老いた花の呪い(Grok生成)

第一章 老婆菊の静かな日常とざわつく心

朝の光が、薄いカーテンの隙間から静かに差し込んでいた。82センチの小さな体が布団の中で丸くなっている。菊はゆっくりとまぶたを開けた。目が覚めるたびに、隣の布団がふかふかと空いていることに、胸の奥が少し沈む。夫がこの家を去ってから、もう十年近くになる。年月は確実に彼女の体を縮め、顔に深いしわを刻み、記憶の端を少しずつぼやけさせていった。

「また、朝か……」

小さな声が、乾いた喉から漏れた。菊は布団から這い出すようにして起き上がった。足が床に着く瞬間、いつもより少し体が重く感じる。歳を取ると、骨が朝から軋むような気がした。立ち上がるのに、ベッドの枠に両手をついて、ゆっくりと体重を移動させる。82センチという身長では、床から立ち上がるだけでも一苦労だった。孫のハルトが買ってくれた小さな踏み台が、枕元に置いてある。それを足元に引き寄せ、ようやく安定した姿勢を取った。

鏡台の前に立つのも、毎日同じ動作だった。小さな踏み台をもう一つ持ってきて、その上に乗る。鏡に映る自分の顔を、菊は無表情に見つめた。白い髪は薄くなり、頭皮が透けて見える。額と目尻のしわは深く、頰はこけて、首の皮膚はたるんでいた。88歳という歳月は、容赦なく彼女を「老婆」に仕立て上げていた。夫が生きていた頃の自分を思い浮かべようとしても、若い頃の記憶はもう、はっきりとは蘇らなかった。ただ、胸の奥に残る温かい感覚だけが、時折、ふっと浮かんでくる。

「今日は……何曜日だったかしら」

菊は小さく首を傾げた。カレンダーを見ようとして、踏み台から降り、部屋の隅にある壁掛けのカレンダーに近づく。背伸びをしても、手が届かない。孫のハルトが「婆ちゃん、届かないときは呼んでくれよ」と言ってくれたのに、今日は一人で何とかしようとした。踏み台をもう一つ重ねて、無理に手を伸ばす。指先がカレンダーの端に触れた瞬間、体が少しふらついた。

「危ない……」

小さな体が傾きかけたところで、菊は慌てて踏み台から降りた。息が少し上がっている。こんな小さなことで息が切れる。夫がいた頃は、毎日を忙しく動き回っていたのに、今は一日が長く感じられる。家事をするにも、すべてが自分の体に合わない。流し台は高すぎて、洗い物をするときは踏み台が必要。冷蔵庫の上の段はほとんど使えない。洗濯物を干すのも、竿が頭より高く、孫に手伝ってもらわなければならなかった。

それでも、菊は毎日を丁寧にこなしていた。夫が残してくれたこの家を、汚したくなかった。息子夫婦が早くに亡くなり、孫のハルトだけが残った今、この家はハルトと二人で守っていくものだった。

台所に移動する。ガスコンロの前で、味噌汁の準備をする。小さな鍋に水を入れ、火をつける。味噌を溶くのも、指が少し震える。歳を取ると、細かい作業が難しくなった。味噌汁が沸騰するのを待ちながら、菊は窓の外を見た。小さな庭に、季節の花が少し咲いている。ハルトが時々水やりを手伝ってくれるが、今日はまだ起きていないようだ。

「ハルトは……大学、だったかしら」

菊は小さく呟いた。孫のハルトは22歳。地元の大学に通いながら、アルバイトもしている。忙しいはずなのに、よく菊の面倒を見てくれた。朝、大学に行く前に「おばあちゃん、今日も一人で大丈夫?」と声をかけてくれる。その声が、菊の心を少しだけ温かくした。

味噌汁が出来上がる。ご飯は炊飯器で昨日炊いたものを温め直した。朝食はいつも同じ。ご飯に味噌汁、ぬか漬けを少し。テーブルは低めのものを使っている。ハルトが「婆ちゃんが座りやすいように」と選んでくれたものだ。菊は小さな椅子に腰を下ろし、箸を取った。

一口食べると、味が薄く感じる。歳を取ると、味覚も鈍くなる。夫が生きていた頃は、もっと濃い味付けを好んでいたのに。今は、薄味でも十分だった。ただ、食べるたびに、夫が隣に座っていた頃の記憶が、ぼんやりと蘇る。夫の大きな手が、菊の小さな肩に触れていたこと。朝、夫が「今日も元気でな」と笑っていたこと。

「もう、いい加減に忘れなさいよ……」

菊は自分に言い聞かせるように小さく呟いた。夫の死を悼む気持ちは、もう何年もかけて少しずつ薄れてきた。でも、完全に消えることはない。ただ、毎日を生きるために、忘れるふりをしているだけだった。

食事が終わると、食器を洗う。流し台の前で踏み台に乗り、背伸びをして洗剤を手に取る。指先が少し冷たい。洗い終わった食器を、目の高さの棚にしまうのも一苦労だった。小さな体では、すべての動作に時間がかかる。昔なら、朝の家事は一時間もかからなかったのに、今は二時間近くかかってしまう。

洗い物を終えると、菊はリビングの掃除を始めた。ほうきを持って、床を掃く。小さな体でほうきを扱うと、背中が少し痛くなる。埃を掃き集めるのも、腰を曲げなければならない。ハルトが「婆ちゃん、そんな無理しなくていいよ」と言ってくれるのに、菊は「動かないと、体が固くなってしまうから」と答える。動くことが、彼女にとっての小さな誇りだった。

掃除の途中、菊はふと立ち止まった。壁にかけられた古い写真が目に入った。夫と若い頃の自分。菊は当時、22歳くらいだった。写真の中の自分は、笑顔が明るく、髪も黒くて艶やかだった。夫の隣で、幸せそうに寄り添っている。菊は小さな体を伸ばして、写真に触れた。指先がガラスの冷たさを感じる。

「若い頃の私……」

呟いた声が、部屋に小さく響いた。写真の中の自分は、もう遠い過去の人だった。今の菊は、その頃の自分をほとんど思い出せない。ただ、夫の温かさだけが、胸の奥に残っている。

写真から目を離し、菊は再び掃除を続けた。埃を掃き、床を拭く。体が少し疲れてきた頃、玄関のドアが開く音がした。

「おばあちゃん、ただいま」

ハルトの声だった。菊は掃除道具を置いて、リビングに戻った。小さな足で急ぐと、少し息が上がる。ハルトは靴を脱ぎながら、菊を見てにこっと笑った。

「おはよう、婆ちゃん。今日も元気?」

「うん、元気だよ。ハルトこそ、大学は大丈夫か?」

菊は優しく微笑んだ。ハルトは22歳の青年で、身長は170センチ近くある。菊から見ると、ずっと大きな存在だった。ハルトが菊の頭を軽く撫でるように触れると、菊は少し照れくさそうに体を縮めた。

「大丈夫だよ。今日は午後からゼミがあるんだけど、友達のノゾムが遊びに来るって言ってた。婆ちゃん、邪魔じゃないかな?」

「ノゾム……さん、だったね」

菊は小さく頷いた。ハルトの友達、ノゾム。23歳。時々ハルトと一緒に家に来て、菊にも優しく話しかけてくれる青年だった。菊はノゾムのことを「ハルトの友達」としてしか認識していなかったはずなのに、なぜかその名前を聞くと、胸の奥が少しざわつくのを感じた。

「邪魔じゃないよ。いつものように、お茶でも淹れてあげるから」

菊はそう言いながら、台所に向かった。自分の声が、少しだけ高く聞こえた気がした。いや、そんなはずはない。歳を取った声は、いつも掠れている。菊は自分を戒めるように、ゆっくりと歩いた。

台所で、急須にお茶を用意する。緑茶の葉を少し多めに摘む。ノゾムが来る日は、つい丁寧に淹れてしまう自分がいた。ハルトは「婆ちゃん、ノゾムに気を使わなくていいよ」と言ってくれるが、菊は「友達が来るんだから、ちゃんとしなきゃ」と返す。

お茶を淹れていると、ハルトがリビングで本を広げている声が聞こえた。菊は急須を持ってリビングに戻る。低いテーブルに急須と湯飲み茶碗を置く。自分の手が少し震えているような気がした。歳のせいだろう、と菊は思う。

「婆ちゃん、ありがとう。ノゾム、もうすぐ来ると思う」

ハルトがそう言ったとき、玄関のチャイムが鳴った。菊の胸が、一瞬、大きく鳴った。なぜだろう。ノゾムが来るのは、今日が初めてではない。ハルトの友達として、何度か会っているはずなのに、今日は胸のざわつきがいつもより強い。

菊は小さな体で玄関に向かった。ドアを開けると、ノゾムが立っていた。23歳の青年は、175センチの長身で、菊から見上げると本当に大きかった。優しい目元と、穏やかな笑顔。菊は思わず、息を呑んだ。

「おばあちゃん、お邪魔します。ハルト、いる?」

ノゾムの声が、優しく菊に降りかかった。菊は小さく頷き、ドアを大きく開けた。

「はい、はい。上がってください。ハルトはリビングにいます」

菊はそう言いながら、ノゾムが靴を脱ぐのを見ていた。ノゾムの大きな手が、靴を丁寧に揃える。菊は自分の小さな手を見下ろした。しわだらけで、指が曲がり始めている。ノゾムの若々しい手と、自分の手を比べて、菊は少し寂しくなった。

ノゾムが上がってくると、菊は急いで台所に戻り、湯飲み茶碗をもう一つ用意した。ハルトとノゾムがリビングで話している声が聞こえる。菊は急須を持ってリビングに入った。

「お茶、淹れました。どうぞ」

菊はテーブルに急須を置き、ノゾムに湯飲み茶碗を差し出した。ノゾムは菊を見て、優しく微笑んだ。

「ありがとうございます、おばあちゃん。いつも気を使ってくれて」

その言葉に、菊の胸がまたざわついた。ノゾムは菊を「おばあちゃん」と呼ぶ。普通の敬語で接してくれる。菊はそれが嬉しいような、寂しいような、複雑な気持ちになった。自分はもう、若い女性として見られる年齢ではない。それなのに、ノゾムの優しい視線が、なぜか菊の心を揺らす。

菊は小さな椅子に座り、ハルトとノゾムの会話を聞いていた。大学のこと、アルバイトのこと、将来の話。ノゾムは時折、菊にも話しかけてくれた。

「おばあちゃんは、どんな若い頃だったんですか?」

ノゾムがふと聞いた。菊は少し驚いて、ノゾムを見上げた。ノゾムの目が優しい。菊は自分の若い頃の写真を思い浮かべた。22歳の自分。夫と並んで笑っていた頃。

「若い頃、ですか……もう、遠い昔ですよ」

菊は小さく笑った。自分の声が、掠れている。ノゾムは「そんなことないですよ、おばあちゃんは今でも綺麗ですよ」と言ってくれた。菊は慌てて首を振った。

「もう、年寄りですよ。こんな体で……」

菊は自分の小さな体を、ちょっとだけ見せた。ノゾムは優しく微笑んだまま、「おばあちゃんの体は、小さいけど、温かい気持ちが詰まってると思います」と言った。菊の胸が、熱くなった。なぜだろう。こんな歳で、こんな言葉に動揺するなんて。菊は自分を恥じた。

「ありがとうございます。でも、私はもう、昔の自分を忘れかけてるんですよ」

菊はそう言って、話題をそらした。ハルトが「婆ちゃん、昔の話、聞かせてよ」と言うと、菊は昔のことを少しだけ話した。夫との出会い、結婚した頃の話。話しているうちに、ノゾムの視線が優しく自分を見つめていることに気づいた。菊は視線を逸らした。自分の顔が、少し熱い気がした。

会話は続いた。ハルトとノゾムが大学のことや将来の夢を話すのを、菊は静かに聞いていた。ノゾムの声が、菊の耳に心地よかった。なぜか、夫の声を少し思い出すような感覚。いや、違う。夫の声とは違う。若々しくて、優しくて、未来を語る声。菊は自分の気持ちを抑えようとした。

「こんな歳で、変なことを考えて……」

菊は小さく呟いた。誰にも聞こえないように。ハルトとノゾムの会話に紛れて、自分の胸のざわつきを隠した。ノゾムが時折、菊に「おばあちゃんも、もっと外に出た方がいいですよ」と勧めてくれる。菊は「もう、歳だから」と笑って答える。でも、心の奥では、ノゾムと一緒に外を歩いてみたいという、馬鹿げた願いが浮かんでいた。

やがて、ハルトが「ノゾム、ゼミの時間だから行こう」と立ち上がった。ノゾムも菊にお辞儀をした。

「おばあちゃん、今日はありがとうございました。また来ますね」

菊は小さく頷いた。「また来てください」と言いながら、玄関まで見送った。ノゾムの大きな背中が、玄関を出ていく。菊はドアを閉めたあと、しばらくその場に立っていた。胸のざわつきが、まだ収まらない。

リビングに戻ると、ハルトが「婆ちゃん、ノゾムのこと、どう思う?」と聞いた。菊は慌てて「いい青年だね」と答えた。ハルトは「ノゾム、婆ちゃんのことを気にかけてくれてるみたいだよ」と言った。菊は「そんなこと……」と首を振った。でも、心の奥では、ノゾムが菊のことを少しでも気にかけてくれていると思うと、嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになった。

ハルトが大学に出かけたあと、菊は一人になった。家の中が、急に静かになった。菊は窓辺に座り、庭を見た。花が少し揺れている。風が吹いている。菊は自分の小さな手を、膝の上に置いた。しわだらけの手。ノゾムの手と比べて、なんて違うのだろう。

「もう、いい加減に……」

菊は自分に言い聞かせた。88歳の老婆が、23歳の青年に心を動かされるなんて、馬鹿げている。夫を亡くして、ただ寂しいだけだ。ノゾムはハルトの友達で、ただ優しいだけだ。菊はそう思い込もうとした。でも、胸のざわつきは、なかなか消えなかった。

菊は立ち上がり、台所に向かった。もう一度、食器を洗う。流し台の前で踏み台に乗り、背伸びをして蛇口をひねる。水が少し冷たい。菊は食器を洗いながら、ノゾムの笑顔を思い浮かべていた。すぐに「いけない」と自分を叱った。

洗い物を終えると、菊は庭に出た。小さな体で、植物に水をやる。ジョウロが重くて、両手で抱えるようにして運ぶ。花に水をかけながら、菊は自分の人生を振り返った。夫と過ごした日々。息子を失った悲しみ。孫のハルトを育てる喜び。そして今、ノゾムという青年が、なぜか菊の心を揺らしている。

「もう、年寄りなんだから……」

菊は小さく呟いた。花に水をかけながら、目が少し潤んだ。歳を取ると、涙が出やすくなった。菊は袖で目を拭いた。ノゾムへの想いは、絶対に口に出せない。ハルトに知られたら、どんな顔をされるか。自分自身が、恥ずかしい。

水やりを終えると、菊はベンチに座った。小さな体が、ベンチの端に収まっている。風が吹いて、菊の白い髪を少し揺らした。菊は目を閉じた。ノゾムの優しい声が、耳に残っている。菊はそれを追い払おうとした。でも、追い払えない。

「変だわ、私……」

菊は小さく笑った。88歳の老婆が、恋をするなんて。ありえない。夫を亡くして、もう十分に生きてきた。ノゾムのような青年と、関わるべきではない。菊はそう自分に言い聞かせた。

でも、心の奥のざわつきは、消えなかった。菊はベンチに座ったまま、しばらく風に身を任せた。体が少し、暖かく感じる。気のせいだろう。歳のせいだろう。菊はそう思った。

やがて、菊は立ち上がった。小さな体で、家の中に戻る。リビングのテーブルに、ノゾムが使った湯飲み茶碗が残っていた。菊はそれを手に取った。まだ少し温かい。菊はそれを洗いながら、ノゾムの笑顔をもう一度思い浮かべた。

「もう、よしなさい」

菊は自分に厳しく言った。茶碗を棚にしまう。自分の手が、少し震えていた。菊はそれを無視して、次の家事に取りかかった。今日も、変わらない日常が続く。ノゾムが来る日は、時々ある。でも、菊は自分の気持ちを、絶対に表に出さない。

菊は小さな体で、部屋を掃除し続けた。埃を掃き、床を拭く。体が疲れてきた頃、菊は鏡の前に立った。自分のしわだらけの顔を見つめる。88歳の老婆。ノゾムのような青年が、なぜ自分に優しくしてくれるのか。菊はわからなかった。ただ、優しさが、胸をざわつかせるだけだった。

菊は鏡から目を離し、窓の外を見た。庭の花が、風に揺れている。菊は小さく息を吐いた。今日も、何事もなく過ぎていく。ノゾムへの想いは、心の奥にしまっておく。88歳の老婆が、恋をするなんて、夢物語だ。

でも、菊の胸のざわつきは、今日も消えずに残っていた。菊はそれを押し殺しながら、夕方の準備を始めた。ハルトが帰ってくる時間まで、菊は一人で家を守る。静かな日常の中で、菊は自分の心のざわつきと、静かに向き合っていた。


第二章 最初の若返り

夕暮れの家は、静まり返っていた。ハルトが大学に出てから、もう二時間近くが過ぎていた。ノゾムも一緒に帰っていった。菊はリビングの低い椅子に座ったまま、動く気力も失っていた。小さな体が、椅子に沈み込むように見える。82センチの身長では、椅子に座っていても足が床に届かない。足をぶらぶらさせながら、菊は今日のことを思い返していた。

ノゾムが来たときの優しい笑顔。ハルトと話しているときの穏やかな声。菊に「おばあちゃん」と呼びかけながらも、どこか敬意を込めた目線。菊はそれを、ただの若い人の優しさだと自分に言い聞かせようとした。でも、胸の奥がざわついて、なかなか収まらない。夫を亡くしてから何年も、こんな風に誰かの優しさに心を揺らされたことはなかった。ノゾムはハルトの友達で、23歳の青年。菊は88歳の老婆だ。それなのに、ノゾムの声が耳に残り、笑顔が目に焼きついて離れない。

菊は小さな手で、自分の膝を撫でた。しわだらけの皮膚、曲がり始めた指。ノゾムの手は大きくて、若々しくて、力強かった。あの大きな手が、もし自分の肩に触れたら……そんな考えが浮かんだ瞬間、菊は慌てて首を振った。

「馬鹿な……こんな歳で」

声が掠れて、部屋に小さく響いた。菊は立ち上がろうとした。小さな踏み台を足元に引き寄せ、ようやく床に足を着ける。台所に向かうつもりだったが、足が重い。今日は何もしたくない。ただ、ノゾムのことを考えて、ぼんやりとしていたい。いや、考えてはいけない。考えてしまうと、寂しさが募る。

菊は再び椅子に座った。夕日の光が窓から差し込み、部屋をオレンジ色に染めている。庭の花が風に揺れているのが見える。夫が生きていた頃、この時間は一緒に庭を眺めていた。夫の大きな体が隣にいて、菊の小さな肩を抱いていた。夫の死後、その温かさはもう二度と戻ってこない。ハルトがいる今も、根本の寂しさは消えなかった。そして今日、ノゾムが来たことで、その寂しさが新しい形で疼き始めた。

菊は古い写真立てを手に取った。夫と若い頃の自分。22歳の菊は笑顔が明るく、髪も黒くて艶やかだった。夫の隣で寄り添う姿が、幸せそうに見える。菊は指で自分の今の顔を触れた。しわ、たるみ、薄くなった白髪。写真の中の自分とは別人だ。ノゾムのような青年が、もしこの写真の中の自分を見たら……どう思うだろう。菊はそんなことを考えてしまい、すぐに「いけない」と自分を叱った。

でも、寂寥感は抑えきれなかった。家は静かで、風の音だけが聞こえる。ハルトもノゾムも、もうここにはいない。菊は一人で、88年の人生の重さを抱えていた。夫を失った悲しみ、息子を失った痛み、ただ生き延びてきた日々。そして今、ノゾムの優しさが、まるで新しい光のように、菊の心の暗がりを照らしている気がした。でもその光は、菊には届かない。届かないからこそ、余計に寂しい。

菊は写真を置いた。胸の奥が熱い。ノゾムの笑顔を思い出すたびに、胸がきゅっと締めつけられる。自分はもう、恋をする歳ではない。孫の友達に心を動かされるなんて、恥ずかしい。ハルトに知られたら、どんな顔をされるか。菊はそう思いながらも、ノゾムの声をもう一度思い出してしまった。

「優しい青年だ……」

小さく呟いたその瞬間、菊の胸の奥で、心臓が大きく脈を打った。

ドクン。

激しい鼓動が、全身を震わせた。菊は息を呑んだ。心臓の音が、耳にまで響く。普段の弱々しい鼓動とは違う。力強く、熱い血が体中に駆け巡るような感覚。菊は胸に手を当てた。心臓が、まるで何かを訴えるように、大きく跳ねている。

