛んである街の街道は、多くの荷馬車や、商人、住民で溢れかえっていた。その中を、他の人を押しのけ早足で歩く、背の高く筋肉質な体つきの仮面を付けた青年がいた。小物入れの多い服を着て、腰には剣を付けている。そして、彼の視線の先には、豪華絢爛な服や装飾品を身にまとった商人がいた。

「こんなところに身を晒すなんて、アホなやつだ」

独り言を呟いたすぐ後に、青年は商人に辿り着き、間髪入れずに服から取り出したナイフを商人の胸に突き立て、叫び声を隠すために口を押さえた。

「ぐああああ!」
「辞世の句を言ったほうがいいぞ、この世の悪、ナンプラ騎士団の手先よ」
「やはり……きたか……アサシンめ!!この国の平和を……乱しおって……からに……!ぐっ……ふぅ……」

商人は捨て台詞を吐くと、そのまま息を引き取った。

「乱していたのはお前だ。ミランツェの交易を牛耳ろうとして、障害となる無実の者を抹殺していたのだから……さてと、そろそろ逃げないと」

この暗殺を見た通行人はパニックを起こし、街道は悲鳴が雨あられのように飛び交っていた。衛兵は何事かと原因を探ろうとして四苦八苦している。青年は、衛兵が状況を把握する前に、パニックに乗じてその場から逃げ去った。

数分後。誰も来ないような建物の屋上に先ほどの青年が立っている。仮面を取り外し、服を脱ぎ去ると、彼の鍛えあげられた体が惜しげも無くさらされた。

「今日はもうひとつ仕事を……こなさなけれ……ば!!うっ……!!」

彼は突然、毒を盛られたかのように、悶え始めた。すると彼の体が、メキメキと音を立てて、縮み始めた。筋肉はグッグッと萎縮し、骨は短く、細くなる。逆に、男としては多少長めである髪の毛はバサッと伸びた。

「なんで……いつもこう……違った、痛みがぁぁ……!!」

声の方は、男の低くよく通るものから、女の高く透き通ったものへと変わる。と同時に、喉仏が誰かに首を絞められたかのように潰れていく。胸には筋肉の代わりに脂肪が過剰に付き、乳房のように膨らみがつく。その大きさは脈拍と同期するようにムクッムクッと成長し、その国の一番の娼婦ですらかなわない大きさまで膨張する。尻も同様だった。

「ああっ……あああああっ!!!」

彼の股間でグチュグチュと嫌な音がして、息子が消えていくことを物語った。ムッチリとした足が内股になり、完全に女となった所で、彼の体が変わる音が止んだ。

「ふぅ……少しの休みくらいほしいものだ……」

彼、いや彼女は、先ほど着ていた服を、豊満な体が大きく露出されるように着直し、仮面を付けて建物から降りる。そしてそのまま、近くの酒場まで歩いて行った。

中には、沢山の衛兵と、ひときわ目立つ装備を付けた隊長がいた。彼女が入ると、隊長の近衛兵が身元を確認しに近づいてきた。

「お前、何者だ。名を名乗れ」
「そんなこと、どうだっていいじゃないのよ……」

彼女は、艷を惜しみなく入れた甘い声、身振りと、美しい顔と、露出した体つきで近衛兵を誘惑した。

「し、しかしだな……」
「あなたのものに、なってあげてもいいわよ……?」
「へ、へへ……いいねぇ……」

計算しつくされた誘惑で、あっと言う間に近衛兵は懐柔されてしまった。そのまま、彼女は近衛兵のおつきとして、好奇心と性欲が旺盛な衛兵の間をすり抜け、隊長のすぐ近くまで彼女は連れられていった。これが彼女の狙いだった。隊長は、彼女を見てヒューッっと口笛を吹いた。

「お、こいつはなかなかいい女だな、カルロ」
「でしょう。こいつを上に献上すれば、昇進間違いなしですよ」
「その時はお前も……ガハハハ!!」

下品に笑う隊長に、彼女はゴブレットに入ったワインを差し出した。

「隊長さま、これでもいかが……?」
「お、気が利く女だな。ちょうどのどが渇いていたのだ」

隊長は何の躊躇もなくそれを飲み干す。赤い液体が、体の中に滑りこんでいく。

「隊長さま、少しお色直しをしてきますわ……よろしくて?」
「ああ、その代わり後でたっぷりと楽しませてくれよ」
「もちろんですわ」

彼女は、扉を抜け、酒場の中庭に出た。その瞬間、フッと鼻で笑う。

「毒入りのワインが連れて行ってくれる、あの世でタップリと楽しむがいい。さてと、帰るかね」

中庭の門の錠をいとも簡単にピッキングして、彼女は悲鳴が上がり始めた酒場を後にした。

「ただいま、父さん。今日も成功だ」
「お、エレンツォ……それとも、今はエレンツィアかな……?」

銀行家は今は娘になっている、息子を品定めするように見た。

「素晴らしい体だ」
「ああ、神様からもらった賜物だよ。ただ、後一秒でも見つめ続けたら息の根を止めるからな?」
「ふふ、やってみるがいい」

二人は少しの間互いに笑いあった後、話を続けた。

「だけど、あの歴史の教科書にしか載っていないナンプラ騎士団が実在するなんて、思っても見なかったよ」
「ああ、あいつらはいつも統治者や、権力者の仮面をかぶって活動をするからな。誰も騎士団の存在には気づかない。ただ……」
「俺達を除いて、ということか」

