魔のアクセサリ

時は夜も更け、皆が寝静まった頃。場所はとある日本家屋の一部屋。普通の大きさ、普通の畳敷きのその和室のふすまには、普通では考えられないほどの札が貼られていた。その中に一人、その家の主の孫である少年がたたずんでいた。その視線の先には、台に載せられた首輪のようなもの……チョーカーが置かれていた。

「これなんだろ……こんな変なところに置かれてるんだから、すごいものだよね……?」

子供ならではの好奇心で、チョーカーを手に取る。小学生になったばかりの少年には少し大きめの、革製のチョーカーを、少年はそのまま首に巻いた。

「えっと、この金具をとめるんだよね」

テレビで見たことのあるアクセサリの身につけ方を真似て、少年がチョーカーを締めたその時だった。

「な、なにこれ!?」

チョーカーが赤い光を発し始め、少年の頭の中に何かが入り込んでくる感覚がした。その流れは全身に及び、少年の体全体に赤い光が行き渡った。

「えっ、えっ」
「(あらまぁ、男の子?)」
「ひぃっ!?」

いきなり、聞いたことがない女性の声が聞こえ、少年は腰を抜かして尻もちをついた。

「(そんなに驚かれるのも心外だわ。私の力を求めてチョーカーを付けたんじゃないのね)」
「ち、力……?」

声の主を見つけようと、周りを見渡す。だが、お札まみれの襖があるだけで、部屋には少年以外誰もいなかった。

「(一体誰を探してるの?私はあなたの中にいるのよ)」
「ぼくの中!?」

今度はシャツを脱ぎ、おなかの様子を確認する少年。女性のため息が聞こえた。

「(はぁ……まぁいいわ。こんなにか弱い子なら、体を乗っ取ることもできるはずだし。えいっ!)」

少年の体が、彼の意思に反して勝手に動き始めた。

「や、やだっ」
「(やっぱりね。何十年も封印されてたから退屈だし、ちょっとあなたの体で遊ばせてよ)」
「おばさんはだれなの!?」
「(おばさんですって。確かに数百年はこの世に存在しているけど、この時代で女性に向かってその呼び方はいけないことなのよね。罰として、私がいいって言うまで喋っちゃだめ)」
「む、むぅっ!」

口が閉じて開かなくなる。その代わり、少年に体のコントロールが戻った。足が動かない以外は。

「(さぁ、こんな窮屈な体、さっさと作り変えちゃいましょ。まずは腕からにしようかしら)」

少年の左腕が、ベキベキと長くなる。小さな手のひらが長く、細く成長する。男性であるはずの彼の腕は、女性の大人のものになっていた。

「(こんなんでいいわね。じゃあ右腕も)」

右腕も左腕に続くように成長した。次に背骨や肋骨が成長し、上半身が大きくなる。少年の小さな下半身に、大人の上半身が付き、その上にはまた子供の顔がついているといういびつな状態になっていた。

「(ちょっと体を支えにくいかもしれないけど、一つ一ついじくるから仕方ないわよね)」

骨盤がメキメキと横に広がり、相対的にウエストが絞られていく。左足がパジャマからにょきにょきと伸びて、2倍ほどの長さになる。

「(あ、服を着たまま大きくしちゃった……脱ぐのも難しいだろうから……)」

太ももにムチムチと脂肪がつき、パジャマがビリビリと破け始める。裾が思い切り食い込み、少年は痛みを感じた。

「(もうちょっとだから……えいっ!)」

勢いを付けてバンッと太くなる左足。パジャマがひとたまりもなく破れると、太い木の枝のような太ももがお目見えした。

「(じゃあ右足も……)」

右足は、長くなると同時に急激に太くなっていった。パジャマは、腰のゴム部分を残して破れてしまった。

「(お尻も大きくしましょうね)」

少年の尻が、左、右、左、右と一回りずつ大きくなる。梁のある女性のヒップが、パジャマのゴムを押し広げながら、着実に成長していった。

「(このゴムが切れるまで大きくしてみましょうか。えいっ、えいっ!)」

左の尻がバインっと膨らみ、それに続いて右がムギュッと張り出す。それが続いて、過剰なまでのサイズになったところで、ようやくゴムがビチッと切れた。

「(私の力ってやっぱりすごいわね……こんなことに使ったことなかったけど)」

少年の下半身は、男にのしかかれば潰せてしまえそうなほどムッチリと成熟し、先程とは逆に、貧相な上半身とのバランスが取れなくなっていた。
声を出すことのできない少年は、柔らかくも垂れず、張りを持った太ももとヒップに見とれていた。

「(じゃあお胸も……)」

少年の左胸がムギュッ!っと膨らみ、大きくなった上半身のせいですでにサイズが合わないパジャマの胸の部分が大きく押し上げられた。その先端には、突起のような形状が浮き上がっている。