「なに……これ……」

声が震えた。体が熱い。腕に、脚に、胸に、じんわりとした熱が広がっていく。菊は立ち上がろうとしたが、足がふらついた。小さな体が、椅子から滑り落ちそうになる。菊は慌てて踏み台に手をついた。心臓の鼓動が止まらない。ドクン、ドクン、と激しく鳴り続けている。

そして、左腕に、強い疼きが走った。

菊は思わず右の手で左腕を押さえた。短い、しわだらけの左腕が、熱い。まるで何かが内側から押し上げてくるような感覚。菊は鏡台の前まで、ふらふらしながら移動した。踏み台を二つ重ねて、ようやく鏡が見える高さになる。鏡に映る自分の顔は、いつもの老婆の顔だった。でも、左腕が熱い。菊は左腕を上げてみた。短い腕を上に伸ばすと、突然、激痛が走った。

「っ……!」

菊は声を上げた。左腕が、引き伸ばされる。骨が軋む音が、部屋に響いた。ギリギリ……と、乾いた音。肉が引き伸ばされる湿った音も混じる。左腕が、みるみる長くなっていく。しわだらけの皮膚が、引き延ばされて滑らかになっていく。骨が伸び、筋肉が付き、若い女性の細くしなやかな腕に変わっていく。痛みが激しい。菊は歯を食いしばった。左腕が、元の二倍の長さになった瞬間、痛みが少し和らいだ。でも、右腕が今度は熱くなった。

「右も……やめて……」

菊は右腕を上げた。同じように、激痛とともに右腕が引き伸ばされる。骨の軋む音が連続する。ギリギリ、ギリギリ……と、部屋中に響く。肉が動く湿った音。皮膚が伸びる音。右腕も、二倍の長さになった。菊は両腕を下ろしてみた。短かった腕が、今は普通の若い女性の長さになっている。体とのバランスが、完全に崩れていた。短い胴体に、長すぎる腕。菊は鏡に映る自分の姿を見て、息を呑んだ。

「これは……私の腕……?」

声が震えている。痛みはまだ残っている。でも、腕の感覚が違う。力が入る。指が細くて長い。菊は自分の新しい左腕を、右手で触ってみた。滑らかな皮膚。温かい。歳を取って冷たくなっていた自分の腕とは、別物だった。

次に、左脚が熱くなった。菊はバランスを崩しながら、左脚を伸ばそうとした。激痛が脚全体を貫いた。骨が伸びる。ギリギリ……という音が、脚の骨から響く。肉が引き伸ばされ、太ももからふくらはぎまでが長くなっていく。左脚が、元の倍以上の長さになった。菊は右脚も同じように熱くなるのを感じた。右脚も、激痛とともに伸びていく。骨の軋む音と肉の動く音が、部屋を埋め尽くす。

「痛い……痛い……!」

菊は声を上げて、床に崩れ落ちた。長くなった脚で、バランスが取れない。胴体はまだ小さいままなのに、脚だけが長すぎる。菊は這うようにして、鏡の前に戻ろうとした。踏み台を蹴飛ばしてしまった。新しい長い脚で、床を蹴る。痛みがまだ続いている。脚の骨が伸びた後の、余韻のような疼き。

菊はようやく鏡の前に這い着いた。長くなった脚で、踏み台なしでも鏡が見える高さになっていた。背丈が、これから伸びる予感がした。菊は息を荒げながら、鏡を見つめた。顔はまだ老婆のまま。白髪もまだ。腕と脚だけが、若い女性のものになっている。体とのアンバランスが、グロテスクに見えた。

「何が……起こってるの……」

菊は呟いた。声が掠れている。心臓の鼓動はまだ激しい。胸の奥が熱い。ノゾムのことを思い、寂しさが募ったあの瞬間から、体がおかしくなった。菊はノゾムの優しい笑顔を、もう一度思い浮かべてしまった。すると、背骨に激痛が走った。

「っあ……!」

背丈が、伸び始めた。骨が一つずつ、引き伸ばされるような感覚。脊椎が軋む音が、背中から響く。菊の小さな体が、縦に引き延ばされていく。背丈が、90センチ、100センチ、120センチ……と増えていく。痛みが激しい。菊は床に這いつくばったまま、体を震わせた。肉が動く音。骨が伸びる音。部屋中に、菊の苦痛の音が満ちていた。

背丈が150センチ近くまで伸びたとき、菊の声が変化し始めた。喉の奥が熱い。菊は何か言おうとしたが、声が途中で変わった。

「痛い……うっ……あ……」

老いた、掠れたうめき声が、徐々に妖艶な喘ぎ声に変わっていく。声帯が若返り、響きが豊かになる。菊は自分の声の変化に驚いて、口を押さえた。でも、声はもう止まらない。背丈が伸びる痛みと混じって、喉から妖艶な声が漏れ出す。

顔が熱くなった。菊は鏡を必死に見つめた。額のしわが、ゆっくりと消えていく。目尻のしわも浅くなる。頰のたるみが、引き上がっていく。骨が動く小さな音が、顔の中から聞こえる。皮膚が引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まっていく。黒い色が、徐々に広がっていく。髪が伸びる。白かった髪が、黒く艶やかに長くなっていく。菊は自分の髪を、手で触れた。黒くて、柔らかい。長い髪が、肩まで届くようになった。

「これは……私……?」

声が、完全に若い女性のものになっていた。妖艶で、息が混じったような声。菊は自分の顔を鏡で確認した。しわのない、滑らかな若い女性の顔。目が大きく、唇がふっくらしている。88歳の老婆の顔は、どこにもない。22歳くらいの、妖艶な顔がそこにあった。

最後に、肉が付き始めた。菊の胴体が、熱くなった。ムチムチと、肉が体内から溢れ出すような感覚。菊は自分の腹を押さえた。肉が動く湿った音がする。体全体が、ふくらんでいく。胸の部分が、特に熱い。菊は息を呑んだ。

左の胸が、突然、爆発的に膨らんだ。痛みと快感が混じったような激しい感覚。乳房が、急激に大きくなっていく。皮膚が引き伸ばされる音。肉が充填される音。菊は自分の左胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、大きく、重く、ふくらんでいく。服が、胸の部分で裂け始めた。古い、ゆるい服が、急激に大きくなる胸に耐えられなくなっている。

「やめて……こんな……」

菊の声が、喘ぎに変わっていた。左の胸が、爆乳のように大きくなったあと、今度は右の胸が熱くなった。右の胸が、左を追い越すように、爆発的に膨らんでいく。左の胸よりさらに大きくなる。菊は体をよじった。痛みと、未知の感覚が体を駆け巡る。右の胸が、左の胸を追い越したあと、今度は左の胸が、再び膨らみ始めた。右に追いつき、合わせるように、両方の胸が、巨大でムチムチとした爆乳になっていく。

服が、完全に裂けた。胸の部分が大きく開き、谷間が強調される。白い肌が、露わになった。菊は自分の新しい胸を見て、息を呑んだ。大きくて、重くて、形の良い若い女性の胸。触れると、柔らかくて、熱い。菊は恥ずかしさで顔を赤らめた。でも、体はもう止まらない。

尻と太ももも、同じように膨らんでいった。左の尻がふくらみ、右の尻が追い越し、交互に肉が付いていく。太ももも、ムチムチと厚みを増していく。脚の長さと相まって、グラマラスな下半身になっていく。菊の体は、今や170センチ近くの、妖艶でムチムチとした若い女性の体になっていた。

変身が終わった瞬間、菊は床に崩れ落ちた。息が荒い。体中が汗で濡れている。新しい長い腕で、体を支える。鏡に映る自分の姿を見て、菊は言葉を失った。黒い長い髪、滑らかな若い顔、巨大な胸、ムチムチとした腰と脚。服は裂けて、ほとんどボロ布のようになっている。谷間が深く、胸の重さが、菊の新しい体にのしかかっている。

「これは……わし……?」

菊は小さく呟いた。自分の声が、妖艶で、息が混じっている。体が、若さで満ちている。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいた。菊は自分の新しい腕を、触ってみた。滑らかで、力がある。胸を、そっと触れた。柔らかくて、重い。恥ずかしさが込み上げてきた。でも、同時に、ノゾムのことを思い浮かべてしまった。この体で、ノゾムに会ったら……どうなるだろう。菊は慌ててその考えを追い払った。

菊は立ち上がった。新しい長い脚で、安定して立っていられる。鏡の前に立ち、自分の体をもう一度確認した。88歳の老婆だった自分が、22歳くらいの、妖艶な女性になっている。名前を、菊は小さく呟いた。

「クリス……」

変身後の自分に、そう名付ける。なぜか、自然とその名前が口から出た。菊はクリスとして、鏡の中の自分を見つめた。体はまだ少し疼いている。骨が伸びた余韻、肉が動いた余韻。服はもう着られない。菊は裂けた服を、そっと脱ぎ捨てた。裸の体が、鏡に映る。巨大な胸、細い腰、ムチムチとした尻と脚。菊は自分の体を、両手で触れた。新しい感覚が、指先から伝わってくる。

寂寥感は、まだ残っている。でも、その寂しさの中に、新しい何かが混じっていた。ノゾムの優しさが、菊の心に残っている。クリスになった今、その想いは、もっと強く、熱く感じられた。菊は鏡から目を離し、部屋を見回した。長くなった腕で、裂けた服を拾い上げる。新しい体で、動くのが、少し不思議だった。

クリスは、ゆっくりと息を整えた。変身の痛みと音が、まだ耳に残っている。骨の軋む音、肉の動く音。激しい痛み。すべてが、ノゾムのことを思ったあの瞬間から始まった。クリスは、自分の新しい体を抱きしめるように腕を回した。恥ずかしさと、奇妙な喜びが、混じり合っていた。

この体で、明日をどう生きるか。クリスはまだわからなかった。でも、ノゾムの笑顔が、心の奥で、優しく光っていた。


第三章 出会いと、消えゆく寂寥

クリスは、長い黒髪を指で梳きながら、鏡の前に立っていた。変身が終わってから、まだ一時間も経っていない。部屋の中は、骨の軋む音と肉の動く音がまだ響いているような気がした。170センチの長身。左から右へと順に伸びた腕は、滑らかで力強い。脚も長く、ムチムチとした太ももと尻。胸は重く、服の裂け目から白い谷間が覗いている。クリスは自分の新しい体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。88歳の老婆だった自分が、22歳の妖艶な女性になっている。

服はもう着られない。古い服は胸の部分で完全に裂け、ほとんどボロ布になっていた。クリスはハルトの部屋から、大きめのTシャツとジャージのパンツを借りて着た。Tシャツは胸を締めつけ、谷間が強調される。パンツも太ももに張り付く。クリスは鏡に映る自分を見て、恥ずかしさで顔を赤らめた。でも、同時に、体の活力が心地よかった。痛みは残っているが、激しい変身のあと、奇妙な身軽さが体を包んでいる。

「外に出てみたい……」

クリスは小さく呟いた。ノゾムのことを思うと、胸がざわつく。今日、ノゾムが家に来てくれた。優しい笑顔。優しい声。菊として接していたときの温かさが、まだ心に残っている。寂寥感は少し薄れていた。でも、完全に消えたわけではない。この新しい体で、外を歩いてみたい。ノゾムに会いたいわけではない。ただ、息が詰まる家を出て、風に当たってみたいだけだ。クリスはそう自分に言い聞かせながら、玄関に向かった。

夜の町は、静かだった。街灯がオレンジ色の光を落としている。クリスは長い脚で、ゆっくりと歩いた。新しい体で歩くのは、少し不思議だった。地面が近く感じる。風が、長い黒髪を揺らす。Tシャツの胸の部分が、歩くたびに揺れる。クリスは時々、自分の胸に視線を落とした。重い。大きい。ノゾムがもしこの姿を見たら……どう思うだろう。クリスは慌ててその考えを追い払った。ノゾムはハルトの友達だ。自分はクリスという、初対面の女性だ。それ以上でも以下でもない。

でも、心の奥では、ノゾムの優しさが、寂寥感を少しずつ溶かしている気がした。菊として生きてきた日々。夫を失い、息子を失い、ただ小さく縮んで生きてきた日々。ノゾムが「また来ますね」と言ってくれたとき、菊の胸は熱くなった。この新しい体になっても、その熱は消えていない。クリスは歩きながら、ノゾムの笑顔を思い浮かべていた。寂寥感が、徐々に薄れていく。心が、少しずつ温かくなる。

そんなときだった。

クリスが角を曲がった瞬間、向かいから歩いてくる人影と、肩がぶつかった。バランスを崩したクリスは、転んでしまった。長い脚が絡まり、地面に倒れ込む。Tシャツがめくれ上がり、胸の谷間が大きく露わになった。クリスは慌てて服を直そうとしたが、間に合わなかった。

「大丈夫ですか!?」

低くて優しい声が、頭上から降りかかった。クリスは顔を上げた。そこに立っていたのは、ノゾムだった。175センチの長身。優しい目元。今日、家で見たのと同じ笑顔。クリスは息を呑んだ。ノゾムは、クリスを初めて見るような目で、こちらを見下ろしていた。

「す、すみません……転んでしまって……」

クリスは小さな声で言った。自分の声が、妖艶で息が混じっている。ノゾムは慌てて手を差し伸べてきた。大きな手が、クリスの腕を優しく掴む。クリスはノゾムの手に触れられて、胸がきゅっと鳴った。ノゾムはクリスを起こし上げた。

「怪我はありませんか? 急に曲がってきて、びっくりしました」

ノゾムの声が優しい。クリスは立ち上がって、服を直した。Tシャツの胸の部分が、大きく開いている。谷間が強調されている。ノゾムの視線が、一瞬、クリスの胸に落ちた。すぐに逸らされた。でも、クリスは気づいた。ノゾムの目が、時々、自分の胸や太ももに吸い寄せられる。嫌な気持ちはしない。むしろ、複雑な気持ちが込み上げてきた。恥ずかしい。嬉しいような。罪悪感のような。菊としてノゾムに接していたときの想いが、この体になって、さらに熱を帯びている。

「大丈夫です……ありがとうございます」

クリスは小さくお辞儀をした。ノゾムは「本当に大丈夫ですか? 一緒に歩きますよ」と言い、並んで歩き始めた。クリスはノゾムと並んで歩く。新しい長い脚で、ノゾムと同じ目線の高さになった。ノゾムはクリスに、時々視線を向けた。優しい。気遣っている。クリスはノゾムの横顔を見て、胸のざわつきが強くなるのを感じた。

「私はノゾムと言います。あなたは……?」

ノゾムが聞いた。クリスは少し戸惑った。ノゾムは自分を「クリス」として知らない。初対面の人として話すしかない。クリスは小さく微笑んだ。

「クリス……です」

「クリスさん、ですか。素敵な名前ですね」

ノゾムの声が、優しく響いた。クリスは心が温かくなるのを感じた。ノゾムはクリスの転んだ原因を気にかけ、ゆっくりと歩いてくれた。二人で夜の町を歩く。ノゾムは大学のことや、ハルトのことを少し話した。クリスは聞き役に回りながら、ノゾムの優しさに心を溶かされていった。寂寥感が、徐々に消えていく。ノゾムが「一人で歩くのは危ないですよ」と気遣ってくれるたびに、クリスの胸が熱くなった。

会話が続く。ノゾムは時々、クリスの顔を見て微笑んだ。その視線が、ふと胸に落ちる。Tシャツの谷間が、街灯の下で白く光っている。ノゾムの目が、一瞬、胸の形を捉える。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。でも、同時に、菊としての罪悪感が疼く。ノゾムはハルトの友達だ。この体は、呪いで作られたものだ。クリスは視線を逸らした。

「ノゾムさん……優しいんですね」

クリスは小さく言った。ノゾムは「そんなことないですよ」と笑った。でも、その笑顔が、クリスの心をさらに温めた。寂寥感が、完全に消え去っていく。夫を失った悲しみ。歳を取って縮んでしまった日々。すべてが、ノゾムの優しい声で溶けていく。クリスはノゾムを見て、初めて「この人と話せてよかった」と思った。

その瞬間だった。

左胸が、一気にしぼんだ。

激しい疼きとともに、左の胸が急激に萎んでいく。ムチムチと膨らんでいた肉が、しぼんでいく。皮膚がたるみ、胸の形が崩れていく。クリスは息を呑んだ。左胸が、元の小さなサイズに戻っていく。服の中で、胸の重さが急に軽くなった。クリスは慌てて自分の胸を押さえた。でも、間に合わない。左胸が、完全にしぼんでしまった。

「っ……!」

クリスは声を上げそうになった。ノゾムは気づいていない。まだ話している。クリスは「元に戻って……」と、心の中で強く念じた。すると、左胸が、一気に元のサイズまで膨らみ返した。爆発的に肉が充填される感覚。皮膚が引き伸ばされる音が、服の下で響いた。左胸が、元の巨大でムチムチとした爆乳に戻った。クリスは息を荒げた。ノゾムはまだ気づいていない。

でも、今度は右胸が熱くなった。右胸が、ゆっくりと萎み始めている。クリスは慌てて「すみません、ちょっと……」と言って、その場を離れようとした。ノゾムが「大丈夫ですか?」と声をかける。クリスは「トイレに行きたいんです」と言い、身障者トイレの方に急いで歩き始めた。右胸が、萎んでいく。バランスが崩れそうになる。クリスは走り出した。

走っている最中、右胸が爆発的に元に戻った。重い肉が、一気に胸に戻ってくる。クリスはバランスを崩しかけた。長い脚がふらつき、転びそうになる。右胸の重さで、体が傾く。クリスは必死に走り、身障者トイレに駆け込んだ。ドアを閉め、鍵をかける。息が荒い。

トイレの中で、クリスは鏡に映る自分を見た。左胸は元に戻っている。でも、右胸が少し萎んでいる。クリスは「元に戻りたくない……」と、心の中で強く思った。でも、体は逆らった。

左腕が、突然、縮み始めた。長い、滑らかな左腕が、短く、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは左腕を抱きしめた。左腕が、元の短い老婆の腕に戻った。すぐに、左腕が再び伸びた。クリスと菊の状態を行き来する。右腕も同じように、縮んだり伸びたりを繰り返す。

脚も、交互に変化した。左脚が縮み、右脚が伸び、バランスが崩れる。背丈が、170センチから縮み、150センチ、130センチ……と変動する。クリスはトイレの壁に手をついて、体を支えた。背丈が縮むたびに、骨の軋む音が響く。肉が動く音。声が、妖艶な喘ぎ声から老いたうめき声に変わり、また戻る。

顔が、熱くなった。しわが現れたり消えたりする。白髪が混じったり、黒い髪に戻ったりする。クリスは鏡を見て、自分の顔が交互に変化するのを見た。痛みが激しい。体の一部が菊に戻り、またクリスに戻る。胸も、左が萎んだり膨らんだり、右が同じように交互に変化する。クリスは「元に戻りたくない……」と念じながら、体を震わせた。

でも、体は止まらない。腕が縮み、脚が縮み、背丈が縮み、顔が老い、胸が萎む。声が老いる。クリスは壁に寄りかかり、体を支えた。激痛と、骨の軋む音、肉の動く音が、トイレを埋め尽くす。菊とクリスの状態が、何度も行き来する。クリスは「やめて……」と呟いた。でも、体は最後に、一気に老婆の姿に戻った。

背丈が82センチまで縮み、腕と脚が短くなり、胸が完全に萎み、顔にしわが刻まれ、白髪が戻る。服が、大きすぎて体に余る。クリスは、菊に戻っていた。88歳の小さな老婆。トイレの床に、へたり込むように座った。息が荒い。体中が痛い。変身の余韻が、まだ残っている。

菊は鏡に映る自分の顔を見た。老婆の顔。しわだらけ。白髪。ノゾムとの会話で心が温かくなり、寂寥感が消え去ったあの瞬間から、体が元に戻ろうとした。菊は小さく息を吐いた。ノゾムの優しい声が、まだ耳に残っている。菊はトイレに座ったまま、長い時間、動けなかった。


第四章 風呂の中の、静かな鼓動

菊は、身障者トイレから家に帰り着いたとき、もうほとんど体を動かせなかった。変身の余韻が、骨の奥まで残っている。腕も脚も、時々、勝手に縮んだり伸びたりするような感覚がする。家に着くと、ハルトが心配そうに迎えてくれたが、菊は「少し疲れただけ」と笑ってごまかした。ノゾムとの会話で心が温かくなったあの瞬間から、体が元に戻ろうとしたこと。菊はそれを誰にも言えなかった。ただ、ノゾムの優しい声が耳に残り、寂寥感が少しだけ和らいでいるのを感じていた。

その翌日、ノゾムがまた家を訪ねてきた。ハルトが「ノゾムが何か忘れ物をしたみたい」と言い、菊は少し胸の奥がざわついた。ノゾムは玄関で靴を脱ぎながら、菊に優しく声をかけた。

