トキシフィケーション~毒の力~ 温泉編2前編

例の家族を実験台にしてから一ヶ月。一度母国に帰っていたのだが、その家族がまた宿を取ったので、私は戻ってきていた。宿屋とは名ばかりで、宿泊室が一つある以外は私の研究所支部となっているその建物に、彼らは娘の友だちを3人連れてきた。

「いらっしゃいませ」
「また、来ちゃいました……」

今度は、同時翻訳ツールで、難なくこの国の言葉をしゃべることができる。連れられてきた3人は、全員小学生で、一人だけが男、残りが女だ。男は多少太り気味だったが、肥満とまではいかないくらいで、身長も高い。

「こんな田舎まで、また来てくださってありがとうございます」
「いいえ、娘が聞かなくて……」

まあ、娘の記憶を操作してここで楽しいことが沢山あったことにしたのだから、そうなるだろう。娘だけでなく、父親の記憶も操作していたが。

「で、ここのどんなことが楽しいの?」
「え?うーん、お風呂が楽しいよ?」
「おふろー?バーベキューとか、そういうのはないの?」

『楽しいこと』を、単に『楽しいこと』と記憶に刻みつけていたから、その内容は娘が適当にでっちあげるしかない。それでも付いてきたこいつらは間が抜けているはずだ。さっさと、実験を始めてしまおう。

「それでは、中にお上がりください。お飲み物を用意しましょう」

それから、親にはもう何も考えずに睡眠薬を飲ませ、子どもたちにはそれぞれ違うものを飲ませた。ジュースと偽って飲ませたその飲み物にはやはり睡眠薬が入っていたが、ほぼ薬や毒が主成分だった。

そして、4人を全員、施設内にある実験室、その金属製の実験台の上に乗せ、それぞれの手足に鎖をつけ、予約の情報と照らし合わせながら、被験体を吟味する。
まずはリピーターの真波(まなみ)。もともとは男だったが、前回の実験で女となり、加えて男に接触すると体が成長するようになっていた。実際に腕に触れると、ぐいっと体が大きくなる。中学生くらいになった体で、まだ寝息を立てている。
つぎに、少し気弱な亜衣(あい)。4人のうちで一番小柄だが、艶がある黒髪は背中まで伸びている。
3人目が、亜衣とは対照的に強気な麻衣(まい)。亜衣の姉らしいが、髪は短く切り、外で遊ぶことが多いのか肌は少し日焼けしている。
最後が、その三人と仲はそこそこいいが、誘われたと言うより付いてきたらしい啓太(けいた)。四人でしゃべっている間でもあまり会話に入れていなかった。

録画用に設置している、部屋のカメラが動作していることを確認したあと、四人を起こした。といっても、揺り起こしたわけではなく、手足の鎖から繋がれている注入口から、睡眠薬の中和剤を注入したのだ。

「ん、んん……」
「なに、ここ……?」

四人は、周りを見渡している。心地の良い羽毛布団ではなく、金属の台に乗せられている事実に気づくと、少しのパニックが起きた。

「た、助けてぇっ」
「真波!?これが楽しいことだっていうの!?」
「えっ!?私、前はこんな事されてないよ!違うよぉっ」

だが、亜衣が、一言発した。

「真波ちゃん、少し大きくなってる……?」
「な、なんで真波が大きくなってるのよ!」

ここぞとばかりに、説明を始めた。

「私が、そうしたからだ。彼女の体は、男の体に直接さわると、成長するのだ」

――いや、むしろそれがバレていなかったのが不思議なくらいだ。この一ヶ月、公共の場で男の体に触れないで来たのだろうか?この真波はよほど器用な子供なんだろう。

「そんなこと、信じられるわけ無いでしょ!」

ちなみに、4人は手足が縛られているせいで自分の様子も、他の子供の様子も直接は見られないが、私が設置しておいた部屋の天井に大きなモニターで代わりに確認できるようになっていた。

「では……」

私は、真波の体に優しく触れた。途端に、真波の成長が始まった。

「んっ……んんんっ!!!」

たとえ私の触れ方が優しくても、毒の威力は容赦ない。中学生くらいの体を、グイグイと押し広げていく。服は瞬く間にサイズが合わなくなり、そして破れだす。平らだった胸では、乳腺が爆発的に発達し、それを包む脂肪と合わせてムクムクと大きな乳房が形成されていった。そして10秒もしないで、大人の女性と同じくらいの大きさになった真波の手を、触り続ける。

「い、いや、これ以上はぁっ……!」

乳房はすでにGカップ程度のものに成長していたが、この毒にリミットはない。プルンプルンと揺れながら、スピードを落とすことなく膨らんでいく。そして、身長も伸び続け、手足や尻の上でもむっちりとした脂肪が発達を続ける。

