うたたねの姫 前編

あむぁいおかし製作所様での投稿(http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-26218.html)と同内容です。イラストは春瀬めいお様に描いていただきました。

ここはとある男子校の教室。昼休み中も終わりに近づいている中、二人の生徒が話し合っていた、というより、椅子に座った気弱な生徒を、その前にドンと立つもう一人がいじっていた。

「で、学(まなぶ)、その薬がなんだって?」
「な……なんでもないよ、太地(たいち)……。そ、それより、そろそろ授業始まるよ……?」
「うっせぇな、ちゃんと答えろよ!」

気弱な方ーー学と呼ばれた生徒は、渋々と机の中に隠していた小瓶を出して、目の前に立つ太地に見せた。

「……成績が上がって、目立つようになれる、薬……だよ……」
「はっ?お前、そんなもん信じてるのか?そんな薬だけでいきなり成績がよくなったら、この世に学校はいらねぇよ」
「だ、だって、これを買った店でそう書いてあったんだ」
「そんなんにダマされるから、お前はいつまでも馬鹿なんだよ、ほらっ!」

太地は、学から薬瓶を取り上げると、中身をぐいっと飲み干してしまった。

「あっ、何するんだっ!」
「……味もただのエネルギードリンクじゃねぇか、やっぱりお前ダマされてたんだよ!」
「そ、そんな……」

周りの生徒にも二人の声が聞こえていたのか、教室中からクスクスと笑う声がする。学が赤面し下を向いてしまったところで、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。

「……ったく、バカバカしくてやってらんねぇ。それに成績上がったところで急に目立つわけないだろ」

太地はそう言い捨てると、自分の席に戻った。

そして、老先生のつまらない授業が始まる。古文の教科書を淡々と読み上げ、その意味を書いていく先生の背中を、太地はシャーペンを回しながらボーッと眺めていた。

「(……ちくしょ、眠くなってきやがった。体が熱い……あのエネルギードリンクのせい……か……)」

その日の陽気もあってか、太地は教科書を枕にうたたねを始めてしまった。そのクラスの誰しもが夢にも見なかったことが、始まろうとしているとも知らずに。

「では、ここ、読んでみなさい……おい、君、居眠りしてるのか?」

老先生が居眠りしている太地に気がついたのは、それから5分が経ったあとだった。

「お、おい……太地……ん?」

太地を起こそうとした隣の生徒は、異変に気づいた。その髪の毛が、しゅるしゅると伸びて、肩までかかろうとしていたのだ。そして、その髪はさらに伸び続けていた。

「君!起きた……まえ……うむ?私の目がおかしいのか……?」

やがて、サラサラとした髪が腰まで覆うような長さになったところで、目の悪い教諭も変化に気がつき、メガネを直して太地を凝視した。それを見て、隣の生徒だけでなく周りの生徒も太地の方を見た。

今度は、がっしりとしていた体つきがなで肩になり、少ししぼむように小さくなっていく。ゴツゴツしていた腕は、ふっくらとした柔らかい輪郭に変わり、これも一回り短くなった。

「ん……んん……」

太地は、周辺の様子がおかしくなったことに気づいたのか、ゆっくりと目を覚ました。

「なんだよ、この……髪の毛……?」

視界を邪魔する自分の髪の毛を触る太地。その声も、普段より2オクターブほど高いアルトボイスに変わっていた。

「え、何だこの声!?これ、腕が細くなって!?」

驚愕から体をばっと起き上がらせると、長く伸びた髪がなびいた。

「俺、まさか、女に……!?んっ……、胸がっ……」

太地が上げた、男子校ではありえない女子の喘ぎに、数人の生徒が股間を押さえる。

「胸が、あついっ……んあっ……!」

体が小さくなったことでぶかぶかになっていたシャツの胸の部分が、ググッと押し上げられた。

「これ、おっぱい……?んんあぁっ……!!」

太地が声を上げるとその膨らみはリンゴサイズにまで膨らみ、シャツは胸でいっぱいになった。

「うそ、だろ……でも、まだ大きくなるっ!!」

シャツをギチギチと引っ張りながら、2つの果実はさらに成長していく。

「んひゃっ、どこまでおおきくなるんだっ……!」

そしてそれは、小ぶりなメロンほどのサイズまで、ムチムチと大きくなる。その先端にはぷっくりとした突起の形が、シャツに浮き上がってしまっている。胸に引っ張り上げられた服の下から、腹部の肌色が覗いた。

「はぁ……はぁ……やっと、落ち着いた……」

変化が終わった太地は、彼自身が見たことがないほどの美少女になっていた。しかも、これも見たことがないほどのサイズの乳房を持った美少女に。

色気が一切ない男子校には刺激の有りすぎる姿になった太地には自覚がないが、頭も冴え渡っていた。

「……で、では……授業の続きを……」

そして事もあろうに、老先生はそのまま授業を再開してしまった。頭が固い老人として、目の前で起こった普通ではありえないことを、完全に無視しようとしているのだろう。

「ほら、教科書を読みなさい」

そして、黒板の方を向いて、太地の方を震える指で指した。

「えっ……」
「いいから」

太地は、巨大な胸に邪魔されながらも教科書を読み始めた。すると、これまで分からなかったところも実にスラスラと読めてしまう。学が言っていた、薬の「成績が上がる」効果は嘘ではなかったらしい。「目立つようになる」効果は想像とは全く別の方向、つまり成績が上がることによる副次的なものではなく、美少女になることで物理的に目立つようになる効果だったが。