「おばあちゃん、昨日はありがとうございました。クリスさんという方に会ったんですが……」

ノゾムは昨日、クリス(菊が変身した姿)と出会ったことを少し話した。菊は心臓が大きく鳴るのを感じながら、老いた声で「そう、ですか」と答えた。ノゾムは菊の小さな体を気遣いながら、優しく話してくれた。菊はノゾムの笑顔を見て、昨日のクリスとして話したときの温かさを思い出した。でも、今の自分は88歳の小さな老婆だ。ノゾムはただ、孫の友達として優しく接してくれているだけ。菊は自分の気持ちを必死に抑え、茶を淹れて出した。

ノゾムとハルトは、リビングで少し話したあと、「ちょっと出かけてくる」と言い、二人で外に出ていった。菊は玄関で二人を見送りながら、ノゾムの背中を眺めた。大きな背中。優しい声。菊は小さく息を吐いた。家の中が、再び静かになった。

一人になった菊は、風呂を沸かした。体がまだ変身の疲れで重い。温かいお湯に浸かれば、少し楽になるかもしれない。菊は小さな体で脱衣所に入り、服を脱いだ。鏡に映る自分の姿を見て、ため息をついた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。胸はほとんど平らで、しぼんだように小さく、たるんでいる。菊は自分の胸を、そっと触れた。冷たい。重みがない。昨日、クリスとしてノゾムと話したときの、大きな胸の重みと熱さを、ふと思い出した。

「もう……変身することはない、はずだ」

菊は小さく呟いた。昨日の変身は、ノゾムのことを強く思ったせいだったのかもしれない。でも、もう終わった。体は元に戻った。菊はそう思いながら、湯船に浸かった。熱いお湯が、古い体を包み込む。菊は目を閉じ、昨日のことを思い浮かべた。ノゾムと並んで歩いたこと。ノゾムの視線が時々、自分の胸や太ももに落ちたこと。嫌な気持ちはしなかった。むしろ、複雑な温かさが胸に広がった。寂寥感が、少し溶けていく感覚。菊は湯船の中で、ゆっくりと息を吐いた。

自分の老いた胸を見て、菊はもう一度ため息をついた。ほとんど平らな胸。乳首は小さく、しぼんでいる。菊は自分の胸を、指で優しく撫でた。冷たい皮膚。歳を取ると、こういうものなのだと、諦めのような気持ちが浮かんだ。

そのときだった。

左の乳首が、ぴくぴくと動いた。

菊は息を呑んだ。視覚だけ。乳首が、小さく脈動している。まるで、心臓の鼓動に合わせて動いているようだった。菊は目を凝らした。錯覚かと思った。熱いお湯のせいかもしれない。菊はもう一度、左の乳首を見つめた。すると、左乳首が、ゆっくりと大きくなっていく。ギチギチと、肉が付き始めるような感覚。左乳首が、太く、大きく、ぷっくりと膨らんでいく。菊は慌てて右の乳首を見た。右乳首も、同じように、ギチギチと大きくなり始めた。

「なに……これ……」

菊は小さな声で呟いた。両方の乳首が、明らかに大きくなっている。熱いお湯の中で、乳首だけが脈動しながら成長していく。菊は自分の胸を、両手で覆おうとした。手で押さえれば、止まるかもしれないと思った。でも、右手が、突然、長く大きくなっていくのを感じた。

右手が、ゆっくりと伸びていく。指が長くなり、手のひらが大きくなり、腕全体が長くなっていく。メキメキという、骨が伸びる乾いた音が、湯船の中で響いた。菊は右手を目の前に掲げてみた。長い、大きな手。滑らかな皮膚。歳を取って縮んだ自分の手とは、別物だった。菊は困惑しながら、左手も同じように熱くなるのを感じた。左手も、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨の伸びる音。肉の動く音。両手が、若い女性の長く大きな手に変わっていった。

菊は湯船の中で、体を震わせた。両手が長くなったせいで、湯船の縁を掴むのが少し不自然だった。菊は「こんなの……」と呟きながら、次の変化を待った。すると、今度は左脚に激痛が走った。

「っ……!」

左脚が、メキメキと伸び始めた。骨が引き伸ばされる乾いた音が、湯船に響く。肉が長く伸びていく感覚。左脚が、元の倍以上の長さになっていく。菊は湯船の中で、体をよじった。痛みが激しい。左脚が長くなったあと、今度は右脚が同じように熱くなり、メキメキと伸びていく。両脚が長くなり、湯船の中で足が届かなくなった。菊は長い脚を、湯船の外に伸ばした。背骨が、今度は熱くなった。

背骨が、ゆっくりと伸びていく。脊椎が一つずつ、引き伸ばされるような痛み。菊の小さな体が、縦に長くなっていく。背丈が、90センチ、110センチ、130センチ……と増えていく。骨の軋む音が、背中から響く。菊は湯船の中で、背中を反らした。痛みが続く。背丈が150センチ近くまで伸びたとき、左腕が、再び熱くなった。

左腕が、ゆっくりと長く伸びていく。すでに長くなっていた右腕に続き、左腕も同じ長さになっていく。菊は両腕を、湯船の外に伸ばしてみた。両腕が、クリスと同じ長さになっている。でも、皮膚はまだ老いている。ピンと張り詰めた、ガリガリとした瘦せた状態。筋肉がほとんどなく、骨が浮き出ている。菊は自分の腕を見て、息を呑んだ。

「こんなの……いやだ」

菊は小さく呟いた。声が、掠れている。体はクリスと同じ身長になったのに、皮膚と肉がまだ老いている。ガリガリで、張り詰めた状態。菊は湯船の中で、体を抱きしめるように腕を回した。痛みがまだ残っている。骨が伸びた余韻。肉が動いた余韻。

そのとき、急に、皮下脂肪が付き始めた。

ミチミチという、湿った音が、菊の体中から聞こえた。皮下に、脂肪が急速に着いていく。ガリガリだった腕に、柔らかい肉が付き始める。皮膚が、張り詰めていた状態から、ふっくらと若返っていく。菊は自分の腕を触れた。滑らかで、温かい。歳を取って冷たくなっていた皮膚が、若々しくなっていく。ミチミチという音が、胸や腹、脚にも広がっていく。皮下脂肪が、音を立てながら体を埋めていく。皮膚が、若返る。

声が、変化し始めた。喉の奥が熱い。菊は何か言おうとしたが、声が妖艶な響きに変わっていく。掠れていた声が、息が混じったような、甘い声になっていく。菊は自分の声を聞いて、息を呑んだ。

胸と尻が、今度は脈動し始めた。左の胸が、ゆっくりと膨らみ始める。乳首がすでに大きくなっていた胸が、ムチムチと肉を付けていく。右の胸も、同じように脈動しながら大きくなっていく。尻も、太ももも、同じように肉が付き、ふくらんでいく。菊は湯船の中で、体を震わせた。胸と尻が、徐々に大きくなっていく。重みが増していく。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まっていく。黒い色が広がり、髪が長く伸びていく。菊は自分の顔を、湯船の水面に映して見た。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。

最後に、胸と尻が、爆発的に膨らんだ。

左の胸が、一気に大きくなる。肉が急速に充填される感覚。皮膚が引き伸ばされる音。菊は自分の左胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、巨大でムチムチとした爆乳になっていく。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。尻も、太ももも、同じように大きくなる。菊の体は、今や170センチの、妖艶でムチムチとした若い女性の体になっていた。

変身が完了した瞬間、クリスは湯船の中で、息を荒げた。熱いお湯が、新しい体を包み込んでいる。巨大な胸が、水面に浮かんでいる。長い黒髪が、湯船の縁に広がっている。クリスは自分の体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。重い。昨日の変身と同じ体。クリスは小さく呟いた。

「クリス……」

声が、妖艶で甘い。体が、若さで満ちている。痛みは残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいた。クリスは湯船からゆっくりと立ち上がった。長い脚で、脱衣所の鏡の前に立つ。鏡に映る自分の姿を見て、息を呑んだ。黒い長い髪、滑らかな若い顔、巨大な胸、ムチムチとした腰と脚。昨日と同じ、妖艶な体。

クリスは新しい体を、両手で抱きしめた。ノゾムのことを思うと、胸が熱くなる。昨日、ノゾムと話したときの温かさ。寂寥感が消え去ったあの瞬間。クリスは、ノゾムに会いたいという想いが、胸の奥で疼いているのを感じた。

この体で、もう一度、ノゾムに会いたい。クリスはそう思いながら、湯船から上がった。新しい長い腕で、タオルを取る。体を拭きながら、クリスは自分の新しい胸の重みを感じた。ノゾムがこの姿を見たら、どう思うだろう。クリスは恥ずかしさで顔を赤らめながらも、心の奥で、ノゾムへの想いが熱を帯びているのを感じていた。


第五章 映画館の闇と、消えゆく手

クリスは、湯船から上がったあと、長い黒髪をタオルで拭きながら鏡の前に立っていた。新しい体はまだ熱を帯びている。巨大な胸が重く、ムチムチとした腰と脚が、服の布地に張り付く。昨日と同じ、妖艶な姿。クリスは自分の胸をそっと触れた。柔らかくて、熱い。ノゾムのことを思うと、胸の奥がざわつく。昨日、ノゾムと話したときの優しい声と視線が、まだ心に残っている。寂寥感は、ほとんど消えていた。でも、別の恐怖が、静かに胸の底に沈んでいる。

「また……元に戻ってしまうかもしれない」

クリスは小さく呟いた。昨日、トイレで体が菊に戻っていった恐怖が、鮮明に蘇る。骨が縮む痛み。肉が萎む感覚。声が老いること。クリスはそれを二度と味わいたくないと思った。でも、ノゾムに会いたいという想いが、それを上回っていた。クリスはハルトの部屋から大きめの服を選び、着た。Tシャツは胸を強調し、谷間が深く見える。パンツは太ももと尻にぴったりと張り付く。クリスは鏡で自分の曲線を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムの視線を、掴みたいと思った。恥ずかしい気持ちと、でもこの体でノゾムに見てほしいという気持ちが、混じり合っていた。

クリスは家を出た。夜の町を歩く。長い脚で、ゆったりとした歩幅。胸が歩くたびに揺れる。クリスは時々、自分の胸や腰に視線を落とした。昨日と同じ体。でも、ノゾムに会えるかもしれないと思うと、心臓が少し速く鳴る。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムのことを思い浮かべていた。優しい笑顔。優しい声。昨日、クリスとして話したときの温かさ。寂寥感が消え去ったあの瞬間。

そんなとき、クリスは町の中心にある公園のベンチで、ノゾムを見つけた。ノゾムは一人で座り、スマホを眺めていた。クリスは少し緊張しながら、近づいた。

「ノゾムさん……?」

ノゾムは顔を上げ、クリスを見て目を丸くした。

「クリスさん……! また会いましたね。昨日は本当にありがとうございました」

ノゾムの声が優しい。クリスは心が温かくなるのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスは微笑んだ。

「こちらこそ……。少し、散歩していたんです」

二人は一緒に歩き始めた。夜の町を、並んで。クリスは意識的に、胸を張って歩いた。Tシャツの谷間が、街灯の下で白く光る。ノゾムの視線が、時々、クリスの胸や太ももに落ちる。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。昨日と同じ視線。でも、今日はもっと近くにいる。クリスは恐怖を胸の奥に押し込みながら、ノゾムと話した。

「ノゾムさんは、どんな映画が好きですか?」

クリスが聞いた。ノゾムは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑った。

「最近は、ちょっとした恋愛ものとか……心が温かくなるやつが好きです」

ノゾムはクリスに、最近見た映画の話を少しした。クリスは聞きながら、ノゾムの横顔を眺めた。優しい目元。穏やかな声。クリスは自分の想いが、ノゾムに向かっているのを感じた。菊としての記憶と、この体の想いが、重なり合っている。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに近づいた。意識的に、腕が触れそうになる距離で歩く。胸が、ノゾムの腕に近づく。

会話が続く。ノゾムはクリスのことを気遣いながら、優しく話してくれた。クリスは自分の過去を、ぼかしながら話した。寂しかったこと。誰かと話したかったこと。ノゾムの優しさが、それを少しずつ溶かしていく。クリスは恐怖を押し殺しながら、ノゾムの声に耳を傾けた。

「ノゾムさんと話していると……心が温かくなります」

クリスは小さく言った。ノゾムは優しく微笑んだ。

「僕もです。クリスさんと話していると、なんだか……不思議な気持ちになります」

ノゾムの視線が、またクリスの胸に落ちた。クリスは気づき、意識的に胸を張った。谷間が強調される。ノゾムの目が、一瞬、熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。恥ずかしい。でも、嬉しい。ノゾムが自分を見てくれている。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに微笑みかけた。

二人は自然と、近くの映画館に入った。夜の映画。暗い館内で、隣の席に座る。クリスはノゾムの隣で、スクリーンを見つめた。映画が始まる。恋愛映画。心が温かくなるシーンが続く。クリスはノゾムの横顔を、時々盗み見た。ノゾムは映画に熱中している。クリスは自分の手を、膝の上に置いた。ノゾムの手に、触れそうになる距離。

スクリーンの明るいシーンで、ノゾムの右手が、クリスの左手に触れた。指が重なる。クリスは息を呑んだ。ノゾムの温かい手。大きな手。クリスは恐怖を抑えながら、指を少し動かした。ノゾムの指が、クリスの指に絡まる。手が触れ合った。幸せな感覚が、胸に広がった。寂寥感は、もうどこにもない。ノゾムの温かさが、すべてを溶かしている。

クリスはノゾムの手に、そっと力を込めた。ノゾムも、同じように力を返してきた。二人で手を繋いだまま、映画を見続ける。クリスは心が、熱く鳴るのを感じた。この瞬間が、ずっと続けばいいと思った。恐怖を完全に忘れていた。

そのときだった。

触れ合っていたクリスの左手が、突然、小さく縮み始めた。

左手の指が、短くなり、皮膚がしわだらけになっていく。骨が縮むような痛みが、指先から走った。クリスは息を呑んだ。左手が、老いた小さな手に変わっていく。ノゾムは映画のシーンに熱中していて、まだ気づいていない。クリスは慌てて左手を、膝の下に隠した。でも、変化は止まらない。左手が、完全に老婆の小さな手に戻ってしまった。

クリスは恐怖で体を震わせた。元に戻ってしまう。昨日と同じように。クリスは「戻りたくない……」と、心の中で強く思った。すると、左手が、一時的に元の長さに戻った。滑らかな若い女性の手に。クリスは息を荒げた。でも、すぐにまた縮み始める。左手が、老いた手に戻っていく。

ノゾムはまだ映画に夢中だ。クリスは左手を隠したまま、立ち上がった。

「す、すみません……ちょっとトイレに……」

クリスは小さな声で言い、ノゾムの隣を離れた。ノゾムは「大丈夫ですか?」と声をかけたが、クリスは「すぐ戻ります」とだけ言って、女性用トイレに急いで逃げ込んだ。狭い個室に飛び込み、ドアを閉めて鍵をかける。息が荒い。

トイレの狭い空間で、クリスは鏡に映る自分を見た。左手が、老いた小さな手に戻っている。クリスは「また老いるのは嫌だ……」と強く思った。すると、左手が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮み始める。左腕全体が、縮んでいく。骨の縮む音。肉が萎む音。クリスはトイレの壁に手をついて、体を支えた。

「戻りたくない……戻りたくない……」

クリスは抵抗するたびに、腕が一時的にクリスの状態に戻る。左腕が伸び、滑らかになる。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭いトイレの中で、腕をぶつけた。壁に当たる。痛みと、変化の感覚が混じり合う。

脚も、縮み始めた。左脚が、短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという、骨の縮む音。クリスはバランスを崩し、トイレの壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い空間で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる感覚。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。顔が、熱くなった。しわが現れ始める。黒い髪が、白く染まっていく。クリスは鏡を見て、自分の顔が交互に変化するのを見た。抵抗するたびに、顔が一時的に若返る。でも、すぐに老いる。クリスは狭いトイレの中で、体を震わせた。

「元に戻りたくない……また老いるのは嫌だ……」

クリスは抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らみ、顔が若返る。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスはトイレの壁や洗面台に、腕や脚をぶつけた。狭い空間で、体が変化するたびにバランスを崩す。痛みと、肉が萎む感覚。骨が縮む音。クリスは喘ぎ声を漏らしながら、体を支えた。

胸が、完全に萎んでいく。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。背丈が、82センチまで縮んでいく。クリスは「戻りたくない」と最後に強く思った。でも、体はもう止まらなかった。顔が完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭いトイレの中で、菊はへたり込むように床に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は鏡に映る自分の顔を見て、息を吐いた。ノゾムとの会話で心が温かくなったあの瞬間。手が触れ合った幸せな感覚。そして、元に戻ってしまう恐怖。菊は小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。菊はトイレに座ったまま、長い時間、動けなかった。ノゾムの優しい声が、耳に残っている。寂寥感は、また少しずつ、胸の奥に広がり始めていた。


第六章 テレビの呪いと、リビングのソファ

前半

夕方のリビングは、薄暗いテレビの光に包まれていた。菊は小さな体をソファの端に寄せて座り、ハルトと並んでテレビを見ていた。ハルトは22歳の大学生で、今日も大学から帰ってきて、菊と一緒に夕食を済ませたあと、テレビの前に座っていた。菊はハルトの横顔を時折見ながら、静かに息を吐いた。ノゾムへの想いは、まだ胸の奥に残っている。昨日、クリスとしてノゾムと話したときの温かさ。手が触れ合った感覚。そして、元に戻ってしまった恐怖。菊はそれをハルトに話すことができなかった。ただ、今日も変わらない日常を、静かに過ごしている。

ハルトがリモコンを手に取り、チャンネルを変えた。偶然ついた番組は、オカルト特集だった。司会者が、暗いスタジオで真剣な顔をして話している。

「今夜は、昔の嫉妬からかけられた呪いについてお送りします。ある女性が、若い頃に夫を巡ってライバルからかけられた呪い。夫の死後、孤独が極限に達したとき、呪いが目覚め、老いた体を強制的に若返らせる……しかし、その若返りは常にグロテスクで苦痛を伴い、すぐに元に戻ってしまう。呪いは、老いた女性にだけ二度目の青春を与えるが、真の愛で両方の姿を受け入れられる者と出会わなければ、二度と安らぎは得られないというものです」

菊の体が、びくりと震えた。番組の説明が、彼女の状況と完全に一致していた。夫を亡くしたあと、孤独が募り始めた頃から、体がおかしくなり始めたこと。ノゾムのことを強く思った瞬間に、激しい変身が起きること。昨日も、ノゾムと手が触れ合った瞬間に、元に戻り始めたこと。菊は息を呑んだ。心臓が、大きく鳴る。

ハルトはテレビを見て、くすくすと笑った。

「ありえないよね、こんなの。呪いとか、現代で本気にする人いるのかな。婆ちゃん、どう思う?」

ハルトは菊を見て、笑いながら聞いた。菊は慌てて笑顔を作った。でも、笑顔が硬い。唇が震えている。菊は自分の胸に手を当てた。心臓の鼓動が、止まらない。番組の説明が、頭の中で繰り返される。嫉妬からかけられた呪い。夫の死後、孤独が極限に達したとき目覚める。グロテスクな若返り。真の愛で両方の姿を受け入れられる者と出会わなければ……菊は「自分は呪われている」と、はっきりと気づいた。昨日も、ノゾムとの会話で心が温かくなった瞬間に、体が元に戻ろうとした。あれは、呪いの力だった。菊はそれを、ハルトに話そうとした。でも、声が出ない。喉が、締めつけられているような感覚。口を開けようとするが、言葉が喉に詰まる。

「ハルト……」

菊は小さく呟いた。でも、声は掠れて、ほとんど聞こえない。ハルトはテレビに夢中になっていて、気づいていない。菊はもう一度、助けを求めようとした。でも、声が出ない。体が、熱くなり始めている。胸の奥で、何かが疼く。菊はソファに深く沈み込むように体を縮めた。小さな体が、ソファのクッションに埋もれる。

ハルトは番組が終わると、 yawn をしながら立ち上がった。

「婆ちゃん、もう寝るね。明日も早いから。婆ちゃんも、早く休んで」

ハルトは菊の頭を軽く撫でて、リビングを出ていった。菊はソファに座ったまま、動けなかった。ハルトの足音が、寝室の方に消えていく。家の中が、再び静かになった。テレビの電源は切れていて、リビングは暗い。街灯の光が、窓から少し差し込んでいる。菊は自分の胸に手を当てた。心臓が、激しく鳴っている。番組の説明が、頭から離れない。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。菊は「助けて」と、もう一度言おうとした。でも、声が出ない。喉が、完全に塞がれているような感覚。

