環境呼応症候群 恐怖心の子

「いってきまーす!」

俺は、いつもの様に忘れ物率10%のカバンをひっさげ、家を出た。遅刻も日常茶飯事だが、今日は遅れることはないはずだ。あの子の体質に、魔が差ささなければ……いや……

「おはよ……おにいちゃん……」

後ろから聞こえてきた小さく弱々しい女の子の声。隣の家に住んでいる中学生の小和田 チカ(こわだ ちか)。幼い頃から遊んでやっていたら、いつの間にか俺にくっつきっぱなしになっていた。小柄なせいで、かなり怖がりで、人見知りも激しいこともあったのだろう。

「おっ。おはようチカ」
「えへ……」

この笑顔も、見ることができるのは俺だけなんだろうか。でも、その奥には不安も混じっている。俺はその理由を知っていた。それだけではない。制服がない中学校に通うチカのチェック柄のダッフルコートがつぎはぎだらけなことも、「それ」の証拠だ。

「えっと……今日も中学校まで一緒に……」
「一緒に行ってやるよ」
「ひっ……」

ちょっと言葉を遮るだけでも驚く。どこかの小動物かと思うが、その驚きだけでも、「その」症状が出る。ショートに切ってある黒い髪が、肩までスッと伸びるのだ。チカは気づいてないみたいだけど……でも、今日くらい、遊んでやってもいいかな?

10分と少し歩いていくと、他の中学生やら高校生やらと段々と合流し、人通りが多くなってきた。チカは俺にひっついて歩いている。ここらへんで、始めるとするか。

「なぁ、チカ……」
「えっ?」

チカが俺の方に意識を向けた瞬間、俺は大声を出した。

「わぁっ!」
「きゃぁっ!」

チカも大声を出して俺を突き飛ばすように逃げた。そして同時に、そのコートの胸の部分ががムクムクっと盛り上がってパンパンになり、足もニョキニョキと伸びた。

「おにいちゃんの……いじわる」

それで恥ずかしがるだけでほとんど怒らないのはチカの気の弱さからかもしれない。チカは、「メタモルフォーゼ症候群」を患っていた。何かに怖がると、体が成長して出る所が異常なまでに出る。今だって、あのコートを脱がせたら高校生でも大きい胸が出てくるだろう。それに、なぜか俺と一緒の時にしか症状が出ない。なぜ、俺なのか。まあいいや。

チカはその体のまま、また体をくっつけてきた。さっきよりもその力が強く、腕に柔らかい感触が伝わってきて、まだ落ち着かない息が近くに聞こえてくる。

「わざと驚かさないって……言ったのに」
「ごめんごめん。もう今日はしないからさ」
「今日は……って、むぅ……ひぃっ!?」

チカの体がまた大きくなるのを、自分の触感で感じた。コートがブチブチと破け始めた音も聞こえる。あのコート、破けるの何回目なんだろう……しかし、今度は俺は何もしてないぞ?

「どうしたんだ?」
「あ……あそこにネコの死体が……ある……!」

チカはどんどん大きくなっているみたいで、その息がゆっくりと耳元の高さを通り過ぎ、俺にがっしりと抱きつく腕が長くなり力も強くなっている。そして、コートの糸がほつれる音が止まらない。

「あれって、ただのぬいぐるみじゃないか……?」
「そ、そう?」
「確かめてきてやるから……」
「お願い、おにいちゃん……!」
「あの、放して……」
「それはいや……!」

困ったぞ。完全にパニック状態だ。チカの髪が俺の顔に触れ、サラサラとした感触が伝わってくる。

「じゃあ一緒にいくか?」
「ひっ!?……そんなの絶対いやぁ……!」

俺に選択肢が何一つない。今や俺より頭ひとつ身長が高く、無理矢理首を動かしてコートの方を見てみると、もうキッツキツのギチギチで、スイカサイズに膨れ上がった胸しか覆っていない。そしてそれも……

