成長

小学生である俺の弟には、成長ホルモンのバランスに問題があるらしい。健康診断で問題が出て、紹介された病院の医者にそう言われた。俺も、母さんも父さんも、かなり慌てたものだ。それから1ヶ月後。実際の所、問題は全然なかった。

俺を除いては。

「兄ちゃんお帰り!」
「おう、ただいま」

夏の暑い日、汗だくで帰った俺を、リビングで迎える弟の太一(たいち)。髪を短く切って、シャツと短パンで涼しく決めている。母さんは俺のぐしょぐしょに濡れた服を見て、呆れ顔だ。

「汗びっしょりじゃない。お風呂入ってきたら?」
「ああ、そうするよ」
「ちょっと待ってね、入浴剤持ってくるから」
「あ、あぁ……」

母さんは廊下の方に出ていった。さて、さっきの問題というのなんだが……

「兄ちゃん、部活って楽しい?」

弟がいたはずの所に、高校生の俺と同じくらいの背丈の女の子が立っている。髪は長く、胸はサイズが合わない服をピンピンに引っ張り、ムチッとした尻に短パンが食い込んでいる。後ろに腕を組んで前のめりになって聞いてくるせいで、胸の谷間が自分の存在をこちらに強烈に主張してくる。

これが、俺の弟だ。普段は普通の活発そうな小学生男子だが、俺しか見ていない時に限って出るところは出て締まるところはキュッと締まった女に急成長するのだ。ホルモンバランスの崩れから来てるんだろうが、一体全体、成長ホルモンってなんなんだよ……

「ねえねえ?」
「……!?」

かわいい女の子、いや弟の顔がギュッと急接近してきた!思わず狼狽してしまう俺に、どんどん弟は接近してくる。

「ほら、持ってきたわよ……って何顔赤らめてるの?」

母さんがいきなり部屋に入ってきて、飛び上がってしまった。

「こ、これはそういうのじゃなくて!」
「……何が?」
「あ……」

魅惑的な体つきの少女は、跡形もなく姿を消し、いつもの弟が少し不満気な顔をしているだけだった。思わずため息をついてしまう。

「……はぁ……風呂入ってくる」

毎日弟が変身するのを見て慣れていたはずなのに、あんなに近寄られるなんて思ってもみなかった。太一は太一で、自分が変身していることに全く気がついていないらしい。胸を触ってみてもいいかとダメ元で聞いた時は、ちょっと首を傾げただけで了解された。その時触った感覚は、太一が本当に女の子になっていることを証明していたけど……

風呂場に着くと、すでに湯が沸かしてあった。母さんに渡された入浴剤を入れると、シャワーの蛇口をひねった。と、その時だった。扉越しに、いつの間にか風呂場の前に来ていた母さんがとんでもないことを言った。

「ねえ、太一も一緒に洗ってあげて、お母さん忙しいから」
「え、ちょ……!?」

普通に考えればとんでもないことでも何でもない。が、俺の場合はそうも行かない。でもシャワーを止めて拒否する前に、太一が入ってきてしまって、抱きつかれた。

「兄ちゃん久し振りにお風呂一緒だね!」
「え、えっ」
「じゃあお願いね」

風呂場の扉がガチャッと閉められると、俺の体にムニィッと弾力感が伝わってきた。おっぱいだ。弟のおっぱい。

「背中洗いっこしよ!」
「えぇっ!?」

服越しには分からなかったキメの細かい肌と、柔らかそうな丸い輪郭。混乱した俺にはそれしか分からなかった。しかし、俺の体に胸を押し当てている女の子はどうあがいても弟だった。

「え、してくれないの?」

そんな泣き顔するな!そんな顔されたら断れないだろ!?