そのとき、左腕に、激しい熱が走った。

菊は息を呑んだ。左腕が、熱い。短い、しわだらけの左腕が、突然、激しく疼き始めた。菊は右の手で左腕を押さえた。でも、抑えきれない。左腕が、引き伸ばされていく。骨が軋む音が、リビングに響いた。ギリギリ……という、乾いた音が、大きくなる。左腕が、元の二倍どころか、三倍近くの長さにまで一気に伸びていく。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。肉が、爆発的に伸びていく。菊はソファに体を沈めながら、声を上げた。

「っ……あ……!」

痛みが、激しい。これまで以上の痛み。左腕が、異常に長く伸びたあと、ゆっくりと元のクリスの長さに戻っていく。でも、痛みは残っている。菊は左腕を、目の前に掲げてみた。長い、若い女性の腕。滑らかな皮膚。でも、さっきの変化は、明らかにこれまでより激しかった。菊は息を荒げた。

次に、右腕が同じように熱くなった。右腕も、激しく引き伸ばされていく。骨の軋む音が連続する。右腕も、三倍近くまで伸びてから、クリスの長さに落ち着く。菊は両腕を、ソファの背もたれに置いた。異常に長い腕が、ソファから はみ出している。痛みが、腕の奥に残っている。

「こんなの……いやだ……」

菊は小さく呟いた。でも、声はまだ掠れている。次に、左脚が熱くなった。左脚が、メキメキと激しく伸びていく。骨が、異常に引き伸ばされる音。肉が、爆発的に長くなる。左脚が、ソファから床に届かなくなるほど長く伸びてから、クリスの長さに戻る。痛みが、脚全体を貫く。菊はソファに体をよじった。右脚も、同じように激しく伸びていく。両脚が、ソファの上で長くなりすぎて、バランスを崩す。菊は長い脚を、ソファから下ろした。痛みが、まだ続いている。

背骨が、今度は熱くなった。背丈が、激しく伸びていく。脊椎が、一つずつ、異常に引き伸ばされる。骨の軋む音が、背中から大きく響く。菊の小さな体が、ソファの上で縦に引き延ばされていく。背丈が、200センチ近くまで伸びてから、クリスの170センチに落ち着く。痛みが、背骨の奥に残っている。菊はソファに深く沈み、息を荒げた。

顔が、熱くなった。しわが、激しく動く。皮膚が、引き伸ばされて若返っていく。白髪が、根元から黒く染まり、異常に長く伸びていく。顔の骨が、大きく動く音。菊は自分の顔を、両手で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。でも、変化はこれまでより激しかった。菊は鏡を見たくて、リビングの鏡台の方に視線を向けた。でも、動けない。

胸が、今度は激しく熱くなった。左の胸が、爆発的に膨らみ始める。肉が、異常に急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。左の胸が、これまで以上の巨大さにまで膨らんでから、クリスのサイズに落ち着く。痛みと、未知の感覚が混じり合う。菊は自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。服が、胸の部分で完全に裂けた。谷間が、深く強調される。菊は息を呑んだ。

尻と太ももも、同じように激しく変化した。肉が、爆発的に付き、異常に大きくふくらんでから、クリスのサイズに落ち着く。菊の体は、今や完全にクリスの姿になっていた。でも、変化の激しさは、これまでとは比べ物にならない。痛みが、体中を貫いている。骨の軋む音と肉の動く音が、リビングに満ちていた。

クリスはソファに座ったまま、息を荒げた。新しい体が、熱を帯びている。巨大な胸が、重くのしかかる。長い黒髪が、肩に落ちている。クリスは自分の体を、両手で触れた。滑らかで、若々しい。でも、さっきの激しい変化の余韻が、まだ残っている。菊としてテレビを見ていたときの恐怖。番組の説明。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。クリスは小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、妖艶で甘い。体が、若さで満ちている。でも、心の奥では、恐怖がまだ残っている。もう一度、元に戻ってしまうかもしれない。クリスはソファに深く沈み、長い腕で自分の体を抱きしめた。リビングは暗い。ハルトは寝室で寝ている。クリスは一人で、ソファに座ったまま、息を整えた。

クリスはソファに座ったまま、長い時間息を整えていた。リビングの暗がりの中で、自分の新しい体を両手で触れていた。巨大な胸の重み。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ体に残っている。痛みは少しずつ引いていくが、恐怖は消えなかった。テレビで見た番組の説明が頭から離れない。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。クリスは小さく呟いた。

「ノゾムさん……会いたい」

声が、妖艶で甘い。恐怖を抑えながら、クリスは立ち上がった。長い脚で、リビングを歩く。服は裂けていて、もう着られない。クリスはハルトの部屋から大きめの服をもう一度借り、着替えた。Tシャツは胸を締めつけ、谷間が強調される。パンツも太ももに張り付く。サイズが、少し合わない。胸の部分がきつくて、谷間が深く見える。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

クリスは家を出た。夜の町は静かで、街灯だけがオレンジ色の光を落としている。クリスは長い脚で、町の中心に向かった。デイト用の服を買おうと思った。ノゾムに会うなら、少しちゃんとした服が欲しい。近くの24時間営業の服屋に入り、ブラウスとスカートを選んだ。ブラウスは胸の部分が少しきつい。スカートも、太ももと尻にぴったりと張り付く。サイズが、完全に合わない。でも、クリスはそれを買った。鏡で自分の曲線を確認しながら、恐怖を胸の奥に押し込んだ。

ノゾムに連絡を取った。遅い時間だったが、ノゾムはすぐに返事をくれた。

「今からでも大丈夫だよ。どこかで会おう」

ノゾムの返事に、クリスは胸が温かくなった。遅い時間なのに、ノゾムは不安げな顔で待っていてくれた。クリスが少し不安そうな表情をしていると、ノゾムは優しく「大丈夫?」と声をかけてくれた。クリスは心が熱くなるのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムと一緒に、近くのカフェに入った。

店内は静かで、照明が柔らかい。クリスとノゾムは向かい合って座った。クリスはブラウスを意識的に胸を張って着ていた。谷間が強調される。ノゾムの視線が、時々、クリスの胸や太ももに落ちる。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。昨日と同じ視線。でも、今日はもっと近くにいる。

パスタを注文した。クリスはフォークを手に、ノゾムと話した。恐怖を抑えながら、クリスは少しだけ本音を漏らした。

「昨日、テレビで変な番組を見て……呪いみたいな話が出てきて。自分もそんな風に思えることがあって……」

クリスはぼかしながら言った。ノゾムは少し驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

「クリスさんがおばあちゃんでも、構わないよ。僕にとっては、クリスさんでいいから」

ノゾムの言葉に、クリスは息を呑んだ。心が、大きく鳴った。ノゾムは「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた。でも、普段のノゾムが菊(おばあちゃん)に対して接する態度を思い浮かべると、完全に信じられなかった。ノゾムは菊に対しては、ただ礼儀正しく、優しいが、少し距離を置いているように見えた。クリスはそれを、胸の奥で感じていた。でも、ノゾムの優しい声と視線に、クリスは心が溶けていくのを感じた。幸せな時間が、流れていく。

パスタを食べながら、二人は心の内を少しずつ語り合った。ノゾムは大学のことや、将来の夢を話した。クリスは聞きながら、ノゾムの優しさに包まれているのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに微笑みかけた。ブラウスの中の胸が、ノゾムの視線を捉えている。クリスはそれを意識的に強調した。ノゾムの目が、時々熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。嬉しい。でも、どこかで疑いも残る。ノゾムが本気で「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言っているのか。菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。でも、今この瞬間は、幸せだった。

食事が終わると、二人はカフェを出た。夜の町を、並んで歩く。クリスはノゾムの隣で、長い脚をゆっくりと動かした。ブラウスが胸を強調している。ノゾムの視線が、またクリスの胸に落ちる。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに近づいた。幸せな時間が、続いている。

そのときだった。

視力が、突然、低下し始めた。

クリスの視界が、ぼやけていく。遠くの街灯が、二重に見える。ノゾムの顔が、ぼんやりとしか見えない。クリスは目をこすった。でも、視力はどんどん悪くなっていく。左目が、まずぼやける。右目も、同じように視界が霞んでいく。クリスは息を呑んだ。元に戻る予兆だ。昨日と同じように、体が菊に戻ろうとしている。クリスは「戻りたくない」と心の中で強く思った。でも、視力は止まらない。

カフェから少し離れた裏路地に入ったとき、クリスは足を踏み外した。視界がぼやけていて、地面の段差が見えなかった。長い脚が絡まり、クリスは転んでしまった。ブラウスがめくれ上がり、胸の谷間が露わになる。クリスは慌てて服を直そうとしたが、間に合わなかった。

「大丈夫ですか!?」

ノゾムが慌てて駆け寄ってきた。でも、クリスはすでに体が熱くなり始めていた。視力が、さらに悪くなっていく。ノゾムが手を差し伸べてくれたが、クリスは「大丈夫です……ちょっと休みたい」と言い、ノゾムを振り切って裏路地の奥に逃げ込んだ。狭い路地で、クリスは壁に寄りかかった。視界が、ほとんど見えないほどぼやけている。

その瞬間、左腕が縮み始めた。

左腕が、ゆっくりと短くなり、皮膚がしわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは「戻りたくない」と強く思った。すると、左腕が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭い路地で、腕を壁にぶつけた。痛みと、変化の感覚が混じり合う。

脚も、縮み始めた。左脚が短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという音。クリスはバランスを崩し、路地の壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い路地で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。顔が、熱くなった。しわが現れ始める。黒い髪が、白く染まっていく。クリスは路地の壁に手をついて、体を支えた。抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らみ、顔が若返る。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスは狭い路地で、体を震わせた。

視力が、完全に悪くなっていく。ノゾムの顔が、もう見えない。クリスは「ノゾムさん……」と呟いた。でも、声は老いたうめき声になっている。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、完全に萎む。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭い裏路地で、菊はへたり込むように地面に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、また胸の奥に広がり始めていた。

第七章 夢のような記憶と、玄関先の視線

翌日の朝、菊はリビングのソファで目を開けた。昨夜の裏路地での変身の余韻が、まだ体に残っている。骨の奥が疼き、肉が萎んだ感覚が薄っすらと続いている。菊は小さな体を起こそうとしたが、頭がぼんやりしていた。昨日の出来事が、夢のようにぼやけている。ノゾムとカフェで話したこと。手が触れ合った感覚。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言われた言葉。そして、視力が悪くなり、裏路地で転んで、体が元に戻っていったこと。すべてが、はっきりしない。まるで長い夢を見ていたような感じだった。

菊は自分の胸に手を当てた。しわだらけの小さな胸。昨日、クリスとして巨大でムチムチとした胸だった記憶が、遠いもののように感じられる。菊は小さく息を吐いた。ストレスが、ボケを進行させているのかもしれない。昨日、ノゾムとの幸せな時間と、元に戻ってしまった恐怖が、重なり合って頭を混乱させている。

「ハルト……」

菊は小さく呟いた。ハルトの顔が、一瞬、思い出せなかった。孫の名前が、喉の奥で詰まる。菊は慌てて目を閉じ、深呼吸をした。数秒後、ようやくハルトの顔が浮かんだ。22歳の優しい孫。菊は自分の頭を軽く叩いた。ボケが、確実に進んでいる。呪いにかかったストレスが、それを加速させている。菊はソファに深く沈み、視界をぼんやりとさせた。

ハルトが大学から帰ってきたのは、午後だった。菊は台所で簡単な昼食を用意しようとしていたが、手が少し震えていた。ハルトは菊の様子を見て、すぐに心配そうな顔をした。

「婆ちゃん、大丈夫? なんか、ぼーっとしてるみたいだけど……」

ハルトは菊の肩に手を置いた。菊は慌てて笑顔を作った。

「大丈夫だよ。少し、疲れてるだけ」

でも、声が掠れていて、説得力がない。ハルトは菊をソファに座らせ、自分はスマホを取り出した。

「ちょっとノゾムに相談してみるよ。婆ちゃんの様子が変だから」

ハルトはノゾムに電話をかけた。菊はソファに座ったまま、ぼんやりとテレビを見ていた。画面の映像が、はっきり見えない。昨日、視力が悪くなった記憶が、薄っすらと蘇る。菊は自分の目をこすった。クリスとしてノゾムと話したときの記憶が、夢のように遠い。巨大な胸の重みや、ノゾムの優しい視線が、まるで別の人の記憶のように感じられる。

ハルトは電話でノゾムと話したあと、玄関先に出て行った。ノゾムが心配して来てくれたらしい。菊はソファに座ったまま、二人の声が玄関で聞こえるのをぼんやりと聞いていた。ハルトがノゾムに菊の様子を相談している。ノゾムが「心配だね」と優しく答えている。菊は自分の胸に手を当てた。ノゾムが来てくれているのに、菊としてしか接することができない寂しさが、胸に広がる。

そのとき、リビングのソファで、菊の体に熱が走った。

左の腹が、突然、異常に膨らみ始めた。菊は息を呑んだ。腹が、風船のように大きくふくらんでいく。皮下に何かが急速に溜まっていくような感覚。菊は自分の腹を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。腹が、異常に大きく膨らんだあと、今度は急激に凹んでいく。ミチミチという、湿った音が、リビングに響いた。腹が、風船がしぼむようにへこんでいく。菊は体をよじった。痛みと、未知の圧迫感が腹を貫く。

「っ……なに……これ……」

菊は小さく呟いた。でも、声はまだ老いたまま。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊はソファに体を沈め、腹を抱きしめた。腹の変化が止まらない。膨らみ、凹み、膨らみ、凹み……。菊は息を荒げた。

次に、左腕が熱くなった。左腕が、激しく引き伸ばされていく。骨が軋む音が、リビングに大きく響く。左腕が、これまで以上に異常に長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。菊は左腕を、目の前に掲げてみた。長い、若い女性の腕。でも、さっきの腹の変化が、まだ余韻として残っている。菊は息を呑んだ。

右腕も、同じように激しく伸びていく。骨の軋む音が連続する。右腕も、異常に長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。菊は両腕を、ソファの背もたれに置いた。腹が、また膨らみ始めた。ミチミチという音。腹が、異常に大きくふくらんでから、急激に凹む。菊は体を震わせた。

左脚が、今度は熱くなった。左脚が、メキメキと激しく伸びていく。骨が、異常に引き伸ばされる音。左脚が、ソファから床に届かなくなるほど長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。痛みが、脚全体を貫く。菊は長い脚を、ソファから下ろした。腹が、また膨らむ。菊は腹を押さえながら、脚の変化を見つめた。

右脚も、同じように激しく伸びていく。背骨が、今度は熱くなった。背丈が、激しく伸びていく。脊椎が、一つずつ、異常に引き伸ばされる。骨の軋む音が、背中から大きく響く。菊の小さな体が、ソファの上で縦に引き延ばされていく。背丈が、200センチ近くまで伸びてから、クリスの170センチに落ち着く。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊は体をよじった。

顔が、熱くなった。しわが、激しく動く。皮膚が、引き伸ばされて若返っていく。白髪が、根元から黒く染まり、異常に長く伸びていく。顔の骨が、大きく動く音。菊は自分の顔を、両手で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。腹が、また異常に膨らむ。菊は息を呑んだ。

胸が、今度は激しく熱くなった。左の胸が、爆発的に膨らみ始める。肉が、異常に急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。左の胸が、これまで以上の巨大さにまで膨らんでから、クリスのサイズに落ち着く。痛みと、未知の感覚が混じり合う。菊は自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。服が、胸の部分で完全に裂けた。谷間が、深く強調される。腹が、また膨らむ。菊は体を震わせた。

尻と太ももも、同じように激しく変化した。肉が、爆発的に付き、異常に大きくふくらんでから、クリスのサイズに落ち着く。菊の体は、今や完全にクリスの姿になっていた。意識が、はっきりとしてきた。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいる。クリスはソファに座ったまま、息を荒げた。

服が、ボロボロになっていることに気づいた。Tシャツは胸の部分で完全に裂け、ほとんどボロ布のようになっている。パンツも、太ももと尻の部分で破れている。クリスは自分の体を、両手で触れた。巨大な胸。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。クリスは小さく呟いた。

「クリス……」

声が、妖艶で甘い。意識がはっきりしている。昨日、ノゾムとカフェで話した記憶が、夢のようにぼやけていたのが、今は鮮明に蘇る。ノゾムの優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。クリスはソファから立ち上がった。長い脚で、部屋を歩く。服がボロボロなので、昨日の服をもう一度着なおした。ブラウスとスカート。サイズが、少し合わない。胸の部分がきつい。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

クリスは玄関に向かった。ハルトとノゾムが、玄関先でまだ話している。クリスは玄関のドアを開け、外に出た。ノゾムが、クリスを見て目を丸くした。

「クリスさん……? なぜ、菊のおばあちゃんの家から……?」

ノゾムの声が、驚きに満ちている。クリスは慌てて笑顔を作った。

「えっと……私は、菊のおばあちゃんの親戚で……ちょっと、用事があって来てたんです。昨日もお会いしましたよね」

クリスは必死に言い訳をした。ノゾムは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

「そうなんですね。昨日は本当に楽しかったです。また、話しましょう」

ノゾムはクリスに優しく声をかけた。ハルトも「婆ちゃんの知り合いだったんだ」と納得した様子だった。クリスは心臓が大きく鳴るのを感じた。ノゾムが自分を「クリス」として認識してくれている。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、どこかで疑いも残る。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに微笑みかけた。

二人は玄関先で、少し話した。ノゾムはクリスのことを気遣いながら、優しく話してくれた。クリスはノゾムの視線が、時々、自分の胸や太ももに落ちるのを感じた。クリスは意識的に、ブラウスを胸を張って着ていた。谷間が強調される。ノゾムの目が、熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。嬉しい。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。でも、今この瞬間は、ノゾムの優しい声に包まれている。寂寥感が、少しずつ溶けていく。

会話が続く。ノゾムはクリスのことを少し不思議がった。

「クリスさん、なんか……菊のおばあちゃんに似てる気がするんですけど……気のせいかな」

ノゾムはそう言った。クリスは心臓が止まるかと思った。でも、ノゾムは深くは追及しなかった。ただ、優しく微笑んだ。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに微笑みかけた。ハルトも「婆ちゃんの親戚だから、似てるのかもしれない」と軽く流した。クリスはほっとした。でも、心の奥では、ノゾムが自分の正体に気づきかけているのを感じていた。

やがて、ノゾムが「また電話するね」と言い、帰っていった。ハルトも大学の準備で部屋に戻った。クリスは一人になった。玄関先で、ノゾムの優しい声がまだ耳に残っている。幸せな時間が、流れていた。でも、恐怖が、胸の底に沈んでいる。

そのとき、視界が、ぼやけ始めた。

クリスの視力が、突然、低下し始めた。遠くの街灯が、二重に見える。ノゾムの顔が、ぼんやりとしか見えない。クリスは目をこすった。でも、視力はどんどん悪くなっていく。左目が、まずぼやける。右目も、同じように視界が霞んでいく。クリスは息を呑んだ。元に戻る予兆だ。クリスは「戻りたくない」と心の中で強く思った。でも、視力は止まらない。

クリスは家の中に戻り、狭い廊下で体を支えた。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは「戻りたくない」と強く思った。すると、顔が一時的に若返る。でも、すぐにまた老いる。クリスは壁に手をついて、体を支えた。

左腕が、縮み始めた。長い、滑らかな左腕が、短く、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、左腕が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭い廊下で、腕を壁にぶつけた。

脚も、縮み始めた。左脚が短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという音。クリスはバランスを崩し、廊下の壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「戻りたくない」と念じると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い廊下で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、老いたうめき声になっている。腹が、膨らんだり凹んだりし始める。ミチミチという音。腹が、異常に大きくふくらんでから、急激に凹む。クリスは体を震わせた。抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。顔が若返り、腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らむ。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスは狭い廊下で、体を支えた。

視力が、完全に悪くなっていく。ノゾムの顔が、もう見えない。クリスは「ノゾムさん……」と呟いた。でも、声は老いたうめき声になっている。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、完全に萎む。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭い廊下で、菊はへたり込むように床に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、また胸の奥に広がり始めていた。


第八章 廊下の崩れと、後ろからの抱きつき

廊下の床にへたり込んだ菊は、視界がぼやけたまま動けなかった。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が大きすぎて体に余る。昨日、ノゾムとカフェで話した記憶が、夢のように遠い。でも、心の奥ではノゾムへの想いが、熱を帯びて疼いている。呪いの頻度が、確実に増している。昨日も、今日も、体がおかしくなる。菊は自分の胸に手を当てた。ほとんど平らな小さな胸。昨日、クリスとして巨大でムチムチとした胸だった感覚が、薄っすらと蘇る。菊は小さく息を吐いた。

そのとき、左の胸が熱くなった。

ブカブカになった服の中で、左の胸が、突然、爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされる音が、服の下で響いた。左の胸が、服の緩い布地を満たすように、巨大に膨らんでいく。菊は息を呑んだ。服は破れず、布地が伸びて胸の形を包み込む。左の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。菊は体を支えきれず、前に倒れ込んだ。胸を床に押しつけたまま、バランスを崩す。