《ビリビリーーーッ!!》
「いやぁっ!!」

ドッバーンッ!!……これが一番正しい音の表現だと思う。胸の洪水が、俺の背中と腕に襲いかかったのだ。柔らかいってもんじゃない。もう包み込まれる感覚しか無い。しかも、チカはもっと強く俺を抱きしめてくる。その感覚は、強くなる一方だ。

「ち、チカ……?」
「お、おにいちゃんっ……チカ……」

ああ、これが来たか。チカの吐息は荒くなる一方で、体がかなり熱くなっている。こうなると止められない。

「カラダが……熱くって……!おっぱいじんじんする……!だから……」

俺の体がヒョイッと持ち上げられ、180度回転する。さっきまで135cmくらいしか身長のなかった子がすることではない。実際、今目の前にみえているのは一瞬巨人かと思えるほどの体躯で、俺の目の高さには、巨大な2つの柔丘の上にピンク色の突起がそれぞれ1つずつ立っている。

「チカのこと……責任取って……?」

責任ってなんだ。しかしそんなことを今のチカに問いただしても答えは得られないだろう。恐怖に染まりながらも上気しているチカの目は虚ろで、何かに取り憑かれているかのようだ。

「じゃ、じゃあ……」
「ひゃぅ!」

まずは目に見えているものからだろう。両手で、一瞬にして育ったチカの豊かな2つの丘を、ゆっくりと揉み、上下左右に動かす。しっとりとした触感とともに、まだ、まるで空気が送り込まれるように中から押し広げられ続けているそれが、俺の手を押し返すような力を感じた。

「き、きもちいい……!」
「あはぁ……あぁん……!」

中学生が出す声だろうか。でも、今のチカを中学生と言ったら誰も信じないだろう。俺はそこが通学路であるのにもかかわらず、チカの身体の感触に徐々に夢中になっていった。次にチカに抱きつくと、チカのすべすべとした背中の肌触りが感じられ、その美しくかたどられた曲線にそって動かすと、腰のくびれ、そしてプリッとしたお尻に辿り着いた。そして、顔はチカの胸の谷間に押し付けられ、ムニュッとした柔感が頭を覆い尽くし、むしばんでいく。

「む、むふふ……!」
「おにい……ちゃん……!もっと、もっと……!!」

ムチムチとしたチカの身体を愛で、その火照った身体の熱を全身で受け取りながら、自分のアソコが硬くなっていくのを感じる。チカもそれに気づいたのか、ズボンのジッパーを勝手に下げてくる。変身した後のチカは、性格が豹変するけど、ここまでは初めてかもしれない。

「ね、ねえ……パイズリ……してみる?」
「ふぇっ!?」

体を離すと、チカが路上に仰向けに寝そべり、誘ってくるような表情で、胸をムニュッと左右から潰してアピールしていた。パイズリなどどこで覚えたのか、だけど今は関係ない。周りの視線をすごく感じるが、今は関係なかった。

