体の熱は、どんどん大きくなって、やがて菊月の体全体が燃えるように思えるほどに熱くなっていく。
「はぁっ……はぁっ……」
荒い息をし始めた菊月に、如月が「大丈夫、菊月ちゃん!?」と呼びかけるが、それが聞こえないほどの動悸に菊月は襲われていた。
(煉獄の炎のようだ……っ!)
苦しみ始めた菊月に、窓際に座っていたクゥも、チラチラとこちらを見ている。今の事態の産物は、今は泣き止んでほけーっと菊月を見つめている睦月の体を見れば一目瞭然だ。そして、その『結果』に向かって、菊月の体が変化を始めようとしていたその時だった。
「今、帰還したぞ。ん?何だ、如月も三日月もまだいたのか……」
それは、簡単な出撃を終えてきた(といっても彼女以外は全員大破した)キィだった。納豆は誰かに取ってもらったのか無くなっていた。そして、司令を反故にしてまだ菊月部屋を出ていない如月と三日月を叱責しようとした。しかし、菊月が急にうめき声を上げたのを見て、キィは反射的に菊月に駆け寄った。
「おい、大丈夫か!?この杏仁豆腐で食あたりでも……」
「う、うぅっ!!!」
グイッ!
苦しがって胸を抑えていた菊月の体が、急に縦に伸びた。服が持ち上げられ、へそと太ももが顕になる。目の前で突然大きくなった菊月に、キィは思わず飛び退いた。
「な、何が起こって……!」
ググググ……
体の伸長は止まらず、140cmくらいあった身長が、160cm、165cmと大人の平均身長さえ超えてどんどん大きくなっていく。
「ぐっ……くぅ……っ」
その白い髪は身長に合わせて伸び、腰を覆っていく。今や制服はピチピチになって、スカートはところどころ破けている。靴下の先も、指がだんだん見え始め、太ももにも肉がついて、靴下の張力がつくる谷が大きくなっていく。
「胸が……熱いっ!!」
今まで平らだった胸も、急速に成長が進んでいく。制服を引き裂いて出てきた肌色の丘は、むくむくと大きくなって、10秒くらいたったときにはもうりんごサイズになり、その後も水風船のように膨らむことをやめなかった。
「あわわわ……」と三日月は硬直し、如月は口を押さえて青ざめている。キィは変身をほぼゼロ距離で見せられ、その場で腰を抜かして床にへたり込んでしまった。
「まだ、大きくなるっ……!」
ムククーッと膨張する乳房は、制服をさらに破って、ついにはメロンサイズまで成長してしまった。そして、変身が終わった。
「私は、いったい……」
自分の体の状況を確認しようとして立ち上がると、今まで見えていた世界と全く別のものが見え、狼狽してしまう菊月。それもそのはず、175cmの身長となった今、目の位置は普段に比べて頭一つかそれ以上上にあったのだ。
「き、キクちゃん……」如月は、戦艦でも尻込みするほどのスタイルになった菊月になんとか話しかけた。「す、すごいわね……その体。色仕掛けも、それだったら楽にできるわよ……」
「そう、なのか……?」菊月は、豊満な胸を見、張りのいい尻を触ってみたりした。そして、足元を見ようとすると、これがなかなか胸が邪魔で見えない。菊月はすこし前かがみになった。
「あっ……」その時、キィと目が合った。先ほどの威厳はどこへやら、少し震えながら菊月のことを見上げている。
(キィ……)
その、なぜか急に愛らしく見えた橙色の瞳や、今はついていないはずの納豆の一粒、そしてサラサラとした白い髪が、急に……
「欲しくなって、しまった……」
「な、に……?」
その先の行動は、本当なら破廉恥極まりない恥ずべきことなのに、菊月にはもはやそれが当然に思えた。キィを大きくなった力で押し倒し、服を脱がせ始めたのだ。
「やめ……うっ」
菊月の眼光は、キィを自分のものにせんとする獣のように、キィを圧倒していた。
「キィよ……こういうものは、好きか……?」と、菊月は服を脱がされて露出していたキィの右乳首を、口でつまみ始めた。
「ひゃっ……!」キィは、性にも合わない可愛らしい嬌声をあげ、幼い体には強すぎるほどの快感に溺れてしまった。
「ふふ……練度が高いとは言え、やはり一人の駆逐艦なのだな……」菊月は、今度は乳首を甘噛みした。変身する前には、こんな事が誰かに刺激や快感をもたらすことなど、知りもしなかった菊月だったが、体が自然に動く。
「っ……!きゅっ……」キィは必死に菊月の攻めに耐えているが、目が虚ろになり、手足はビクビク痙攣するばかりだ。
「このまま私のものとなるがいい、キィ……」