「ああもう、すればいいんだろ、すれば」
「じゃあ太一の背中から!」
「はいはい」

俺は、風呂椅子に座った弟の後ろに回る。まずサラサラと背中に流れる長い髪を肩の前に回した。

「ゴクリ……」

出てきた背中のなんと綺麗なことか!俺と同じくらい大きいのに、汚れの全くない、真ん中に筋がすーっと通った、とても繊細そうな肌。写真で見たことはあっても、目の間にあるとまた違う。

「どうしたの?」
「あ、ああ、今洗うからな」

これ、いつものヤツで擦ったら絶対傷つけてしまう。どうやって洗ったらいいのか……考えた挙句、結局母さんが使っているスポンジの柔らかそうな方で洗った。

「ちょ、ちょっと痛いよー」
「あ、暴れるなって!」

四苦八苦しながらも何とか背中を洗い終わる。

「じゃあ髪の毛も!」
「はぁっ!?」

こんなに長い髪の毛、本当にどうやってあらうんだ……普通にロングだよな、これ……これこそ、細心の注意を払うべきところだろうが、洗い方なんて知るか。

「いつもどうやって洗ってるんだ?」
「んー、いつもは髪短いから……」

なるほどな。

「じゃあ、俺が出るから、自分で……」
「やーだっ!兄ちゃんに洗って欲しいの!」
「わがまま言うんんじゃない!そんな顔したって俺には通用しないぞ!」

そんな、ねだるような顔されたって、俺は……実際、完全に敗北してる。めちゃくちゃドキドキしている。

「そ、そう……?」

すごくがっかりしているようだ。俺だって洗ってやりたいのはやまやまなんだが。

「じゃ、髪が終わったら他の部分を一つだけ、何でも洗ってやるから……髪だけは洗えって」
「はーい」

俺は風呂場を出て、扉を閉めた。気になって中をのぞき込むと、いつもの弟のようだ。ワシャワシャと自分の頭を揉むようにして洗っている。あれなら、俺にもできるんだがなぁ……

「終わったから入ってきて!」
「おう」

扉をがらーっと開けると、目に飛び込んでくるのは突起のついた巨大な丸い膨らみと、長い髪に飾られた端正な顔。こんなに急に変身して、痛くもなんともないんだろうか?

「じゃあ、胸を洗って?」
「あぁ、胸な……ムネェッ!!?」
「そうだよ?ノリツッコミしてないではやくはやく!」

しゃべるたびタプンタプンと揺れるあの豊満な果実を、洗えと!変な気持ちが沸き起こりそうで恐ろしいったらありゃしないが、約束は約束だ……仕方ない。さっきのスポンジを使えばいいだろうか……

「あ、スポンジは痛いから素手でやってよ」
「はぁっ!?やめだやめだ、胸以外のどこかに……」
「なんでもって言ったじゃん」
「ぐぬぬ……じゃあ洗うぞ……」

手に石鹸をつけて、恐る恐る肌色の膨らみに近づける。これは弟だ、弟なんだぞ……なんでこんなに興奮しなくちゃならんのだ……

「あんっ……♥」

指の先がピトッと触れた瞬間、弟が変な声を……喘ぎ声を出しやがった……どこのエロゲだよ……こんなの、兄弟がすることじゃ……

「どうしたの……?手が止まってるよ?」
「あーもう!やればいいんだろ!?」

胸に手を付け、石鹸を一心に塗りたくり、泡を立てようとする。だが、力を入れるたび気が狂うくらいに変形するそれは、その質量と触感で俺の性欲をかきたてた。

「んあぅ♥ふあっ♥」

おまけに、弟はエロいとしか言いようがない喘ぎ声を続けざまに出してくる。目の前で、俺の手によって大きく形を変えるおっぱいと合わせて、俺の股間はとてつもなく固くなって、痛いほどだった。その時、風呂場の扉が一気に開いた。

「いつまで入ってるの!?」
「か、母さん!?」

み、見られた!弟の胸に欲情してるのを、現行犯で見られた!!

