老いた花の呪い(Grok生成)

第一章 老婆菊の静かな日常とざわつく心

朝の光が、薄いカーテンの隙間から静かに差し込んでいた。82センチの小さな体が布団の中で丸くなっている。菊はゆっくりとまぶたを開けた。目が覚めるたびに、隣の布団がふかふかと空いていることに、胸の奥が少し沈む。夫がこの家を去ってから、もう十年近くになる。年月は確実に彼女の体を縮め、顔に深いしわを刻み、記憶の端を少しずつぼやけさせていった。

「また、朝か……」

小さな声が、乾いた喉から漏れた。菊は布団から這い出すようにして起き上がった。足が床に着く瞬間、いつもより少し体が重く感じる。歳を取ると、骨が朝から軋むような気がした。立ち上がるのに、ベッドの枠に両手をついて、ゆっくりと体重を移動させる。82センチという身長では、床から立ち上がるだけでも一苦労だった。孫のハルトが買ってくれた小さな踏み台が、枕元に置いてある。それを足元に引き寄せ、ようやく安定した姿勢を取った。

鏡台の前に立つのも、毎日同じ動作だった。小さな踏み台をもう一つ持ってきて、その上に乗る。鏡に映る自分の顔を、菊は無表情に見つめた。白い髪は薄くなり、頭皮が透けて見える。額と目尻のしわは深く、頰はこけて、首の皮膚はたるんでいた。88歳という歳月は、容赦なく彼女を「老婆」に仕立て上げていた。夫が生きていた頃の自分を思い浮かべようとしても、若い頃の記憶はもう、はっきりとは蘇らなかった。ただ、胸の奥に残る温かい感覚だけが、時折、ふっと浮かんでくる。

「今日は……何曜日だったかしら」

菊は小さく首を傾げた。カレンダーを見ようとして、踏み台から降り、部屋の隅にある壁掛けのカレンダーに近づく。背伸びをしても、手が届かない。孫のハルトが「婆ちゃん、届かないときは呼んでくれよ」と言ってくれたのに、今日は一人で何とかしようとした。踏み台をもう一つ重ねて、無理に手を伸ばす。指先がカレンダーの端に触れた瞬間、体が少しふらついた。

「危ない……」

小さな体が傾きかけたところで、菊は慌てて踏み台から降りた。息が少し上がっている。こんな小さなことで息が切れる。夫がいた頃は、毎日を忙しく動き回っていたのに、今は一日が長く感じられる。家事をするにも、すべてが自分の体に合わない。流し台は高すぎて、洗い物をするときは踏み台が必要。冷蔵庫の上の段はほとんど使えない。洗濯物を干すのも、竿が頭より高く、孫に手伝ってもらわなければならなかった。

それでも、菊は毎日を丁寧にこなしていた。夫が残してくれたこの家を、汚したくなかった。息子夫婦が早くに亡くなり、孫のハルトだけが残った今、この家はハルトと二人で守っていくものだった。

台所に移動する。ガスコンロの前で、味噌汁の準備をする。小さな鍋に水を入れ、火をつける。味噌を溶くのも、指が少し震える。歳を取ると、細かい作業が難しくなった。味噌汁が沸騰するのを待ちながら、菊は窓の外を見た。小さな庭に、季節の花が少し咲いている。ハルトが時々水やりを手伝ってくれるが、今日はまだ起きていないようだ。

「ハルトは……大学、だったかしら」

菊は小さく呟いた。孫のハルトは22歳。地元の大学に通いながら、アルバイトもしている。忙しいはずなのに、よく菊の面倒を見てくれた。朝、大学に行く前に「おばあちゃん、今日も一人で大丈夫?」と声をかけてくれる。その声が、菊の心を少しだけ温かくした。

味噌汁が出来上がる。ご飯は炊飯器で昨日炊いたものを温め直した。朝食はいつも同じ。ご飯に味噌汁、ぬか漬けを少し。テーブルは低めのものを使っている。ハルトが「婆ちゃんが座りやすいように」と選んでくれたものだ。菊は小さな椅子に腰を下ろし、箸を取った。

一口食べると、味が薄く感じる。歳を取ると、味覚も鈍くなる。夫が生きていた頃は、もっと濃い味付けを好んでいたのに。今は、薄味でも十分だった。ただ、食べるたびに、夫が隣に座っていた頃の記憶が、ぼんやりと蘇る。夫の大きな手が、菊の小さな肩に触れていたこと。朝、夫が「今日も元気でな」と笑っていたこと。

「もう、いい加減に忘れなさいよ……」

菊は自分に言い聞かせるように小さく呟いた。夫の死を悼む気持ちは、もう何年もかけて少しずつ薄れてきた。でも、完全に消えることはない。ただ、毎日を生きるために、忘れるふりをしているだけだった。

食事が終わると、食器を洗う。流し台の前で踏み台に乗り、背伸びをして洗剤を手に取る。指先が少し冷たい。洗い終わった食器を、目の高さの棚にしまうのも一苦労だった。小さな体では、すべての動作に時間がかかる。昔なら、朝の家事は一時間もかからなかったのに、今は二時間近くかかってしまう。

洗い物を終えると、菊はリビングの掃除を始めた。ほうきを持って、床を掃く。小さな体でほうきを扱うと、背中が少し痛くなる。埃を掃き集めるのも、腰を曲げなければならない。ハルトが「婆ちゃん、そんな無理しなくていいよ」と言ってくれるのに、菊は「動かないと、体が固くなってしまうから」と答える。動くことが、彼女にとっての小さな誇りだった。

掃除の途中、菊はふと立ち止まった。壁にかけられた古い写真が目に入った。夫と若い頃の自分。菊は当時、22歳くらいだった。写真の中の自分は、笑顔が明るく、髪も黒くて艶やかだった。夫の隣で、幸せそうに寄り添っている。菊は小さな体を伸ばして、写真に触れた。指先がガラスの冷たさを感じる。

「若い頃の私……」

呟いた声が、部屋に小さく響いた。写真の中の自分は、もう遠い過去の人だった。今の菊は、その頃の自分をほとんど思い出せない。ただ、夫の温かさだけが、胸の奥に残っている。

写真から目を離し、菊は再び掃除を続けた。埃を掃き、床を拭く。体が少し疲れてきた頃、玄関のドアが開く音がした。

「おばあちゃん、ただいま」

ハルトの声だった。菊は掃除道具を置いて、リビングに戻った。小さな足で急ぐと、少し息が上がる。ハルトは靴を脱ぎながら、菊を見てにこっと笑った。

「おはよう、婆ちゃん。今日も元気?」

「うん、元気だよ。ハルトこそ、大学は大丈夫か?」

菊は優しく微笑んだ。ハルトは22歳の青年で、身長は170センチ近くある。菊から見ると、ずっと大きな存在だった。ハルトが菊の頭を軽く撫でるように触れると、菊は少し照れくさそうに体を縮めた。

「大丈夫だよ。今日は午後からゼミがあるんだけど、友達のノゾムが遊びに来るって言ってた。婆ちゃん、邪魔じゃないかな?」

「ノゾム……さん、だったね」

菊は小さく頷いた。ハルトの友達、ノゾム。23歳。時々ハルトと一緒に家に来て、菊にも優しく話しかけてくれる青年だった。菊はノゾムのことを「ハルトの友達」としてしか認識していなかったはずなのに、なぜかその名前を聞くと、胸の奥が少しざわつくのを感じた。

「邪魔じゃないよ。いつものように、お茶でも淹れてあげるから」

菊はそう言いながら、台所に向かった。自分の声が、少しだけ高く聞こえた気がした。いや、そんなはずはない。歳を取った声は、いつも掠れている。菊は自分を戒めるように、ゆっくりと歩いた。

台所で、急須にお茶を用意する。緑茶の葉を少し多めに摘む。ノゾムが来る日は、つい丁寧に淹れてしまう自分がいた。ハルトは「婆ちゃん、ノゾムに気を使わなくていいよ」と言ってくれるが、菊は「友達が来るんだから、ちゃんとしなきゃ」と返す。

お茶を淹れていると、ハルトがリビングで本を広げている声が聞こえた。菊は急須を持ってリビングに戻る。低いテーブルに急須と湯飲み茶碗を置く。自分の手が少し震えているような気がした。歳のせいだろう、と菊は思う。

「婆ちゃん、ありがとう。ノゾム、もうすぐ来ると思う」

ハルトがそう言ったとき、玄関のチャイムが鳴った。菊の胸が、一瞬、大きく鳴った。なぜだろう。ノゾムが来るのは、今日が初めてではない。ハルトの友達として、何度か会っているはずなのに、今日は胸のざわつきがいつもより強い。

菊は小さな体で玄関に向かった。ドアを開けると、ノゾムが立っていた。23歳の青年は、175センチの長身で、菊から見上げると本当に大きかった。優しい目元と、穏やかな笑顔。菊は思わず、息を呑んだ。

「おばあちゃん、お邪魔します。ハルト、いる?」

ノゾムの声が、優しく菊に降りかかった。菊は小さく頷き、ドアを大きく開けた。

「はい、はい。上がってください。ハルトはリビングにいます」

菊はそう言いながら、ノゾムが靴を脱ぐのを見ていた。ノゾムの大きな手が、靴を丁寧に揃える。菊は自分の小さな手を見下ろした。しわだらけで、指が曲がり始めている。ノゾムの若々しい手と、自分の手を比べて、菊は少し寂しくなった。

ノゾムが上がってくると、菊は急いで台所に戻り、湯飲み茶碗をもう一つ用意した。ハルトとノゾムがリビングで話している声が聞こえる。菊は急須を持ってリビングに入った。

「お茶、淹れました。どうぞ」

菊はテーブルに急須を置き、ノゾムに湯飲み茶碗を差し出した。ノゾムは菊を見て、優しく微笑んだ。

「ありがとうございます、おばあちゃん。いつも気を使ってくれて」

その言葉に、菊の胸がまたざわついた。ノゾムは菊を「おばあちゃん」と呼ぶ。普通の敬語で接してくれる。菊はそれが嬉しいような、寂しいような、複雑な気持ちになった。自分はもう、若い女性として見られる年齢ではない。それなのに、ノゾムの優しい視線が、なぜか菊の心を揺らす。

菊は小さな椅子に座り、ハルトとノゾムの会話を聞いていた。大学のこと、アルバイトのこと、将来の話。ノゾムは時折、菊にも話しかけてくれた。

「おばあちゃんは、どんな若い頃だったんですか?」

ノゾムがふと聞いた。菊は少し驚いて、ノゾムを見上げた。ノゾムの目が優しい。菊は自分の若い頃の写真を思い浮かべた。22歳の自分。夫と並んで笑っていた頃。

「若い頃、ですか……もう、遠い昔ですよ」

菊は小さく笑った。自分の声が、掠れている。ノゾムは「そんなことないですよ、おばあちゃんは今でも綺麗ですよ」と言ってくれた。菊は慌てて首を振った。

「もう、年寄りですよ。こんな体で……」

菊は自分の小さな体を、ちょっとだけ見せた。ノゾムは優しく微笑んだまま、「おばあちゃんの体は、小さいけど、温かい気持ちが詰まってると思います」と言った。菊の胸が、熱くなった。なぜだろう。こんな歳で、こんな言葉に動揺するなんて。菊は自分を恥じた。

「ありがとうございます。でも、私はもう、昔の自分を忘れかけてるんですよ」

菊はそう言って、話題をそらした。ハルトが「婆ちゃん、昔の話、聞かせてよ」と言うと、菊は昔のことを少しだけ話した。夫との出会い、結婚した頃の話。話しているうちに、ノゾムの視線が優しく自分を見つめていることに気づいた。菊は視線を逸らした。自分の顔が、少し熱い気がした。

会話は続いた。ハルトとノゾムが大学のことや将来の夢を話すのを、菊は静かに聞いていた。ノゾムの声が、菊の耳に心地よかった。なぜか、夫の声を少し思い出すような感覚。いや、違う。夫の声とは違う。若々しくて、優しくて、未来を語る声。菊は自分の気持ちを抑えようとした。

「こんな歳で、変なことを考えて……」

菊は小さく呟いた。誰にも聞こえないように。ハルトとノゾムの会話に紛れて、自分の胸のざわつきを隠した。ノゾムが時折、菊に「おばあちゃんも、もっと外に出た方がいいですよ」と勧めてくれる。菊は「もう、歳だから」と笑って答える。でも、心の奥では、ノゾムと一緒に外を歩いてみたいという、馬鹿げた願いが浮かんでいた。

やがて、ハルトが「ノゾム、ゼミの時間だから行こう」と立ち上がった。ノゾムも菊にお辞儀をした。

「おばあちゃん、今日はありがとうございました。また来ますね」

菊は小さく頷いた。「また来てください」と言いながら、玄関まで見送った。ノゾムの大きな背中が、玄関を出ていく。菊はドアを閉めたあと、しばらくその場に立っていた。胸のざわつきが、まだ収まらない。

リビングに戻ると、ハルトが「婆ちゃん、ノゾムのこと、どう思う?」と聞いた。菊は慌てて「いい青年だね」と答えた。ハルトは「ノゾム、婆ちゃんのことを気にかけてくれてるみたいだよ」と言った。菊は「そんなこと……」と首を振った。でも、心の奥では、ノゾムが菊のことを少しでも気にかけてくれていると思うと、嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになった。

ハルトが大学に出かけたあと、菊は一人になった。家の中が、急に静かになった。菊は窓辺に座り、庭を見た。花が少し揺れている。風が吹いている。菊は自分の小さな手を、膝の上に置いた。しわだらけの手。ノゾムの手と比べて、なんて違うのだろう。

「もう、いい加減に……」

菊は自分に言い聞かせた。88歳の老婆が、23歳の青年に心を動かされるなんて、馬鹿げている。夫を亡くして、ただ寂しいだけだ。ノゾムはハルトの友達で、ただ優しいだけだ。菊はそう思い込もうとした。でも、胸のざわつきは、なかなか消えなかった。

菊は立ち上がり、台所に向かった。もう一度、食器を洗う。流し台の前で踏み台に乗り、背伸びをして蛇口をひねる。水が少し冷たい。菊は食器を洗いながら、ノゾムの笑顔を思い浮かべていた。すぐに「いけない」と自分を叱った。

洗い物を終えると、菊は庭に出た。小さな体で、植物に水をやる。ジョウロが重くて、両手で抱えるようにして運ぶ。花に水をかけながら、菊は自分の人生を振り返った。夫と過ごした日々。息子を失った悲しみ。孫のハルトを育てる喜び。そして今、ノゾムという青年が、なぜか菊の心を揺らしている。

「もう、年寄りなんだから……」

菊は小さく呟いた。花に水をかけながら、目が少し潤んだ。歳を取ると、涙が出やすくなった。菊は袖で目を拭いた。ノゾムへの想いは、絶対に口に出せない。ハルトに知られたら、どんな顔をされるか。自分自身が、恥ずかしい。

水やりを終えると、菊はベンチに座った。小さな体が、ベンチの端に収まっている。風が吹いて、菊の白い髪を少し揺らした。菊は目を閉じた。ノゾムの優しい声が、耳に残っている。菊はそれを追い払おうとした。でも、追い払えない。

「変だわ、私……」

菊は小さく笑った。88歳の老婆が、恋をするなんて。ありえない。夫を亡くして、もう十分に生きてきた。ノゾムのような青年と、関わるべきではない。菊はそう自分に言い聞かせた。

でも、心の奥のざわつきは、消えなかった。菊はベンチに座ったまま、しばらく風に身を任せた。体が少し、暖かく感じる。気のせいだろう。歳のせいだろう。菊はそう思った。

やがて、菊は立ち上がった。小さな体で、家の中に戻る。リビングのテーブルに、ノゾムが使った湯飲み茶碗が残っていた。菊はそれを手に取った。まだ少し温かい。菊はそれを洗いながら、ノゾムの笑顔をもう一度思い浮かべた。

「もう、よしなさい」

菊は自分に厳しく言った。茶碗を棚にしまう。自分の手が、少し震えていた。菊はそれを無視して、次の家事に取りかかった。今日も、変わらない日常が続く。ノゾムが来る日は、時々ある。でも、菊は自分の気持ちを、絶対に表に出さない。

菊は小さな体で、部屋を掃除し続けた。埃を掃き、床を拭く。体が疲れてきた頃、菊は鏡の前に立った。自分のしわだらけの顔を見つめる。88歳の老婆。ノゾムのような青年が、なぜ自分に優しくしてくれるのか。菊はわからなかった。ただ、優しさが、胸をざわつかせるだけだった。

菊は鏡から目を離し、窓の外を見た。庭の花が、風に揺れている。菊は小さく息を吐いた。今日も、何事もなく過ぎていく。ノゾムへの想いは、心の奥にしまっておく。88歳の老婆が、恋をするなんて、夢物語だ。

でも、菊の胸のざわつきは、今日も消えずに残っていた。菊はそれを押し殺しながら、夕方の準備を始めた。ハルトが帰ってくる時間まで、菊は一人で家を守る。静かな日常の中で、菊は自分の心のざわつきと、静かに向き合っていた。


第二章 最初の若返り

夕暮れの家は、静まり返っていた。ハルトが大学に出てから、もう二時間近くが過ぎていた。ノゾムも一緒に帰っていった。菊はリビングの低い椅子に座ったまま、動く気力も失っていた。小さな体が、椅子に沈み込むように見える。82センチの身長では、椅子に座っていても足が床に届かない。足をぶらぶらさせながら、菊は今日のことを思い返していた。

ノゾムが来たときの優しい笑顔。ハルトと話しているときの穏やかな声。菊に「おばあちゃん」と呼びかけながらも、どこか敬意を込めた目線。菊はそれを、ただの若い人の優しさだと自分に言い聞かせようとした。でも、胸の奥がざわついて、なかなか収まらない。夫を亡くしてから何年も、こんな風に誰かの優しさに心を揺らされたことはなかった。ノゾムはハルトの友達で、23歳の青年。菊は88歳の老婆だ。それなのに、ノゾムの声が耳に残り、笑顔が目に焼きついて離れない。

菊は小さな手で、自分の膝を撫でた。しわだらけの皮膚、曲がり始めた指。ノゾムの手は大きくて、若々しくて、力強かった。あの大きな手が、もし自分の肩に触れたら……そんな考えが浮かんだ瞬間、菊は慌てて首を振った。

「馬鹿な……こんな歳で」

声が掠れて、部屋に小さく響いた。菊は立ち上がろうとした。小さな踏み台を足元に引き寄せ、ようやく床に足を着ける。台所に向かうつもりだったが、足が重い。今日は何もしたくない。ただ、ノゾムのことを考えて、ぼんやりとしていたい。いや、考えてはいけない。考えてしまうと、寂しさが募る。

菊は再び椅子に座った。夕日の光が窓から差し込み、部屋をオレンジ色に染めている。庭の花が風に揺れているのが見える。夫が生きていた頃、この時間は一緒に庭を眺めていた。夫の大きな体が隣にいて、菊の小さな肩を抱いていた。夫の死後、その温かさはもう二度と戻ってこない。ハルトがいる今も、根本の寂しさは消えなかった。そして今日、ノゾムが来たことで、その寂しさが新しい形で疼き始めた。

菊は古い写真立てを手に取った。夫と若い頃の自分。22歳の菊は笑顔が明るく、髪も黒くて艶やかだった。夫の隣で寄り添う姿が、幸せそうに見える。菊は指で自分の今の顔を触れた。しわ、たるみ、薄くなった白髪。写真の中の自分とは別人だ。ノゾムのような青年が、もしこの写真の中の自分を見たら……どう思うだろう。菊はそんなことを考えてしまい、すぐに「いけない」と自分を叱った。

でも、寂寥感は抑えきれなかった。家は静かで、風の音だけが聞こえる。ハルトもノゾムも、もうここにはいない。菊は一人で、88年の人生の重さを抱えていた。夫を失った悲しみ、息子を失った痛み、ただ生き延びてきた日々。そして今、ノゾムの優しさが、まるで新しい光のように、菊の心の暗がりを照らしている気がした。でもその光は、菊には届かない。届かないからこそ、余計に寂しい。

菊は写真を置いた。胸の奥が熱い。ノゾムの笑顔を思い出すたびに、胸がきゅっと締めつけられる。自分はもう、恋をする歳ではない。孫の友達に心を動かされるなんて、恥ずかしい。ハルトに知られたら、どんな顔をされるか。菊はそう思いながらも、ノゾムの声をもう一度思い出してしまった。

「優しい青年だ……」

小さく呟いたその瞬間、菊の胸の奥で、心臓が大きく脈を打った。

ドクン。

激しい鼓動が、全身を震わせた。菊は息を呑んだ。心臓の音が、耳にまで響く。普段の弱々しい鼓動とは違う。力強く、熱い血が体中に駆け巡るような感覚。菊は胸に手を当てた。心臓が、まるで何かを訴えるように、大きく跳ねている。

「なに……これ……」

声が震えた。体が熱い。腕に、脚に、胸に、じんわりとした熱が広がっていく。菊は立ち上がろうとしたが、足がふらついた。小さな体が、椅子から滑り落ちそうになる。菊は慌てて踏み台に手をついた。心臓の鼓動が止まらない。ドクン、ドクン、と激しく鳴り続けている。

そして、左腕に、強い疼きが走った。

菊は思わず右の手で左腕を押さえた。短い、しわだらけの左腕が、熱い。まるで何かが内側から押し上げてくるような感覚。菊は鏡台の前まで、ふらふらしながら移動した。踏み台を二つ重ねて、ようやく鏡が見える高さになる。鏡に映る自分の顔は、いつもの老婆の顔だった。でも、左腕が熱い。菊は左腕を上げてみた。短い腕を上に伸ばすと、突然、激痛が走った。

「っ……!」

菊は声を上げた。左腕が、引き伸ばされる。骨が軋む音が、部屋に響いた。ギリギリ……と、乾いた音。肉が引き伸ばされる湿った音も混じる。左腕が、みるみる長くなっていく。しわだらけの皮膚が、引き延ばされて滑らかになっていく。骨が伸び、筋肉が付き、若い女性の細くしなやかな腕に変わっていく。痛みが激しい。菊は歯を食いしばった。左腕が、元の二倍の長さになった瞬間、痛みが少し和らいだ。でも、右腕が今度は熱くなった。

「右も……やめて……」

菊は右腕を上げた。同じように、激痛とともに右腕が引き伸ばされる。骨の軋む音が連続する。ギリギリ、ギリギリ……と、部屋中に響く。肉が動く湿った音。皮膚が伸びる音。右腕も、二倍の長さになった。菊は両腕を下ろしてみた。短かった腕が、今は普通の若い女性の長さになっている。体とのバランスが、完全に崩れていた。短い胴体に、長すぎる腕。菊は鏡に映る自分の姿を見て、息を呑んだ。

「これは……私の腕……?」

声が震えている。痛みはまだ残っている。でも、腕の感覚が違う。力が入る。指が細くて長い。菊は自分の新しい左腕を、右手で触ってみた。滑らかな皮膚。温かい。歳を取って冷たくなっていた自分の腕とは、別物だった。

