ナノ・インベージョン 2

「いっぱい、背が伸びてるといいな!」

小学生の拓也(たくや)は、鏡を見ながらはしゃいでいた。夜9時、小学生は寝る時間であるが、次の日にある身体測定が楽しみなのだ。

「拓也、もう寝なさい!」
「えーっ!」

母親に叱られても寝る気の無い彼。そのテンションのせいで口の中に入ってきたホコリのような何かにも気づかない。

「だって、明日は!」
「はいはい、身体測定のことでしょ!だから……あら?」

元気に溢れていた拓也は、急に眠気に襲われた。そして、素直に寝床に入った。

「ふあ~ぁ……おやすみ、ママ」
「え、ええ。おやすみ」

あまりに突拍子もない息子の行動に驚く母親だったが、拓也がすやすやと寝息を立て始めると、電気を消して部屋から出ていった。


「ニケ、どうするつもりなんだ」
「えーっ!ちょっと遊んであげるだけだよ!」

ニッコリと笑うニケに、和登は無邪気さゆえの残酷さを垣間見た気がして、苦笑いを返すことしかできない。なぜかアプリの使い方を和登よりよく知っている風のニケが、無関係の小学生にナノマシンを感染させたのだ。そして、機能の確認をするようでもなく、ポチポチとボタンを押して拓也を寝かせつけてしまった。

「まさかとは思うが、ニケ……そのアプリ結構使ってたりするのか……?」
「夜行性だからね!」

答えになってない。だが、寝ている間に家族の誰かのプロポーションをいじくって遊んでいるようなのは分かった。朝起きる前に全員の体型を戻しているのだろう。――ナノマシンを感染させた人間の認識能力を捻じ曲げる事ができるようだが、新菜の年齢に見合わないデカパイは健在だったし……と、完全にニケに認識能力を操られている和登は考えた。

「まあ、明日が楽しみだな」
「うん!和登より面白い反応してくれるはず……、なんでもない」
「ん?」
「なんでもなーい!」


翌朝。拓也は目覚ましの音で目を覚ました。

「ん~……」

大きく背伸びをして、寝床から立ち上がる。

「……え?」

その途端、拓也を襲う大きな違和感。床が、異様に遠い。少しパニックに陥りかけた拓也だが、気を取り直して部屋にある鏡に向かった。すると……

「僕の背、伸びてる……?じゃなくて、足が伸びてる!?」

彼の足は、いや足だけが、高校生並みに伸びていた。腰から上の部分は元の小学生のままだ。寝間着からかなりはみ出したそれは、かなり筋肉質で、すこし力を入れるとピクピクと動く。

「え?えっ?」

足を動かしてみると、鏡の中の長い足も動く。だが、手の方は小さく幼いもののまま。骨盤は少し大きくなって、その下に拓也からしてみれば大きい足がくっついているのだ。

「拓也、どうしたの?朝ごはんできてるわよ?」
「ママっ、僕の足、変に……」
「あら、すごく背が伸びてる。よかったじゃない」

母親は、息子のアンバランスな体を見ても全く驚かなかった。これもナノマシンの意思操作によるものだが、拓也にそれを理解する術はない。

「ママ……」
「あ、今日は尿検査もあるのよね?ほら、おしっこ取ってきなさい」
「うぅ……」

拓也は、ランドセルから尿検査用の容器を取り出し、足に対して小さすぎる腕で何とかバランスを取りながら、トイレに向かった。

「……なに、これ……?」

そして、部屋着のズボンを降ろした拓也の視線の先にあったものは、長く太く変化した彼のイチモツ。二次性徴などとっくに終えていると言わんばかりに成長したそれは、拓也には刺激の強いものだった。

「でも、おしっこ取らないと……」

小さい手で、大きなソレの狙いを定め、出そうとしたその瞬間……

ドックンッ!!

「んひぃっ!?」

拓也の全身に、大きな衝撃が走ったのだ。

ドクンッ!ドクンッ!

心臓の鼓動と同期して訪れるそれは、まるで激しい血流が彼の全身を駆け巡り、そして……

「おちんちんが膨らんでくっ!」

拓也の男性器を押し広げているようだった。だが、赤黒く怒張し、鼓動するそれは、急にグイッグイッと押しつぶされるように短くなった。

「うぐぅっ!」

ドクンッ!ドクンッ!と未だに続く衝撃と共に、彼の体に入り込むように縮むペニス。そして、豆粒ほどになったそれはついに、股の中へと潜り込んでいってしまった。

ドクンドクンドクンッ!