「ち、チカが言うなら……」

いや、望むところだった。俺は遠慮なく、もう特大スイカになったチカの果実の間に、突っ込んだ。もう、想像以上の快感だった。

「おにいちゃんの……硬くて……大きい……!」

これまで他のものを見たことがないんだなと思いつつ、チカに身を任せた。

「う、こ、これが……夢にまで見た……」
「あはぁん……はふぅ……」

見てない。断じて見てない。が、夢でだってここまでのものは手に入らないだろう。ここまで柔らかく、大きく、質量感のあるものがこの世にあるだろうか。

「そ、そろそろ……出ちまう……」
「えっ……もう……?」
「う、うっ……」

俺は、チカのきれいな顔めがけて、射ってしまった。

「ふわぁ……!」

そこで、冷静になった。周りの視線が、一気に頭の中にぐさっと刺さり、そして、俺達が邪魔で止まっていた自動車のボンネットが急に目に入り、驚いて飛び上がった。

『うわぁすごい……』『露出狂か……?』

意識が明晰になり、周りからの言葉も段々と耳に飛び込んでくるようになった。

「ご、ごめんチカ……!」

俺はすぐに、いつの間にか元に戻ったチカに謝ったが、返ってきたのは意外というかなんというか、ある意味場違いではない答えだった。

「いいよ、おにいちゃん……でも、責任取って、お嫁さんにしてね……?」
「は、はい……」

だから責任ってなんだ。と、満更でもない俺は思うのだった。

トキシフィケーション BE編

私の家に突然訪れた女性。唐突に尋ねられた。

「あなたが、私をグラマラスでボンキュッボンな身体にしてくれるお医者さん?」
「……ようこそ、我が手術室へ」

確かに、私は密かに身体を成長させる手立てがあると吹聴していたが、医者までとは言っていない。だが、まぁいいだろう。このうら若きお嬢さんは喜んで私の実験台、もとい患者になってくれるようだ。

「で、どういう手術をするの?シリコンを埋め込むの?それだけじゃないわよね?骨を移植したりとか……それに、よく考えてみたらすごく高いでしょ?」
「いいえ、非常に簡単な手術ですし、無償でやって差し上げますよ」
「ほんとう!?ラッキー!」

むしろ、こういう状況でないと、いくら金を払っても私の毒の被験体になる人間など一人も出てこないだろう。この頭の悪そうなティーンエージャーは奇跡のような存在だ。それに、手術が楽なのはこちらの方で、被験体には考えられないほどの痛みが走るはずである。まあ、私の知ったことではないが。

「あの、お名前は……」
「アリサでーす!」
「では、地下室の方へどうぞ」
「はーい」

ここまで何も疑わずに実験室に入った人物は弟を除けば誰もいない。服を脱いで手術台の上に横たわり、毒を注入するチューブがつながった鎖をかける時にも少し恥ずかしがったぐらいで、何の抵抗も示さなかった。

「んー、やっぱり私の身体って貧相ね」

背が低く寸胴で、尻はそれなりにあるが、驚くほど胸の膨らみが小さい。これで授乳の機能があると思えない。

「じっけ……手術を始める前に聞いておきますが、どこで私の事を聞いたんですか?」

こう聞いたのは、好奇心が少しと、私の噂の広がり方を確認するためだった。すでに噂が広まっている所で同じことを吹き込んだって、骨折り損だからな。

「私、これまで色々なサプリメントや運動を試してきたの。でも何の効果もなくて……それで学校の友達にあなたの事を聞いたの」
「なるほど……」

騙されやすいタイプなんだろうか、友達の話を真に受けて来たというわけだ。まあいい、余興はこれくらいにして、実験を始めるとしよう。

「それでは、始めます」

私は彼女に毒を送り込むスイッチに手を掛けた。

「ちょっと待って……それって」

私はアリサが何か言おうとするのを無視して、毒をスイッチをガチッと入れた。

《ゴボゴボゴボッ!!!》
「きゃあああっ!!!」

今回は実験的に100ml程度入れた所で止めてみることにした。アリサの痛覚は異物を感知して激しい刺激を脳に送っているようだ。彼女には済まないが、これは成長が終わるまで続く痛みだ。あっと言う間に100mlが入り終わったが、彼女は痛みに悶えているだけで、身体に変化は見られなかった。だが、私がスイッチを切った時だった。

《ボンッ!!!》
「うああああっ!!!!」

胸が急に隆起したのだ。平らな胸板に、スイカ大の球体が急に現れ、それに押しのけられた空気が私に吹き付けてくるのを感じるほどだった。それは、これまでの実験台と同じく、萎縮していく。そして、その分が他に行くように、手足が長く成長し、アリサは他の学生と変わらない体格になった。縮んだ胸はBカップといったところか。

