うたたねの姫 後編~太地~

あむぁいおかし製作所様での投稿(http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-26287.html)と同内容です。イラストは春瀬めいお様に描いていただきました。

「ったく、変なことになったな……」

太地は足の遅い学を置いて、家に帰っていた。汗をシャワーで流し、部屋着を着て自室に入ると、自分のかばんが目に入った。

「ちっ、宿題やんねぇと補習だったか……」

スマホで時間を潰そうと思っていた太地だったが、ため息をついて教科書とノート、筆記用具をかばんから取り出し、机の上に投げた。

「あーあ、あいつに勉強教えてる余裕なんてないんだよ、何してんだ俺は」

そして何気なく自分の胸を触る。図書室での出来事を思い出し、そこに確かにあった乳房を触ろうとするかのように。

「……って、ホントなにやってんだ」

太地は顔をパンパンと両手で叩き、椅子に座る。そして教科書を開くが、顔をのぞかせた文字の羅列に頭を抱える。

「……これどうやって解くんだよ、女になった俺ならわかるのかねぇ!」

問題を見ても、何を書いているのかさっぱりな部分すらある。それをぼーっと眺めてるうち、太地はうとうととしはじめた。

「……くっ……補習……が……」

そして、太地は眠りに落ちてしまった。が、頭をくすぐる感覚に、目が覚める。

「寝てたのか、俺」

妙にチクチクする頭を掻く太地だったが、その手に感じたのは長く柔らかい繊維の感触。

「なんだってんだよ……ま、まさか!また女になってる!?」

その手を股間に持っていくと、そこにあるはずの男の象徴が跡形もなく消えている。よく見ると、その腕も細く短くなって、部屋着がぶかぶかになっている。

「ってことは、……んぅっ!」

胸が内側から押し上げられる感触がすると、服に小さな二つの膨らみが現れた。

「ち、ちくしょ、戻ったらそのままじゃないのかよっ!」

膨らみはグググッと大きくなり、服の上からでも明らかにわかるほどのバストサイズになる。

「んあっ!」

さらにボンッと一回り大きくなって、部屋着がギチッと音を立てた。それで、変化は収まった。

「はぁ、はぁ……声まで女に……」

太地は、視界に入ったスマホを手に持って、カメラアプリを起動した。

「今の俺って、どんな感じになってんだ……?っ!!」

画面表側のカメラに切り替えると、そこにはとびきりの美少女が映っていた。その端麗さへの驚きと、その少女が自分であることをにわかに信じられないことからくる違和感に、太地の体は固まった。

「これが……俺……?」

その時、腕時計の時報がピピッと鳴って、午後6時になったことを告げた。太地はハッと我に返った。

「くっ、こんなことしてる場合じゃ……」

教科書とノートに向き直り、時間との戦いとばかりに打ち込んでいく。太地は、自分が女になったことを忘れようと、必死に宿題を進めていった。

「え、もう終わった……?」

もとの太地なら頭をフル回転させてもわからない問題も、今の太地には赤子の手をひねるような簡単さになっていた。その上で本気を出したのだ、宿題は10分もしないうちに片付いてしまった。

「嘘だろ……」

太地は戸惑い、胸に手を置こうとした。しかしその手は、部屋着の胸の膨らみの上にあるぷくっとした突起……乳首に触れた。

「ひゃぁっ!?」

太地は、思いもしない刺激に小さな叫びをあげた。できたばかりの乳頭は敏感だった。ジーンとしびれるような感覚に、椅子に座っていられなくなった太地は、思わず床に崩れ落ちてしまった。ブルンブルンと揺れる胸は、服と擦れてさらなる刺激を生み出す。

「んひゅっ……や……っ!」

意識が飛びそうになる太地だが、刺激から逃げようとなんとか服をめくりあげた。太地の目に飛び込んできたのは、透き通るような白い肌に包まれた、柔らかく、丸みを帯びた膨らみ。その先端は、ピンク色にその存在を主張している。

「女の、胸……」

肌色の膨らみに触れると、むにゅっと形を変える。

「んっ……すごくやわらかい……」

高くなった声に合わせるように、太地の口調もやわらかくなる。

「そうだ、足の方は……」

部屋着のズボンに手をかけ、下げる太地。中からは、プルンと震えるヒップと、すべすべとした太ももがお目見えし、健康的な脚が姿を現した。

「本当に、俺が女の子に……」
「太地?帰ってるんでしょ、夕飯できたよ」

股の間に手を伸ばそうとした太地だったが、部屋の外からの声に、その動きを止めた。

「か、母さん……あっ」

高いアルトの声で答えてしまいそうになった太地は、口を覆った。

「太地?女の子でも連れ込んでるの?」

部屋の外から、足音が近づいてくる。太地は、なんとか体を起こすと、クローゼットの中に飛び込んで、扉を閉めた。同時に、部屋のドアがガチャッと開いた。

「あら?誰もいないの?……また服を散らかして……何、この長い髪、あの子と同じ色してる?」

なにかの拍子に抜け落ちた、太地の髪の毛だった。ドキドキと鼓動が響く。太地は息を殺して母親が去るのを待った。時間の流れが遅く感じるほどの緊張だったが、やがて母親は部屋から出ていった。

「はぁ……よかった……」

クローゼットから出た太地の体は、元の男のものに戻っていた。太地は、安心するとともに少しの物足りなさを感じていた。

「おい、学!」
「な、なんだよ、太地……」

次の日、学校で太地は学に詰め寄っていた。周りの、待望の女子がいなくなってがっかりしたような、元の日常に戻って安心したような視線を無視しつつ、太地はものすごい剣幕で学に怒鳴った。

「昨日の薬、瓶捨てちゃいねぇだろうな!?」
「……な、なな、なんで捨てちゃいけないんだよ」
「いいから!!持ってるなら出せ!!」

太地の怒りは、まるで何かから目をそらすような焦りのようでもあった。

「はい、これ……」
「おう!!つべこべ言わず最初っから出しやがれ!」

瓶の上のラベルを読んでいく、太地の目に一つの文章が飛び込んできた。

「『睡眠時に成長ホルモンを分泌させ、脳を活性化させます。同時に、女性ホルモンを出させることでその効果を高めます』……って、寝るたび女にならなきゃいけないってことかよ!」