「っ……あ……!」

右の胸が、今度は同じように爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。右の胸が、左の胸を追い越すように膨らんでいく。服が、胸の部分で伸びきる。菊は床に胸をつけたまま、体を震わせた。両方の胸が、クリスのサイズに落ち着いた。服は破れず、布地がぴったりと胸の形を包み込んでいる。菊は床に倒れたまま、息を荒げた。

次に、右脚がムチムチと伸び始めた。肉が、急速に付き、太く長くなっていく。骨が、引き伸ばされる音。右脚が、床に届くようになり、ムチムチとした太ももとふくらはぎが成長していく。菊は胸を床に押しつけたまま、右脚が伸びるのを感じた。痛みと、未知の感覚が混じり合う。右脚が、クリスの長さに落ち着いたあと、今度は左脚が同じようにムチムチと伸びていく。両脚が、ムチムチと厚みを増し、長くなっていく。菊は床に倒れたまま、体を支えようとした。

左腕が、今度は熱くなった。左腕が、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨が伸びる音。肉が、滑らかに成長していく。左腕が、クリスの長さに落ち着いたあと、右腕も同じように伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になっていく。菊は床に胸を押しつけたまま、両腕を伸ばしてみた。服の袖が、伸びて腕を包み込んでいる。服は破れず、布地が体にぴったりとフィットしていく。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が、引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まり、長く伸びていく。顔の骨が、ゆっくりと動く音。菊は自分の顔を、床に押しつけた胸の間から触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。背丈が、今度は伸び始めた。脊椎が、ゆっくりと引き伸ばされる。菊の小さな体が、床から浮き上がるように長くなっていく。背丈が、クリスの170センチに落ち着く。服が、全体的に伸びて新しい体にフィットしている。破れていない。菊は床に倒れたまま、息を荒げた。

変身が完了した。クリスは床に胸を押しつけたまま、ゆっくりと体を起こした。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。服はブカブカだったものが、ぴったりと新しい体にフィットしている。クリスは自分の体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。でも、意識がはっきりしている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。呪いの頻度が増している。もう、抑えきれない。

クリスは立ち上がった。長い脚で、廊下を歩く。服が、体にぴったりと張り付いている。胸の谷間が、深く強調される。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

玄関の方から、ノゾムの声が聞こえた。ノゾムはハルトと話したあと、帰ろうとしているらしい。クリスは長い脚で、玄関に向かった。ノゾムが靴を履き、玄関のドアを開けようとしている。クリスは後ろから、ノゾムに抱きついた。巨大な胸が、ノゾムの背中に押しつけられる。クリスはノゾムの体に、自分の体を密着させた。

「ノゾムさん……」

クリスの声が、妖艶で甘い。ノゾムはびっくりして体を硬直させた。

「クリスさん……? どうしたんですか……?」

ノゾムは困惑した声で言った。クリスはノゾムの背中に顔を埋めたまま、愛の告白をしようとした。でも、菊の記憶が、突然、よぎった。88歳の老婆として、ノゾムに接していたときの記憶。ノゾムが菊に対して礼儀正しく、でも少し距離を置いていた態度。クリスは言葉を飲み込んだ。告白しようとした口が、塞がる。

「ノゾムさん……私は……」

クリスはノゾムの背中に抱きついたまま、涙がにじむのを感じた。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスはノゾムを振り向かせようとした。ノゾムがゆっくりと振り返る。クリスはノゾムの顔を見て、ほとんどキスしかけるほど顔を近づけた。唇が、触れそうになる。

その瞬間、クリスの顔が、一瞬、菊の老婆の顔になった。

ノゾムは後ずさった。目を見開いて、クリスから離れる。

「っ……! なに……?」

ノゾムの声が、驚きと混乱に満ちている。クリスは自分の顔を、両手で触れた。まだクリスの顔に戻っている。でも、さっきの一瞬の変化が、ノゾムに衝撃を与えた。クリスは泣きながら、ノゾムから離れた。涙が、頰を伝う。ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスは泣きながら、玄関から飛び出し、家の裏庭に逃げ込んだ。

裏庭は、夜の闇に包まれていた。花壇が少し荒れている。クリスは長い脚で、庭の奥に走った。涙が止まらない。ノゾムへの想いが、熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。クリスは庭の木陰にしゃがみ込んだ。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。クリスは自分の体を、両手で抱きしめた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。クリスは「老いたくない」とは思わなかった。ただ、ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。涙が、止まらない。クリスは庭の地面に座り込んだ。体が、熱くなり始めた。視界が、ぼやけていく。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは抵抗することなく、体を任せた。

左腕が、ゆっくりと短くなり、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。左腕が、元の短い老婆の腕に戻っていく。右腕も、同じように縮む。両腕が、短く小さくなっていく。脚も、短くなり、老いた脚になっていく。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、巨大なものから、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、抵抗することなく、菊に戻っていった。

裏庭の地面に座った菊は、82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、胸の奥に広がり始めていた。ノゾムへの想いが、熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は裏庭に座ったまま、長い時間、動けなかった。


第九章 夢の終わりと、布団の中の鼓動

裏庭から家に戻った菊は、視界がぼやけたまま小さな体を支えていた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が大きすぎて体に余る。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。でも、昨日と今日の出来事が、夢のように遠い。菊はリビングに入り、ソファに座ろうとしたが、足がふらついた。ハルトの顔が、一瞬、完全に思い出せなくなっていた。孫の名前はわかるのに、顔の輪郭がぼんやりとして、はっきりしない。菊は自分の頭を軽く叩いた。ボケが、急速に進んでいることを、うっすらと感じた。呪いにかかったストレスが、それを加速させている。菊は小さく息を吐いた。

「ハルト……」

名前は出た。でも、顔が思い出せない。菊はソファに深く沈み、視界をぼんやりとさせた。ノゾムが菊の家に戻ってきたのは、その直後だった。ノゾムはハルトと話したあと、菊の様子が心配で再び戻ってきたらしい。玄関のドアが開く音がして、ノゾムの声が聞こえた。

「おばあちゃん、大丈夫ですか? さっきのクリスさんのこと……気になります」

ノゾムの優しい声が、リビングに響いた。菊は一瞬、ノゾムの顔も思い出せなかった。でも、ノゾムが菊の様子を心配してかける言葉に、胸が張り裂けそうになった。ノゾムは菊に対して、いつも礼儀正しく、優しい。でも、少し距離を置いているように感じる。その優しさが、今、菊の心を痛めつける。菊はソファに座ったまま、ノゾムに笑顔を作ろうとした。でも、顔が硬い。

「大丈夫だよ……少し、疲れてるだけ」

声が、掠れている。ノゾムは菊の小さな体を見て、心配そうな顔をした。ハルトも「婆ちゃん、今日は早めに休んだ方がいいよ」と言い、菊を布団のある部屋に連れて行った。菊は布団に横になった。パジャマを着て、布団に包まれる。体が重い。ボケが進行している感覚が、頭の奥で疼く。ノゾムへの想いが、胸を熱くする。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は布団の中で、目を閉じた。

そのとき、布団の中で、菊の体に熱が走った。

左の腹が、突然、異常に膨らみ始めた。布団の中で、腹が風船のように大きくふくらんでいく。ミチミチという、湿った音が、布団の中で響いた。菊は息を呑んだ。腹が、異常に大きく膨らんだあと、今度は急激に凹んでいく。布団の中で、体がよじれる。痛みと、圧迫感が腹を貫く。菊は布団の中で、腹を抱きしめた。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊は声を抑えようとした。でも、声が漏れそうになる。

パジャマが、胸の部分で伸び始めた。左の胸が、爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされる音。左の胸が、パジャマの布地を満たすように巨大に膨らんでいく。パジャマは破れず、布地が伸びて胸の形を包み込む。でも、布地が限界まで伸びきっている。左の胸が、クリスのサイズに落ち着いたあと、今度は右の胸が同じように爆発的に大きくなり始めた。右の胸が、左の胸を追い越すように膨らんでいく。パジャマが、胸の部分で限界まで伸びる。菊は布団の中で、体を震わせた。

「っ……ん……」

声が、漏れそうになる。菊は口を押さえた。ノゾムがまだ家にいる。声を出せない。左脚が、今度はムチムチと伸び始めた。肉が、急速に付き、太く長くなっていく。骨が、引き伸ばされる音。左脚が、布団の中で長くなり、ムチムチとした太ももとふくらが成長していく。パジャマのパンツ部分が、伸びきる。左脚が、クリスの長さに落ち着いたあと、今度は右脚が同じようにムチムチと伸びていく。両脚が、ムチムチと厚みを増し、長くなっていく。パジャマが、下半身で限界まで伸びる。菊は布団の中で、脚を伸ばした。

左腕が、熱くなった。左腕が、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨が伸びる音。肉が、滑らかに成長していく。左腕が、クリスの長さに落ち着いたあと、右腕も同じように伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になっていく。パジャマの袖が、伸びきる。菊は布団の中で、両腕を伸ばしてみた。パジャマが、体全体で限界まで伸びている。布地が、薄く張りつめている。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が、引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まり、長く伸びていく。顔の骨が、ゆっくりと動く音。菊は自分の顔を、布団の中で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。背丈が、今度は伸び始めた。脊椎が、ゆっくりと引き伸ばされる。菊の小さな体が、布団の中で縦に引き延ばされていく。背丈が、クリスの170センチに落ち着く。パジャマが、全体的に伸びきっている。布地が、薄く張りつめ、限界を迎えている。

変身が完了した。クリスは布団の中で、息を荒げた。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。パジャマはボロボロになっている。布地が、胸や脚の部分で限界まで伸びきり、ところどころ薄く破れかけている。クリスは布団の中で、自分の体を両手で触れた。柔らかい。熱い。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。でも、意識がはっきりしている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。ノゾムはまだ家にいる。クリスは布団からゆっくりと出た。ボロボロのパジャマを着たまま、部屋を出た。

家の中は静かだった。ノゾムがハルトと話している声が、リビングから聞こえる。クリスは長い脚で、リビングに向かった。正体を告白しようと思った。ノゾムに「私は菊です」と言う。恐怖で胸が張り裂きそうになる。でも、ノゾムへの想いが、それを上回っていた。クリスはリビングの入り口で、ノゾムを見た。ノゾムはハルトと話している。クリスは一歩踏み出そうとした。でも、恐怖が、足を止めた。ノゾムが自分を「クリス」として見てくれている。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。クリスは恐怖で押し入れの中に身を隠した。狭い押し入れの中で、息を荒げた。

押し入れの中で、クリスは自分の体を抱きしめた。巨大な胸が、重くのしかかる。恐怖が、胸を締めつけている。ノゾムに告白したい。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスは押し入れの中で、目を閉じた。そのとき、視界がぼやけ始めた。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは「戻りたくない」と心の中で思った。でも、恐怖が、それを上回っていた。体が、菊に戻り始めている。

左腕が、ゆっくりと短くなり、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。左腕が、元の短い老婆の腕に戻っていく。右腕も、同じように縮む。両腕が、短く小さくなっていく。脚も、短くなり、老いた脚になっていく。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、巨大なものから、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、恐怖で抵抗することができず、菊に戻っていった。

狭い押し入れの中で、菊はへたり込むように座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。パジャマが、ボロボロになっている。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。心配してかけてくれた言葉。胸が張り裂けそうになる。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は押し入れの中で、長い時間、動けなかった。ボケが、急速に進んでいる。ハルトの顔も、ノゾムの顔も、はっきり思い出せない。でも、ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、胸を満たしている。


第十章 告白と、最後の変身

菊は押し入れから這い出たとき、自分の体があまりに小さく感じられた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。パジャマはボロボロのまま、床に落ちている。菊は床に座ったまま、視界をぼんやりとさせた。ボケが、急速に進んでいる。昨日まで鮮明だったクリスとしての記憶が、薄い霧のようにぼやけ始めている。巨大な胸の重みや、ノゾムと手が触れ合った感覚が、夢のように遠い。菊は自分の胸に手を当てた。ほとんど平らな小さな胸。クリスだったときの感覚が、はっきりと思い出せない。

「クリス……だった、はず……」

名前は出た。でも、顔や体が、ぼんやりとして思い出せない。菊は自分の頭を軽く叩いた。ハルトの顔も、ノゾムの顔も、はっきりしない。ただ、ノゾムへの想いだけが、胸の奥で熱く疼いている。呪いにかかったストレスが、ボケを加速させている。菊は小さく息を吐いた。何もかも忘れてしまう前に、ノゾムに会わなければ。クリスは自分だということを、告白しなければ。

菊はボロボロのパジャマを脱ぎ、古い服を着なおした。服が、体に余る。菊は小さな体で、リビングに向かった。ノゾムはまだ家にいる。ハルトと話している声が聞こえる。菊はリビングの入り口で、ノゾムを見た。ノゾムはハルトとソファに座り、菊の様子を心配そうに話している。菊は一瞬、ノゾムの顔も思い出せなかった。でも、ノゾムが菊の異変を心配してかけてくれる言葉に、胸が張り裂けそうになった。

菊はリビングに入り、ノゾムの前に立った。小さな体で、ノゾムを見上げた。ノゾムは菊を見て、優しく微笑んだ。

「おばあちゃん、どうしましたか?」

菊は息を呑んだ。ノゾムへの想いが、胸を熱くする。でも、ボケが進行していて、言葉がうまく出ない。菊は自分の胸に手を当て、必死に声を出した。

「ノゾムさん……私……クリスは、私です」

声が、掠れている。ノゾムは目を丸くした。ハルトも、びっくりした顔をした。

「婆ちゃん……何を言ってるの?」

ハルトは信じようとしない。菊はハルトを見て、必死に続けた。

「クリスは、私が変身した姿です。呪いで……若返るんです。ノゾムさんと話したときも、私だったんです」

ハルトは首を振った。

「婆ちゃん、疲れてるんだよ。無理に考えないで。休んだ方がいい」

ハルトは菊をソファに座らせようとした。でも、菊はノゾムを見て、涙がにじむのを感じた。ノゾムは菊の小さな体を、じっと見つめていた。優しい目が、菊の顔を丁寧に見ている。ノゾムはゆっくりと立ち上がり、菊の前に膝をついた。大きな体で、菊と同じ目線の高さになった。

「おばあちゃんが言うなら、本当だよ」

ノゾムの声が、静かで優しい。菊は息を呑んだ。ノゾムは菊の言葉を、信じてくれた。ハルトはまだ信じようとしない顔だったが、ノゾムは菊の小さな手を、優しく握った。

「クリスさんが、おばあちゃんだったんですね……。でも、僕にとっては、どっちでもいい。菊さんでいいから」

ノゾムの言葉に、菊の胸が熱くなった。涙が、頰を伝う。ノゾムは菊の言葉を、疑わずに受け入れてくれた。菊はノゾムの大きな手に、自分の小さな手を重ねた。ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。でも、その瞬間、体が熱くなり始めた。

全身に、激痛が走った。

菊は体を震わせた。全身の筋肉が、けいれんし始めた。左腕が、勝手にびくびくと動く。右腕も、同じようにけいれんする。脚も、勝手に痙攣する。菊はソファに深く沈み、息を荒げた。体が、熱い。まるで内側から何かが燃えているような感覚。ノゾムは慌てて菊の肩を支えた。

「大丈夫だ……大丈夫だよ」

ノゾムの声が、優しい。菊はノゾムの腕にしがみついた。全身の筋肉が、激しくけいれんする。痛みが、体を貫く。菊は声を上げそうになった。でも、ノゾムが菊の服を、優しく脱がせ始めた。古い服が、菊の小さな体から剥がれ落ちる。ノゾムは菊の全身の肌を、じっと見つめた。

菊の皮膚が、波打っている。

全身の肌が、ゆっくりと波打っている。まるで、水面に風が吹いているように、皮膚がうねり、動いている。菊は自分の腕を、震える手で触れた。皮膚が、勝手に波打っている。痛みが、激しい。全身の筋肉が、けいれんしながら、皮膚が波打つ。ノゾムは菊の小さな体を、優しく抱きしめた。

「大丈夫だ……僕はここにいる」

ノゾムの声が、菊の耳に優しく響いた。菊はノゾムの胸に顔を埋めた。全身が熱い。筋肉がけいれんする。皮膚が波打つ。痛みが、体を貫く。でも、ノゾムの温かさが、菊を包んでいる。菊は小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。体が、熱くなり続けている。全身の筋肉が、激しくけいれんする。皮膚が、波打つ。菊はノゾムの腕にしがみついたまま、息を荒げた。変身が、始まろうとしている。菊はノゾムの優しい声に、耳を傾けた。痛みが、激しい。でも、ノゾムが「大丈夫だ」と言ってくれている。菊は小さく息を吐いた。

体が、熱くなり続けている。全身の筋肉が、けいれんする。皮膚が、波打つ。菊はノゾムの胸に顔を埋めたまま、痛みに耐えた。ノゾムは菊の小さな体を、優しく抱きしめ続けている。菊はノゾムの温かさを感じながら、激しい痛みとけいれんに耐えた。

全身の筋肉が激しくけいれんし、皮膚が波打つ中、菊はノゾムの腕にしがみついたまま、息を荒げていた。体が熱い。痛みが、全身を貫く。ノゾムは菊の小さな体を優しく抱きしめ続け、「大丈夫だ」と繰り返していた。ハルトはリビングの隅で、固唾を飲んで見守っている。

そのとき、菊の喉から、抑えきれない悲鳴が漏れた。

「っあああああっ……!」

悲鳴が上がった瞬間、菊の全身が、爆発的に一瞬で変化した。体が、異常に豊満で若い女性の姿に膨れ上がる。胸が、異常に巨大に膨らみ、尻と太ももがムチムチと異常に厚みを増し、腕と脚が長く滑らかになる。肌が、ぴんと張り、黒い長い髪が一瞬で伸びる。体が、クリスよりもさらに豊満で妖艶な姿に、一瞬で変わった。骨が軋む音が、ギリギリ……と大きく響く。肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。

ハルトは腰を抜かして床に座り込んだ。

「ば、婆ちゃん……!?」

ノゾムも一瞬驚いて手を離しかけたが、すぐに菊のそばに戻り、彼女の小さな体を支え続けた。悲鳴が上がってから、ほんの一瞬で体が豊満な若い女性になり、そして間髪置かずに、元の小さな老婆の体に戻った。骨が縮む音が、ギリギリ……と響く。肉が萎む音が、ミチミチ……と聞こえる。菊は体を震わせ、ノゾムの腕にしがみついた。

「痛い……痛い……」

菊は小さく呟いた。全身が痛い。骨と肉が、激しく動いた余韻が残っている。ノゾムは菊の小さな手を握り、「大丈夫だ」と繰り返した。ハルトは床に座ったまま、目を丸くしている。

次に、左胸が爆発的に膨らみ始めた。布団の中で脱がされた菊の体が、ソファに横たわったまま、左の胸が異常に大きくふくらんでいく。肉が急速に充填される音が、ミチミチ……と響く。左の胸が、異常に巨大になり、右の胸も同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、すぐに元の小さな胸に戻っていく。骨が軋む音と肉が動く音が、ずっと続いている。

菊がうめき声を上げると、今度は両脚がムチムチと豊満なものに変わり始めた。肉が急速に付き、太ももとふくらが異常に厚く長くなっていく。尻が、爆発的に膨らむ。菊の小さな体が、跳ねるように浮き上がる。骨が軋む音が、ギリギリ……と続き、肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。両脚と尻が異常に豊満になったあと、すぐに元の小さな体に戻る。菊は体をよじりながら、ノゾムに懇願した。

「ノゾムさん……見ていて……お願い……」

ノゾムは菊の小さな手を強く握り、うなずいた。

「見てる……ずっと見てるよ」

ノゾムの声が、優しく響いた。菊は少し安心したような顔をしたが、すぐに痛みに顔を歪めた。

次に、左腕がグキグキと異常に伸び始めた。骨が、3倍近くの長さに引き伸ばされる音が、グキグキ……と大きく響く。肉が、異常に長く伸びていく。左腕が、クリスの長さを超えて異常に長くなったあと、ゆっくりとクリスの長さに落ち着く。右腕も、同じようにグキグキと伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になったあと、再度胸が爆発的に膨らみ始める。左の胸が異常に大きくふくらみ、縮みかけたあと、また爆発的に膨らむ。肉が動く音が、ミチミチ……と続き、骨が軋む音が、ギリギリ……と響く。

顔が、グニグニと激しく動き始めた。皮膚が、老いたり若返ったりを繰り返す。しわが現れたり消えたりする。白髪が、黒く染まったり白く戻ったりする。顔の骨が、グニグニと動く音が聞こえる。声も、菊の老いたうめき声とクリスの妖艶な声の間を行き来する。

「痛い……っ……あ……ん……」

声が交互に変わる。足も背中も、ゆっくりと伸びていく。全体的に、クリスの姿に近づいていく。骨が軋む音と肉が動く音が、ずっと続いている。菊はノゾムの手にしがみついたまま、体を震わせた。痛みが激しい。でも、ノゾムがそばにいてくれる。菊は少しずつ、クリスに近づいていくのを感じた。

