覚醒の夢 2話 ~新津 三奈~

ポヨンッ!シューッ……ムクムクッ……パフッ。ベッドに寝転がった菜津葉の胸から出たり引っ込んだりするおっぱいを、机に座る小さなフリューは眺める。

「菜津葉さーん、何やってるんですかー?」
「んー、どれくらい強く念じると影響出るのかなって」
菜津葉は、ベッドの上で自分の魔力の実験をしていたのだ。外は夕焼けで赤く染まっている。
「あぁ、体が変化するボーダーラインは結構高めにしましたよ。本とか読んでるときに体型変わると困りますもんね」
「そうだね……って、体験者みたいに言うじゃない」
本当にそのとおりだったようで、フリューはため息を付いた。

「ええ、ワタシってあんなに筋肉モリモリでしたけど、あれも最初は制御が効かなくて、保健体育の教科書読みながらガリガリになったり肥満体になったり……」
「まさか、あの魔王ってやつ、他でも同じことやってたの?」
フリューはコクコクとうなずく。
「その当時は、まだ人間でしたけどね」
「へぇ……とんだ魔王もいたもんだね……」

呆れることしかできない菜津葉だったが、部屋の外から聞こえた母親の声に、服を着直した。
「菜津葉ー!三奈ちゃんが来てるわよ、忘れ物だって言うから通したわよ」
「え、三奈が?」
菜津葉が反応を返すと同時に、扉がガチャっと開いた。菜津葉の幼馴染である新津 三奈(にいつ みな)は、いつもは玄関でおとなしく待っていたが、部屋まで自分で来たのだ。なにかおかしい。
「菜津葉、ちゃん」

『気をつけてください、この子も魔力に汚染されています』
フリューはフッと姿を消し、また菜津葉の頭の中から声がした。
「三奈に限ってそんなことは……」
「菜津葉ちゃん、どうしたの……?」
――フリューに話しかけたことが、不自然な独り言に聞こえたのだろうか―少し、三奈は戸惑った。だが結局そのまま部屋に入ってきた。

「あのね、朝の夢のこと、なんだけど……お話、したくて」
「アレのこと?うんうん、どうしたの?」
三奈はモジモジしながら話し始めた。
「三奈ね、夢の中で、学校への、道を歩いてたの。そしたらね……」
そして、話しながら唐突に服を脱ぎだす三奈。いくら幼なじみの菜津葉でも、服を脱いだ三奈を見たのは初めてだった。フリューの言っていた魔力の影響は、これのことなのだろうか?
「黒い男の人とすれ違って、で、その人に言われたの。『力を解放しろ』……だったかな。そしたらピンク色の霧がかかってきて……うっ……」

急に苦しみ始める三奈。
「……だめ、もうちょっとだけ持って……っ……」
三奈は、自分の中の何かと戦っていた。その小さな心臓がバクバクと動いているのが、菜津葉にも伝わってくる。

「それで、体が、大きくっ……なって……!みんなを……みんなをっ!」
三奈から聞いたことのない大声に、尻込みする菜津葉。

三奈の目が開かれる。その瞳は、赤に染まっていた。そしてにんまりと笑って、妖気に満ちた声で、言った。

「……順番に、犯していったのよ」

菜津葉より少し小さな体が、ビクンッと痙攣する。

「薬が切れたようね……三奈、菜津葉ちゃんのことが欲しくて欲しくてたまらないわぁ……」

腕がズルズルと伸び、胸に脂肪が蓄えられていく。そして、三奈の華奢な足が伸びていくと同時に、尻にもたっぷりと脂肪が詰め込まれ、プルッと膨れる。

「もう菜津葉ちゃんは逃げられないのよ……昼は、夢で飲まされた薬で感情が抑えられてたけど、もうその障害はない……」

三奈は、すらっとした体型ではあったが、胸が大きく育ち、Gカップの乳房が誇らしげに揺れる。

「三奈……!」
『何やってるの!早く、この子を浄化して!』
幼なじみの変わり果てた姿に菜津葉は呆然としてしまう。これほど恐ろしい表情を、まさか三奈から見ることになろうとは夢にも思わなかったのである。

三奈は、菜津葉をベッドに寝かせると、恍惚の表情で頬をなで、服をビリッと破る。
「恐怖でプルプル震えてるちっちゃな菜津葉ちゃん、とってもかわいいわぁ……」
「み……な……」
その頬を、一筋の涙が流れ落ちる。

『何やってるの菜津葉ちゃん!こいつの魔力を放出させないと、本当に倒されちゃいますよ!』
「え……?魔力……?どうやって……」
フリューの声に、精神をつなぎとめる菜津葉。だが、打開策が見当たらない。力では圧倒的に負け、こんなに大きな変貌を遂げた彼女を説得できる可能性も低い。
『胸に魔力が凝縮しているのを感じます……なんとかして母乳を出させれば……』

