環境呼応症候群 降水確率の子

修学旅行の夜。京都と奈良の名所を回るだけのつまらない行程の終わり。

「はぁつかれた。もうお寺は十分だー」

わたし、堀下 照(ほりした てる)は合宿所の6人部屋にいた。クラスメートたちも荷物をおろしている。

「あはは、てるちゃんお疲れ様」

友達グループの一人、古雨 鳴(ふるあめ なる)が話しかけてきた。仏閣好きの鳴は一日中ものすごく楽しそうだったな。

「なるちゃんありがと」

わたし達二人は名前が似ているし、いつも一緒にいるからクラスではセット物のように考えられてるけど、性格からなにからほとんど対照的。体格だって、わたしは不必要なほど大きなおっぱいと、あとはすらっとした自慢の体型があるけど、鳴は背は低いし、幼児体型って言われてる、まあ、今のところはね。それだからセットとしてはいいんだろうけど。

今のところは、って言ったのは、鳴がメタモルフォーゼ症候群にかかってるからなんだけどね。ある決まったもの、例えば温度とかが変わると、体が大きくなったり小さくなったりする「病気」らしいんだけど、鳴の場合は某配信料を取るTV局の、日が変わる直前の天気予報で発表された降水確率が基準なんだって。ほんと、誰かが天気予報を見て鳴の体を操作してるみたい。

それで、夕ごはんも食べ終わって、あっと言う間に夜もふけて、消灯時間も過ぎた。

「そろそろ12時になっちゃうから、寝ようか…って、あれ?」

鳴はもう、ずっと前に敷いていた布団の上でスヤスヤと寝息を立てていた。

「もう、なるったら…」
「天気予報だけ見たらテレビ消すね」

他のクラスメートに言われてわたしは気づいた。さっきケータイで見たときは、明日、雨っていう予報だったはず。最終日の自由行動ができなくなるって嘆いてたし…ってことは…いや、雨でもそんなに降水確率が高くないときもあるし…

気になってテレビに向かう。

『明日の近畿地方の降水確率です。明日は、前線の影響で…』

京都の降水確率は50%。なら、大丈夫かな?何が大丈夫かって、鳴の服のことだ。体が大きくなりすぎると、今の服ではどうやっても入らない。12時になれば変身する鳴を、わたしは見た。そういえば、鳴が変身してるのを見たことなかったっけ。お泊まり会をやったときも、変身するときだけは部屋から追い出されて、戻ってきたときには鳴は別人みたいだった。今日の鳴は0%だったけど、50%の鳴は160cmのわたしより背が高くて、おっぱいだってクラスで一番大きくなる。鳴が変わる様子を見て見たくなった。

わたしは、鳴の布団を剥がした。

「ん、んん…」

寒気を感じたのか、すこし身を縮めた。だけど起きない。白いネグリジェに包まれた、凹凸に乏しい、小さな体。小さな口をすこしだけ開け、スゥスゥと小さい息を立てる。やっぱり、何もかもが小さい。これが0%の鳴。だけど、ケータイの時計が12時になると、変わり始めるんだ。

「んっ!」

縮こまっていた鳴が急に体を開き、仰向けになった。よく見ると、ネグリジェの胸の部分からサーカスのテントのように盛り上がりができて、今は荒い鳴の息に合わせて、ムクッ、ムクッと高くなっている。それだけじゃない。すこし余裕のあったネグリジェの腕と腰の部分が引っ張られ、パツパツになっていた。

「んん!んああっ!」

鳴は寝たままだけど、大きな声を出した。そのせいで、みんなが寄ってきた。

「どうしたの!?あ…」

一人のクラスメートが、鳴が成長していく様子に気づいたみたい。腕がキュッキュッとネグリジェから生えるようにして長くなり、子供らしかった丸っこい掌も、長く細く伸び大きくなっている。さっきはテントのようだった胸の盛り上がりも、ムニュゥとした丸みを帯びて、ネグリジェを限界まで引き伸ばしていた。髪だって、枕の上でバサッと伸びている。

「なるちゃん、また大きくなってる」
「まあでも、これ以上は大きくならないよ」

鳴が大きくなる事実を知っているのは何もわたしだけじゃない。いろいろな体型でクラスに現れるのだから、むしろ知らない方がおかしいんだ。それに、今のFカップほどの鳴は50%の時の鳴だ。もうこれ以上は大きくならない。

「んはぁっ!わ、私!寝ちゃいけなかった…のにぃ!」

と思っていた。だけど、ネグリジェからギチギチと、繊維が切れていく音がし始めて、間違いに気づかされた。鳴はようやっと目を覚ました。

「どういうこと?明日の降水確率は50%なのに?」
「それは…!京都の…降水確率…でしょ!?」

鳴が精一杯言葉を紡ぐ間にも、ネグリジェが下から破れて、プルッとしたお尻が飛び出てきた。胸の方も、襟から胸肉がはみ出しているし、服の所々に空いた穴から抜け出そうとしているみたいに、おっぱいが成長を続けていた。