周りがざわついた。太地はクラスメイトたちを睨みつけた。

「お前ら、俺は金輪際、ぜってぇ居眠りなんてしねぇからな!」

小さく「フラグかよ……」という声が聞こえ、太地はそちらに目を向けたが、ついに誰がその声を上げたかは分からなかった。

その日は、クラスメイトたちの期待むなしく、太地は居眠りすることなく授業を受け続けた。

「ふん!俺だってこんなことになっちゃ居眠りなんかしねぇよ」
「あ、あの……」

帰り支度をする太地に、弱々しい声がかけられる。疑いもなく、学の声だった。

「また、勉強教えてほしいんだけど……」
「あん!?」

学に向き直った太地は、もちろん断るつもりだった。太地の成績は、むしろ誰かに教えてほしいくらいのもので、こんな厄介事に巻き込んだのは学の持ってきた薬だった。

「……おう、わかった」

太地は自分でも口にした言葉が信じられなかった。だが、前の日に経験したいろいろな事が、太地の心を動かしたのは、なんとなく分かった。

「じゃあ、僕の家に来てよ。今日は誰もいないから」

学の家に着いた二人は、黙々と勉強の支度をした。太地は、勉強中に居眠りすることで女になることを、潜在的に理解していた。

「ほら、勉強するんだろ」
「あ、うん」

太地は、目の前に広げた教科書を読んでいく。やはり、内容は半分わからない。そして、そのまま寝てしまった。

「太地、太地!」

学の呼ぶ声に目をさます頃には、髪は伸び切り、手足は短くなり、胸がムクムクと膨らんできていた。

「き、来たよ……」
「あ、あ……お、おんなに、女になるぅっ……!」

太地は喘ぎ声をあげ、体をくねらせる。不思議なことに、焦りは感じない。むしろ、この変身が気持ちのいいもののようにも感じる。

「ふぅっ……!」
「じゃあ、いろいろ教えてよ」

変身が終わった太地を見て、鉛筆を置いて太地に近づく学だったが、太地はその口に人差し指を当てた。

「だめ、まずは学校の勉強からね」

体に引っ張られるように、太地の口調が柔らかくなっていた。太地は、今の自分の容姿の女子が使いそうな口調を、無意識に使っていた。

「うっ、分かったよ……」

太地は、ムンムンと色気を漂わせつつ、学に勉強を教え始めた。数十分もそれが続いて、学はやっとのことで最初に決めていたノルマを達成した。

「じゃあ、今度こそいいよね」
「もう、せっかちなんだから」
「えへへ」

太地は立ち上がって、学の後ろに回り込む。そしてその背中に、ムニュッと胸を押し当てた。

「(あれ……俺はこんなことしたくなんてなかったはず……)」

太地の考えとは裏腹に、その腕は学をギュッと抱く。

「きもちいい……」
「でしょ?」
「太地っ!」

学はバッと立ち上がり、前の日と同じように、太地の肩を掴んでベッドに押し倒した。

「きゃっ!」
「すごく、かわいいよ……」

顔を赤らめる太地。男にかわいいと言われて喜ぶ趣味は、太地には無いはずだった。しかし先程から演じ続けている「女の子」には、効果テキメンなのだった。

「本当に?」
「ホントだよ……おっぱいもおおきいし、すごいよ……」
「じゃあ……」

ボタンを外していく少女。その体の動きは、太地の制御が効かなくなっているように思えた。すべてのボタンを外すと、胸の間にできた深い谷間と、へそが顔を出した。

「(今の俺は、俺じゃない、俺じゃないんだ……)ほら、触っていいよ……女の子のカラダ、勉強して……?」
「じゃあ、ここから……」

学は、すべすべとしたおなかを撫でる。

「(ちくしょ、何でこんなこと、俺が……)ん、んっ……おっぱい、じゃないの……?」
「こ、ここもキレイだし……」

少女は、恥じらいつつも学を受け入れ、大人しくしている。学はそのままベルトに手をかけ、外し始めた。

「(おま……)ちょ、ちょっと……」
「いっぱい勉強、させてよ……」

ズボンが降ろされ、皮下脂肪で少しふっくらとした脚が引きずり出された。

「しかたないなぁ……(しかたないよな……)」
「女の子の脚って、こんなにきれいなんだね……」

少女は学にされるがままになっていた。

「あっ……」

だがその時、時間切れが近づき、巨大な胸が縮小を始めた。少女は太地に戻ろうとしていた。学は、一瞬残念そうな顔をしたが、何かをひらめいて、大声で言った。

「世界で一番大きな大陸は!」
「え、な、なに?」

少女は度肝を抜かれて驚く。

「答えて!」
「えっ、ユーラシア大陸……?……んぁっ!!」

半分の大きさまで縮んでいたおっぱいが、一気にその大きさを取り戻した。

「な、なにこれ……もしかして、勉強しつづければもとに戻らなくていいの……?」

自分が発した『もとに戻らなくていい』という言葉に、太地は違和感を覚えたが、それはごく小さなものだった。

「べ、勉強中は男に戻らなかったけど、それをやめたら5分くらいで戻ってたよね……」
「なるほど……でも、二回しか見てないのに、よく気づいたね、学」

少女はニッコリと笑みを浮かべた。

「えへへ……じゃあ、こんな世界一高い山みたいなおっぱい、触らせてね……」
「んっ……エベレストね、私の胸はそんなに大きくないよ……」

学は、その深い谷間に顔をうずめた。

「ま、学……」
「やわらかくて、あったかい……」

顔を離した学は、恍惚の表情を浮かべている。だが逆に、少女は物足りなさそうにした。そして、赤面しながら、下着を指差して聞いた。

「学、ここはいいの……?」
「えっ……いいの?子供ができちゃう穴じゃないの?」
「大丈夫、保健で勉強したでしょ、一ヶ月に一回、危ない日を避ければいいの」
「いや、そういうことじゃなくて……」

学は下を向いてもじもじし始めた。その腕を、少女は優しく掴んだ。

「どうせ、こんなことできるの、私くらいしかいないでしょ?」
「う、うぅ……じゃあ……」

学は、自分のズボンから短めの得物を出した。

「うふっ、かわいい」
「い、いくよ……」

おそるおそる、少女の股に、それを挿し込んでいく。

「うっ、思ってたより気持ちいい……」
「学のモノが、中で大きくなってる……」

初体験の感覚をもっと得ようと、学は腰を前後し始める。

「あんっ、すごい、くるよ、くるよっ」

太地の意識は、もはや少女のものとなりきり、当然のように学を受け入れていた。

「学っ、もっと問題出して!私を女の子にし続けて……っ!」
「ん、ん、そんなことっ……言われてもっ!」
「出してぇっ!」

少女の胸は、またもや縮み始めていたのだった。

「ふ、フランスの首都はっ!」
「パリだよぉ……っ」

ムチっと膨らむおっぱい。学は、それを鷲掴みにした。

「んひゃっ!学はやっぱり、そこが好きなのね……!!」
「だ、だってっ……こんなに、大きいの、他にない……!」

上下左右に揉みしだかれる巨大な胸。学の速度も、どんどんペースアップしていく。

「だ、だめっ、そんなに激しくっ、イッちゃうぅっ!!」
「う、うぅっ、出るっ!」

初心者二人の絶頂は早く、ほぼ同時だった。学は、フラフラとしながらも怒張しきった自分の息子を引っ張りだした。少女の方は、疲れたのか、快感で意識が飛んでしまったのか、そのまま目を閉じて動かなくなってしまった。
学はぬめぬめとした液体まみれのまま、「勉強相手」に寄り添って眠りに落ちた。

「……もとに戻らないんだけど……」
「ど、どうしちゃったのかな」

二人が目を覚ますと、夜も8時を回っていた。太地の体はもとに戻っておらず、学がシーツの匂いを取るために20分以上かけたあとも、それは変わっていなかった。

「もしかして、イッちゃうと戻れない的な……?」
「そう、みたい?」

太地はハァとため息をついて、学に向き直った。

「な、なに、太地?」
「……責任、とってね……?」

その照れた顔に、学はうなずいた。

学が変身するパターンへ

うたたねの姫 後編~学~

あむぁいおかし製作所様での投稿(http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-26245.html)と同内容です。イラストは春瀬めいお様に描いていただきました。

「はぁ……はぁ……なんとか、なったか……」
「ごめん、僕の家まで来てもらって……」

二人は、学の家の一人部屋にいた。学が、逃げる途中で疲れ切って荷物も持てないほどになり、仕方なく太地がついてきたのだった。

「……ってお前、まだこの薬あるのか」

学の机の上には、ついこの朝見た薬の瓶が何本か並べられていた。

「薬……?あぁ、だって、すぐに効くなんて思ってなかったし、サプリみたいに何回も飲むものだって言われたから……」
「お前ってホント騙されやすいのな……まぁ、こんなにすぐにもとに戻るようじゃ、本当に成績伸ばすには何本も必要だろうよ……もうこの教科書も半分わかんねぇし」

さきほど図書室で学にスラスラ教えていた数学の教科書を見ながら、太地はため息をついた。

「つまり、頭が良くなるためにはあのボインボインのままでいろってことか」
「……ま、また薬飲んで勉強教えてくれる……?」

太地は、若干鼻の下を伸ばしている学の顔を見て、寒気が走った。

「で、発情したお前に襲われろってか……」太地は、薬の瓶を一本取って、蓋を開けた。そしてその瓶を、学の口に突っ込んだ。

「ふざけんな、自分で勉強しやがれ!」

太地が学の鼻をつまむと、学は薬の中身を飲み込んでしまった。

「……げほっ、げほっ!の、飲んじゃった……」
「さーって、今度はお前が女になる番だ、せいぜい楽しませてくれよな……」
「や、やだぁ……」

太地は、学の体が変化し始めるのをいまか、いまかと待った。だが、何も起きない。それは、1分たっても、2分たっても同じだった。壁掛け時計がカチカチと鳴る音が部屋に虚しく響いた。

「……あー、なんか冷めちまったな……」
「……はぁ……」

太地はじーっと目を凝らして見続けていた学から目を離した。学も安堵したのか、ため息をついた。

「ま、そろそろ帰るか……ん?」
「今度は何?」

太地は、本棚にあった一冊の本に目を奪われていた。

「おっ!本屋で売り切れてた最新刊じゃん!学、これ読んでいってもいいよな!」
「えっ……」
「あん?」
「あ、うん……」

一旦断りかけた学だが、太地の苛立ちの目に圧倒されてしまった。

「よし。読み終わったら帰るからよ」
「う、うん……僕は勉強してるから……」
「お、いい心意気だなー」

学は教科書と宿題をかばんから取り出して机で勉強し、太地は本棚から漫画本を取り出してベッドで読み始めた。

「……しっかし、なんで俺は女の子になってお前はならないんだろうな……って、寝てるし……」

勉強し始めて何分も立たないうちに、学は疲れ切ったのか寝てしまっていた。

「しかたねぇやつだなぁ……。ん?おっ?」

そして、その短く切った髪の毛が、伸び始めていた。太地は漫画本を投げ捨て、ベッドから立ち上がって学に近づいた。確かに、その髪がシュルシュルと伸びている。

「おい、学、起きろ……って……?」
「ん……」と声を出した学は、元々から小柄だった体がさらに小柄になっていく……のではなく、大きくなり始めていた。肩は段々と丸くなっているのだが、広くなっていく。そのせいで、着たままだった制服のシャツが引っ張られている。

「僕の腕、長くなってる……?」そういう学の腕は確かに長くなっていた。変身のときに明らかに元より小さくなっていた太地とは逆に、学は平均的な女性の身長、いや、太地の背にも近づいていくようだった。

「足、キツい……っ」目は覚めつつも、まだ寝ぼけている学のズボンがパンパンになり、ビリビリと糸がほつれる音がしている。そして、「んんんっ……!」という学の喘ぎとともに、縫い目からバリッっとズボンが破れてしまった。

「学、お前……」ズボンの中から現れたのは、長くてムチムチの太ももだった。そして学が立ち上がると、シャツのボタンもバチバチと飛び、女性のものとなった学の体があらわになった。しかも、その身長は太地と同じくらいになっていた。

「あれ……?太地の背が低くなってる……?」
「お前の背が高くなってるんだよ!」

寝ぼけまなこで太地の顔を見てキョトンとする学にツッコミを入れる太地。

「えへへ、そっかぁ……じゃあ……」
「うわぁっ!?」

太地は、またもや学に押し倒された。今度は、ベッドの上に。

「また太地と遊べるんだね」

恍惚とした学の顔に、寒気を覚える太地。

「べ、勉強しろよ……それに……」
「ん?」
「こんな胸じゃ俺をコーフンさせられないぜ!」

ぺったんこのままだった学の両乳首をつまんでニヤッとする太地。先程の図書室での仕返しのつもりでもあった。

「んぅっ……!」そして、太地の思ったとおり、学はその刺激に悶絶して仰け反った。だが、同時にムクッと膨らんだ胸に度肝を抜かれた。

「んへへ……変身、まだ終わってない……みたい……っ!」

控えめに膨らんだ胸が、ブルンッと爆発的に膨らむ。一気に、さきほどの太地と同じサイズの乳房が出来上がってしまった。

「お、お前……」
「とまんないよぉっ……まだ、おっきくなるよ……っ!」

ムグググと膨らむおっぱい。それを、学は自分の両手で持ち上げる。

「やわらかぁい……でも、もう……ちょっと……!」

そして、最後の仕上げとばかりに、頭ほどに大きくなってしまった。太地は、今度は寒気というより恐怖を覚えて、ベッドから逃げようとした……が、遅かった。

「……んふふ、お姉さんと、あそぼ……?なんちゃって」

図書室でのセリフを返した学が、胸から先に太地にのしかかったのだ。張りのある、だがこの上のなく柔らかくて温かいものが体を包む感覚が、太地の動きを鈍らせる。

「や、やめ……」
「えへへ、僕、薬で頭が良くなったせいでいろんなこと分かっちゃうんだ……太地が、年上のお姉さんが好きなこと、それに……」

学は、太地の顔をなでた。

「攻めに弱いってこと」
「そ、そんなこと……」

学は、太地のズボンのジッパーを、ゆっくりと開けていく。

「じゃあ、どうしてこんなに勃たせてるのかな……?」
「それは、おっぱいが気持ちよくて……」

そうだね、と学は体を起こし、その豊満な胸を太地から離した。そして少し考えたあと、今度は太地の横に寝そべった。

「じゃあ、『お姉さん』の言葉責めはどう……?」
「ゴクリ……はっ、俺は何を考えて……」

太地は、「言葉責め」を想像しただけでも興奮している自分に気づいた。完全に、学に弱みを握られている自分に。

「あはは、やっぱりね」
「どうして、俺の時はそんなことまで気づかなかったのに……」
「そりゃ、太地は僕のことなんかあまり気にしてないみたいだからね。僕は、唯一の話し相手の君しか、気にするものがなかったんだ」
「お前……」

