環境呼応症候群 速度の子 その後

気まずい。なぜか非常に空気が重い。高校の修学旅行の帰り、広島始発ののぞみ号車内で、友達がいない僕は、ある知らない女の子と隣に座っていた。いつもは周りの女の子とわいわいしゃべってるのに、低体温症で毛布を膝にかけた僕が隣りに座ったせいかだんまりしている小さい女の子。速見(はやみ)さん、だったかな。

窓側に座っている速見さんはむすっとした顔をしながら外をじっと見ている……とおもいきや、こちらのこともチラチラ見ている。なにか話をすれば、東京までの3時間この空気のまま行くこともなくなるんだろうか?よし!

「あ、あの……」
「なに……?」

怖っ!?速見さんは鬼の形相を浮かべている。小学生くらい小さく幼い体から、ものすごい強さの負のオーラを感じる。

「な、なんでも……」
「はぁ……ねぇ、これから何が起こってもびっくりしないでよね?って言ってもムリだろうけど」
「え?」
「加奈子達と席を離してもらったのにも理由があるんだから」

加奈子……っていうのは、いつも帰る時に一緒にいるあの子のことかな?速見さんはというと体が小さくて目立ってて、クラスで知らない人は誰もいないけど……

『17:04発、のぞみ138号東京行きです。途中、岡山、新神戸、新大阪、京都、名古屋、新横浜、品川に停車します。間もなく発車いたします』

車内放送が流れると、速見さんは深呼吸をした。

「ふぅ……あと1分くらいかな」
「速見さん、新幹線が怖いの?」
「んなわけ……!……でもある意味怖い……かな」

速見さんの言葉の意味がはっきりしない。ある意味怖いって?いつもすごく元気な子が、かなり不安そうな顔を見せると、それを見ているこっちまで不安になってくる。と、外から発車ベルが聞こえてきて、程なくしてドアが閉まり、電車が動き始めた。といっても、最初はのろのろとホームを出て、あまり速度は上がらない。

「も、もう……早く速くなりなさいよ」
「そんなこと言ってもどうしようもないよ。……?」

速見さんを見たとき、とても強い違和感を覚えた。何かがおかしい。速見さんが近めに見える。と、電車がホームから完全に出たのか、加速が強くなった。

「来た……わね……!服がきつく……」

服がきつく?どういうことなんだろう、と思っていると、さっきの違和感がさらに大きくなってきた。というより、速見さんの体が、大きくなっている。

「えっ!?」

思わず声を上げてしまうと、速見さんに口をふさがれた。その手は最初僕の口を押さえきれてなかったけど、だんだん長く、それでいて細く、手の甲も指も大きくなって、そのうち完全に覆われてしまった。その間にも、速見さんが着ていた学生服は、パンパンになって持ち上がり、ヘソが見えるようになっていた。背丈は、中学生位になったと思ったら、いつの間にか僕を抜かしている。

「く、くるし……」

速見さんの声、いつもと全然違う。大人のような深い響きが感じられる。ど、どういうことなんだ!?僕の目の前で、速見さんが大人になろうとしているのか!?胸もペッタンコだったのに、今はDカップくらいなんだろうか、かなり大きくなっていて、それが学生服の中で押しつぶされて、お饅頭のようになっている。お饅頭は、どんどん横に縦にと大きくなり、必死に抑えている服からは、ギチッギチッと破れる音がし始め、今にも弾けそうなボタンと、無理矢理こじ開けられた真ん中の部分から、ムチッとした肌色の膨らみと谷間が露出されている。

「ん……んんぅっ!!」

速見さんが力を解放するかのように小さく叫ぶと、ついにボタンがはじけ飛び、バインッ!!と2つの膨らみが飛び出してきた。

「ふぅ……ふぅ……死ぬかと……思った……」

その一言ごとに、ムクッ、ムクッと大きくなっていくように見える……おっぱい。速見さんの胸に、タプンタプンとゆれるおっぱいがついている!?これまで、いや、数十秒前までは考えられないことだった。僕の隣には小学生くらいの小さい速見さんが座っていたはずなのに、今そこにいるのは、メロンサイズになってもまだ成長を続ける、信じられないほど大きな胸を持った、美しさと可愛さが混じりあったような僕と同じかそれ以上の年代の女の人がいる。まるで、グラビア雑誌からおっぱい特盛りで飛び出してきたかのような。