次に、左脚が熱くなった。菊はバランスを崩しながら、左脚を伸ばそうとした。激痛が脚全体を貫いた。骨が伸びる。ギリギリ……という音が、脚の骨から響く。肉が引き伸ばされ、太ももからふくらはぎまでが長くなっていく。左脚が、元の倍以上の長さになった。菊は右脚も同じように熱くなるのを感じた。右脚も、激痛とともに伸びていく。骨の軋む音と肉の動く音が、部屋を埋め尽くす。

「痛い……痛い……!」

菊は声を上げて、床に崩れ落ちた。長くなった脚で、バランスが取れない。胴体はまだ小さいままなのに、脚だけが長すぎる。菊は這うようにして、鏡の前に戻ろうとした。踏み台を蹴飛ばしてしまった。新しい長い脚で、床を蹴る。痛みがまだ続いている。脚の骨が伸びた後の、余韻のような疼き。

菊はようやく鏡の前に這い着いた。長くなった脚で、踏み台なしでも鏡が見える高さになっていた。背丈が、これから伸びる予感がした。菊は息を荒げながら、鏡を見つめた。顔はまだ老婆のまま。白髪もまだ。腕と脚だけが、若い女性のものになっている。体とのアンバランスが、グロテスクに見えた。

「何が……起こってるの……」

菊は呟いた。声が掠れている。心臓の鼓動はまだ激しい。胸の奥が熱い。ノゾムのことを思い、寂しさが募ったあの瞬間から、体がおかしくなった。菊はノゾムの優しい笑顔を、もう一度思い浮かべてしまった。すると、背骨に激痛が走った。

「っあ……!」

背丈が、伸び始めた。骨が一つずつ、引き伸ばされるような感覚。脊椎が軋む音が、背中から響く。菊の小さな体が、縦に引き延ばされていく。背丈が、90センチ、100センチ、120センチ……と増えていく。痛みが激しい。菊は床に這いつくばったまま、体を震わせた。肉が動く音。骨が伸びる音。部屋中に、菊の苦痛の音が満ちていた。

背丈が150センチ近くまで伸びたとき、菊の声が変化し始めた。喉の奥が熱い。菊は何か言おうとしたが、声が途中で変わった。

「痛い……うっ……あ……」

老いた、掠れたうめき声が、徐々に妖艶な喘ぎ声に変わっていく。声帯が若返り、響きが豊かになる。菊は自分の声の変化に驚いて、口を押さえた。でも、声はもう止まらない。背丈が伸びる痛みと混じって、喉から妖艶な声が漏れ出す。

顔が熱くなった。菊は鏡を必死に見つめた。額のしわが、ゆっくりと消えていく。目尻のしわも浅くなる。頰のたるみが、引き上がっていく。骨が動く小さな音が、顔の中から聞こえる。皮膚が引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まっていく。黒い色が、徐々に広がっていく。髪が伸びる。白かった髪が、黒く艶やかに長くなっていく。菊は自分の髪を、手で触れた。黒くて、柔らかい。長い髪が、肩まで届くようになった。

「これは……私……?」

声が、完全に若い女性のものになっていた。妖艶で、息が混じったような声。菊は自分の顔を鏡で確認した。しわのない、滑らかな若い女性の顔。目が大きく、唇がふっくらしている。88歳の老婆の顔は、どこにもない。22歳くらいの、妖艶な顔がそこにあった。

最後に、肉が付き始めた。菊の胴体が、熱くなった。ムチムチと、肉が体内から溢れ出すような感覚。菊は自分の腹を押さえた。肉が動く湿った音がする。体全体が、ふくらんでいく。胸の部分が、特に熱い。菊は息を呑んだ。

左の胸が、突然、爆発的に膨らんだ。痛みと快感が混じったような激しい感覚。乳房が、急激に大きくなっていく。皮膚が引き伸ばされる音。肉が充填される音。菊は自分の左胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、大きく、重く、ふくらんでいく。服が、胸の部分で裂け始めた。古い、ゆるい服が、急激に大きくなる胸に耐えられなくなっている。

「やめて……こんな……」

菊の声が、喘ぎに変わっていた。左の胸が、爆乳のように大きくなったあと、今度は右の胸が熱くなった。右の胸が、左を追い越すように、爆発的に膨らんでいく。左の胸よりさらに大きくなる。菊は体をよじった。痛みと、未知の感覚が体を駆け巡る。右の胸が、左の胸を追い越したあと、今度は左の胸が、再び膨らみ始めた。右に追いつき、合わせるように、両方の胸が、巨大でムチムチとした爆乳になっていく。

服が、完全に裂けた。胸の部分が大きく開き、谷間が強調される。白い肌が、露わになった。菊は自分の新しい胸を見て、息を呑んだ。大きくて、重くて、形の良い若い女性の胸。触れると、柔らかくて、熱い。菊は恥ずかしさで顔を赤らめた。でも、体はもう止まらない。

尻と太ももも、同じように膨らんでいった。左の尻がふくらみ、右の尻が追い越し、交互に肉が付いていく。太ももも、ムチムチと厚みを増していく。脚の長さと相まって、グラマラスな下半身になっていく。菊の体は、今や170センチ近くの、妖艶でムチムチとした若い女性の体になっていた。

変身が終わった瞬間、菊は床に崩れ落ちた。息が荒い。体中が汗で濡れている。新しい長い腕で、体を支える。鏡に映る自分の姿を見て、菊は言葉を失った。黒い長い髪、滑らかな若い顔、巨大な胸、ムチムチとした腰と脚。服は裂けて、ほとんどボロ布のようになっている。谷間が深く、胸の重さが、菊の新しい体にのしかかっている。

「これは……わし……?」

菊は小さく呟いた。自分の声が、妖艶で、息が混じっている。体が、若さで満ちている。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいた。菊は自分の新しい腕を、触ってみた。滑らかで、力がある。胸を、そっと触れた。柔らかくて、重い。恥ずかしさが込み上げてきた。でも、同時に、ノゾムのことを思い浮かべてしまった。この体で、ノゾムに会ったら……どうなるだろう。菊は慌ててその考えを追い払った。

菊は立ち上がった。新しい長い脚で、安定して立っていられる。鏡の前に立ち、自分の体をもう一度確認した。88歳の老婆だった自分が、22歳くらいの、妖艶な女性になっている。名前を、菊は小さく呟いた。

「クリス……」

変身後の自分に、そう名付ける。なぜか、自然とその名前が口から出た。菊はクリスとして、鏡の中の自分を見つめた。体はまだ少し疼いている。骨が伸びた余韻、肉が動いた余韻。服はもう着られない。菊は裂けた服を、そっと脱ぎ捨てた。裸の体が、鏡に映る。巨大な胸、細い腰、ムチムチとした尻と脚。菊は自分の体を、両手で触れた。新しい感覚が、指先から伝わってくる。

寂寥感は、まだ残っている。でも、その寂しさの中に、新しい何かが混じっていた。ノゾムの優しさが、菊の心に残っている。クリスになった今、その想いは、もっと強く、熱く感じられた。菊は鏡から目を離し、部屋を見回した。長くなった腕で、裂けた服を拾い上げる。新しい体で、動くのが、少し不思議だった。

クリスは、ゆっくりと息を整えた。変身の痛みと音が、まだ耳に残っている。骨の軋む音、肉の動く音。激しい痛み。すべてが、ノゾムのことを思ったあの瞬間から始まった。クリスは、自分の新しい体を抱きしめるように腕を回した。恥ずかしさと、奇妙な喜びが、混じり合っていた。

この体で、明日をどう生きるか。クリスはまだわからなかった。でも、ノゾムの笑顔が、心の奥で、優しく光っていた。


第三章 出会いと、消えゆく寂寥

クリスは、長い黒髪を指で梳きながら、鏡の前に立っていた。変身が終わってから、まだ一時間も経っていない。部屋の中は、骨の軋む音と肉の動く音がまだ響いているような気がした。170センチの長身。左から右へと順に伸びた腕は、滑らかで力強い。脚も長く、ムチムチとした太ももと尻。胸は重く、服の裂け目から白い谷間が覗いている。クリスは自分の新しい体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。88歳の老婆だった自分が、22歳の妖艶な女性になっている。

服はもう着られない。古い服は胸の部分で完全に裂け、ほとんどボロ布になっていた。クリスはハルトの部屋から、大きめのTシャツとジャージのパンツを借りて着た。Tシャツは胸を締めつけ、谷間が強調される。パンツも太ももに張り付く。クリスは鏡に映る自分を見て、恥ずかしさで顔を赤らめた。でも、同時に、体の活力が心地よかった。痛みは残っているが、激しい変身のあと、奇妙な身軽さが体を包んでいる。

「外に出てみたい……」

クリスは小さく呟いた。ノゾムのことを思うと、胸がざわつく。今日、ノゾムが家に来てくれた。優しい笑顔。優しい声。菊として接していたときの温かさが、まだ心に残っている。寂寥感は少し薄れていた。でも、完全に消えたわけではない。この新しい体で、外を歩いてみたい。ノゾムに会いたいわけではない。ただ、息が詰まる家を出て、風に当たってみたいだけだ。クリスはそう自分に言い聞かせながら、玄関に向かった。

夜の町は、静かだった。街灯がオレンジ色の光を落としている。クリスは長い脚で、ゆっくりと歩いた。新しい体で歩くのは、少し不思議だった。地面が近く感じる。風が、長い黒髪を揺らす。Tシャツの胸の部分が、歩くたびに揺れる。クリスは時々、自分の胸に視線を落とした。重い。大きい。ノゾムがもしこの姿を見たら……どう思うだろう。クリスは慌ててその考えを追い払った。ノゾムはハルトの友達だ。自分はクリスという、初対面の女性だ。それ以上でも以下でもない。

でも、心の奥では、ノゾムの優しさが、寂寥感を少しずつ溶かしている気がした。菊として生きてきた日々。夫を失い、息子を失い、ただ小さく縮んで生きてきた日々。ノゾムが「また来ますね」と言ってくれたとき、菊の胸は熱くなった。この新しい体になっても、その熱は消えていない。クリスは歩きながら、ノゾムの笑顔を思い浮かべていた。寂寥感が、徐々に薄れていく。心が、少しずつ温かくなる。

そんなときだった。

クリスが角を曲がった瞬間、向かいから歩いてくる人影と、肩がぶつかった。バランスを崩したクリスは、転んでしまった。長い脚が絡まり、地面に倒れ込む。Tシャツがめくれ上がり、胸の谷間が大きく露わになった。クリスは慌てて服を直そうとしたが、間に合わなかった。

「大丈夫ですか!?」

低くて優しい声が、頭上から降りかかった。クリスは顔を上げた。そこに立っていたのは、ノゾムだった。175センチの長身。優しい目元。今日、家で見たのと同じ笑顔。クリスは息を呑んだ。ノゾムは、クリスを初めて見るような目で、こちらを見下ろしていた。

「す、すみません……転んでしまって……」

クリスは小さな声で言った。自分の声が、妖艶で息が混じっている。ノゾムは慌てて手を差し伸べてきた。大きな手が、クリスの腕を優しく掴む。クリスはノゾムの手に触れられて、胸がきゅっと鳴った。ノゾムはクリスを起こし上げた。

「怪我はありませんか? 急に曲がってきて、びっくりしました」

ノゾムの声が優しい。クリスは立ち上がって、服を直した。Tシャツの胸の部分が、大きく開いている。谷間が強調されている。ノゾムの視線が、一瞬、クリスの胸に落ちた。すぐに逸らされた。でも、クリスは気づいた。ノゾムの目が、時々、自分の胸や太ももに吸い寄せられる。嫌な気持ちはしない。むしろ、複雑な気持ちが込み上げてきた。恥ずかしい。嬉しいような。罪悪感のような。菊としてノゾムに接していたときの想いが、この体になって、さらに熱を帯びている。

「大丈夫です……ありがとうございます」

クリスは小さくお辞儀をした。ノゾムは「本当に大丈夫ですか? 一緒に歩きますよ」と言い、並んで歩き始めた。クリスはノゾムと並んで歩く。新しい長い脚で、ノゾムと同じ目線の高さになった。ノゾムはクリスに、時々視線を向けた。優しい。気遣っている。クリスはノゾムの横顔を見て、胸のざわつきが強くなるのを感じた。

「私はノゾムと言います。あなたは……?」

ノゾムが聞いた。クリスは少し戸惑った。ノゾムは自分を「クリス」として知らない。初対面の人として話すしかない。クリスは小さく微笑んだ。

「クリス……です」

「クリスさん、ですか。素敵な名前ですね」

ノゾムの声が、優しく響いた。クリスは心が温かくなるのを感じた。ノゾムはクリスの転んだ原因を気にかけ、ゆっくりと歩いてくれた。二人で夜の町を歩く。ノゾムは大学のことや、ハルトのことを少し話した。クリスは聞き役に回りながら、ノゾムの優しさに心を溶かされていった。寂寥感が、徐々に消えていく。ノゾムが「一人で歩くのは危ないですよ」と気遣ってくれるたびに、クリスの胸が熱くなった。

会話が続く。ノゾムは時々、クリスの顔を見て微笑んだ。その視線が、ふと胸に落ちる。Tシャツの谷間が、街灯の下で白く光っている。ノゾムの目が、一瞬、胸の形を捉える。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。でも、同時に、菊としての罪悪感が疼く。ノゾムはハルトの友達だ。この体は、呪いで作られたものだ。クリスは視線を逸らした。

「ノゾムさん……優しいんですね」

クリスは小さく言った。ノゾムは「そんなことないですよ」と笑った。でも、その笑顔が、クリスの心をさらに温めた。寂寥感が、完全に消え去っていく。夫を失った悲しみ。歳を取って縮んでしまった日々。すべてが、ノゾムの優しい声で溶けていく。クリスはノゾムを見て、初めて「この人と話せてよかった」と思った。

その瞬間だった。

左胸が、一気にしぼんだ。

激しい疼きとともに、左の胸が急激に萎んでいく。ムチムチと膨らんでいた肉が、しぼんでいく。皮膚がたるみ、胸の形が崩れていく。クリスは息を呑んだ。左胸が、元の小さなサイズに戻っていく。服の中で、胸の重さが急に軽くなった。クリスは慌てて自分の胸を押さえた。でも、間に合わない。左胸が、完全にしぼんでしまった。

「っ……!」

クリスは声を上げそうになった。ノゾムは気づいていない。まだ話している。クリスは「元に戻って……」と、心の中で強く念じた。すると、左胸が、一気に元のサイズまで膨らみ返した。爆発的に肉が充填される感覚。皮膚が引き伸ばされる音が、服の下で響いた。左胸が、元の巨大でムチムチとした爆乳に戻った。クリスは息を荒げた。ノゾムはまだ気づいていない。

でも、今度は右胸が熱くなった。右胸が、ゆっくりと萎み始めている。クリスは慌てて「すみません、ちょっと……」と言って、その場を離れようとした。ノゾムが「大丈夫ですか?」と声をかける。クリスは「トイレに行きたいんです」と言い、身障者トイレの方に急いで歩き始めた。右胸が、萎んでいく。バランスが崩れそうになる。クリスは走り出した。

走っている最中、右胸が爆発的に元に戻った。重い肉が、一気に胸に戻ってくる。クリスはバランスを崩しかけた。長い脚がふらつき、転びそうになる。右胸の重さで、体が傾く。クリスは必死に走り、身障者トイレに駆け込んだ。ドアを閉め、鍵をかける。息が荒い。

トイレの中で、クリスは鏡に映る自分を見た。左胸は元に戻っている。でも、右胸が少し萎んでいる。クリスは「元に戻りたくない……」と、心の中で強く思った。でも、体は逆らった。

左腕が、突然、縮み始めた。長い、滑らかな左腕が、短く、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは左腕を抱きしめた。左腕が、元の短い老婆の腕に戻った。すぐに、左腕が再び伸びた。クリスと菊の状態を行き来する。右腕も同じように、縮んだり伸びたりを繰り返す。

脚も、交互に変化した。左脚が縮み、右脚が伸び、バランスが崩れる。背丈が、170センチから縮み、150センチ、130センチ……と変動する。クリスはトイレの壁に手をついて、体を支えた。背丈が縮むたびに、骨の軋む音が響く。肉が動く音。声が、妖艶な喘ぎ声から老いたうめき声に変わり、また戻る。

顔が、熱くなった。しわが現れたり消えたりする。白髪が混じったり、黒い髪に戻ったりする。クリスは鏡を見て、自分の顔が交互に変化するのを見た。痛みが激しい。体の一部が菊に戻り、またクリスに戻る。胸も、左が萎んだり膨らんだり、右が同じように交互に変化する。クリスは「元に戻りたくない……」と念じながら、体を震わせた。

でも、体は止まらない。腕が縮み、脚が縮み、背丈が縮み、顔が老い、胸が萎む。声が老いる。クリスは壁に寄りかかり、体を支えた。激痛と、骨の軋む音、肉の動く音が、トイレを埋め尽くす。菊とクリスの状態が、何度も行き来する。クリスは「やめて……」と呟いた。でも、体は最後に、一気に老婆の姿に戻った。

背丈が82センチまで縮み、腕と脚が短くなり、胸が完全に萎み、顔にしわが刻まれ、白髪が戻る。服が、大きすぎて体に余る。クリスは、菊に戻っていた。88歳の小さな老婆。トイレの床に、へたり込むように座った。息が荒い。体中が痛い。変身の余韻が、まだ残っている。

菊は鏡に映る自分の顔を見た。老婆の顔。しわだらけ。白髪。ノゾムとの会話で心が温かくなり、寂寥感が消え去ったあの瞬間から、体が元に戻ろうとした。菊は小さく息を吐いた。ノゾムの優しい声が、まだ耳に残っている。菊はトイレに座ったまま、長い時間、動けなかった。


第四章 風呂の中の、静かな鼓動

菊は、身障者トイレから家に帰り着いたとき、もうほとんど体を動かせなかった。変身の余韻が、骨の奥まで残っている。腕も脚も、時々、勝手に縮んだり伸びたりするような感覚がする。家に着くと、ハルトが心配そうに迎えてくれたが、菊は「少し疲れただけ」と笑ってごまかした。ノゾムとの会話で心が温かくなったあの瞬間から、体が元に戻ろうとしたこと。菊はそれを誰にも言えなかった。ただ、ノゾムの優しい声が耳に残り、寂寥感が少しだけ和らいでいるのを感じていた。

その翌日、ノゾムがまた家を訪ねてきた。ハルトが「ノゾムが何か忘れ物をしたみたい」と言い、菊は少し胸の奥がざわついた。ノゾムは玄関で靴を脱ぎながら、菊に優しく声をかけた。

「おばあちゃん、昨日はありがとうございました。クリスさんという方に会ったんですが……」

ノゾムは昨日、クリス(菊が変身した姿)と出会ったことを少し話した。菊は心臓が大きく鳴るのを感じながら、老いた声で「そう、ですか」と答えた。ノゾムは菊の小さな体を気遣いながら、優しく話してくれた。菊はノゾムの笑顔を見て、昨日のクリスとして話したときの温かさを思い出した。でも、今の自分は88歳の小さな老婆だ。ノゾムはただ、孫の友達として優しく接してくれているだけ。菊は自分の気持ちを必死に抑え、茶を淹れて出した。

ノゾムとハルトは、リビングで少し話したあと、「ちょっと出かけてくる」と言い、二人で外に出ていった。菊は玄関で二人を見送りながら、ノゾムの背中を眺めた。大きな背中。優しい声。菊は小さく息を吐いた。家の中が、再び静かになった。

一人になった菊は、風呂を沸かした。体がまだ変身の疲れで重い。温かいお湯に浸かれば、少し楽になるかもしれない。菊は小さな体で脱衣所に入り、服を脱いだ。鏡に映る自分の姿を見て、ため息をついた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。胸はほとんど平らで、しぼんだように小さく、たるんでいる。菊は自分の胸を、そっと触れた。冷たい。重みがない。昨日、クリスとしてノゾムと話したときの、大きな胸の重みと熱さを、ふと思い出した。

「もう……変身することはない、はずだ」

菊は小さく呟いた。昨日の変身は、ノゾムのことを強く思ったせいだったのかもしれない。でも、もう終わった。体は元に戻った。菊はそう思いながら、湯船に浸かった。熱いお湯が、古い体を包み込む。菊は目を閉じ、昨日のことを思い浮かべた。ノゾムと並んで歩いたこと。ノゾムの視線が時々、自分の胸や太ももに落ちたこと。嫌な気持ちはしなかった。むしろ、複雑な温かさが胸に広がった。寂寥感が、少し溶けていく感覚。菊は湯船の中で、ゆっくりと息を吐いた。

自分の老いた胸を見て、菊はもう一度ため息をついた。ほとんど平らな胸。乳首は小さく、しぼんでいる。菊は自分の胸を、指で優しく撫でた。冷たい皮膚。歳を取ると、こういうものなのだと、諦めのような気持ちが浮かんだ。

そのときだった。

左の乳首が、ぴくぴくと動いた。

菊は息を呑んだ。視覚だけ。乳首が、小さく脈動している。まるで、心臓の鼓動に合わせて動いているようだった。菊は目を凝らした。錯覚かと思った。熱いお湯のせいかもしれない。菊はもう一度、左の乳首を見つめた。すると、左乳首が、ゆっくりと大きくなっていく。ギチギチと、肉が付き始めるような感覚。左乳首が、太く、大きく、ぷっくりと膨らんでいく。菊は慌てて右の乳首を見た。右乳首も、同じように、ギチギチと大きくなり始めた。

「なに……これ……」

菊は小さな声で呟いた。両方の乳首が、明らかに大きくなっている。熱いお湯の中で、乳首だけが脈動しながら成長していく。菊は自分の胸を、両手で覆おうとした。手で押さえれば、止まるかもしれないと思った。でも、右手が、突然、長く大きくなっていくのを感じた。

右手が、ゆっくりと伸びていく。指が長くなり、手のひらが大きくなり、腕全体が長くなっていく。メキメキという、骨が伸びる乾いた音が、湯船の中で響いた。菊は右手を目の前に掲げてみた。長い、大きな手。滑らかな皮膚。歳を取って縮んだ自分の手とは、別物だった。菊は困惑しながら、左手も同じように熱くなるのを感じた。左手も、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨の伸びる音。肉の動く音。両手が、若い女性の長く大きな手に変わっていった。

菊は湯船の中で、体を震わせた。両手が長くなったせいで、湯船の縁を掴むのが少し不自然だった。菊は「こんなの……」と呟きながら、次の変化を待った。すると、今度は左脚に激痛が走った。

「っ……!」

左脚が、メキメキと伸び始めた。骨が引き伸ばされる乾いた音が、湯船に響く。肉が長く伸びていく感覚。左脚が、元の倍以上の長さになっていく。菊は湯船の中で、体をよじった。痛みが激しい。左脚が長くなったあと、今度は右脚が同じように熱くなり、メキメキと伸びていく。両脚が長くなり、湯船の中で足が届かなくなった。菊は長い脚を、湯船の外に伸ばした。背骨が、今度は熱くなった。

背骨が、ゆっくりと伸びていく。脊椎が一つずつ、引き伸ばされるような痛み。菊の小さな体が、縦に長くなっていく。背丈が、90センチ、110センチ、130センチ……と増えていく。骨の軋む音が、背中から響く。菊は湯船の中で、背中を反らした。痛みが続く。背丈が150センチ近くまで伸びたとき、左腕が、再び熱くなった。