ニコッと微笑む学。

「だから君の目に止まりたくてあんな薬を買ったんだけど……」

学の胸が縮み始める。

「あ、もう時間切れみたいだ」
「はぁ、どうなるかと思った……」

太地は、小さく、もとに戻っていく学を見て、胸をなでおろした。

「あ、あはは、楽しかった……」
「今度やったらただじゃおかないからな」

太地は、もとの気弱な少年に戻った学に、脅し文句を言った。

「え?ほんとに?」

だが、いつもどおりとは行かなかった。オドオドしているが、学はニヤリとほくそ笑んでいた。

「な、なんだよ」
「太地の好みの『お姉さん』、また見たいでしょ……?君こそ、僕をいじめないほうがいいよ」
「……ば、バーカ!!」

太地は、その場から逃げるように立ち去った。

その数週間後。

教室でこそこそと離す二人の生徒。

「太地って、丸くなったよな……?学に対しては特に、だけど」
「この間……太地が変なことになったあと……だよな」
「あれ、仲良くとなったというか、なんか別モンのような気もする」

その視線の先では、昼ごはんのパンを同じ机で食べる太地と学の姿があった。

「太地くん……あ、いや、太地、あとでまた勉強教えてくれるかな……?」
「あぁ、分かった……この頃は必死に授業受けてんだ、だから……」

太地は急に頭を下げた。

「ん?」
「今夜も、アレ、やってくれ……」

学は、微笑んだ。

太地が変身するパターンへ

ラド的な子

ここは、核戦争が起き、破滅してしまった世界。どこかで致命的な間違いが起き、人類がほぼ吹き飛んでしまった時間軸の話。
ハリボテ小屋の中で、一人の少女、ジーンが、腕につけたモバイルコンピュータ、ポップガールの値を読み取っていた。

「そろそろ、ラド値を落とさないと……」

ラド値とは、この汚染された世界で、そこら中に分布している人体に害をなす汚染物質、「ラド」の体内濃度の指標である。幸いにも、ラドバイバイという薬を使うことで、濃度を落とすことができ、人類はなんとかこの「ラド」がある世界で生活することができていた。

「よし、と……」

点滴のように血液に注入するその薬だが、少し不純物が混ざっていることは日常茶飯事で、それに耐えることができるように、人間の体は少し変化を遂げていた。
だが、その日の不純物は、いつもと違うものだったということにジーンが気づくのは、まだ先の話である。

「これで、また全力で探索できるね」

空になった薬の袋を机の上に置く。この袋も、重要な物資だ。ジーンの小屋の中には、さまざまなガラクタが置いてあった。産業という産業が存在しないこの世界では、ベッド、椅子、机、すべてをガラクタで作る他ない。愛用の銃も、パイプや、針金などを組み合わせて作り出した、手作り感満載のものだ。

「食べ物も、飲み物も腐ってきちゃってるし……また、あの水たまりに水をくみに行こうかな」

そう言って、銃を腰のベルトにさし(これもお手製のものだ)、弾や、もしもの時の保存食品や、銃の補修部材をカバンに入れる。そしてジーンは、荒れ果てた世界へと家を後にした。

ジーンは道中、ラドに汚染されたモグラの群れに出会った。
外には、ラドに汚染され大型化したネズミや蚊、他にも危険な動物がたくさんいる。しかし、その動物を食わねば、生きていくことはできない。一人で倒せそうであれば、動物の群れにも攻撃をしかけるのが普通だった。

「一匹、ラドまみれのやつがいる……でもやるっきゃないか」

モグラは、比較的弱い部類の動物だ。ただ、一匹ラドをまとい、緑の光を体内から発しているものがいた、噛みつかれれでもすれば、ラドがジーンの体内に入ってしまうだろう。しかし、ジーンとしては、この獲物は確実に仕留めておきたいものだった。

「よし、いくぞ!」

まずは一匹目に気付かれないように近づき、そして頭部に一発、銃弾を打ち込んだ。その銃声で、周りのモグラが一斉に地面に潜る。モグラが潜るのは、逃げているのではなく、地面の下から不意打ちを食わせるための攻撃手段だった。ジーンの記憶が正しければ、生きているのはあと二匹である。

「ここから出てくるか……」

地面の音を聞きながら、攻撃を喰らわないように位置取りをするジーン。そして思ったとおりの場所から出てきた二匹を、確実に射撃した。

「ふぅ……あれ?あのラドまみれのやつは……?」

その時、ジーンの真下から、緑に光るモグラが飛び出し、間髪入れずに足に噛み付いた。

「うぐぁっ!」

ジーンの中に、ラドが入り込む。しかしその時、普段感じない衝撃が、ジーンの体を貫いた。

「な、なに……!?」

再びモグラは地面に潜った。気を抜いている暇はないが、なぜか手にはめている手袋が、すこしきつくなっているのに気づく。

「き、気のせいだよね?」

集中が切れたジーンは、さらなる攻撃を受けないように、後ろへと下がる。だが、ラド物質がたんまりと入ったドラム缶が後ろにあった。

「あ、やば……」

その存在に気づいたときには、もう遅かった。ジーンはドラム缶を押し倒してしまい、飛び出してきたラド物質を全身にかぶってしまった。

「くぅぅ、また貴重な薬を使わないといけないの……?」

遠くでモグラが地面から飛び出した音がしたが、もうこちらを見失っているようで、地面を走ってきたり、再び潜る音はしてこなかった。それよりも、体についたラド物質から、ラドが皮膚を通して侵入をはじめたときの衝撃のほうが、ジーンを驚かせた。

「うぐっ!な、なにっ!!??」

普段、ラドが体内に入るときは、体力がどんどん削られていく。しかし今は、体の中に大きな熱が入ってきていた。そして、その熱が体のなかで膨らんでいくような感覚が、ジーンを襲った。

「お、おかしいよ、何が起こってるの!?」

ジーンの手や足が、徐々に長く、太くなっていく。メキメキと音を立てながら、骨格が成長していくのだ。まるでラドが体の一部になるかのように、ジーンの体を作り変えているのだ。ジーンは、ラド物質を急いで拭き取るが、その間にも、胸当ての中で胸が膨らみ、圧迫感が大きくなっていく。

「や、やめて、こんなところで装甲が合わなくなるなんて、死ねと言ってるみたいじゃない!」

しかし、完全に合わなくなる前にラド物質を拭き取り終わり、ジーンは九死に一生を得た。

「うぅ、なんなのよ……これ、薬を使えばもとに戻るのかな……」

一回り、二回り長くなった手足と、明らかに大きくなって、胸当てを押し上げている自分の乳房を見つめながら、ジーンはそれでも、進み続けるほかなかった。ラド値はまだ低く、薬を使うのはもったいない。
最後の一匹のモグラも無事仕留め、肉を切り出すことができたジーン。

トキシフィケーション~毒の力~ 温泉編2前編

例の家族を実験台にしてから一ヶ月。一度母国に帰っていたのだが、その家族がまた宿を取ったので、私は戻ってきていた。宿屋とは名ばかりで、宿泊室が一つある以外は私の研究所支部となっているその建物に、彼らは娘の友だちを3人連れてきた。

「いらっしゃいませ」
「また、来ちゃいました……」

今度は、同時翻訳ツールで、難なくこの国の言葉をしゃべることができる。連れられてきた3人は、全員小学生で、一人だけが男、残りが女だ。男は多少太り気味だったが、肥満とまではいかないくらいで、身長も高い。

「こんな田舎まで、また来てくださってありがとうございます」
「いいえ、娘が聞かなくて……」

まあ、娘の記憶を操作してここで楽しいことが沢山あったことにしたのだから、そうなるだろう。娘だけでなく、父親の記憶も操作していたが。

「で、ここのどんなことが楽しいの?」
「え?うーん、お風呂が楽しいよ?」
「おふろー?バーベキューとか、そういうのはないの?」

『楽しいこと』を、単に『楽しいこと』と記憶に刻みつけていたから、その内容は娘が適当にでっちあげるしかない。それでも付いてきたこいつらは間が抜けているはずだ。さっさと、実験を始めてしまおう。

「それでは、中にお上がりください。お飲み物を用意しましょう」

それから、親にはもう何も考えずに睡眠薬を飲ませ、子どもたちにはそれぞれ違うものを飲ませた。ジュースと偽って飲ませたその飲み物にはやはり睡眠薬が入っていたが、ほぼ薬や毒が主成分だった。

そして、4人を全員、施設内にある実験室、その金属製の実験台の上に乗せ、それぞれの手足に鎖をつけ、予約の情報と照らし合わせながら、被験体を吟味する。
まずはリピーターの真波(まなみ)。もともとは男だったが、前回の実験で女となり、加えて男に接触すると体が成長するようになっていた。実際に腕に触れると、ぐいっと体が大きくなる。中学生くらいになった体で、まだ寝息を立てている。
つぎに、少し気弱な亜衣(あい)。4人のうちで一番小柄だが、艶がある黒髪は背中まで伸びている。
3人目が、亜衣とは対照的に強気な麻衣(まい)。亜衣の姉らしいが、髪は短く切り、外で遊ぶことが多いのか肌は少し日焼けしている。
最後が、その三人と仲はそこそこいいが、誘われたと言うより付いてきたらしい啓太(けいた)。四人でしゃべっている間でもあまり会話に入れていなかった。