「こ、これは勘違いで……!」
「え?」
「あ。」

パニクった俺の精神は、元の姿に戻っている弟を見て落ち着いた。胸があった空間には何もなく、背も縮んだ弟の顔に、俺の手が当たっていた。

「何が勘違いなの?」
「い、いや……」
「それよりも、男同士がなんでこんなに風呂が長いのよ……おやつ準備してあるから、早く出てきなさい」
「はーい」

母さんは溜め息をついて、扉を閉めて去っていった。と同時に……俺の手にムニュゥ……と、柔らかい感触が戻ってきた。

「ひぁっ♥」
「も、もう大丈夫だろ……?」
「うん。それで、僕の体のことなんだけど……」

ん、急に雰囲気が変わったぞ。

「なんだ?」
「実は、兄ちゃん以外に今の姿を見せたこと、無かったけど……もう耐えられそうもないんだ」
「は?」
「これまでは成長を抑えて、元の姿でいられたんだけど、この頃、どんどん抑えきれなくなってて……トイレの中で成長したりして何とかしてたんだ」

どういうことだ。弟は周りの環境にあわせて、意思とは関係なく変身していたのではないのか?

「だけどもう限界みたいでさ、お母さんの前でもグッとこらえるくらいじゃないと、この姿になっちゃうんだ」
「ちょっと待て、それって……」
「男は、もうやめないとね。こんな大きなおっぱいで、男だなんて言えないから。だから……兄ちゃん、僕のこと、守ってね」
「まも……る……」

守る。その重大な責任について、俺はこの時全てを理解できなかったが、こくりと頷くしか無かった。これから女性として生きていく弟のためだ。

「ああ、守ってやる」
「兄ちゃん……ありがと……」

弟は、俺に抱きついてきた。俺は、少しの震えと、胸にムギュッと柔らかい何かが当たる感触を得ながら、覚悟を決めるのであった。

トリック・アンド・トリート ~クッキー編~

「こ、ここはどこ……?」

一人の女子大生が、路地裏で迷っているようだ。日も暮れ、街灯がぽつりと一つ、彼女の上で光っている以外は、真っ暗だ。

「わ、私今まで大通りを歩いてたよね……?スマホ見ながら歩いてたっていっても、こんなところ、入ってくるわけ無いし……とりあえず地図を調べて……」
「おじょうさん」
「うわぁっ!?」

暗闇の中からいきなり男の声がして驚く女子大生。そこには、時代遅れのローブを着た、RPGに出てきそうな男が立っている。

「こんな所を一人で歩いていては、危険ですよ」
「……ご、ご心配ありがとうございます……」

彼女には、不気味なローブ姿の男から一刻も早く遠ざかりたい、という直感にもにた恐怖が湧き上がった。しかし、足を動かそうとする意思に、体が従わなかった。

「え、なんなのこれ、足が動かない……」
「それは、そうですよ。私の結界の中にいるんですから」
「結界……?」

女子大生は、真上から自分を照らす光に、熱のようなものが加わってきているのに気づいた。

「ちょ、これ、熱い……!」

光を遮ろうとして、手をかざす。だが、その手に、妙な感覚が伝わってくる。

「なんかすごくカサカサする……!」

手を目の前に動かすと、その感覚の正体が分かる。しかし、彼女は安堵するどころか、恐怖を感じざるを得なかった。彼女の手は砂をかぶったように白い粉で覆われていた。いや、彼女の手自体が、粉になっていたのだ。手は、彼女がじっと見ているその前で手首からポロッと取れ落ち、床にぶつかった衝撃で、粉々になってしまった。

「……え……っ」

手だけではない。光が差す体の表面、服の表面が色を失っていく。同時に、サラサラとした粉が、体から分離し床に積もり積もっていく。

「……!」

悲鳴を上げようとした彼女の口も、いつの間にか固まり、瞳から流れだした涙も、粉に吸い込まれ、顎まで流れることはなかった。ついに、手の指や髪の毛の先が欠けていたが、女子大生は人間の形を保ったまま、完全に白い粉の塊と化した。

