ここは、ある廃坑の入り口。そこに、二人の大柄なゴロツキが見張っていた。
「こう何もねえとつまんねぇなあ…」
「まあそう言うなって…」
二人はぼやいていた。だが、急に声がかかった。
「おじちゃんたち、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
「あぁ?」
そこには、革の服を着た小さな少女が涙目な顔をゴロツキに向けて立っていた。栗色のおかっぱ頭で、弱々しく見える少女だった。
「どうした、嬢ちゃん、何か用か?」
「私、道に、迷っちゃって…」
二人は互いに向き合い、相談する。
「おい、どうする?」
「ボスへの貢物にしようぜ、まだ体は小さいが一級品だ、見てみろよ。ん?」
「なんだ?あれ、アイツどこに行きやがった!?」
少女の姿は消えていた。
「逃げられたかな…?」
その次の瞬間、一人の首が何かにガシッと掴まれる。
「逃げたと思った?違うよ。それに、逃げられないのはアンタだよ!」
先ほどの少女が、首に後ろから腕を巻き付け、動きを封じていた。
「はぁっ!?おい、お前一人でなにができるってんだ?」
「確かにボク一人じゃ無理だけど…今だよ!エリーナ!」
すると、急に電撃がゴロツキに向かって放れた。当たる寸前に少女はもう一人に向かって飛びのいた。
「うぎゃああああっ!」
「おい、お前!ぐはっ!」
一人が倒れると、空中から繰り出された少女の拳が急所に命中して、他の一人もその場に倒れた。
「ラッキーだったね!ボクたちが人殺しが嫌いな賞金狩りで!」
「こら、そんなにはしゃがないの!マリー!」
先ほど電撃が放たれた方から、青いローブを着た女性が近寄ってきた。フードを外した頭からはポニーテールに纏めた長い金髪が伸び、その上からでも分かる大きな胸を携えている、大柄な女性。
「はーい、エリーナ」
「いい?この洞窟には人さらいが一杯いて、これまでの敵とは比較にならないほど強いモンスターも飼っているかもしれないんだから」
「山賊やモンスターなんて、ボク達にかかればイチコロだよ!」
「その油断がいけないの。こいつら、なにか裏があるわ。村や街の人から聞いた犯行が、計画的すぎるもの…」
「そーお?とりあえず、中に入ろうよ!ここで喋ってたら日が暮れちゃうよ」
「そうね」
そして、エリーナとマリーは、洞窟の中に入っていった。
——————–
エリーナの予想に反して、掃討は順調に進んでいった。そして、ついに最後の部屋に辿り着いた。
「あなたが、ここのボスね」
そこにあった豪華に装飾された大きな椅子に座っていたのは、これまでの野蛮で凶暴な男、ではなかった。エリーナと同じように、黒いローブを着た、一人の男性。
「その通り、よくぞ、ここまで参られた。エリーナ殿、そして、マリー。お噂はかねがねお聞きしておりましたぞ」
「…?なぜ、ボクたちのことを?エリーナ、心当たりある?」
「…あるわ…この国で最も恐れられているネクロマンサー、リーフロット…」
「またまた正解。まあ、我輩の趣味は少し変わりましてな。今かお見せする生物を創りだしたのもそのため。いでよ、マナ・サッカー!」
リーフロットが叫ぶと、部屋の中に巨大な肉塊のようなものが姿を現した。あらぬ所にギョロッとした目があり、体から伸びる管のような口があらゆる所に付いている。
「マナ・サッカー?」
「安直な名前でしょう?魔力を吸い出すから、マナ(魔法)・サッカー(吸引するもの)。さあ、君達も我が下僕の餌食になるのだ…」
怪物がのそのそと動き始めた。
「エリーナ、どうする?」
「逃げるわよ!テレポート!」
そして、二人の姿はふっと消えた。だが、エリーナだけは怪物の目の前にテレポートしてしまった。
「おっと、残念、残念。この空間では、全てが我輩の思い通り。テレポートの目標地点もずらしてやったぞ」
「な、なんてこと…んっ!」
肉塊から触手が伸び、エリーナの体に触れ、巻き付いていく。触手にローブが抑えられたせいで、大きな胸が強調される。
「こんなやつ、私の魔法で!ファイアバースト…あ、あれ…魔力が…」
「はは、無駄、無駄」
エリーナが呪文を唱えても、何も起きる気配がない。その魔力は、触手を通じて魔物に吸われていたのだ。ついに、触手に体が持ち上げられ、肉塊の口がエリーナの口に合わさった。