録画用に設置している、部屋のカメラが動作していることを確認したあと、四人を起こした。といっても、揺り起こしたわけではなく、手足の鎖から繋がれている注入口から、睡眠薬の中和剤を注入したのだ。

「ん、んん……」
「なに、ここ……?」

四人は、周りを見渡している。心地の良い羽毛布団ではなく、金属の台に乗せられている事実に気づくと、少しのパニックが起きた。

「た、助けてぇっ」
「真波!?これが楽しいことだっていうの!?」
「えっ!?私、前はこんな事されてないよ!違うよぉっ」

だが、亜衣が、一言発した。

「真波ちゃん、少し大きくなってる……?」
「な、なんで真波が大きくなってるのよ!」

ここぞとばかりに、説明を始めた。

「私が、そうしたからだ。彼女の体は、男の体に直接さわると、成長するのだ」

――いや、むしろそれがバレていなかったのが不思議なくらいだ。この一ヶ月、公共の場で男の体に触れないで来たのだろうか?この真波はよほど器用な子供なんだろう。

「そんなこと、信じられるわけ無いでしょ!」

ちなみに、4人は手足が縛られているせいで自分の様子も、他の子供の様子も直接は見られないが、私が設置しておいた部屋の天井に大きなモニターで代わりに確認できるようになっていた。

「では……」

私は、真波の体に優しく触れた。途端に、真波の成長が始まった。

「んっ……んんんっ!!!」

たとえ私の触れ方が優しくても、毒の威力は容赦ない。中学生くらいの体を、グイグイと押し広げていく。服は瞬く間にサイズが合わなくなり、そして破れだす。平らだった胸では、乳腺が爆発的に発達し、それを包む脂肪と合わせてムクムクと大きな乳房が形成されていった。そして10秒もしないで、大人の女性と同じくらいの大きさになった真波の手を、触り続ける。

「い、いや、これ以上はぁっ……!」

乳房はすでにGカップ程度のものに成長していたが、この毒にリミットはない。プルンプルンと揺れながら、スピードを落とすことなく膨らんでいく。そして、身長も伸び続け、手足や尻の上でもむっちりとした脂肪が発達を続ける。

「わ、わかったから、真波が大きくなるのは分かったから!」
「分かったから、なんだ?」

私の大きさなどとうに超えた真波を、成長させつづける私に、麻衣が懇願してきた。

「とめて!」

止める理由はあまりなかったが、それでもいうことを聞くことにした。それに、成長させるのは真波だけではなかった。

「はぁ……はぁ……」

毒の効力を発揮させたのはたったの30秒ほどだったが、真波は元の二倍の大きさになり、小学生であるとは考えもつかないほどの爆乳の女性になっていた。かなり余裕があった手術台の上を、ほぼ埋め尽くしてしまっている大きな体の上で、息をするたびフルフルと揺れる巨大な肌色の塊は、柔らかそうではあるが張りもあり、別の目的がなければ揉みしだきたいところだ。

「この毒は傑作だ……やはり素晴らしい出来栄えだ」
「なに、いってんのよ!この人でなし!」

麻衣が食いかかってくるが、彼女の実験はまだ後だ。その前に……

「んぅっ……」

今まで真波の隣で震えているだけだった亜衣に、変化が起こり始めた。

「亜衣!?」
「お姉ちゃん……亜衣の体、変だよっ……」
「あ、アンタ、私の妹に何をしたのよ!」

実験台の上でもがき苦しみ始めた亜衣を見て、私を睨みつけてくる麻衣。だが、手足についた鎖のせいで私には触れることさえできない。最初は臨床試験用に付けた鎖だが、今は非力なモルモットを好きなようにし、嗜虐心を満足させるための道具にもなっている。

「何をって……真波と同じように、毒を使って体に細工しただけだ。さっきのジュースを飲んだ時点で、亜衣の体の中には大量の毒が投入されたのだ」
「ど、毒!?」

私の娘、ジェニファーに注入したものの4倍の量、亜衣には飲ませていた。ただし、遅効性の毒として、体によくなじんでから効力を発揮するように設定した。そして、計算した時間通りに、亜衣の中で毒が本性を表し始めたのだ。

「私の亜衣を、殺すつもりなのね!?」
「殺すなんて、子供が言っていい言葉じゃないぞ。それに、私の毒の効果は体の成長。だから……」
「きゃああっ!!」

亜衣の悲鳴が私の声を遮った。と同時に、その体が急激に成長し、服をビリビリに引き裂いて、真波より一回り小さい程度までになった。そのまま、ゆっくりと成長を続けている。

「あ、亜衣!!」
「ふむ……」

成長が終わるまで見続けているのもいいが、これは実験だ。やるからには目的がある。おもむろに、ムクムク膨らんでいる右の乳房をパンと叩いた。

「ひゃあんっ!!」

やはりというべきか、私の手を押し返すように、乳房は倍の大きさまで急激に膨張した。これまでの実験と同じ結果だ。衝撃を与えると、その部分の免疫力が下がり、毒の効果が上がる。

「亜衣、おっぱいがぁ……」

右の乳房は膨らまなくなり、代わりに縮んで行く。逆に左の乳房は大きくなるスピードを早めた。それに、もう180cmくらいになっている身長もグイグイと伸びる。まるで、乳房の中身が体全体に行き渡っているようだった。

「ま、まだ大きくなる……の……?」

全体的に真波より肉付きはよくないが、スレンダーというわけでもなく、巨大な胸と、それに引けを取らないむっちりとした下半身。それらは、まだ成長の速度を落とさず、着実に大きくなっている。

しかし、いつものような不安定な成長をしない。これも特筆すべき効果だが、毒が体になじんだ後、効力を発揮したからということだろう。

髪の方も、実験台から垂れ落ちるほどの長さになり、床の上を這うように伸びていく。日本人特有のいい髪質で、一本一本が丁寧に結われた黒い絹糸のようだった。

完全に言葉を失って、隣に横たわっている姉の2.5倍くらいの身長になったところで、麻衣の成長は収まった。

制御不能(WIP)

セクサロイド。そんなものが流行りだしたのは、10年前くらいだろうか。人の性欲を満たすために作られた人型ロボット。人ではないために何でもやり放題、人権にうるさい団体は、裏ではこのセクサロイドを使用しているという噂がある。

オレも一ヶ月前、なけなしの残業代でようやく中古のセクサロイドを買うことができた。保証なしで20万とは、量産されていてもロボットというものは高いらしい。

「お兄ちゃーん、今日も遊ぼうよー」
「はぁ……アイさぁ」

で、セクサロイドというものは、初回起動時に体型を決められるらしい。らしい、というのは中古で来たうちの子、アイは最初からロリっ子体型だった。その役割の通り、スキあらば行為にいたろうとする性格ではあるが、いかんせん俺の好みにしては体が小さすぎた。アイには付属していたいくつかの服のうち、一番年齢にあったものを選んで着せていた。

「本当に体型って変えられないんだよな」
「だからぁ、最初になった身体からはあんまり変えられないのー」

実際のところはというと、好感度が高ければ結構体型を変えてくれるものらしく、ものによっては毎日胸のサイズやらを上げ下げしているらしい。こいつは、付き合いが悪い俺にはあまりいい感情を抱いていないようだ。機能上ムリということにして、面倒くさい作業をしないつもりだろう。まったく、AIのくせに……

「少しだけでも変えてくれたら、やってやらんこともねえんだがなぁ」
「えー……じゃあ、ちょっとだけだよ?」

……コイツの一番好きなことは、やはり性行為らしい。で、俺はネット上を調べていったらあるサイトにたどり着いた。セクサロイドの思考に関係なく、体型をいじれるハッキング方法が書かれていた。なんでも、寝ている間――といっても充電のことだ――セクサロイドの髪の中に紛れているメモリースロットに、あるデータを入れたカードを突っ込めばいいだけの話らしい。あとは、セクサロイドに自発的に体型変化させることで、操作可能になる。ご丁寧に、そのデータまで置いてあって、俺は迷わずダウンロードした。そのデータを突っ込んだのは昨日の夜のことだ。

「お胸をちょっと大きくするだけなら……」

そういえば、どうやって体型操作するんだ……?と考えていた俺の前で、予想外のことが起きた。ぺったんこから少しだけふくらませるだけだろうと思っていた胸が、ムクムクムクッ……!と大人の女性顔負けのサイズまで育ったのだ。おかげで、服の中が胸肉でいっぱいになってしまっている。

「えっ……?あれっ!?」

それは本人にとっても考えていなかったことらしい。とても困惑した表情で、大きく前に突き出した胸を見下ろしている。

「こんな大きくするつもり無かったのにぃっ!戻さなきゃっ、って、うわぁっ!」

バルンッ!と胸が更に膨らみ、服を引きちぎった。飛び出た勢いでバランスを崩したアイは、尻もちをついてしまった。

「いったたたっ……!お兄ちゃん、アイになにかしたんでしょ!」

俺の方を睨んでくるアイ。だが、そのタプンタプンとゆれる巨大な胸は逆に俺を誘っているようだった。

「な、なにするのっ!」

無意識のうちに、俺はアイを持ち上げ、ベッドの上に一緒に座らせた。

「その胸があるなら、遊べるだろ、ほら」

ジッパーを下ろしてモノを出して寝転がる。アイはごくりと喉を鳴らして、本能に従うがごとくそれを豊満な胸で挟んだ。ちゃんと人の体温を再現しているセクサロイド特製の柔らかさに包み込まれる。

「ど、どう……?」
「いいぞ、アイの胸……やっぱりこれくらい体型変えられるんじゃないか……」
「うるさいもん、これ終わったら赤ちゃん体型にしちゃうからね!」

多分、コントロールできてないのは胸のサイズだけじゃない。体全体が制御不能なはずだ。体型を変えようとしたらどうなるのか、楽しみではある。目の前でもみゅもみゅと形を歪ませる乳房を見て、いろんな想像を……する余裕はない。快感が大きすぎて、思考があまりうまくできない。