父親はエレンツォに頷いてみせた。

「そう。我々と騎士団は歴史が始まる以前から今まで、絶えず戦いを繰り返してきたのだ」
「しかしなぜ、俺達家族にも秘密に行動していたんだ?」
「それはだな……」

その父親の言葉を、遠くから聞こえてきた女中の呼び声が遮った。

「夕食の支度が出来ましたよ!食堂へお上がりくださいな!」
「ああ、今行くよ!エレンツォ、話の続きはまた明日だ」

エレンツォとモンテローニは、部屋を出て行った。

翌日も、エレンツォは男の姿で街にくりだしていた。今日は任務もなくただの買い物であったが、ナンパ癖が出て、途中の酒場で油を売っていた。

「お嬢さん方、俺と一杯飲まないか……?」
「あら、逞しい体」
「素敵な方ね……、仮面を外して、お顔を見せてくださいな」
「男には、秘密が多いほうが魅力があるんだよ……」
「それもそうね……うふふ」

それはどちらかと言えばいつもの事で、もちろん父親にも母親にも公然の秘密となっていた。

「ねえ、私とも付き合ってくださいません?」
「お、どなたかな……?おお……」

エレンツォと数人の輪に、一人の女が入り込んできた。その容姿は女好きのエレンツォでさえこれまで見たことのないほどの美貌をまとっていた。なめらかな曲線を描く髪、あまり大きすぎない胸、魅惑的な体つき。それでいて、娼婦とは一味違った、上品な気質を感じさせる身のこなし。まるで、女となったエレンツォを思いおこさせるような女性だった。エレンツォは、思わず深々と礼をした。

「あなたとお話しできるなど、この上ない光栄」
「まあまあ、そこまでおっしゃらないで、恥ずかしいわ」
「私の名前はニロ。あなたは……」

もちろん偽名だ。仮面をかぶっている間は、エレンツォであることを知られてはならない。

「そんなことより、一杯乾杯しましょ?」
「……そうですね」

エレンツォは、無視されたことで一瞬うろたえたが、すぐに気を取り直して、女性から渡された杯を手にとった。

「乾杯!」「乾杯!」

そして、ワインを一気に飲み干す。アルコールが入った飲み物を飲むことで、体の中がじんわりと暖まって行くのを感じた。

「こんな美しいレディの前だと、格別な味がしますね……」
「うふふ、そのはずですわ……」

しかし、そこで終わらなかった。

《ドクンッ!》
「げほぉっ!!」

体の中の熱が急に強くなると同時に、心臓の脈が急激に強くなったのだ。

「な、ど、どういうことだ……!ぐぅっっ!!」
「うふ……あはは、やはり、君か、エレンツォ。こんなに簡単に任務が成功するとはね」

女性の口調が急に変わったことで、やっとエレンツォは自分が罠にはまったことを自覚した。

「き……きさまは……!!」
「おっと、女の子がそんな汚い口をきいちゃいけないよ?」
「ぐふぅっ!!」

エレンツォは、胸に自分の意志によらずに脂肪が発達し、服に圧迫される感覚を受けた。

――ま、まずい、変わるのを見られては……

急なことで、完全に浮足立ってしまった。

「トイレはあっちだよ、エレンツォ」

そこに出された助け舟に、言われるがままに周りの人間から逃げるエレンツォ。トイレに駆け込み、扉をバァンと閉めると、変身は続いた。

「ど……どうしたんだ、俺の……体はぁっ!!?」

足の筋肉が無くなり、骨格が変わってグキッと内股になる。筋肉の代わりに、脂肪がブワッと付き、ムチムチとした太腿が形成される。この光景を、エレンツォは幾度と無く見てきた。しかしそれは、自分がそうするように念じた結果であるのが全てで、今のように、止めようとしても止まらないのは初めてだった。

強く太い胸筋より、女性となった時に形成される巨大な乳房のほうが体積が大きい。胸は服の生地を無理やり引っ張り、所々でプツプツと糸がほつれる音が聞こえる。これを防ぐのに、毎回服を脱いでいたのだ。

「んぐっ……ぐぅっ!!」

顔が絞られるように変形して、髪が伸びた。それで、ついに変身は終わったが、エレンツォの動悸は収まらなかった。

――まさか、俺の体質がナンプラ騎士団の連中にバレたのか……!?いや、そうでないと説明がつかないぞ!とりあえず男に……なにっ!?

エレンツォはいくら念じても男に戻れない事に気づいた。

――い、いかん。今の姿で外に出れば、騎士団だけでなく庶民にまで俺の体質が……!とにかく、脈が落ち着いてから試すか……!

そして、数十分が経った。といっても、その間ずっとトイレを占領していれば怪しまれる。エレンツォは、力を振り絞って天井裏に隠れていた。そして、数回試した後、やっとのことで男に戻ったのだった。

エレンツォは父親に報告するためにすぐに家に帰り、玄関の扉を叩いた。

「い、今帰ったぞ!」
「……」

だが、中からは誰も出てこない。女中すら、その姿を見せなかった。

「お、おい、俺だ!」
「おかえり、エレンツォ。その家は空っぽだ」

今さっき聞いたばかりの声が、エレンツォの背後から掛けられた。

「お前は、さっきの……」
「そう。アサシン、お前の家族の安否が知りたいか?」

エレンツォは女性の胸ぐらを掴んで、大きな声で脅した。

「今すぐ言え!さもないとお前の首を……!!」
「おっと、こんなところでか弱い女性に暴力をふるうのかな?銀行家のお坊ちゃん」
「ぐっ……」

街道を行き交う全ての人が足を止めて、二人の方に目を向けていた。

「頼む、教えてくれ」
「街の一番大きい教会の大聖堂に囚われているはずだよ」
「なに?そんな公共の場で……」
「今日は聖なる儀式が行われるから、聖職者以外誰も入れないんだよ」
「そいつらが、……」
「そう、我々の同志。はは、せいぜいあがくんだね!」

