知ってる パート1

私の目の前に、信じられない光景が広がっている。巨人に、いろいろな人が食べられてる。顔は見えないけど、とっても恐ろしい。……いや、実際、なぜか恐怖は感じていなかった。

私は知ってる。

このままだと、私以外の全員が食べられちゃう。でも、私は何もしようとしなかった。気づくと、轟音が後ろから近づいてきた。戦車みたいな、軍隊の車。その車は、巨人に大砲を向けて、撃った。


そこで、目が覚めた。私、梨乃(りの)は、地元の学校に通う女子中学生。
中学に入れば毎日が楽しいなんて思っていた日々はとっくのとうに過ぎた。今日はなにか起きないかな……

この一向に成長しないからだも、いつも通り。……そして、昼休み一人になるのも。

「はぁ……」

お母さんが作ってくれたお弁当を黙々と食べる。ごはん、ひじき、にんじん。周りではみんな楽しそうに話しているんだろうけど、私にとっては全部雑音にすぎない。食事を進めることだけが、昼休みにやることの全て。それよりも、いつもならお弁当を半分くらい食べれば満たされるおなかが、全く満たされないことが気になる。食べても食べても、満腹感が得られるどころか、空腹感が強くなっていく。

「おなか……すいた」

会話が終わったのか人が歩いてきた。女の子で、私よりも、とっても肉がついてる。胸や、尻や、脚。私にない何か。飢えを満たしてくれる何か。

《グゥゥーッ》

私のおなかが、まるでその子を求める野獣のように鳴いた。その音が大きかったのか、その子はこっちに意識を向けた。私は、無意識に立ち上がってシャツをたくしあげ、その手をさらけだされたお腹に引っ張りこんだ。すると、おへそが異常に広がって、手をグボッと飲み込んだ。

「えっ……」

その子は、驚きのあまり声も出ないみたい。でも、私にとっては、とても当然のことのように思えた。

《グチュチュ……》

私のおなかは、まるで生き物のように動き出し、腕をゴクンゴクンと飲み込んでいくと同時に前に突き出ていく。

「……っ!」

おなかの中で、手が動くと、これまで感じたことのない強い感覚、それも痛みというより快感が襲った。それは強烈過ぎて、最初は受け入れられなかった。

《グパッ……チュッ……》

腕がどんどん飲み込まれ、ついに肩に達してしまった。視界の下では、腕の形をした、いびつに膨れたおなかに、女の子がくっついている状態。その子はこっちを見て、懇願するように涙を流している。私に、とてつもない優越感が走る。今、この子の命は私にかかっているんだ。

「ふふ……あなたの体、頂戴❤」

おなかが、急激に膨らむ。いや、女の子が、飲み込まれていく。へその奥に、肩から、顔、もう片方の腕が飲み込まれ、腰から上が完全に入ってしまった。その時になってやっと逃げようとする意識が芽生えたらしく、おなかの中で暴れ、脚をジタバタさせる。おなかに伝わる振動、内臓が暴力的に殴られる感触が、さっきから続いている快感を増大させる。もっと、もっと食べたくなる。

《グチュルグチュル……》

体のバランスが崩れて、倒れてしまった。おへそに腰が引っかかって、入っていかない。力を入れると、おへそが信じられないほどに広がって、グニュグニュとうごめいて、脚をのみ込み始めた。飲み込まれるのにあがいている脚が、おへそを無理やり引っ張り広げたり、おなかに当たる。

「いやん……❤激しいんだから……」

膝まで入ると、おなかの中の動きが一層激しくなる。快感が激しすぎて、力が入れられなくなって、意識がもうろうとしてくる。

「はぁ……はぁ……❤あともうちょっと……!」

私の体より大きくなったおなかは、あの子の顔の形が出たり、暴れまわる手が皮にあたってバコッと飛び出たりしている。

でも、私は知ってる。

私は、何人でも飲み込める。いま出てる脚の下半分だって、ちょっと力を入れれば……

《ズルッ……プフ……》

脚も入ってしまい、おなかの中に巻き込まれていた空気が出てきた。

「うん……でも、本番はこれから……」
《グジュジュ……》

おなかが重くなって、人の形が出ていたのが、まんまるとなってきた。消化液が出てきたんだ。私はこれから、この子を吸収するんだ。

だんだん、おなかを蹴っていた力が弱くなっていく。それと一緒に、おなかから私の体に何かが染みこんでくる感じがし始める。その何かは、私の皮膚を下から押し広げるようにして、全身に広がっていく。