「そ、そうだけど…」
「私のは…!仙台のなの!」
「へっ?」

わたし達が住んでいるのは新潟だ。何もかもおかしいけど、それも気にせず、おっぱいがネグリジェを千切って出てきた。仰向けになった体の上で、鳴の頭くらいあるそれは鳴の呼吸でフルフルと揺れて、とってもエロい。周りからも息を呑む音が聞こえた。これだけでも十分な大きさなのに、さらに、お餅を焼いている時みたいにムクリムクリと膨らんでいく。身長だって、今は180cmくらいはいってるんじゃないかな。敷布団から足がはみ出しちゃってる。その足も、抱きしめればすごくモチモチしそうなふっくらとした脂肪に覆われて、肌も綺麗だ。さっきまでみたいな棒のような鳴の足とは全然違う。

「仙台の降水確率、90%だって」

誰かが言った。90%。なるほど、今もわたしの目の前で膨らみ続ける、ビーチボール大の脂肪の球に納得がいった。90%なら、とんでもない大きさになるんだ。その腰まで届く長い髪と、もう自分の体重で折れてしまうんじゃないかと思うほど括れた腰と、胸に比べると控えめだけど、わたしのより大きいお尻。

「どうしよう…お服がないよ」
「はっ!?」

どうやら、このサイズにあう服を持ってきていなかったらしい。変身が終わったらしい鳴は困り果てている。自分の鞄から服を出して、無理やり着ようとするけど、なにより胸が大き過ぎて全然入ってない。

「わたしも手伝うから」

だけど2人いた所で服のサイズが変わるわけでもない。結局、服の腕の部分を紐上にして胸を覆うように結ぶしかなかった。その上に、他の子の上着を羽織らせたけど、これもボタンが締まらない。ズボンは伸縮性の高いものを持ってきていたようで、何とか収まったけどパンパンだ。

「きついよー」

まるで海岸に遊びに来たグラビアアイドルも涙目のグラマラスなモデルのような服装になった。

「なるちゃん、すごく刺激的」
「アグレッシブだね」

明日、京都の街をこれで歩いたら、雅な空気、なんてどこにもなくなっちゃうかもしれない。そこにあるのはただ大きいおっぱいだ。動いてもないのにブルンと揺れるそれは、歩いたらどうなるんだろう。想像もつかない。

トキシフィケーション ~TS・AR編~

自分でも納得行かなかった文章はSNSサイトにアップロードせずにこちらに公開します。こちらのシリーズの没作品です。


 

今日の被験体は、ユージーン・ジョンソン、私の会社の理事だ。彼には、ある秘密があって、私の実験には最適だった。

「お、おい!ここはどこだ!お前!」
「ミスター・ジョンソン、私の実験室へようこそ」
「なぜ…私の名前を…?お…お前…!見たことあるぞ!あの陰湿な…清掃員か…!」
「その通りです、今日は私の実験にお付き合いいただこうと思って」

彼は、すでに私の実験台の上に寝かせてある。睡眠薬の効きが弱く、ジャケットしか脱がせることが出来なかった。だが、50歳にしてはほっそりして、健康的だった。

「何するつもりだ!このチューブは何だ!今すぐ放せ!さもなくばクビにしてやるぞ!」
「まあ、そうかっかなさらず。きっと気に入っていただけるはずです」
「気に入る?何を…?」
「私の毒。これは、人の体を、豊満な女性に変えるのです」
「な…?お前…まさか…!」
「さあ、始めましょうか」

スイッチをカチッと入れ、毒の注入を開始した。

「ぐ…!」

ユージーンは体を強ばらせた。時折、ビクンと体が跳ねる。

「んああああっ!」
《ムクムクムクッ!》

彼が大きな声を上げると、胸のあたりが急激に膨らんできた。ワイシャツは限界まで引っ張られるが、それでも止まらない膨張で、ボタンがプツッ!プツッ!と取れる。現れた膨らみは、筋肉の発達というよりは、脂肪の増殖のような形だった。

「んんんっ!」
《ビリッ…ビリッ…!》

下に着ているシャツが徐々に破れ始める。

「おいおい…」

そこに現れたのは、老婆のようなしわしわな乳房だった。大きさだけがものすごい。

「うがぁっ!」
《シュルシュルシュル…》

ユージーンが力を抜くと、同時に乳房が収縮を始めるが、その分の脂肪が行ったのか、腕の部分が太くなって、そこからもビリビリと音がし、袖が縫い目からとれ、さらに一部が破けた。私は、そこから、袖を完全に破り、上半身はほぼあらわになった。