落ち着きかけたと思った瞬間、今度は全体が菊に戻り始めた。背丈が縮み、胸が萎み、腕と脚が短くなり、顔にしわが戻る。骨が縮む音が、ギリギリ……と続き、肉が萎む音が、ミチミチ……と聞こえる。菊は体をよじりながら、呟いた。

「呪いが激しい……もう耐えられない……」

声が、老いたうめき声になっている。菊はノゾムにすがりついた。痛みが、激しい。体が、菊とクリスの間を行き来し始めている。胸が、また爆発的に膨らみ始めたのをきっかけに、今度は全身がクリスに近づき始めた。全身が、菊とクリスの状態を激しく行き来し始める。骨が軋む音と肉が動く音が、止まらなくなるかと思った。

そのとき、ノゾムが菊(クリス)の唇に、優しくキスをした。

ノゾムの温かい唇が、菊の唇に触れた瞬間、全身が爆発的に膨らんだ。体が、一瞬で異常に豊満で若い女性の姿に変わる。胸が、異常に巨大に膨らみ、尻と太ももがムチムチと異常に厚みを増し、腕と脚が長く滑らかになる。骨が軋む音が、ギリギリ……と大きく響き、肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。体が、少しの間、その豊満な姿のまま止まったあと、ゆっくりとクリスの体に落ち着いていった。

全身が、激しく動いた余韻で震えている。骨が軋む音と肉が動く音が、ようやく静かになった。クリスはノゾムの腕の中で、息を荒げた。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。体が、クリスとして安定している。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいる。

クリスはノゾムの胸に顔を埋め、感謝の涙を流した。

「ありがとう……ノゾムさん……」

声が、妖艶で甘い。涙が、頰を伝う。ノゾムはクリスの体を優しく抱きしめ、静かに言った。

「どっちの君も、君だよ」

ハルトは床に座ったまま、目を丸くしたまま固まっていた。リビングは静かになった。骨が軋む音も、肉が動く音も、もう聞こえない。クリスはノゾムの腕の中で、ゆっくりと息を整えた。体が、若さで満ちている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。呪いは、ノゾムの愛で溶かされた。クリスはノゾムの胸に顔を埋めたまま、静かに涙を流し続けた。

変身が完全に落ち着いたあと、クリスはノゾムの腕の中でゆっくりと体を起こした。巨大な胸が重く、ムチムチとした腰と脚が、布団の上で安定している。長い黒髪が肩に落ち、肌は若々しく滑らかだ。全身に、激しい変身の余韻が残っているが、痛みはもうほとんどない。骨が軋む音も、肉が動く音も、完全に消えていた。

クリスは自分の体を、両手で丁寧に触れた。左の胸、右の胸、太もも、尻……すべてが、クリスの姿のまま、変わらない。昨日まで、何度も繰り返していた「元に戻る」感覚が、完全に消えている。体が、熱く安定している。クリスは小さく息を吐き、ノゾムの顔を見上げた。

「もう……戻らない」

声が、妖艶で甘い。ノゾムはクリスの体を優しく抱きしめ、静かに頷いた。

「戻らないよ。もう大丈夫だ」

ハルトは床に座ったまま、目を丸くしたまま固まっていたが、徐々に現実を受け入れ始めていた。クリスはハルトを見て、優しく微笑んだ。

「ハルト……私、クリスよ。婆ちゃんは、もういない」

ハルトはしばらく言葉を失っていたが、やがて小さく呟いた。

「……姉さん、みたいだな」

その言葉に、クリスは胸が熱くなった。ハルトにとって、クリスはこれから「姉」になる。88歳の老婆だった自分が、22歳の妖艶な女性として、ハルトの姉として生きていく。クリスはハルトの肩を、優しく叩いた。

「これからは、よろしくね」

ノゾムはクリスの手を握ったまま、静かに言った。

「僕も……一緒にいるよ。クリスさんで、いい」

ノゾムの言葉に、クリスは再び涙を浮かべた。呪いは、ノゾムの愛で完全に溶かされた。真の愛で両方の姿を受け入れられたことで、呪いの力はもう、菊を苦しめることはない。クリスはノゾムの胸に顔を埋め、静かに涙を流した。

その日から、クリスは菊の姿に戻ることはなくなった。

家の中は、少しずつ変わっていった。クリスはハルトの「姉」として、優しく家事を手伝い、ノゾムと一緒に家を支えていくようになった。ノゾムはクリスと恋人になり、やがて同棲するようになった。夜、クリスはノゾムの隣で眠り、朝、ノゾムの温かい声で目覚める。巨大な胸が重く、ムチムチとした体が、ノゾムの腕に包まれる。クリスは毎朝、ノゾムの胸に顔を埋めて、「ありがとう」と小さく呟いた。

ハルトは最初、戸惑っていたが、徐々にクリスを「姉」として受け入れていった。大学から帰ってきたハルトに、クリスが優しく「おかえり」と声をかける。ハルトは照れくさそうに「ただいま、姉さん」と返す。夕食の時間になると、三人でテーブルを囲み、笑いながら食事をした。ノゾムはクリスの隣に座り、時々クリスの手をそっと握る。クリスはそれを、静かに受け止めた。

呪いのことは、もう誰にも話さなかった。ノゾムだけが、すべてを知っている。クリスはノゾムにだけ、時々、昔のことを話した。88歳の老婆だった頃の寂しさ。ノゾムへの想いが、呪いを刺激したこと。そして、ノゾムの愛が、すべてを救ってくれたこと。ノゾムはいつも、優しく耳を傾け、クリスの手を握ってくれた。

「もう、戻らないよ。君は、君のままでいい」

ノゾムの言葉に、クリスは微笑んだ。巨大な胸が、ノゾムの胸に寄り添う。ムチムチとした体が、ノゾムの温かさに包まれる。クリスはノゾムの唇に、優しくキスをした。

「ありがとう、ノゾムさん」

家の中は、穏やかで温かい空気に包まれていた。クリスはハルトの「姉」として、ノゾムの恋人として、そして一人の女性として、新しい人生を歩み始めていた。呪いは、もう二度と彼女を苦しめることはない。クリスは毎朝、鏡に映る自分の若い姿を見て、静かに微笑んだ。

「もう、寂しくない」

クリスはそう呟き、ノゾムの待つリビングに向かった。大きな胸が、優しく揺れる。ムチムチとした腰と脚が、床を踏みしめる。クリスはノゾムの元へ、幸せな笑顔で歩いていった。

(完)

変身描写を書きたいだけ(TS)

「お主、あの祠を壊したのか!?」老人が青年に向かって叫ぶ。その指が指す先には、苔が生えた石がゴロゴロと転がっている。青年は悪びれることもなく、鼻であしらう。「ただの石ころと紙切れだろ?ジジイ、そんなんで脅そうったって……」

「あの祠には、どんな男でもダイナマイトボディのお姉ちゃんに変えてしまう悪霊が封じられてたと言うに……!」

「はぁ?何いってんだよ、ボケてんのか!?」

青年が大声を上げると同時に、彼の髪がバサッと伸びる。

「なっ!?」その骨格もメキメキと音を変えて変わっていく。腰骨が大きく広がり、背骨は後ろにアーチを描いて、肋骨がすぼんでいく。みるみるうちに、青年の上半身は華奢になっていき、肩もだんだんなで肩に変わっていく。

「祟りじゃ、祟りじゃ!」そう叫ぶ老人も、曲がっていた腰がまっすぐになり、よろよろとしていた足にも筋肉と脂肪がついて、シワというシワが消えていく。

「何かが、胸に入り込んでくるっ!!」

青年の胸が盛り上がり始め、あっという間に女性の乳房ができて、どんどん膨らんでいく。彼の尻も後ろに突き出され、丸みを帯びて大きくなっていく。筋肉質だった脚も柔らかい輪郭になり、すべすべとした肌に包まれていく。

「本当に悪霊が!?う、喉が……っ!」青年の喉仏が消えると同時に、その声のトーンが釣り上がる。股間が潰されるような痛みが走り、バストとヒップがさらに一回り大きくなると、変身は終わった。

「どうしてくれるんじゃ!」と青年の首を掴む老人ももはや、彼と同じく豊満な女性へと変化していた。異常事態にもかかわらず、サイズが完全に合っていない服の襟元から覗く、深い谷間につい目が行ってしまう。

そしてその巨大な胸はもう一対の乳房……つまり青年自身の双丘に押し当てられ、むぎゅぅっ、と形を歪ませている。自分の尻に手を当てるとそこには弾力感のあるヒップができているのが分かる。

「まぁ、これでもいいか……」と、老人だった美女を抱き寄せる青年。「お、お主、なにをするつもりじゃ……」

「せっかく美女になれたんだから、楽しまねぇと、なぁ?」

運命を変える錠剤

GPT系のAIで英文で作成し、手動の編集なしで、日本語に翻訳したものです。

薄暗い実験室の中、無数のフラスコや器具が光を反射し、長い影を壁に映していた。その混沌とした光景の中に、ドクター・ウーサーが立っていた。中年に差し掛かり、短く太った体を持つ彼は、何年もかけて研究してきた結晶を目の前に置いていた。荒い息をつきながら、額の汗を手の甲でぬぐった。

「これが…最後だ…これで終わりだ…」彼は低くつぶやき、小さな錠剤がまるで不気味に光っているかのように見つめた。遺伝子を改変するためのこの錠剤は、年老いた自分の体を再構築し、若さと力を取り戻すためのものであった。彼は科学者として優れていたが、今やその絶望は慎重さを忘れさせていた。

ウーサーは自分の丸々とした腹に手をやり、その重さと共に自らの選択の重さを感じ取った。「こんな肉の塊に囚われたまま…生き続けるなんて、もう耐えられない…」震える声で、彼はまるで自分に言い聞かせるように言った。ガラス扉に映る自分の姿に目をやると、そこにはかつての自分とは程遠い男が立っていた。白髪が混じり始めた髪、たるんだ皮膚、短くてずんぐりした体。時が経つにつれ、彼の体は自分を裏切ったかのように思えた。

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肌の漂白剤

「黒ずんだ肌におすすめ!1日3錠飲めば、10日目に効果が出ます!」

というのが、三郎(さぶろう)が10日飲んできた薬の宣伝文句だった。40代に入ろうとしていた彼の肌は、長年嗜んできたタバコの煙が染み付いたように黒ずんでいた。
現場仕事の彼にとっては、そこまで気になっていなかったことではあったが、テレビで「きれいな肌の男性の方がモテる」というのを見て、一つ薬を試してみることにしたのだった。

「しかし、全然効き目がない……もったいないから飲んでたが、偽物だったか」

残り1錠で、全部の薬を飲み終わる。夕食の片付けをしながら、相変わらず浅黒い色の自分の肌を見た。

「やっぱ、そんなに気にするもんでもなかったか」

バツイチだが、まだ時間の余裕はある。肌が汚かろうが、どこかでまた新しい伴侶を見つけられるだろう。彼は、最後に残った薬を袋からだし、水で飲み干した。

「だが、ちょっとくらいきれいになっても良かったんじゃないか?」

その時、彼の右腕からベリッと何かが剥がれる音がするとともに、激痛が走った。

「いっつ……な、なんだってんだよっ!」

彼は、いつの間にか付いていたシールか何かが剥がれたのだろうと思って、右腕を見た。

「な……な、なんだこりゃぁっ!」

その手首が、脈動するように膨れたり、しぼんだりしている。そして、その膨れる範囲が、どんどん広がっていた。

「俺の、俺の腕がぁっ!」

やがて腕全体が風船のように、パンパンに膨れ上がった。

「な、んだよ……これ……」

三郎は、恐る恐る膨れた右腕を触る。だが、自分の腕を触っているはずなのに、右腕には触れられている感覚がない。それは腫れ物と言うより本当に風船のようで、中が透けて見えるようだった。

「気持ちわりいなぁ……うわっ!?」

パァンッ!!と、ただの膜と化した三郎の右腕の皮膚が、破裂した。だが、変わらず痛みはない。三郎の左腕のひどい日焼けの後の剥がれたもののように、右腕から半透明に垂れ下がった。

「ったく……なんだってんだよ」

三郎はその皮膚を剥がす。そこには、現場で酷使された筋肉質の腕ではなく、きめ細やかな白い皮膚に包まれた、細い腕があった。

「……は?ん、こ、こんどは手がっ」

右の手指が、ドクンドクンと脈打ちながら膨らんでいく。ベリベリと皮膚が剥がされる音が聞こえ、やがて膨らみは手のひら全体に広がる。

「ま、まさかっ」

三郎は膨らんだ右手を、左手で引っ張った。すると、右手の皮膚は手袋を外すようにスルッと抜け、中には細くて長い、右腕と同じように透き通った肌の手指があった。

「あの薬のせいで、皮膚が剥がれていっているのか!?」

しかし、変わったのは皮膚の色だけではない。明らかに、新たに現れた右腕は、元の三郎よりほっそりとしたものだ。輪郭も柔らかく、どこか女性らしささえ感じる。

「まさか、女になってる?はは、そんなわけねーか」

その言葉に答えるがごとく、今度は股間から激痛がした。

「いぎっ……う、嘘だろ、おいっ!」

三郎は、トイレに駆け込み、便座の上にどんと腰かけて、ズボンを下ろした。そこには、異常に盛り上がったトランクスがあった。

「や、やめろ、やめろっ!!」

トランクスも下ろすと、先端だけが異様に膨張と萎縮を繰り返すペニスがあった。そして、メリメリとペニスの皮が剥がれていく音がしている。そこで三郎は、その膨張と収縮が、自分の呼吸に連動していることに気づいた。息を吸えば膨らみ、吐けば縮む。

「じゃ、じゃあ、息を止めれば……!」

三郎は息を止めようとしたが、本能的に、水に潜る前のように、一気に息を吸い込んでしまった。三郎のペニスはそれに呼応してありえないくらいに膨張してしまった。トイレに、皮が剥がれる音が響いた。

「ひぎいいっ!!」

あまりの痛さに、荒い息になる。睾丸までも大きく膨れ上がってしまい、ついに……

パァンッ!と、三郎の股間は破裂した。

「うわああぁぁっ!!」

その皮は、トイレの中に垂れ下がり、水に引っ張られるように自然に落ちてしまった。

「まさかまさかまさか……っ!」

そこには、毛一本ない、スッと入った一本のスジしか残っていない、寂しい股間が残るだけだった。

「俺、やっぱり、女にっ……!あ、あたまがっ!」

顔を焼かれるような痛みが走る。たまらず、顔をかきむしると、ボロボロと皮膚が取れ、中からは別人のような、端正な顔が現れる。髪もサラサラと伸び、三郎の手にかかった。

「の、喉が苦し……ぁ……ぁあっ!声が!」

三重顎のように、首まわりがブクゥッっと膨れる。喉仏がなくなったせいで、三郎の声のトーンがグイグイあがり、アルトくらいの女性のものになってしまった。プシュッと空気が抜けると、首の皮はダラッと垂れ下がった。

「ま、また皮膚がっ!洗い流さないと!」

パニックに陥りかけていた三郎は服を脱ぎ捨て、浴室に飛び込み、蛇口を捻った。しかし、首にシャワーを当てた瞬間、乳首に激烈な刺激が走った。

「ぎゃぁっ!」

腰が抜けた三郎はシャワーを投げ捨て、壁に背を当てて床に座り込んでしまった。その呼吸ごとに、ビリッビリッと胸の突起に電撃のような痛みが走っていた。

「胸、胸がっ」

ビクン、ビクンと乳首が振動し、胸筋がムギュ、ムギュと形を変えていく。乳首の周りに小さな山が、空気入れで空気を入れられるように形成され、その周りも丸く膨らむ。

「くっ、今度こそっ……」

三郎は息を止め、女性の象徴とも言える胸の膨らみの成長を抑えようとした。思惑通り、胸の成長は止まったが、その頃には胸の筋肉はすっかり鳴りを潜め、元々とはかけ離れたものになってしまっている。

そして、1分くらいして、息止めにも限界が来た。

「ん……ぐ……はぁっ、はぁっ」

そして、大きく息をしてしまう三郎。口から入った空気を受け止めるかのように、ギュゥギュゥと乳房が膨れ上がり、元々の三郎の皮膚の中で、深い谷間ができていく。そして、ピリッ、ピリッと皮でできた乳袋に亀裂が生じ始めると、浅黒い被覆の中から、色白な肌が覗いた。

「だ、だめ……っ」

だが、内部からの膨張に対して、あまり弾力のない皮膚は耐えるすべを持たず、ビリビリと破れて中身の女体をさらけ出し、大きく育った胸がブルンッと飛び出した。

胸に気を取られていた三郎だったが、体全体の皮膚がボロボロと取れ、中に形成された女性の生肌に取って代わられていた。腰の部分もピンピンに肌が張ったと思えば、中からプリッと弾力のある尻肉が飛び出す。脚の皮はタイツのように脱げ、左腕もブカブカの長手袋をしているような状態になった。

もう事態を受け入れるほかなくなった三郎は、立ち上がって風呂場の鏡を見た。薬の効能は完璧で、全身の肌がすべすべとした白い物になっていた。ところどころに残っている元々の皮膚の黒さのせいで、全身が輝いているようにすら見えた。

「一体、俺が何をしたっていうんだよ……」

鈴の音を鳴らすような声と、柔らかい輪郭、出るところは出ている良いスタイル。鏡の中に映るのはグラビアに出てきそうな女性だ。三郎は無意識に自分の体を触り、その女性が自分であるという事を確認していた。

「し、しかし、結構、好みの女になっているな……」

胸を持ち上げると、そこそこの重さと弾力を感じる。多少肉がついた腹と太ももに手を押し込み、その肌の張りを確かめる。

魔のアクセサリ

時は夜も更け、皆が寝静まった頃。場所はとある日本家屋の一部屋。普通の大きさ、普通の畳敷きのその和室のふすまには、普通では考えられないほどの札が貼られていた。その中に一人、その家の主の孫である少年がたたずんでいた。その視線の先には、台に載せられた首輪のようなもの……チョーカーが置かれていた。

「これなんだろ……こんな変なところに置かれてるんだから、すごいものだよね……?」

子供ならではの好奇心で、チョーカーを手に取る。小学生になったばかりの少年には少し大きめの、革製のチョーカーを、少年はそのまま首に巻いた。

「えっと、この金具をとめるんだよね」

テレビで見たことのあるアクセサリの身につけ方を真似て、少年がチョーカーを締めたその時だった。

「な、なにこれ!?」

チョーカーが赤い光を発し始め、少年の頭の中に何かが入り込んでくる感覚がした。その流れは全身に及び、少年の体全体に赤い光が行き渡った。

「えっ、えっ」
「(あらまぁ、男の子?)」
「ひぃっ!?」

いきなり、聞いたことがない女性の声が聞こえ、少年は腰を抜かして尻もちをついた。

「(そんなに驚かれるのも心外だわ。私の力を求めてチョーカーを付けたんじゃないのね)」
「ち、力……?」

声の主を見つけようと、周りを見渡す。だが、お札まみれの襖があるだけで、部屋には少年以外誰もいなかった。

「(一体誰を探してるの?私はあなたの中にいるのよ)」
「ぼくの中!?」

今度はシャツを脱ぎ、おなかの様子を確認する少年。女性のため息が聞こえた。

「(はぁ……まぁいいわ。こんなにか弱い子なら、体を乗っ取ることもできるはずだし。えいっ!)」

少年の体が、彼の意思に反して勝手に動き始めた。

「や、やだっ」
「(やっぱりね。何十年も封印されてたから退屈だし、ちょっとあなたの体で遊ばせてよ)」
「おばさんはだれなの!?」
「(おばさんですって。確かに数百年はこの世に存在しているけど、この時代で女性に向かってその呼び方はいけないことなのよね。罰として、私がいいって言うまで喋っちゃだめ)」
「む、むぅっ!」

口が閉じて開かなくなる。その代わり、少年に体のコントロールが戻った。足が動かない以外は。

「(さぁ、こんな窮屈な体、さっさと作り変えちゃいましょ。まずは腕からにしようかしら)」

少年の左腕が、ベキベキと長くなる。小さな手のひらが長く、細く成長する。男性であるはずの彼の腕は、女性の大人のものになっていた。

「(こんなんでいいわね。じゃあ右腕も)」

右腕も左腕に続くように成長した。次に背骨や肋骨が成長し、上半身が大きくなる。少年の小さな下半身に、大人の上半身が付き、その上にはまた子供の顔がついているといういびつな状態になっていた。