「アイ、やっぱりセクサロイドだな……すごくキテるぞ……」
「ふん……。あんまり汚くならないようにお兄ちゃんの精液を吸収してるけど、いっぱい出てるね……でもそろそろ飽きてきたでしょ……?」

早くも十分が経過していた。全然飽きてなどいなかったが、アイは胸を持ち上げて俺から離れた。

「続きをしてもかまわないぞ?」
「その前にアイに何したか教えて」
「やだ」
「じゃあ、やっぱり赤ちゃんになっちゃうから……っ!!?」

アイは、制御できない体型変化を自分でしはじめてしまった。

「な、な、なにが……おこって……!」

胸はしゅるしゅると縮んだが、その分手足がグイグイと伸びた。髪はバサァッと背中にかかり、顔からは少し幼さが抜ける。赤ちゃんになるはずが、アイは中学生くらいに『成長』していた。

「こ、こんなはずじゃ……」

先ほどまでの爆乳はどこへやら、ぺったんこになった胸を触りながら、自分の体を確認するアイ。幼児体型から抜け出したその体はスラッとしてキレイだった。

「な、なによ、キレイって……」
「おっと、口に出てたかな」

頬を赤らめてもじもじするアイの仕草がまた俺を興奮させる。外観を褒めたのは初めてだから、かなり照れているんだろう。

「それはそれとして、あの、そのね、おなかが熱くって……」

……セクサロイドのベースプログラム……本能なんだろう。体型を変化させた後は性的にかなり興奮するようだ。

「でも入れるにはまだ小さいよな……じゃあ」
「ひゃぁっ」

さっきまで握りこぶしくらいあった乳首だが、いまは胸の上にぴょこっと立っているだけになっている。これくらいの年齢の女子にしても、小さいほうだろう。それを、俺は舐めた。

「んっ……もっとやさしくしてっ」
「やだね」

小さい乳首を、左は舐め回し、右は手のひらで触る。アイはビクビクと震えるが、逃げる様子はない。俺のことを受け入れて、快感に身を浸しているようだ。

沙月と命

男子中学生の少年は、目の前の机に置いてあるコップに入った、青と赤のスムージーをマジマジと見た。毒々しい色をしたそれの中では、何かが動いているようにも見える。

「なんだよこれっ!」
「今からキミに飲んでもらうものだよ、リア充くん」
「り、リア……?」

彼は、椅子に手足を拘束され、丸メガネをかけた科学部の男子生徒に、青のスムージーのコップを口に近づけられつつあった。その表面はもこもこと生きているように動き、まるで少年の中に入りたがっているようだ。

「く、こんなもの飲んだら死んでしまうっ!」
「大丈夫、死にはしない。ただちょっと、痛いかもねぇ。さぁ」

部員は少年の鼻をつまみ、スムージーを一気に少年の口の中に流し込んだ。

「うぅっ!ぐぼぼっ!!!」
「ほら、こぼしちゃだめじゃないか。キミの彼女も観ているんだからね」

少年の彼女は、二人の目の前で柱に縛り付けられ、スムージーを飲まされる少年に「沙月(さつき)!!」と叫んでいた。少年は、スムージーを飲み込みたくはなかったが、スムージーの方から、少年の中に潜り込んでいってしまう。

「んごごっ!」
「元気がいいねぇ、さすがボクが作った子たちだ……」

十秒もしないうちに、コップの中は空っぽになり、部員は少年からコップを離した。

「さて、お次はこっちを、カノジョさんに……と」

部員は、少年にしたのと同じように、少女には赤いスムージーを飲ませた。

「んぎゅうっ!?」

彼女も抵抗する様子を見せたものの、結局スムージーは一滴残らず少女の体の中に入っていってしまった。

「命(みこと)にまでそんなこと!ただではすませないぞ、この悪党め!」
「悪党で結構、結構。そんなことより、今飲み込ませたもの、何だか分かるかい?わからないだろうねぇ。だって、ボクが丹精込めて作った実験生物なんだからねぇ」
「実験……って、俺たちをモルモットにするつもりか!」

部員の丸メガネが、キラっと光った。

「ご名答」
「てめぇ、常識ねぇのかよ!!」
「常識……?そんなもの、とっくのとうに忘れてるねぇ。普段は、実験の秘匿性のためにただの根暗なヤツを演じてるが、それだけじゃ下らない下らない。ボクの知識と技術を活かしてなんぼの人生だからねぇ」

言葉を紡ぐと同時に部員の顔に現れるその笑みは、悪魔のようにネジ曲がり、悪意に満ちたものだ。

「悪魔、め……っ!」
「ふっ。そろそろ、次のステップに移らせてもらうよ」

部員のポケットから、アンプルと注射器が取り出される。アンプルには、透明の液体が入っている。

「まだ俺たちに何か打ち込むつもりかっ」
「活性剤さ。さっきキミたちの体に入っていった子たちが、キミたちの細胞に十分になじんでいるころだろうからね。それでは」

少年は必死に拘束から逃れようとしたが、抵抗むなしく、注射器を通して活性剤が注入される。

「んぐぅっ!!!??」

それと同時に、少年の体全体が殴られたかのようなショックを受ける。ドキンッ!!ドキンッ!!と強い感覚が少年を襲う。少年は痛みを目を閉じ歯を食いしばって耐えるが、心なしか手足の拘束が緩んでいく気がする。

「(こ……れ、はっ……逃げる、チャンスっ……!!)」

衝撃が収まると、少年は逃走のために拘束を振りほどいて、目を開けた。これで自由、と立ち上がって逃げようとした少年を、しかし、大きな違和感が襲った。

「(周りのものが、でかくなってる……!?)」

ちょうどいい高さだった机が、かなり高めになり、椅子も高くなって、少年の足は宙に浮いていた。部員も大きくなったように見える。

「(ちょっと待て、俺の周りが全て大きくなった……って、ことは……俺が、俺が……)」
「おや、思ったより効果が出るのが早かったようだね」
「俺、縮んでる!!??」

驚く少年の前で、同じく活性剤を注入された少女も、ギュッギュッと押し潰されるように小さくなっていく。中学生が小学生に、そして幼稚園生くらいまで。

「はい。これで初期段階は完了」
「ふ、ふざけるなっ!!」

少年も、同じく幼稚園生くらいまで小さくなっていた。声もかなり高くなっている。椅子から飛び降りて弱い力で部員に立ち向かうが、手も足も出ない。

「まぁ、諦めたまえよ。男なのにみっともない……いや、今は男じゃないんだっけ……?」
「はっ!?何言ってんだ、こんなに小さくなっても俺のチンコは……」

『ついてるぞ』と言おうとして、股間をまさぐる元少年。だが、そこには何もない。幼稚園生にも大きな豆粒くらいのモノがついているはずなのだが、なにもないのだ。部員が、自分の姿を確認しろと言わんばかりに差し出した鏡を見ると、瞳の色が青くなっていた。

「お、お、俺が女になってる……?」
「いや、女でもない。無性(むせい)の状態なはずだよ。そんなことより、カノジョの様子を見てみたらどうだい?」
「そ、そうだな」

無性、の意味が少年にはあまり分からなかったが、うながされるがままに、少年は少女の元に駆け寄った。少女も体が小さくなったおかげで拘束が外れ、床の上に四つん這いになっていた。着ていた服はほとんど脱げ、ブラウス一枚になっていた。といっても、少年もTシャツ一枚になっていたが。

「命(みこと)、大丈夫……か……?」
「さ、つ、き……」

少女の目は赤く光っていた。そしてその目を見た途端、少年の中の何かが変わった。

「命、さま……って、俺は何を!?」
「わ、わわ、今すごくイケナイこと考えてたっ!」

少年には、少女が、自分のつき従うべき存在に見えた。逆に少女には、少年が奴隷のように見えたのだろう。あたふたする二人に、部員が近づいてきた。

「どうだい?新鮮な感覚だろう?メスとオス、いや、キミたちはメスと無性の特徴を得たんだよ。ボクの子たちが持っている社会構造を、引き継いだんだねぇ」
「意味分かんないんだけど……」
「確実な生殖のために、メスが強い社会構造と、そのための遺伝子の特徴を持っているのさ。メスはあらゆる環境で生殖に適した生体構造を作り上げ、無性はメスの指示に従う。簡単に言うと、メスは無性を好きにできる。そして、メスは自分の体を作り変えられるのだ」
「だから……?」
「少女よ、少年の髪が伸びたらいいな、とか、考えてみるがいい」
「は……?うーん……」

少女が考えこむと、少年の髪が、バサッと伸びて、肩に掛かる程度になった。

「うわっ、すごい!」
「お、俺の髪が……」
「いいだろう……少女よ、キミは少年を意のままに操れるのだ」

少女は、目をつぶって少し考えると、うん、とうなずいた。そして、少年に向かってニコッと微笑んだ。

「沙月、私の妹になって!」
「お、お姉ちゃん、そんなのやだよっ!……って、俺は今何て言った!?後輩にお姉ちゃんって!?」
「おや、同級生ではなかったのだね……」

頭を抱える少年を、少女が撫でる。

「そうなの、沙月のほうが一つ上級生。でも、今日から私がお姉さん!」
「ほぉ……面白い。では、ボクはカメラを残して録画しているから、あとは隙に続けてくれたまえ……」
「うん!」
「うん!……じゃねえよ!なんで俺らが……」

少女の瞳が赤く光った。

「沙月ちゃん!年上の人には優しくしなきゃダメだよ!」

と同時に、少年の瞳は青く光った。

「う、うん。ごめんなさい、命お姉ちゃん」

部員はフッと笑うと、部屋から出て行った。少しすると、カチャッと鍵がかかった音がした。

「あ、そうだ……お姉ちゃんなんだから、もうちょっと大きくならなくちゃ……」

少女が息を吸い込むと、手足が少しずつ伸びて、ブラウスから股が見えるほど成長した。それでも元の体よりは小さく、小学生低学年程度の幼児体型のままだった。

「さぁ、沙月ちゃん!」

少女の瞳は赤く光ったままだ。

「なに?お姉ちゃん」
「沙月ちゃん、私たち、これから子作りしないと!」

空気が固まった。数秒の沈黙の後、二人の瞳が光るのをやめ、二人は慌てて視線をそらし背中を向け合った。

「こ、子作りぃっ!!??じょ、冗談やめてくれよ、沙月!!」
「わ、私、何かに取り憑かれてたみたい!!もう、恥ずかしいよ!」

二人の幼女は、顔を赤らめながら下を向いた。

「それで、どうする……ここから何とかして出ないと」
「うん、私たち、何かに操られてるみたいだし、この状況は脱しないとね」

ほとぼりが冷めてくると、元少年は部屋のドアの方まで歩いて行く。少女は、それを心配そうに見つめる。

「ち、ちくしょ、背伸びしてもとどかないぃ……」

元少年は、幼稚園生の体でドアノブに手を伸ばすが、ノブが上の方に設置されているのと少年の背が低すぎるせいで、どうしても手が届かない。その様子を見て、少女はクスッと笑った。