「ん…ぐ…」

あらゆる所に刻まれた深いシワが、消えたり、また刻まれたりを繰り返す。だが、少し黒ずんでいた皮膚は、徐々に白さを帯びていく。

「ああああっ!」

白髪を少し含んだ黒い短髪が、バサッ!と伸び、同時に根本から金色に変わった。

「んっ…ああっ!」

声が変わっていく。年季の入った、所謂ダンディーな声がみずみずしさを取り戻す。

「あああああああ」

そしてトーンが上がり、女性のものとなる。

「ぐあああっ!」
《ビリッ!》

ズボンの左足が破けた。中からは、むっちりと脂肪が付いた、女性の足が出てきた。それはすぐに萎むが、

《ビリッ!》

続けざまに右足が破ける。またそれも萎む。

「あぅっ!」
《ビリリッ!プルンッ!》

その縦に入った裂け目が、一気に腰の方まで行ったかと思うと、プルッとした柔らかそうな塊がでてきた。同じように縮む。

そして、その変化が移っていくように、ウエストがギュッとしまり、乳房が膨らみ始める。どちらも、ハリとツヤを取り戻した綺麗な肌に包まれていた。

「んっ…くうっ…!」
《ムクッ!ムクムクッ!》

乳房はどんどん膨らむが、ウエストが元の中年の男に戻ると、収縮を開始した。そして、何もなかったかのようにシワの入った平らな胸板に戻った。

「い、いたいぃっ!」

顔の作りが変わる。顎は小さくなり、唇は大きくなる。目はキッとしたつり目に成る。

《ボンッ!》
「うぐっ!」
《バインッ!》
「がぁっ!」

乳房が、右から順に、その顔と同じくらいまでに急激に大きくなった。今度は、そのままだった。

《ムククーッ!》

下半身が、風船が膨れるように大きくなった。シワはほとんどが綺麗に消え去り、若々しくて、ムチムチとしている。これまでの3人と、変わりない。

「んっ…!」

他の部分からもシワは消え去るとともに、ゴツゴツとしていた体の表面がふっくらとした皮下脂肪に覆われ、なだらかになる。

「あああっ!」

ゴキゴキと骨格が変わり、腰は太く、足が内股に近くなる。

そして、変身が終わった。
[newpage]
今回は、注入量を100mlにしたせいか、あまり体は大きくならず、女性の特徴もそんなに大きくならなかった。

「終わりましたよ」
「…ん…なんだこれはぁ!」

ユージーンは鏡に写る自分を見て、かなり驚いている。だが、思った通り、満更でもないようだ。

「ミスター・ジョンソン、こういう服はお好きでは?」

それを見た私は、クローゼットからゴシックドレスを取り出した。

「ん…?そ、それは!」
「そうです、あなたのご趣味の、女性の衣装です」
「なぜ、それを…!」
「それは、とにかく…」

私は、リモコンで拘束具を外した。

「お召しになってみては…?」
「わ、私は…そんな…」
「さあ、自らの欲求を抑えることはありません。それに、これ以外に服がありませんし」
「くっ…」

ユージーンは、慣れた手つきで、ドレスを着ていく。

「これが…私…サイズも…ピッタリ…」
「化粧も、必要ないですよ」
「そうね…いや!…そうだな…」
「男口調を作る必要なんて無いですよ。むしろ、不自然です」
「そ、そう?じゃあ…エヘンッ…」

ユージーンは、咳払いをし、ポーズを取った。

「私、ユージーナ!ジーナって呼んでね!」

非常にかたわら痛い。だが、ここは我慢だ。

「ジーナさん、お綺麗で」
「ありがとう!あなたの、名前は?」
「ジャック・マクファンです」
「ジャック!これから、よろしくね!…はぁっ…」

ユージーンは、嬉しそうに息を吐いた。

「どうですか?気持ちいいでしょう?」
「そうだな…これまでの体では、感じられない快感だ…」
「体を小さな女の子になる薬もありますが?」
「ん…また今度…お願いするよ…ではなくて…なぜ、このことを知っていたんだ?」
「ちょっとした、レシートを拾いましてね…」

本当は、女装癖を嗅ぎつけた私が、シュレッダーに細工をしてまで手に入れたものだったが。そのレシートには、奥さんの歳にも見合わないドレスが数着記載されていたのだった。中には特注のものも。

「そ、そうか…まあ、いいんだ。こんな体験、お前抜きじゃ出来なかっただろうからな」
「お喜びいただけたようで、なにより」
「あと…これ、元に戻れるんだろうな」
「ご心配なく。一定時間毒の効果を抑える薬がありますよ」
「完璧だ。…そうだ、何か私にできることがあったら、いつでも私の番号に掛けてくれ」
「ありがとうございます」
[newpage]
ユージーンは、若い女性の姿のまま、ドレスを来て帰っていった。服代はまかなってもらったが、これからも、薬を作る資金を、提供してもらうことにしよう。

…私の計画も、もうそろそろ実行に移す時が来たようだ。しかし、あと一回、実験を行う必要があった。