成長

小学生である俺の弟には、成長ホルモンのバランスに問題があるらしい。健康診断で問題が出て、紹介された病院の医者にそう言われた。俺も、母さんも父さんも、かなり慌てたものだ。それから1ヶ月後。実際の所、問題は全然なかった。

俺を除いては。

「兄ちゃんお帰り!」
「おう、ただいま」

夏の暑い日、汗だくで帰った俺を、リビングで迎える弟の太一(たいち)。髪を短く切って、シャツと短パンで涼しく決めている。母さんは俺のぐしょぐしょに濡れた服を見て、呆れ顔だ。

「汗びっしょりじゃない。お風呂入ってきたら?」
「ああ、そうするよ」
「ちょっと待ってね、入浴剤持ってくるから」
「あ、あぁ……」

母さんは廊下の方に出ていった。さて、さっきの問題というのなんだが……

「兄ちゃん、部活って楽しい?」

弟がいたはずの所に、高校生の俺と同じくらいの背丈の女の子が立っている。髪は長く、胸はサイズが合わない服をピンピンに引っ張り、ムチッとした尻に短パンが食い込んでいる。後ろに腕を組んで前のめりになって聞いてくるせいで、胸の谷間が自分の存在をこちらに強烈に主張してくる。

これが、俺の弟だ。普段は普通の活発そうな小学生男子だが、俺しか見ていない時に限って出るところは出て締まるところはキュッと締まった女に急成長するのだ。ホルモンバランスの崩れから来てるんだろうが、一体全体、成長ホルモンってなんなんだよ……

「ねえねえ?」
「……!?」

かわいい女の子、いや弟の顔がギュッと急接近してきた!思わず狼狽してしまう俺に、どんどん弟は接近してくる。

「ほら、持ってきたわよ……って何顔赤らめてるの?」

母さんがいきなり部屋に入ってきて、飛び上がってしまった。

「こ、これはそういうのじゃなくて!」
「……何が?」
「あ……」

魅惑的な体つきの少女は、跡形もなく姿を消し、いつもの弟が少し不満気な顔をしているだけだった。思わずため息をついてしまう。

「……はぁ……風呂入ってくる」

毎日弟が変身するのを見て慣れていたはずなのに、あんなに近寄られるなんて思ってもみなかった。太一は太一で、自分が変身していることに全く気がついていないらしい。胸を触ってみてもいいかとダメ元で聞いた時は、ちょっと首を傾げただけで了解された。その時触った感覚は、太一が本当に女の子になっていることを証明していたけど……

風呂場に着くと、すでに湯が沸かしてあった。母さんに渡された入浴剤を入れると、シャワーの蛇口をひねった。と、その時だった。扉越しに、いつの間にか風呂場の前に来ていた母さんがとんでもないことを言った。

「ねえ、太一も一緒に洗ってあげて、お母さん忙しいから」
「え、ちょ……!?」

普通に考えればとんでもないことでも何でもない。が、俺の場合はそうも行かない。でもシャワーを止めて拒否する前に、太一が入ってきてしまって、抱きつかれた。

「兄ちゃん久し振りにお風呂一緒だね!」
「え、えっ」
「じゃあお願いね」

風呂場の扉がガチャッと閉められると、俺の体にムニィッと弾力感が伝わってきた。おっぱいだ。弟のおっぱい。

「背中洗いっこしよ!」
「えぇっ!?」

服越しには分からなかったキメの細かい肌と、柔らかそうな丸い輪郭。混乱した俺にはそれしか分からなかった。しかし、俺の体に胸を押し当てている女の子はどうあがいても弟だった。

「え、してくれないの?」

そんな泣き顔するな!そんな顔されたら断れないだろ!?

「ああもう、すればいいんだろ、すれば」
「じゃあ太一の背中から!」
「はいはい」

俺は、風呂椅子に座った弟の後ろに回る。まずサラサラと背中に流れる長い髪を肩の前に回した。

「ゴクリ……」

出てきた背中のなんと綺麗なことか!俺と同じくらい大きいのに、汚れの全くない、真ん中に筋がすーっと通った、とても繊細そうな肌。写真で見たことはあっても、目の間にあるとまた違う。