「わ、笑わなくてもいいだろ!?」

少年は、少女にむくれ顔を見せる。

「ご、ごめん、っ、でも……」

そして、少年と少女の目が合ったとき、またもや瞳が光りだした。

「ちょっと、背を伸ばして、もらおっかな……」
「や、やだっ……んぐっ」

少女が身長を伸ばした時とは裏腹に、少年の体からはバキッ、メキッと痛々しい音が聞こえる。

「痛いよぉっ!!」

自分の体を抱きしめ、悶えると、少年の体がグググッと体積を増し、手も足もメキメキ成長して、中学生位のものになった。ただ、筋肉はあまりつかず、肌は白く繊細で、男性らしくはなかったが、かと言って女性の二次性徴も全く無く、女というわけでもなかった。

「あ、そっか……沙月ちゃんが『無性』っていうのは、男でも女でもない、ってことかぁ」
「えっ……」

少女が少年の後ろに回りこんで、背が伸びたせいでTシャツからはみ出て、さらけ出された股間を確認する。

「うん、私のと違うね……」
「お姉ちゃん、恥ずかしいからやめてっ!……」

少年がとっさに股間を手で隠すと、少年の瞳の青い光が消えかかる。

「あ、お、俺は……俺の体、元に戻って、ない……」
「沙月ちゃん」

逆に、少女の赤い光は強くなった。それに呼応するように、少年の青い光は強さを取り戻した。

「その言葉遣いは、ダメ」
「ごめんなさい、お姉ちゃん……でも、沙月、男でも女でもないんだよ……?」
「じゃあ、女の子にしてあげる」
「ひゅあっ……!」

少年の胸がピクピクっと痙攣し、足がガクガク震え始めた。メキィッと音がすると、腰が横に広くなり、尻がムチッと膨らんで、男の時にはなかった丸みを帯びた。脚は内股になり、太ももにも丸みが加わる。次に、Tシャツに小さめな突起がピクッと突き立った。

「は、恥ずかしいよぉっ」

それを隠そうと両手を当てると、その下で胸が膨らむ。手のひらの下を満たすように脂肪がつき、さらに少年の手を押しのけようとする。しばらくそれが続くと、上半身全体がメキメキと形を変え、少しのくびれができ、ヘソも位置を変える。

「沙月ちゃん沙月ちゃん、あともうちょっとで女の子になれるよ」
「へっ……?う、う、おなか、がっ」

少年の腹部に、新たな器官が作られていく。生殖に必要な、卵巣と子宮が、少年の腹部を満たすように成長する。

「よし、完成……」
「うぅっ、お姉ちゃん、私、どうなっちゃうの……?……お姉ちゃん?」

少女は難しい顔をしている。少年は不安げに、少女に近づく。

「私、お姉ちゃんぽくない……」
「え?」

中学生の身長に、中学生にしては少し大きめな胸と尻を持った『妹』と、小学生低学年のちんまりとした体の『姉』。それをそのまま、本当に姉妹として捉えるには、違和感が大きすぎた。

「……そ、そうだよ……私、お姉ちゃんの妹じゃなくて……命のカノジョなわけだし……俺が女なわけないし……」

少年の瞳から光が消えていく。

「でも、お、俺に、おっぱいが……」

シャツを控えめに押し上げる自分の胸に、戸惑いながらも目がくらんでしまう少年。

「ふへ、ふへへ、触り放題……」
「沙月……」

自分だけの世界に入りかけていた少年だったが、少女の存在を思い出した途端、背筋が凍った。

「命!!ご、ごめん、俺はそんなつもりじゃ!!」

少女は怒りを露わにしていた。しかし、それは少年が思っていたものとは違った。

「沙月は、私に付き従うものなの……だから……」

小学生サイズの少女の体が震え始める。ただ、怒りからくる震えとは確実に違う震えだ。少女の体は、急速な成長の準備をしていた。

「み、命……?」
「だからぁっ!!」
「うわぁっ!」

少女の体が爆発した、ように見えた。というのも、130cm程度だった少女の体が一気に170cmまで伸びて150cm程度の少年を追い越したのだ。それだけでなく、胸もバインッと膨らんでGカップほどになり、ブラウスはいたるところが破れてしまい、大きく伸びた手足にはムチッとした脂肪がついが。その成長の衝撃で、部屋の中の物がごちゃまぜに吹き飛ばされ、床に少女の脚がめり込んだ。

「沙月ちゃんは、私以外見ちゃダメなの……」

元々より成長した少女は、淫らな目で少年を見つめた。そして、大きな胸をさらに強調するように手で持ち上げ、少年に見せつける。

「命……お姉ちゃん……っ」
「ほら……」

そして少女は、少年を抱きしめた。少年は、柔らかく大きな体に包み込まれ、その腕の中で安心感を覚えた。

「大好き、お姉ちゃん……」
「ありがと、沙月ちゃん……でもね、私たち、子作りしなきゃ……」

先程から強さが回復してきていた、少年の瞳の光が、一瞬にして弱まった。

「だ、ダメだ……沙月、そんなの違う!アイツの、いや、俺たちの体の中にいる得体のしれない生き物の言いなりになるなんて、ダメだっ!」

対して、少女の赤い光は、弱まるどころかさらに強まった。

「沙月ちゃん、何を言うの……?おとなしく、私のものになってよ……」

少年は、少女の意思で活性化される実験生物に心を乗っ取られまいと、これまでにない抵抗を見せ、瞳の光は点滅した。

「ダメだ、ダメだ、ダメだ!」
「そう、なの……それなら……」

すると、少女の体が、更に大きくなり、180cm、190cmと、グイッ、グイッと背が伸び、ブラウスを引きちぎるように胸が膨らみ、顔と同じくらいになる。そして少女は、増えた体重に任せて、少年を床に押し倒した。

「無理矢理服従させてあげる……」
「ダメ、だ……命、お姉ちゃん……違う、違うっ……俺は……私は……っ!」

光が激しく点滅し、少年の口調が一言ごとに変わる。

「命、は……、命お姉ちゃんは……なんでっ……これで……いいのかよっ……」
「私……?沙月ちゃんを私のものにできるなんて、願いがかなったようなものだから」
「えっ」
「沙月ちゃんは、私のものにはなりたくなかったみたいね?だから、そんなに抵抗する。でも、私は違うの。だから……」
「ん、んごごっ!!!んああっ!!」

少女の瞳が強く光った途端、少年のBカップほどの慎ましやかだった胸が、ムクッ、ムクッと大きくなり始め、シャツを押し上げる。

「私のものになって、楽になって?」
「んうっ!!……命、そんな……私、やだ……うううっ!!!」

胸の成長スピードが上がり、いつしか大きくなりすぎた少年の胸は、持ち主の動きを止めてしまうほどになった。

「私の言うこと聞かないと、一生動けない体にしちゃうよ……?」

少女の言葉は、本気だった。強く光る赤い瞳は、少年の青い瞳を捕らえて離さなかった。とめどなく大きくなる乳房は、自分の意志ではどうしようもなく、さらに少年にのしかかる少女の体は、どうやっても押しのけることはできない。逃れようのない現実を突きつけられ、少年の心は重圧で潰れ始めた。

「私っ……は、命の……命、お姉ちゃんの……」
「私の……?」

そして、プチッと、何かが切れた。

「俺は命の妹……、私は、命お姉ちゃんの、妹……」

青い瞳の光が、消えなくなった。

「もう一回、お願い」
「私は、命お姉ちゃんの妹、命お姉ちゃんの、好きにしていいもの、だよ……」
「うん……沙月ちゃんを、絶対に離さないよ……」
「うふふっ……うっ、ふっ……」

少年の胸が小さくなる代わりに、体全体が生殖に適した大きさまで成長した。

「じゃあ、いくよ、沙月ちゃん」
「うん、命お姉ちゃん……」

少女のヘソから産卵管が生成され、少年のヘソに突っ込まれる。はたから見れば異様すぎる風景ではあるが、二人にはこれが当然に思えた。

「お姉ちゃんの子供が、私の中に……」
「ちゃんと、元気な子を産んでね……」

そして、二人は抱きしめ合い、二人だけの時間を楽しんだ。

「……ふむふむ……この星の知的生命体には、思いの外なじめたようだな……」

ところ変わって、二人の様子を隣の部屋で、ずっとカメラを通して眺めていた、部員。

「宿主と繁殖方法を求め、この星に来て5年。長い道のりだった……二人の中で頑張ってくれた同志たちよ、実験生物と呼んですまなかった。だが、これからも健闘を祈っているぞ。生まれてくる子供にも、期待をかけよう」

部員の口から、ピュッと青い液体が飛び出した。部員はその場で跡形もなく消え去り、液体は空中をふわふわと漂ったあと、窓の外に出て、空の彼方に消えた。

地下に潜む触手

それは、父である俺と小学生の娘の真奈、二人で買い物に行ったときに起こった。河川敷を歩いていたときに、真奈が何か見つけたのか、土手にあいていた排水口らしき大きなトンネルの方に走って行ってしまったのだ。この前まで、こんなトンネルなどなかったはずなのだが。

「真奈!危ないから中に入ったらダメだぞ!」という俺の制止も聞かず、真奈は暗く大きいそのトンネルの中に入っていってしまった。俺は仕方なく後に続いて、暗闇の中に入った。