そして、突然出現した爆乳美少女に悶々としながらも、授業は進んでいった。

「……太地、だよね?」
「あ、ああ……そうらしい……」

放課後、学が太地の席まで来た。太地はというと、授業中はなんとか現実から目を背けられていたのだが、シャツをギチギチとひっぱるおっぱいを見て現実に引き戻されていた。

「まさか、こんなことになるなんて」
「……なあ、学。さっきはごめんな、こんなに効き目のある薬を無理やり飲んじまうなんて」
「え?」

太地は、薬の効果もあってか特に努力をしなくても授業の内容を完全に記憶できていた。テストの成績も保証されているだろう。

「だから、代わりに勉強教えてやる。図書室でな」
「……うん」

いつも太地に逆らえない学は、このときも逆らうことはできなかった。

場所は変わって、夕暮れの図書室。他の生徒は部活に励んだり、帰宅している時間、図書室で二人きりになるスペースを探すのには苦労しなかった。二人は、机に並んで座り、数学の教科書を開いていた。薬の効果は、これまで学んだ知識にも適用されるらしく、太地にはこれまでハードルとなっていた問題も当たり前のように解けるようになっていた。

「……だから、ここにこれを代用するんだよ」
「え、どこ……?」

学の方は要領を得ないため、一方的に教えられる側になっている。

「ここだって……」

太地は、学のノートを指さそうとして、無意識に学に体を近づけた。その拍子に、胸の先端が学の体に擦れてしまった。

「あぁっ……!」
「た、太地……!?」

いきなりの太地の喘ぎに、学はびくっと震えた。

「やっぱやりづれぇなこの体……。おっ、赤くなってんのか?」
「そ、そんなこと……」

学にとっては、ここ数年なかった、「女子」と二人きりの時間。しかも、口調は荒いがとびきりの美貌をもった女子が、体を触れてきているのだった。赤面するのもやむを得なかったのだ。

「お?こういうのがいいのか?」
「や、やめて……」

それを面白がって、太地は立ち上がって学の後ろに行き、学の背中におっぱいを押し付ける。

「そんなこと言って……やっぱり、ここ大きくしてんじゃねぇか」
「うぅっ……」

学のズボンを押し上げる、いきり立った股間を見た太地はニヤッとして、シャツのボタンを外し始めた。

「太地、何を……」

第三ボタンまで外すと、巨大なおっぱいがブルンッと外に飛び出す。

「やっぱでっけぇな……」
「な、何やってるんだよ……」
「学くぅん……私のおっぱい、揉んでみるぅ……?なんつって」

もちろん、揉まれる気なんてサラサラなく、学が恥ずかしがって縮こまってしまうのを笑い物にしようとしていただけだ。だが、次の展開は太地が予想したものの斜め上のものだった。

「もうがまん、できないっ……!!」
「うわっ!?」

太地は、前からぐいっと押され、背中にドンッとなにかがぶつかる衝撃を感じた。気づくと、学に肩をつかまれ、壁に押し付けられていた。

「てめ、真に受けやがって……」

太地は押し戻そうとする……が、力が入らない。体の変化のせいで、学よりも筋力が弱くなっていたのだ。

「……太地が悪いんだよ」
「んなっ……ひゃぁっ……!」

学は、太地から右腕を離すと、そのまま右胸を揉み始めていた。

「すごくやわらかいよ……」
「ま、学、や、やめっ……ひゃんっ!」

太地は、胸からもたらされる刺激と快感に耐えられず、へなへなと床に崩れ落ちてしまう。

「お、男の胸だぞ……っ!そんなん揉んだって……!」
「こんなに柔らかそうなのに、そんなこと言って……」

長い髪が、床の上にくしゃくしゃと広がる。学は左腕も太地の肩から離し、左の胸を掴んだ。

「ひゃぅっ……」
「すごいよ、僕の手じゃおおえないほどおおきい……」

太地は、慣れない感覚にビクンビクンと体を震わせた。数時間前まで存在もしなかった自分の胸を、学に揉みしだかれている。学が与えてくれる快感に、その身を委ねてしまおうとしたその時だった。

「な、なにやってるんだ……?」

すぐ隣から、急に聞こえた二人以外の声に、二人はハッとした。図書室で、他の生徒の前で痴態をさらしていることに、気づいたのだ。非常にまずい事態だと。

そのとき、太地の胸がシュルシュルと縮み始めた。髪も短くなっていく。腕には筋肉が付き、体つきもがっしりとしたものに戻っていく。

「な、なに……?男に戻ってるのか……?」

太地の想像通り、数秒もすると、彼の体は薬を飲む前の、男の体に戻った。

「太地、逃げ、逃げなきゃ……」
「そ、そうだな!!」

太地が外していたボタンを戻す間に、学は大急ぎで教科書を鞄にしまい、呆気にとられているもうひとりの生徒を置き去りにして、図書室から逃げ出した。

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学が変身/太地が再度変身

投稿者: tefnen

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