《ペキッ……ミチッ……グチュ……》

体のいたるところで、変な音がする。見てみると、その音のした所が、ムクッと膨らんだり、ニョキッと伸びている。何もなかった胸も、ギュッ、ギュギュッと盛り上がって、いつしか、縮んでいくおなかを追い越して大きくなっていき、メロンが入りそうなサイズまで膨れ上がっていく。

手足も、バラバラに大きくなっていくけど、私と、食べた子を足したほどの長さに成長していっているのがわかる。そして、おなかの方は、何もなかったかのようにすっきりするどころか、元々なかったくびれまでできてしまった。

「美味しかった……だけど……」

私は知ってる。まだまだ、私の体は求めている。

空腹感は全く消えてないし、むしろ強くなった気がする。まわりにいる人全員、おいしそうにみえてたまらないんだ。どうしてだろう、こんな感覚初めて。

「なあお前、床に座ってどうしたんだ?」

気づかないうちに、前に男子生徒が立っている。さっき倒れたままだった私が、通路に居座っていて邪魔なのだろう。

「ちょっとおなかがすいて、倒れちゃったの」
「……さっさと座ったらどうだ?それに、服も脱げてるし……」

でも、私にはそんなの関係ない。この男子も、私の食べ物。

「あ、このおっぱい、気になる?」

できたてほやほやのおっぱいを、持ち上げて見せつける。男子は、これにはかないっこない。

「そ、そうじゃなくて……」

そういう顔は、鼻の下が伸びている。狙い通りだ。そのまま、おっぱいの谷間に男子の顔を突っ込んだ。

「じゃ、あなたも私のおっぱいにしてあげるね❤」
「っ!!!!」

声にならない叫びを上げる男子の顔は、ズブリ、ズブリと谷間の奥底へ引きずられ始めた。それと同時に、胸の間がものすごく熱くなっていく。

「んっ……あっつい……」

今度は、私が言ったとおり、胸に直接養分が行ってるみたいで、おっぱいだけがムクムクと大きくなっていく。でも、大きくなるだけじゃなくて、なぜか自分で揺れ始めた。

「あんっ、きっと、あなたの、んあっ、え、エネルギーが胸に行ってるせいねっ」

おっぱいは、前にバイン!横にボワン!と揺れるというより暴れている。

「は、激しすぎっ……!」

男の子の体はというと、ぴくりとも動いてない。胸からの力で、揺さぶられてるだけだ。スイカ二個分のおっぱいになっても、まだ脚は吸収されてなかった。おっぱいは、バルンッ!ボワン!と飛び跳ね、私も体勢を保つのが大変なくらい活発に動いた。

「まだ入ってくるの?やだぁ、これ以上大きくしないでぇ❤」

飲み込んでるのは私だし、バランスボールくらいになったおっぱいが、ここで止まるのも不満があった。私は、今この男の子を食べてることを楽しみたかったのだった。その間にも、おっぱいの狭間にどんどん埋もれていく男の子の脚。ついに、かかとがスポッと谷間の中に消え、男の子は完全に私の一部になった。その瞬間、胸の動きも止まった。

「ごちそうさま❤あとは……」

「うわ、なんだこのおっぱい」
「こんな人、うちのクラスにいたっけ!?」

私の美貌に引きつけられてか、クラスのみんなが集まってくる。そして、私が食べやすい距離まで、近寄ってきた。

感染エボリューション 最終話

「こ、これが……」

唖然として立ち尽くす美優。声はしたものの、人の体の色をしているだけで、床にぶにゅっと潰れている巨大な肌色の塊には、それが祐希の妹であるどころか、人間であると判別できるものは何一つ無い。

「え、お客さん……?」

美優の声に気づいたのか、肉塊から声がしてきた。

「あぁ、そうだ……お前をアイツのウィルスから助けてやれるかもしれない、だから連れてきたんだが……」
「出てって!苦しいのは、私だけでいいんだから!」
「佑果……」
「それに、おばあちゃんは何も悪くない!だって……んっ!!」

肌色の塊から、ドクンッという鼓動が聞こえたかと思うと、ググッと一回り大きくなった。

「佑果、落ち着いてくれ!そうしないとまた大きく……」
「ご、ごめん……」

美優には、佑果をこのままにしておけば、いつかは部屋いっぱいになって、装甲車の中で大きくなった時のように、潰されてしまうのが目に見えて分かった。それでなくても、人の形を保てず、動けない佑果を、何とか助けたいという気持ちが芽生えた。その美優の頭の中に、声が響いた。