「むむぅ!」
「さあ、この女の魔法を吸い尽くせ!」
「(いやぁっ!)」
魔物の口に、エリーナから何かが出て行っていた。
「(やめて、私から魔法を奪わないで…)」
それにともなって、なんとローブを押し上げていた胸が縮み始めた。
「(いや、私の体小さくなってる!)」
長く伸びた髪も短くなり、身長も縮んで、ローブの中に体が埋もれ始めた。
「(子供に戻ってる!?)」
5年前の姿、10年前の姿、15年前、とどんどん遡っていく。
「ふむ…ここ辺りで止めにしますか」
リーフロットの命令にしたがって、肉塊は口を離した。だが、その時にはもうエリーナの体は3歳児程度に若返り、触手が離れても、ローブの中でじたばたともがいていた。
「私の服、大きくて動けない!」
「ふふ…おや、エリーナさんのお仲間が、助太刀してくれるそうだぞ?」
「マリーが?ダメ!」
マリーは洞窟の入り口に飛ばされ、エリーナを助けに最深部まで走ってきたのだった。
「エリーナ、今助けるからね!」
そして、魔物の方にに刃物を向け、飛びかかる…が、ヒット直前に触手にガシッと体を掴まれてしまった。
「うぐっ…離せ!離せったら!」
「そうだな、我が下僕に魔力が過度にたまっているゆえ、君にそれを分けてやる。その後なら」
そう言う間にも、魔物の口がマリーの口に合わさった。
「むうっ!むうっ!」
「では、注入開始…」
「(ボクの中に、何か入ってきてる!!?)」
そして、エリーナの時とは逆に、マリーの体が膨らみ始めた。
「(ボクの体、あついよぉ…)」
革の服の中で、平だった胸が盛り上がり始めた。すぐに乳房となった胸は服に圧迫され、形を歪ませた。
「(服に潰されちゃうぅ…!)」
手足も何かを詰め込まれるかのように伸び、服の中からニョキニョキと出てくる。
「(お…お尻が…ぁ!)」
ズボンの中でもギュウギュウと脂肪が詰まり、膨張する尻。結び目から、肉がはみ出る。
「(やめてぇぇっ!)」
栗色の髪がざわざわと伸びて、腰に届いた。
「(ああああっ!)」
革の服の縫い目がバスッと破れ、メロンサイズの乳房がブルンッと飛び出た。
「ふむ、中々のべっぴんだな…あの無鉄砲でやんちゃな子が、こんな成長の仕方をするとはね。そろそろ、やめにするか」
肉塊の口が離れると共に、魔物は姿を消した。そこには、体の大きさが逆転したエリーナとマリーが残された。二人とも服のサイズが全くあっておらず、戦うことも出来ずに、恥ずかしさに顔を真赤にしながら、涙目になっている。マリーの方も今回は流石に演技ではないようだ。
「私達を、どうしようっていうの?奴隷にでもするの?」
「ボク、奴隷はやだよぅ!」
「いや、これまでさらった女達と同様、記憶を改ざんして村に送り返すだけゆえ、安心しろ。二人は母娘として生きるのだ。もちろん、マリーが母親、エリーナが娘だ」
「そんな、やめて!」
「無駄口を叩くな。村で平和な生活をおくるんだな」
リーフロットの指から魔法の光が飛び出し、二人に当たった。
「きゃああああっ!」
「うわあああっ!」
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その次の日、村に二人の女が現れた。一人はつぎはぎの革の服を着た金髪の少女、もう一人はローブを着た栗色の髪の女性だった。
「よくいらっしゃった。ここあたりでは、人さらいが出るから、ここまで無事で来ることができたアンタ達はラッキーだったな」
村の村長が出迎えた。すると、ローブの女性のほうが言った。
「そうですね…それより、私達、住む家がなくて…ここに少しの間泊めて頂けませんか?踊り子でもなんでもしますので…」
「すまんな、踊り子は一杯いるんだ。なぜか女子供がうちの村にはよく来るんでな。どうやら、アンタは良い物持ってるみたいだが…」
村長はローブを大きく押し上げる二つの膨らみを見て言った。
「とりあえず一晩泊まって、隣の村まで行ってくれ。護衛を出すから。あ、そうだ。名前を聞こうか」
「私がマリー、この子がエリーナです…ほら、エリーナ、ご挨拶を」
金髪の少女は、ニコニコしながらいった。
「村長さん、よろしくお願いします!」
こうして、2人の賞金稼ぎが存在を消したのだった。