菊月妄想2-3

「如月ちゃん、おやすみ!」

キク、キィと三日月が夜の戦いをしているさなか、如月と睦月(大)は灯りをつけて寝床についていた。

「睦月ちゃん、おやすみ」
如月は睦月に挨拶をし、布団にくるまった。そして、小さなため息をつく。
「司令官……如月のこと、忘れないでいてくれるかな……」

如月は、不安だった。これまでも、旗艦のキィを始め、たくさんの菊月の中で存在感が自分の存在感が大きいとはいえなかったが、キクと睦月が戦艦クラスのサイズになり、その大きくなった二人の脇で如月はアピールの機会すら与えられなかった。
司令官の中で、自分の影がさらに薄くなることを恐れる如月。だが一方で杏仁豆腐に精神を影響され、皆を襲い始めたキクを目の当たりにして、自分は『ああはなりたくない』という別の恐怖から、杏仁豆腐を口にすることはためらっていた。

「如月は、如月のままでいたいもの……」

しかし、不安は溜まる一方。隣で早くも寝息を立てている睦月は、性格が似ているせいで「でかい睦月」と呼ばれる鈴谷に負けずとも劣らないスタイルになっていた。

「うぅ……睦月ちゃん、私の事、置いてかないでね……」
寝ていることを分かっていつつ、睦月に声をかける。と、

「むにゃ……もう食べられないにゃ……」
子供っぽい寝言をつぶやく睦月。その姿に安心した如月は、そのまま目を閉じて、眠りについた。

だが、如月は知らなかった。自分が食べた夕食の中に、杏仁豆腐が少し混入していたことを。そして、その効果は量に関係なく、ただ発現するまでの時間が変わるだけのことを。

その数時間後、ついに如月の体に変化が起こり始めた。

睦月型で唯一Bカップに達していたその胸がピクッと震えると、ムクムクと大きく膨らみ始める。

「んんっ……ん……」

大きく押し上げられた寝間着の下から現れるウエストも、上下に伸びていく。脚も伸び、スルスルと寝間着から先端が出ていくとともに、太ももにムチムチと肉がつき、尻も成長する。

部屋着の中で膨張をやめない乳房は、ムギュギュギュと成長を加速させ、隣にいる睦月の大きさを追い越し、顔よりも大きくなる。

「んはっ……」

パツパツになった服に押さえつけられ、行き場所を失ったそれは、服の下からこぼれ始めた。もはや鎮守府の中で一番大きいと言っても過言ではない、スイカサイズの豊かな果実は、呼吸のたびにフルフルと震えた。

「はぁ……はぁ……」

しかし、これほどの変化があっても、いろいろあった疲れからか、如月が眠りから覚めることはなかった。


いつも通りの時間に、いつも通りに目が覚める如月。

「んん……」
寝ぼけ眼で布団から体を起こし、髪飾りをつけて、顔を洗いに洗面所に向かう。

「ちょっと……変な感じ……ひゃぁっ」

(ドタァッ!)

あまり前が見えていない状況で歩いていたせいか、床においてあった何かにつまづき、転んでしまった。

「な、なんなのよぉ……」
自分が脚を引っ掛けたものを確認しようと、足元を見ようと……したが、何かに邪魔されて見えない。

「え?なに……これ……?」

目の前にある、服に包まれた何か。服の中なのだから自分の体の一部であることは間違いないのだが……

「如月ちゃん……?どうしたの……?にゃっ!!??」
「睦月ちゃん?」

布団から出てきた睦月は、自分の目を疑っているように目をゴシゴシとこすった。

「や、やっぱり!如月ちゃん、大きくなってる!」
「私が、大きく……?」

如月は、自分の体を起こそうとして、胸に異常な重みがかかっているのに気づいた。
「おもた……って、これってもしかして……」
「おっぱい、おおきい……」
「おっぱい……?私の……?」

体を起こし終わると、胸にくっついている二つの肌色の塊を手ですくい上げる。
「やわらか……じゃなくて、どうしてこんなことに……」
「すごいよ如月ちゃん!キィちゃん顔負けだよ!」

如月は、大はしゃぎしている睦月に釣られるように少し苦笑いした。
「大きすぎよ……これじゃ悪目立ちしちゃう」と言いつつ、司令官にまた見てもらえることに少し喜びを感じるのだった。

「如月姉さん!さっき大きな音がしましたけど、大丈夫ですか!?」
「えっ……」

それだけに、扉をバァンと開けて登場した三日月……のようなトランジスタグラマーの女性に感じた戦慄は大きかった。

「三日……月……ちゃん……?」

たゆんたゆんと揺れる胸を見て動きが固まる。
「あぁ、すまない、如月……三日月もアレを食べたのだ……おい、貴様もか」
三日月の後に入ってきたキィは、如月をみて呆れ顔になった。

「いえ、私は……」
「昨日の夕食に、私が入れておいたんですよ。如月姉さん、ちょっと気になってたみたいでしたから」
「あ、そうなの……」

如月とキィは、呆れて頭をおさえた。

「睦月は、みんなが大きいの楽しいけどにゃ!これが睦月型のホントの力!」

そして、皆を元気づける一番艦のノリには、ついに誰もついてくることはなかった。