(この個体は治療可能。許可を)
「うん……佑果ちゃん、私はあなたを治してあげられる」
「本当か!!」

祐希は美優の肩をガシっとつかんだ。

「痛っ!ちょ、力強すぎ……!」
「す、すまない。それで、本当なのか?」
「うん。佑果ちゃん、あなたはなぜか体を治したくないみたいだけど……治させて」

佑果の方から声は聞こえてこない。美優は佑果が渋々同意したと見て、頭の中に答えた。

「いいよ。治療して」
(承知。まず接触を。リプログラミングが必要)
「わかった」

美優は、覚悟を決めて一歩一歩佑果に近づいていく。

「佑果ちゃん、行くよ」

そして、脂肪の山に手を触れた。すると、手が佑果の肌に融合した。

「んんっ……なにか、出て行く……」
(リプログラミング、開始)

佑果の体がビクンビクンと跳ね、表面がグニグニと動き始めた。

「おお……」

祐希は、美優の後ろで感嘆の声を上げる。しかし、その時だった。

(完了……。かかったな、マスターさん)
「えっ?」
ドクンッ!!

佑果の体が大きく脈動するのと同時に、美優の体にもとてつもなく大きな衝撃が走った。

「きゃああっ!!」
「美優!?」

その途端、佑果とつながっていた腕から、何かが大量に美優の中に流れこみ、美優の体を内側から押し広げ始めた。

(ふふふ、これこそ我々が求めていた進化、エボリューション。他の病原体の知識、能力も取り込んだ我々は、宿主の指図は完全に無視できる)
「や、やめて!!」

全身の骨がバキバキと言いながら伸長し、服が上へ下へと引っ張られ、ヘソが見えたかと思うと、ウエストが上下に伸びてくびれ、中心にはスッと線が入る。大きくなる骨盤はズボンを横に引きちぎり、出てきた尻は暴力的に膨らみ始めた。1秒もたたないうちに、美優は平均的な成人女性と変わらない体格になってしまったが、佑果からの吸収は速度を上げる一方だ。

(佑果、だったか。この子の治療はしてやるさ。というより、この子の中のウィルスを取り込み、お前の体を元に戻せないほど変形させ、最終的には精神を乗っ取るのだ)
「……!!」

ここまでまな板に等しかった胸にプクッと丘ができ、急激に膨れ上がって、乳房が形成される。それは一瞬のうちにリンゴサイズからメロンサイズになり、ムクリ、ムクリと2倍、3倍と体積を増やす。そしてあっと言う間に美優の体型のバランスを崩し、アドバルーンほどになってもまだ膨張を止めなかった。逆に佑果は、人の形に押し込められるように縮んでいく。

「だ、だめ……」

美優は暴走したウィルスの前に、為す術もなく膨らんでいくしかない。その時、部屋の扉に二人の女性が現れた。五本木と、捕らえられた伍樹だった。

「そこまでよ!あなたのボーイフレンドを傷つけたくなければ観念して実験台に……佑果ちゃん!?」
「美優ちゃん!?」

五本木は完全に元に戻ったのか、華奢な女子小学生の姿になっている佑果に、伍樹は吸収が終わってもなお大きくなる美優にそれぞれ駆け寄った。

「ねえ、佑果ちゃんなの!?……生きてたなんて……」
「おばあ……ちゃん……うん、ごめんね、今まであえなくて」

抱きしめ合う佑果と五本木だったが、祐希が無理やり引き離した。

「佑果から離れろ!このイカレ科学者!佑果はお前から守るために今まで俺が隠してたんだよ!」
「お兄ちゃん!違うの!おばあちゃんは私を治そうとして……!」
「そう、私は佑果ちゃんを……この子が、治したのね、今すぐ抗体をあげるから」
「この大嘘つきが!何が、佑果を治すだ、あんな実験に付きあわせて……」

祐希は二人の話に納得がいかず、五本木に殴りかかろうとする、が。

「た、助けて……!美優ちゃんが、美優ちゃんが!」

伍樹が三人に発した叫び声で、祐希も美優の危機に気づいた。美優は白目をむき、その胸は今もギュギュッ、ムギュッ!と膨らみ続けている。その大きさは部屋の半分を埋め尽くすほどで、あと数十秒すれば全て美優の乳房で埋まってしまうだろう。