「ま、まだ……速くなるの……?」

確かに新幹線は加速をやめていなかったし、記憶が正しければ今の1.5倍くらいには速く走るはずだ。でも、それとこれとは何の関係があるんだろう?といって、口をふさがれているままなのできくこともできない。速見さんの手は、僕の手より大きくなっていて、僕の力では剥がせそうにもない。身長も今は180㌢はあるんじゃないだろうか?学生服は完全にサイズが合わず、スカートからはムチッとした太ももが見える。しかも、僕の足にモロにあたって、包み込むような弾力が感じられる。それに、その弾力はどんどん強くなっている。

「おっぱい……大きすぎるよぉ……」

もう、ネット上でも見たことがないような大きさになっているおっぱい。赤ちゃんが2人くらい入っててもおかしくないような2つの球は、張りを失うこと無く、それでいてかなり柔らかい。僕の腕にムニムニと押し付けられていて、その成長する感覚がじかに伝わってきている。速見さんの体温と鼓動が、胸越しに伝わってきて、鼓動ごとに、ムギュ、ムギュと押し付けられる力が強くなっているけれど、同時に、太ももと同じように包み込まれるような……そう、気持ちよさを感じるのだ。僕のアソコが、固く、ズボンを持ち上げている感触が伝わってきた。

「ちょ、ちょっと……何、勃ててるのよ」
「むぐぐ」

今や僕より頭ひとつくらい上にある速見さんの顔。かなり恥ずかしそうだ。そりゃ、僕という男子生徒の目の前でバランスボール並みのおっぱいを晒していれば、恥ずかしくはなるだろうし、学生服も、ほぼただの布切れと化している。その上で太ももに僕のアソコの感覚が伝わってきては、もうどうしようもないほど恥ずかしいのだろう。仕方ないけど……

「えっ……この毛布……」

僕にできること、それはほぼ裸体の速見さんに毛布をかけて、おっぱいを隠すことくらいだった。おっぱいのプルプルとした揺れは、毛布でも抑えきれていないようだけど。

「もう、速見さんの体温のお陰で僕の体が冷えることもなさそうだし……」
「むむっ」

速見さんが素っ頓狂な声を出して、巨大な胸が僕の体にあたっていることを手で確認した。成長する前の速見さんからは考えられないほど落ち着いた声だったし、大きな手だった。

「まぁ、いいわ。ありがとう」
「どういたしまして」
「私、『メタモルフォーゼ症候群』なの」
「え?」

『メタモルフォーゼ症候群』。聞いたことがないなぁ。

「聞いたことがないっていう顔ね」
「うっ」
「図星か。まぁいいわ、私は速度が上がると体がこんな風に大きくなっちゃうの。逆に、小学生の時それが発症して以来、自然な成長は完全に止まっちゃったの」

だから、普通は小学生サイズなのか。確かに、小さすぎるとは思っていたけど。

「クラスのみんなには内緒にしてたんだけど……バレたのがあなたでよかった」

速見さんは初めて微笑んだ。そう言われるとこちらも嬉しくなる。

「でも、こんなに大きなおっぱい、見たことないでしょ?」
「え、うん……」
「中学生のときも新幹線で修学旅行に行ったんだけど、その時は先生に隣りに座ってもらったのね。そしたら……倒れちゃった。でも、あなたは大丈夫みたいだから……」

正直言うと、体に伝わってくる訳の分からない重さと快感でどうにかなりそうだったけど、なんとか理性を保っていたのだった。次の岡山で速見さんは1回元に戻った。風船から空気が抜けていくように、ゆっくりと戻っていくのを見るのは、なんというか安心感があった。しかし、発車するとまた成長をはじめて、今度は僕も耐え切れずに理性をかなぐり捨て、周りからは見えないように巨大な胸をもみしだいたのだった。速見さんはというと、すこし喘ぎながら何故か楽しんでいるようだった。