「菜津葉ちゃん……私のものに……」
フリューと会話している間にも、服越しに菜津葉の乳首をなでる三奈。菜津葉には、ピリピリとした刺激が伝わる。
「んひゃぁ……っ!」

母乳を出させる――菜津葉には、その方法も思いつかない。
「もうっ……!」
藁にもすがる思いで、三奈の乳房を揉む。昼の自分のものに比べたら小さいが、それでも大きく変形し、菜津葉の手を覆ってしまいそうだ。だが、これは三奈をもっと興奮させるだけだった。
「あぁんっ……菜津葉ちゃんたら、思ったより積極的なのね……」

『そんなのじゃダメ、菜津葉ちゃん!ああもうこうなったら……菜津葉ちゃん、ちょっとの間体を貸してください!』

菜津葉に「え……」と小さく反応する暇しか与えず、彼女の頭の中に割り込んでくる意識。それを前にして、三奈に攻められ弱くなっていた菜津葉の意識は、何の抵抗もできなかった。憑依が終わると菜津葉の表情はキリッとしたものに変わり、三奈を少し驚かせる。
「菜津葉ちゃん……じゃない!?」

「いかにも。私の名前はヘアシュヴァイスフリューゲル!人呼んでフリュー……」
「……そんなの、どうでもいいわ……」
またもや乳首をなでる三奈。フリューとなった菜津葉だったが、結局体は変わらないのだ。
「んんっ……こりない……ですね……っ、いいでしょう……」

その刹那、三奈の指の下で、突起がプクッと膨れた。勃起というには不自然な成長に、三奈が身を引く。
「な……に、これ……?」
「もう、遅いです!」
菜津葉の胸がミチミチと音を立てて育ち、服を盛り上げる。体の他の部分はそのままに、ムクムクと膨らんでいく乳房は、あっというまにリンゴサイズからバスケットボール、メロンサイズにまで育つが、重力を気にしないのを高らかに宣言するような球体に膨らんでいた。胸の中は成長と同時に生成された母乳でいっぱいになっていたのだ。
「胸が、張りすぎて、い、痛いっ……けど、これでっ!」

「いったい、なにを……」
「制御できる魔力を、あなたの体内に送り込み、魔王の魔力を噴き出させる……さぁ、くらいなさい!」
菜津葉の胸がビクッとゆれる。その次の瞬間――

ブシャァアアッ!!

「きゃあああっ!!」
勢い良く母乳が飛び出し、三奈を直撃する。そして一部は口から三奈の中に入っていった。

「んふっ、菜津葉ちゃんのおっぱい、おいし……っ!?」
なおも余裕を見せる三奈は、だが、たった今自分の中に侵入したものが、膨らんだ胸の中にある魔力を暴走させるのを感じた。菜津葉の胸は母乳をすぐに出し終わり、ポフッと平らのまな板に戻った。

「むねが、あついぃ!!」
そして、三奈の胸はボコボコと音を立てて爆発的に膨らみ、ビーチボール大にまで育ってタユンタユンと揺れる。だがその揺れはすぐに収まり、さらに胸が一回り大きくなった。
「おっぱい爆発しちゃうっ!」
三奈はあまりに大きい胸の膨張感、緊張感に悲鳴を上げる。いまや三奈の胸は、噴出されまいとしている魔力でパンパンに膨れ上がっていたのだ。そして――

ブッシャァァァアアアアアッ!!!!!!!!

「きゃあああああああああああっっ!!!!!!!」
三奈の胸から、洪水のように白い液体が排出された。フリューはやりきった顔でその顛末を見届けているが、彼女の体にもものすごい圧力で母乳が吹き付けられるせいで、息ができない。
「私の中身、魔力が出ていっちゃうぅっ!!!!」
魔力を吐き出し、縮んでいくのは三奈の胸だけではない。体全体も、だんだんと空気が抜けるように元の三奈に戻っていく。
「やだ、だめっ、私は、菜津葉ちゃんを……っ……」
体が中学生くらいの大きさになり、母乳の吹き出る勢いが弱まり始めると同時に魔力による洗脳も溶けていき、元々の性格が顔を表した。
「あ……あっ……ご、ごめん……ね、菜津葉……ちゃん」
「あ、そろそろ戻らないといけませんね。ほら、菜津葉ちゃん?……」
フリューも体の制御権を菜津葉に戻す。母乳の最後の一滴が滴り落ちると、三奈は菜津葉に抱きついた。
「み、三奈ちゃん」
「菜津葉ちゃん、私を許して!菜津葉ちゃんに、いっぱい、いっぱい、いけないことしちゃった!」

昼のことを思い出し、苦笑いする菜津葉。自分自身にしたことに比較すれば、三奈のやったことはなんでもなかった。ちょっと脅されて、頬と局部をなでられただけだ。それに、三奈も魔力に操られていたのは分かりきっていた。
「だ、大丈夫だよ、三奈ちゃん……」
「あ……あ……」
しかし、三奈の顔は今度は恐怖に染められる。
「どうしたの?」