「わ、わかったから、真波が大きくなるのは分かったから!」
「分かったから、なんだ?」

私の大きさなどとうに超えた真波を、成長させつづける私に、麻衣が懇願してきた。

「とめて!」

止める理由はあまりなかったが、それでもいうことを聞くことにした。それに、成長させるのは真波だけではなかった。

「はぁ……はぁ……」

毒の効力を発揮させたのはたったの30秒ほどだったが、真波は元の二倍の大きさになり、小学生であるとは考えもつかないほどの爆乳の女性になっていた。かなり余裕があった手術台の上を、ほぼ埋め尽くしてしまっている大きな体の上で、息をするたびフルフルと揺れる巨大な肌色の塊は、柔らかそうではあるが張りもあり、別の目的がなければ揉みしだきたいところだ。

「この毒は傑作だ……やはり素晴らしい出来栄えだ」
「なに、いってんのよ!この人でなし!」

麻衣が食いかかってくるが、彼女の実験はまだ後だ。その前に……

「んぅっ……」

今まで真波の隣で震えているだけだった亜衣に、変化が起こり始めた。

「亜衣!?」
「お姉ちゃん……亜衣の体、変だよっ……」
「あ、アンタ、私の妹に何をしたのよ!」

実験台の上でもがき苦しみ始めた亜衣を見て、私を睨みつけてくる麻衣。だが、手足についた鎖のせいで私には触れることさえできない。最初は臨床試験用に付けた鎖だが、今は非力なモルモットを好きなようにし、嗜虐心を満足させるための道具にもなっている。

「何をって……真波と同じように、毒を使って体に細工しただけだ。さっきのジュースを飲んだ時点で、亜衣の体の中には大量の毒が投入されたのだ」
「ど、毒!?」

私の娘、ジェニファーに注入したものの4倍の量、亜衣には飲ませていた。ただし、遅効性の毒として、体によくなじんでから効力を発揮するように設定した。そして、計算した時間通りに、亜衣の中で毒が本性を表し始めたのだ。

「私の亜衣を、殺すつもりなのね!?」
「殺すなんて、子供が言っていい言葉じゃないぞ。それに、私の毒の効果は体の成長。だから……」
「きゃああっ!!」

亜衣の悲鳴が私の声を遮った。と同時に、その体が急激に成長し、服をビリビリに引き裂いて、真波より一回り小さい程度までになった。そのまま、ゆっくりと成長を続けている。

「あ、亜衣!!」
「ふむ……」

成長が終わるまで見続けているのもいいが、これは実験だ。やるからには目的がある。おもむろに、ムクムク膨らんでいる右の乳房をパンと叩いた。

「ひゃあんっ!!」

やはりというべきか、私の手を押し返すように、乳房は倍の大きさまで急激に膨張した。これまでの実験と同じ結果だ。衝撃を与えると、その部分の免疫力が下がり、毒の効果が上がる。

「亜衣、おっぱいがぁ……」

右の乳房は膨らまなくなり、代わりに縮んで行く。逆に左の乳房は大きくなるスピードを早めた。それに、もう180cmくらいになっている身長もグイグイと伸びる。まるで、乳房の中身が体全体に行き渡っているようだった。

「ま、まだ大きくなる……の……?」

全体的に真波より肉付きはよくないが、スレンダーというわけでもなく、巨大な胸と、それに引けを取らないむっちりとした下半身。それらは、まだ成長の速度を落とさず、着実に大きくなっている。

しかし、いつものような不安定な成長をしない。これも特筆すべき効果だが、毒が体になじんだ後、効力を発揮したからということだろう。

髪の方も、実験台から垂れ落ちるほどの長さになり、床の上を這うように伸びていく。日本人特有のいい髪質で、一本一本が丁寧に結われた黒い絹糸のようだった。

完全に言葉を失って、隣に横たわっている姉の2.5倍くらいの身長になったところで、麻衣の成長は収まった。

変身描写だけ書きたい!(AP2)

「だ、だめ……」
「今こそ、君の力を解放するべきときなんだ……この街の皆を、守るためにも」

強固な城壁に囲まれたトバという街。だが、その城壁ですら今や破られ、壁の防護隊も風前の灯火となっていた。
小さい子供の姿をした『彼女』はその街の上級魔法使いなのだが、これまでも、その枠を大きく超える力を解放し、幾度となく魔族に襲われる、この街を救ってきていた。防衛隊長はその小さな子供によりすがり、街の防護を懇願していた。

「今は、だめ……この街が滅んでも、私の力は使っちゃだめ!」

その解放のトリガーは、異性との抱擁。彼女の意思に関係なく、抱きしめられると他に類を見ない規模の防護魔法が発動させるのだ。だが、今の彼女は様子がおかしかった。

「この街以外に、俺達に何があるっていうんだ!」
「あなたには言っても分からない!それに、他の魔法使いの力を使えば、今回の侵攻は食い止められるはずよ!」

防衛隊長は、上層部の魔法使いが彼女の力を過信し、自分たちの手を出すことを拒んでいることと、彼女も何が理由か分からないが手を貸してくれないことが重なり、部下を多く失っていた。上はどうしても動かない。それなら、彼女を無理にでも抱きしめて防護魔法を発動させるしか、選択肢がなかった。

