増産体制

アメリカの片田舎に、一つの街があった。大きな工場の周りに、数百人が住んでいるその街には、ある特産品がある。

それは、オレンジジュース。街の工場から生産され、その街でしか売られないそのジュースは、アメリカ全土でも随一の美味しさで知られていた。しかし、不思議なことがあった。ジュース工場には、誰も勤務していないのだ。入っていくのも、出てくるのも、ジュースを積むためのトラックだけ。違いは、入っていくときは空き瓶だけが積まれたトラックが、出てくるときにはジュースの瓶で満杯になっていることだ。

トラックの運転席はよろい戸で中が見えず、そこに入るための扉すらない。商店の店主たちは、店の前に止まったトラックの中に代金を置いて自分の分のジュースを降ろし、トラックが出ていくのをただ見送るだけ。工場の従業員を見たものは、誰もいなかった。

夏の日に、それは起こった。

「ママー!ジュース一本飲むわよー!」

ブロンドヘアーの少女が、冷蔵庫にいっぱい入っているジュースの瓶から、一本を選んで取り出した。水よりも安いジュースは、住民の水分補給の基本手段だ。一つの家に数十本のジュースが保管されているのは、当然のことだった。

自分の部屋にジュースを持ち帰り、ゲームをしながらジュースを開けようとするその少女の名前はジェシー。高校生になり、次の秋からは隣町の高校に通うことになっていた。オレンジジュースで育った彼女の体は、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるメリハリのあるものだ。

「ん、ちょっと開けづらいわね……あれ?フタが金色だ」

ジュースの瓶は、普通は銀色のフタで栓をされている。それが、この一本だけは金色だった。これまでに飲んできた数百本のうち一本でも、金色のフタで閉められたジュースなど見たことがなかった。

「もしかして、これはとっても美味しいジュースなのかも!えいっ!」

親指でフタをグイッと押すと、フタは勢いよく飛んで行った。

「うわ、本当に美味しいわ!私ったらラッキーね!」

そのあまりの美味しさに、ジェシーは瓶一本分を一気に飲み干してしまった。他にも無いかと、冷蔵庫を開け放って、金色のフタを探す。だが、一本も金色のものはなかった。

「ほしい、ほしい、あのジュースがほしい……」

家から飛び出して、街中の店を探す。それでも、同じ金色のフタは見つけられない。

「な、なんで……?あ、そうだ、工場に行けばあるかも……」

もはやジェシーの体が、金色のフタのジュースを求めているようだった。足が勝手に動き、いつの間にか、固く閉ざされた工場の門の前まで来ていた。

「どうにかして工場に入る方法はないかしら?あれ?」

壁に大きな穴が空いている。車が突っ込んだあとのように、壁がボロボロになっていたのだ。ジェシーは、躊躇することなくその穴から工場の敷地に入り、目についた建物の扉を開けて中に入った。

「すごいオレンジジュースの匂い……」

中は狭い廊下になっていた。明かりが少ないため薄暗く、生産設備の音がゴウン、ゴウンと低く、周期的に響いている。ただ、人の姿はどこにも見られない。ジェシーを監視するようなカメラもない。あるのは無数の扉だけだ。

「どこにいけばジュースが……あれかな?」

一つの扉が、少しだけ開いていた。中から光が漏れている。ジェシーが扉を開けて中に入ると、2階の高さまで吹き抜けとなっている大きな部屋だった。壁や天井は真っ平らの鉄板でできていて、床は排水溝で囲われている。そして、その中央に、小さな机と、ジェシーがここに入ってきた理由である、金色のフタのジュースが置いてあった。

「やっぱりあった!私の勘、冴えてるわ!」

ジェシーはジュースに飛びつき、迷うことなくフタを開けて、中身を飲み干した。

「くーっ、全身に染み渡る!ん?」

ついさっき体験したような無上の快感とともに、違和感があった。ジュースが、本当に全身に染み渡っていくような、体が侵食されていくような感覚。そして、それとともにグジュグジュと液体の音が手足から聞こえてくる。

「ちょ、ちょっと、何よ、これ!」

そして、全身が絞られるような感覚と、何かが胸に集まる感覚。下を見ると、もともと大きく膨らんでいるジェシーのバストが、さらに成長していた。

「ひっ、に、逃げなきゃ……足が動かない!?」

絞られた足がペラペラの皮だけのような状態になり、力を入れても動かない。気づくと、手も、お腹もペラペラになり、ジェシーは床に倒れて動けなくなった。逆に胸は特大サイズに膨れ上がり、床の上でタプンタプンと揺れた。体の中身すべてが、胸に集められたかのようだった。