左腕が、ゆっくりと長く伸びていく。すでに長くなっていた右腕に続き、左腕も同じ長さになっていく。菊は両腕を、湯船の外に伸ばしてみた。両腕が、クリスと同じ長さになっている。でも、皮膚はまだ老いている。ピンと張り詰めた、ガリガリとした瘦せた状態。筋肉がほとんどなく、骨が浮き出ている。菊は自分の腕を見て、息を呑んだ。

「こんなの……いやだ」

菊は小さく呟いた。声が、掠れている。体はクリスと同じ身長になったのに、皮膚と肉がまだ老いている。ガリガリで、張り詰めた状態。菊は湯船の中で、体を抱きしめるように腕を回した。痛みがまだ残っている。骨が伸びた余韻。肉が動いた余韻。

そのとき、急に、皮下脂肪が付き始めた。

ミチミチという、湿った音が、菊の体中から聞こえた。皮下に、脂肪が急速に着いていく。ガリガリだった腕に、柔らかい肉が付き始める。皮膚が、張り詰めていた状態から、ふっくらと若返っていく。菊は自分の腕を触れた。滑らかで、温かい。歳を取って冷たくなっていた皮膚が、若々しくなっていく。ミチミチという音が、胸や腹、脚にも広がっていく。皮下脂肪が、音を立てながら体を埋めていく。皮膚が、若返る。

声が、変化し始めた。喉の奥が熱い。菊は何か言おうとしたが、声が妖艶な響きに変わっていく。掠れていた声が、息が混じったような、甘い声になっていく。菊は自分の声を聞いて、息を呑んだ。

胸と尻が、今度は脈動し始めた。左の胸が、ゆっくりと膨らみ始める。乳首がすでに大きくなっていた胸が、ムチムチと肉を付けていく。右の胸も、同じように脈動しながら大きくなっていく。尻も、太ももも、同じように肉が付き、ふくらんでいく。菊は湯船の中で、体を震わせた。胸と尻が、徐々に大きくなっていく。重みが増していく。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まっていく。黒い色が広がり、髪が長く伸びていく。菊は自分の顔を、湯船の水面に映して見た。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。

最後に、胸と尻が、爆発的に膨らんだ。

左の胸が、一気に大きくなる。肉が急速に充填される感覚。皮膚が引き伸ばされる音。菊は自分の左胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、巨大でムチムチとした爆乳になっていく。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。尻も、太ももも、同じように大きくなる。菊の体は、今や170センチの、妖艶でムチムチとした若い女性の体になっていた。

変身が完了した瞬間、クリスは湯船の中で、息を荒げた。熱いお湯が、新しい体を包み込んでいる。巨大な胸が、水面に浮かんでいる。長い黒髪が、湯船の縁に広がっている。クリスは自分の体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。重い。昨日の変身と同じ体。クリスは小さく呟いた。

「クリス……」

声が、妖艶で甘い。体が、若さで満ちている。痛みは残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいた。クリスは湯船からゆっくりと立ち上がった。長い脚で、脱衣所の鏡の前に立つ。鏡に映る自分の姿を見て、息を呑んだ。黒い長い髪、滑らかな若い顔、巨大な胸、ムチムチとした腰と脚。昨日と同じ、妖艶な体。

クリスは新しい体を、両手で抱きしめた。ノゾムのことを思うと、胸が熱くなる。昨日、ノゾムと話したときの温かさ。寂寥感が消え去ったあの瞬間。クリスは、ノゾムに会いたいという想いが、胸の奥で疼いているのを感じた。

この体で、もう一度、ノゾムに会いたい。クリスはそう思いながら、湯船から上がった。新しい長い腕で、タオルを取る。体を拭きながら、クリスは自分の新しい胸の重みを感じた。ノゾムがこの姿を見たら、どう思うだろう。クリスは恥ずかしさで顔を赤らめながらも、心の奥で、ノゾムへの想いが熱を帯びているのを感じていた。


第五章 映画館の闇と、消えゆく手

クリスは、湯船から上がったあと、長い黒髪をタオルで拭きながら鏡の前に立っていた。新しい体はまだ熱を帯びている。巨大な胸が重く、ムチムチとした腰と脚が、服の布地に張り付く。昨日と同じ、妖艶な姿。クリスは自分の胸をそっと触れた。柔らかくて、熱い。ノゾムのことを思うと、胸の奥がざわつく。昨日、ノゾムと話したときの優しい声と視線が、まだ心に残っている。寂寥感は、ほとんど消えていた。でも、別の恐怖が、静かに胸の底に沈んでいる。

「また……元に戻ってしまうかもしれない」

クリスは小さく呟いた。昨日、トイレで体が菊に戻っていった恐怖が、鮮明に蘇る。骨が縮む痛み。肉が萎む感覚。声が老いること。クリスはそれを二度と味わいたくないと思った。でも、ノゾムに会いたいという想いが、それを上回っていた。クリスはハルトの部屋から大きめの服を選び、着た。Tシャツは胸を強調し、谷間が深く見える。パンツは太ももと尻にぴったりと張り付く。クリスは鏡で自分の曲線を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムの視線を、掴みたいと思った。恥ずかしい気持ちと、でもこの体でノゾムに見てほしいという気持ちが、混じり合っていた。

クリスは家を出た。夜の町を歩く。長い脚で、ゆったりとした歩幅。胸が歩くたびに揺れる。クリスは時々、自分の胸や腰に視線を落とした。昨日と同じ体。でも、ノゾムに会えるかもしれないと思うと、心臓が少し速く鳴る。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムのことを思い浮かべていた。優しい笑顔。優しい声。昨日、クリスとして話したときの温かさ。寂寥感が消え去ったあの瞬間。

そんなとき、クリスは町の中心にある公園のベンチで、ノゾムを見つけた。ノゾムは一人で座り、スマホを眺めていた。クリスは少し緊張しながら、近づいた。

「ノゾムさん……?」

ノゾムは顔を上げ、クリスを見て目を丸くした。

「クリスさん……! また会いましたね。昨日は本当にありがとうございました」

ノゾムの声が優しい。クリスは心が温かくなるのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスは微笑んだ。

「こちらこそ……。少し、散歩していたんです」

二人は一緒に歩き始めた。夜の町を、並んで。クリスは意識的に、胸を張って歩いた。Tシャツの谷間が、街灯の下で白く光る。ノゾムの視線が、時々、クリスの胸や太ももに落ちる。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。昨日と同じ視線。でも、今日はもっと近くにいる。クリスは恐怖を胸の奥に押し込みながら、ノゾムと話した。

「ノゾムさんは、どんな映画が好きですか?」

クリスが聞いた。ノゾムは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑った。

「最近は、ちょっとした恋愛ものとか……心が温かくなるやつが好きです」

ノゾムはクリスに、最近見た映画の話を少しした。クリスは聞きながら、ノゾムの横顔を眺めた。優しい目元。穏やかな声。クリスは自分の想いが、ノゾムに向かっているのを感じた。菊としての記憶と、この体の想いが、重なり合っている。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに近づいた。意識的に、腕が触れそうになる距離で歩く。胸が、ノゾムの腕に近づく。

会話が続く。ノゾムはクリスのことを気遣いながら、優しく話してくれた。クリスは自分の過去を、ぼかしながら話した。寂しかったこと。誰かと話したかったこと。ノゾムの優しさが、それを少しずつ溶かしていく。クリスは恐怖を押し殺しながら、ノゾムの声に耳を傾けた。

「ノゾムさんと話していると……心が温かくなります」

クリスは小さく言った。ノゾムは優しく微笑んだ。

「僕もです。クリスさんと話していると、なんだか……不思議な気持ちになります」

ノゾムの視線が、またクリスの胸に落ちた。クリスは気づき、意識的に胸を張った。谷間が強調される。ノゾムの目が、一瞬、熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。恥ずかしい。でも、嬉しい。ノゾムが自分を見てくれている。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに微笑みかけた。

二人は自然と、近くの映画館に入った。夜の映画。暗い館内で、隣の席に座る。クリスはノゾムの隣で、スクリーンを見つめた。映画が始まる。恋愛映画。心が温かくなるシーンが続く。クリスはノゾムの横顔を、時々盗み見た。ノゾムは映画に熱中している。クリスは自分の手を、膝の上に置いた。ノゾムの手に、触れそうになる距離。

スクリーンの明るいシーンで、ノゾムの右手が、クリスの左手に触れた。指が重なる。クリスは息を呑んだ。ノゾムの温かい手。大きな手。クリスは恐怖を抑えながら、指を少し動かした。ノゾムの指が、クリスの指に絡まる。手が触れ合った。幸せな感覚が、胸に広がった。寂寥感は、もうどこにもない。ノゾムの温かさが、すべてを溶かしている。

クリスはノゾムの手に、そっと力を込めた。ノゾムも、同じように力を返してきた。二人で手を繋いだまま、映画を見続ける。クリスは心が、熱く鳴るのを感じた。この瞬間が、ずっと続けばいいと思った。恐怖を完全に忘れていた。

そのときだった。

触れ合っていたクリスの左手が、突然、小さく縮み始めた。

左手の指が、短くなり、皮膚がしわだらけになっていく。骨が縮むような痛みが、指先から走った。クリスは息を呑んだ。左手が、老いた小さな手に変わっていく。ノゾムは映画のシーンに熱中していて、まだ気づいていない。クリスは慌てて左手を、膝の下に隠した。でも、変化は止まらない。左手が、完全に老婆の小さな手に戻ってしまった。

クリスは恐怖で体を震わせた。元に戻ってしまう。昨日と同じように。クリスは「戻りたくない……」と、心の中で強く思った。すると、左手が、一時的に元の長さに戻った。滑らかな若い女性の手に。クリスは息を荒げた。でも、すぐにまた縮み始める。左手が、老いた手に戻っていく。

ノゾムはまだ映画に夢中だ。クリスは左手を隠したまま、立ち上がった。

「す、すみません……ちょっとトイレに……」

クリスは小さな声で言い、ノゾムの隣を離れた。ノゾムは「大丈夫ですか?」と声をかけたが、クリスは「すぐ戻ります」とだけ言って、女性用トイレに急いで逃げ込んだ。狭い個室に飛び込み、ドアを閉めて鍵をかける。息が荒い。

トイレの狭い空間で、クリスは鏡に映る自分を見た。左手が、老いた小さな手に戻っている。クリスは「また老いるのは嫌だ……」と強く思った。すると、左手が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮み始める。左腕全体が、縮んでいく。骨の縮む音。肉が萎む音。クリスはトイレの壁に手をついて、体を支えた。

「戻りたくない……戻りたくない……」

クリスは抵抗するたびに、腕が一時的にクリスの状態に戻る。左腕が伸び、滑らかになる。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭いトイレの中で、腕をぶつけた。壁に当たる。痛みと、変化の感覚が混じり合う。

脚も、縮み始めた。左脚が、短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという、骨の縮む音。クリスはバランスを崩し、トイレの壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い空間で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる感覚。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。顔が、熱くなった。しわが現れ始める。黒い髪が、白く染まっていく。クリスは鏡を見て、自分の顔が交互に変化するのを見た。抵抗するたびに、顔が一時的に若返る。でも、すぐに老いる。クリスは狭いトイレの中で、体を震わせた。

「元に戻りたくない……また老いるのは嫌だ……」

クリスは抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らみ、顔が若返る。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスはトイレの壁や洗面台に、腕や脚をぶつけた。狭い空間で、体が変化するたびにバランスを崩す。痛みと、肉が萎む感覚。骨が縮む音。クリスは喘ぎ声を漏らしながら、体を支えた。

胸が、完全に萎んでいく。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。背丈が、82センチまで縮んでいく。クリスは「戻りたくない」と最後に強く思った。でも、体はもう止まらなかった。顔が完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭いトイレの中で、菊はへたり込むように床に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は鏡に映る自分の顔を見て、息を吐いた。ノゾムとの会話で心が温かくなったあの瞬間。手が触れ合った幸せな感覚。そして、元に戻ってしまう恐怖。菊は小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。菊はトイレに座ったまま、長い時間、動けなかった。ノゾムの優しい声が、耳に残っている。寂寥感は、また少しずつ、胸の奥に広がり始めていた。


第六章 テレビの呪いと、リビングのソファ

前半

夕方のリビングは、薄暗いテレビの光に包まれていた。菊は小さな体をソファの端に寄せて座り、ハルトと並んでテレビを見ていた。ハルトは22歳の大学生で、今日も大学から帰ってきて、菊と一緒に夕食を済ませたあと、テレビの前に座っていた。菊はハルトの横顔を時折見ながら、静かに息を吐いた。ノゾムへの想いは、まだ胸の奥に残っている。昨日、クリスとしてノゾムと話したときの温かさ。手が触れ合った感覚。そして、元に戻ってしまった恐怖。菊はそれをハルトに話すことができなかった。ただ、今日も変わらない日常を、静かに過ごしている。

ハルトがリモコンを手に取り、チャンネルを変えた。偶然ついた番組は、オカルト特集だった。司会者が、暗いスタジオで真剣な顔をして話している。

「今夜は、昔の嫉妬からかけられた呪いについてお送りします。ある女性が、若い頃に夫を巡ってライバルからかけられた呪い。夫の死後、孤独が極限に達したとき、呪いが目覚め、老いた体を強制的に若返らせる……しかし、その若返りは常にグロテスクで苦痛を伴い、すぐに元に戻ってしまう。呪いは、老いた女性にだけ二度目の青春を与えるが、真の愛で両方の姿を受け入れられる者と出会わなければ、二度と安らぎは得られないというものです」

菊の体が、びくりと震えた。番組の説明が、彼女の状況と完全に一致していた。夫を亡くしたあと、孤独が募り始めた頃から、体がおかしくなり始めたこと。ノゾムのことを強く思った瞬間に、激しい変身が起きること。昨日も、ノゾムと手が触れ合った瞬間に、元に戻り始めたこと。菊は息を呑んだ。心臓が、大きく鳴る。

ハルトはテレビを見て、くすくすと笑った。

「ありえないよね、こんなの。呪いとか、現代で本気にする人いるのかな。婆ちゃん、どう思う?」

ハルトは菊を見て、笑いながら聞いた。菊は慌てて笑顔を作った。でも、笑顔が硬い。唇が震えている。菊は自分の胸に手を当てた。心臓の鼓動が、止まらない。番組の説明が、頭の中で繰り返される。嫉妬からかけられた呪い。夫の死後、孤独が極限に達したとき目覚める。グロテスクな若返り。真の愛で両方の姿を受け入れられる者と出会わなければ……菊は「自分は呪われている」と、はっきりと気づいた。昨日も、ノゾムとの会話で心が温かくなった瞬間に、体が元に戻ろうとした。あれは、呪いの力だった。菊はそれを、ハルトに話そうとした。でも、声が出ない。喉が、締めつけられているような感覚。口を開けようとするが、言葉が喉に詰まる。

「ハルト……」

菊は小さく呟いた。でも、声は掠れて、ほとんど聞こえない。ハルトはテレビに夢中になっていて、気づいていない。菊はもう一度、助けを求めようとした。でも、声が出ない。体が、熱くなり始めている。胸の奥で、何かが疼く。菊はソファに深く沈み込むように体を縮めた。小さな体が、ソファのクッションに埋もれる。

ハルトは番組が終わると、 yawn をしながら立ち上がった。

「婆ちゃん、もう寝るね。明日も早いから。婆ちゃんも、早く休んで」

ハルトは菊の頭を軽く撫でて、リビングを出ていった。菊はソファに座ったまま、動けなかった。ハルトの足音が、寝室の方に消えていく。家の中が、再び静かになった。テレビの電源は切れていて、リビングは暗い。街灯の光が、窓から少し差し込んでいる。菊は自分の胸に手を当てた。心臓が、激しく鳴っている。番組の説明が、頭から離れない。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。菊は「助けて」と、もう一度言おうとした。でも、声が出ない。喉が、完全に塞がれているような感覚。

そのとき、左腕に、激しい熱が走った。

菊は息を呑んだ。左腕が、熱い。短い、しわだらけの左腕が、突然、激しく疼き始めた。菊は右の手で左腕を押さえた。でも、抑えきれない。左腕が、引き伸ばされていく。骨が軋む音が、リビングに響いた。ギリギリ……という、乾いた音が、大きくなる。左腕が、元の二倍どころか、三倍近くの長さにまで一気に伸びていく。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。肉が、爆発的に伸びていく。菊はソファに体を沈めながら、声を上げた。

「っ……あ……!」

痛みが、激しい。これまで以上の痛み。左腕が、異常に長く伸びたあと、ゆっくりと元のクリスの長さに戻っていく。でも、痛みは残っている。菊は左腕を、目の前に掲げてみた。長い、若い女性の腕。滑らかな皮膚。でも、さっきの変化は、明らかにこれまでより激しかった。菊は息を荒げた。

次に、右腕が同じように熱くなった。右腕も、激しく引き伸ばされていく。骨の軋む音が連続する。右腕も、三倍近くまで伸びてから、クリスの長さに落ち着く。菊は両腕を、ソファの背もたれに置いた。異常に長い腕が、ソファから はみ出している。痛みが、腕の奥に残っている。

「こんなの……いやだ……」

菊は小さく呟いた。でも、声はまだ掠れている。次に、左脚が熱くなった。左脚が、メキメキと激しく伸びていく。骨が、異常に引き伸ばされる音。肉が、爆発的に長くなる。左脚が、ソファから床に届かなくなるほど長く伸びてから、クリスの長さに戻る。痛みが、脚全体を貫く。菊はソファに体をよじった。右脚も、同じように激しく伸びていく。両脚が、ソファの上で長くなりすぎて、バランスを崩す。菊は長い脚を、ソファから下ろした。痛みが、まだ続いている。

背骨が、今度は熱くなった。背丈が、激しく伸びていく。脊椎が、一つずつ、異常に引き伸ばされる。骨の軋む音が、背中から大きく響く。菊の小さな体が、ソファの上で縦に引き延ばされていく。背丈が、200センチ近くまで伸びてから、クリスの170センチに落ち着く。痛みが、背骨の奥に残っている。菊はソファに深く沈み、息を荒げた。

顔が、熱くなった。しわが、激しく動く。皮膚が、引き伸ばされて若返っていく。白髪が、根元から黒く染まり、異常に長く伸びていく。顔の骨が、大きく動く音。菊は自分の顔を、両手で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。でも、変化はこれまでより激しかった。菊は鏡を見たくて、リビングの鏡台の方に視線を向けた。でも、動けない。

胸が、今度は激しく熱くなった。左の胸が、爆発的に膨らみ始める。肉が、異常に急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。左の胸が、これまで以上の巨大さにまで膨らんでから、クリスのサイズに落ち着く。痛みと、未知の感覚が混じり合う。菊は自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。服が、胸の部分で完全に裂けた。谷間が、深く強調される。菊は息を呑んだ。

尻と太ももも、同じように激しく変化した。肉が、爆発的に付き、異常に大きくふくらんでから、クリスのサイズに落ち着く。菊の体は、今や完全にクリスの姿になっていた。でも、変化の激しさは、これまでとは比べ物にならない。痛みが、体中を貫いている。骨の軋む音と肉の動く音が、リビングに満ちていた。

クリスはソファに座ったまま、息を荒げた。新しい体が、熱を帯びている。巨大な胸が、重くのしかかる。長い黒髪が、肩に落ちている。クリスは自分の体を、両手で触れた。滑らかで、若々しい。でも、さっきの激しい変化の余韻が、まだ残っている。菊としてテレビを見ていたときの恐怖。番組の説明。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。クリスは小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、妖艶で甘い。体が、若さで満ちている。でも、心の奥では、恐怖がまだ残っている。もう一度、元に戻ってしまうかもしれない。クリスはソファに深く沈み、長い腕で自分の体を抱きしめた。リビングは暗い。ハルトは寝室で寝ている。クリスは一人で、ソファに座ったまま、息を整えた。

クリスはソファに座ったまま、長い時間息を整えていた。リビングの暗がりの中で、自分の新しい体を両手で触れていた。巨大な胸の重み。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ体に残っている。痛みは少しずつ引いていくが、恐怖は消えなかった。テレビで見た番組の説明が頭から離れない。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。クリスは小さく呟いた。

「ノゾムさん……会いたい」

声が、妖艶で甘い。恐怖を抑えながら、クリスは立ち上がった。長い脚で、リビングを歩く。服は裂けていて、もう着られない。クリスはハルトの部屋から大きめの服をもう一度借り、着替えた。Tシャツは胸を締めつけ、谷間が強調される。パンツも太ももに張り付く。サイズが、少し合わない。胸の部分がきつくて、谷間が深く見える。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

クリスは家を出た。夜の町は静かで、街灯だけがオレンジ色の光を落としている。クリスは長い脚で、町の中心に向かった。デイト用の服を買おうと思った。ノゾムに会うなら、少しちゃんとした服が欲しい。近くの24時間営業の服屋に入り、ブラウスとスカートを選んだ。ブラウスは胸の部分が少しきつい。スカートも、太ももと尻にぴったりと張り付く。サイズが、完全に合わない。でも、クリスはそれを買った。鏡で自分の曲線を確認しながら、恐怖を胸の奥に押し込んだ。

ノゾムに連絡を取った。遅い時間だったが、ノゾムはすぐに返事をくれた。

「今からでも大丈夫だよ。どこかで会おう」

ノゾムの返事に、クリスは胸が温かくなった。遅い時間なのに、ノゾムは不安げな顔で待っていてくれた。クリスが少し不安そうな表情をしていると、ノゾムは優しく「大丈夫?」と声をかけてくれた。クリスは心が熱くなるのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムと一緒に、近くのカフェに入った。

店内は静かで、照明が柔らかい。クリスとノゾムは向かい合って座った。クリスはブラウスを意識的に胸を張って着ていた。谷間が強調される。ノゾムの視線が、時々、クリスの胸や太ももに落ちる。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。昨日と同じ視線。でも、今日はもっと近くにいる。

パスタを注文した。クリスはフォークを手に、ノゾムと話した。恐怖を抑えながら、クリスは少しだけ本音を漏らした。

「昨日、テレビで変な番組を見て……呪いみたいな話が出てきて。自分もそんな風に思えることがあって……」

クリスはぼかしながら言った。ノゾムは少し驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

「クリスさんがおばあちゃんでも、構わないよ。僕にとっては、クリスさんでいいから」

ノゾムの言葉に、クリスは息を呑んだ。心が、大きく鳴った。ノゾムは「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた。でも、普段のノゾムが菊(おばあちゃん)に対して接する態度を思い浮かべると、完全に信じられなかった。ノゾムは菊に対しては、ただ礼儀正しく、優しいが、少し距離を置いているように見えた。クリスはそれを、胸の奥で感じていた。でも、ノゾムの優しい声と視線に、クリスは心が溶けていくのを感じた。幸せな時間が、流れていく。

パスタを食べながら、二人は心の内を少しずつ語り合った。ノゾムは大学のことや、将来の夢を話した。クリスは聞きながら、ノゾムの優しさに包まれているのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに微笑みかけた。ブラウスの中の胸が、ノゾムの視線を捉えている。クリスはそれを意識的に強調した。ノゾムの目が、時々熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。嬉しい。でも、どこかで疑いも残る。ノゾムが本気で「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言っているのか。菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。でも、今この瞬間は、幸せだった。