エレンツォは女性が言葉を出し終える前に走り去っていた。

いつもより乱暴に人を押しのけ、教会を目指す。家族が騎士団にどういう仕打ちを受けるか、想像を絶している。教会に着くと、少しの間も置かずに扉に体当りした。中には、数えきれないほどの衛兵の向こう、祭壇の前に家族が縛り付けられ、その手前に枢機卿が立っていた。

「やはり来たか!双性のアサシン、エレンツォ!」

枢機卿はエレンツォに向かって大声を上げた。

「俺の家族を返せ!」
「返してもらいたくば、おのれの力を使って取り返しに来い!」
「望む所!うおお!!」

エレンツォは雄叫びを上げると同時に突撃を始めた。立ちはだかる衛兵をひとりひとりなぎ倒す。一人を斬りつけ、もう一人を突き刺し、その剣を奪い取ってもう一人の頭をかち割る。持てる力を全て使い、馬ほどの速度で走り抜ける。

「枢機卿!覚悟っ!!」
「ふふっ……!これでも、喰らえ……!」

エレンツォと枢機卿の間に障害が無くなった所で、枢機卿は懐から小瓶を取り出し、エレンツォに投げつけた。小瓶は絵レンツォにぶつかると、粉々に砕け散り、中身がアサシンにバシャッとかかった。

《ドクンッ!》
「うぐっ……!!また……これか……!!」
「おお、これぞ絶世の美女ともいうべきか……」

全身を駆け巡る痛みとともに、あっと言う間にエレンツォは女性と化していた。

「……これで、俺を止めた気になってないだろうな……?」
「まさか」
《ドクンッ!》
「ひゃっ……!?まだ……なにか起こって……な!?」

完全に女性となったエレンツォの豊満な胸が、ムクムクとさらに大きくなっていた。まるで、エレンツォの体から何かが溶け出すように大きくなるそれは、2m、3mと大きくなり、あっと言う間に教会の鐘の大きさほどになってしまった。

「おも……い!!これでは、身動きが……!!」
「ふふ、調べたとおりだ」
「調べた……?俺の体の何を!!」
「男性と女性の間を行き来する体の持ち主が、お前だけだと思ったのか?ミランダ、こちらに来い」
「はい、グランドマスター」

まったく動くことができなくなったエレンツォの後ろから、彼に嫌というほど聞き覚えのある声が聞こえた。

「お……まえは!」
「おやおや、まったくだらし無い乳房だね……人間の一部ではないみたいだ……よっ……!!」

エレンツォにワインを飲ませた女だった。しかし、エレンツォの視界に入ると同時に、その姿は急激に変わっていった。

「ミランダは、我々の理念に共感し、人体実験を引き受けてくれたのだ。代わりに、女性の時はエレンツォ、お前を超える美女に、いわばチューニングを施した」

ミランダの体は更に小さくなり、小さな男の子になってしまった。

「こんな子供に、なんてことを……」
「お前には、アサシンとして鍛錬された暗殺の能力が備わっている。騎士団は、お前のような人材をいつでも……」
「は!?俺に加われと!!バカなことを言うな」
「では、私と交わって子供を残せ。そして死ね」
「な、なにを!!」

枢機卿はエレンツォの後ろに回り込み、そして何の前置きも躊躇もなく突っ込んだ。エレンツォは思わず嬌声を上げてしまった。

「ひゃぅぅうう!!小男のくせして、そこだけはでかいのかよ!!」
「余計なお世話だっ!!……お前、本当に女になっているのだな……!」

何回も打ち付けられる二人の腰。その頻度は段々と上がっていく。

「あんっ……!ち、ちくしょう!……ひっ!……こんな、憂き目に……!!」
「素晴らしい感触だ……!ただ……そろそろ……出る!!」
「やっ、やめろ!!やめないと、後で痛い目を見るぞ!!」
「おおっ……怖いな……あとで好きにするがいいさっ……!!本当にそうできるのならばな!」

そこで、エレンツォの声は冷静そのものに戻った。

「ああ、そうさせてもらうよ。今すぐに」
「なっ!?うぎゃあああ!!!」

枢機卿の股間から、大量の血液が飛び出した。そして、床に何かがポトリと落ちた。エレンツォの手には、収納式の刃が握られていた。

「き、きさま、どこにそんな刃物を!!」
「足にベルトを巻いて、それに付けておいたのだ。そんなことはどうでもいい。どうだ、お前もう自分が男だと証明できないんだぞ」
「ぐ、ぐう……」
「お前自身にも人体実験しないとなぁ?」
「く、くそ!!今すぐこの手で殺してくれるわ!!」
「できるもんならやってみるがいい」
「おのれぇぇえええ!!」

エレンツォの煽りにまんまと乗っかった枢機卿はどこからか取り出したナイフを手に取り、エレンツォの背中に刺そうとした。しかし、エレンツォはそのナイフが空気を切る音を感じ、刃でナイフを弾いた。次の瞬間、エレンツォの刃は向きを変え、エレンツォ自身の力と、枢機卿の走ってきた勢いで、枢機卿の胸に深々と突き立てられた。