「抗体じゃ……どうしようもないわね。このウィルス、いえ……今さら隠すこともないわ、ナノマシンは、究極の成長を遂げてしまったみたい。美優の精神も、もはや消えたも同然ね……」
「そ、そんな……美優ちゃん!」
「美優!しっかりしろっ!!」
「美優お姉ちゃん!」
「ダメよ、人間の精神が打ち勝てるものじゃない……」

だが、美優の目がぴくっと動いた。それを見て、伍樹が渾身の力で叫んだ。

「美優ちゃん!!!君ならできるはずだ!!!ウィルスに勝つんだ!!」

その叫びに応えるように、美優は意識を取り戻した。

「い、伍樹くん……うん、私!ウィルスになんか!負けないっ!!」

美優の叫びと同時に、巨大な体が光り始めた。その光は、次第に強くなり、直視するのが難しいほどになっていく。

「嘘、こんなこと……精神によるリプログラミング(再構成)なんて……!」

強烈な光に全員が目を閉じてしまう。だが、数秒すると光は弱くなっていき、そこでやっと、美優の姿を確認できた。そして、それは元に戻った美優。目を閉じて、ペタンと床に座り込んでいる。

「み……美優ちゃん!!」

伍樹が抱きつくと、美優は目を開け、伍樹に微笑んだ。

「勝ったよ、私……」
「うん……美優ちゃんは、すごいよ」
「伍樹くん……好き……」

何気ない衝動で、美優は伍樹とくちびるを合わせた。伍樹はすこし驚きながらも、美優を抱きしめた。

「外見は、レズだよなぁ……あいたっ!」

祐希に佑果のげんこつがお見舞いされる。

「お兄ちゃんは静かに!」
「いったたた……はいはい……」

そして、兄妹同士で微笑みあった。実験の失敗以来、一度も互いの顔を見ることが出来なかった兄妹は、幸せだった。

結局のところ、佑果には持病があり、脂肪があまり付かず体温の保持に支障をきたすほどだった。若返り薬の開発に成功していた五本木は脂肪を付けるウィルスを作り、佑果に使うことで、持病の影響を和らげようとしたのだ。それが失敗した上、研究所員の手違いで祐希が開発中のウィルスの実験台にされてしまった。失敗を認めようとしない頑固な性格のため、全て意図的に行ったと演じたところ、祐希も佑果も姿をくらまし、傷心のうちに人間の尊厳を顧みず人体実験を行うようになってしまった、というのが五本木の弁明だった。

「本当よ。その証拠に、ほら」

五本木は、確かにガリガリに痩せている佑果に、躊躇もせず薬を飲み込ませた。今回は正しく効果が出たようで、手足や顔にふっくらと脂肪が付き、健康的な体型になったが、美優は、自分が失敗することなど有り得ないというわけのわからない自信を持っているこの女性に、恐怖を感じざるを得なかった。

そして、一ヶ月後。
美優が再構成したナノマシンを下水に流した結果が、顕著になっていた。宿主の意思に完全に従う体型変化ナノマシンを手にした人々は、自分の理想の体を手に入れ、性別や年齢を越えた変身も、日常茶飯事だった。

「おっはよー」
「おはよ、美優」

結子と美優は、昔の体型のまま暮らしている。

「伍樹くんも」
「おはよう、美優ちゃん」
「お、美優じゃん、おはよう」

伍樹は元の男の姿に戻った、が、親友の望は、女子の姿である「のぞみ」が気に入ったようで、伍樹と友達としての距離は保ちつつ、付き合いを続けていた。

「おーい、着席しろー……着席して、お願い!」

教諭の龍崎はというと、幼女――つまり小学生くらいの女子のことだが――としての生活を楽しんでいるようだった。しかしクラスからの冷たい視線は、一部が妙な興奮の視線に変わっただけだった。

「美優、今日はロングヘアにしてるんだね」
「えへへ、あとでおっぱいも大きくしちゃおっかなー」
「本当、美優ったら見えっ張りなんだから」
「ふふん、でも、中の子が増えたい増えたいってうるさいの。だから……」

美優の胸が膨らみ、セーラー服がギチッと悲鳴を上げた。

「ちょっとだけ、また成長しちゃおうかな!」

『洞窟の物の怪』(若返り急成長画像掲示板より)