食事が終わると、二人はカフェを出た。夜の町を、並んで歩く。クリスはノゾムの隣で、長い脚をゆっくりと動かした。ブラウスが胸を強調している。ノゾムの視線が、またクリスの胸に落ちる。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに近づいた。幸せな時間が、続いている。

そのときだった。

視力が、突然、低下し始めた。

クリスの視界が、ぼやけていく。遠くの街灯が、二重に見える。ノゾムの顔が、ぼんやりとしか見えない。クリスは目をこすった。でも、視力はどんどん悪くなっていく。左目が、まずぼやける。右目も、同じように視界が霞んでいく。クリスは息を呑んだ。元に戻る予兆だ。昨日と同じように、体が菊に戻ろうとしている。クリスは「戻りたくない」と心の中で強く思った。でも、視力は止まらない。

カフェから少し離れた裏路地に入ったとき、クリスは足を踏み外した。視界がぼやけていて、地面の段差が見えなかった。長い脚が絡まり、クリスは転んでしまった。ブラウスがめくれ上がり、胸の谷間が露わになる。クリスは慌てて服を直そうとしたが、間に合わなかった。

「大丈夫ですか!?」

ノゾムが慌てて駆け寄ってきた。でも、クリスはすでに体が熱くなり始めていた。視力が、さらに悪くなっていく。ノゾムが手を差し伸べてくれたが、クリスは「大丈夫です……ちょっと休みたい」と言い、ノゾムを振り切って裏路地の奥に逃げ込んだ。狭い路地で、クリスは壁に寄りかかった。視界が、ほとんど見えないほどぼやけている。

その瞬間、左腕が縮み始めた。

左腕が、ゆっくりと短くなり、皮膚がしわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは「戻りたくない」と強く思った。すると、左腕が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭い路地で、腕を壁にぶつけた。痛みと、変化の感覚が混じり合う。

脚も、縮み始めた。左脚が短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという音。クリスはバランスを崩し、路地の壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い路地で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。顔が、熱くなった。しわが現れ始める。黒い髪が、白く染まっていく。クリスは路地の壁に手をついて、体を支えた。抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らみ、顔が若返る。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスは狭い路地で、体を震わせた。

視力が、完全に悪くなっていく。ノゾムの顔が、もう見えない。クリスは「ノゾムさん……」と呟いた。でも、声は老いたうめき声になっている。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、完全に萎む。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭い裏路地で、菊はへたり込むように地面に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、また胸の奥に広がり始めていた。

第七章 夢のような記憶と、玄関先の視線

翌日の朝、菊はリビングのソファで目を開けた。昨夜の裏路地での変身の余韻が、まだ体に残っている。骨の奥が疼き、肉が萎んだ感覚が薄っすらと続いている。菊は小さな体を起こそうとしたが、頭がぼんやりしていた。昨日の出来事が、夢のようにぼやけている。ノゾムとカフェで話したこと。手が触れ合った感覚。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言われた言葉。そして、視力が悪くなり、裏路地で転んで、体が元に戻っていったこと。すべてが、はっきりしない。まるで長い夢を見ていたような感じだった。

菊は自分の胸に手を当てた。しわだらけの小さな胸。昨日、クリスとして巨大でムチムチとした胸だった記憶が、遠いもののように感じられる。菊は小さく息を吐いた。ストレスが、ボケを進行させているのかもしれない。昨日、ノゾムとの幸せな時間と、元に戻ってしまった恐怖が、重なり合って頭を混乱させている。

「ハルト……」

菊は小さく呟いた。ハルトの顔が、一瞬、思い出せなかった。孫の名前が、喉の奥で詰まる。菊は慌てて目を閉じ、深呼吸をした。数秒後、ようやくハルトの顔が浮かんだ。22歳の優しい孫。菊は自分の頭を軽く叩いた。ボケが、確実に進んでいる。呪いにかかったストレスが、それを加速させている。菊はソファに深く沈み、視界をぼんやりとさせた。

ハルトが大学から帰ってきたのは、午後だった。菊は台所で簡単な昼食を用意しようとしていたが、手が少し震えていた。ハルトは菊の様子を見て、すぐに心配そうな顔をした。

「婆ちゃん、大丈夫? なんか、ぼーっとしてるみたいだけど……」

ハルトは菊の肩に手を置いた。菊は慌てて笑顔を作った。

「大丈夫だよ。少し、疲れてるだけ」

でも、声が掠れていて、説得力がない。ハルトは菊をソファに座らせ、自分はスマホを取り出した。

「ちょっとノゾムに相談してみるよ。婆ちゃんの様子が変だから」

ハルトはノゾムに電話をかけた。菊はソファに座ったまま、ぼんやりとテレビを見ていた。画面の映像が、はっきり見えない。昨日、視力が悪くなった記憶が、薄っすらと蘇る。菊は自分の目をこすった。クリスとしてノゾムと話したときの記憶が、夢のように遠い。巨大な胸の重みや、ノゾムの優しい視線が、まるで別の人の記憶のように感じられる。

ハルトは電話でノゾムと話したあと、玄関先に出て行った。ノゾムが心配して来てくれたらしい。菊はソファに座ったまま、二人の声が玄関で聞こえるのをぼんやりと聞いていた。ハルトがノゾムに菊の様子を相談している。ノゾムが「心配だね」と優しく答えている。菊は自分の胸に手を当てた。ノゾムが来てくれているのに、菊としてしか接することができない寂しさが、胸に広がる。

そのとき、リビングのソファで、菊の体に熱が走った。

左の腹が、突然、異常に膨らみ始めた。菊は息を呑んだ。腹が、風船のように大きくふくらんでいく。皮下に何かが急速に溜まっていくような感覚。菊は自分の腹を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。腹が、異常に大きく膨らんだあと、今度は急激に凹んでいく。ミチミチという、湿った音が、リビングに響いた。腹が、風船がしぼむようにへこんでいく。菊は体をよじった。痛みと、未知の圧迫感が腹を貫く。

「っ……なに……これ……」

菊は小さく呟いた。でも、声はまだ老いたまま。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊はソファに体を沈め、腹を抱きしめた。腹の変化が止まらない。膨らみ、凹み、膨らみ、凹み……。菊は息を荒げた。

次に、左腕が熱くなった。左腕が、激しく引き伸ばされていく。骨が軋む音が、リビングに大きく響く。左腕が、これまで以上に異常に長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。菊は左腕を、目の前に掲げてみた。長い、若い女性の腕。でも、さっきの腹の変化が、まだ余韻として残っている。菊は息を呑んだ。

右腕も、同じように激しく伸びていく。骨の軋む音が連続する。右腕も、異常に長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。菊は両腕を、ソファの背もたれに置いた。腹が、また膨らみ始めた。ミチミチという音。腹が、異常に大きくふくらんでから、急激に凹む。菊は体を震わせた。

左脚が、今度は熱くなった。左脚が、メキメキと激しく伸びていく。骨が、異常に引き伸ばされる音。左脚が、ソファから床に届かなくなるほど長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。痛みが、脚全体を貫く。菊は長い脚を、ソファから下ろした。腹が、また膨らむ。菊は腹を押さえながら、脚の変化を見つめた。

右脚も、同じように激しく伸びていく。背骨が、今度は熱くなった。背丈が、激しく伸びていく。脊椎が、一つずつ、異常に引き伸ばされる。骨の軋む音が、背中から大きく響く。菊の小さな体が、ソファの上で縦に引き延ばされていく。背丈が、200センチ近くまで伸びてから、クリスの170センチに落ち着く。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊は体をよじった。

顔が、熱くなった。しわが、激しく動く。皮膚が、引き伸ばされて若返っていく。白髪が、根元から黒く染まり、異常に長く伸びていく。顔の骨が、大きく動く音。菊は自分の顔を、両手で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。腹が、また異常に膨らむ。菊は息を呑んだ。

胸が、今度は激しく熱くなった。左の胸が、爆発的に膨らみ始める。肉が、異常に急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。左の胸が、これまで以上の巨大さにまで膨らんでから、クリスのサイズに落ち着く。痛みと、未知の感覚が混じり合う。菊は自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。服が、胸の部分で完全に裂けた。谷間が、深く強調される。腹が、また膨らむ。菊は体を震わせた。

尻と太ももも、同じように激しく変化した。肉が、爆発的に付き、異常に大きくふくらんでから、クリスのサイズに落ち着く。菊の体は、今や完全にクリスの姿になっていた。意識が、はっきりとしてきた。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいる。クリスはソファに座ったまま、息を荒げた。

服が、ボロボロになっていることに気づいた。Tシャツは胸の部分で完全に裂け、ほとんどボロ布のようになっている。パンツも、太ももと尻の部分で破れている。クリスは自分の体を、両手で触れた。巨大な胸。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。クリスは小さく呟いた。

「クリス……」

声が、妖艶で甘い。意識がはっきりしている。昨日、ノゾムとカフェで話した記憶が、夢のようにぼやけていたのが、今は鮮明に蘇る。ノゾムの優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。クリスはソファから立ち上がった。長い脚で、部屋を歩く。服がボロボロなので、昨日の服をもう一度着なおした。ブラウスとスカート。サイズが、少し合わない。胸の部分がきつい。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

クリスは玄関に向かった。ハルトとノゾムが、玄関先でまだ話している。クリスは玄関のドアを開け、外に出た。ノゾムが、クリスを見て目を丸くした。

「クリスさん……? なぜ、菊のおばあちゃんの家から……?」

ノゾムの声が、驚きに満ちている。クリスは慌てて笑顔を作った。

「えっと……私は、菊のおばあちゃんの親戚で……ちょっと、用事があって来てたんです。昨日もお会いしましたよね」

クリスは必死に言い訳をした。ノゾムは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

「そうなんですね。昨日は本当に楽しかったです。また、話しましょう」

ノゾムはクリスに優しく声をかけた。ハルトも「婆ちゃんの知り合いだったんだ」と納得した様子だった。クリスは心臓が大きく鳴るのを感じた。ノゾムが自分を「クリス」として認識してくれている。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、どこかで疑いも残る。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに微笑みかけた。

二人は玄関先で、少し話した。ノゾムはクリスのことを気遣いながら、優しく話してくれた。クリスはノゾムの視線が、時々、自分の胸や太ももに落ちるのを感じた。クリスは意識的に、ブラウスを胸を張って着ていた。谷間が強調される。ノゾムの目が、熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。嬉しい。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。でも、今この瞬間は、ノゾムの優しい声に包まれている。寂寥感が、少しずつ溶けていく。

会話が続く。ノゾムはクリスのことを少し不思議がった。

「クリスさん、なんか……菊のおばあちゃんに似てる気がするんですけど……気のせいかな」

ノゾムはそう言った。クリスは心臓が止まるかと思った。でも、ノゾムは深くは追及しなかった。ただ、優しく微笑んだ。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに微笑みかけた。ハルトも「婆ちゃんの親戚だから、似てるのかもしれない」と軽く流した。クリスはほっとした。でも、心の奥では、ノゾムが自分の正体に気づきかけているのを感じていた。

やがて、ノゾムが「また電話するね」と言い、帰っていった。ハルトも大学の準備で部屋に戻った。クリスは一人になった。玄関先で、ノゾムの優しい声がまだ耳に残っている。幸せな時間が、流れていた。でも、恐怖が、胸の底に沈んでいる。

そのとき、視界が、ぼやけ始めた。

クリスの視力が、突然、低下し始めた。遠くの街灯が、二重に見える。ノゾムの顔が、ぼんやりとしか見えない。クリスは目をこすった。でも、視力はどんどん悪くなっていく。左目が、まずぼやける。右目も、同じように視界が霞んでいく。クリスは息を呑んだ。元に戻る予兆だ。クリスは「戻りたくない」と心の中で強く思った。でも、視力は止まらない。

クリスは家の中に戻り、狭い廊下で体を支えた。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは「戻りたくない」と強く思った。すると、顔が一時的に若返る。でも、すぐにまた老いる。クリスは壁に手をついて、体を支えた。

左腕が、縮み始めた。長い、滑らかな左腕が、短く、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、左腕が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭い廊下で、腕を壁にぶつけた。

脚も、縮み始めた。左脚が短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという音。クリスはバランスを崩し、廊下の壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「戻りたくない」と念じると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い廊下で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、老いたうめき声になっている。腹が、膨らんだり凹んだりし始める。ミチミチという音。腹が、異常に大きくふくらんでから、急激に凹む。クリスは体を震わせた。抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。顔が若返り、腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らむ。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスは狭い廊下で、体を支えた。

視力が、完全に悪くなっていく。ノゾムの顔が、もう見えない。クリスは「ノゾムさん……」と呟いた。でも、声は老いたうめき声になっている。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、完全に萎む。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭い廊下で、菊はへたり込むように床に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、また胸の奥に広がり始めていた。


第八章 廊下の崩れと、後ろからの抱きつき

廊下の床にへたり込んだ菊は、視界がぼやけたまま動けなかった。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が大きすぎて体に余る。昨日、ノゾムとカフェで話した記憶が、夢のように遠い。でも、心の奥ではノゾムへの想いが、熱を帯びて疼いている。呪いの頻度が、確実に増している。昨日も、今日も、体がおかしくなる。菊は自分の胸に手を当てた。ほとんど平らな小さな胸。昨日、クリスとして巨大でムチムチとした胸だった感覚が、薄っすらと蘇る。菊は小さく息を吐いた。

そのとき、左の胸が熱くなった。

ブカブカになった服の中で、左の胸が、突然、爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされる音が、服の下で響いた。左の胸が、服の緩い布地を満たすように、巨大に膨らんでいく。菊は息を呑んだ。服は破れず、布地が伸びて胸の形を包み込む。左の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。菊は体を支えきれず、前に倒れ込んだ。胸を床に押しつけたまま、バランスを崩す。

「っ……あ……!」

右の胸が、今度は同じように爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。右の胸が、左の胸を追い越すように膨らんでいく。服が、胸の部分で伸びきる。菊は床に胸をつけたまま、体を震わせた。両方の胸が、クリスのサイズに落ち着いた。服は破れず、布地がぴったりと胸の形を包み込んでいる。菊は床に倒れたまま、息を荒げた。

次に、右脚がムチムチと伸び始めた。肉が、急速に付き、太く長くなっていく。骨が、引き伸ばされる音。右脚が、床に届くようになり、ムチムチとした太ももとふくらはぎが成長していく。菊は胸を床に押しつけたまま、右脚が伸びるのを感じた。痛みと、未知の感覚が混じり合う。右脚が、クリスの長さに落ち着いたあと、今度は左脚が同じようにムチムチと伸びていく。両脚が、ムチムチと厚みを増し、長くなっていく。菊は床に倒れたまま、体を支えようとした。

左腕が、今度は熱くなった。左腕が、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨が伸びる音。肉が、滑らかに成長していく。左腕が、クリスの長さに落ち着いたあと、右腕も同じように伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になっていく。菊は床に胸を押しつけたまま、両腕を伸ばしてみた。服の袖が、伸びて腕を包み込んでいる。服は破れず、布地が体にぴったりとフィットしていく。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が、引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まり、長く伸びていく。顔の骨が、ゆっくりと動く音。菊は自分の顔を、床に押しつけた胸の間から触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。背丈が、今度は伸び始めた。脊椎が、ゆっくりと引き伸ばされる。菊の小さな体が、床から浮き上がるように長くなっていく。背丈が、クリスの170センチに落ち着く。服が、全体的に伸びて新しい体にフィットしている。破れていない。菊は床に倒れたまま、息を荒げた。

変身が完了した。クリスは床に胸を押しつけたまま、ゆっくりと体を起こした。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。服はブカブカだったものが、ぴったりと新しい体にフィットしている。クリスは自分の体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。でも、意識がはっきりしている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。呪いの頻度が増している。もう、抑えきれない。

クリスは立ち上がった。長い脚で、廊下を歩く。服が、体にぴったりと張り付いている。胸の谷間が、深く強調される。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

玄関の方から、ノゾムの声が聞こえた。ノゾムはハルトと話したあと、帰ろうとしているらしい。クリスは長い脚で、玄関に向かった。ノゾムが靴を履き、玄関のドアを開けようとしている。クリスは後ろから、ノゾムに抱きついた。巨大な胸が、ノゾムの背中に押しつけられる。クリスはノゾムの体に、自分の体を密着させた。

「ノゾムさん……」

クリスの声が、妖艶で甘い。ノゾムはびっくりして体を硬直させた。

「クリスさん……? どうしたんですか……?」

ノゾムは困惑した声で言った。クリスはノゾムの背中に顔を埋めたまま、愛の告白をしようとした。でも、菊の記憶が、突然、よぎった。88歳の老婆として、ノゾムに接していたときの記憶。ノゾムが菊に対して礼儀正しく、でも少し距離を置いていた態度。クリスは言葉を飲み込んだ。告白しようとした口が、塞がる。

「ノゾムさん……私は……」

クリスはノゾムの背中に抱きついたまま、涙がにじむのを感じた。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスはノゾムを振り向かせようとした。ノゾムがゆっくりと振り返る。クリスはノゾムの顔を見て、ほとんどキスしかけるほど顔を近づけた。唇が、触れそうになる。

その瞬間、クリスの顔が、一瞬、菊の老婆の顔になった。

ノゾムは後ずさった。目を見開いて、クリスから離れる。

「っ……! なに……?」

ノゾムの声が、驚きと混乱に満ちている。クリスは自分の顔を、両手で触れた。まだクリスの顔に戻っている。でも、さっきの一瞬の変化が、ノゾムに衝撃を与えた。クリスは泣きながら、ノゾムから離れた。涙が、頰を伝う。ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスは泣きながら、玄関から飛び出し、家の裏庭に逃げ込んだ。

裏庭は、夜の闇に包まれていた。花壇が少し荒れている。クリスは長い脚で、庭の奥に走った。涙が止まらない。ノゾムへの想いが、熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。クリスは庭の木陰にしゃがみ込んだ。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。クリスは自分の体を、両手で抱きしめた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。クリスは「老いたくない」とは思わなかった。ただ、ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。涙が、止まらない。クリスは庭の地面に座り込んだ。体が、熱くなり始めた。視界が、ぼやけていく。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは抵抗することなく、体を任せた。

左腕が、ゆっくりと短くなり、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。左腕が、元の短い老婆の腕に戻っていく。右腕も、同じように縮む。両腕が、短く小さくなっていく。脚も、短くなり、老いた脚になっていく。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、巨大なものから、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、抵抗することなく、菊に戻っていった。

裏庭の地面に座った菊は、82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、胸の奥に広がり始めていた。ノゾムへの想いが、熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は裏庭に座ったまま、長い時間、動けなかった。


第九章 夢の終わりと、布団の中の鼓動

裏庭から家に戻った菊は、視界がぼやけたまま小さな体を支えていた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が大きすぎて体に余る。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。でも、昨日と今日の出来事が、夢のように遠い。菊はリビングに入り、ソファに座ろうとしたが、足がふらついた。ハルトの顔が、一瞬、完全に思い出せなくなっていた。孫の名前はわかるのに、顔の輪郭がぼんやりとして、はっきりしない。菊は自分の頭を軽く叩いた。ボケが、急速に進んでいることを、うっすらと感じた。呪いにかかったストレスが、それを加速させている。菊は小さく息を吐いた。

「ハルト……」

名前は出た。でも、顔が思い出せない。菊はソファに深く沈み、視界をぼんやりとさせた。ノゾムが菊の家に戻ってきたのは、その直後だった。ノゾムはハルトと話したあと、菊の様子が心配で再び戻ってきたらしい。玄関のドアが開く音がして、ノゾムの声が聞こえた。

「おばあちゃん、大丈夫ですか? さっきのクリスさんのこと……気になります」

ノゾムの優しい声が、リビングに響いた。菊は一瞬、ノゾムの顔も思い出せなかった。でも、ノゾムが菊の様子を心配してかける言葉に、胸が張り裂けそうになった。ノゾムは菊に対して、いつも礼儀正しく、優しい。でも、少し距離を置いているように感じる。その優しさが、今、菊の心を痛めつける。菊はソファに座ったまま、ノゾムに笑顔を作ろうとした。でも、顔が硬い。

「大丈夫だよ……少し、疲れてるだけ」

声が、掠れている。ノゾムは菊の小さな体を見て、心配そうな顔をした。ハルトも「婆ちゃん、今日は早めに休んだ方がいいよ」と言い、菊を布団のある部屋に連れて行った。菊は布団に横になった。パジャマを着て、布団に包まれる。体が重い。ボケが進行している感覚が、頭の奥で疼く。ノゾムへの想いが、胸を熱くする。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は布団の中で、目を閉じた。

そのとき、布団の中で、菊の体に熱が走った。

左の腹が、突然、異常に膨らみ始めた。布団の中で、腹が風船のように大きくふくらんでいく。ミチミチという、湿った音が、布団の中で響いた。菊は息を呑んだ。腹が、異常に大きく膨らんだあと、今度は急激に凹んでいく。布団の中で、体がよじれる。痛みと、圧迫感が腹を貫く。菊は布団の中で、腹を抱きしめた。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊は声を抑えようとした。でも、声が漏れそうになる。

パジャマが、胸の部分で伸び始めた。左の胸が、爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされる音。左の胸が、パジャマの布地を満たすように巨大に膨らんでいく。パジャマは破れず、布地が伸びて胸の形を包み込む。でも、布地が限界まで伸びきっている。左の胸が、クリスのサイズに落ち着いたあと、今度は右の胸が同じように爆発的に大きくなり始めた。右の胸が、左の胸を追い越すように膨らんでいく。パジャマが、胸の部分で限界まで伸びる。菊は布団の中で、体を震わせた。

「っ……ん……」

声が、漏れそうになる。菊は口を押さえた。ノゾムがまだ家にいる。声を出せない。左脚が、今度はムチムチと伸び始めた。肉が、急速に付き、太く長くなっていく。骨が、引き伸ばされる音。左脚が、布団の中で長くなり、ムチムチとした太ももとふくらが成長していく。パジャマのパンツ部分が、伸びきる。左脚が、クリスの長さに落ち着いたあと、今度は右脚が同じようにムチムチと伸びていく。両脚が、ムチムチと厚みを増し、長くなっていく。パジャマが、下半身で限界まで伸びる。菊は布団の中で、脚を伸ばした。

左腕が、熱くなった。左腕が、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨が伸びる音。肉が、滑らかに成長していく。左腕が、クリスの長さに落ち着いたあと、右腕も同じように伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になっていく。パジャマの袖が、伸びきる。菊は布団の中で、両腕を伸ばしてみた。パジャマが、体全体で限界まで伸びている。布地が、薄く張りつめている。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が、引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まり、長く伸びていく。顔の骨が、ゆっくりと動く音。菊は自分の顔を、布団の中で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。背丈が、今度は伸び始めた。脊椎が、ゆっくりと引き伸ばされる。菊の小さな体が、布団の中で縦に引き延ばされていく。背丈が、クリスの170センチに落ち着く。パジャマが、全体的に伸びきっている。布地が、薄く張りつめ、限界を迎えている。