「ふむ……なかなか形が残りましたね……しかし、像にするのが私の目的ではないですし……」

男がパチッと指を鳴らすと、粉の像にピキッと亀裂が入り、各部分がバラバラに落ち、床にあたって砕け散った。最後に残ったのは、白い粉の山だ。

「よし、これで人間小麦粉の完成といったところでしょうかね。これに砂糖とバターと卵黄と……私特製のスパイスを……」

男の言葉とともに、どこからともなく現れた、白い粉、黄色い固まりと液体、そして光の粒のようなものが山に加えられ、竜巻のように舞い上がって、混ぜられていく。材料は、これも忽然と現れた無数の型に流し込まれ、一瞬にしてふっくらと焼けた。あたりには、とろけてしまいそうな甘い香りが立ち込める。

「おいしいクッキーの完成ですね。本来ならティータイムにピッタリの」

一口サイズに焼けたクッキーは、あっと言う間に数個ずつプラスチックの袋に梱包され、ひとりでに夜空へと飛んで行く。

「こんな夜にお菓子を食べる子は、いないでしょうが……まあ、明日が楽しみといったところでしょうかね」

ローブの男は、女子大生を小麦粉にした照明に向かってパチッと指を鳴らした。すると明かりは消え、逆に周りの風景が見え始める。そこは、女子大生が歩いていた大通りそのものだった。彼女は、この男の、照明に見立てた結界の中に入ってしまったせいで、周りが見えなくなり、逃げ出せなくなってしまったのだ。

明かりが消えると同時に、男も姿を消し、大通りの喧騒は何事もなかったかのように夜を明かした。

その翌日。夏の暑さに耐えかね、二人の小学生の男子が、クーラーの効いたリビングでゲームに勤しんでいた。二人とも元気いっぱいの育ち盛りで、こんなに暑くなければ仲間と野球をするような外見をしている。

「いただき!」
「あっ、そこでくるかメテオ!」

対戦ゲームのようで、かなりヒートアップしている。それで、彼らの横にスッとクッキー入りの袋が飛んできたことにも気づかなかった。

「そろそろおやつ食べよっか!」
「そうだな建人(けんと)!あ、こんなところにクッキーが……」

少しおとなしめな子のほうが、クッキーの袋に気づき、建人と呼ばれたもう一人に見せる。

「クッキーよりポテイトゥ食べようぜ」
「あ、もう一つ食べちゃった……なんだこれ、変な……あ……っ」

クッキーを食べた子が、胸を抑えて苦しみだした。そして、床に仰向けに倒れ、手を床に付け、ぐっと痛みをこらえるように、歯を食いしばった。

「な、大智(たいち)どうし……」
「んああっ……!!!」

急に叫び声を上げる大智と呼ばれた子。すると、手足がググッと伸び、薄手のTシャツの胸の部分に、ピクッと突起が立った。股間も、異常なまでな勃起を見せている。建人は、いきなりの親友の変化に、腰を抜かし、倒れてしまう。

「た、たすけ……んぅああっ!!!」

さらに手足が伸びるが、それは普通の男のように筋肉や骨で角ばったものではなく、まるで女のように皮下脂肪に覆われ、柔らかな輪郭を持ったものであった。同時に腰がグキキッと何かに引っ張られるように横に拡大する。スポーツ刈りにしていた髪の毛も、サラサラと伸びて、周りの床に広がっていく。

「た、い……ち?」

夢にも見なかった事態を受け入れられず、ただただ大智が変わっていくのを見届けるしか無い建人。

「あ、おちんち……んんっ!!!」

股間の突起が、グチッ、ミヂッ、と音を立てて、体に潜り込むように萎縮し、ついに見えなくなってしまった。

「ふぅ……ふぅ……んっ!あぅっ!」

左胸がグイッと盛り上がり、薄手のシャツの襟から、どうみても乳房の膨らみにしか見えない、肌色の固まりがはみ出る。続いて、右胸も同じサイズまで膨れ上がり、女子高生の体格まで大きくなっている体の上に、大きな双子の山が出来上がった。