「く、くらいなぁ……」中には、電灯の一個すらも付いていない。入ったすぐ先が曲がっているせいで、太陽光すらもあまり届かない。と、だんだん目が慣れてきて、内部が見えるようになる。だが、そこにあったのはただの排水用トンネルではなかった。

俺がいるところから少し先に進んだところで、トンネルは終わっていた。そこから先はとてつもなく広い空間だ。その中で、一カ所だけ淡い光が灯っているところがあって、そこに真奈がぼーっと立っていた。俺とは逆の方向、空間の奥を食い入るように見つめている。こんなところ、早く出たい。さっさと真奈を連れだそう。

「真奈、さあ、出るぞ」と声をかけながら近づいていくが、真奈はやはり空間の奥を見つめている。なにかあるのだろうか?俺よりも視力が良い真奈には、なにか見えているのだろうか。段々不安になってきて、真奈まであと少しというところで、一回足を止めて、真奈の視線の先を見ようとした。

俺はその時になって初めて、空間に微かに聞こえるジュルジュルという粘りけのある何かがうごめく音に気づいたのだった。そして、逃げるにはもう遅すぎた。空間の奥から急に飛び出してきた四本の赤い触手が、真奈の体に絡みついたのだ。一本は胸、もう一本は腰、あとの二本は足に一本ずつ。次の瞬間、真奈は空中に持ち上げられ、一回見えなくなった。

「きゃああああっ!!」という真奈の悲鳴と同時に、ないと思っていた空間の照明が徐々に点灯し始めた。真奈を持ち上げた触手の持ち主は、今まで見た中で一番大きな動物だった象の、数十倍の大きさの赤い塊だった。その表面には無数の血管が走り、ドクンドクンと脈打っている。

さらに照明が明るくなると、その生物の表面にびっしりとニキビのようなブツブツした物が付いているのが分かった。それが何だか俺には分からなかったし、今は真奈の安全の方が重要だった。真奈は、高さ二メートルのあたりで、触手に下半身を固定され、必死で逃げようと、ジタバタ暴れている。

「真奈を放せ!この怪物が!」俺は、真奈の真下に走り、ジャンプすれば届く位置にある、真奈の足をつかんでいた触手に手を伸ばし、引きはがそうとした。だが、急に視界がフッと動き、体がグワッと動かされた。

「な、なにが……」と下を見ると、真奈を捕まえているのと同じような触手が、真奈と同じく、胸と腰と足をつかんでいた。そして、俺の体は宙に浮き、真奈の目の前に、同じ高さで固定されている。

「放せ!放せっ!!」俺は死にものぐるいで拘束から逃れようとしたが、俺の足と同じくらいの太さの触手はびくともしない。触手は赤黒く、怪物の本体と同じように表面に血管が浮き立ち、脈動していた。さらにぬめぬめとした粘液に覆われている。

「って、この粘液、俺の服を溶かして……」粘液は、触れた繊維を溶解させている。真奈の方を見ると、トンネルに入る前には全身を覆っていた服が、今や重要な部分しか隠していない。ただ、粘液が皮膚に触れても溶けるどころか痛みすら感じない。

「どういうことだ……」と、俺が頭を抱えていると、額にぴとっと触れる物があった。紛れもない触手だが、その瞬間、頭の中に声が聞こえてきた。『フフッ……我がトラップにまんまとひっかかったな、人間よ……』声は、ファンタジー映画で出てきそうな黒魔術師の、悪意に満ちた低い物にそっくりだった。

「……っ!」俺の声が、出ない。口は動くが声帯が従ってくれない。

『声は奪わせてもらった。男がわあわあ喚くのは、みっともなくて見ておれん。何か言いたければ、ただ考えれば、我が耳に届こう』怪物が、俺の考えを読んできた。相手は、人間には到底敵わない、いわば天敵だった。

『天敵。そう、天敵だ。我は人間を食らって生きる。お前たちは、これまで食われてきた多くの人間の仲間入りをする、単なるエサに過ぎん』怪物は触手を動かし、俺と真奈を怪物本体のイボイボに近づけた。すると、遠くからは見えなかった中身が、少しだけ見えた。人間だ。人間の顔が、中にある。俺たちも、こいつのようになるのか。

『そうだ。だが、その前にお前たちの体を作り替えなければならぬ。まずは娘の方からだ。父親のお前には、特等席で見物させてやろう』

真奈に、何をするつもりなのだ!?体を作り替えるだって?なぜそんなことを……

『我は、すべての生物と同じく子孫を残すために生きている。種族を残すために。しかし、不便なことに他の生物の卵子なければ、子供を作ることかなわぬ。それに、子宮も。そのために、体を変形させやすい人間を巣におびきよせ、我が子を身ごもるのに適した形に変えるのだ』

ということは、真奈の子宮や、卵子を使うというわけか!?まだ子供がどうやってできるかもしらない、小さな子の!?

『言っただろう。形を変えると』

怪物からの言葉と同時に、「うあっ……あっ!!」と真奈がうめいた。いつの間にか、もう一本の触手が近づき、真奈の二の腕に触れている。よくみると、その先端には細い針のような物があり、皮膚に突き刺さっている。そして、針が伸びている触手がグニッと膨らんだ。中に何かが詰め込まれているようだ。ま、待て、何かを真奈に注入するつもりなのか!

『ご名答』

「きゃあああっ!!」真奈が金切り声を上げた。触手の方は、今度は縮み始め、怪物の液体が真奈の中に入っていく。液体が、真奈に相当な痛みをあたえている。そして針が刺さっている腕の血管が、緑に光り、その光は全身へと広がっていく。俺は、取り返しの付かないことが起こったことを痛感した。触手は縮み終わると針を抜き、怪物の方へと引っ込んでいった。一方の真奈は緑に光る体を抑えながら、歯を食いしばって悶えている。光は段々と弱まっていったが、その様子は消えるというより、真奈の体になじんでいっていると言った方が正しいように思えた。

「はぅっ……ひぅっ……」

光が完全に消えたと思いきや、まだほのかに光っている真奈の体が、ビクンビクンと痙攣している。それは、心臓の動きに同調しているようにも見える。

『あの液体には、我のマクロファージ、大食細胞が大量に含まれているのだ。この娘の血管の中を通って、全身に送り込まれた。すぐに次の段階に移行するだろう』

「うっ……うぐぅっ……おむねに何かが……」真奈が、露出していた乳首を手で押さえた。すると、手のひらの下で平らだった胸に、プルンッと二つの盛り上がりが生まれた。「あついよぉ……っ」その盛り上がりは、プクッ、プクッと、真奈の手を押しのけながら大きくなる。どうみても女性の乳房だ。あっという間に頭と同じくらいの大きさになったが、まだ成長をやめない。

『人間の雌の授乳器というのは、変形させやすくて助かる。多大な栄養素を送り込むのに、うってつけの種族だ』

また、怪物の方から二本の触手が伸び、膨らむ胸を押しとどめようとする真奈の手を引きはがした。解放された乳房はへそを隠すくらい大きくなり、もはや漫画でも大きすぎると思うほどのサイズになっていた。たぷんたぷんと揺れるそれは、小学生の体とはかなり不釣り合いだった。腕を引き離した触手はそのまま、電光石火の動きで乳首に吸い付いた。「ひゃんっ!」という幼い喘ぎは、俺の股間に効いた。実の娘なのだが、どうしてもエロい。

「ひゃううっ!!」触手は乳房にたまった物を吸い出すと思った。しかしそれは間違っていた。もう巨大どころではない胸が、さらに膨らんだのだ。真奈は首をのけぞらせて痛みに耐えている。おっぱいは、フルフルと揺れながら、やがて体と同じくらいの大きさになっていく。

いつまでも膨張が続くように見えたが、いきなり触手が外され、触手から注入されていたのであろう液体が乳首からピュッと飛び出して、その『段階』は終わり、すぐに次が始まった。

グ、グググッ……

乳房が、音を立てて縮み始めた。まるで、真奈の体に押し込まれていくかのように、ブルブルと震えながらしぼんでいくのだ。すると同時に、おなかの部分が膨らみ始める。「んん~っ……!」真奈は、腹部が張る感覚でも感じているのか、手をおなかに回して膨らみを止めようとする。すると、胸がしぼむスピードが下がり、おなかの膨らみは緩やかになる。

「はぁ……」真奈は安堵のため息をついたが、それもつかの間、頭と同じくらいの大きさに戻っていた胸は、一気に真奈の体に飛び込んでいき、真っ平らになった。と同時に、臨月の妊婦程度のおなかが、二倍程度に急に膨れあがった。「かはっ……!」衝撃が強かったらしく、真奈は口を大きく開け、舌を出して、声にならない叫びを上げた。

谷間トンネル

夏のうだるような暑さの中、少年は住宅街の中を歩いていた。隣には、長い青髪を二つに束ねた女の子が付いている。

「こんな所であうなんて、嬉しい偶然だね、お兄ちゃん」
「あぁ……何でこんな所にいるんだ?」

少年は学校の帰りで、中学生の妹であるシホにばったり出くわしたのだった。シホは年齢不相応なスタイルをしていて、巨大な胸を、夏の暑さの中、汗で濡れた薄着の下でタユンタユンと震わせながら歩いていた。肌にくっついている生地のせいでその双丘の輪郭がいつもよりも大きく見え、襟からも谷間が見えている。といっても、本人に他人に見せつけようなどという意思はないのだが。しかも兄である少年はもう慣れっこで、別段驚くこともない。ただ、男として全く気にならないということでもないが。

「えへへ、先輩とちょっとお菓子屋さんに行っててね……あれ?あんな陸橋、この近くにあったっけ?」
「シホはここに来たことがないんだな」

二人の前に忽然と現れるコンクリートの橋桁。それは、住宅街に不自然に存在している新幹線の高架線路だった。都市どうしを無理矢理直線で結ぼうと、通る土地をいとわなかったせいで、こんな奇妙なことになっている。家はその向こうにあって、兄妹はその方向に歩いてきたのだった。