『菜津葉ちゃん!早く浄化を!また魔力が三奈ちゃんの中に入り込もうとしています!』

フリューが叫ぶ声が、菜津葉に現状を思い出させた。部屋の中は三奈の出した母乳でいっぱいだ。そしてそれは、魔王の魔力そのもので、自らの意思を持って三奈に戻ろうとするのはあたり前のことだった。そして実際、母乳の海は三奈の方に向かってせり上がってきていた。
「じょ、浄化ってどうしたら……!」
『経口で菜津葉ちゃんの清い魔力を三奈ちゃんに与えるのです!さっきは吹き出した母乳に魔力を混ぜて悪い魔力を追い出しましたが、同じ方法では不純物が多すぎて浄化は無理なのです!』
「そ、それって、キス……?そんなこと、できるわけ……!」

「キス……で治るの……?なら、いいよ……」
「三奈ちゃんっ!?ああもう、わかったよっ!すればいいんでしょ!」

ブチュッ……というのがただしい効果音だろうか。菜津葉がしたのは、三奈のなんでも受け入れるような静かな表情に対してあまりにも乱暴なキスだったが、それでも効果はあったようだ。

「んっ……あったかい……」
三奈の体がほのかに光り、三奈に入り込もうとしていた直前の母乳の海がパァッと光になって消えたのだ。
「菜津葉ちゃん、ありがと……だいすき……」
「三奈ちゃん……私もだよ……」

「んー、これは面白いですね……」
事が終わったことに安心して抱き合う二人を見たのか、姿を現すフリュー。三奈は少し体をビクッとさせて菜津葉に抱きつく。
「だ、だれ……?」
「あー、怖がらなくていいよ。この人はフリューって言って、私たちを助けてくれるマ……マスコットだよ」
――一瞬、マッチョだったけど今は妖精の人だよと言いかけ、なんとか取り繕う菜津葉だが……

「ふーん……じゃあ」
三奈の顔が、さっきの歪んだ笑顔に戻る。
「え、え……?」
「このまま菜津葉ちゃんとイチャイチャしても、大丈夫よねぇ……?演技するのも、大変なのよ?」
またもや菜津葉に抱きついたまま、三奈の体が成長し始める。

「な、なんで!?浄化は成功したんじゃないの!?」
「な、菜津葉さん……ちょっと言いにくいことなんですが……」
フリューの憐れむような顔に、戦慄が走る菜津葉。
「それなら、私が説明してあげるわ……」
成長が終わり、豊満に膨らんだ胸を触って自分の体を吟味しながら、三奈が話し始める。

「菜津葉ちゃん……結論からいうとね、この私は、ホンモノの私なのよ……」
「へっ?」
あの気弱で内気な三奈は、「ホンモノの三奈」ではない、と本人が言い始めてあっけにとられる菜津葉。
「あぁ、体は偽物だけど。ずっとずっと菜津葉ちゃんを欲しかった……私のものにしたかった……その思いはホンモノ。性格と体格が邪魔して、今まで言えなかっただけ。でも、菜津葉ちゃんの腕をギュッと抱きしめてるときの喜びと快感ったら、なかったわ……」

つまり、無邪気な顔をして菜津葉にくっついてきていたのは、菜津葉を自分の思い通りにするという欲望の現れだと。菜津葉はめまいがした。
「わ、分かった。で、でもその体で学校行ったりは、しないよね……?」
「しないわよぉ……あ、あとね。夢の話には続きがあって……」

ニタァと笑う三奈に寒気を覚える菜津葉。

「……聞きたくないけど続けて」
「あの夢から覚めた時、もうこの体になっていたのよ。でも、いつの間にか手の中に薬があったから飲んだの。これを飲んだら、もっと気持ちいいことになるんじゃないかしら、って」

――普通逆だ。もとに戻りたがるでしょ。

「そしたら、体はチンチクリン、性格も消極的に戻って、欲望も抑えられて……つまらなかったの……」
「じゃあその薬が無いと元に戻れないってこと!?」
「そうよ、だけど……浄化されたおかげかしら、もう手の中に、ほら」

三奈が手のひらを開いてみせると、赤い粉がカプセルに入っていた。

「自由に作れるようになったのよ……元に戻るのはつまらないけど、この姿がバレちゃうのも不便だし……結果的に良かったかしら」
「ほぉ……じゃあさっさと飲みなさいっ!!」

菜津葉はとんでもないスピードでカプセルを奪い取り、三奈の口に突っ込んで息を封じた。三奈は思わずゴクリとカプセルを飲み込んだ。

「あらあら、つまらないの……」
三奈の体がシュルシュルと縮み始める。
「でも、いつ戻るか私にも……分からない、から……」
「えっ」

再度、もとに戻った三奈が、控えめな笑顔をこぼす。
「その時が、楽しみ……」
「あぁ……うん」

菜津葉の浄化戦争は、始まったばかりだった。

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投稿者: tefnen

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