「ふあっ……もっと……んぁっ!!」

大智が声を上げるごとに、ムクッ、ムクッと体が一回りづつ大きくなる。その吐息は、小学生のものは到底思えない色っぽさを醸し出している。着ていたシャツはビリビリ破け、短パンは尻と太股に食い込み、その肉感をさらに強調している。

《ビリーッ!!》

ついにシャツが胸からの圧力に負けて大きく破れ、頭と同じくらいのサイズになった胸が解放されて、タプンタプンと大きく揺れた。同時に、大智は喘ぎ声を出すのをやめた。

「た、大智?大丈夫か?」

建人はやっと我に返り、数分前の姿の面影が全くなくなった大智に近づいていく。仰向けに寝そべったその体の上で、大智の呼吸とともに揺れる胸は、建人の幼い好奇心を誘う。

「(ゴクリ……)」

建人は、その力にあっさりと負け、腕を豊満な乳房へと伸ばした。その瞬間、大智の目がカッと見開き、建人の腕をガシっと掴んだ。

「ひゃっ!?ご、ごめ……!」

しかし、建人が想像したのとは逆に、大智は友人の腕を、自分の胸に押し付けたのだった。

「どう?私のおっぱい……。やわらかいでしょ……?」
「えっ、ええっ……うん、やわらかい……」

建人のなかで、さっきまで対戦ゲームで盛り上がっていた大智とは思えない発言に対する警戒と、手に伝わってくるなんとも言えない柔らかい感触への興奮がせめぎあい、幼い精神はパンク寸前になっていた。

「じゃあ……」

大智は、寝そべったまま建人の服を超人的なスピードで脱がせ、両手でヒョイッと持ち上げて自分の体の上に寝かせた。

「私の体、全身で堪能して……!」

そしてギュッと腕で建人を抱きしめ、乳房に建人の頭を押し付ける。

――おっぱいやわらかい……いや!こいつは大智で……で、でも……おなかもすごくスベスベしてる、そしてこの汗の匂い……

建人は、今起こっていることの不可解さに混乱しつつ、小学生でも持ち合わせている本能に、徐々に抗えなくなっていった。

「まだ何もしないの……?じゃあ私から……」

その時だった。

「建人お兄ちゃん?誰か来てるの?」
「真都(まと)!」

建人の、同じく小学生の妹、真都が、いつの間にやら部屋に入ってきたのだ。

「駄目だ、今は入ってきちゃ……っ……」
「だれなの、このおねえちゃん……えっ」

建人の中で、何かの線がプツッと切れていた。何かを考える前に、いたいけもない妹の口に、親友を女性にしたクッキーを、有無をいわさず突っ込んでいたのだ。

「お、おにいちゃ……んっ……!」

その効果はすぐに現れた。身長が伸びる前に、膨らみかけにも入っていない胸が、ムクッ、ムククッと、部屋着の薄いシャツを盛り上げ始めたのだ。その大きさは、30秒ほども経たないうちに特大メロンサイズまでになってシャツの下からはみ出し、真都の体では支えきれなくなってしまった。

「なんで、私におっぱいが……んああっ……!!!」

後ろに突き出す形になっていた尻がムギュギュッと膨らみ、同時に足がニョキニョキと伸びて、未だ胸以外成長していない上半身を、下から押し上げていく。足には、ムチムチと脂肪が付き、腰もゴキゴキと広がる。

