覚醒の夢 2話 ~新津 三奈~

ポヨンッ!シューッ……ムクムクッ……パフッ。ベッドに寝転がった菜津葉の胸から出たり引っ込んだりするおっぱいを、机に座る小さなフリューは眺める。

「菜津葉さーん、何やってるんですかー?」
「んー、どれくらい強く念じると影響出るのかなって」
菜津葉は、ベッドの上で自分の魔力の実験をしていたのだ。外は夕焼けで赤く染まっている。
「あぁ、体が変化するボーダーラインは結構高めにしましたよ。本とか読んでるときに体型変わると困りますもんね」
「そうだね……って、体験者みたいに言うじゃない」
本当にそのとおりだったようで、フリューはため息を付いた。

「ええ、ワタシってあんなに筋肉モリモリでしたけど、あれも最初は制御が効かなくて、保健体育の教科書読みながらガリガリになったり肥満体になったり……」
「まさか、あの魔王ってやつ、他でも同じことやってたの?」
フリューはコクコクとうなずく。
「その当時は、まだ人間でしたけどね」
「へぇ……とんだ魔王もいたもんだね……」

呆れることしかできない菜津葉だったが、部屋の外から聞こえた母親の声に、服を着直した。
「菜津葉ー!三奈ちゃんが来てるわよ、忘れ物だって言うから通したわよ」
「え、三奈が?」
菜津葉が反応を返すと同時に、扉がガチャっと開いた。菜津葉の幼馴染である新津 三奈(にいつ みな)は、いつもは玄関でおとなしく待っていたが、部屋まで自分で来たのだ。なにかおかしい。
「菜津葉、ちゃん」

『気をつけてください、この子も魔力に汚染されています』
フリューはフッと姿を消し、また菜津葉の頭の中から声がした。
「三奈に限ってそんなことは……」
「菜津葉ちゃん、どうしたの……?」
――フリューに話しかけたことが、不自然な独り言に聞こえたのだろうか―少し、三奈は戸惑った。だが結局そのまま部屋に入ってきた。
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覚醒の夢 1話 ~古町 菜津葉~

古町 菜津葉(ふるまち なつは)は、北陸のとある町に住んでいる、普通の小学四年生。今は12月、日本海側特有の大雪に見舞われるが、学校は普通に授業を行う。

「じゃあ、行ってきます!」

学校は、小学生の菜津葉の足で20分程度のところにある。登校班は10人で、集まるのは家のすぐそばの公園だ。冬ということもあり、見送りの親を含めて全員厚着だ。

「菜津葉ちゃん、おはよ……」
「おはよー、三奈(みな)ちゃん!」

菜津葉を見るなり声をかけてきた、菜津葉より一回り小さな子。同い年の新津 三奈(にいづ みな)は、菜津葉の幼なじみ。気が弱く、いつも菜津葉にくっついて行動している。小学校でも別のクラスになったことはなかった――平日はだいたい一緒にいるし、休日も良く互いの家で遊んだりする。

「三奈ね、ちょっと怖い夢見たの」
小さい声で、そう菜津葉にしゃべりかけてきたのは、菜津葉と他の生徒との会話が落ち着き、学校につく直前になったころだった。

「え?どうしたの?」
「うーん、私、なんか……なっちゃって、みんなのこと……」
声がいつにもまして小さく、一部聞き取れない。その上、話の重要な部分が始まる前に、学校の門に到着してしまった。
「おはよう、みんな!今日も余裕の到着だな!」
教頭の声に遮られ、会話はそれで終わってしまった。
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覚醒の夢(仮) 序章

高層ビルの屋上に、二人の人間の影があった。少女と、黒いローブを羽織った、見るからに悪党が睨み合っている。
「魔法少女ナッツ!貴様もこれまでだ!」
「愛と正義の力、見せてあげるんだから!」
少女の名は魔法少女ナッツ。本名は古町 菜津葉(ふるまち なつは)。普段は普通の小学生だが、その正体は街を襲い来る魔人から守り抜く、正義の味方だ。

「フハハハ!強がっていられるのも今のうちだぞ!」
真剣な菜津葉に対して、悪党の方は余裕しゃくしゃくといった様子だ。ニヤける敵に、菜津葉は全力を魔法のステッキに込め、叫んだ。
「えーい!アイスフリューゲルス、ルミナスツーク!悪よ!滅び去れ!」

キュピィィッ!シュバッ!!

強い光を発した菜津葉のステッキから、強力な魔法が解き放たれる。――彼女の必殺技だ。これで、悪党は成敗される……

だが、迫りくる光の塊を見た悪党の表情は、急に冷めたものに変わった。

「ナッツ……いや、菜津葉よ。我の力を鍵とし、その力を覚醒させよ」

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