「どうしたの?」
「あ、ああ、今洗うからな」

これ、いつものヤツで擦ったら絶対傷つけてしまう。どうやって洗ったらいいのか……考えた挙句、結局母さんが使っているスポンジの柔らかそうな方で洗った。

「ちょ、ちょっと痛いよー」
「あ、暴れるなって!」

四苦八苦しながらも何とか背中を洗い終わる。

「じゃあ髪の毛も!」
「はぁっ!?」

こんなに長い髪の毛、本当にどうやってあらうんだ……普通にロングだよな、これ……これこそ、細心の注意を払うべきところだろうが、洗い方なんて知るか。

「いつもどうやって洗ってるんだ?」
「んー、いつもは髪短いから……」

なるほどな。

「じゃあ、俺が出るから、自分で……」
「やーだっ!兄ちゃんに洗って欲しいの!」
「わがまま言うんんじゃない!そんな顔したって俺には通用しないぞ!」

そんな、ねだるような顔されたって、俺は……実際、完全に敗北してる。めちゃくちゃドキドキしている。

「そ、そう……?」

すごくがっかりしているようだ。俺だって洗ってやりたいのはやまやまなんだが。

「じゃ、髪が終わったら他の部分を一つだけ、何でも洗ってやるから……髪だけは洗えって」
「はーい」

俺は風呂場を出て、扉を閉めた。気になって中をのぞき込むと、いつもの弟のようだ。ワシャワシャと自分の頭を揉むようにして洗っている。あれなら、俺にもできるんだがなぁ……

「終わったから入ってきて!」
「おう」

扉をがらーっと開けると、目に飛び込んでくるのは突起のついた巨大な丸い膨らみと、長い髪に飾られた端正な顔。こんなに急に変身して、痛くもなんともないんだろうか?

「じゃあ、胸を洗って?」
「あぁ、胸な……ムネェッ!!?」
「そうだよ?ノリツッコミしてないではやくはやく!」

しゃべるたびタプンタプンと揺れるあの豊満な果実を、洗えと!変な気持ちが沸き起こりそうで恐ろしいったらありゃしないが、約束は約束だ……仕方ない。さっきのスポンジを使えばいいだろうか……

「あ、スポンジは痛いから素手でやってよ」
「はぁっ!?やめだやめだ、胸以外のどこかに……」
「なんでもって言ったじゃん」
「ぐぬぬ……じゃあ洗うぞ……」

手に石鹸をつけて、恐る恐る肌色の膨らみに近づける。これは弟だ、弟なんだぞ……なんでこんなに興奮しなくちゃならんのだ……

「あんっ……♥」

指の先がピトッと触れた瞬間、弟が変な声を……喘ぎ声を出しやがった……どこのエロゲだよ……こんなの、兄弟がすることじゃ……

「どうしたの……?手が止まってるよ?」
「あーもう!やればいいんだろ!?」

胸に手を付け、石鹸を一心に塗りたくり、泡を立てようとする。だが、力を入れるたび気が狂うくらいに変形するそれは、その質量と触感で俺の性欲をかきたてた。

「んあぅ♥ふあっ♥」

おまけに、弟はエロいとしか言いようがない喘ぎ声を続けざまに出してくる。目の前で、俺の手によって大きく形を変えるおっぱいと合わせて、俺の股間はとてつもなく固くなって、痛いほどだった。その時、風呂場の扉が一気に開いた。

「いつまで入ってるの!?」
「か、母さん!?」

み、見られた!弟の胸に欲情してるのを、現行犯で見られた!!

「こ、これは勘違いで……!」
「え?」
「あ。」

パニクった俺の精神は、元の姿に戻っている弟を見て落ち着いた。胸があった空間には何もなく、背も縮んだ弟の顔に、俺の手が当たっていた。

「何が勘違いなの?」
「い、いや……」
「それよりも、男同士がなんでこんなに風呂が長いのよ……おやつ準備してあるから、早く出てきなさい」
「はーい」

母さんは溜め息をついて、扉を閉めて去っていった。と同時に……俺の手にムニュゥ……と、柔らかい感触が戻ってきた。

「ひぁっ♥」
「も、もう大丈夫だろ……?」
「うん。それで、僕の体のことなんだけど……」

ん、急に雰囲気が変わったぞ。

「なんだ?」
「実は、兄ちゃん以外に今の姿を見せたこと、無かったけど……もう耐えられそうもないんだ」
「は?」
「これまでは成長を抑えて、元の姿でいられたんだけど、この頃、どんどん抑えきれなくなってて……トイレの中で成長したりして何とかしてたんだ」

どういうことだ。弟は周りの環境にあわせて、意思とは関係なく変身していたのではないのか?

「だけどもう限界みたいでさ、お母さんの前でもグッとこらえるくらいじゃないと、この姿になっちゃうんだ」
「ちょっと待て、それって……」
「男は、もうやめないとね。こんな大きなおっぱいで、男だなんて言えないから。だから……兄ちゃん、僕のこと、守ってね」
「まも……る……」

守る。その重大な責任について、俺はこの時全てを理解できなかったが、こくりと頷くしか無かった。これから女性として生きていく弟のためだ。

「ああ、守ってやる」
「兄ちゃん……ありがと……」

弟は、俺に抱きついてきた。俺は、少しの震えと、胸にムギュッと柔らかい何かが当たる感触を得ながら、覚悟を決めるのであった。

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投稿者: tefnen

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