「いや、私これ以上大きくっ……!!」

腕も伸び、部屋着を限界まで引っ張る。背骨が伸びて、相対的にウエストが絞られ、女性特有の美しい曲線が描き出されていく。

「わ……私……」

声も、子供っぽい高い声から、落ち着いた声に変わる。そこで変身が終わったのか、大きくなった腕をついて、何とか立ち上がった。

「こんなに、大きくなっちゃったのね……」

建人は、何も考えること無く、自分よりも格段に背の高くなった妹の胸に飛びついた。

「あら、おにいちゃん。そんなに私のおっぱい好きなの……?」

妹の問いに、ただただ頷く建人に、理性はほぼ残っていない。起き上がってきた大智は、真都に目配せし、建人を持ち上げて真都の胸に押し付け、自分の胸も同じように押し当てた。建人は、頭を二人の乳で挟まれ、そして考えることを完全にやめた。

「今回は効能を大きくしすぎましたかね……性格や思考が完全に変わってしまうとは……」

疲れ果て、死んだようにリビングの床で眠る3人の子供を、ローブ姿の男が眺めていた。

「次にお菓子を作る前に、少し検討する必要がありそうですね……まあ、このお三方にはこれからも楽しんでもらうことにしましょうかね。この際、クッキーは差し上げることにしましょう」

まだ、中に15個は残っている包みを、男はニヤニヤしながら確認し、そして部屋から姿を消した。

俺は男だ!

「だから俺は真也(しんや)だって!」

俺は、昨日まで見たこともなかった女の子に迫られている。懇願するように、肩をつかまれ大声を出されている。ショートヘアで小柄、言ってしまえばボーイッシュなのだが、胸は膨らみかけ。声もアルトと男にしては高く、正真正銘の女の子。それが、朝学校に来た瞬間すがりつかれたのだからこちらも大混乱している。

「わかった、わかったから落ち着け」

とはいえ、休み時間中に見ていたエロ本の内容をすらすらと言い当てたのだ。間違いなくこいつは俺の親友の真也だ。

「ほ、ほんとか?」
「仕方ないだろ……それよりも、何でそんなことになってるんだよ」

真也は、俺の幼なじみで、昨日帰りに別れるまでは、運動神経のいい、男の中でも筋肉が人一倍ついた、いわゆるマッチョ体型の男だったはずだ。それが今は、腕はほっそりとして、胸筋が付いていたはずの胸は多少の膨らみがあるだけだ。

「俺が知るかよ……朝起きたらこんな事になってて、ショックで思考停止状態になってここまで来たんだ」
「普通そういう時って学校休むよな」
「来ちまったんだから、しょうがないだろ」

俺が女になったらそうする。それで、色々な所を物色して……まぁそんなことは置いといて、今女になっているのは真也だ。この状況をどうするべきか。昨日までエロ本を共有する仲であったとしても、いきなり体を見せてくれとは言えないだろう。

「じゃあ、体を見せてくれ……」

あれ、俺今なんて言った?

「お、俺は男だぞ……?」
「いや、女……」
「男だって言ってるだろ!」

真也は大きな声で怒鳴ってきた。俺は答えを返すことができない。それは、大きな声でひるんだせいではない。真也の胸がいきなり、ボワン!と大きくなったのだ。しかも、かなり大きく。

「な、何これ……!」

真也は、胸にいきなりついた重量に狼狽している。小さいメロンくらいのサイズはあるだろうか、シャツの中でタプンタプンとゆれる、それは紛れも無くおっぱいだ。それに、足の方も、さっきに比べてムチッと肉が付いている気がする。髪も少し伸びて、最初言った、ボーイッシュという表現があてはまらなくなった。つまり……

「お前、女っぽく……」
「俺は男だ!」

今起こっている事象を全部否定したいのだろうけど、どたぷんと揺れるおっぱいが俺の視界を誘惑する。どうしても、思春期の男の性というか、見ざるを得ない。女の、乳房だ。しかも、俺の目が釘付けになっているその時に、またギュッと一回り大きくなった。俺の股間もギュッとなったのは言うまでもない。親友に性的興奮を覚えている俺は、どうしてもこいつが女だと認識するしかない。そうじゃなきゃ、俺がホモだってことになる。