「(ちょっと体を支えにくいかもしれないけど、一つ一ついじくるから仕方ないわよね)」

骨盤がメキメキと横に広がり、相対的にウエストが絞られていく。左足がパジャマからにょきにょきと伸びて、2倍ほどの長さになる。

「(あ、服を着たまま大きくしちゃった……脱ぐのも難しいだろうから……)」

太ももにムチムチと脂肪がつき、パジャマがビリビリと破け始める。裾が思い切り食い込み、少年は痛みを感じた。

「(もうちょっとだから……えいっ!)」

勢いを付けてバンッと太くなる左足。パジャマがひとたまりもなく破れると、太い木の枝のような太ももがお目見えした。

「(じゃあ右足も……)」

右足は、長くなると同時に急激に太くなっていった。パジャマは、腰のゴム部分を残して破れてしまった。

「(お尻も大きくしましょうね)」

少年の尻が、左、右、左、右と一回りずつ大きくなる。梁のある女性のヒップが、パジャマのゴムを押し広げながら、着実に成長していった。

「(このゴムが切れるまで大きくしてみましょうか。えいっ、えいっ!)」

左の尻がバインっと膨らみ、それに続いて右がムギュッと張り出す。それが続いて、過剰なまでのサイズになったところで、ようやくゴムがビチッと切れた。

「(私の力ってやっぱりすごいわね……こんなことに使ったことなかったけど)」

少年の下半身は、男にのしかかれば潰せてしまえそうなほどムッチリと成熟し、先程とは逆に、貧相な上半身とのバランスが取れなくなっていた。
声を出すことのできない少年は、柔らかくも垂れず、張りを持った太ももとヒップに見とれていた。

「(じゃあお胸も……)」

少年の左胸がムギュッ!っと膨らみ、大きくなった上半身のせいですでにサイズが合わないパジャマの胸の部分が大きく押し上げられた。その先端には、突起のような形状が浮き上がっている。

「(さすがに息が苦しいのはやめましょうか、胸を押さえられたら息ができないでしょ。ほら、服を脱いで)」

脱いでと言った割には、また少年の体の主導権を奪い、無理やり脱がせる女性。そこには、左胸は巨乳、右胸はまな板という釣り合いの取れない少年の上半身があった。

「(じゃあ、続きをしましょ)」

今度は、右胸がバインッ!っと膨らみ、さらにゆっくり膨らんで左胸にサイズが合うようにした。

「(そろそろ顔も整えて……と)」

少年の髪が、腰までバサッと伸び、赤色に染まった。顔も無邪気な子供のものから、魅惑的な女性のものに変わり、瞳は真紅に色を変える。

「(もう少し、胸は小さくしておきましょうか)」

左胸がプシュッと縮む。

「(いや、やっぱり大きく……)」

右胸がブルンと膨らむ。

「(うーん、どうしよう……)」

少年の胸が暴れ始め、膨らんだり縮んだりを繰り返す。

「(これは服が合わないし、こんなんじゃ格好がつかないし……)」

まな板に戻ったかと思えば、頭が入ってしまいそうなほどの爆乳に育ち、人並な乳房まで縮んだ次の瞬間には床に付きそうなほどの巨大な肌色の塊に成長する。

1分ほどそれが続いて、やっと少年の胸のサイズは落ち着いた。

「(よし、これを覚えて……と。元に戻っていいわよ)」
「えっ」

やっと声を出せた少年の体は、元のちいさな男児に戻った。それきり、女性の言葉は聞こえなくなった。

「な、なんだったんだろ……」

いつの間にか、パジャマも元に戻っている。少年は、両親のいる部屋に戻って、自分の布団に潜って、目を閉じた。

だがすぐに、勝手に目が開いた。勝手に手足が動き、布団から出て、父親が寝ている布団に潜り込む。

「ん……どうした?」

父親が気づいて目を覚ました。

「怖い夢みちゃって……」

勝手に、声が出る。

「よし、よし……」

父親に撫でられる少年の頭から、赤い髪が伸びた。

「パパ……」

父親に抱きつく少年の体が、メキメキと大きくなる。その成長する胸が、ビリビリと服を破りつつ、父親の体に押し付けられていく。

「な、なにが起こって……!?」
「パパも、チョーカーの力、楽しんでね」

雨の日

「雨の日のお前ってさぁ……」
「ん?なんだよ」

夏に入りかけの高校の教室から、外を眺める二人の男子高校生。今日の天気は昼から雨だ。

「おっぱいでかいよな……」
「やめろよ」

普通の男子高校生であれば、意味不明な会話。だが、この二人……翔(しょう)と大輝(だいき)……にとっては、普通の会話だった。というのも、翔は雨が降り始めると体が女性のものに変化するのだ。「メタモルフォーゼ症候群」というものの一種らしく、治す方法はなかった。

「今日も女子用の制服持ってきてるんだろ、雨が降ったら着替えるやつ」
「うっせーな、天気が昼間に変わるのめんどいな……」
「居眠りしてるときに雨が降ったら面白そうだな」
「ぜってー寝るもんかよ!」

と言っていた翔は、外が一層暗くなり、遠くでは雨が降っているようなときになって、居眠りしていた。

「……まいっか。みんなこいつの女の姿は知ってるわけだし」

大輝は、窓に水滴が付き始めたのを見て、翔の体を見始めた。授業中ではあるが、翔の席は大輝の前だ。

そのうち、コキコキと骨が軋む音がし始めると、翔の体の表面がだんだんと波打つように変化を始めた。シャツの上から分かるくらいに、筋肉が痙攣している。

「(そういえば、こいつが女になってる最中の様子は見たことなかったな)」

いくら体がメキメキ音を立てても起きない翔を大輝が眺めていると、急に翔の両腕がギュイッと細くなり、シャツがぶかぶかになってしまった。と同時に、シャツの背中の部分が引っ張られる。

「ん……うわぁっ!」

翔が飛び起き、周りの生徒も翔の方に振り向いた。その胸がムクムクと膨らんでいた。

「き、き、着替え……ないと!」

翔は、パニックに陥ったのか、その場でシャツを脱ぎ始めた。

「お、おい、翔!」
「な、なんだよ、うぐぁっ!」

ボタンを外し終わるころに大輝が翔の露出行為を止めようとする。翔が大輝の方を振り返った瞬間、腹筋が消え、ウエストがギュッと絞られた。逆に人並みまで成長していたバストがバインっと大きくなり、それを見せつけられた大輝は股間が苦しくなるのを感じた。

「こ、こんなところで服を脱がない、ほうが……」
「あ、ああ、お、俺と……したことが……」

子宮ができていくのか、下腹部が少しだけ膨らむ。肌は木目細やかになり、へそは縦にスッと伸びた形になる。翔は体の中が女性に変えられていく刺激に必死に堪えている。いつの間にか伸びていた髪は肩にかかるほどになる。

「う、うぅ……っ」

ズボンの尻の部分がギチギチと音を立てる。逆に、他の部分はぶかぶかになり、ズボンがずり落ちてヒップのラインが見える。

「お、俺……わ、たし……?」

精神が女性版の翔に変わっていくとともに、顔の作りも柔らかいものになる。

「恥ずかしい、やだぁっ!!」

変身が終わったのか、かばんを持って飛び出していく翔を、呆けた顔で見届ける大輝だった。

その日の帰り、二人は一つの傘の下、一緒に歩いていた。

「ったく、お前制服は忘れなかったのに、傘忘れるとか」
「仕方ないでしょ、この制服用意してたら時間なくなっちゃったんだもん」

大輝はため息をつく。

「お前、これは結構大きい貸しだぞ」
「え?そう?それじゃあ」

翔は、巨大に育った胸を大輝の腕と体に押し付けた。大輝にとってはいつものことになりかけていたが、それでも顔を赤らめるほどには、柔らかい感触に興奮した。

「私のこの体、好きにしていいよ」
「ば、馬鹿野郎……!」

増産体制

アメリカの片田舎に、一つの街があった。大きな工場の周りに、数百人が住んでいるその街には、ある特産品がある。

それは、オレンジジュース。街の工場から生産され、その街でしか売られないそのジュースは、アメリカ全土でも随一の美味しさで知られていた。しかし、不思議なことがあった。ジュース工場には、誰も勤務していないのだ。入っていくのも、出てくるのも、ジュースを積むためのトラックだけ。違いは、入っていくときは空き瓶だけが積まれたトラックが、出てくるときにはジュースの瓶で満杯になっていることだ。

トラックの運転席はよろい戸で中が見えず、そこに入るための扉すらない。商店の店主たちは、店の前に止まったトラックの中に代金を置いて自分の分のジュースを降ろし、トラックが出ていくのをただ見送るだけ。工場の従業員を見たものは、誰もいなかった。

夏の日に、それは起こった。

「ママー!ジュース一本飲むわよー!」

ブロンドヘアーの少女が、冷蔵庫にいっぱい入っているジュースの瓶から、一本を選んで取り出した。水よりも安いジュースは、住民の水分補給の基本手段だ。一つの家に数十本のジュースが保管されているのは、当然のことだった。

自分の部屋にジュースを持ち帰り、ゲームをしながらジュースを開けようとするその少女の名前はジェシー。高校生になり、次の秋からは隣町の高校に通うことになっていた。オレンジジュースで育った彼女の体は、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるメリハリのあるものだ。

「ん、ちょっと開けづらいわね……あれ?フタが金色だ」

ジュースの瓶は、普通は銀色のフタで栓をされている。それが、この一本だけは金色だった。これまでに飲んできた数百本のうち一本でも、金色のフタで閉められたジュースなど見たことがなかった。

「もしかして、これはとっても美味しいジュースなのかも!えいっ!」

親指でフタをグイッと押すと、フタは勢いよく飛んで行った。

「うわ、本当に美味しいわ!私ったらラッキーね!」

そのあまりの美味しさに、ジェシーは瓶一本分を一気に飲み干してしまった。他にも無いかと、冷蔵庫を開け放って、金色のフタを探す。だが、一本も金色のものはなかった。

「ほしい、ほしい、あのジュースがほしい……」

家から飛び出して、街中の店を探す。それでも、同じ金色のフタは見つけられない。

「な、なんで……?あ、そうだ、工場に行けばあるかも……」

もはやジェシーの体が、金色のフタのジュースを求めているようだった。足が勝手に動き、いつの間にか、固く閉ざされた工場の門の前まで来ていた。

「どうにかして工場に入る方法はないかしら?あれ?」

壁に大きな穴が空いている。車が突っ込んだあとのように、壁がボロボロになっていたのだ。ジェシーは、躊躇することなくその穴から工場の敷地に入り、目についた建物の扉を開けて中に入った。

「すごいオレンジジュースの匂い……」

中は狭い廊下になっていた。明かりが少ないため薄暗く、生産設備の音がゴウン、ゴウンと低く、周期的に響いている。ただ、人の姿はどこにも見られない。ジェシーを監視するようなカメラもない。あるのは無数の扉だけだ。

「どこにいけばジュースが……あれかな?」

一つの扉が、少しだけ開いていた。中から光が漏れている。ジェシーが扉を開けて中に入ると、2階の高さまで吹き抜けとなっている大きな部屋だった。壁や天井は真っ平らの鉄板でできていて、床は排水溝で囲われている。そして、その中央に、小さな机と、ジェシーがここに入ってきた理由である、金色のフタのジュースが置いてあった。

「やっぱりあった!私の勘、冴えてるわ!」

ジェシーはジュースに飛びつき、迷うことなくフタを開けて、中身を飲み干した。

「くーっ、全身に染み渡る!ん?」

ついさっき体験したような無上の快感とともに、違和感があった。ジュースが、本当に全身に染み渡っていくような、体が侵食されていくような感覚。そして、それとともにグジュグジュと液体の音が手足から聞こえてくる。

「ちょ、ちょっと、何よ、これ!」

そして、全身が絞られるような感覚と、何かが胸に集まる感覚。下を見ると、もともと大きく膨らんでいるジェシーのバストが、さらに成長していた。

「ひっ、に、逃げなきゃ……足が動かない!?」

絞られた足がペラペラの皮だけのような状態になり、力を入れても動かない。気づくと、手も、お腹もペラペラになり、ジェシーは床に倒れて動けなくなった。逆に胸は特大サイズに膨れ上がり、床の上でタプンタプンと揺れた。体の中身すべてが、胸に集められたかのようだった。

「あ、胸、なにか、でるぅっ」

その胸の先端から液体が出てくる。それは、オレンジ色の甘い液体、まさにオレンジジュースだった。液体の勢いは段々と増し、床がオレンジジュースまみれになった。そしてそのジュースの分、胸は縮んでいき、最後にはジェシーは空気の抜けた風船人形として床に横たわった。

「……!」

喋ることすらできず、ただ涙を流すだけだったジェシーの下半身を、何かが持ち上げた。その股間に、ゴム製の管が刺されると、何かの液体が流し込まれ始めた。

すると、ジェシーの体に厚みが戻り始める。ある程度戻ると、やっとのことで立ち上がり、声を発することができた。

「死んじゃうかと思ったわ……体も元に戻ってきたし、これを外して……」

股に刺さりっぱなしの管を引っ張りぬこうとする。だがそれは外れず、液体は流し込まれ続ける。

「え、えっ、ちょっと待ってよ!」

力いっぱいやっても、無駄だった。その間にも、液体はどんどんジェシーの体積を増やしていく。腹はフルフルと揺れながら、アドバルーンのように膨らみ、手足も中身を詰められるソーセージのように、パンパンに膨れ上がっていく。重くなりすぎた体を支えられず、ジェシーはまた動けなくなった。尻もムギュギュギュと大きくなり、ジェシーの頭の数十倍の体積まで成長していく。服はビリビリに破け、ほとんど裸同然となっていた。

「私が、なんで、こんなこと……」

腹の大きさが高い天井に届くほどに大きくなると、その天井がガコンと音をたてて下に動き出した。

「えっ!?」

容赦なく液体はジェシーを膨張させていたが、部屋の方はジェシーを潰しにかかっていた。ジュースを絞り出される果実のように。

「や、やだっ!ふがぁっ!」

部屋を埋め尽くすほどのおなかが潰されると同時に、胸がブクゥッと膨らんだ。腹部に入り切らなくなった何かが、乳房へ、その乳腺へと溜め込まれていく。そして、ジェシーの胸は残った空間を埋め尽くしていく。

「お、おっぱいが、でちゃうぅっ!」

そして、部屋がジェシーの体でいっぱいになったところで、胸の先端からブシュゥッ!!とオレンジジュースが飛び出してきた。天井の降りる速度が速くなり、その勢いが増していく。

「あああああっ!!潰される!絞られちゃうぅぅっ!!」

部屋はオレンジジュースの海となり、その一部はジェシーの口にも入ってきた。ジェシーは自分の体から出るジュースが、あの金色のフタのジュースと同じであることに気づいた。

「私のジュース、おいしい、おいしいぃぃっ!」

ごくごくと飲み始めるジェシーは、そのまま完全に潰されるまで自分のジュースに酔いしれた。

液体が止まり、部屋がもとの高さまで戻ると、部屋一面に、平面化し、伸び切ったジェシーだけが残った。

時間が立って、ジェシーの目が覚めると、彼女は元のサイズまで戻っていた。その股間に、またもや液体が流し込まれ始めるが、今度は喋れるほどに膨らみ直したところで、液体は止められた。

「もしかして、私、出してもらえるの……?」
「いや、それは無理ですね」
「ひっ!?」

そこには、外套を着た、初老の男性が立っていた。整えられたオレンジ色の髪と金色の瞳は、その男性が人ではないことを匂わせていた。

「だ、誰よアンタ!」
「おっと、これは失敬。私はこの工場を管理しているものです。名前はありません。工場長とでもお呼びを……」
「こ、工場長?名前がない?」

男性は深くお辞儀して、続けた。

「とにかく、ジェシー様はこの工場の増産計画に欠かせない存在なのです。試しに絞らせてもらいましたが、最高品質のジュースが出ますね。素晴らしい」
「す、すばらしいって……!んぁっ!」

また、ジェシーの胸が膨らんで、逆に全身がしぼみ始めた。

「そう、ジェシー様の体は、ジュース製造器となったのです。水を与えると、全身からオレンジの果汁が出て、胸で味付けをできるものですよ」

乳首から、オレンジジュースがしたたり始める。

「じょ、冗談じゃない……ん!」

今度は、股間に液体……水が供給され、全身へと分配されて、しぼみかけていたジェシーは元に戻った。

「さすがは我が工場のジュースを飲み続けて成長されただけはある。体がその味を覚えているのですよ。それに、その体はもう元には戻せない。工場に不法侵入した罰としても、ジュースの増産に尽力ください」
「ま、まって」

段々とムチムチとした体つきになり始めていたジェシーは、部屋から出ていこうとした工場長を引き止めた。

「ジュースの原料って、私のような人間なの……?」
「いいえ、これは工場の従業員から絞り出したものですよ。我々は、人間では到底想像が及ばない生物なのです」

段々と水の流量が増え、パンパンに膨らんだお腹に立ち上がれなくなったジェシーをみて、ふふっと笑う工場長。

「我々の食料は、人間の出す体液すべてと、それが蒸発したもの。ジュースは、人間をおびき寄せるための餌です。では、これで」
「え、な、置いてかないでよーっ!!」

少女は、力なく膨らんでいく。その悲鳴は工場の外へと漏れることはなかった。その街は発展を続け、大都市となり、ジュースは今だに名産品として売り続けられているという。

白い恒星

「いただきます」

とある日本家屋で、朝食の食卓を囲む3人の姿があった。父親の名前は天彦、いたって普通の人間……なのだが、他の二人が違った。妻の白扇と娘の九音には、狐のような耳と、九尾の尻尾が生えている。白扇は狐の神であり、銀白に光る長い髪と、その男性でもかなわないような高身長と、これでもかというくらいムッチリとした体型は、神々しいほどのものだった。九音のほうは、顔立ちは母親譲りの美人だが、耳と尻尾以外は普通の子供だった。薄い桃色の髪の毛を揺らしながら、もぐもぐと美味しそうに母親の作ったご飯を食べている。

「あなた、そんな残念そうな顔しないでも……」

若干ブカブカになっている和服の胸の部分を、天彦は少し不満そうに見ていた。今の白扇の胸はGカップほどの巨乳なのだが、本来はもっと、というかかなり、というか比べ物にならないほど大きいものなのだ。それをいつも堪能している天彦にとっては、今の白扇は完全に大きさが不足している。

「あ、すみません……そんなに顔に出ていましたか……」
「はい……ご飯をいただくときは、こうしないと食事に手が届かないのですから……」

テレビからは、ニュースの音声が聞こえてくる。『太陽風が近づいており、電磁ノイズなどの障害が見込まれます』……と、太陽から吹き出される大量のエネルギーを電磁波で、地磁気が乱されるらしいことを報道していた。

その瞬間だった。ドカンッ!!と、机が肌色の球体で潰されていた。紛れもない、白扇の乳だった。

「えっ!?なんで、いきなり……!」

白扇自身が一番驚いていたが、それはどんどん大きくなっていた。

「かーさま、どうしたの!?」

九音はせまりくる胸肉から逃げつつ、母親を不安に思って声をかける。

「私の体が、力で満たされて……!止められないっ!」

部屋が、白扇で満たされていく。神通力を使っているのか、和服もサイズアップしてなんとか局部を隠している。

家の壁や柱がギシギシと軋み、変形して、ついにはバァンッと崩れ落ちた。

「白扇さん!」

そこにあるのは、家より大きな白扇の乳房と、それに隠れそうになりつつも、これも巨大化している白扇の体があった。天彦の目の前にある脚も、これまで以上にムッチリと膨らんでいる。

「太陽からの力が、いつもよりもすごくて……っ!抑えきれませんっっ!!!」

その声は街中に響いていた。巨大化は止まらず、むしろスピードアップしていく。九尾の狐神は地面をえぐり、周りの建物を倒し、その豊満な体つきを近所の住人に見せつけながら、大きくなっていった。

さっきまで小さすぎると思っていた白扇の胸は、街の一角を占拠し、さらに隣の街区へ侵食していく。ボリュームたっぷりの尻は、電柱を倒し、通りかかった車を潰し、ムチムチと音を立てて、体積を増やしていく。
見る人を惹いてやまない紫色の目は、身長が伸びるにつれ、どんどん高いところへと上がっていく。

「このままでは、街が潰されて……よい、しょっ!!」

自分の体で壊滅していく街を見て、白扇が立ち上がった。その曲線的なシルエットが、太陽光との逆光で強調される。上を飛んでいたヘリにぶつかりそうになるくらい大きくなった体と、胸にはバルンバルンと数十メートルの振幅で揺れる巨大な球体が付き、腰は暴力的なほどの肉付きで、しかもさらにスケールアップしていく。

「まだ、速度がさがらないなんて!」

白扇の大きさは、一歩で狭めの公園が潰れるほどのものだったのが、次の一歩では小さめの駅が脚の下にすっぽり入ってしまい、さらに次の一歩ではスーパーが跡形もなくなった。

天彦からは次第に遠ざかっていっているようだったが、それでも、白扇の焦ったような、恥ずかしがっているような顔が見える角度は変わらない。超高層ビルと同じくらいの高さで、その数十倍の体積を持った乳房を振り回し、それで起こった気流で雲の形が変わるほどになっていく。