変身が完了した。クリスは布団の中で、息を荒げた。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。パジャマはボロボロになっている。布地が、胸や脚の部分で限界まで伸びきり、ところどころ薄く破れかけている。クリスは布団の中で、自分の体を両手で触れた。柔らかい。熱い。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。でも、意識がはっきりしている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。ノゾムはまだ家にいる。クリスは布団からゆっくりと出た。ボロボロのパジャマを着たまま、部屋を出た。

家の中は静かだった。ノゾムがハルトと話している声が、リビングから聞こえる。クリスは長い脚で、リビングに向かった。正体を告白しようと思った。ノゾムに「私は菊です」と言う。恐怖で胸が張り裂きそうになる。でも、ノゾムへの想いが、それを上回っていた。クリスはリビングの入り口で、ノゾムを見た。ノゾムはハルトと話している。クリスは一歩踏み出そうとした。でも、恐怖が、足を止めた。ノゾムが自分を「クリス」として見てくれている。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。クリスは恐怖で押し入れの中に身を隠した。狭い押し入れの中で、息を荒げた。

押し入れの中で、クリスは自分の体を抱きしめた。巨大な胸が、重くのしかかる。恐怖が、胸を締めつけている。ノゾムに告白したい。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスは押し入れの中で、目を閉じた。そのとき、視界がぼやけ始めた。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは「戻りたくない」と心の中で思った。でも、恐怖が、それを上回っていた。体が、菊に戻り始めている。

左腕が、ゆっくりと短くなり、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。左腕が、元の短い老婆の腕に戻っていく。右腕も、同じように縮む。両腕が、短く小さくなっていく。脚も、短くなり、老いた脚になっていく。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、巨大なものから、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、恐怖で抵抗することができず、菊に戻っていった。

狭い押し入れの中で、菊はへたり込むように座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。パジャマが、ボロボロになっている。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。心配してかけてくれた言葉。胸が張り裂けそうになる。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は押し入れの中で、長い時間、動けなかった。ボケが、急速に進んでいる。ハルトの顔も、ノゾムの顔も、はっきり思い出せない。でも、ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、胸を満たしている。


第十章 告白と、最後の変身

菊は押し入れから這い出たとき、自分の体があまりに小さく感じられた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。パジャマはボロボロのまま、床に落ちている。菊は床に座ったまま、視界をぼんやりとさせた。ボケが、急速に進んでいる。昨日まで鮮明だったクリスとしての記憶が、薄い霧のようにぼやけ始めている。巨大な胸の重みや、ノゾムと手が触れ合った感覚が、夢のように遠い。菊は自分の胸に手を当てた。ほとんど平らな小さな胸。クリスだったときの感覚が、はっきりと思い出せない。

「クリス……だった、はず……」

名前は出た。でも、顔や体が、ぼんやりとして思い出せない。菊は自分の頭を軽く叩いた。ハルトの顔も、ノゾムの顔も、はっきりしない。ただ、ノゾムへの想いだけが、胸の奥で熱く疼いている。呪いにかかったストレスが、ボケを加速させている。菊は小さく息を吐いた。何もかも忘れてしまう前に、ノゾムに会わなければ。クリスは自分だということを、告白しなければ。

菊はボロボロのパジャマを脱ぎ、古い服を着なおした。服が、体に余る。菊は小さな体で、リビングに向かった。ノゾムはまだ家にいる。ハルトと話している声が聞こえる。菊はリビングの入り口で、ノゾムを見た。ノゾムはハルトとソファに座り、菊の様子を心配そうに話している。菊は一瞬、ノゾムの顔も思い出せなかった。でも、ノゾムが菊の異変を心配してかけてくれる言葉に、胸が張り裂けそうになった。

菊はリビングに入り、ノゾムの前に立った。小さな体で、ノゾムを見上げた。ノゾムは菊を見て、優しく微笑んだ。

「おばあちゃん、どうしましたか?」

菊は息を呑んだ。ノゾムへの想いが、胸を熱くする。でも、ボケが進行していて、言葉がうまく出ない。菊は自分の胸に手を当て、必死に声を出した。

「ノゾムさん……私……クリスは、私です」

声が、掠れている。ノゾムは目を丸くした。ハルトも、びっくりした顔をした。

「婆ちゃん……何を言ってるの?」

ハルトは信じようとしない。菊はハルトを見て、必死に続けた。

「クリスは、私が変身した姿です。呪いで……若返るんです。ノゾムさんと話したときも、私だったんです」

ハルトは首を振った。

「婆ちゃん、疲れてるんだよ。無理に考えないで。休んだ方がいい」

ハルトは菊をソファに座らせようとした。でも、菊はノゾムを見て、涙がにじむのを感じた。ノゾムは菊の小さな体を、じっと見つめていた。優しい目が、菊の顔を丁寧に見ている。ノゾムはゆっくりと立ち上がり、菊の前に膝をついた。大きな体で、菊と同じ目線の高さになった。

「おばあちゃんが言うなら、本当だよ」

ノゾムの声が、静かで優しい。菊は息を呑んだ。ノゾムは菊の言葉を、信じてくれた。ハルトはまだ信じようとしない顔だったが、ノゾムは菊の小さな手を、優しく握った。

「クリスさんが、おばあちゃんだったんですね……。でも、僕にとっては、どっちでもいい。菊さんでいいから」

ノゾムの言葉に、菊の胸が熱くなった。涙が、頰を伝う。ノゾムは菊の言葉を、疑わずに受け入れてくれた。菊はノゾムの大きな手に、自分の小さな手を重ねた。ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。でも、その瞬間、体が熱くなり始めた。

全身に、激痛が走った。

菊は体を震わせた。全身の筋肉が、けいれんし始めた。左腕が、勝手にびくびくと動く。右腕も、同じようにけいれんする。脚も、勝手に痙攣する。菊はソファに深く沈み、息を荒げた。体が、熱い。まるで内側から何かが燃えているような感覚。ノゾムは慌てて菊の肩を支えた。

「大丈夫だ……大丈夫だよ」

ノゾムの声が、優しい。菊はノゾムの腕にしがみついた。全身の筋肉が、激しくけいれんする。痛みが、体を貫く。菊は声を上げそうになった。でも、ノゾムが菊の服を、優しく脱がせ始めた。古い服が、菊の小さな体から剥がれ落ちる。ノゾムは菊の全身の肌を、じっと見つめた。

菊の皮膚が、波打っている。

全身の肌が、ゆっくりと波打っている。まるで、水面に風が吹いているように、皮膚がうねり、動いている。菊は自分の腕を、震える手で触れた。皮膚が、勝手に波打っている。痛みが、激しい。全身の筋肉が、けいれんしながら、皮膚が波打つ。ノゾムは菊の小さな体を、優しく抱きしめた。

「大丈夫だ……僕はここにいる」

ノゾムの声が、菊の耳に優しく響いた。菊はノゾムの胸に顔を埋めた。全身が熱い。筋肉がけいれんする。皮膚が波打つ。痛みが、体を貫く。でも、ノゾムの温かさが、菊を包んでいる。菊は小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。体が、熱くなり続けている。全身の筋肉が、激しくけいれんする。皮膚が、波打つ。菊はノゾムの腕にしがみついたまま、息を荒げた。変身が、始まろうとしている。菊はノゾムの優しい声に、耳を傾けた。痛みが、激しい。でも、ノゾムが「大丈夫だ」と言ってくれている。菊は小さく息を吐いた。

体が、熱くなり続けている。全身の筋肉が、けいれんする。皮膚が、波打つ。菊はノゾムの胸に顔を埋めたまま、痛みに耐えた。ノゾムは菊の小さな体を、優しく抱きしめ続けている。菊はノゾムの温かさを感じながら、激しい痛みとけいれんに耐えた。

全身の筋肉が激しくけいれんし、皮膚が波打つ中、菊はノゾムの腕にしがみついたまま、息を荒げていた。体が熱い。痛みが、全身を貫く。ノゾムは菊の小さな体を優しく抱きしめ続け、「大丈夫だ」と繰り返していた。ハルトはリビングの隅で、固唾を飲んで見守っている。

そのとき、菊の喉から、抑えきれない悲鳴が漏れた。

「っあああああっ……!」

悲鳴が上がった瞬間、菊の全身が、爆発的に一瞬で変化した。体が、異常に豊満で若い女性の姿に膨れ上がる。胸が、異常に巨大に膨らみ、尻と太ももがムチムチと異常に厚みを増し、腕と脚が長く滑らかになる。肌が、ぴんと張り、黒い長い髪が一瞬で伸びる。体が、クリスよりもさらに豊満で妖艶な姿に、一瞬で変わった。骨が軋む音が、ギリギリ……と大きく響く。肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。

ハルトは腰を抜かして床に座り込んだ。

「ば、婆ちゃん……!?」

ノゾムも一瞬驚いて手を離しかけたが、すぐに菊のそばに戻り、彼女の小さな体を支え続けた。悲鳴が上がってから、ほんの一瞬で体が豊満な若い女性になり、そして間髪置かずに、元の小さな老婆の体に戻った。骨が縮む音が、ギリギリ……と響く。肉が萎む音が、ミチミチ……と聞こえる。菊は体を震わせ、ノゾムの腕にしがみついた。

「痛い……痛い……」

菊は小さく呟いた。全身が痛い。骨と肉が、激しく動いた余韻が残っている。ノゾムは菊の小さな手を握り、「大丈夫だ」と繰り返した。ハルトは床に座ったまま、目を丸くしている。

次に、左胸が爆発的に膨らみ始めた。布団の中で脱がされた菊の体が、ソファに横たわったまま、左の胸が異常に大きくふくらんでいく。肉が急速に充填される音が、ミチミチ……と響く。左の胸が、異常に巨大になり、右の胸も同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、すぐに元の小さな胸に戻っていく。骨が軋む音と肉が動く音が、ずっと続いている。

菊がうめき声を上げると、今度は両脚がムチムチと豊満なものに変わり始めた。肉が急速に付き、太ももとふくらが異常に厚く長くなっていく。尻が、爆発的に膨らむ。菊の小さな体が、跳ねるように浮き上がる。骨が軋む音が、ギリギリ……と続き、肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。両脚と尻が異常に豊満になったあと、すぐに元の小さな体に戻る。菊は体をよじりながら、ノゾムに懇願した。

「ノゾムさん……見ていて……お願い……」

ノゾムは菊の小さな手を強く握り、うなずいた。

「見てる……ずっと見てるよ」

ノゾムの声が、優しく響いた。菊は少し安心したような顔をしたが、すぐに痛みに顔を歪めた。

次に、左腕がグキグキと異常に伸び始めた。骨が、3倍近くの長さに引き伸ばされる音が、グキグキ……と大きく響く。肉が、異常に長く伸びていく。左腕が、クリスの長さを超えて異常に長くなったあと、ゆっくりとクリスの長さに落ち着く。右腕も、同じようにグキグキと伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になったあと、再度胸が爆発的に膨らみ始める。左の胸が異常に大きくふくらみ、縮みかけたあと、また爆発的に膨らむ。肉が動く音が、ミチミチ……と続き、骨が軋む音が、ギリギリ……と響く。

顔が、グニグニと激しく動き始めた。皮膚が、老いたり若返ったりを繰り返す。しわが現れたり消えたりする。白髪が、黒く染まったり白く戻ったりする。顔の骨が、グニグニと動く音が聞こえる。声も、菊の老いたうめき声とクリスの妖艶な声の間を行き来する。

「痛い……っ……あ……ん……」

声が交互に変わる。足も背中も、ゆっくりと伸びていく。全体的に、クリスの姿に近づいていく。骨が軋む音と肉が動く音が、ずっと続いている。菊はノゾムの手にしがみついたまま、体を震わせた。痛みが激しい。でも、ノゾムがそばにいてくれる。菊は少しずつ、クリスに近づいていくのを感じた。

落ち着きかけたと思った瞬間、今度は全体が菊に戻り始めた。背丈が縮み、胸が萎み、腕と脚が短くなり、顔にしわが戻る。骨が縮む音が、ギリギリ……と続き、肉が萎む音が、ミチミチ……と聞こえる。菊は体をよじりながら、呟いた。

「呪いが激しい……もう耐えられない……」

声が、老いたうめき声になっている。菊はノゾムにすがりついた。痛みが、激しい。体が、菊とクリスの間を行き来し始めている。胸が、また爆発的に膨らみ始めたのをきっかけに、今度は全身がクリスに近づき始めた。全身が、菊とクリスの状態を激しく行き来し始める。骨が軋む音と肉が動く音が、止まらなくなるかと思った。

そのとき、ノゾムが菊(クリス)の唇に、優しくキスをした。

ノゾムの温かい唇が、菊の唇に触れた瞬間、全身が爆発的に膨らんだ。体が、一瞬で異常に豊満で若い女性の姿に変わる。胸が、異常に巨大に膨らみ、尻と太ももがムチムチと異常に厚みを増し、腕と脚が長く滑らかになる。骨が軋む音が、ギリギリ……と大きく響き、肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。体が、少しの間、その豊満な姿のまま止まったあと、ゆっくりとクリスの体に落ち着いていった。

全身が、激しく動いた余韻で震えている。骨が軋む音と肉が動く音が、ようやく静かになった。クリスはノゾムの腕の中で、息を荒げた。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。体が、クリスとして安定している。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいる。

クリスはノゾムの胸に顔を埋め、感謝の涙を流した。

「ありがとう……ノゾムさん……」

声が、妖艶で甘い。涙が、頰を伝う。ノゾムはクリスの体を優しく抱きしめ、静かに言った。

「どっちの君も、君だよ」

ハルトは床に座ったまま、目を丸くしたまま固まっていた。リビングは静かになった。骨が軋む音も、肉が動く音も、もう聞こえない。クリスはノゾムの腕の中で、ゆっくりと息を整えた。体が、若さで満ちている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。呪いは、ノゾムの愛で溶かされた。クリスはノゾムの胸に顔を埋めたまま、静かに涙を流し続けた。

変身が完全に落ち着いたあと、クリスはノゾムの腕の中でゆっくりと体を起こした。巨大な胸が重く、ムチムチとした腰と脚が、布団の上で安定している。長い黒髪が肩に落ち、肌は若々しく滑らかだ。全身に、激しい変身の余韻が残っているが、痛みはもうほとんどない。骨が軋む音も、肉が動く音も、完全に消えていた。

クリスは自分の体を、両手で丁寧に触れた。左の胸、右の胸、太もも、尻……すべてが、クリスの姿のまま、変わらない。昨日まで、何度も繰り返していた「元に戻る」感覚が、完全に消えている。体が、熱く安定している。クリスは小さく息を吐き、ノゾムの顔を見上げた。

「もう……戻らない」

声が、妖艶で甘い。ノゾムはクリスの体を優しく抱きしめ、静かに頷いた。

「戻らないよ。もう大丈夫だ」

ハルトは床に座ったまま、目を丸くしたまま固まっていたが、徐々に現実を受け入れ始めていた。クリスはハルトを見て、優しく微笑んだ。

「ハルト……私、クリスよ。婆ちゃんは、もういない」

ハルトはしばらく言葉を失っていたが、やがて小さく呟いた。

「……姉さん、みたいだな」

その言葉に、クリスは胸が熱くなった。ハルトにとって、クリスはこれから「姉」になる。88歳の老婆だった自分が、22歳の妖艶な女性として、ハルトの姉として生きていく。クリスはハルトの肩を、優しく叩いた。

「これからは、よろしくね」

ノゾムはクリスの手を握ったまま、静かに言った。

「僕も……一緒にいるよ。クリスさんで、いい」

ノゾムの言葉に、クリスは再び涙を浮かべた。呪いは、ノゾムの愛で完全に溶かされた。真の愛で両方の姿を受け入れられたことで、呪いの力はもう、菊を苦しめることはない。クリスはノゾムの胸に顔を埋め、静かに涙を流した。

その日から、クリスは菊の姿に戻ることはなくなった。

家の中は、少しずつ変わっていった。クリスはハルトの「姉」として、優しく家事を手伝い、ノゾムと一緒に家を支えていくようになった。ノゾムはクリスと恋人になり、やがて同棲するようになった。夜、クリスはノゾムの隣で眠り、朝、ノゾムの温かい声で目覚める。巨大な胸が重く、ムチムチとした体が、ノゾムの腕に包まれる。クリスは毎朝、ノゾムの胸に顔を埋めて、「ありがとう」と小さく呟いた。

ハルトは最初、戸惑っていたが、徐々にクリスを「姉」として受け入れていった。大学から帰ってきたハルトに、クリスが優しく「おかえり」と声をかける。ハルトは照れくさそうに「ただいま、姉さん」と返す。夕食の時間になると、三人でテーブルを囲み、笑いながら食事をした。ノゾムはクリスの隣に座り、時々クリスの手をそっと握る。クリスはそれを、静かに受け止めた。

呪いのことは、もう誰にも話さなかった。ノゾムだけが、すべてを知っている。クリスはノゾムにだけ、時々、昔のことを話した。88歳の老婆だった頃の寂しさ。ノゾムへの想いが、呪いを刺激したこと。そして、ノゾムの愛が、すべてを救ってくれたこと。ノゾムはいつも、優しく耳を傾け、クリスの手を握ってくれた。

「もう、戻らないよ。君は、君のままでいい」

ノゾムの言葉に、クリスは微笑んだ。巨大な胸が、ノゾムの胸に寄り添う。ムチムチとした体が、ノゾムの温かさに包まれる。クリスはノゾムの唇に、優しくキスをした。

「ありがとう、ノゾムさん」

家の中は、穏やかで温かい空気に包まれていた。クリスはハルトの「姉」として、ノゾムの恋人として、そして一人の女性として、新しい人生を歩み始めていた。呪いは、もう二度と彼女を苦しめることはない。クリスは毎朝、鏡に映る自分の若い姿を見て、静かに微笑んだ。

「もう、寂しくない」

クリスはそう呟き、ノゾムの待つリビングに向かった。大きな胸が、優しく揺れる。ムチムチとした腰と脚が、床を踏みしめる。クリスはノゾムの元へ、幸せな笑顔で歩いていった。

(完)

変身描写を書きたいだけ(TS)

「お主、あの祠を壊したのか!?」老人が青年に向かって叫ぶ。その指が指す先には、苔が生えた石がゴロゴロと転がっている。青年は悪びれることもなく、鼻であしらう。「ただの石ころと紙切れだろ?ジジイ、そんなんで脅そうったって……」

「あの祠には、どんな男でもダイナマイトボディのお姉ちゃんに変えてしまう悪霊が封じられてたと言うに……!」

「はぁ?何いってんだよ、ボケてんのか!?」

青年が大声を上げると同時に、彼の髪がバサッと伸びる。

「なっ!?」その骨格もメキメキと音を変えて変わっていく。腰骨が大きく広がり、背骨は後ろにアーチを描いて、肋骨がすぼんでいく。みるみるうちに、青年の上半身は華奢になっていき、肩もだんだんなで肩に変わっていく。

「祟りじゃ、祟りじゃ!」そう叫ぶ老人も、曲がっていた腰がまっすぐになり、よろよろとしていた足にも筋肉と脂肪がついて、シワというシワが消えていく。

「何かが、胸に入り込んでくるっ!!」

青年の胸が盛り上がり始め、あっという間に女性の乳房ができて、どんどん膨らんでいく。彼の尻も後ろに突き出され、丸みを帯びて大きくなっていく。筋肉質だった脚も柔らかい輪郭になり、すべすべとした肌に包まれていく。

「本当に悪霊が!?う、喉が……っ!」青年の喉仏が消えると同時に、その声のトーンが釣り上がる。股間が潰されるような痛みが走り、バストとヒップがさらに一回り大きくなると、変身は終わった。

「どうしてくれるんじゃ!」と青年の首を掴む老人ももはや、彼と同じく豊満な女性へと変化していた。異常事態にもかかわらず、サイズが完全に合っていない服の襟元から覗く、深い谷間につい目が行ってしまう。

そしてその巨大な胸はもう一対の乳房……つまり青年自身の双丘に押し当てられ、むぎゅぅっ、と形を歪ませている。自分の尻に手を当てるとそこには弾力感のあるヒップができているのが分かる。

「まぁ、これでもいいか……」と、老人だった美女を抱き寄せる青年。「お、お主、なにをするつもりじゃ……」

「せっかく美女になれたんだから、楽しまねぇと、なぁ?」

うたたねの姫 後編~太地~

あむぁいおかし製作所様での投稿(http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-26287.html)と同内容です。イラストは春瀬めいお様に描いていただきました。

「ったく、変なことになったな……」

太地は足の遅い学を置いて、家に帰っていた。汗をシャワーで流し、部屋着を着て自室に入ると、自分のかばんが目に入った。

「ちっ、宿題やんねぇと補習だったか……」

スマホで時間を潰そうと思っていた太地だったが、ため息をついて教科書とノート、筆記用具をかばんから取り出し、机の上に投げた。

「あーあ、あいつに勉強教えてる余裕なんてないんだよ、何してんだ俺は」

そして何気なく自分の胸を触る。図書室での出来事を思い出し、そこに確かにあった乳房を触ろうとするかのように。

「……って、ホントなにやってんだ」

太地は顔をパンパンと両手で叩き、椅子に座る。そして教科書を開くが、顔をのぞかせた文字の羅列に頭を抱える。

「……これどうやって解くんだよ、女になった俺ならわかるのかねぇ!」

問題を見ても、何を書いているのかさっぱりな部分すらある。それをぼーっと眺めてるうち、太地はうとうととしはじめた。

「……くっ……補習……が……」

そして、太地は眠りに落ちてしまった。が、頭をくすぐる感覚に、目が覚める。

「寝てたのか、俺」

妙にチクチクする頭を掻く太地だったが、その手に感じたのは長く柔らかい繊維の感触。

「なんだってんだよ……ま、まさか!また女になってる!?」

その手を股間に持っていくと、そこにあるはずの男の象徴が跡形もなく消えている。よく見ると、その腕も細く短くなって、部屋着がぶかぶかになっている。

「ってことは、……んぅっ!」

胸が内側から押し上げられる感触がすると、服に小さな二つの膨らみが現れた。

「ち、ちくしょ、戻ったらそのままじゃないのかよっ!」

膨らみはグググッと大きくなり、服の上からでも明らかにわかるほどのバストサイズになる。

「んあっ!」

さらにボンッと一回り大きくなって、部屋着がギチッと音を立てた。それで、変化は収まった。

「はぁ、はぁ……声まで女に……」

太地は、視界に入ったスマホを手に持って、カメラアプリを起動した。

「今の俺って、どんな感じになってんだ……?っ!!」

画面表側のカメラに切り替えると、そこにはとびきりの美少女が映っていた。その端麗さへの驚きと、その少女が自分であることをにわかに信じられないことからくる違和感に、太地の体は固まった。

「これが……俺……?」

その時、腕時計の時報がピピッと鳴って、午後6時になったことを告げた。太地はハッと我に返った。

「くっ、こんなことしてる場合じゃ……」

教科書とノートに向き直り、時間との戦いとばかりに打ち込んでいく。太地は、自分が女になったことを忘れようと、必死に宿題を進めていった。

「え、もう終わった……?」

もとの太地なら頭をフル回転させてもわからない問題も、今の太地には赤子の手をひねるような簡単さになっていた。その上で本気を出したのだ、宿題は10分もしないうちに片付いてしまった。