ここは、ある廃坑の入り口。そこに、二人の大柄なゴロツキが見張っていた。

「こう何もねえとつまんねぇなあ…」
「まあそう言うなって…」

二人はぼやいていた。だが、急に声がかかった。

「おじちゃんたち、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
「あぁ?」

そこには、革の服を着た小さな少女が涙目な顔をゴロツキに向けて立っていた。栗色のおかっぱ頭で、弱々しく見える少女だった。

「どうした、嬢ちゃん、何か用か?」
「私、道に、迷っちゃって…」

二人は互いに向き合い、相談する。

「おい、どうする?」
「ボスへの貢物にしようぜ、まだ体は小さいが一級品だ、見てみろよ。ん?」
「なんだ?あれ、アイツどこに行きやがった!?」

少女の姿は消えていた。

「逃げられたかな…?」

その次の瞬間、一人の首が何かにガシッと掴まれる。

「逃げたと思った?違うよ。それに、逃げられないのはアンタだよ!」

先ほどの少女が、首に後ろから腕を巻き付け、動きを封じていた。

「はぁっ!?おい、お前一人でなにができるってんだ?」
「確かにボク一人じゃ無理だけど…今だよ!エリーナ!」

すると、急に電撃がゴロツキに向かって放れた。当たる寸前に少女はもう一人に向かって飛びのいた。

「うぎゃああああっ!」
「おい、お前!ぐはっ!」

一人が倒れると、空中から繰り出された少女の拳が急所に命中して、他の一人もその場に倒れた。

「ラッキーだったね!ボクたちが人殺しが嫌いな賞金狩りで!」
「こら、そんなにはしゃがないの!マリー!」

先ほど電撃が放たれた方から、青いローブを着た女性が近寄ってきた。フードを外した頭からはポニーテールに纏めた長い金髪が伸び、その上からでも分かる大きな胸を携えている、大柄な女性。

「はーい、エリーナ」
「いい?この洞窟には人さらいが一杯いて、これまでの敵とは比較にならないほど強いモンスターも飼っているかもしれないんだから」
「山賊やモンスターなんて、ボク達にかかればイチコロだよ!」
「その油断がいけないの。こいつら、なにか裏があるわ。村や街の人から聞いた犯行が、計画的すぎるもの…」
「そーお?とりあえず、中に入ろうよ!ここで喋ってたら日が暮れちゃうよ」
「そうね」

そして、エリーナとマリーは、洞窟の中に入っていった。

——————–

エリーナの予想に反して、掃討は順調に進んでいった。そして、ついに最後の部屋に辿り着いた。

「あなたが、ここのボスね」

そこにあった豪華に装飾された大きな椅子に座っていたのは、これまでの野蛮で凶暴な男、ではなかった。エリーナと同じように、黒いローブを着た、一人の男性。

「その通り、よくぞ、ここまで参られた。エリーナ殿、そして、マリー。お噂はかねがねお聞きしておりましたぞ」
「…?なぜ、ボクたちのことを?エリーナ、心当たりある?」
「…あるわ…この国で最も恐れられているネクロマンサー、リーフロット…」
「またまた正解。まあ、我輩の趣味は少し変わりましてな。今かお見せする生物を創りだしたのもそのため。いでよ、マナ・サッカー!」

リーフロットが叫ぶと、部屋の中に巨大な肉塊のようなものが姿を現した。あらぬ所にギョロッとした目があり、体から伸びる管のような口があらゆる所に付いている。

「マナ・サッカー?」
「安直な名前でしょう?魔力を吸い出すから、マナ(魔法)・サッカー(吸引するもの)。さあ、君達も我が下僕の餌食になるのだ…」

怪物がのそのそと動き始めた。

「エリーナ、どうする?」
「逃げるわよ!テレポート!」

そして、二人の姿はふっと消えた。だが、エリーナだけは怪物の目の前にテレポートしてしまった。

「おっと、残念、残念。この空間では、全てが我輩の思い通り。テレポートの目標地点もずらしてやったぞ」
「な、なんてこと…んっ!」

肉塊から触手が伸び、エリーナの体に触れ、巻き付いていく。触手にローブが抑えられたせいで、大きな胸が強調される。

「こんなやつ、私の魔法で!ファイアバースト…あ、あれ…魔力が…」
「はは、無駄、無駄」

エリーナが呪文を唱えても、何も起きる気配がない。その魔力は、触手を通じて魔物に吸われていたのだ。ついに、触手に体が持ち上げられ、肉塊の口がエリーナの口に合わさった。