「……大人しく女だって認めろよ」
「なにいってるんだ!、俺は男だ、男だ、男だっ!!」

もうさっきから気づいていたけど、真也は自分が男だと思う、というか主張するたびに、体が反抗するように女の特徴が大きくなっている。髪はみるみる伸びてロングヘアに、尻もでかく、胸の方は落ち着いてきたがそれでも大きくなり続け、心なしか、胸に引っ張りあげられたシャツの隙間から見えるウエストが、更にくびれている気がしてならない。

「お、落ち着け!おい!!」
「はっ……」

俺が手を伸ばし、制したところでやっと、真也は自分の体の変貌に気がついたようだ。

「これが、私の体……?」

どうやら女になりすぎて、思考も変わってしまったらしい。身振り手振りが周りの女がしているのとほとんど変わらない。ああ、真也よ、今お前はいずこに……

「そうだよ。分かったらこれ以上お前自身が男だなんて……」
「責任、とって?」

ん?こいつ、今責任って言ったか?

「私をパニック状態にしたのは、あなたでしょ?ね、責任取ってよ」
「何言って……」
「いいから、ね」

さっきとは打って変わって、自分からその肢体を見せつけるような格好をしている。誰だ、こいつ。と思いつつも、俺の心臓は強く拍動していた。

「……ああ、なんでもしてやるさ」

巨大兵器

「未確認航空機、発見!来ます!」

コンピュータがこれでもかというように配置されている、特撮の司令室のような部屋で、大声が飛び交う。

「戦闘機部隊を派遣し、できるだけ被害を抑えろ!その間に、アレの展開を!」
「司令!アレは遺伝子G1A-NT35Sを持たない人間には……」
「だから遺伝子スキャナーを搭載して、自律的に適合者を見つけられるようにしたんだ!今すぐ展開!」
「り、了解!」

部下は、とんでもなく大きい赤いボタンに拳を叩きつけ、「アレ」を起動した。

ある中学校の校庭で、その子はバレーボールをプレーしていた。

「えーいっ!」

跳躍し、大きく動かした手が強いスマッシュを繰り出した。その球は、地面に叩きつけられる……

《パァン!》

直前に、破裂した。

「え、なに!?あ……」

《ゴゴゴゴゴ……》

地響きがしたと思うと、爆音とともに白の機体が少女の真上を通り過ぎた。白い機体に、日の丸が付いている。

「自衛隊のジェット戦闘機……?じゃあ、今のは流れ弾?でも……」

敵がいなければ、弾を撃つ必要など無い。平和を謳歌する日本に、敵などいるはずがない。だが、少女の疑問を解消するとともに、あらたな疑問を投げかけることが起こった。ジェット戦闘機を追うように、黒い、プロペラの飛行機が猛スピードで飛んでいた。第二次世界大戦の映画で見たような、一見古いその機体には、ネオンのように青く輝く塗装がなされ、SFチックにも見える。その飛行機は、ジェット戦闘機に置いて行かれるどころか、その後ろにピッタリとつけ、そして……

《バァン!!》

一瞬にしてジェット機が火に包まれた。

「な、なに……」
『適合者、発見!融合します!』
「えっ!?」

映画さながらの壮観を見上げていた少女は、声がした方を見た。すると、DVDのような銀色の円盤が飛んでいるのを確認できた瞬間、少女の腹部に突き刺さった。

「んぐっ……!」

円盤が刺さったところから出たのは血ではなく、光だった。

『融合シークエンス開始!』

そして円盤は少女の体の中にグリグリと入っていってしまった。

「え、ちょ、ちょっと!」

少女は円盤が入っていった腹部を触ってみたが、傷ひとつ付いていない。

「え、えぇ……!?きゃっ!?」

困惑する少女に追い打ちをかけるように、その隣に巨大な金属の塊がドーンッ!と落ちてきた。塊には、金属の筒が何個も付き、まるで戦艦に付いている砲塔のようだった。

『さあ、触ってください』
「へ?」

少女に、男の声が聞こえた。軍人じみた、正しい規律と威厳を感じさせる低い男の声だ。

『あなたには申し訳ありませんが、我々の敵と戦っていただきます』
「て、敵?」
『今は説明している暇はありません!その兵器に触ってください!』
「そんなこと言っても……」