「嘘だろ……」

太地は戸惑い、胸に手を置こうとした。しかしその手は、部屋着の胸の膨らみの上にあるぷくっとした突起……乳首に触れた。

「ひゃぁっ!?」

太地は、思いもしない刺激に小さな叫びをあげた。できたばかりの乳頭は敏感だった。ジーンとしびれるような感覚に、椅子に座っていられなくなった太地は、思わず床に崩れ落ちてしまった。ブルンブルンと揺れる胸は、服と擦れてさらなる刺激を生み出す。

「んひゅっ……や……っ!」

意識が飛びそうになる太地だが、刺激から逃げようとなんとか服をめくりあげた。太地の目に飛び込んできたのは、透き通るような白い肌に包まれた、柔らかく、丸みを帯びた膨らみ。その先端は、ピンク色にその存在を主張している。

「女の、胸……」

肌色の膨らみに触れると、むにゅっと形を変える。

「んっ……すごくやわらかい……」

高くなった声に合わせるように、太地の口調もやわらかくなる。

「そうだ、足の方は……」

部屋着のズボンに手をかけ、下げる太地。中からは、プルンと震えるヒップと、すべすべとした太ももがお目見えし、健康的な脚が姿を現した。

「本当に、俺が女の子に……」
「太地?帰ってるんでしょ、夕飯できたよ」

股の間に手を伸ばそうとした太地だったが、部屋の外からの声に、その動きを止めた。

「か、母さん……あっ」

高いアルトの声で答えてしまいそうになった太地は、口を覆った。

「太地?女の子でも連れ込んでるの?」

部屋の外から、足音が近づいてくる。太地は、なんとか体を起こすと、クローゼットの中に飛び込んで、扉を閉めた。同時に、部屋のドアがガチャッと開いた。

「あら?誰もいないの?……また服を散らかして……何、この長い髪、あの子と同じ色してる?」

なにかの拍子に抜け落ちた、太地の髪の毛だった。ドキドキと鼓動が響く。太地は息を殺して母親が去るのを待った。時間の流れが遅く感じるほどの緊張だったが、やがて母親は部屋から出ていった。

「はぁ……よかった……」

クローゼットから出た太地の体は、元の男のものに戻っていた。太地は、安心するとともに少しの物足りなさを感じていた。

—

「おい、学!」
「な、なんだよ、太地……」

次の日、学校で太地は学に詰め寄っていた。周りの、待望の女子がいなくなってがっかりしたような、元の日常に戻って安心したような視線を無視しつつ、太地はものすごい剣幕で学に怒鳴った。

「昨日の薬、瓶捨てちゃいねぇだろうな!?」
「……な、なな、なんで捨てちゃいけないんだよ」
「いいから!!持ってるなら出せ!!」

太地の怒りは、まるで何かから目をそらすような焦りのようでもあった。

「はい、これ……」
「おう!!つべこべ言わず最初っから出しやがれ!」

瓶の上のラベルを読んでいく、太地の目に一つの文章が飛び込んできた。

「『睡眠時に成長ホルモンを分泌させ、脳を活性化させます。同時に、女性ホルモンを出させることでその効果を高めます』……って、寝るたび女にならなきゃいけないってことかよ!」

周りがざわついた。太地はクラスメイトたちを睨みつけた。

「お前ら、俺は金輪際、ぜってぇ居眠りなんてしねぇからな!」

小さく「フラグかよ……」という声が聞こえ、太地はそちらに目を向けたが、ついに誰がその声を上げたかは分からなかった。

その日は、クラスメイトたちの期待むなしく、太地は居眠りすることなく授業を受け続けた。

「ふん!俺だってこんなことになっちゃ居眠りなんかしねぇよ」
「あ、あの……」

帰り支度をする太地に、弱々しい声がかけられる。疑いもなく、学の声だった。

「また、勉強教えてほしいんだけど……」
「あん!?」

学に向き直った太地は、もちろん断るつもりだった。太地の成績は、むしろ誰かに教えてほしいくらいのもので、こんな厄介事に巻き込んだのは学の持ってきた薬だった。

「……おう、わかった」

太地は自分でも口にした言葉が信じられなかった。だが、前の日に経験したいろいろな事が、太地の心を動かしたのは、なんとなく分かった。

「じゃあ、僕の家に来てよ。今日は誰もいないから」

—

学の家に着いた二人は、黙々と勉強の支度をした。太地は、勉強中に居眠りすることで女になることを、潜在的に理解していた。

「ほら、勉強するんだろ」
「あ、うん」

太地は、目の前に広げた教科書を読んでいく。やはり、内容は半分わからない。そして、そのまま寝てしまった。

「太地、太地!」

学の呼ぶ声に目をさます頃には、髪は伸び切り、手足は短くなり、胸がムクムクと膨らんできていた。

「き、来たよ……」
「あ、あ……お、おんなに、女になるぅっ……!」

太地は喘ぎ声をあげ、体をくねらせる。不思議なことに、焦りは感じない。むしろ、この変身が気持ちのいいもののようにも感じる。

「ふぅっ……!」
「じゃあ、いろいろ教えてよ」

変身が終わった太地を見て、鉛筆を置いて太地に近づく学だったが、太地はその口に人差し指を当てた。

「だめ、まずは学校の勉強からね」

体に引っ張られるように、太地の口調が柔らかくなっていた。太地は、今の自分の容姿の女子が使いそうな口調を、無意識に使っていた。

「うっ、分かったよ……」

太地は、ムンムンと色気を漂わせつつ、学に勉強を教え始めた。数十分もそれが続いて、学はやっとのことで最初に決めていたノルマを達成した。

「じゃあ、今度こそいいよね」
「もう、せっかちなんだから」
「えへへ」

太地は立ち上がって、学の後ろに回り込む。そしてその背中に、ムニュッと胸を押し当てた。

「(あれ……俺はこんなことしたくなんてなかったはず……)」

太地の考えとは裏腹に、その腕は学をギュッと抱く。

「きもちいい……」
「でしょ?」
「太地っ!」

学はバッと立ち上がり、前の日と同じように、太地の肩を掴んでベッドに押し倒した。

「きゃっ!」
「すごく、かわいいよ……」

顔を赤らめる太地。男にかわいいと言われて喜ぶ趣味は、太地には無いはずだった。しかし先程から演じ続けている「女の子」には、効果テキメンなのだった。

「本当に?」
「ホントだよ……おっぱいもおおきいし、すごいよ……」
「じゃあ……」

ボタンを外していく少女。その体の動きは、太地の制御が効かなくなっているように思えた。すべてのボタンを外すと、胸の間にできた深い谷間と、へそが顔を出した。

「(今の俺は、俺じゃない、俺じゃないんだ……)ほら、触っていいよ……女の子のカラダ、勉強して……?」
「じゃあ、ここから……」

学は、すべすべとしたおなかを撫でる。

「(ちくしょ、何でこんなこと、俺が……)ん、んっ……おっぱい、じゃないの……?」
「こ、ここもキレイだし……」

少女は、恥じらいつつも学を受け入れ、大人しくしている。学はそのままベルトに手をかけ、外し始めた。

「(おま……)ちょ、ちょっと……」
「いっぱい勉強、させてよ……」

ズボンが降ろされ、皮下脂肪で少しふっくらとした脚が引きずり出された。

「しかたないなぁ……(しかたないよな……)」
「女の子の脚って、こんなにきれいなんだね……」

少女は学にされるがままになっていた。

「あっ……」

だがその時、時間切れが近づき、巨大な胸が縮小を始めた。少女は太地に戻ろうとしていた。学は、一瞬残念そうな顔をしたが、何かをひらめいて、大声で言った。

「世界で一番大きな大陸は!」
「え、な、なに?」

少女は度肝を抜かれて驚く。

「答えて!」
「えっ、ユーラシア大陸……?……んぁっ!!」

半分の大きさまで縮んでいたおっぱいが、一気にその大きさを取り戻した。

「な、なにこれ……もしかして、勉強しつづければもとに戻らなくていいの……?」

自分が発した『もとに戻らなくていい』という言葉に、太地は違和感を覚えたが、それはごく小さなものだった。

「べ、勉強中は男に戻らなかったけど、それをやめたら5分くらいで戻ってたよね……」
「なるほど……でも、二回しか見てないのに、よく気づいたね、学」

少女はニッコリと笑みを浮かべた。

「えへへ……じゃあ、こんな世界一高い山みたいなおっぱい、触らせてね……」
「んっ……エベレストね、私の胸はそんなに大きくないよ……」

学は、その深い谷間に顔をうずめた。

「ま、学……」
「やわらかくて、あったかい……」

顔を離した学は、恍惚の表情を浮かべている。だが逆に、少女は物足りなさそうにした。そして、赤面しながら、下着を指差して聞いた。

「学、ここはいいの……?」
「えっ……いいの?子供ができちゃう穴じゃないの?」
「大丈夫、保健で勉強したでしょ、一ヶ月に一回、危ない日を避ければいいの」
「いや、そういうことじゃなくて……」

学は下を向いてもじもじし始めた。その腕を、少女は優しく掴んだ。

「どうせ、こんなことできるの、私くらいしかいないでしょ?」
「う、うぅ……じゃあ……」

学は、自分のズボンから短めの得物を出した。

「うふっ、かわいい」
「い、いくよ……」

おそるおそる、少女の股に、それを挿し込んでいく。

「うっ、思ってたより気持ちいい……」
「学のモノが、中で大きくなってる……」

初体験の感覚をもっと得ようと、学は腰を前後し始める。

「あんっ、すごい、くるよ、くるよっ」

太地の意識は、もはや少女のものとなりきり、当然のように学を受け入れていた。

「学っ、もっと問題出して!私を女の子にし続けて……っ!」
「ん、ん、そんなことっ……言われてもっ!」
「出してぇっ!」

少女の胸は、またもや縮み始めていたのだった。

「ふ、フランスの首都はっ!」
「パリだよぉ……っ」

ムチっと膨らむおっぱい。学は、それを鷲掴みにした。

「んひゃっ!学はやっぱり、そこが好きなのね……!!」
「だ、だってっ……こんなに、大きいの、他にない……!」

上下左右に揉みしだかれる巨大な胸。学の速度も、どんどんペースアップしていく。

「だ、だめっ、そんなに激しくっ、イッちゃうぅっ!!」
「う、うぅっ、出るっ!」

初心者二人の絶頂は早く、ほぼ同時だった。学は、フラフラとしながらも怒張しきった自分の息子を引っ張りだした。少女の方は、疲れたのか、快感で意識が飛んでしまったのか、そのまま目を閉じて動かなくなってしまった。
学はぬめぬめとした液体まみれのまま、「勉強相手」に寄り添って眠りに落ちた。

—

「……もとに戻らないんだけど……」
「ど、どうしちゃったのかな」

二人が目を覚ますと、夜も8時を回っていた。太地の体はもとに戻っておらず、学がシーツの匂いを取るために20分以上かけたあとも、それは変わっていなかった。

「もしかして、イッちゃうと戻れない的な……?」
「そう、みたい?」

太地はハァとため息をついて、学に向き直った。

「な、なに、太地?」
「……責任、とってね……?」

その照れた顔に、学はうなずいた。

学が変身するパターンへ

うたたねの姫 後編~学~

あむぁいおかし製作所様での投稿(http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-26245.html)と同内容です。イラストは春瀬めいお様に描いていただきました。

「はぁ……はぁ……なんとか、なったか……」
「ごめん、僕の家まで来てもらって……」

二人は、学の家の一人部屋にいた。学が、逃げる途中で疲れ切って荷物も持てないほどになり、仕方なく太地がついてきたのだった。

「……ってお前、まだこの薬あるのか」

学の机の上には、ついこの朝見た薬の瓶が何本か並べられていた。

「薬……?あぁ、だって、すぐに効くなんて思ってなかったし、サプリみたいに何回も飲むものだって言われたから……」
「お前ってホント騙されやすいのな……まぁ、こんなにすぐにもとに戻るようじゃ、本当に成績伸ばすには何本も必要だろうよ……もうこの教科書も半分わかんねぇし」

さきほど図書室で学にスラスラ教えていた数学の教科書を見ながら、太地はため息をついた。

「つまり、頭が良くなるためにはあのボインボインのままでいろってことか」
「……ま、また薬飲んで勉強教えてくれる……?」

太地は、若干鼻の下を伸ばしている学の顔を見て、寒気が走った。

「で、発情したお前に襲われろってか……」太地は、薬の瓶を一本取って、蓋を開けた。そしてその瓶を、学の口に突っ込んだ。

「ふざけんな、自分で勉強しやがれ!」

太地が学の鼻をつまむと、学は薬の中身を飲み込んでしまった。

「……げほっ、げほっ!の、飲んじゃった……」
「さーって、今度はお前が女になる番だ、せいぜい楽しませてくれよな……」
「や、やだぁ……」

太地は、学の体が変化し始めるのをいまか、いまかと待った。だが、何も起きない。それは、1分たっても、2分たっても同じだった。壁掛け時計がカチカチと鳴る音が部屋に虚しく響いた。

「……あー、なんか冷めちまったな……」
「……はぁ……」

太地はじーっと目を凝らして見続けていた学から目を離した。学も安堵したのか、ため息をついた。

「ま、そろそろ帰るか……ん?」
「今度は何?」

太地は、本棚にあった一冊の本に目を奪われていた。

「おっ!本屋で売り切れてた最新刊じゃん!学、これ読んでいってもいいよな!」
「えっ……」
「あん?」
「あ、うん……」

一旦断りかけた学だが、太地の苛立ちの目に圧倒されてしまった。

「よし。読み終わったら帰るからよ」
「う、うん……僕は勉強してるから……」
「お、いい心意気だなー」

学は教科書と宿題をかばんから取り出して机で勉強し、太地は本棚から漫画本を取り出してベッドで読み始めた。

「……しっかし、なんで俺は女の子になってお前はならないんだろうな……って、寝てるし……」

勉強し始めて何分も立たないうちに、学は疲れ切ったのか寝てしまっていた。

「しかたねぇやつだなぁ……。ん?おっ?」

そして、その短く切った髪の毛が、伸び始めていた。太地は漫画本を投げ捨て、ベッドから立ち上がって学に近づいた。確かに、その髪がシュルシュルと伸びている。

「おい、学、起きろ……って……?」
「ん……」と声を出した学は、元々から小柄だった体がさらに小柄になっていく……のではなく、大きくなり始めていた。肩は段々と丸くなっているのだが、広くなっていく。そのせいで、着たままだった制服のシャツが引っ張られている。

「僕の腕、長くなってる……?」そういう学の腕は確かに長くなっていた。変身のときに明らかに元より小さくなっていた太地とは逆に、学は平均的な女性の身長、いや、太地の背にも近づいていくようだった。

「足、キツい……っ」目は覚めつつも、まだ寝ぼけている学のズボンがパンパンになり、ビリビリと糸がほつれる音がしている。そして、「んんんっ……!」という学の喘ぎとともに、縫い目からバリッっとズボンが破れてしまった。

「学、お前……」ズボンの中から現れたのは、長くてムチムチの太ももだった。そして学が立ち上がると、シャツのボタンもバチバチと飛び、女性のものとなった学の体があらわになった。しかも、その身長は太地と同じくらいになっていた。

「あれ……?太地の背が低くなってる……?」
「お前の背が高くなってるんだよ!」

寝ぼけまなこで太地の顔を見てキョトンとする学にツッコミを入れる太地。

「えへへ、そっかぁ……じゃあ……」
「うわぁっ!?」

太地は、またもや学に押し倒された。今度は、ベッドの上に。

「また太地と遊べるんだね」

恍惚とした学の顔に、寒気を覚える太地。

「べ、勉強しろよ……それに……」
「ん?」
「こんな胸じゃ俺をコーフンさせられないぜ!」

ぺったんこのままだった学の両乳首をつまんでニヤッとする太地。先程の図書室での仕返しのつもりでもあった。

「んぅっ……!」そして、太地の思ったとおり、学はその刺激に悶絶して仰け反った。だが、同時にムクッと膨らんだ胸に度肝を抜かれた。

「んへへ……変身、まだ終わってない……みたい……っ!」

控えめに膨らんだ胸が、ブルンッと爆発的に膨らむ。一気に、さきほどの太地と同じサイズの乳房が出来上がってしまった。

「お、お前……」
「とまんないよぉっ……まだ、おっきくなるよ……っ!」

ムグググと膨らむおっぱい。それを、学は自分の両手で持ち上げる。

「やわらかぁい……でも、もう……ちょっと……!」

そして、最後の仕上げとばかりに、頭ほどに大きくなってしまった。太地は、今度は寒気というより恐怖を覚えて、ベッドから逃げようとした……が、遅かった。

「……んふふ、お姉さんと、あそぼ……?なんちゃって」

図書室でのセリフを返した学が、胸から先に太地にのしかかったのだ。張りのある、だがこの上のなく柔らかくて温かいものが体を包む感覚が、太地の動きを鈍らせる。

「や、やめ……」
「えへへ、僕、薬で頭が良くなったせいでいろんなこと分かっちゃうんだ……太地が、年上のお姉さんが好きなこと、それに……」

学は、太地の顔をなでた。

「攻めに弱いってこと」
「そ、そんなこと……」

学は、太地のズボンのジッパーを、ゆっくりと開けていく。

「じゃあ、どうしてこんなに勃たせてるのかな……?」
「それは、おっぱいが気持ちよくて……」

そうだね、と学は体を起こし、その豊満な胸を太地から離した。そして少し考えたあと、今度は太地の横に寝そべった。

「じゃあ、『お姉さん』の言葉責めはどう……?」
「ゴクリ……はっ、俺は何を考えて……」

太地は、「言葉責め」を想像しただけでも興奮している自分に気づいた。完全に、学に弱みを握られている自分に。

「あはは、やっぱりね」
「どうして、俺の時はそんなことまで気づかなかったのに……」
「そりゃ、太地は僕のことなんかあまり気にしてないみたいだからね。僕は、唯一の話し相手の君しか、気にするものがなかったんだ」
「お前……」

ニコッと微笑む学。

「だから君の目に止まりたくてあんな薬を買ったんだけど……」

学の胸が縮み始める。

「あ、もう時間切れみたいだ」
「はぁ、どうなるかと思った……」

太地は、小さく、もとに戻っていく学を見て、胸をなでおろした。

「あ、あはは、楽しかった……」
「今度やったらただじゃおかないからな」

太地は、もとの気弱な少年に戻った学に、脅し文句を言った。

「え?ほんとに?」

だが、いつもどおりとは行かなかった。オドオドしているが、学はニヤリとほくそ笑んでいた。

「な、なんだよ」
「太地の好みの『お姉さん』、また見たいでしょ……?君こそ、僕をいじめないほうがいいよ」
「……ば、バーカ!!」

太地は、その場から逃げるように立ち去った。

—

その数週間後。

教室でこそこそと離す二人の生徒。

「太地って、丸くなったよな……?学に対しては特に、だけど」
「この間……太地が変なことになったあと……だよな」
「あれ、仲良くとなったというか、なんか別モンのような気もする」

その視線の先では、昼ごはんのパンを同じ机で食べる太地と学の姿があった。

「太地くん……あ、いや、太地、あとでまた勉強教えてくれるかな……?」
「あぁ、分かった……この頃は必死に授業受けてんだ、だから……」

太地は急に頭を下げた。

「ん?」
「今夜も、アレ、やってくれ……」

学は、微笑んだ。

太地が変身するパターンへ

ラド的な子

ここは、核戦争が起き、破滅してしまった世界。どこかで致命的な間違いが起き、人類がほぼ吹き飛んでしまった時間軸の話。
ハリボテ小屋の中で、一人の少女、ジーンが、腕につけたモバイルコンピュータ、ポップガールの値を読み取っていた。

「そろそろ、ラド値を落とさないと……」

ラド値とは、この汚染された世界で、そこら中に分布している人体に害をなす汚染物質、「ラド」の体内濃度の指標である。幸いにも、ラドバイバイという薬を使うことで、濃度を落とすことができ、人類はなんとかこの「ラド」がある世界で生活することができていた。

「よし、と……」

点滴のように血液に注入するその薬だが、少し不純物が混ざっていることは日常茶飯事で、それに耐えることができるように、人間の体は少し変化を遂げていた。
だが、その日の不純物は、いつもと違うものだったということにジーンが気づくのは、まだ先の話である。

「これで、また全力で探索できるね」

空になった薬の袋を机の上に置く。この袋も、重要な物資だ。ジーンの小屋の中には、さまざまなガラクタが置いてあった。産業という産業が存在しないこの世界では、ベッド、椅子、机、すべてをガラクタで作る他ない。愛用の銃も、パイプや、針金などを組み合わせて作り出した、手作り感満載のものだ。

「食べ物も、飲み物も腐ってきちゃってるし……また、あの水たまりに水をくみに行こうかな」

そう言って、銃を腰のベルトにさし(これもお手製のものだ)、弾や、もしもの時の保存食品や、銃の補修部材をカバンに入れる。そしてジーンは、荒れ果てた世界へと家を後にした。

ジーンは道中、ラドに汚染されたモグラの群れに出会った。
外には、ラドに汚染され大型化したネズミや蚊、他にも危険な動物がたくさんいる。しかし、その動物を食わねば、生きていくことはできない。一人で倒せそうであれば、動物の群れにも攻撃をしかけるのが普通だった。

「一匹、ラドまみれのやつがいる……でもやるっきゃないか」

モグラは、比較的弱い部類の動物だ。ただ、一匹ラドをまとい、緑の光を体内から発しているものがいた、噛みつかれれでもすれば、ラドがジーンの体内に入ってしまうだろう。しかし、ジーンとしては、この獲物は確実に仕留めておきたいものだった。

「よし、いくぞ!」

まずは一匹目に気付かれないように近づき、そして頭部に一発、銃弾を打ち込んだ。その銃声で、周りのモグラが一斉に地面に潜る。モグラが潜るのは、逃げているのではなく、地面の下から不意打ちを食わせるための攻撃手段だった。ジーンの記憶が正しければ、生きているのはあと二匹である。

「ここから出てくるか……」

地面の音を聞きながら、攻撃を喰らわないように位置取りをするジーン。そして思ったとおりの場所から出てきた二匹を、確実に射撃した。

「ふぅ……あれ?あのラドまみれのやつは……?」

その時、ジーンの真下から、緑に光るモグラが飛び出し、間髪入れずに足に噛み付いた。

「うぐぁっ!」

ジーンの中に、ラドが入り込む。しかしその時、普段感じない衝撃が、ジーンの体を貫いた。

「な、なに……!?」

再びモグラは地面に潜った。気を抜いている暇はないが、なぜか手にはめている手袋が、すこしきつくなっているのに気づく。

「き、気のせいだよね?」

集中が切れたジーンは、さらなる攻撃を受けないように、後ろへと下がる。だが、ラド物質がたんまりと入ったドラム缶が後ろにあった。

「あ、やば……」

その存在に気づいたときには、もう遅かった。ジーンはドラム缶を押し倒してしまい、飛び出してきたラド物質を全身にかぶってしまった。

「くぅぅ、また貴重な薬を使わないといけないの……?」

遠くでモグラが地面から飛び出した音がしたが、もうこちらを見失っているようで、地面を走ってきたり、再び潜る音はしてこなかった。それよりも、体についたラド物質から、ラドが皮膚を通して侵入をはじめたときの衝撃のほうが、ジーンを驚かせた。

