ミルクショック(前編)

「ごちそうさま!」

幼稚園服を着て、4歳ほどの少女、美佐(みさ)は朝食を食べ終わった。

「こら、牛乳もちゃんと飲みなさい」
机の上の小さな陶器の皿。その上には、トースターのクズと、卵の黄身の欠片が残っているくらいだった。だが、その隣に置かれた小さなガラスのコップには、牛乳が注がれたまま残っていた。

「あ、忘れてた」
「もう、まだバスまで時間はあるんだから、横着しないの」
母親は、空になった皿を取り上げて、自分のものと重ねながら、クスッと笑った。娘が牛乳のコップを持ち上げるのを見て、キッチンへと皿を運んでいった。

「ん、ん……」
母親に言われたこととは裏腹に、一気に牛乳を飲み干す美佐。
「今度こそごちそうさま……」

ドクンッ!!

「うぅっ!!」
急に心臓が大きく鼓動し始め、美佐の体に衝撃が走った。そのショックで、コップを落としてしまう。構造が強いのか、床に落ちたコップは割れなかったが、美佐の体には周期的に衝撃が走った。そして、下腹部が焼けるように熱くなっていった。

美佐の体質は、変わろうとしていたのだ。それまで、何の障害でもなかった牛乳に対して、過剰な反応を起こしてしまう、そんな体質に。

そして、中に流し込まれたミルクに反応して、腸が脳へと強烈な信号を送り始める。
「あたま、いたいよ……!」
それは、牛乳を体の中で薄めるために、美佐の体を大きくするための信号。それを受け取った脳は、大量の成長ホルモンを分泌し始めた。

「う、ううっ!!」
暴力的とも言えるペースで送られるホルモンに、全身の細胞が分裂を始める。そして、心臓から送られる血液の流れと同期して、ググッ、ググッと美佐の体は成長を始めた。

「おてて、おっきくなってる!」
美佐の視界でまず目立つのは腕の成長だった。だが、その奥で、脚もぐぐ、ぐぐと伸び、4歳の体だった美佐は、小学生の域に達し、駆け上っていく。服も当然サイズが合わなくなり、長袖でスカートも長い丈だったはずなのに、いまやヒジやヒザがさらけ出されている。

まだまだ牛乳は吸収され終わらず、大量のホルモンは美佐の全身を駆け巡っている。そして、美佐の体が中学生の大きさまで近づいた時、二次性徴が始まった。

「おむね、チクチクする……!」
まず、乳頭が大きくなり始める。緩めの園児服もパンパンになっていたが、美佐は新しい痛みに胸を押さえた。さらに、乳腺とそれを包む脂肪が成長を始め、中学生の体相応のものに変わる。

「私、どうなっちゃうの……?」
脚にも、ふっくらとした皮下脂肪がついて、尻も膨らんでいく。高校生の体になるころには、むっちりとした太ももと、控えめのヒップができあがる。

「大人に、なってる……」
ググッ、ググッと成長を続ける胸は、Dカップくらいになって、園児服の下からはみ出す形になっていた。牛乳の吸収が終わったのか、体の成長は落ち着き、155cmくらいの身長になっていた。だが……

「おっぱい、まだ膨らむの……!?」
ムギュギュギュ……と大きくなるスピードを緩めない乳房。Fカップ、Gカップと巨乳からさらに先へとサイズアップしていく。そして……

ボムゥッ!!

「きゃあっ!」
乳腺の成長が急激に速くなり、頭一つ分のサイズまで一気に成長を遂げた胸。さらに、ドクン、ドクンと心臓が脈打つ毎に、一回り、また一回りと大きくなる。視界を埋めていく肌色の塊は、園児服の上からもはみ出し始めた。

「もう、止まって……!!」
涙目で胸を押さえる美佐。その願いが聞き届けられたかのように、胸の成長はそこでとまった。といっても、スイカサイズとなった胸は、160cmとなった美佐の大人としての体でもアンバランスだ。さらに、成長は終わったものの、次の段階が待っていた。
「なにか、おっぱいの中が、いっぱいになってく……」

牛乳の成分を体の中から排出しようと、乳腺にそれが集められていたのだ。胸の中に溜まっていく母乳によって、乳房は張り詰め始めた。

「いたい、よ……」
園児服も、ついにその張力に負け、ブチッと破れてしまう。乳房は球体の形に近くなり、乳頭も色が薄くなる。

「もう、出ちゃう……っ!!」
ついに、乳房いっぱいに溜め込まれた母乳が、ブシャァッと乳首から全方向に飛び散った。

「あ、ゆか、汚れちゃうっ」
乳房が少しやわらかくなったのを見て、白い液体を飛び散らせている胸の先端に口を当てる。すぐに口の中が一杯になり、美佐はそれをゴクンと飲み込んだ。

「ん、んんんっ!!!」
するとすぐに下腹部が熱くなり、美佐の体全体が、ギュギュッと一回り大きくなって、最後に残っていた被服もちぎれてしまった。先ほどと同じ、牛乳に対する拒絶反応が重ねがけされたのだった。美佐はとっさに口を離し、口の中に入りかけていた母乳を吐き出した。
さらに一回り大きくなった胸は床全体に母乳を撒き散らしたが、30秒ほどするとその流れは止まった。

と、そこで、耳にイヤホンを付けてラジオの番組にでも夢中になっていたのか、娘の叫び声や服が破れる音にも一切反応しなかった母親が戻ってきた。

「ま、ママぁっ!!」

美佐は、まだ胸から滴り落ちている母乳も気にせず、母親に抱きついた。その巨大な乳房が二人の間に挟まり、ムニュムニュと潰れる感覚に、母親の方は対応しきれない。

「え、美佐……おっぱい……え……」
「えーん、ママぁ!!牛乳飲んだらこんなことになっちゃったのぉーっ!!」

自分より一回り大きい、胸の方は一回りどころではなく大きい女性に急に抱きつかれ、大声で泣かれ。もはや、母親は失神するしか無かった。

「あ、ママっ、どうしたのママ、起きて!!」

次に母親が目を覚ますと、胸のサイズは多少控えめになったものの自分とそっくりな女性――もちろん美佐だが――が目の前にいた。
「大丈夫……?」
「美佐、なの……?」
「そうだよ!!」

「おーい、牛乳こぼれてるぞー!っておい……美佐……」
その場に現れた父親も、大人になった美佐を何とか美佐として受け取ったようだ。

「あなた、何か知ってるなら教えて……」
「うむ……そうだな……」