「聖職の肩書きを踏み台に人間の体をもてあそぶ悪魔よ、地獄に落ちたまえ」
「ぐあああっ!!!ぐ、ぐふふっ……お前も道連れにしてやる……!」
「なんだとっ!?」

枢機卿はイタチの最後っ屁とばかりに、小瓶を取り出しエレンツォに中身をぶちまけた。

《ドクンッ!》
「んああっ!!」
「体の制御を外す薬だ。暴走したお前の体は、すぐに破裂してしまうだろう……!うは、うはははっ……ははっ…………」

枢機卿の言ったとおり、すでに巨大化していたエレンツォの胸も、尻も、枢機卿の体を押しのけて、全ての部位の脂肪細胞が無限に増殖し、風船に空気を入れられるように膨らみ始めた。エレンツォは、心臓から全身にポンプのように送り出される何かで、皮膚が引き伸ばされる感覚を感じた。教会の床の上で、エレンツォはバルンッバルンッと揺れながら、巨大な球体に膨れ上がっていく。そして所々で、皮膚が限界を迎え始め、千切れそうになっていた。

――万事休すか!!いや……俺の体だ、俺が制御してやる!!
「ぐあああっ!!うおおおおっ!!」

エレンツォは大声を上げた。直径10mほどにもなっていた乳房が膨らむのをやめたが、他の部分は止まらない。

――ちくしょう、ちくしょう!!
「エレンツォ、お前の能力はここでおしまいじゃないはずだぞ!!」
「父さん!……」

父親の声に、痛みを堪え、冷静さを取り戻す。そして、ゆっくりと念じた。

――もとに、もどれ。

それだけ念じると、彼の体はプシューッと空気が抜けるようにして男の体に戻っていった。ミランダは一瞬呆気にとられたようだが、倒れている枢機卿を見て我を取り戻し、女性の体に戻って駆け寄った。

「グランドマスター!グランドマスター!誰か、医者を!!」

泣きじゃくるミランダをよそに、エレンツォは家族を解放した。

「ありがとう、父さん。おかげで助かった」
「違う。今のはお前が自分で成し遂げたことだ」
「アサシンのことを俺に隠してた理由って、そういうことだったのか?」
「ああ、このような事態に陥っても、自分で何とか出来るまで、待っていたのだ。さあ、帰ろうか」

エレンツォと家族は、ぼーっと立ち尽くしたままになった衛兵の中を歩き、教会を出て行った。

その後も、エレンツォはアサシンとしての活躍を続けた。決まった姿だけでなく、変幻自在に体の形を変えられるようになった彼は、時には老婆、時には幼い男児に変身して、暗殺をこなしていった。ゴーロッパ大陸に巣食うナンプラ騎士団をほぼ壊滅においやった彼は、伝説のマスターアサシンとして、その名を歴史に刻むことになるのだった。

豊胸剤(若返る女・成長する少女8掲載)

僕、茂山 美樹(しげやま みき)は、中学3年生の男子だ。名前のせいで女の子によく間違えられるけど、
れっきとした男の子だ。兄弟は上に高校1年の美里、下に小学4年の美香がいる。でも、美里姉さんは幼児体型で、
おっぱいも殆ど無くて、背も低いから、美香と大差がない。まるで、二人の妹がいるみたい。性格は全然違うけど。

僕が学校から帰ってくると、リビングでお母さんと姉さんが話をしているのが聞こえた。扉から覗いてみると、
なんだか、お母さんがものすごく楽しそうだ。

「ねえ、美里、おっぱいが小さいのがコンプレックスって言ってなかったっけ?」
「そうだけど、なに?」

姉さんは嫌がっている。お母さんがエネルギードリンクみたいな小さいビンを出した。

「豊胸剤、買ってみたのよ。試してみない?」
「えー?いいよ、そういうのには頼りたくない」
「騙されたと思って、飲んでみてよ」
「ちょっとだけだよ…?」

姉さんがビンを受け取って、蓋を開けてちょぴっと飲んだ。

「はい、飲んだ」
「そんなちょっとじゃ、意味ないわよー」

《ガチャッ》

「だ、だれ?」

あ、扉を間違って開けちゃった…姉さんが慌ててビンを机に置いて、聞いてきた。

「美樹、いつから…」
「えへへ、ちょっと前から」

姉さんの顔が真っ赤になった。怒らせちゃった!?

「こ…の…っ!」

なんか、おかしい…美里姉さん、苦しそう…!?

「大丈夫!?」
「なんか…胸が…苦しいっ!」

姉さんは腕で体を抱えてしまった。

「お母さん!何とかしないと!」
「あらら、こんなにちょっとで効果が出るなんて、驚きね…」

お母さんの方はちょっとびっくりした顔をしている。そういう状況じゃないと思うんだけど…

「ひゃっ!」

姉さんが変な声を出した。そしたら、抱えている腕の下で、ボンッとおっぱいが大きくなった。
お母さんのよりも大きいかも?