「(さすがに息が苦しいのはやめましょうか、胸を押さえられたら息ができないでしょ。ほら、服を脱いで)」

脱いでと言った割には、また少年の体の主導権を奪い、無理やり脱がせる女性。そこには、左胸は巨乳、右胸はまな板という釣り合いの取れない少年の上半身があった。

「(じゃあ、続きをしましょ)」

今度は、右胸がバインッ!っと膨らみ、さらにゆっくり膨らんで左胸にサイズが合うようにした。

「(そろそろ顔も整えて……と)」

少年の髪が、腰までバサッと伸び、赤色に染まった。顔も無邪気な子供のものから、魅惑的な女性のものに変わり、瞳は真紅に色を変える。

「(もう少し、胸は小さくしておきましょうか)」

左胸がプシュッと縮む。

「(いや、やっぱり大きく……)」

右胸がブルンと膨らむ。

「(うーん、どうしよう……)」

少年の胸が暴れ始め、膨らんだり縮んだりを繰り返す。

「(これは服が合わないし、こんなんじゃ格好がつかないし……)」

まな板に戻ったかと思えば、頭が入ってしまいそうなほどの爆乳に育ち、人並な乳房まで縮んだ次の瞬間には床に付きそうなほどの巨大な肌色の塊に成長する。

1分ほどそれが続いて、やっと少年の胸のサイズは落ち着いた。

「(よし、これを覚えて……と。元に戻っていいわよ)」
「えっ」

やっと声を出せた少年の体は、元のちいさな男児に戻った。それきり、女性の言葉は聞こえなくなった。

「な、なんだったんだろ……」

いつの間にか、パジャマも元に戻っている。少年は、両親のいる部屋に戻って、自分の布団に潜って、目を閉じた。

だがすぐに、勝手に目が開いた。勝手に手足が動き、布団から出て、父親が寝ている布団に潜り込む。

「ん……どうした?」

父親が気づいて目を覚ました。

「怖い夢みちゃって……」

勝手に、声が出る。

「よし、よし……」

父親に撫でられる少年の頭から、赤い髪が伸びた。

「パパ……」

父親に抱きつく少年の体が、メキメキと大きくなる。その成長する胸が、ビリビリと服を破りつつ、父親の体に押し付けられていく。

「な、なにが起こって……!?」
「パパも、チョーカーの力、楽しんでね」

雨の日

「雨の日のお前ってさぁ……」
「ん?なんだよ」

夏に入りかけの高校の教室から、外を眺める二人の男子高校生。今日の天気は昼から雨だ。

「おっぱいでかいよな……」
「やめろよ」

普通の男子高校生であれば、意味不明な会話。だが、この二人……翔(しょう)と大輝(だいき)……にとっては、普通の会話だった。というのも、翔は雨が降り始めると体が女性のものに変化するのだ。「メタモルフォーゼ症候群」というものの一種らしく、治す方法はなかった。

「今日も女子用の制服持ってきてるんだろ、雨が降ったら着替えるやつ」
「うっせーな、天気が昼間に変わるのめんどいな……」
「居眠りしてるときに雨が降ったら面白そうだな」
「ぜってー寝るもんかよ!」

と言っていた翔は、外が一層暗くなり、遠くでは雨が降っているようなときになって、居眠りしていた。

「……まいっか。みんなこいつの女の姿は知ってるわけだし」

大輝は、窓に水滴が付き始めたのを見て、翔の体を見始めた。授業中ではあるが、翔の席は大輝の前だ。

そのうち、コキコキと骨が軋む音がし始めると、翔の体の表面がだんだんと波打つように変化を始めた。シャツの上から分かるくらいに、筋肉が痙攣している。

「(そういえば、こいつが女になってる最中の様子は見たことなかったな)」

いくら体がメキメキ音を立てても起きない翔を大輝が眺めていると、急に翔の両腕がギュイッと細くなり、シャツがぶかぶかになってしまった。と同時に、シャツの背中の部分が引っ張られる。

「ん……うわぁっ!」

翔が飛び起き、周りの生徒も翔の方に振り向いた。その胸がムクムクと膨らんでいた。

「き、き、着替え……ないと!」

翔は、パニックに陥ったのか、その場でシャツを脱ぎ始めた。

「お、おい、翔!」
「な、なんだよ、うぐぁっ!」

ボタンを外し終わるころに大輝が翔の露出行為を止めようとする。翔が大輝の方を振り返った瞬間、腹筋が消え、ウエストがギュッと絞られた。逆に人並みまで成長していたバストがバインっと大きくなり、それを見せつけられた大輝は股間が苦しくなるのを感じた。

「こ、こんなところで服を脱がない、ほうが……」
「あ、ああ、お、俺と……したことが……」

子宮ができていくのか、下腹部が少しだけ膨らむ。肌は木目細やかになり、へそは縦にスッと伸びた形になる。翔は体の中が女性に変えられていく刺激に必死に堪えている。いつの間にか伸びていた髪は肩にかかるほどになる。

「う、うぅ……っ」

ズボンの尻の部分がギチギチと音を立てる。逆に、他の部分はぶかぶかになり、ズボンがずり落ちてヒップのラインが見える。

「お、俺……わ、たし……?」

精神が女性版の翔に変わっていくとともに、顔の作りも柔らかいものになる。

「恥ずかしい、やだぁっ!!」

変身が終わったのか、かばんを持って飛び出していく翔を、呆けた顔で見届ける大輝だった。

その日の帰り、二人は一つの傘の下、一緒に歩いていた。

「ったく、お前制服は忘れなかったのに、傘忘れるとか」
「仕方ないでしょ、この制服用意してたら時間なくなっちゃったんだもん」

大輝はため息をつく。

「お前、これは結構大きい貸しだぞ」
「え?そう?それじゃあ」

翔は、巨大に育った胸を大輝の腕と体に押し付けた。大輝にとってはいつものことになりかけていたが、それでも顔を赤らめるほどには、柔らかい感触に興奮した。

「私のこの体、好きにしていいよ」
「ば、馬鹿野郎……!」