「はぁ……これ、が……私!?やったぁ……」
「まだ終わってませんよ」
「え、いいです!これでお、終わりでいいです!!」
「あなたに決める権利はありませんよ」

再度スイッチに手をかけると、アリサの顔から血の気が引いた。

「や、やめて……」
「そうですね……いま緩やかな成長を見させていただいたので……」

スイッチの隣にある、「注入速度」と無駄に大きく書かれたつまみを、これまた派手に回した。もちろん「最大速度」だ。

「もっと、激しく……」
「いや、やだ……」
「成長してもらいます!!」

映画の悪役のように、パフォーマンスでもやるかのようにスイッチを入れた。

「ああああっ!!!!」

彼女は痛みで身体をこわばらせた。毒は容赦なく彼女の中に入っていき、侵された体細胞は一気に不安定になり、彼女の全身の皮膚がグニグニと波打った。死にはしないだろうかと我ながら不安になるほどだ。

《ビクンビクンッ!!》
「んあああっ!!」

乳首が異様に勃起し……というよりは他の部分と同じだろう、サイズが一定で無くなり、親指ほどに膨らんだり、逆に赤ん坊のそれと同じほどに縮んだりしている。Bカップに落ち着いていた胸のサイズも、左右バラバラに膨張収縮を繰り返している。

《ボワンッ!!》
「んぐぁぁああっっ!!!」

一瞬、彼女の体全体が爆発するように膨らんだが、いつもように体が抵抗しているのか、ギュギュギュッと痙攣しながら元に戻る。

「んんんんっっ!!!っ!!」

筋肉が不規則に痙攣し、手術台の上で彼女の体は暴れた。よく見ると、右腕が最初のサイズを下回って、小学生のようなサイズに落ち込んでいるのが分かる。逆に左腕はかなり大きくなって、大きく発達した筋肉で鎖を引っ張るせいで拘束具が悲鳴を上げている。

《ムクムク!ブワンッ!ミチミチッ!!》
「んはっ!!ふぁああっ!!」

アリサがエビ反りになったと思うと、その上で胸がブルンブルンと揺れながら大きくなっていく。そのまま左右が均等なまま成長していくとおもいきや左乳房が爆発的にバレーボールくらいに成長し、右乳房がコンマ数秒遅れてバスケットボールほどになった。それは彼女の心拍と連動してムクッ!ムクッ!とさらに大きくなろうとするが、さらに時間を開けて始まった収縮に追いつかず、10秒も経つとただの胸板に戻った。

《プルン!ボンッ!!》

もとの仰向けに戻ると、今度は臀部が左右別に張りを持ったまま急激に膨張し、彼女の体が持ち上がった。

《バキバキバキッ!!!》
「ああああっ!!」

それに合わせるかのように骨盤が大きく広がったのか、骨がきしむような音がして腰が横に張った。その幅は手術台からはみ出すほどになり、今さっき膨らんだ尻は引き伸ばされて厚さを失った。

《メキメキッ!ポキッ》
「くぅっ!あぅ!!」

骨盤から毒が骨伝いに伝わっていくように両足が伸びる。脂肪は発達しないのか、引き伸ばされてかなりガリガリな足の形が出来上がった。

《ググググッ……ムチィッ!!》

左足が震え始め、地響きのような音がして、その後すぐに骨が爆発したかのように脂肪が付いた。ほんの1秒で直径80cmほどになったそれは、太さが10cmくらいしかない右足に比べてかなり太い。

《ガクガクガクッ……ビチッ!!》

右足も左足に続き、太くなる。その中で何かが蠢いているように、足の形は一定にならず、加えてますます太く、長くなっていくように見える。目に見えてブクブクと膨れ上がるそれは、あまり成長していない上半身にかなり不釣り合いだ。と思っていると、