変化はそれで終わらず、グイグイと体の内側が切り開かれる感触が拓也を襲った。子宮が形成されているのだが、拓也は別のことが気になり始めた。

「おしっこ、どうやってだすの……?」

そして、それを出しかかっていたせいか、股間から黄色い液体がこぼれ始めていた。

「おもらし、しちゃったよぉ……」

拓也はしくしくと泣きながら、便座の上に座った。何とか尿を取ると、容器に移し替え、床をトイレットペーパーで拭いた。


「やっぱりこんな足、変だよ……」

登校中にも、短すぎるズボンで覆い切れない足にドギマギする拓也。だが、それに違和感を感じているのは彼一人のようだった。

「拓也くんの足、すごいねー!ムキムキ!」

幼なじみの女子生徒に、ペチペチと足を触られる。陸上選手並みに筋肉を蓄えた足は、低学年の好奇心を集めていた。

「そんなに触らないで、もう……」

いくら言っても、一歩歩くたびムキッ、ムキッと形を変える筋肉を面白がる小学生たち。だが、そんな彼の憂いは別の形に変わろうとしていた。

ドクンッ!!

「うっ!!ま、またきたぁ……」

ドクンッ!!ドクンッ!!

今度は、脚の筋肉が力を入れずともグニグニと動き始めた。当然脚が言うことを聞かなくなり、拓也は脚を前に出してその場にへたり込んだ。

ギュッ!!ギュギュッ!!

すると、大量にあった筋肉が、ギチッギチッと音を立ててしぼみ始めた。脚は、あっという間に皮と骨だけのようになってしまった。

「え、ええっ?」

呆気にとられる拓也だが、ドクンッ!!と次に来た衝撃とともに、グキィッ!!と腰と膝が大きなきしみを上げた。細身となった脚が、内股となっていた。

「これって、女の人の脚みたい……」

ドクンッ!

そして、つぎは皮下脂肪がギュッと詰められるように、脚全体が横方向に、丸く膨らんだ。ドクン、ドクンと心臓が脈拍を打つたびに、ひとまわり、またひとまわりと太くなり、健康的というのがちょうどいいくらいのものに変わった。衝撃は、そこでひとまず終わった。

オーバーなほどに筋肉質だった拓也の脚は、ムチッとした女性のものに変わったのだった。

「すごい……」

拓也は、脚を触ってみると、プニプニとした柔らかさと、すべすべとした心地よさを感じ、少しの間惚けてしまった。

「拓也くん、大丈夫?そろそろ行くよ?」

班のリーダーが、脚だけ女子高生になった拓也に、たじろぐ様子も見せず言った。

「え、うん……」


「身体測定、緊張するねー」
「うぅ……」

拓也は、保健室で順番を待つ列に並び、クラスメートとしゃべり……合っていなかった。当然だ、ジャージから伸びた脚は自分のものとは思えないほどスッと長く、ブリーフに収まっているはずの男性の象徴はない。そして、髪もジャージを着た瞬間にバサッと伸びてしまい、腰まで伸びるロングヘアはクラスの注目を集めるほどになっていた。

「ほら、このカードを保健室の先生に渡して」

記録カードを渡されると、拓也にさらなる変化が起こった。

ドクンッ!!

「ううっ!!」

大声を出したにも関わらず、周りは誰ひとりとして反応を見せない。そのうちにも、カードを受け取った腕がギュッギュッと伸び、指は長く、細く伸びた。そして、背骨の節々一つ一つがグキッ、グキッと大きくなり、拓也の背が更に伸びていく。ジャージがせり上がり、ヘソが丸見えになってしまった。

「もう、伸びなくていいからぁっ!」

声すら、もう小学生のものではなく、少し色気が混じった女性のものになってしまった。だが、体をギュッと抑えると、変化は収まった。

「はぁ、はぁ……」

もはや、はたから見れば普通の女子高生である。荒い息を立てながら、じっと立つ拓也だったが、保健室の入り口から顔を出す、担任の声が聞こえてくる。

「拓也くーん、何してるんだ、早く来なさい」
「うん……」

ナノマシンの精神操作を受け、涙目ながらも保健室に入っていく拓也。中には、身長計と体重計に乗るクラスメートたちがいた。拓也は、校医に測定カードを渡した。

「えーと、拓也くんね。ずいぶん背が高くなったわねー」

もう、皮肉なのか率直な感想なのか分からない。
「さあ、身長計の台に乗ってね。上からコツンってするからねー」

背丈などどうでも良くなった拓也だが、言われるがまま身長計に乗った。校医が、測定部分を拓也の頭に当てる。と、その時だった。

ドクンッ!