「うぐっ!な、なにっ!!??」

普段、ラドが体内に入るときは、体力がどんどん削られていく。しかし今は、体の中に大きな熱が入ってきていた。そして、その熱が体のなかで膨らんでいくような感覚が、ジーンを襲った。

「お、おかしいよ、何が起こってるの!?」

ジーンの手や足が、徐々に長く、太くなっていく。メキメキと音を立てながら、骨格が成長していくのだ。まるでラドが体の一部になるかのように、ジーンの体を作り変えているのだ。ジーンは、ラド物質を急いで拭き取るが、その間にも、胸当ての中で胸が膨らみ、圧迫感が大きくなっていく。

「や、やめて、こんなところで装甲が合わなくなるなんて、死ねと言ってるみたいじゃない!」

しかし、完全に合わなくなる前にラド物質を拭き取り終わり、ジーンは九死に一生を得た。

「うぅ、なんなのよ……これ、薬を使えばもとに戻るのかな……」

一回り、二回り長くなった手足と、明らかに大きくなって、胸当てを押し上げている自分の乳房を見つめながら、ジーンはそれでも、進み続けるほかなかった。ラド値はまだ低く、薬を使うのはもったいない。
最後の一匹のモグラも無事仕留め、肉を切り出すことができたジーン。

トキシフィケーション~毒の力~ 温泉編2前編

例の家族を実験台にしてから一ヶ月。一度母国に帰っていたのだが、その家族がまた宿を取ったので、私は戻ってきていた。宿屋とは名ばかりで、宿泊室が一つある以外は私の研究所支部となっているその建物に、彼らは娘の友だちを3人連れてきた。

「いらっしゃいませ」
「また、来ちゃいました……」

今度は、同時翻訳ツールで、難なくこの国の言葉をしゃべることができる。連れられてきた3人は、全員小学生で、一人だけが男、残りが女だ。男は多少太り気味だったが、肥満とまではいかないくらいで、身長も高い。

「こんな田舎まで、また来てくださってありがとうございます」
「いいえ、娘が聞かなくて……」

まあ、娘の記憶を操作してここで楽しいことが沢山あったことにしたのだから、そうなるだろう。娘だけでなく、父親の記憶も操作していたが。

「で、ここのどんなことが楽しいの?」
「え?うーん、お風呂が楽しいよ?」
「おふろー?バーベキューとか、そういうのはないの?」

『楽しいこと』を、単に『楽しいこと』と記憶に刻みつけていたから、その内容は娘が適当にでっちあげるしかない。それでも付いてきたこいつらは間が抜けているはずだ。さっさと、実験を始めてしまおう。

「それでは、中にお上がりください。お飲み物を用意しましょう」

それから、親にはもう何も考えずに睡眠薬を飲ませ、子どもたちにはそれぞれ違うものを飲ませた。ジュースと偽って飲ませたその飲み物にはやはり睡眠薬が入っていたが、ほぼ薬や毒が主成分だった。

そして、4人を全員、施設内にある実験室、その金属製の実験台の上に乗せ、それぞれの手足に鎖をつけ、予約の情報と照らし合わせながら、被験体を吟味する。
まずはリピーターの真波(まなみ)。もともとは男だったが、前回の実験で女となり、加えて男に接触すると体が成長するようになっていた。実際に腕に触れると、ぐいっと体が大きくなる。中学生くらいになった体で、まだ寝息を立てている。
つぎに、少し気弱な亜衣(あい)。4人のうちで一番小柄だが、艶がある黒髪は背中まで伸びている。
3人目が、亜衣とは対照的に強気な麻衣(まい)。亜衣の姉らしいが、髪は短く切り、外で遊ぶことが多いのか肌は少し日焼けしている。
最後が、その三人と仲はそこそこいいが、誘われたと言うより付いてきたらしい啓太(けいた)。四人でしゃべっている間でもあまり会話に入れていなかった。

録画用に設置している、部屋のカメラが動作していることを確認したあと、四人を起こした。といっても、揺り起こしたわけではなく、手足の鎖から繋がれている注入口から、睡眠薬の中和剤を注入したのだ。

「ん、んん……」
「なに、ここ……?」

四人は、周りを見渡している。心地の良い羽毛布団ではなく、金属の台に乗せられている事実に気づくと、少しのパニックが起きた。

「た、助けてぇっ」
「真波!?これが楽しいことだっていうの!?」
「えっ!?私、前はこんな事されてないよ!違うよぉっ」

だが、亜衣が、一言発した。

「真波ちゃん、少し大きくなってる……?」
「な、なんで真波が大きくなってるのよ!」

ここぞとばかりに、説明を始めた。

「私が、そうしたからだ。彼女の体は、男の体に直接さわると、成長するのだ」

――いや、むしろそれがバレていなかったのが不思議なくらいだ。この一ヶ月、公共の場で男の体に触れないで来たのだろうか?この真波はよほど器用な子供なんだろう。

「そんなこと、信じられるわけ無いでしょ!」

ちなみに、4人は手足が縛られているせいで自分の様子も、他の子供の様子も直接は見られないが、私が設置しておいた部屋の天井に大きなモニターで代わりに確認できるようになっていた。

「では……」

私は、真波の体に優しく触れた。途端に、真波の成長が始まった。

「んっ……んんんっ!!!」

たとえ私の触れ方が優しくても、毒の威力は容赦ない。中学生くらいの体を、グイグイと押し広げていく。服は瞬く間にサイズが合わなくなり、そして破れだす。平らだった胸では、乳腺が爆発的に発達し、それを包む脂肪と合わせてムクムクと大きな乳房が形成されていった。そして10秒もしないで、大人の女性と同じくらいの大きさになった真波の手を、触り続ける。

「い、いや、これ以上はぁっ……!」

乳房はすでにGカップ程度のものに成長していたが、この毒にリミットはない。プルンプルンと揺れながら、スピードを落とすことなく膨らんでいく。そして、身長も伸び続け、手足や尻の上でもむっちりとした脂肪が発達を続ける。

「わ、わかったから、真波が大きくなるのは分かったから!」
「分かったから、なんだ?」

私の大きさなどとうに超えた真波を、成長させつづける私に、麻衣が懇願してきた。

「とめて!」

止める理由はあまりなかったが、それでもいうことを聞くことにした。それに、成長させるのは真波だけではなかった。

「はぁ……はぁ……」

毒の効力を発揮させたのはたったの30秒ほどだったが、真波は元の二倍の大きさになり、小学生であるとは考えもつかないほどの爆乳の女性になっていた。かなり余裕があった手術台の上を、ほぼ埋め尽くしてしまっている大きな体の上で、息をするたびフルフルと揺れる巨大な肌色の塊は、柔らかそうではあるが張りもあり、別の目的がなければ揉みしだきたいところだ。

「この毒は傑作だ……やはり素晴らしい出来栄えだ」
「なに、いってんのよ!この人でなし!」

麻衣が食いかかってくるが、彼女の実験はまだ後だ。その前に……

「んぅっ……」

今まで真波の隣で震えているだけだった亜衣に、変化が起こり始めた。

「亜衣!?」
「お姉ちゃん……亜衣の体、変だよっ……」
「あ、アンタ、私の妹に何をしたのよ!」

実験台の上でもがき苦しみ始めた亜衣を見て、私を睨みつけてくる麻衣。だが、手足についた鎖のせいで私には触れることさえできない。最初は臨床試験用に付けた鎖だが、今は非力なモルモットを好きなようにし、嗜虐心を満足させるための道具にもなっている。

「何をって……真波と同じように、毒を使って体に細工しただけだ。さっきのジュースを飲んだ時点で、亜衣の体の中には大量の毒が投入されたのだ」
「ど、毒!?」

私の娘、ジェニファーに注入したものの4倍の量、亜衣には飲ませていた。ただし、遅効性の毒として、体によくなじんでから効力を発揮するように設定した。そして、計算した時間通りに、亜衣の中で毒が本性を表し始めたのだ。

「私の亜衣を、殺すつもりなのね!?」
「殺すなんて、子供が言っていい言葉じゃないぞ。それに、私の毒の効果は体の成長。だから……」
「きゃああっ!!」

亜衣の悲鳴が私の声を遮った。と同時に、その体が急激に成長し、服をビリビリに引き裂いて、真波より一回り小さい程度までになった。そのまま、ゆっくりと成長を続けている。

「あ、亜衣!!」
「ふむ……」

成長が終わるまで見続けているのもいいが、これは実験だ。やるからには目的がある。おもむろに、ムクムク膨らんでいる右の乳房をパンと叩いた。

「ひゃあんっ!!」

やはりというべきか、私の手を押し返すように、乳房は倍の大きさまで急激に膨張した。これまでの実験と同じ結果だ。衝撃を与えると、その部分の免疫力が下がり、毒の効果が上がる。

「亜衣、おっぱいがぁ……」

右の乳房は膨らまなくなり、代わりに縮んで行く。逆に左の乳房は大きくなるスピードを早めた。それに、もう180cmくらいになっている身長もグイグイと伸びる。まるで、乳房の中身が体全体に行き渡っているようだった。

「ま、まだ大きくなる……の……?」

全体的に真波より肉付きはよくないが、スレンダーというわけでもなく、巨大な胸と、それに引けを取らないむっちりとした下半身。それらは、まだ成長の速度を落とさず、着実に大きくなっている。

しかし、いつものような不安定な成長をしない。これも特筆すべき効果だが、毒が体になじんだ後、効力を発揮したからということだろう。

髪の方も、実験台から垂れ落ちるほどの長さになり、床の上を這うように伸びていく。日本人特有のいい髪質で、一本一本が丁寧に結われた黒い絹糸のようだった。

完全に言葉を失って、隣に横たわっている姉の2.5倍くらいの身長になったところで、麻衣の成長は収まった。

制御不能(WIP)

セクサロイド。そんなものが流行りだしたのは、10年前くらいだろうか。人の性欲を満たすために作られた人型ロボット。人ではないために何でもやり放題、人権にうるさい団体は、裏ではこのセクサロイドを使用しているという噂がある。

オレも一ヶ月前、なけなしの残業代でようやく中古のセクサロイドを買うことができた。保証なしで20万とは、量産されていてもロボットというものは高いらしい。

「お兄ちゃーん、今日も遊ぼうよー」
「はぁ……アイさぁ」

で、セクサロイドというものは、初回起動時に体型を決められるらしい。らしい、というのは中古で来たうちの子、アイは最初からロリっ子体型だった。その役割の通り、スキあらば行為にいたろうとする性格ではあるが、いかんせん俺の好みにしては体が小さすぎた。アイには付属していたいくつかの服のうち、一番年齢にあったものを選んで着せていた。

「本当に体型って変えられないんだよな」
「だからぁ、最初になった身体からはあんまり変えられないのー」

実際のところはというと、好感度が高ければ結構体型を変えてくれるものらしく、ものによっては毎日胸のサイズやらを上げ下げしているらしい。こいつは、付き合いが悪い俺にはあまりいい感情を抱いていないようだ。機能上ムリということにして、面倒くさい作業をしないつもりだろう。まったく、AIのくせに……

「少しだけでも変えてくれたら、やってやらんこともねえんだがなぁ」
「えー……じゃあ、ちょっとだけだよ?」

……コイツの一番好きなことは、やはり性行為らしい。で、俺はネット上を調べていったらあるサイトにたどり着いた。セクサロイドの思考に関係なく、体型をいじれるハッキング方法が書かれていた。なんでも、寝ている間――といっても充電のことだ――セクサロイドの髪の中に紛れているメモリースロットに、あるデータを入れたカードを突っ込めばいいだけの話らしい。あとは、セクサロイドに自発的に体型変化させることで、操作可能になる。ご丁寧に、そのデータまで置いてあって、俺は迷わずダウンロードした。そのデータを突っ込んだのは昨日の夜のことだ。

「お胸をちょっと大きくするだけなら……」

そういえば、どうやって体型操作するんだ……?と考えていた俺の前で、予想外のことが起きた。ぺったんこから少しだけふくらませるだけだろうと思っていた胸が、ムクムクムクッ……!と大人の女性顔負けのサイズまで育ったのだ。おかげで、服の中が胸肉でいっぱいになってしまっている。

「えっ……?あれっ!?」

それは本人にとっても考えていなかったことらしい。とても困惑した表情で、大きく前に突き出した胸を見下ろしている。

「こんな大きくするつもり無かったのにぃっ!戻さなきゃっ、って、うわぁっ!」

バルンッ!と胸が更に膨らみ、服を引きちぎった。飛び出た勢いでバランスを崩したアイは、尻もちをついてしまった。

「いったたたっ……!お兄ちゃん、アイになにかしたんでしょ!」

俺の方を睨んでくるアイ。だが、そのタプンタプンとゆれる巨大な胸は逆に俺を誘っているようだった。

「な、なにするのっ!」

無意識のうちに、俺はアイを持ち上げ、ベッドの上に一緒に座らせた。

「その胸があるなら、遊べるだろ、ほら」

ジッパーを下ろしてモノを出して寝転がる。アイはごくりと喉を鳴らして、本能に従うがごとくそれを豊満な胸で挟んだ。ちゃんと人の体温を再現しているセクサロイド特製の柔らかさに包み込まれる。

「ど、どう……?」
「いいぞ、アイの胸……やっぱりこれくらい体型変えられるんじゃないか……」
「うるさいもん、これ終わったら赤ちゃん体型にしちゃうからね!」

多分、コントロールできてないのは胸のサイズだけじゃない。体全体が制御不能なはずだ。体型を変えようとしたらどうなるのか、楽しみではある。目の前でもみゅもみゅと形を歪ませる乳房を見て、いろんな想像を……する余裕はない。快感が大きすぎて、思考があまりうまくできない。

「アイ、やっぱりセクサロイドだな……すごくキテるぞ……」
「ふん……。あんまり汚くならないようにお兄ちゃんの精液を吸収してるけど、いっぱい出てるね……でもそろそろ飽きてきたでしょ……?」

早くも十分が経過していた。全然飽きてなどいなかったが、アイは胸を持ち上げて俺から離れた。

「続きをしてもかまわないぞ?」
「その前にアイに何したか教えて」
「やだ」
「じゃあ、やっぱり赤ちゃんになっちゃうから……っ!!?」

アイは、制御できない体型変化を自分でしはじめてしまった。

「な、な、なにが……おこって……!」

胸はしゅるしゅると縮んだが、その分手足がグイグイと伸びた。髪はバサァッと背中にかかり、顔からは少し幼さが抜ける。赤ちゃんになるはずが、アイは中学生くらいに『成長』していた。

「こ、こんなはずじゃ……」

先ほどまでの爆乳はどこへやら、ぺったんこになった胸を触りながら、自分の体を確認するアイ。幼児体型から抜け出したその体はスラッとしてキレイだった。

「な、なによ、キレイって……」
「おっと、口に出てたかな」

頬を赤らめてもじもじするアイの仕草がまた俺を興奮させる。外観を褒めたのは初めてだから、かなり照れているんだろう。

「それはそれとして、あの、そのね、おなかが熱くって……」

……セクサロイドのベースプログラム……本能なんだろう。体型を変化させた後は性的にかなり興奮するようだ。

「でも入れるにはまだ小さいよな……じゃあ」
「ひゃぁっ」

さっきまで握りこぶしくらいあった乳首だが、いまは胸の上にぴょこっと立っているだけになっている。これくらいの年齢の女子にしても、小さいほうだろう。それを、俺は舐めた。

「んっ……もっとやさしくしてっ」
「やだね」

小さい乳首を、左は舐め回し、右は手のひらで触る。アイはビクビクと震えるが、逃げる様子はない。俺のことを受け入れて、快感に身を浸しているようだ。

「

沙月と命

男子中学生の少年は、目の前の机に置いてあるコップに入った、青と赤のスムージーをマジマジと見た。毒々しい色をしたそれの中では、何かが動いているようにも見える。

「なんだよこれっ!」
「今からキミに飲んでもらうものだよ、リア充くん」
「り、リア……?」

彼は、椅子に手足を拘束され、丸メガネをかけた科学部の男子生徒に、青のスムージーのコップを口に近づけられつつあった。その表面はもこもこと生きているように動き、まるで少年の中に入りたがっているようだ。

「く、こんなもの飲んだら死んでしまうっ!」
「大丈夫、死にはしない。ただちょっと、痛いかもねぇ。さぁ」

部員は少年の鼻をつまみ、スムージーを一気に少年の口の中に流し込んだ。

「うぅっ!ぐぼぼっ!!!」
「ほら、こぼしちゃだめじゃないか。キミの彼女も観ているんだからね」

少年の彼女は、二人の目の前で柱に縛り付けられ、スムージーを飲まされる少年に「沙月(さつき)!!」と叫んでいた。少年は、スムージーを飲み込みたくはなかったが、スムージーの方から、少年の中に潜り込んでいってしまう。

「んごごっ!」
「元気がいいねぇ、さすがボクが作った子たちだ……」

十秒もしないうちに、コップの中は空っぽになり、部員は少年からコップを離した。

「さて、お次はこっちを、カノジョさんに……と」

部員は、少年にしたのと同じように、少女には赤いスムージーを飲ませた。

「んぎゅうっ!?」

彼女も抵抗する様子を見せたものの、結局スムージーは一滴残らず少女の体の中に入っていってしまった。

「命(みこと)にまでそんなこと!ただではすませないぞ、この悪党め!」
「悪党で結構、結構。そんなことより、今飲み込ませたもの、何だか分かるかい?わからないだろうねぇ。だって、ボクが丹精込めて作った実験生物なんだからねぇ」
「実験……って、俺たちをモルモットにするつもりか!」

部員の丸メガネが、キラっと光った。

「ご名答」
「てめぇ、常識ねぇのかよ!!」
「常識……?そんなもの、とっくのとうに忘れてるねぇ。普段は、実験の秘匿性のためにただの根暗なヤツを演じてるが、それだけじゃ下らない下らない。ボクの知識と技術を活かしてなんぼの人生だからねぇ」

言葉を紡ぐと同時に部員の顔に現れるその笑みは、悪魔のようにネジ曲がり、悪意に満ちたものだ。

「悪魔、め……っ!」
「ふっ。そろそろ、次のステップに移らせてもらうよ」

部員のポケットから、アンプルと注射器が取り出される。アンプルには、透明の液体が入っている。

「まだ俺たちに何か打ち込むつもりかっ」
「活性剤さ。さっきキミたちの体に入っていった子たちが、キミたちの細胞に十分になじんでいるころだろうからね。それでは」

少年は必死に拘束から逃れようとしたが、抵抗むなしく、注射器を通して活性剤が注入される。

「んぐぅっ!!!??」

それと同時に、少年の体全体が殴られたかのようなショックを受ける。ドキンッ!!ドキンッ!!と強い感覚が少年を襲う。少年は痛みを目を閉じ歯を食いしばって耐えるが、心なしか手足の拘束が緩んでいく気がする。

「(こ……れ、はっ……逃げる、チャンスっ……!!)」

衝撃が収まると、少年は逃走のために拘束を振りほどいて、目を開けた。これで自由、と立ち上がって逃げようとした少年を、しかし、大きな違和感が襲った。

「(周りのものが、でかくなってる……!?)」

ちょうどいい高さだった机が、かなり高めになり、椅子も高くなって、少年の足は宙に浮いていた。部員も大きくなったように見える。

「(ちょっと待て、俺の周りが全て大きくなった……って、ことは……俺が、俺が……)」
「おや、思ったより効果が出るのが早かったようだね」
「俺、縮んでる!!??」

驚く少年の前で、同じく活性剤を注入された少女も、ギュッギュッと押し潰されるように小さくなっていく。中学生が小学生に、そして幼稚園生くらいまで。

「はい。これで初期段階は完了」
「ふ、ふざけるなっ!!」

少年も、同じく幼稚園生くらいまで小さくなっていた。声もかなり高くなっている。椅子から飛び降りて弱い力で部員に立ち向かうが、手も足も出ない。

「まぁ、諦めたまえよ。男なのにみっともない……いや、今は男じゃないんだっけ……?」
「はっ!?何言ってんだ、こんなに小さくなっても俺のチンコは……」

『ついてるぞ』と言おうとして、股間をまさぐる元少年。だが、そこには何もない。幼稚園生にも大きな豆粒くらいのモノがついているはずなのだが、なにもないのだ。部員が、自分の姿を確認しろと言わんばかりに差し出した鏡を見ると、瞳の色が青くなっていた。

「お、お、俺が女になってる……?」
「いや、女でもない。無性(むせい)の状態なはずだよ。そんなことより、カノジョの様子を見てみたらどうだい?」
「そ、そうだな」

無性、の意味が少年にはあまり分からなかったが、うながされるがままに、少年は少女の元に駆け寄った。少女も体が小さくなったおかげで拘束が外れ、床の上に四つん這いになっていた。着ていた服はほとんど脱げ、ブラウス一枚になっていた。といっても、少年もTシャツ一枚になっていたが。

「命(みこと)、大丈夫……か……?」
「さ、つ、き……」

少女の目は赤く光っていた。そしてその目を見た途端、少年の中の何かが変わった。

「命、さま……って、俺は何を!?」
「わ、わわ、今すごくイケナイこと考えてたっ!」

少年には、少女が、自分のつき従うべき存在に見えた。逆に少女には、少年が奴隷のように見えたのだろう。あたふたする二人に、部員が近づいてきた。

「どうだい?新鮮な感覚だろう?メスとオス、いや、キミたちはメスと無性の特徴を得たんだよ。ボクの子たちが持っている社会構造を、引き継いだんだねぇ」
「意味分かんないんだけど……」
「確実な生殖のために、メスが強い社会構造と、そのための遺伝子の特徴を持っているのさ。メスはあらゆる環境で生殖に適した生体構造を作り上げ、無性はメスの指示に従う。簡単に言うと、メスは無性を好きにできる。そして、メスは自分の体を作り変えられるのだ」
「だから……?」
「少女よ、少年の髪が伸びたらいいな、とか、考えてみるがいい」
「は……?うーん……」

少女が考えこむと、少年の髪が、バサッと伸びて、肩に掛かる程度になった。

「うわっ、すごい!」
「お、俺の髪が……」
「いいだろう……少女よ、キミは少年を意のままに操れるのだ」

少女は、目をつぶって少し考えると、うん、とうなずいた。そして、少年に向かってニコッと微笑んだ。

「沙月、私の妹になって!」
「お、お姉ちゃん、そんなのやだよっ!……って、俺は今何て言った!?後輩にお姉ちゃんって!?」
「おや、同級生ではなかったのだね……」

頭を抱える少年を、少女が撫でる。

「そうなの、沙月のほうが一つ上級生。でも、今日から私がお姉さん!」
「ほぉ……面白い。では、ボクはカメラを残して録画しているから、あとは隙に続けてくれたまえ……」
「うん!」
「うん!……じゃねえよ!なんで俺らが……」