《ムギュゥウウッ!!ボワンッ!!》
「うわああッ!!はじけちゃうううう!!!」

足が何かに絞られるように細くなり、その反動と言わんばかりに乳房が上に飛び出した。足は縮み終わったあと、すぐにまた太くなり始めた。無理矢理急成長した乳房はかなりの張力を持っているようで、破裂直前の状態になっている。よく皮膚が持つなと思う。

《ブニュッ!!グキィッ!!》

その乳房自体も、脚と同じように、上からおもりが落ちてきて潰されたかのように一気に萎縮した。その分は、今度は右腕に詰め込まれ、中から腕を押し広げ、小学生のようであったそれは、ソーセージのようにパンパンに膨れ上がった。

《ムギュワッ!!!ボワァン!!》

再度かなり膨れていた足が一気に縮み、乳房が飛び上がるように膨張した。乳首が信じられない程に巨大化したが、すぐに乳房に吸収され、釣り合いの取れた大きさとなった。といっても、その乳房も手術台から1mの高さまでそびえる2つの山とも言えるほどの巨大なものになっていたが。腕の方は、太さを失うとともに伸び始め、かなり長く、肉感的なものになった。そこで体の不安定さは収まった。

「はぁ……はぁ……ちょっ……大きすぎ……それに……」
《ムクッムクッ……》
「まだ大きくなってる……!!」

私はスイッチを切っていなかった。毒は彼女の体に流れ続けている。手術台の上で、アリサの体はどんどん膨らんでいく。ジェニファーが大きくなった時の2mの身長を超え、毒が細胞に回るタイミング、心臓が血液を送り出すタイミングで、一回り、また一回り、断続的に大きくなる。

「いや、いやぁ……」

乳房は張りを保ちながら、すでに天井につきそうなバストが1サイズずつ上がっていく。もし、この私の体でも入りそうなサイズに名前が割り当てられていればの話だが。足の豊かな太ももも、ムチッ、ムチッと空気を入れられるように膨らみ続ける。注入量を見ると、ジェニファーに注入した500mlに対して、もう4倍の2000mlは投入していることがわかった。実験は十分だろう。私はスイッチを切った。

「どうですか?」
「も、もうお嫁に行けない……」
「この薬を飲めば元に戻れますよ」

アリサを手術台から開放すると、私はいつも手渡す薬を一錠、彼女に飲ませた。すると、彼女の体はある程度戻ったのだが、元のチンマリとしたものには戻らず、身長180cmほどの爆乳ムチムチな、わがままボディで止まってしまった。

「ふむ……興味深い。ある程度までしか戻らないか」
「興味深い、じゃないわよ!……でも、ちょっとアグレッシブだけど、この体も良さそう……」

アリサは手術台に座り掛け直し、ギリギリ自分の手で持てるほどになった、Zカップほどの豊満な乳房を抱きしめた。元々深い谷間がもっと深くなった。そのムニュムニュと変形する様からも、その素晴らしい質感がうかがえる。これからも被験者を増やしていくべきかもしれない。おっと、あの少年のことを忘れていたな……明日で薬が切れる彼のことを。

変身描写だけ書きたい!(GTS1)