「天彦さん、私、どうすればっ!」

遠ざかっていくときは少し時間がかかったのに、どうしようもなくなったのか戻ってくるのは早かった。そして、白扇が、天彦に顔を近づけようとすると、小惑星のような大きさの肌色の柔肉が地面に激突し、大きなクレーターができた。すべすべでぷるんぷるんとゆれる、数kmの高さがある断崖絶壁の上から、白扇の涙顔が覗いていた。

「ここまできたら、限界まで大きくなってみたらどうでしょう?溜め込んだ力で、なんとかできるかも」
「は、はぁ、なるほど……」

実はこんなことになるのは今日が初めてではない。これまでも街一つだけではなく、地球や他の惑星まで壊してしまったことがあった。白扇は、そのたびに神通力で世界をもとに戻していたのだ。

「でも、毎回恥ずかしいです……」

地面がゴゴゴゴと揺れる。まだまだ白扇の巨大化は止まっていない。地平線の彼方で、白扇の足が高山を押し崩していた。

「それよりも……白扇さん……」
「えっ?あ、はい、只今」

天彦の姿がフッと消えた。それを確認して、白扇は乳房を持ち上げて、勢いよく、仰向けに寝転んだ。その衝撃で地殻が割れ、マントルが吹き出し始めるが、白扇の体はそのエネルギーすら吸収して、巨大化のスピードはドンッと上がった。

「……これ、白扇さんの胸……だよな……?」

その胸の上にワープさせられた天彦は、プルンプルンと揺れる大地に顔をうずめた。いつものような、いい香りと体温が伝わってくる。九音も、その感触を楽しんでいるようだった。

「もう、二人で楽しまないでください!」
「……白扇さん、なのか?」

そこには普通サイズの……といっても、胸は男一人を包み込めそうなくらい大きいが……白扇が立っていた。

「分身ですよ、今は大きさが違いすぎてしゃべることもできませんから……」

三人を、半透明のシャボン玉のような球体が包むと、高速移動を始めた。すると、永久に続くかと思われた肌色の大地の地平線に、本物の白扇の顔が見えてきた。先程とは違って、優しい微笑みを見せている。

「やはり綺麗な方だ……また、地球をすごい高さから拝めるのかな?」
「いえ、もう地球は力として吸収してしまいました……ちょっと離れてみましょう」

今度は、ワープといえる速度で白扇から離れた。すると、太陽がすぐ近くにあった。いくら巨大化しているとは言え、太陽のほうが100倍以上大きかった。しかしすぐに、そのエネルギーを吸収する白扇の胸……もとい体が追い越し、太陽は白扇の口にすっぽり入るサイズになってしまう。白扇は、天彦に向かって少し微笑むと、火の球体を口の中に入れてしまった。

「また、やっちゃいましたね」
「これを復元する前に、三人だけの時間を楽しみましょう?」

再び、本物の白扇の胸の上に降り立つ。普通サイズだった白扇の分身も2倍くらいに大きくなり、天彦は超々巨大な白扇と、分身の白扇の二人に挟まれ、至高の時間を過ごした。

変身描写だけ書きたい!(TS/AP2)

「だめっ、こんなところでっ」

それは小学校への登校中。少年には、秘められた力……そして、少年にはコントロールの効かない力があった。

「薬が、きれちゃ……んんっ……!!」

突如として、彼の服を突き破らんばかりに、胸がぶくっと膨れ上がった。それは筋肉ではなく、脂肪と乳腺のかたまり、乳房だった。小学校の男子生徒には似つかわしくない、頭ほどの爆乳が、できあがり……そして消えていく。

同じ登校班の生徒、すなわち近所の小学校生徒の前で、少年の体から、液体がぐちゃぐちゃ言う音が聞こえる。それは、彼の細胞が爆発的に増殖したり、脂肪細胞ができあがったり、逆に壊れていく音だった。

「ん、んあっっ!!」

脚や手が、バラバラに太くなったり、細くなる。尻が爆発的に膨張し、ズボンを引っ張ったと思うと、さっきの胸と同じようにしぼんでいく。

「ど、どうしたんだよっ」

周りの生徒は、人間からするものとは思えない、少年の体が作り変えられていく激しい音に腰を抜かしつつ、声をかける。だが、その音に、今度は骨がゴキゴキと作られ、壊されていく軋むような音が加わる。

「う、うでがぁっ」

少年の左腕がガクガクと震え始めると、ブクブクと膨らむ。震えが最高潮になると、ギュインッっと二倍ほどの長さに伸びた。右腕もそれに続く。

「ぐ、ぐぅっ!!」

次に左足、右足と少年の体は長くなる。そして、5倍ほどの太さにムチッと肉がついて、ズボンを突き破ったと思うと、元の太さに戻る。その太さが少年の腹にグギュギュと溜め込まれ、臨月くらいに膨らんだお腹は、そのきめ細やかな皮膚を空中にさらけ出した。

大きく、グキグキと音がすると、少年の背骨が伸び、手足の長さに合わせて上半身が伸びた。髪が肩まで伸び、顔も小学生男子から大人の女性へと変貌を遂げた。腹部の膨らみは、何かに絞られるようにグチュグチュといびつにしぼんでいく。ウエストは過剰なまでにくびれ、長くなった腕も先端から絞られガリガリになる。

「ひゃぁっ!!」

その分が、胸に押し込まれ、それを受けた乳房が再度、左、右とボワンッ!ボインッ!と前に飛び出るように形成された。水風船をふくらませるような音がすると、腕はもとに戻り、腹がまた膨らんでいく。

「うああっ!!」

その腕が、またギュイッと絞られ、腹部も一気にしぼんで、また胸に脂肪を押し込んだ。乳房はシャツをビリビリとやぶき、ムチィッ!!と球体状に成長する。と、今度は乳房がギュイッと体の中に飛び込むようにしぼみ、脚がムチッと膨らんだ。そのまま肉付きがどんどん良くなる脚を、彼は不安の表情で凝視する。

「く、くる、きちゃうぅっ!」

少年の声と同時に、信じられないほどに太くなった脚がブシュッと音を立てて細くなった。

「ああんっ!!」

ヒップがとんでもない大きさになり、またしぼむ。

「どんどんのぼってくるぅっ!!」

ウエストがボコッと膨らんで、それもまた絞られる。

「おっぱいがっ!」

平らに戻っていた胸板に、巨大な乳房が形成される。一つ一つが頭が入るくらいの爆乳サイズになったと思うと、少し大きめな巨乳サイズに戻っていく。

最後に、骨と皮だけの細さになっていた腕にムチッと肉がついた。

「みんなの前では成長したくなかったのにぃっ!!」

タプタプと揺れる胸を、度し難いほどの激しい音と、体の変形で呆けてしまった周りの生徒からなんとか隠して、泣き出してしまう少年だった。

うたたねの姫 後編~太地~

あむぁいおかし製作所様での投稿(http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-26287.html)と同内容です。イラストは春瀬めいお様に描いていただきました。

「ったく、変なことになったな……」

太地は足の遅い学を置いて、家に帰っていた。汗をシャワーで流し、部屋着を着て自室に入ると、自分のかばんが目に入った。

「ちっ、宿題やんねぇと補習だったか……」

スマホで時間を潰そうと思っていた太地だったが、ため息をついて教科書とノート、筆記用具をかばんから取り出し、机の上に投げた。

「あーあ、あいつに勉強教えてる余裕なんてないんだよ、何してんだ俺は」

そして何気なく自分の胸を触る。図書室での出来事を思い出し、そこに確かにあった乳房を触ろうとするかのように。

「……って、ホントなにやってんだ」

太地は顔をパンパンと両手で叩き、椅子に座る。そして教科書を開くが、顔をのぞかせた文字の羅列に頭を抱える。

「……これどうやって解くんだよ、女になった俺ならわかるのかねぇ!」

問題を見ても、何を書いているのかさっぱりな部分すらある。それをぼーっと眺めてるうち、太地はうとうととしはじめた。

「……くっ……補習……が……」

そして、太地は眠りに落ちてしまった。が、頭をくすぐる感覚に、目が覚める。

「寝てたのか、俺」

妙にチクチクする頭を掻く太地だったが、その手に感じたのは長く柔らかい繊維の感触。

「なんだってんだよ……ま、まさか!また女になってる!?」

その手を股間に持っていくと、そこにあるはずの男の象徴が跡形もなく消えている。よく見ると、その腕も細く短くなって、部屋着がぶかぶかになっている。

「ってことは、……んぅっ!」

胸が内側から押し上げられる感触がすると、服に小さな二つの膨らみが現れた。

「ち、ちくしょ、戻ったらそのままじゃないのかよっ!」

膨らみはグググッと大きくなり、服の上からでも明らかにわかるほどのバストサイズになる。

「んあっ!」

さらにボンッと一回り大きくなって、部屋着がギチッと音を立てた。それで、変化は収まった。

「はぁ、はぁ……声まで女に……」

太地は、視界に入ったスマホを手に持って、カメラアプリを起動した。

「今の俺って、どんな感じになってんだ……?っ!!」

画面表側のカメラに切り替えると、そこにはとびきりの美少女が映っていた。その端麗さへの驚きと、その少女が自分であることをにわかに信じられないことからくる違和感に、太地の体は固まった。

「これが……俺……?」

その時、腕時計の時報がピピッと鳴って、午後6時になったことを告げた。太地はハッと我に返った。

「くっ、こんなことしてる場合じゃ……」

教科書とノートに向き直り、時間との戦いとばかりに打ち込んでいく。太地は、自分が女になったことを忘れようと、必死に宿題を進めていった。

「え、もう終わった……?」

もとの太地なら頭をフル回転させてもわからない問題も、今の太地には赤子の手をひねるような簡単さになっていた。その上で本気を出したのだ、宿題は10分もしないうちに片付いてしまった。

「嘘だろ……」

太地は戸惑い、胸に手を置こうとした。しかしその手は、部屋着の胸の膨らみの上にあるぷくっとした突起……乳首に触れた。

「ひゃぁっ!?」

太地は、思いもしない刺激に小さな叫びをあげた。できたばかりの乳頭は敏感だった。ジーンとしびれるような感覚に、椅子に座っていられなくなった太地は、思わず床に崩れ落ちてしまった。ブルンブルンと揺れる胸は、服と擦れてさらなる刺激を生み出す。

「んひゅっ……や……っ!」

意識が飛びそうになる太地だが、刺激から逃げようとなんとか服をめくりあげた。太地の目に飛び込んできたのは、透き通るような白い肌に包まれた、柔らかく、丸みを帯びた膨らみ。その先端は、ピンク色にその存在を主張している。

「女の、胸……」

肌色の膨らみに触れると、むにゅっと形を変える。

「んっ……すごくやわらかい……」

高くなった声に合わせるように、太地の口調もやわらかくなる。

「そうだ、足の方は……」

部屋着のズボンに手をかけ、下げる太地。中からは、プルンと震えるヒップと、すべすべとした太ももがお目見えし、健康的な脚が姿を現した。

「本当に、俺が女の子に……」
「太地?帰ってるんでしょ、夕飯できたよ」

股の間に手を伸ばそうとした太地だったが、部屋の外からの声に、その動きを止めた。

「か、母さん……あっ」

高いアルトの声で答えてしまいそうになった太地は、口を覆った。

「太地?女の子でも連れ込んでるの?」

部屋の外から、足音が近づいてくる。太地は、なんとか体を起こすと、クローゼットの中に飛び込んで、扉を閉めた。同時に、部屋のドアがガチャッと開いた。

「あら?誰もいないの?……また服を散らかして……何、この長い髪、あの子と同じ色してる?」

なにかの拍子に抜け落ちた、太地の髪の毛だった。ドキドキと鼓動が響く。太地は息を殺して母親が去るのを待った。時間の流れが遅く感じるほどの緊張だったが、やがて母親は部屋から出ていった。

「はぁ……よかった……」

クローゼットから出た太地の体は、元の男のものに戻っていた。太地は、安心するとともに少しの物足りなさを感じていた。

—

「おい、学!」
「な、なんだよ、太地……」

次の日、学校で太地は学に詰め寄っていた。周りの、待望の女子がいなくなってがっかりしたような、元の日常に戻って安心したような視線を無視しつつ、太地はものすごい剣幕で学に怒鳴った。

「昨日の薬、瓶捨てちゃいねぇだろうな!?」
「……な、なな、なんで捨てちゃいけないんだよ」
「いいから!!持ってるなら出せ!!」

太地の怒りは、まるで何かから目をそらすような焦りのようでもあった。

「はい、これ……」
「おう!!つべこべ言わず最初っから出しやがれ!」

瓶の上のラベルを読んでいく、太地の目に一つの文章が飛び込んできた。

「『睡眠時に成長ホルモンを分泌させ、脳を活性化させます。同時に、女性ホルモンを出させることでその効果を高めます』……って、寝るたび女にならなきゃいけないってことかよ!」

周りがざわついた。太地はクラスメイトたちを睨みつけた。

「お前ら、俺は金輪際、ぜってぇ居眠りなんてしねぇからな!」

小さく「フラグかよ……」という声が聞こえ、太地はそちらに目を向けたが、ついに誰がその声を上げたかは分からなかった。

その日は、クラスメイトたちの期待むなしく、太地は居眠りすることなく授業を受け続けた。

「ふん!俺だってこんなことになっちゃ居眠りなんかしねぇよ」
「あ、あの……」

帰り支度をする太地に、弱々しい声がかけられる。疑いもなく、学の声だった。

「また、勉強教えてほしいんだけど……」
「あん!?」

学に向き直った太地は、もちろん断るつもりだった。太地の成績は、むしろ誰かに教えてほしいくらいのもので、こんな厄介事に巻き込んだのは学の持ってきた薬だった。

「……おう、わかった」

太地は自分でも口にした言葉が信じられなかった。だが、前の日に経験したいろいろな事が、太地の心を動かしたのは、なんとなく分かった。

「じゃあ、僕の家に来てよ。今日は誰もいないから」

—

学の家に着いた二人は、黙々と勉強の支度をした。太地は、勉強中に居眠りすることで女になることを、潜在的に理解していた。

「ほら、勉強するんだろ」
「あ、うん」

太地は、目の前に広げた教科書を読んでいく。やはり、内容は半分わからない。そして、そのまま寝てしまった。

「太地、太地!」

学の呼ぶ声に目をさます頃には、髪は伸び切り、手足は短くなり、胸がムクムクと膨らんできていた。

「き、来たよ……」
「あ、あ……お、おんなに、女になるぅっ……!」

太地は喘ぎ声をあげ、体をくねらせる。不思議なことに、焦りは感じない。むしろ、この変身が気持ちのいいもののようにも感じる。

「ふぅっ……!」
「じゃあ、いろいろ教えてよ」

変身が終わった太地を見て、鉛筆を置いて太地に近づく学だったが、太地はその口に人差し指を当てた。

「だめ、まずは学校の勉強からね」

体に引っ張られるように、太地の口調が柔らかくなっていた。太地は、今の自分の容姿の女子が使いそうな口調を、無意識に使っていた。

「うっ、分かったよ……」

太地は、ムンムンと色気を漂わせつつ、学に勉強を教え始めた。数十分もそれが続いて、学はやっとのことで最初に決めていたノルマを達成した。

「じゃあ、今度こそいいよね」
「もう、せっかちなんだから」
「えへへ」

太地は立ち上がって、学の後ろに回り込む。そしてその背中に、ムニュッと胸を押し当てた。

「(あれ……俺はこんなことしたくなんてなかったはず……)」

太地の考えとは裏腹に、その腕は学をギュッと抱く。

「きもちいい……」
「でしょ?」
「太地っ!」

学はバッと立ち上がり、前の日と同じように、太地の肩を掴んでベッドに押し倒した。

「きゃっ!」
「すごく、かわいいよ……」

顔を赤らめる太地。男にかわいいと言われて喜ぶ趣味は、太地には無いはずだった。しかし先程から演じ続けている「女の子」には、効果テキメンなのだった。

「本当に?」
「ホントだよ……おっぱいもおおきいし、すごいよ……」
「じゃあ……」

ボタンを外していく少女。その体の動きは、太地の制御が効かなくなっているように思えた。すべてのボタンを外すと、胸の間にできた深い谷間と、へそが顔を出した。

「(今の俺は、俺じゃない、俺じゃないんだ……)ほら、触っていいよ……女の子のカラダ、勉強して……?」
「じゃあ、ここから……」

学は、すべすべとしたおなかを撫でる。

「(ちくしょ、何でこんなこと、俺が……)ん、んっ……おっぱい、じゃないの……?」
「こ、ここもキレイだし……」

少女は、恥じらいつつも学を受け入れ、大人しくしている。学はそのままベルトに手をかけ、外し始めた。

「(おま……)ちょ、ちょっと……」
「いっぱい勉強、させてよ……」

ズボンが降ろされ、皮下脂肪で少しふっくらとした脚が引きずり出された。

「しかたないなぁ……(しかたないよな……)」
「女の子の脚って、こんなにきれいなんだね……」

少女は学にされるがままになっていた。

「あっ……」

だがその時、時間切れが近づき、巨大な胸が縮小を始めた。少女は太地に戻ろうとしていた。学は、一瞬残念そうな顔をしたが、何かをひらめいて、大声で言った。

「世界で一番大きな大陸は!」
「え、な、なに?」

少女は度肝を抜かれて驚く。

「答えて!」
「えっ、ユーラシア大陸……?……んぁっ!!」

半分の大きさまで縮んでいたおっぱいが、一気にその大きさを取り戻した。

「な、なにこれ……もしかして、勉強しつづければもとに戻らなくていいの……?」

自分が発した『もとに戻らなくていい』という言葉に、太地は違和感を覚えたが、それはごく小さなものだった。

「べ、勉強中は男に戻らなかったけど、それをやめたら5分くらいで戻ってたよね……」
「なるほど……でも、二回しか見てないのに、よく気づいたね、学」

少女はニッコリと笑みを浮かべた。

「えへへ……じゃあ、こんな世界一高い山みたいなおっぱい、触らせてね……」
「んっ……エベレストね、私の胸はそんなに大きくないよ……」

学は、その深い谷間に顔をうずめた。

「ま、学……」
「やわらかくて、あったかい……」

顔を離した学は、恍惚の表情を浮かべている。だが逆に、少女は物足りなさそうにした。そして、赤面しながら、下着を指差して聞いた。

「学、ここはいいの……?」
「えっ……いいの?子供ができちゃう穴じゃないの?」
「大丈夫、保健で勉強したでしょ、一ヶ月に一回、危ない日を避ければいいの」
「いや、そういうことじゃなくて……」

学は下を向いてもじもじし始めた。その腕を、少女は優しく掴んだ。

「どうせ、こんなことできるの、私くらいしかいないでしょ?」
「う、うぅ……じゃあ……」

学は、自分のズボンから短めの得物を出した。

「うふっ、かわいい」
「い、いくよ……」

おそるおそる、少女の股に、それを挿し込んでいく。

「うっ、思ってたより気持ちいい……」
「学のモノが、中で大きくなってる……」

初体験の感覚をもっと得ようと、学は腰を前後し始める。

「あんっ、すごい、くるよ、くるよっ」

太地の意識は、もはや少女のものとなりきり、当然のように学を受け入れていた。

「学っ、もっと問題出して!私を女の子にし続けて……っ!」
「ん、ん、そんなことっ……言われてもっ!」
「出してぇっ!」

少女の胸は、またもや縮み始めていたのだった。

「ふ、フランスの首都はっ!」
「パリだよぉ……っ」

ムチっと膨らむおっぱい。学は、それを鷲掴みにした。

「んひゃっ!学はやっぱり、そこが好きなのね……!!」
「だ、だってっ……こんなに、大きいの、他にない……!」

上下左右に揉みしだかれる巨大な胸。学の速度も、どんどんペースアップしていく。

「だ、だめっ、そんなに激しくっ、イッちゃうぅっ!!」
「う、うぅっ、出るっ!」

初心者二人の絶頂は早く、ほぼ同時だった。学は、フラフラとしながらも怒張しきった自分の息子を引っ張りだした。少女の方は、疲れたのか、快感で意識が飛んでしまったのか、そのまま目を閉じて動かなくなってしまった。
学はぬめぬめとした液体まみれのまま、「勉強相手」に寄り添って眠りに落ちた。

—

「……もとに戻らないんだけど……」
「ど、どうしちゃったのかな」

二人が目を覚ますと、夜も8時を回っていた。太地の体はもとに戻っておらず、学がシーツの匂いを取るために20分以上かけたあとも、それは変わっていなかった。

「もしかして、イッちゃうと戻れない的な……?」
「そう、みたい?」

太地はハァとため息をついて、学に向き直った。

「な、なに、太地?」
「……責任、とってね……?」

その照れた顔に、学はうなずいた。

学が変身するパターンへ