あっと言う間に東京に着き、僕はおっぱいを名残惜しみながら、荷物をまとめて席を立とうとした。すると、元に戻って、僕が貸した学生服の上着を何とか羽織った速見さんからトントンと肩を叩かれた。

「ねぇねぇ、実はハワイ旅行当てちゃって……一緒に、行く?」

速見さんと乗る飛行機が楽しみだ。

転がる性

ボクは、れっきとした男なのに、はたから見れば女にしか見えない。いわゆる「男の娘」だ。これまで幾度と無く女子と間違えられ、男子だと解ってる奴らからも女子扱いされることも数えきれないほど。力が弱いわけでも、背が特別低いわけでもないけど、ふっくらとした体つきや、一向に声変わりしないことがコンプレックスになっていた。それでボクはこれまで、髪も短く切って、部活のサッカーもたくさん練習して、できるだけ男らしく生きようとしてきた。

その日もそうだった。だけど、中学校から帰る途中立ち寄ったコンビニで、ボクは「それ」に出会ってしまった。

「こ、これは……」

女性向け雑誌の表紙に、可愛い服を着たモデルの写真が載っていた。そこまでは普通だった。問題は、そのモデルの顔つきがボクとそっくりだったことだ。少しドキッとした後に、ボクがそのモデルの格好をしているところを無意識に想像した。

「(ボクがこんな可愛い服を着たら、どうなるんだろう……周りからちやほやされたりするのかな)」

想像上のボクの周りに、いっぱいのカッコイイ男の人が、ボクの目標、憧れの男らしい人が集まってくる。いつもなら、少し考えるのだけでも拒否反応を起こしていたのに、その時のボクはなぜか充足感を感じていた。

「(そしたら、私、人気者になれるかな。え、私?)」

どこからともなく出てきた『私』という一人称。頭の中の女装したボクが使いそうな感じ。それを、思わず使ってしまったのだった。

「(わた……し。え、あれ……?私じゃなくて!)」

ボクは『私』を振り切ろうとしたけど、頭の中で反響するこだまのように、『私』で満たされていく。同時に、全身がピリピリと痺れを感じてきた。

「う、うぅ……!」

しびれが、ボクを作り変えていくような奇妙な感覚に、思わずうめき声を出してしまった。だけど、それはすぐに収まった。

「な、なんだったの?」

胸に手を当てて、落ち着こうとした。でも、それは逆効果だった。なぜなら、手にムニュッと柔らかい、慣れない感覚が伝わってきたからだ。

「え?」

下に目を向けると、心なしか胸のあたりが盛り上がっている。

「ま、まさかそんなこと……」

ボクは服を脱いで嫌な予感を否定したくなったが、その場で全裸になるわけにも行かず、コンビニのトイレを借りて……嫌な予感が確信に変わってしまった。

「これ、おっぱい……?私に何でおっぱいが?って、ってことは!」

トランクスの中に手を突っ込む。小さくても、確かにそこにあったボクの男の象徴が無い。ハッと鏡を見ると、髪も肩まで伸びていた。

「わ、私、女の子になってるぅ!!」

そんなの、嫌だった。これまでコツコツと作り上げてきた日常を全部否定されるようなものだったから。ボクは、その悪夢のような現実を、否定し返すしか無かった。

「わ、私は……ボクは男なんだ!そんなに簡単に女になってたまるかぁっ!」

そしたら、またしびれのような感覚が襲ってきて、数秒もしないうちに胸は胸筋を残して平らに戻り、髪も元に戻った。股からムギュッと圧縮された感覚が伝わってきて、ボクは男に戻れたことが分かって、やっと一息つけたのだった。

それが、数週間前。それからも、何回か女の子になる現象が起きていた。ボク自身が女装している場面を想像する度、実際に女の子になってしまうのだ。やめればいいのにと思われるかもしれないが、なぜか無意識に想像してしまう。最近は男に戻れないで、女のままクラスに出たこともある。体つきはほとんど変わらないけど、髪は長くなって目立つから、はさみで切ってはいたけど。

そのボクが今いるのは、ウィメンズの洋服屋さんの前だ。安めだけど、流行に乗ってそうなスタイリッシュなものから、子供用のかわいいものまで売っている。見た瞬間にまたドキッとしてしまって、私が着たらどうなるのかなって。あ、またしびれが全身にかかってきた。こんなに簡単に体が変化してしまうから、この女の子の体も楽しもうかな。