「ええい、うるさい、さっさと……!!」
「きゃぁっ」

焦りのあまり、甲冑を着たままで力強く彼女の体を締め上げてしまった。肋骨が二、三本折れたような音がしたが、それくらいは後で治癒魔法を使えばいいだけ。

「もう……おさえ……きれない……!!うわああああっ!!!!」

彼女が叫び声を上げると、その体から衝撃波が生じた。隊長は遠くまで吹き飛ばされ、彼女の周りの地面はえぐれた。服も一気にちぎれさり、彼女は一糸まとわぬ姿を晒していた。

「うっ……ぐううっ……!!!」

隊長は、吹き飛ばされた衝撃はともかく、いつもの防護魔法とは全く異なる性質を持った衝撃波にうろたえた。なにか、恐ろしいことが起きようとしている。

「だめ、だめ、だめだめだめぇっ!!!」

彼女は、自分の体を抱きしめている。そして、その体が、グワッと一回り大きくなった。

「なにが起こっていると言うんだ……!」

また、一回り大きくなる彼女。8歳くらいだったその体が、成長を早回しするかのように、大人のものへと変わり始めていた。

「出てきちゃう……あいつが……!」

白い生肌に、なにかシミのようなものが現れ始めた。普通のシミと違うのは、それが青く光っていることだった。そして、それが急に明るくなったと思うと、彼女の尻がグググッと膨れ、その上にシミ……いや、何かの紋章が細かく刻まれていく。それを体を捻って確認した彼女は、諦めの表情を浮かべた。

「また、滅ぼしてしまう……」
「な、なにっ!?」

隊長は遠巻きながらにその言葉を聞き取り、彼女のもとに駆け寄った。その間にも、また、彼女の体が大きくなり、紋章がさらに刻まれていく。

「隊長さん、今まで、楽しかった……」
「なにを言ってる、防護魔法を出せばこれからも同じ生活が……」
「う、ううっ!!」

彼女の悲鳴が言葉を遮る。髪がバサッと伸び、腰にかかる。その先では、スレンダーだったももに一気に肉が付き、ここにもやはり入れ墨が入っていく。そして、彼女の虚ろな瞳は、最後に隊長をじっと見つめた。

「も、もう……私が……私じゃなくなるから……さよ……なら……」
「しっかり、しっかりしろ!!」

隊長はその華奢な肩を揺さぶる。だが、彼女の瞳から赤い光が放たれると、ひるんでしまう。

「ふ、ふふっ……愚かな人間ども……また、やってしまったのね」
「なんだと!?」

彼女の口からは、これまでの清楚なものとは対極の、女王のように傲慢な言葉が発せられる。

「あらあら、この子も中々貧相だったのね?」

さらけ出された胸を、彼女は撫で始める。すると、膨らみも何もなかったものが盛り上がり始め、手の動きに合わせてムニュンムニュンと形を歪ませながらどんどん膨らんでいくではないか。隊長は危機的状況にも関わらず、その柔らかな動きに息を呑んでしまう。

「う、うふふっ……こんなに力が……たまってると……っ」

そして、また彼女の体全体が大きくなり、その国でも一番大きいと言っても過言ではないほどの身長と、胸と、尻を持ち合わせた女性となっていた。さらに、胸はどんどん大きくなり、頭ほどのサイズになってしまった。

「一つの国くらい、滅ぼしてしまうかも?」
「な、なななな、なにを、貴様は……!」

彼女の体の上の紋章が、明るくなった。と同時に、上空に青い光球が生まれ、またたく間に巨大化していく。

「私は、この世の魔族を統制する者。他にも、同じ存在がいるのだけど……これまで、私の力で魔族を倒してきたのでしょう?」
「おまえの、力……?防護魔法ではなく、魔族を統制する力だというのか……?」

「防護魔法?ああ、私の力は、この街をエサにして、ある程度の量の魔族が集まってきたら発動して、全ての魔族の魂を吸収するんだから、防護しているように見えなくもないわね」
「この街が……エサ……?」
「ふふ、おかげさまで沢山の魂の力が私の中を駆け巡ってるわ……使い方を間違えれば世界を終わらせるほどのね……でもっ、ふぅっ……!!」

彼女の胸が、さらに大きくなる。他の部分の肉付きもさらによくなり、その体を見せるだけで精を出し切ってしまう男もいるほどのものになった。

「そろそろ、出さないと、器が壊れちゃうからっ!」
「出す……だと……」

いつの間にか、青い光球も明るすぎて太陽が見劣りするくらいのものとなっていた。

「コスモに送り出すのだけど、その反動でこの国は爆発四散する、そういう運命なの。じゃあね」

こうして、魔族の魂の統制に巻き込まれ、一つの国が跡形もなく滅んだ。