「ひっ!」
《ボンッ!》

また、大きくなった。姉さんの短い腕が、完全に包まれちゃってる。服もビリビリに破けちゃった。
おしりも、なんだか大きくなっている気がする。姉さんは荒い息をハァハァ立てている。

「きゃぅっ!」
《グッ!》

今度は身長が高くなった。僕の身長を一気に超えて、お母さんの身長までひとっ飛びした。

「はぁ…はぁ…何だったの…」

姉さんは状況があまりつかめてないみたいだ。自分の体をキョロキョロしながら見ている。

「私…体が大きくなったの…?」
「そうみたいね。良かったじゃない。おっぱいも誰にも負けないわよ」
「う、うんっ!お母さん、ありがとう!」

姉さんは本当に嬉しそうだ。こんなに嬉しそうな姉さんを見るのは久しぶりだった。僕も釣られて笑顔になる。

「はいはい。私も、飲んでみようかしら…って、あれ?どこにビンを置いたの?」
「え?ここだけど…」

ビンが無くなっている。どこに行ったんだろう…?

「お母さん、このジュース美味しいね!」

僕の横から、妹の声がする。

「美香ちゃん!?」

いつの間にか、美香が部屋に入ってきていた。しかも、その手には…

「美香、それ…飲んだの?」
「え?いけなかったの?それに、お姉さん誰?美里お姉ちゃんは?」
「あらあら…」

豊胸剤のビンが握られていた。

「美香、私、美里よ。大きくなったけど、あなたのお姉ちゃんよ。なんともない?」
「え、そうなの?えっと…なんかお腹が熱いような…あっ!」

美香の体がブクゥッと太くなった。小さいお相撲さんみたいだ。

「あ…あっはは、何その格好!おかしいっ!」
「え?」

美香はキョトンとして自分の体を見た。そして、すぐに顔を真っ赤にした。

「お姉ちゃん、ひどいよっ!」
「美香はまだ小学生だから、どこを大きくしていいかわからなかったのかもね!」
「むぅ…私も、美里お姉ちゃんみたいに、大きくなるもんっ!」
「はいはい…っ!?」
「きゃあっ!」

悲鳴と共に、美香のブクブクだった足が、グイーッと伸びる。そのせいで、まだそれ以外が長くなってないのに、
姉さんの身長を超えてしまった。

「ま、まさか…美香…」
「こんなに、大きくなるの…?いや、いやだよっ!」
「あらあら…」

そうこうしているうちに、腕も伸びて、キュッと引き締まった。姉さんのよりも長い。

「気持ち悪いよぉ…」

美香は泣きそうになっている。その顔も、さっきまで僕よりも低いところにあったのに、
今はずっと上にある。僕だけ、背が低いままだ。それに、美香の体が伸び始めて、身長は止まるところを知らないみたい。
考えてみたら、お父さんよりもずっと高くなってる。

「高いの、怖いよ…ひゃぅっ!」

長くはなっていたけれど、ペッタンコだった美香の胸板が、ボコンッ!と何かが爆発したみたいに膨らんだ。
それだけで、もう姉さんより大きいのに…

《ボンッ!バインッ!》
「はぅっ!」

どんどん、おっぱいは膨らむ。姉さんのおっぱいなんか目じゃない。スイカ2個分はありそう。
服はもうお腹の部分だけ残して、全部破れちゃった。

「美香ぁ…」

姉さんはとっても悔しそうだ。そりゃ、今まで同じ体型だった美香にやっと差をつけられたと思ったら、
それを飛び越して美香が大きくなっているんだもの。仕方ないね。

「このお薬、すごいわね…」

娘たちの成長を見ながら、お母さんが感心している。ただの豊胸剤じゃないよね、確かに。

「やっと…終わったぁ…」

美香が疲れきって、半泣きの状態で呟いた。

「美香、こんなに大きくなっちゃったの…?」

美香は、さらけ出されたおっぱいを揉んだりしていたけど、姉さんを見て、その表情がふっと得意そうに変わった。

「美香、お姉ちゃんより、大きくなっちゃった」
「うっ!そ、そうね…お姉ちゃん…美香に追い抜かされちゃったね…」
「あははっ!おっぱいも、こんなに大きいよ!」
「わ、私だって…大きいよ…普通よりは…」

今度は姉さんが泣きそうになっている。

「ところで、お兄ちゃん…どう?」
「えっ!?」

美香がこっちに歩いてくる。というより、おっぱいが僕の目線の高さにあるせいで、
おっぱいが近寄ってきているようにも見える。

「私のおっぱい、大きいでしょ?」
「う、うん…」

小学生、だったよね、美香って。小学生が、こんなにエロいわけないよね…

「触ってみてよ」
「え?」
「とっても、柔らかいんだよ?お兄ちゃん、こういうの好きだよね?」

美香、どこでそんなこと…悪乗りにも程がある。ここは、ちゃんと拒否して…

「美樹…そんなに…おっぱいが好きなら…」

美香の大きな体の後ろから、美里姉さんのものすごく震えている声が聞こえる。え…今度は、何!?

「あんたが、おっぱいになりなさいよ!」

姉さんが駆け寄ってきたと思ったら、僕の口にビンが押し付けられ、液体が喉の奥に入っていった。

「けほっ!な、何するんだよ!」
「ふんっ!姉に対する不敬の罰よ!」

完全に八つ当たりだ。それに、豊胸剤を男に飲ませてどうす…

「ん、どうしたの、美樹?」
「お兄ちゃん?」

動悸が激しくなっている。おなかが焼けるように熱くなって、胸も苦しい。
それに、一番痛いのが、僕のアソコだった。股間に手を伸ばすと、それはサイズを小さくしていって、
ついに体の中に潜り込んでしまった。

「どうしたっていってるのよ、答えなさい!」
「大丈夫、お兄ちゃん!?」
「僕は、僕は…ああああああああぁぁぁっっ!!」

僕の体が内側から爆発したようだった。全身の皮膚に、中から押し上げられて、引っ張られるような感触が走った。
それに、頭がものすごく痒い。

「み、美樹…」
「お兄ちゃん、私よりも…」
「え…?」

僕の目線より下に、美香の顔があった。つまり、美香より大きくなったってこと?
僕は、そんなに背が高い、大人、になったの?いや、それだけじゃない…胸が重い…まさか…

「私より大きいおっぱいが…美樹に…」
「お兄ちゃんが、お姉ちゃんになっちゃった…」
「え、えええええっ!?」

下を見ると、美香のより近くにあるせいか、さらに巨大に見えるおっぱいが僕の胸にくっついていた。
いや、本当に美香のより大きい…僕、女の人になっちゃったっ!?