「むむぅ!」
「さあ、この女の魔法を吸い尽くせ!」
「(いやぁっ!)」

魔物の口に、エリーナから何かが出て行っていた。

「(やめて、私から魔法を奪わないで…)」

それにともなって、なんとローブを押し上げていた胸が縮み始めた。

「(いや、私の体小さくなってる!)」

長く伸びた髪も短くなり、身長も縮んで、ローブの中に体が埋もれ始めた。

「(子供に戻ってる!?)」

5年前の姿、10年前の姿、15年前、とどんどん遡っていく。

「ふむ…ここ辺りで止めにしますか」

リーフロットの命令にしたがって、肉塊は口を離した。だが、その時にはもうエリーナの体は3歳児程度に若返り、触手が離れても、ローブの中でじたばたともがいていた。

「私の服、大きくて動けない!」
「ふふ…おや、エリーナさんのお仲間が、助太刀してくれるそうだぞ?」
「マリーが?ダメ!」

マリーは洞窟の入り口に飛ばされ、エリーナを助けに最深部まで走ってきたのだった。

「エリーナ、今助けるからね!」

そして、魔物の方にに刃物を向け、飛びかかる…が、ヒット直前に触手にガシッと体を掴まれてしまった。

「うぐっ…離せ!離せったら!」
「そうだな、我が下僕に魔力が過度にたまっているゆえ、君にそれを分けてやる。その後なら」

そう言う間にも、魔物の口がマリーの口に合わさった。

「むうっ!むうっ!」
「では、注入開始…」
「(ボクの中に、何か入ってきてる!!?)」

そして、エリーナの時とは逆に、マリーの体が膨らみ始めた。

「(ボクの体、あついよぉ…)」

革の服の中で、平だった胸が盛り上がり始めた。すぐに乳房となった胸は服に圧迫され、形を歪ませた。

「(服に潰されちゃうぅ…!)」

手足も何かを詰め込まれるかのように伸び、服の中からニョキニョキと出てくる。

「(お…お尻が…ぁ!)」

ズボンの中でもギュウギュウと脂肪が詰まり、膨張する尻。結び目から、肉がはみ出る。

「(やめてぇぇっ!)」

栗色の髪がざわざわと伸びて、腰に届いた。

「(ああああっ!)」

革の服の縫い目がバスッと破れ、メロンサイズの乳房がブルンッと飛び出た。

「ふむ、中々のべっぴんだな…あの無鉄砲でやんちゃな子が、こんな成長の仕方をするとはね。そろそろ、やめにするか」

肉塊の口が離れると共に、魔物は姿を消した。そこには、体の大きさが逆転したエリーナとマリーが残された。二人とも服のサイズが全くあっておらず、戦うことも出来ずに、恥ずかしさに顔を真赤にしながら、涙目になっている。マリーの方も今回は流石に演技ではないようだ。

「私達を、どうしようっていうの?奴隷にでもするの?」
「ボク、奴隷はやだよぅ!」
「いや、これまでさらった女達と同様、記憶を改ざんして村に送り返すだけゆえ、安心しろ。二人は母娘として生きるのだ。もちろん、マリーが母親、エリーナが娘だ」
「そんな、やめて!」
「無駄口を叩くな。村で平和な生活をおくるんだな」

リーフロットの指から魔法の光が飛び出し、二人に当たった。

「きゃああああっ!」
「うわあああっ!」

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その次の日、村に二人の女が現れた。一人はつぎはぎの革の服を着た金髪の少女、もう一人はローブを着た栗色の髪の女性だった。

「よくいらっしゃった。ここあたりでは、人さらいが出るから、ここまで無事で来ることができたアンタ達はラッキーだったな」

村の村長が出迎えた。すると、ローブの女性のほうが言った。

「そうですね…それより、私達、住む家がなくて…ここに少しの間泊めて頂けませんか?踊り子でもなんでもしますので…」
「すまんな、踊り子は一杯いるんだ。なぜか女子供がうちの村にはよく来るんでな。どうやら、アンタは良い物持ってるみたいだが…」

村長はローブを大きく押し上げる二つの膨らみを見て言った。

「とりあえず一晩泊まって、隣の村まで行ってくれ。護衛を出すから。あ、そうだ。名前を聞こうか」
「私がマリー、この子がエリーナです…ほら、エリーナ、ご挨拶を」

金髪の少女は、ニコニコしながらいった。

「村長さん、よろしくお願いします!」

こうして、2人の賞金稼ぎが存在を消したのだった。