私が着てたのが男子学生用の服だったから、店員さんはかなり困惑してたみたい。コスプレで通したら半分納得してくれて、そこから服選びを手伝ってもらって、結局30分くらい吟味してたかな。こんなに長く洋服屋さんにいたのは初めてだけど、すごく楽しかった。ようやく試着室に入った時は、もう私が女の子の服を着ることは当然のことのように思えた。

でも、すごくドキドキする。本当にこの服に袖を通していいんだろうか。私は道を踏み外すことはないんだろうか。

「ううん、大丈夫」

私は自分にそう言い聞かせた。まずは学生服を脱いで、下着をつける。すごい、完全にフィットする。スポブラのホックをつけると、胸のふっくらとした膨らみがすこし上に持ち上げられて、錯覚で大きくなったようにも見えた。店員さんに選んでもらった服を全部着ると、私はどこからどうみても女の子で、元が男だとは全然わからないほどだった。

「私、すごく綺麗……もう、このままでもいいかも」

そんな言葉が自然に口からこぼれた。その瞬間、ビリビリッといういつものしびれがもっと強烈になったものが、全身の感覚を支配した。

「ん……んぅっ……」

しびれに何とか耐え、私は鏡を見続けた。肩まで伸びていた髪が、背中の半分まで伸びる。少し中性的とも言える顔つきも、輪郭が丸くなり、鼻が小さくなっていわゆる「女顔」に変化する。胸に圧迫感がかかると、鏡の中の自分の胸の部分が服越しでも分かるくらいに盛り上がった。やっとしびれから開放されると、私にはもう後戻りができないことが何となく分かった。でも、それでもうよかった。

「ふふっ……お母さんにどう説明しようかな」

ちょっと困ったように微笑んでいる鏡の中の女性は、とても魅力的だった。

状態変化を書いてみたかっただけ1

1日目。不死身の種族であるという妖精族の女性を捕らえた。我々の畑や、商店を荒らす厄介者の種族だ。見た目は人間とほとんど変わらない。ただ白い髪と、背中から生えている葉のような羽根が特徴的だ。同じように白い毛皮のような衣服で、最低限の部分が覆われている。幸い数は少ないが、捕まえたからにはこれからタップリと楽しませてもらおう。開発した魔法薬を試させてもらいたいしな。もう夜遅いが……そうだ、子宮が異常に膨れ上がる薬を一滴飲ませよう。何で開発したかって?まぁ、そういう趣味の人もいるってことだ。スポイトに取って、それを瓶に入れたままの妖精の口に近づける。

「や、やめて……許して」

妖精はがくがくと震えているが、お構いなしだ。スポイトから魔法薬を垂らすと、うまく口の中に入っていった。

「んぐ……かはぁっ」

のたうち回る妖精。露出された、キュッと絞られていたウエストがぷっくりと膨れているのが目に見えて分かった。瓶の中で確実に大きくなっていく腹部は、パンパンに貼っていてほぼ真球に近くなっている。そして、ついには瓶一杯に膨れ上がってしまい、ガラスの壁に腹が押し付けられ逆側では羽根が無理に曲げられて、痛みでギャーギャー騒ぐ。不死身でも痛がるんだなぁ。そんなことを考えていると、瓶にヒビが入り始めた。これはまずいな。よし。

「いや、いや!もう飲みたくないぃっ!」

別の薬が腹でつっかえて動かなくなった自分の顔に近づいてきてるのを見て、けたたましい叫びをあげる妖精。だが、それで躊躇することもなく薬を注ぎ込む。すると、妖精の体が灰色のもので覆われ始めた。石化の薬を飲ませたのだ。灰色の部分はあっと言う間に全身に広がる。

「え、何が起きて……か、体……が…………」

妖精はなすすべもなく完全に灰色になると動かなくなり、腹の膨張も収まったようだ。それを確認したところで楔をあてる。そして、ゆっくりコツンっと金槌を打った。カシャアンッ!という音を立て、瓶の中で綺麗なほどに粉々になる妖精。明日になれば元に戻るはずだ。割れかけている瓶から、もっと大きめの丸底フラスコに移し替えた。明日はどんな薬を使おうか。