「あらあら…」
「あらあらじゃない(わ)よっ!!」

お母さんのとぼけたような反応に、三人のツッコミがハモった。

黒科学(若返る女・成長する少女8掲載)

ふふ…俺は今日、とんでもない(妄想にまみれた)買い物をしてしまった!
高校の黒科学部の奴らが開発した、飲んだら体がムチムチなお姉さんになる薬だ!
はぁ…俺、なに考えてたんだろう…世の中には、質量保存の法則というものがあって、 無から何か物質が発生することはない。すなわち、こんな小瓶に入ったオレンジジュースみたいな小さいもので、 人の体が大きく変化するわけがないんだ。といって、下水道に捨てるのもマズイだろうし、 まあ、なんにも起きるわけ無いんだから、小学生の妹にでも飲ませるか。香りを嗅いだ時は、甘い香りしかしてこなかったし、 腐ってるわけでもないだろう。材料を聞いたら、全部食品だって言うし。

「おーい、美佳ーっ!」
「なーに?お兄ちゃんっ!」

俺が呼びかけると、部屋の方から声が聞こえてきた。

「オレンジジュース、買ってきたんだけど飲まないか?!」
「うんっ!今行くーっ!」

妹の美佳が、居間に走ってきた。ふわふわの栗毛をなびかせ、小さな体を、元気よく動かして。 ちなみに、オレンジジュースを買ったというのは嘘じゃないぞ。俺が飲む分だ。

「こら、家の中は走っちゃダメだぞ」
「ごめんなさい」
「いい子だ、ほら、これが美佳の分、これが俺の分だ」

俺は2つのコップに入ったオレンジジュースを用意していた。美佳のコップには、先程の薬を、薄めて入れてある。

「いただきまーす」
《ゴクッ…ゴクッ…》

その可愛らしい容姿に見合わない、豪快な飲みっぷりで、オレンジジュースを口に流し込んでいく美佳。
こりゃ、将来が思いやられるな…

「ごちそうさま!」
「はやっ!」

もう、飲み終わったのかよ!

「美佳、そんなに早く飲むと、お腹壊すぞ!」
「大丈夫だよー…あ…」

美佳が硬直した。どうやら、俺の予感的中だ。冷えたオレンジジュースを一気に飲んだせいで…

「お兄ちゃん、なんかお腹の中、熱い…」
「ほら、早くトイレに…って、熱い?」

美佳は確かに、痛いじゃなく、熱いといった。聞き間違いじゃない。

「あっ…!」

美佳の様子がおかしい。体の至る所を、かきむしっている。

「何か、体の中にいるみたい…」
「何だってっ!?」

あいつら、寄生虫でも入れやがったのか!?俺としたことが…すまない美佳っ!

「すぐに、救急車…を…」

美佳のそばにある電話を取りに行った俺から見える、美佳の体がおかしい。 何がおかしいって、俺の胸の下辺りまでしか無かった背が、肩まで伸びている。俺は、電話を取るのをやめて、美佳の変化をじっくり鑑賞することにした。黒科学部の話を、少し信じてみることにしたのだ。

美佳の背丈は、俺の頭を超え、更に大きくなっていく。こんなに背が高い女性を、今まで見たことがない。 それに、手足もにょきにょきと服から飛び出し、ほっそりとした姿が、顕になっていた。お腹が服からはみだし、ぴっと縦に入ったへそが、見えている。 フワフワとしていた栗色の髪の毛は、ピシッとしたストレートになり、腰のあたりまで伸びた。

「きゃっ!」

美佳が小さく叫ぶと、ほっそりとしていた手足にたっぷりと脂肪が付いた。 そのせいで、着ていたシャツの袖が、ビリッと破けた。

「あぁ…あぁん!」

なんだ、今の声!元の美佳からは想像もできない、色っぽい声だ。

《ビリッ》

スカートの中で何かが、いやパンツが弾け、スカートの斜面が丸みを帯び、そのまま膨らんでいく。 次に、腰が太くなっているのか、スカートのウエストの部分が、プツプツ音を立てながら広がっている。 そして、ついには、スカートはウエストの部分から、ムチムチになった足のほうに、ビリーッと破けてしまった。

「あはぁん!」

美佳が、無意識的なのか、意識的なのか分からないが、何もない胸を自分の手で揉み始めた。

「おっぱいが、熱いよぉ…」

そういう美佳の胸に、厚みが出始め、美佳の手に揉まれて、ムニュッムニュッと変形するようになったかと思えば、 それはどんどん膨らみ、それをもんでいる両手が、胴体から確実に引き離されていく。そのおっぱいは、 美佳が揉んでいることも手伝って、胴体が大きくなるだけで過剰な張力が働いていた服をボロボロにちぎっていき、 それにつれてどんどん肌色とピンク色の突起がさらけ出されていく。美佳の手の動きは、おっぱいが巨大化するにつれて大きくなっていき、
それによるおっぱいの変形も、信じられないほど大きくなる。