「これ、すごく、かわいい!!」

店先に並ぶキーホルダーを見て大興奮の少女。だが、その興奮で、彼女のある呪いとも言うべき体質が発現してしまったのだった。

《ドクンッ!》
「っ……!!」

全身を襲った衝撃が、彼女にそれを思い出させた。

「また……やっちゃった……」
《ドクンッ!!》
「んんっ!!」

その時、少女の体がカメラで画像が拡大されるかのように、ズイッと大きくなった。

「お客様、大丈夫ですか!」
「へ、平気……」
《ドクンッ!》
「んぅっ……!」

何回も繰り返される衝撃の度に、少女は頭一つ分大きくなっていく。急に苦しみだした客に話しかけた店員は、急に背が高くなった少女に腰を抜かし、床に倒れてしまった。

「お客さん、お、大きく……」
「ご、ごめんなさ……」
《ドクンッ!》
「あぁっ!」

ここまで無傷だった彼女の服が、どういうわけか一瞬で破け去り、一糸まとわぬ姿になってしまった。

《ドクンッ!》
「ん……!!」

店の1階の高さを超えた彼女に走る衝撃は、周りに音が聞こえるほど大きなものとなっていた。

「あらあら、また大きくなってるのね」
「全く大変な子ね……」

その心臓の鼓動にほかならない音を聞きつけた少女をよく知る通行人が、建物と同じくらいになった少女の姿を、さも日常的な光景のように見物していた。

「は、恥ずかしいよぉ……」
《ドクンッ!》
「んぐっ……!!」

少女は周期的に訪れる衝撃とともに、グイッグイッと大きくなり、重さを支えられなくなったアスファルトはメキメキと地面から剥がされていく。彼女から発せられるドクンッ、ドクンッという重低音は、今や近くの窓をガタンと揺らすほどの強さだ。

「う、うう……何で私……」
《ドクンッ!》
「ひぐっ……!!こんな体質に……」
《ドクンッ!》
「んぁっ!!なっちゃった……」
《ドクンッ!》
「ぅあっ……!もう、人がしゃべる邪魔しないでよ!!」

少女は、サイズが2mを超える自分の足が店舗の棚を粉々に破壊するのも気に留めず、大声を出した。それで衝撃が収まるわけもなく、逆にその大声でそれまで少女に気づかなかった人にまで注目されるようになってしまった。それでなくても、ドクンッ!という音がすでに街中に響きわたっていたのだが。

「おー、また大きくなった!もう東京タワーに追いつくんじゃないか?」と完全に見世物を見ているようなものや、「あのお姉ちゃんすごい!私もアレくらい大きくなりたいな!」と何か間違った方向のあこがれを持たれたりだとか、「こら、見ちゃいけません!」と何か教育に悪いものだと思われたりだとか。少女の羞恥心は深まる一方だった。

「も、もう!こんな街、吹き飛んじゃえ!!」

少女はその巨体を跳躍させた。それだけで、足元の地面は完全にえぐられ、店は基礎が崩壊して倒壊してしまった。しかし、一度地面から離れたものは、また地面に着く。少女の足が着地したその瞬間、信じられない程のエネルギーが少女から地面に伝わり、その反動でバァーン!!!と地表面とその上にあった建物は一瞬で吹き飛ばされてしまった。

「あ、あぁ……」

少女の周りはクレーターとなり、剥きでた水道管からプシューと水が噴き出る音が響いていた。

「また、やっちゃった……でもちょっと、面白いかも!!」
《ドクンッ!》
「ひゃうっ!」

その日、その街は本当に地図から姿を消してしまった。

発作

「きょ、今日はだいじょうぶだよね……?」

カレンダーを見ながら不安そうに見つめる小柄な少女は、中学生の襟居 ミカ(えりい みか)。今日は初恋の相手、クラスメートの港 健(みなと たける)とテーマパークにデートの日。彼女は流行のスタイルで身を固め、薄めの化粧をしてハンドバッグを手にし、出かける準備万端である。テーマパーク向けではないかもしれないが。

「あら、まだいたの?」
「あ、ママ」

洗濯物をしているらしい母親は、不安げな娘の表情を見て察した。

「アレのことで悩んでるんでしょ?大丈夫、きっと神様はミカの味方よ」
「うん、そうだよね……きっと大丈夫」
「ほら、行ってらっしゃい」
「うん!行ってきます……ってこんな時間!?うわああ!!」
「気をつけてね!!」

玄関から飛び出していくミカを見届けると、母親の表情は一気にミカと同じような不安に変わった。彼女には、ある秘密があったのだ。

「うー、電車思ったより混んでる……」
「土日でもこんなに混んでるんだね……」

すんでの所で集合時間に間に合ったミカは、健と一緒に上り列車に乗り込んだのだが、土日とはいえラッシュ帯の時間で、電車には人が詰め込まれ、平日のラッシュとそれほど変わらない混み具合になっていたのだ。