谷間トンネル

夏のうだるような暑さの中、少年は住宅街の中を歩いていた。隣には、長い青髪を二つに束ねた女の子が付いている。

「こんな所であうなんて、嬉しい偶然だね、お兄ちゃん」
「あぁ……何でこんな所にいるんだ?」

少年は学校の帰りで、中学生の妹であるシホにばったり出くわしたのだった。シホは年齢不相応なスタイルをしていて、巨大な胸を、夏の暑さの中、汗で濡れた薄着の下でタユンタユンと震わせながら歩いていた。肌にくっついている生地のせいでその双丘の輪郭がいつもよりも大きく見え、襟からも谷間が見えている。といっても、本人に他人に見せつけようなどという意思はないのだが。しかも兄である少年はもう慣れっこで、別段驚くこともない。ただ、男として全く気にならないということでもないが。

「えへへ、先輩とちょっとお菓子屋さんに行っててね……あれ?あんな陸橋、この近くにあったっけ?」
「シホはここに来たことがないんだな」

二人の前に忽然と現れるコンクリートの橋桁。それは、住宅街に不自然に存在している新幹線の高架線路だった。都市どうしを無理矢理直線で結ぼうと、通る土地をいとわなかったせいで、こんな奇妙なことになっている。家はその向こうにあって、兄妹はその方向に歩いてきたのだった。

「これはな、新幹線が……」

ゴゴゴゴ……

少年が説明しようとした矢先、新幹線が近づいてきたことを示す地響きがし始めた。そこでやっと、彼は妹の「秘密」を思い出した。しかし、もう遅かった。

ビュンビュンビュン!!!!
「ひぃっ!!??」

新幹線が風を切る轟音が辺り一帯に響いた。と同時に、それに驚いたシホの体が……大きくなり始めた。兄より頭ひとつ小さかったのが、あっと言う間に追い抜かされる。ググググ……と体全体が大きくなり、そのスタイルが強調されるように服がぴっちりとくっついたかと思うと、ビリビリと破かれていく。そして、5秒ほど経った時には5m上にある高架橋の高さに届いてしまった。もはや、伸縮性の高い下着だけがシホの体を包み、住宅街のど真ん中で肌の殆どを露出した巨人と化してしまった。少年には妹の心臓の鼓動が地面を伝って、ドクンドクンとハイペースで聞こえてきて、その驚きが収まってないことがわかった。

「ああ、これは困ったことになった……」
「おにいちゃぁん……」

大きくなった妹の声が遥か上の方から発せられる。シホは、驚くと体がサイズ的な意味で大きくなってしまう体質を持っているのだ。

巨大化はまだ止まっていなかった。10m、20m、40mとどんどん大きくなる少女は、汗が滴る胸や尻を惜しげも無くさらしていた。しかし20階建の中層ビルになったところで高架橋につまづいてしまい、バランスを崩して橋の方に倒れ始めてしまった。それに、次の列車が、意味もなく警笛を鳴らしながら近づいてきていた。

「きゃああああっ!!ダメぇっ!!」

高架橋を破壊する寸前になって、すでに考えられないほど巨大だった胸がブルンッ!!ムギュギュギュ!!!と大きくなり、それによってともに大きくなった谷間に、橋桁はスポッと挟まれた。尻もプリンっと空に向かって膨らみ、逆にウエストはキュッと絞られる。巨大化の体質の他に、他の人の危機を感じ取ると成長するという体質も持っている。自分が倒れこむことにより線路が破壊されるのを危惧し、その体質が現れたのだった。

列車は、突然現れた巨人の乳房の間を、スーッっと抜けて……行かなかった。非常ブレーキをかけた列車はシホの下で止まってしまった。

「は、恥ずかしいから早く行ってぇっ!!」

少し大人びた少女の叫びは、普段の騒音の何十倍にもなって、家々の窓を破壊し、新幹線の架線も至るところでプチプチと切れた。周りの異変に驚き、更に何倍にも巨大化していくシホ。真下で耳を押さえていた兄は、溜め息をつくしかなかった。
shiho