「うっ!」

小さな悲鳴をあげた拓也に、校医が驚いた。

「え、そんなに痛かった?」
「そんなこと、ないです……」

衝撃が、拓也を襲う。周期的に生じるそれは、全身に何かを詰め込んでいく。そのたびに、拓也の身長が伸びる。

「えっと、150、じゃなくて、155……、え、160?」

ドクン、ドクンと衝撃は続く。脚が、体が、腕が、キュッ、キュッと太さを保ったまま縦に伸びる。

「ちょ、ちょっと、165、うーん、もう、届かない!先生!」

170cmを超え、男性である担任を呼び寄せる事態にまでなった時、それは終わった。

「180cm。っと。はい、次は体重計に乗ってね」

小学生、いや日本人全体でも高い分類に入る身長。病気と捉えるのが普通なのに、校医はスルーした。そして、拓也もそれを当然と受け取った。クラスメートも、自分たちの中に大きすぎる存在がいても、気にも留めない。それも、ナノマシンの機能だった。

「うーん、50kg?この体重じゃやせすぎ。危ないかな、もっと食べないと」

この言葉を聞いて反応するがごとく、身長は伸びたが、最低限の脂肪しか付いていない拓也の体は、またしても変化を始めるのだった。脚が、グ、ググッ……と、脂肪を蓄え始めたのだ。徐々に太くなる脚のせいで、ジャージがパンパンになっていく。

「あれ、55kg、いや、60kg……」

腕にもムチッと脂肪が付き、丸い輪郭が生み出される。ジャージの上は、骨格が大きくなったせいで既にギリギリのサイズになっていたが、更に大きくなる体で、段々と引き伸ばされる。

「65.2kgね。じゃあ次、スリーサイズを測りましょう」
「え?僕は男……」
「さあさあ」

パツパツになってしまったジャージに圧迫感を覚えつつ、校医に導かれるがままに、場所を移す。そして、服を脱ぐと、スリムな体型が顕になった。

「じゃあ、ヒップから……」

ドックンッ!

校医の言葉で、測定の準備を始めた拓也の体。その小さな尻がプルッと震える。そして、ルーラーがピトッと体に触れた瞬間。

ブルンッ!!

「きゃあっ!」

尻が爆発的に大きくなる。だが、その後も内側から押し広げられる感覚が止まらない。

「くすぐったいのは分かるけど、じっとしてなさい」

その間にも、ギュッギュッと柔らかい輪郭が膨れ上がっていく。

「僕のお尻がぁ……」
「すごい、100cm超えてる……」
「えっ!?」

拓也は自分の体を確認するべく振り返ろうとしたが、その腰をルーラーが捉えた。

「次はウエストねー」
「うぅっ!」

ルーラーに締め上げられたとでも言うように、十分締まっていたウエストがキュッとさらに細くなった。

「58cm。最後に……」

ドクン、ドクン、ドクンッと、脈拍ごとに拓也の胸に何かが詰め込まれ始めた。真っ平らな胸の突起がピクン、ピクンと動き始め、小さかった乳輪が広がっていく。そして、乳腺が成長の準備を完了させる。

「だ、だめぇっ……」
次に何が起こるか察した拓也だったが、校医は待ってくれなかった。ルーラーが胸に触れた瞬間……

ブルンッ、ムギュギュッ!ミチミチィッ!!

ルーラーを押し戻すように、二つの膨らみが生まれ、育ち、膨張し始めた。

「こ、こら、じっとして!」

自分の胸にじっとしてほしいのは拓也の方だが、校医は容赦ない。Aカップなど一瞬で飛び越え、Eカップ、Gカップと膨らんでいく乳房を無理矢理押さえ、ルーラーを止める。

「110cm!」

だが、それで成長が終わったわけではなく、ルーラーで押さえられた部分の上下に乳肉がこぼれだしていく。校医がルーラーを手放すと、拓也の頭くらいになった、二つの柔らかい塊が解放され、タプン、タプンと揺れた。

「終わった……の……?」

拓也が下を見下ろすと、呼吸するたびにフルフルとゆれる胸が、視界を遮った。手で持ち上げてみると、その柔らかさで指が包まれる。自然にできあがっている谷間は何かの深淵を望むようで、かなり深くミッチリとしている。

ヘナヘナと座り込むと、こちらも大きく膨らんだ尻が、衝撃を吸収してぷるんと揺れた。彼は、クラスメートたちがいる前で、新しい快感に溺れ、胸を揺らし、揉みしだき、肌をなでた。そして、股間に手を伸ばし……


「たーのしー!」

ナノマシンに付いているらしい、視界をジャックする仕組みのカメラ機能を使って、ニケは少年の体型を操作していた。

「和登にも何かしてあげたいな!」

高校に行っている主人の事を考え、楽しそうな笑顔を浮かべるニケだった。