少女の頭上に、プロペラの音が響いた。上を見ると、先程の戦闘機が、少女に向かって突っ込んできていた。

『さあ、早く!!』
「え、えぇい!!」

戦闘機に襲われる恐怖と、それから逃れるただ一つの窓を与えられ、少女は言われたとおりにするしかなかった。少女が兵器を触ると、砲が戦闘機に向けられ、ドドドド!!と連続して発射した。その弾は戦闘機に当たることはなかったが、驚いたのか、戦闘機は向きを変え、通常の飛行に戻った。少なくとも戦闘機を追い払うことはできたようだ。

「たすかったぁ……でもこれじゃ、アレを倒せないよ……」
『巨大化シークエンス開始!』
「へっ!?」

急に空から光が舞い降り、少女は光に包まれた。

「え、え、あああああっ!」

光はすぐに収まったが、少女の体の中にとてつもないエネルギーが貯めこまれ、全身が光り輝いていた。

(か、体が、熱いっ!!)

ついに、それは始まった。少女の体がグーッと大きくなり始め、服のあらゆるところがバリッ、ビリッと裂けていく。靴は縫い目がほつれ、収まりきらなくなった指が外に出ていく。1m半くらいだった身長は、あっという間に、2m、4mと大きくなり、先ほどは体より大きかった兵器を、片手で持てるほどの大きさまでどんどん巨大化する。地面は少女が動くたびにえぐれ、服は腕や足に巻き付く糸のように千切れてしまった。身を包むものが無くなった少女の周りに光の粒が集まり、セーラー服を形成すると、校舎の2倍くらいの高さになった少女は、変身を完了した。

『さあ、兵器を持って戦ってください!』
「も、もう、やればいいんでしょ!」

地面に置かれていた兵器を持ち上げ、少女は飛行機との戦闘を始めた。

《パァン!》
「ふぅ、やっと全部落とせた……」

ハエのように不規則な飛行をする戦闘機に手間取りつつも、10分ほどで少女の圧勝が決まった。とはいえ、服はビリビリにやぶれ、もともと大きめな少女の胸が下から見えてしまっていた。

「やっと、これで元に……」
《ドォン!》
「今度はなに……えっ!!??」

頭上から聞こえてきた大砲の音に、目線をそちらに向ける少女。そこには、今の少女より大きな古い戦艦が空を飛び、砲塔を少女の方に向けていた。

『ちっ、トヤマが出てくるとは……さらなる巨大化シークエンス開始!』
「と、とやま……?て、ちょっと待って!!」

納得行かない少女に、またもや光が降り注いだ。

「ね、ねぇ……もうこれで終わりだよね?」
『た、多分……』
「多分じゃないわよ!もう、今私がどれくらいの大きさになってるか、解ってるんでしょ!?」

その大声は、太陽系中に響いていた。少なくとも、真空でなければ響いていただろう。少女は、今や太陽よりも大きくなっていた。兵器は少女の巨大化に合わせ、変形に次ぐ変形を遂げ、地球がその砲塔に何個も入るほどの大きさまでになり、同じくらい巨大な敵の主力艦を木っ端微塵にした。

「じゃあ、戻してよ!」
『そ、それが……君の巨大化をコントロールしていたマイクロ波発生器が暴走して……』
「そ、それじゃ私……」

これもまた、巨大化に合わせて繕い直されていたセーラー服が、ビリビリと音を立て始めていた。

「も、もういや!!……あっ」

激しく動いた少女の体は、近くにあった地球を粉々にしてしまった。少女はその意思とは関係なく、人類を滅ぼしてしまったのだった。