「あぁん、気持ち、いいっ」

この美佳は、もう以前の美佳じゃない。その顔は快楽に満ち、何かの悪霊が乗り移ったかのように淫らな笑みを浮かべていた。 そして、美佳がおっぱいを揉むのをやめた。目を閉じた美佳から、笑みが薄れていき、真顔に戻った。

「あ、あれ…私、何してたんだろう」

良かった、美佳が戻ってきた。その美佳は、自分の、ムチムチになった体を見回している。

「私、大きくなっちゃった!」
「美佳、大丈夫か?」
「お兄ちゃん…」

美佳は、こっちをジロジロと見ている。何だ、何が言いたいんだ。

「小さいね」
「へっ!?」
「小さいって言ったんだよ、チビのお兄ちゃん」
「ち、チビ?」

美佳の顔には、嘲笑とも取れる笑みが浮かんでいる。

「私の体で、遊びたかったんでしょ。この変態」
「へ、へんた…」
「違うっていうの?じゃあ、ただの馬鹿ね」
「え…?」
「あのビンを、私が見なかったと思うの?」
「ビン…?あっ!」

机の上に薬のビンを置いたままだった。ラベルにははっきりと「ムチムチになる薬」と書いてある。しまった…

「お馬鹿さん…」

あれ、何だ…罵られているはずなのに、美佳のエロい声のせいで、なんだか気持ちいいような…

「お兄ちゃんの、チビ!変態!」

も、もっとくれ…

「あははっ、罵られて気持ちよさそうな顔するなんて、本当に変態だね」
「は、はぁっ!」

俺は、土下座してしまった。妹であるはずの美佳に。

「何?お兄ちゃん、私のおもちゃになりたいの?変態だけじゃなくてドMなんだね」
「はいっ!」

認めてしまった。

「じゃあ、私の足をなめてよ。服従の印だよ」

俺は、そう言われて美佳を下から見た。美佳の巨大なおっぱい、ムチムチな足、プリッと締まったお尻、キュッと締まったウエスト。 そして、俺を見下すような顔、笑み。全てが、完璧だった。

「ははぁっ!」

俺のプライドは、女王と化した妹の前に消え去った。

継承(若返る女・成長する少女8掲載)

「いってきまーす!」

元気のいい少女の声が、空の朝に響いた。ランドセルを背負った小学1年生くらいの少女が、玄関から飛び出してくる。
彼女の名前は優美、実は小学5年生だ。

「あ、優美ちゃんおはよー!」
「おはよ!英梨ちゃん!」

その玄関先で、待っている中学生くらいの背丈を持つ少女、英梨。だが、彼女も小学5年生。
優美のクラスメートだ。

「忘れ物してない?」
「うん、宿題も、教科書も、筆箱も入れたよ」
「よし、じゃ、学校いこっか!」
「うん!」

そうして、一緒に登校を始めた二人。その道中、いつもの話題が持ち上がる。

「英梨ちゃん、大きくていいなー」
「またー?おっきいのも大変だよ?」
「でも、羨ましいよ!私、いっつも列の一番最初で、しかも2番目の美矢ちゃんよりもずっと背が低いの」
「あはは、でも、優美ちゃんも、きっと大きくなるよ!だって、優美ちゃんのお母さん、
すっごい背が高くて、おっぱいもものすごく大きいじゃん」
「でも、お父さんはそうでもないよ。きっと、私、お父さんに似たんだ」

優美のコンプレックスは、スタイルが抜群で、身長が中肉中背の父親よりもかなり高い母親のせいでもあった。
優美の身長からだと、母親が屈んでくれないと乳房に隠れて顔が見えない。それを体験するたび、
コンプレックスが深まっていくのだった。

「それでも、これから成長するって!」
「そうかな~」

そんな会話をしつつ、二人は歩み続ける。

「あ、裕也君だ!」
「えっ!?」

前に男子生徒の2人組が見える。

「優美ちゃん、裕也君のこと好きなんだよね」
「えっ、何言ってるの…」

図星だった。優美の心臓がバクバク言っている。

「あはは、顔真っ赤になってる!」
「英梨ちゃんのいじわる!」

だが、動悸が止まらない。優美は目をきつく閉じて、気持ちを落ち着けようとする。しかし、逆に脈は強くなる。

《ドキ…ドキ…ドキンッ!》

「ひゃうっ!」
「え、どうしたの、優美ちゃん!?」
「な、何でもないよ…」

一回異常に強い脈が打たれ、小さな叫び声を上げてしまった。だが、

《ドキ…ドキンッ!…ドクンッ!ドクンッ!》

「あっ…ひゃっ!きゃぁっ!」
「何かおかしいよ、優美ちゃんっ!」

脈拍は次第に全身への衝撃に変わっていく。優美が自分の小さな手のひらを見ると、

《ムギュ…ムギュ…》
「(え、何これっ!)」

その手のひらが、波を打つように膨らんだり縮んだりを繰り返している。

《ドクンッ!ドクッドクッドクドクドク…》

衝撃はその周期を縮めていく。胸に違和感を感じ、両手を、胸元に当てる優美。

《ピクッ…ピクッ…》

優美は、その胸のうえで、豆粒のように小さかった乳首が、大きくなったと思えば、
また小さくなるのを、手と同じように繰り返すのを感じた。

「優美ちゃん、大丈夫…?」
「だ…だ…だいじょう…ぶ…だ…よ…」

お尻がブルンッブルンッと揺れ始め、優美が手を当てると、その中で、激しい血流が起きているかのように、
トクトクトクトクと何かが揺れていた。

「優美ちゃん…足が…」
「え…?」

優美が下を見ると、自分の足が、手と同じように、何かに揉まれているかのように、グニュグニュと歪んでいた。

「優美ちゃん、お医者さん行ったほうが…」
《ドクンッ!!》
「きゃああっ!」
「ひっ!」

それまで全身に伝わっていたものよりも際立って大きい衝撃が加わった。英梨は、腰を抜かして、
動けなくなってしまう。優美の全身の蠢きは、先程よりも大きくなっていた。そして、それは始まった。