「(でも、健くんとくっついていられるのは嬉しいな……)」

顔を見合わせるように立っていたおかげで、ミカと健は恥ずかしくなるほどに相手の顔を見ることができた。それに、背の低いミカは、つり革に掴まった尊に抱きつくようにして立っていた。ミカのボルテージも上がっているようで、鼓動が強く感じられるようになっていた。

「(これが、恋のドキドキなのかな……)」
「今日は何に乗ろうかな?ジェットコースターとか?」
「あ!う、うん……身長制限に引っかからなきゃいいね」
「あ、そうだね……」

ミカは、小学生にも劣る背丈のせいでこれまで何度も憂き目にあっていたのだった。

「(なんだろう、緊張してきたのかな、この、ドキドキ……ち、違う!)」

そこで彼女は思い出した。「その」発作のことを。

「(だ、ダメ……今はダメ……!)」
「ミカちゃん、大丈夫?」
「え?うん!大丈夫だよ!!気にしないで!(杞憂でありますように!)」
「そう?」
「う、うん!」

しかし、その予感は段々現実のものとなっていた。心臓の鼓動は強くなる一方で、ミカは自分の体の中を、熱い血液が駆け巡っている感触を確実に感じていた。

『まもなく東山村……』
「(も、もうちょっとだから……とにかく健くんの前じゃダメ……!)」
「すごく、苦しそうだよ!?」
「そ、そんなこと……ない……よ!でも、次の駅でちょっとおりないと……!んっっ!!」

脳から全身へと大量のホルモンが行き渡り始めた。体はそれに呼応して、ビクンビクンっと痙攣を始めていた。

「そんなに、苦しいの!?」
「ん、んんっ……だ、だいじょうぶ……ぅっ!!」

全身の細胞が激しく活動し始め、もはや暴走の域に入った彼女の体は、グニグニと形を変える。その動きは、ミカの体に接触していた健にも確かに伝わった。

「ミカ……ちゃん?」
「も、もう……抑え……られない……ぃぃっ!!!」

そして、「それ」は始まった。健の前で、ミカのシルエットが大きくなり始めた。最初に目についたのは、その身長だ。足がグキッ!バキッ!と言いながら大きくなり、上半身も同じように伸びていくせいで、抱きついている腕の位置がグイグイと上に上がり、目線の高さもあっと言う間に健を追い越していく。

「ま、また大きくなっちゃう……!やだ……!やだぁっ!!」

服の丈が合わなくなり、手足がその袖口からニョキニョキと生えてくるようにも見える。その太さも、着実に太くなっていく。

「あ、服、きつ、……やぶれ、ちゃうっ!!」

上に着ていたシャツの、広めの襟がさらに広くなり、ついには生地にビリッ、ビリッと穴が開いていく。その下で、プクッと突起が膨れ上がり、破れかけの三角形のテントが出来上がった。

「お、おっぱいが……あついよぉ……!!」

他の部分と比べて遅れてホルモンが分泌された胸は、血液が送り込まれるごとに成長し、ムクッ……ムギュッ!ムギュギュッ!!と段階的に、膨張する。もともと弱くなっていた服はビリビリと破かれ、今は完全に逆転した身長差のせいで、健のまさに目の前で、バインッ!!と成熟した爆乳が飛び出し、彼の顔を直撃してしまった。しかも、それは膨らむことをやめてはいなかった。

「んっ……あっ……!!」

ミカが喘ぎ声を上げるごとに、2つの果実はボワンッ!と大きくなり、健の顔はムギュッと包まれていってしまった。

「も……もう……あぅっ……!いやぁ……」

泣きだしてしまったミカだったが、他の乗客との隙間が肌色の柔らかい物質でいっぱいになるまで、成長は終わらなかったのだった。