「これはな、新幹線が……」

ゴゴゴゴ……

少年が説明しようとした矢先、新幹線が近づいてきたことを示す地響きがし始めた。そこでやっと、彼は妹の「秘密」を思い出した。しかし、もう遅かった。

ビュンビュンビュン!!!!
「ひぃっ!!??」

新幹線が風を切る轟音が辺り一帯に響いた。と同時に、それに驚いたシホの体が……大きくなり始めた。兄より頭ひとつ小さかったのが、あっと言う間に追い抜かされる。ググググ……と体全体が大きくなり、そのスタイルが強調されるように服がぴっちりとくっついたかと思うと、ビリビリと破かれていく。そして、5秒ほど経った時には5m上にある高架橋の高さに届いてしまった。もはや、伸縮性の高い下着だけがシホの体を包み、住宅街のど真ん中で肌の殆どを露出した巨人と化してしまった。少年には妹の心臓の鼓動が地面を伝って、ドクンドクンとハイペースで聞こえてきて、その驚きが収まってないことがわかった。

「ああ、これは困ったことになった……」
「おにいちゃぁん……」

大きくなった妹の声が遥か上の方から発せられる。シホは、驚くと体がサイズ的な意味で大きくなってしまう体質を持っているのだ。

巨大化はまだ止まっていなかった。10m、20m、40mとどんどん大きくなる少女は、汗が滴る胸や尻を惜しげも無くさらしていた。しかし20階建の中層ビルになったところで高架橋につまづいてしまい、バランスを崩して橋の方に倒れ始めてしまった。それに、次の列車が、意味もなく警笛を鳴らしながら近づいてきていた。

「きゃああああっ!!ダメぇっ!!」

高架橋を破壊する寸前になって、すでに考えられないほど巨大だった胸がブルンッ!!ムギュギュギュ!!!と大きくなり、それによってともに大きくなった谷間に、橋桁はスポッと挟まれた。尻もプリンっと空に向かって膨らみ、逆にウエストはキュッと絞られる。巨大化の体質の他に、他の人の危機を感じ取ると成長するという体質も持っている。自分が倒れこむことにより線路が破壊されるのを危惧し、その体質が現れたのだった。

列車は、突然現れた巨人の乳房の間を、スーッっと抜けて……行かなかった。非常ブレーキをかけた列車はシホの下で止まってしまった。

「は、恥ずかしいから早く行ってぇっ!!」

少し大人びた少女の叫びは、普段の騒音の何十倍にもなって、家々の窓を破壊し、新幹線の架線も至るところでプチプチと切れた。周りの異変に驚き、更に何倍にも巨大化していくシホ。真下で耳を押さえていた兄は、溜め息をつくしかなかった。
shiho

環境呼応症候群 酔いの子

「本日はお日柄もよく……」
「そんなことはどうでもいいから!乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
「……乾杯!」

今日は月に1回の飲み会。課の皆参加する、近くの居酒屋でやるものだ。別に、強制参加とかではないけれども、腹を割って愚痴を言い合ったりする、ストレス発散のいい機会になっているから、周知すれば皆こぞってやってくるのだ。ただ僕はというと、新入社員として、これまでは忙しすぎて参加を見送っていたけれど、やっと今回都合を合わせることができた。ビールをぐいっと一口飲んだ後、グループリーダーの高井さんが話しかけてきた。

「やっぱり最初はビールだよなー!なあ新人!」
「ですねー!」

本当は焼酎の方が好きだけど、話を合わせておこう。

「お、すごい……織田さん、あんなに小さいのに」
「織田か……あいつにはちょっとした秘密があってな」

織田さん、というのは、課にいる唯一の女性社員で、おまけに女性としても背も低いから、まるで課に子供が迷い込んでいるかのような光景が毎日見られる。といっても、もう打ち解けたし、その光景にも慣れてきた。それが、今日また驚かされてしまった。

「ぷはっ!これこれ!やっぱりこれよね!」

もうジョッキが空いた。1分も経ってないのに。遅目の一気飲みレベルだ。

「大丈夫なんですか?あんなに飲ませて」
「大丈夫だって!まあ、間違いなく潰れるだろうけど」

高井さん、それはどっちなんですか。

「そういえば山崎は初めてなんだよな。あれはな、見ものだぞ」
「へ?織田さんがですか?」

山崎とは僕のことだ。織田さんが見ものって、今でも結構見ものなんですが。

「いいか?胸のあたり見てろよ」
「それってセクハラじゃ……」
「大丈夫だって、もう酔っ払ってて今の記憶なんて残らないし」
「は、はぁ……」

言われるがままに織田さんのペッタンコ……ゲフンゲフン、胸を見た。すると、何か膨らんでいるようにみえる。いやいや、女性なら当然多少の膨らみはあるだろうけど、織田さんは……しかも、だんだん大きくなってる?シャツのボタンも、左右から引っ張られている。これは……

「どうだ」
「うわぁっ!」

あまりにも集中していたせいか、高井さんの一言でかなり驚いた。高井さんも一瞬目を丸くした。

「……ははははっ!!びっくりしただろ?」
「いや、どちらにもびっくりしました」
「まだまだこれからだぞ、飲みながら見てな」

机においてあるまだキンキンに冷えているビールを、ゴクリと飲んだ。だけど、目の前で起きていることを見ていたせいで、味が全くわからない。続けざまにゴクゴクと飲んだけど。だって、織田さんのシャツから谷間が覗くくらい、胸が大きくなっていたからだ。

「な、なぜなんだ……」
「それは、よくわからないが、『メタモルフォーゼ症候群』ってやつらしいぞ?酔えば酔うほど、胸だけじゃなく体全体も大きくなる。そういうものらしい」
「体全体?」

確かに、織田さんとその隣にいる先輩社員の背丈の差が縮んでいる気がする。肩幅も大きくなっているかもしれない。そんな織田さんは、グビグビと飲み続けている。シャツの方はもう限界で、喋り声で音は聞こえないが、ところどころが裂けはじめ、胸肉がプルンと出ている。

「でもな、本人に聞くと、冗談のように笑い飛ばされてさ。全く覚えてないらしい」
「全く、ですか……あ、ビールお願いします」
「俺もお願い」
「あ、私もあと3杯ー!」

通りかかった店員にお代りを頼む。織田さんは飲み干すと本能的に頼んでいるが、もう5杯は飲んでいる。元々の彼女だったら、もう倒れていても仕方ないだろうけど、いつの間にか男性社員を追い抜かして大きくなっているその体では、まだ足りないのだろう。

「ところで、いつわかったんですか、その事」
「もちろん織田が初めて飲み会に来た時さ。最初は山崎みたいに、酒を大量に飲む織田を心配したんだ。そしたらさ、どんどんでかくなってくじゃないの!どれだけでかくなるかは、まあお楽しみだな」
「まさか、それを見るために参加している人も?」
「もちろん。そのことがあってから、参加者が急増したし。ただ、口止めはしてあるはずだけどな」

僕も今日まで知らなかったのは、その口止めがあったせいだろう。そんなとき、ガラスがキーンッとなる音が響いた。見ると、織田さんのシャツのボタンが1つ外れて、そこからムニュッとおっぱいがでている。

「そろそろ、来るぞ」
「来るって、何が?」
「だいぶ乗って来た!一気飲み行くよ!」

織田さんが立ち上がって大声を上げると、高井さんを含めた皆が歓声を上げる。学生の集まりじゃないのに。織田さんは、ビールを一杯、いや二杯、それにとどまらず三杯と、1分以内に全部飲んでしまった。すると、織田さんの体が、グイグイと大きくなり、すでにシャツからこぼれ落ちていた乳房が、ボンッ!バインッ!と、数十倍の大きさまで爆発的に大きくなった。その重さで、織田さんが前にのめって倒れてしまうと、バランスボールほどの胸はグラスジョッキもつまみの皿も全て破壊して、テーブルの上を専有した。これは高く付くぞ、という思考より前に、なんて大きくて柔らかそうなおっぱいなんだ……というものの方が先に頭に浮かんだのは、多分酔いのせいだ。

「う、動けないー。なんでー?」
「織田さん、もっと飲む?」
「あ、ありがとー」

織田さんの口に先輩社員が日本酒を注ぐ。少しこぼれつつも、織田さんの中に入っていった日本酒は、さらに織田さんを大きくしていく。身長は2mを超えた。おっぱいはテーブルの上からはみ出るほどになり、前にいた課長の体に何もしないでも触れるほどになった。

「もっと、もっとー……」

まだ酒を欲している織田さんは、ポフンと頭を胸に乗せ、そのまま寝てしまった。潰れたな。

「山崎、せっかくだから触ってみたらどうだ」
「お、新入社員も一緒に体感してみるか」
「え?」

それって、いいのか?と思って躊躇する僕の手を、高井さんが掴んだ。

「大丈夫。誰も気にしないから。ほら」

そして、僕の手は、目の前に鎮座する肌色の塊に押し付けられ……なんだこの感触……すごく……暖かくて、包み込まれるような……

「最高だろ……?」

高井さんの声が聞こえたような気がしたが、関係ない。僕はその感触を無我夢中で、全身で感じようとしていた。僕は胸に飛び込んだ。周りから拍手が聞こえるような気がする。そんなことはどうだっていい。トクン、トクンという織田さんの心臓の脈拍を感じ、胎内にいるような感覚すら覚えた。柔らかくて、暖かくて……このまま、寝てしまいたい……

「お客さん!終点ですよ!」
「えっ!?」

目が覚めた。ここは、どこだ。電車の中?服は着てる、でも着た記憶なんて無い。

「車庫に入りますから、降りてください」
「あ、はい……」

不思議と酔った感覚はない。そんなに酒を飲んでいないのに、気を失ったのは何か毒ガスでも吸わされたせいなのかもしれない。いやいや、まさか。

電車を出ると、名前だけは知っている遠くの街の名前があった。時計を見ると、もう帰れないことがすぐに分かった。明日が土曜日でよかった。

次の出社日、高井さんに打ち明けると、大声で笑われた。

「がはは、そんな所まで行ったのか!」
「ええ、なぜか記憶もなくて……」
「おっぱいに飛びかかってたもんな、椅子からさ」

僕の顔がすごく熱くなっていくのを感じた。そんなことをしたのか、僕は。

「ま、俺も同じことしたけどな。全然飲んでないのに倒れて」

もしかしたら、あのおっぱいには魔法の効果でもあるのかもしれない。まさに魔乳だ……