《ピクピクピク…ビクビク…ビクンッ》
「ひゃっ!」

数十秒前から、伸縮を高速に繰り返していた優美の乳首が、その振動を続けながら、巨大になり始めた。
それは、小学生のそれとは思えない、いや、高校生のそれをも通り越していく。

「(は、はずかしい…よ…っ)」

服にくっきりと突き立てられていた2つのテントは、日本人女性の平均を優に超える大きさまで育つと、その動きを止めた。
だが、すぐに、次の変化が優美を襲った。

《ムク…ブルンッ!》
「きゃぁっ!」

左胸が膨らみ始めたかと思うと、爆発するように前に飛び出した。

「な、なに…これっ!」
《ムク…》
「やっ…」

右胸もそれに続こうとするように、盛り上がる。

「膨らまないでっ!」

優美はそれに強く手を押し当てて抑えようとする。だが、

《ムギュ…ボンッ!》
「きゃっ!」

その手を押しのけ、さらに少し膨らんだ右乳房は、爆ぜるように大きくなり、右手をはねのけた。
その反動で、小さな体の優美は、後ろに手をついて倒れてしまった。耐えられない服に、襟から裂け目が入る。

《ズッ…ズッ…》
「今度は、なにっ…」

優美が音の方を見ると、自分の手のひらがアスファルトの上で伸縮を繰り返しつつ、
ゆっくりと、しかし確実にその面積を広げていた。

「や、やだ…」

優美は再び立ち上がって、大きくなっていく自分の手のひらを見つめた。
指は細く長くなり、自分のまだ短い腕との釣り合いが、失われていく。

《グッ…》
「うわぁっ!」

優美の目線が、急に高くなった。他の体の部分と同じように、足が伸縮を繰り返しつつ伸びはじめたのだった。
たまらず、優美は前に手をついて倒れる。その瞬間、腕の長さもグッと伸びたが、それでも、垂れる乳房の長さより、
腕のほうが短く、乳房は地面にピトッと付いていた。

「冷たい…」

足が伸びるにつれて、腰の位置が上がっていく。

《ビクッ…》
「ひゃ…」

尻に衝撃が走る。

「もう、膨らまないで…おしり大きいのはいや…」

体重を顔と乳房に任せ、両手を臀部に伸ばす優美。だが、先に伸び始めた胴体のせいで、なかなか腕が届かない。

「やだ、止めさせて、お願いっ!」

思い切って腕を後ろに伸ばすと、やっと尻に手が届いた。しかし、

《ムク…ムク…》

その手は次第に膨らむ尻に押し上げられていく。そして、

《ムククッ…ボンッ!》
「きゃぅっ!」

結局、尻の膨張は止められなかった。しかも、その膨張は続いているようだった。足の成長が終わり、優美はようやっと立つことが出来た。
そして、隣に立っている英梨を見ると、自分のキュッと締まった腰くらいの高さになっていた。

「えっ…そんなに、私の背、高くなったの…?」

だが、目線の下でブルッと揺れた乳房に、優美は注意を奪われた。

《ムギュッ…》
「ま、まさか、まだ大きくなるのっ!?」

優美は無意識のうちに、その長くなった腕で、乳房を抑えようとした。
だが、長さが足りず、多少潰さないと抱きかかえることができなかった。
だが、それでも足りないというふうに、乳房は膨張を続け、腕を包み込んでいった。そして、優美に最後の衝撃が走った。

《ドクンッ!》
「きゃっ!」

その衝撃とともに、乳房がもう一回り大きくなり、優美の腕をはねのけた。
襟から入っていた裂け目が、ビリッと大きくなり、乳房の大部分が露出されて、その変化が終わった。

「なにが、どうして…」

英梨がぼそっと呟いた。完全に放心状態だ。

「あ…あ…いやぁーっ!」

優美の方はパニックに陥り、元きた道を、その豊満な肢体を懸命に動かし、駆け戻っていった。

そして、家に戻り、玄関から、母親に助けを求める。

「お母さぁん!私…おかしくなっちゃったよぉ…」

それを聞きつけた母親が台所から駆け出てくる。そして、娘の体を見て、言った。

「あら…あなたはこんなに早く、それを体験したのね…ずいぶんと大きくなって…」
「え…どういうこと?」
「私の家系はね、ある年齢を超えると、体がそういう風に大きくなって、一生そのままになっちゃうの。
あなたにも、それが遺伝したってことね」
「いでん…?」
「とにかく、練習すれば元の体に戻れるようになるから、ね?」
「練習?」
「でも、気を抜いたらすぐにボンッ!って体が膨らんじゃうの…」
「そんなぁ…」

かくして、優美は自分の体の秘密を、トラウマになるような方法で知ったのだった。