子供というものは、得てして好奇心が旺盛なものである。自分の家のリビングに、肌色の大きな袋があったら、入りたくなるものなのだ。
「(えへへ、秘密基地つくろー!)」
少年が今四つん這いになって入ろうとしている秘密基地、と言うよりは大人一人分くらいしか無いその袋は、大人が見れば背中に大きな口が開いている風船式のダッチワイフだった。しかも、かなり質が低い。
「(中が、光ってる?)」
袋の中に入った少年は、昼間のリビングには不釣り合いなネオングリーンの光で、自分の体が照らされていることに気づいた。その光に少年が見とれていると、急に入り口が小さくなり始めた。
「え、だ、だめ!外に出して!!」
少年は袋の口をこじ開けようとしたが、みるみるうちに入り口は縮小し、ついに消えてなくなってしまった。
「出して出して出して!!!」
袋の中で暴れ、膜を引きちぎって出ようとするが、突然緑の光が強くなり、少年の目をくらませてしまった。
「うわっ!!」
目を閉じた少年には、自分の心臓の鼓動が強く聞こえる。初めは、他の音が全くしないのでそのように聞こえると思っていたが、心臓の拍動は確実に強くなり、また速くなっていた。
「(な、なに、怖いよ……ママ、助けてっ)」
小さい子供にはよくあることだが、少年が家にいすらしない母親に助けを求めた瞬間。
《ドクンッ!!》
「うぐっっ!!」
全身に、大きな衝撃が走る。そして、体が段々と熱くなっていく。と同時に、袋が段々膨らみ、元の形、つまり等身大の女性に似た風船人形の形を取り戻していく。外から人形の様子を見られない少年には分からないことだが。
「ううっ!ボクの体が、動か……されてるっ!」
袋に入ったときのまま、四つん這いだった少年の体が、袋に合わせるように格好を変えられていく。少年を大きくしたら、ダッチワイフと同じ位置になるように。
「ボク、どうなっちゃうの……!?」
目だけを動かせる状態の少年だったが、腕の皮膚が張るような感覚に視線を動かす。
「えっ……ぼ、ボクの腕、膨らんでる……!?」
なんとその腕は、現在進行形でムクムクと大きく、長くなっているではないか。幼児の域を少しだけ抜け、少しずつ筋肉質になっているがまだまだ丸っこい少年の腕が、引き伸ばされるように成長していた。脚の方もしゅるしゅると伸び、同時に脂肪がついて、ムチッとした太ももが形成されていく。
「こ、このままじゃ破裂しちゃうよぉっ!!」
皮膚の成長が後回しなのか張ったままのせいで与えられる圧迫感に、体の成長を膨張としか捉えられない少年の混乱した精神は、次に起こった変化でさらに混乱を極めていく。少年の胸が、ムクムクと膨らみ始めたのだ。彼の母親の小さめなバストサイズを、ものの数秒で越えてしまう少年自身の乳房。製作者の性癖のせいかスイカサイズに大きいダッチワイフの胸に引き寄せられるように、ムギュギュギュと膨らみ続ける。だがその頃には体が十分に大きくなり、余裕があったダッチワイフと同じくらいの身長になった少年の視線は、ダッチワイフの頭部にすっぽりと隠されてしまった。
「んむむ~っ!!」
顎の動きすら抑えられ、うめき声しか挙げられない少年。その声音も、幼い子供ではなく、大人のアルトボイスに変貌を遂げていく。その間にも、男性として生活していた彼の、女性としての魅力が過剰なまでに引き出されていく。ムチムチとした足に対してあまり大きくなったヒップがボワンッ!と爆発するように大きくなり、風船人形をちぎらんばかりにその巨大さを主張する。異様なまでに大きいはずの人形の胸の部分すら、少年の大きく成長した乳房に更に引き伸ばされる。
足の部分などはピッチリどころかパンパンで、今にも破けそうである。
《ピリッ、ピリッ》
そして、それは実際に破け、ビニールの皮の中から、成長したばかりの透き通るような肌が見え始めた。
《ピリリッ、ビリーッ!》
破けるスピードが急激に早くなり、太ももの部分から上下に亀裂が広がっていく。プルッとしたヒップがあらわになり、キュッとしまった腰回りが見え、バァンっと抜け殻を破り去った乳房は、その衝撃でタプンタプンと揺れた。
「ぷは~っ、死んじゃうかと思ったぁ……」
体が自由に動かせるようになった元少年が、腕と頭に残った膜を剥がす。その顔は純粋無垢な子供ではなく、清楚な女性のものとなり、短く切っていた黒い髪は腰にも届くロングヘアに。指はすらっと美しく伸びていた。