魔法がありふれた世界の学校。魔法使い同士の決闘……ではなく、変身術の講義の実践をしている男女の生徒のペア。
「くらえ!スタイル抜群のお姉さんになる魔法!!」
「そんな魔法ないわよ、ふざけてんの!?アタシの体型馬鹿にしてるでしょ!!」
確かに、呪文でも何でもない言葉と魔法の杖を向けられた女子生徒の体型はそのクラスの中でも華奢で、身長も低かった。そして、教科書にはそのような魔法は存在せず、女子生徒が正しいはず……だったが。
「へへへ……お、おい、なんか変な魔法が……」
杖の先は光りはじめ、明らかに何らかの魔法を少女に向かって放とうとしていた。
「え、えっ?そんなはずがあるわけ……」
少女が言葉を終える前に、少年の杖から魔法が発射され、彼女の体に吸い込まれるように飛び込んでいった。少女はあまりの衝撃にうずくまってしまった。
「お、おい、大丈夫か!?」
「う、ぐぐ……体が、熱いっ……あんた、魔力の量だけは半端ないんだから……!うぅっ!?」
少女の体から、ドンッ!ドンッ!と小さな爆発のような音が聞こえ始める。
「な、なによこの魔法っ!?」
その小さな手が、爆発音と同時に大きくなり、すぐにもとに戻る。足も、ミチッ、ミチッと音を立てて大きく脈動していた。
「なにをやっているのだ、そこの二人!」
少女から発せられる音に、周りの視線が集まっていた。それに気づいた教師が、二人に近づいてきていた。
「せ、せんせ……!こいつが、変な魔法をあたしにっ!」
「なに!?どれ……」
教師は、少女の腕を取った。腕の太さが、脈拍とともにドクンドクンと大きく変動していた。それは、変身術の教師ですら見たことのないたぐいの魔法であった。
「なんだこの魔法は……まあいい……全術式解除!」
教師が杖を振ると、その先から光が溢れ出し、少女を包んだ。
「これでもとに戻るだろう……ん?」
「せ、先生……?」
教師の想像とは裏腹に、その細い腕は脈動をやめず、さらに大きくなりだした。ドクンッ、ドクンッと、彼女の体全体が成長を始めたのだ。骨がメキメキと軋み、関節がポキポキという生々しい音が、あたりに響き渡る。そのたび、手足が伸び、少女のシルエットが大きくなる。
「なっ、なんだこれはっ!?お前、一体どんな魔法をかけたのだ!」
「は、はい!『スタイル抜群のお姉さんになる魔法』ですが……」
「ふざけるな!そんな簡単な魔法が術式解除で無効化されないはずがないだろう!?」
口論を始める二人の横で、どんどん大きくなる少女。服はパンパンになり、いたるところで糸がほつれていく。足はさらけだされ、ほっそりとしていたそれに、段々と肉が付き始めていた。
「む、むねがっ……」
その平らだった胸にも、小さなポンプで空気が入れられるように膨らみが付き、一回り、さらに一回りと大きくなる。服をビリッ、ビリッと少しずつ破り、肌色の柔らかい塊が外気にさらけ出されていく。その深い谷間が、すでに手で覆いきれないほど大きくなった胸の大きさを物語っていた。
「とにかく、変身術に特化した術式解除を再度かけてみることとしよう……」
「先生、何か嫌な予感がするのですが……」
「うるさい!変身術式解除!」
少年の制止を振り切り教師が大声を上げる。再び教師の杖から光が放たれ、少女の体を包む。
「う、うぅぅっっ!!!」
だが、的中したのは少年の予感の方だった。少女がうめき声とも叫び声ともつかない声を上げるとともに、その胸がギュギュギュギュと急激に膨らみ、服を一気に破って飛び出してきた。ブルンブルンと大きく揺れるそれは、なおも大きくなり続けている。身長の方も、教師を超えるほどになってしまった。
「はぁっ、はぁっ……」
そしてそれは、少女が立ち上がったことでさらに顕著になった。
「……ふぅっ……みんなが、下に見える……?」
「き、君……」
少女は、教師を見下ろした。そして、視界の下半分を占拠する頭よりも大きくなってしまった乳房に気がついた。
「すごくおっきい……」
「ふ、服を着たまえっ!!」
「服……合うものがないです……」
どんな男性にも目の毒になるほどのスタイルを、目の前で見せつけられた教師は目を背ける。だが、大きくなりすぎた女性の体に合う服などない。
「そ、そうだな……では、魔法で作ることとしよう……」
「だ、だめですよ、また魔法を当てたらっ!!」
だがついに、服を作る魔法を少女に向かって放つのを、止めることはできなかった。杖から放たれた魔法を受けた少女の体は、また成長を始めたのだった。
「い、いやあああっ!!」
どんどん膨らんでいく胸をおさえ、そして自分に杖を向ける数人の同級生を見つめながら、少女は叫ぶほかなかった。