と、その時、「だ、だめですそんなこと!」と、三日月が菊月の背中を引っ張り上げようとした。無論、体格差が大きすぎて菊月はびくともしない。だが、菊月はそこでピタッと動くのをやめた。
「三日月……?」キィは、攻めが止まったおかげで意識がはっきりし、助け舟を出した三日月を見つめた。
「キク姉さん、忘れてはいないでしょうけど、私たちは提督の指示に従うことが使命なんです。どんなはずみなのか知りませんが……」と、三日月は菊月をなだめようとしたが、その言葉は菊月に遮られた。三日月の方にスッと向いた菊月が、顎の下をツーっと指でなでたのだ。
「ひゃぅああっ……!」三日月はその場にガクンと膝をついて床に倒れ、そのままビクビクと震えた。「にゃんなのぉ……」
菊月はフッと歪んだ笑みを浮かべた。「やはり三日月はそこが弱いようだな……私はキィが欲しいのだ。心配するな、三日月もあとから……」
「おや?キィは私のものだ。新人のくせに、生意気な態度を取るんじゃないぞ」と遮ったのは、いつの間にかすぐそばにいたクゥだった。
「クゥ……?」のしかかられたままのキィが、困惑した表情でクゥを見た。クゥはニッと口を緩ませる。
「百戦錬磨のキィだが、この鎮守府に加わったのは私とたった1日違うだけだ。それ以来、どんな資源不足も、どんなイベントも、二人で共に見続けてきた」
自信満々に言うクゥだが、キィは困惑したままで、完全に片思いなのは誰の目にも明白だった。
「だから、新人の貴様に、キィをくれてやるものかっ!」
「ひゃぁんっ!」
クゥは菊月に後ろから飛びつき、その胸を鷲掴みにした。菊月は思わず悲鳴を上げた。ただ、キィとは違って、大人の色気というものがたっぷり詰まっていた。
「な、なにをするっ……ひゃぅっ!」
キィの方も仕返しとばかりに、菊月の乳首を覆うように口をつけ、出もしない母乳を欲しがるようにチューチューと吸いだした。そして、牛の搾乳のように手のひら全体を使って、胸を揉みしだいた。
「この菊月は、……はぷっ……貴様らのペットではないぞっ……!」
クゥは尻の方に移動し、破れかけのスカートを引き裂くと、菊月の尻をペシペシと叩き始めた。
「こうも大きいと、叩きやすいものだな!」
「くっ……この菊月、この程度ではっ!!」
菊月はしゃぶられたままの乳房ごとキィに再びのしかかると、その顔を胸で覆い尽くした。
「ひゃ、やめ……ろっ」
「クゥよ、叩くのを、やめないとっ」
収拾のつかなくなった菊月三人に、提督からの制止が入ったのは、その後30分も経ってからだった。
「如月に呼ばれて来てみれば、これは一体どういうことなんだ」
「すまない、私の管理不行き届きだ」
提督の問いただしにすぐに答えたのは、キィだった。ただ、足は菊月に攻められ続けたせいでガクガクと震え、今にも倒れそうだ。クゥは申し訳なさそうにその隣にちょこんと座っていたが、菊月は二人の後ろでビクンビクンと時折痙攣しながら倒れていた。
「司令官、この新人なんだが……今や戦艦クラスの装備も扱えることだろう」
「なに、そこで倒れているのは新人菊月なのか?」
提督にとっては、菊月部屋に来てみたら3人の菊月がプレイをしていた、ということくらいしかわからないのだ。なんせ、如月はいきなり始まった乱交パーティと、助けに行こうとした三日月が一瞬で陥落したことに対応しきれず、提督に助けを求める時も「しれいかん……きくづき……さんにん……たすけて……」と単語を羅列することしかできなかったのだ。
「ああ、そうだ。そこにある杏仁豆腐を食べたら急に大きくなってな」
「そうか。それで、新人が戦艦になれば一緒に出撃できると?」
キィはコクッとうなずく。
「この新人のことが、気に入ってしまってな。多少資源はかさむだろうが、ちゃんと運用してやってくれ」
「ふむ……菊月を主力艦隊で二人使えるのは願ったりかなったりだし……きぃちゃんの願いだ、わかった」
「うむ」
『きぃちゃん』という呼び方に、顔を少し赤らめながら、提督に向けている眼差しはきらめくようだった。
「ただ、その前に……」
提督は、キィの後ろを指差した。最初から倒れていた菊月に加えて、キィが菊月を気に入ったことを知ったクゥが、泡を吹いて倒れていた。キィは呆れたような顔になったが、すぐ提督に微笑んだ。
「きっと司令官も、すぐ新人のことを気に入るぞ」
「ああ、わかってる」
二人の左手の薬指に、同じ銀色の指輪が光った。