少女の瞳が赤く光った。

「沙月ちゃん!年上の人には優しくしなきゃダメだよ!」

と同時に、少年の瞳は青く光った。

「う、うん。ごめんなさい、命お姉ちゃん」

部員はフッと笑うと、部屋から出て行った。少しすると、カチャッと鍵がかかった音がした。

「あ、そうだ……お姉ちゃんなんだから、もうちょっと大きくならなくちゃ……」

少女が息を吸い込むと、手足が少しずつ伸びて、ブラウスから股が見えるほど成長した。それでも元の体よりは小さく、小学生低学年程度の幼児体型のままだった。

「さぁ、沙月ちゃん!」

少女の瞳は赤く光ったままだ。

「なに?お姉ちゃん」
「沙月ちゃん、私たち、これから子作りしないと!」

空気が固まった。数秒の沈黙の後、二人の瞳が光るのをやめ、二人は慌てて視線をそらし背中を向け合った。

「こ、子作りぃっ!!??じょ、冗談やめてくれよ、沙月!!」
「わ、私、何かに取り憑かれてたみたい!!もう、恥ずかしいよ!」

二人の幼女は、顔を赤らめながら下を向いた。

「それで、どうする……ここから何とかして出ないと」
「うん、私たち、何かに操られてるみたいだし、この状況は脱しないとね」

ほとぼりが冷めてくると、元少年は部屋のドアの方まで歩いて行く。少女は、それを心配そうに見つめる。

「ち、ちくしょ、背伸びしてもとどかないぃ……」

元少年は、幼稚園生の体でドアノブに手を伸ばすが、ノブが上の方に設置されているのと少年の背が低すぎるせいで、どうしても手が届かない。その様子を見て、少女はクスッと笑った。

「わ、笑わなくてもいいだろ!?」

少年は、少女にむくれ顔を見せる。

「ご、ごめん、っ、でも……」

そして、少年と少女の目が合ったとき、またもや瞳が光りだした。

「ちょっと、背を伸ばして、もらおっかな……」
「や、やだっ……んぐっ」

少女が身長を伸ばした時とは裏腹に、少年の体からはバキッ、メキッと痛々しい音が聞こえる。

「痛いよぉっ!!」

自分の体を抱きしめ、悶えると、少年の体がグググッと体積を増し、手も足もメキメキ成長して、中学生位のものになった。ただ、筋肉はあまりつかず、肌は白く繊細で、男性らしくはなかったが、かと言って女性の二次性徴も全く無く、女というわけでもなかった。

「あ、そっか……沙月ちゃんが『無性』っていうのは、男でも女でもない、ってことかぁ」
「えっ……」

少女が少年の後ろに回りこんで、背が伸びたせいでTシャツからはみ出て、さらけ出された股間を確認する。

「うん、私のと違うね……」
「お姉ちゃん、恥ずかしいからやめてっ!……」

少年がとっさに股間を手で隠すと、少年の瞳の青い光が消えかかる。

「あ、お、俺は……俺の体、元に戻って、ない……」
「沙月ちゃん」

逆に、少女の赤い光は強くなった。それに呼応するように、少年の青い光は強さを取り戻した。

「その言葉遣いは、ダメ」
「ごめんなさい、お姉ちゃん……でも、沙月、男でも女でもないんだよ……?」
「じゃあ、女の子にしてあげる」
「ひゅあっ……!」

少年の胸がピクピクっと痙攣し、足がガクガク震え始めた。メキィッと音がすると、腰が横に広くなり、尻がムチッと膨らんで、男の時にはなかった丸みを帯びた。脚は内股になり、太ももにも丸みが加わる。次に、Tシャツに小さめな突起がピクッと突き立った。

「は、恥ずかしいよぉっ」

それを隠そうと両手を当てると、その下で胸が膨らむ。手のひらの下を満たすように脂肪がつき、さらに少年の手を押しのけようとする。しばらくそれが続くと、上半身全体がメキメキと形を変え、少しのくびれができ、ヘソも位置を変える。

「沙月ちゃん沙月ちゃん、あともうちょっとで女の子になれるよ」
「へっ……?う、う、おなか、がっ」

少年の腹部に、新たな器官が作られていく。生殖に必要な、卵巣と子宮が、少年の腹部を満たすように成長する。

「よし、完成……」
「うぅっ、お姉ちゃん、私、どうなっちゃうの……?……お姉ちゃん?」

少女は難しい顔をしている。少年は不安げに、少女に近づく。

「私、お姉ちゃんぽくない……」
「え?」

中学生の身長に、中学生にしては少し大きめな胸と尻を持った『妹』と、小学生低学年のちんまりとした体の『姉』。それをそのまま、本当に姉妹として捉えるには、違和感が大きすぎた。

「……そ、そうだよ……私、お姉ちゃんの妹じゃなくて……命のカノジョなわけだし……俺が女なわけないし……」

少年の瞳から光が消えていく。

「でも、お、俺に、おっぱいが……」

シャツを控えめに押し上げる自分の胸に、戸惑いながらも目がくらんでしまう少年。

「ふへ、ふへへ、触り放題……」
「沙月……」

自分だけの世界に入りかけていた少年だったが、少女の存在を思い出した途端、背筋が凍った。

「命!!ご、ごめん、俺はそんなつもりじゃ!!」

少女は怒りを露わにしていた。しかし、それは少年が思っていたものとは違った。

「沙月は、私に付き従うものなの……だから……」

小学生サイズの少女の体が震え始める。ただ、怒りからくる震えとは確実に違う震えだ。少女の体は、急速な成長の準備をしていた。

「み、命……?」
「だからぁっ!!」
「うわぁっ!」

少女の体が爆発した、ように見えた。というのも、130cm程度だった少女の体が一気に170cmまで伸びて150cm程度の少年を追い越したのだ。それだけでなく、胸もバインッと膨らんでGカップほどになり、ブラウスはいたるところが破れてしまい、大きく伸びた手足にはムチッとした脂肪がついが。その成長の衝撃で、部屋の中の物がごちゃまぜに吹き飛ばされ、床に少女の脚がめり込んだ。

「沙月ちゃんは、私以外見ちゃダメなの……」

元々より成長した少女は、淫らな目で少年を見つめた。そして、大きな胸をさらに強調するように手で持ち上げ、少年に見せつける。

「命……お姉ちゃん……っ」
「ほら……」

そして少女は、少年を抱きしめた。少年は、柔らかく大きな体に包み込まれ、その腕の中で安心感を覚えた。

「大好き、お姉ちゃん……」
「ありがと、沙月ちゃん……でもね、私たち、子作りしなきゃ……」

先程から強さが回復してきていた、少年の瞳の光が、一瞬にして弱まった。

「だ、ダメだ……沙月、そんなの違う!アイツの、いや、俺たちの体の中にいる得体のしれない生き物の言いなりになるなんて、ダメだっ!」

対して、少女の赤い光は、弱まるどころかさらに強まった。

「沙月ちゃん、何を言うの……?おとなしく、私のものになってよ……」

少年は、少女の意思で活性化される実験生物に心を乗っ取られまいと、これまでにない抵抗を見せ、瞳の光は点滅した。

「ダメだ、ダメだ、ダメだ!」
「そう、なの……それなら……」

すると、少女の体が、更に大きくなり、180cm、190cmと、グイッ、グイッと背が伸び、ブラウスを引きちぎるように胸が膨らみ、顔と同じくらいになる。そして少女は、増えた体重に任せて、少年を床に押し倒した。

「無理矢理服従させてあげる……」
「ダメ、だ……命、お姉ちゃん……違う、違うっ……俺は……私は……っ!」

光が激しく点滅し、少年の口調が一言ごとに変わる。

「命、は……、命お姉ちゃんは……なんでっ……これで……いいのかよっ……」
「私……?沙月ちゃんを私のものにできるなんて、願いがかなったようなものだから」
「えっ」
「沙月ちゃんは、私のものにはなりたくなかったみたいね?だから、そんなに抵抗する。でも、私は違うの。だから……」
「ん、んごごっ!!!んああっ!!」

少女の瞳が強く光った途端、少年のBカップほどの慎ましやかだった胸が、ムクッ、ムクッと大きくなり始め、シャツを押し上げる。

「私のものになって、楽になって?」
「んうっ!!……命、そんな……私、やだ……うううっ!!!」

胸の成長スピードが上がり、いつしか大きくなりすぎた少年の胸は、持ち主の動きを止めてしまうほどになった。

「私の言うこと聞かないと、一生動けない体にしちゃうよ……?」

少女の言葉は、本気だった。強く光る赤い瞳は、少年の青い瞳を捕らえて離さなかった。とめどなく大きくなる乳房は、自分の意志ではどうしようもなく、さらに少年にのしかかる少女の体は、どうやっても押しのけることはできない。逃れようのない現実を突きつけられ、少年の心は重圧で潰れ始めた。

「私っ……は、命の……命、お姉ちゃんの……」
「私の……?」

そして、プチッと、何かが切れた。

「俺は命の妹……、私は、命お姉ちゃんの、妹……」

青い瞳の光が、消えなくなった。

「もう一回、お願い」
「私は、命お姉ちゃんの妹、命お姉ちゃんの、好きにしていいもの、だよ……」
「うん……沙月ちゃんを、絶対に離さないよ……」
「うふふっ……うっ、ふっ……」

少年の胸が小さくなる代わりに、体全体が生殖に適した大きさまで成長した。

「じゃあ、いくよ、沙月ちゃん」
「うん、命お姉ちゃん……」

少女のヘソから産卵管が生成され、少年のヘソに突っ込まれる。はたから見れば異様すぎる風景ではあるが、二人にはこれが当然に思えた。

「お姉ちゃんの子供が、私の中に……」
「ちゃんと、元気な子を産んでね……」

そして、二人は抱きしめ合い、二人だけの時間を楽しんだ。

「……ふむふむ……この星の知的生命体には、思いの外なじめたようだな……」

ところ変わって、二人の様子を隣の部屋で、ずっとカメラを通して眺めていた、部員。

「宿主と繁殖方法を求め、この星に来て5年。長い道のりだった……二人の中で頑張ってくれた同志たちよ、実験生物と呼んですまなかった。だが、これからも健闘を祈っているぞ。生まれてくる子供にも、期待をかけよう」

部員の口から、ピュッと青い液体が飛び出した。部員はその場で跡形もなく消え去り、液体は空中をふわふわと漂ったあと、窓の外に出て、空の彼方に消えた。

地下に潜む触手

それは、父である俺と小学生の娘の真奈、二人で買い物に行ったときに起こった。河川敷を歩いていたときに、真奈が何か見つけたのか、土手にあいていた排水口らしき大きなトンネルの方に走って行ってしまったのだ。この前まで、こんなトンネルなどなかったはずなのだが。

「真奈!危ないから中に入ったらダメだぞ!」という俺の制止も聞かず、真奈は暗く大きいそのトンネルの中に入っていってしまった。俺は仕方なく後に続いて、暗闇の中に入った。

「く、くらいなぁ……」中には、電灯の一個すらも付いていない。入ったすぐ先が曲がっているせいで、太陽光すらもあまり届かない。と、だんだん目が慣れてきて、内部が見えるようになる。だが、そこにあったのはただの排水用トンネルではなかった。

俺がいるところから少し先に進んだところで、トンネルは終わっていた。そこから先はとてつもなく広い空間だ。その中で、一カ所だけ淡い光が灯っているところがあって、そこに真奈がぼーっと立っていた。俺とは逆の方向、空間の奥を食い入るように見つめている。こんなところ、早く出たい。さっさと真奈を連れだそう。

「真奈、さあ、出るぞ」と声をかけながら近づいていくが、真奈はやはり空間の奥を見つめている。なにかあるのだろうか?俺よりも視力が良い真奈には、なにか見えているのだろうか。段々不安になってきて、真奈まであと少しというところで、一回足を止めて、真奈の視線の先を見ようとした。

俺はその時になって初めて、空間に微かに聞こえるジュルジュルという粘りけのある何かがうごめく音に気づいたのだった。そして、逃げるにはもう遅すぎた。空間の奥から急に飛び出してきた四本の赤い触手が、真奈の体に絡みついたのだ。一本は胸、もう一本は腰、あとの二本は足に一本ずつ。次の瞬間、真奈は空中に持ち上げられ、一回見えなくなった。

「きゃああああっ!!」という真奈の悲鳴と同時に、ないと思っていた空間の照明が徐々に点灯し始めた。真奈を持ち上げた触手の持ち主は、今まで見た中で一番大きな動物だった象の、数十倍の大きさの赤い塊だった。その表面には無数の血管が走り、ドクンドクンと脈打っている。

さらに照明が明るくなると、その生物の表面にびっしりとニキビのようなブツブツした物が付いているのが分かった。それが何だか俺には分からなかったし、今は真奈の安全の方が重要だった。真奈は、高さ二メートルのあたりで、触手に下半身を固定され、必死で逃げようと、ジタバタ暴れている。

「真奈を放せ!この怪物が!」俺は、真奈の真下に走り、ジャンプすれば届く位置にある、真奈の足をつかんでいた触手に手を伸ばし、引きはがそうとした。だが、急に視界がフッと動き、体がグワッと動かされた。

「な、なにが……」と下を見ると、真奈を捕まえているのと同じような触手が、真奈と同じく、胸と腰と足をつかんでいた。そして、俺の体は宙に浮き、真奈の目の前に、同じ高さで固定されている。

「放せ!放せっ!!」俺は死にものぐるいで拘束から逃れようとしたが、俺の足と同じくらいの太さの触手はびくともしない。触手は赤黒く、怪物の本体と同じように表面に血管が浮き立ち、脈動していた。さらにぬめぬめとした粘液に覆われている。

「って、この粘液、俺の服を溶かして……」粘液は、触れた繊維を溶解させている。真奈の方を見ると、トンネルに入る前には全身を覆っていた服が、今や重要な部分しか隠していない。ただ、粘液が皮膚に触れても溶けるどころか痛みすら感じない。

「どういうことだ……」と、俺が頭を抱えていると、額にぴとっと触れる物があった。紛れもない触手だが、その瞬間、頭の中に声が聞こえてきた。『フフッ……我がトラップにまんまとひっかかったな、人間よ……』声は、ファンタジー映画で出てきそうな黒魔術師の、悪意に満ちた低い物にそっくりだった。

「……っ!」俺の声が、出ない。口は動くが声帯が従ってくれない。

『声は奪わせてもらった。男がわあわあ喚くのは、みっともなくて見ておれん。何か言いたければ、ただ考えれば、我が耳に届こう』怪物が、俺の考えを読んできた。相手は、人間には到底敵わない、いわば天敵だった。

『天敵。そう、天敵だ。我は人間を食らって生きる。お前たちは、これまで食われてきた多くの人間の仲間入りをする、単なるエサに過ぎん』怪物は触手を動かし、俺と真奈を怪物本体のイボイボに近づけた。すると、遠くからは見えなかった中身が、少しだけ見えた。人間だ。人間の顔が、中にある。俺たちも、こいつのようになるのか。

『そうだ。だが、その前にお前たちの体を作り替えなければならぬ。まずは娘の方からだ。父親のお前には、特等席で見物させてやろう』

真奈に、何をするつもりなのだ!?体を作り替えるだって?なぜそんなことを……

『我は、すべての生物と同じく子孫を残すために生きている。種族を残すために。しかし、不便なことに他の生物の卵子なければ、子供を作ることかなわぬ。それに、子宮も。そのために、体を変形させやすい人間を巣におびきよせ、我が子を身ごもるのに適した形に変えるのだ』

ということは、真奈の子宮や、卵子を使うというわけか!?まだ子供がどうやってできるかもしらない、小さな子の!?

『言っただろう。形を変えると』

怪物からの言葉と同時に、「うあっ……あっ!!」と真奈がうめいた。いつの間にか、もう一本の触手が近づき、真奈の二の腕に触れている。よくみると、その先端には細い針のような物があり、皮膚に突き刺さっている。そして、針が伸びている触手がグニッと膨らんだ。中に何かが詰め込まれているようだ。ま、待て、何かを真奈に注入するつもりなのか!

『ご名答』

「きゃあああっ!!」真奈が金切り声を上げた。触手の方は、今度は縮み始め、怪物の液体が真奈の中に入っていく。液体が、真奈に相当な痛みをあたえている。そして針が刺さっている腕の血管が、緑に光り、その光は全身へと広がっていく。俺は、取り返しの付かないことが起こったことを痛感した。触手は縮み終わると針を抜き、怪物の方へと引っ込んでいった。一方の真奈は緑に光る体を抑えながら、歯を食いしばって悶えている。光は段々と弱まっていったが、その様子は消えるというより、真奈の体になじんでいっていると言った方が正しいように思えた。

「はぅっ……ひぅっ……」

光が完全に消えたと思いきや、まだほのかに光っている真奈の体が、ビクンビクンと痙攣している。それは、心臓の動きに同調しているようにも見える。

『あの液体には、我のマクロファージ、大食細胞が大量に含まれているのだ。この娘の血管の中を通って、全身に送り込まれた。すぐに次の段階に移行するだろう』

「うっ……うぐぅっ……おむねに何かが……」真奈が、露出していた乳首を手で押さえた。すると、手のひらの下で平らだった胸に、プルンッと二つの盛り上がりが生まれた。「あついよぉ……っ」その盛り上がりは、プクッ、プクッと、真奈の手を押しのけながら大きくなる。どうみても女性の乳房だ。あっという間に頭と同じくらいの大きさになったが、まだ成長をやめない。

『人間の雌の授乳器というのは、変形させやすくて助かる。多大な栄養素を送り込むのに、うってつけの種族だ』

また、怪物の方から二本の触手が伸び、膨らむ胸を押しとどめようとする真奈の手を引きはがした。解放された乳房はへそを隠すくらい大きくなり、もはや漫画でも大きすぎると思うほどのサイズになっていた。たぷんたぷんと揺れるそれは、小学生の体とはかなり不釣り合いだった。腕を引き離した触手はそのまま、電光石火の動きで乳首に吸い付いた。「ひゃんっ!」という幼い喘ぎは、俺の股間に効いた。実の娘なのだが、どうしてもエロい。

「ひゃううっ!!」触手は乳房にたまった物を吸い出すと思った。しかしそれは間違っていた。もう巨大どころではない胸が、さらに膨らんだのだ。真奈は首をのけぞらせて痛みに耐えている。おっぱいは、フルフルと揺れながら、やがて体と同じくらいの大きさになっていく。

いつまでも膨張が続くように見えたが、いきなり触手が外され、触手から注入されていたのであろう液体が乳首からピュッと飛び出して、その『段階』は終わり、すぐに次が始まった。

グ、グググッ……

乳房が、音を立てて縮み始めた。まるで、真奈の体に押し込まれていくかのように、ブルブルと震えながらしぼんでいくのだ。すると同時に、おなかの部分が膨らみ始める。「んん~っ……!」真奈は、腹部が張る感覚でも感じているのか、手をおなかに回して膨らみを止めようとする。すると、胸がしぼむスピードが下がり、おなかの膨らみは緩やかになる。

「はぁ……」真奈は安堵のため息をついたが、それもつかの間、頭と同じくらいの大きさに戻っていた胸は、一気に真奈の体に飛び込んでいき、真っ平らになった。と同時に、臨月の妊婦程度のおなかが、二倍程度に急に膨れあがった。「かはっ……!」衝撃が強かったらしく、真奈は口を大きく開け、舌を出して、声にならない叫びを上げた。

谷間トンネル

夏のうだるような暑さの中、少年は住宅街の中を歩いていた。隣には、長い青髪を二つに束ねた女の子が付いている。

「こんな所であうなんて、嬉しい偶然だね、お兄ちゃん」
「あぁ……何でこんな所にいるんだ?」

少年は学校の帰りで、中学生の妹であるシホにばったり出くわしたのだった。シホは年齢不相応なスタイルをしていて、巨大な胸を、夏の暑さの中、汗で濡れた薄着の下でタユンタユンと震わせながら歩いていた。肌にくっついている生地のせいでその双丘の輪郭がいつもよりも大きく見え、襟からも谷間が見えている。といっても、本人に他人に見せつけようなどという意思はないのだが。しかも兄である少年はもう慣れっこで、別段驚くこともない。ただ、男として全く気にならないということでもないが。

「えへへ、先輩とちょっとお菓子屋さんに行っててね……あれ?あんな陸橋、この近くにあったっけ?」
「シホはここに来たことがないんだな」

二人の前に忽然と現れるコンクリートの橋桁。それは、住宅街に不自然に存在している新幹線の高架線路だった。都市どうしを無理矢理直線で結ぼうと、通る土地をいとわなかったせいで、こんな奇妙なことになっている。家はその向こうにあって、兄妹はその方向に歩いてきたのだった。

「これはな、新幹線が……」

ゴゴゴゴ……

少年が説明しようとした矢先、新幹線が近づいてきたことを示す地響きがし始めた。そこでやっと、彼は妹の「秘密」を思い出した。しかし、もう遅かった。

ビュンビュンビュン!!!!
「ひぃっ!!??」

新幹線が風を切る轟音が辺り一帯に響いた。と同時に、それに驚いたシホの体が……大きくなり始めた。兄より頭ひとつ小さかったのが、あっと言う間に追い抜かされる。ググググ……と体全体が大きくなり、そのスタイルが強調されるように服がぴっちりとくっついたかと思うと、ビリビリと破かれていく。そして、5秒ほど経った時には5m上にある高架橋の高さに届いてしまった。もはや、伸縮性の高い下着だけがシホの体を包み、住宅街のど真ん中で肌の殆どを露出した巨人と化してしまった。少年には妹の心臓の鼓動が地面を伝って、ドクンドクンとハイペースで聞こえてきて、その驚きが収まってないことがわかった。

「ああ、これは困ったことになった……」
「おにいちゃぁん……」

大きくなった妹の声が遥か上の方から発せられる。シホは、驚くと体がサイズ的な意味で大きくなってしまう体質を持っているのだ。

巨大化はまだ止まっていなかった。10m、20m、40mとどんどん大きくなる少女は、汗が滴る胸や尻を惜しげも無くさらしていた。しかし20階建の中層ビルになったところで高架橋につまづいてしまい、バランスを崩して橋の方に倒れ始めてしまった。それに、次の列車が、意味もなく警笛を鳴らしながら近づいてきていた。

「きゃああああっ!!ダメぇっ!!」

高架橋を破壊する寸前になって、すでに考えられないほど巨大だった胸がブルンッ!!ムギュギュギュ!!!と大きくなり、それによってともに大きくなった谷間に、橋桁はスポッと挟まれた。尻もプリンっと空に向かって膨らみ、逆にウエストはキュッと絞られる。巨大化の体質の他に、他の人の危機を感じ取ると成長するという体質も持っている。自分が倒れこむことにより線路が破壊されるのを危惧し、その体質が現れたのだった。

列車は、突然現れた巨人の乳房の間を、スーッっと抜けて……行かなかった。非常ブレーキをかけた列車はシホの下で止まってしまった。

「は、恥ずかしいから早く行ってぇっ!!」

少し大人びた少女の叫びは、普段の騒音の何十倍にもなって、家々の窓を破壊し、新幹線の架線も至るところでプチプチと切れた。周りの異変に驚き、更に何倍にも巨大化していくシホ。真下で耳を押さえていた兄は、溜め息をつくしかなかった。
shiho