「あ、胸、なにか、でるぅっ」

その胸の先端から液体が出てくる。それは、オレンジ色の甘い液体、まさにオレンジジュースだった。液体の勢いは段々と増し、床がオレンジジュースまみれになった。そしてそのジュースの分、胸は縮んでいき、最後にはジェシーは空気の抜けた風船人形として床に横たわった。

「……!」

喋ることすらできず、ただ涙を流すだけだったジェシーの下半身を、何かが持ち上げた。その股間に、ゴム製の管が刺されると、何かの液体が流し込まれ始めた。

すると、ジェシーの体に厚みが戻り始める。ある程度戻ると、やっとのことで立ち上がり、声を発することができた。

「死んじゃうかと思ったわ……体も元に戻ってきたし、これを外して……」

股に刺さりっぱなしの管を引っ張りぬこうとする。だがそれは外れず、液体は流し込まれ続ける。

「え、えっ、ちょっと待ってよ!」

力いっぱいやっても、無駄だった。その間にも、液体はどんどんジェシーの体積を増やしていく。腹はフルフルと揺れながら、アドバルーンのように膨らみ、手足も中身を詰められるソーセージのように、パンパンに膨れ上がっていく。重くなりすぎた体を支えられず、ジェシーはまた動けなくなった。尻もムギュギュギュと大きくなり、ジェシーの頭の数十倍の体積まで成長していく。服はビリビリに破け、ほとんど裸同然となっていた。

「私が、なんで、こんなこと……」

腹の大きさが高い天井に届くほどに大きくなると、その天井がガコンと音をたてて下に動き出した。

「えっ!?」

容赦なく液体はジェシーを膨張させていたが、部屋の方はジェシーを潰しにかかっていた。ジュースを絞り出される果実のように。

「や、やだっ!ふがぁっ!」

部屋を埋め尽くすほどのおなかが潰されると同時に、胸がブクゥッと膨らんだ。腹部に入り切らなくなった何かが、乳房へ、その乳腺へと溜め込まれていく。そして、ジェシーの胸は残った空間を埋め尽くしていく。

「お、おっぱいが、でちゃうぅっ!」

そして、部屋がジェシーの体でいっぱいになったところで、胸の先端からブシュゥッ!!とオレンジジュースが飛び出してきた。天井の降りる速度が速くなり、その勢いが増していく。

「あああああっ!!潰される!絞られちゃうぅぅっ!!」

部屋はオレンジジュースの海となり、その一部はジェシーの口にも入ってきた。ジェシーは自分の体から出るジュースが、あの金色のフタのジュースと同じであることに気づいた。

「私のジュース、おいしい、おいしいぃぃっ!」

ごくごくと飲み始めるジェシーは、そのまま完全に潰されるまで自分のジュースに酔いしれた。

液体が止まり、部屋がもとの高さまで戻ると、部屋一面に、平面化し、伸び切ったジェシーだけが残った。

時間が立って、ジェシーの目が覚めると、彼女は元のサイズまで戻っていた。その股間に、またもや液体が流し込まれ始めるが、今度は喋れるほどに膨らみ直したところで、液体は止められた。

「もしかして、私、出してもらえるの……?」
「いや、それは無理ですね」
「ひっ!?」

そこには、外套を着た、初老の男性が立っていた。整えられたオレンジ色の髪と金色の瞳は、その男性が人ではないことを匂わせていた。

「だ、誰よアンタ!」
「おっと、これは失敬。私はこの工場を管理しているものです。名前はありません。工場長とでもお呼びを……」
「こ、工場長?名前がない?」

男性は深くお辞儀して、続けた。

「とにかく、ジェシー様はこの工場の増産計画に欠かせない存在なのです。試しに絞らせてもらいましたが、最高品質のジュースが出ますね。素晴らしい」
「す、すばらしいって……!んぁっ!」

また、ジェシーの胸が膨らんで、逆に全身がしぼみ始めた。

「そう、ジェシー様の体は、ジュース製造器となったのです。水を与えると、全身からオレンジの果汁が出て、胸で味付けをできるものですよ」

乳首から、オレンジジュースがしたたり始める。

「じょ、冗談じゃない……ん!」

今度は、股間に液体……水が供給され、全身へと分配されて、しぼみかけていたジェシーは元に戻った。

「さすがは我が工場のジュースを飲み続けて成長されただけはある。体がその味を覚えているのですよ。それに、その体はもう元には戻せない。工場に不法侵入した罰としても、ジュースの増産に尽力ください」
「ま、まって」

段々とムチムチとした体つきになり始めていたジェシーは、部屋から出ていこうとした工場長を引き止めた。

「ジュースの原料って、私のような人間なの……?」
「いいえ、これは工場の従業員から絞り出したものですよ。我々は、人間では到底想像が及ばない生物なのです」

段々と水の流量が増え、パンパンに膨らんだお腹に立ち上がれなくなったジェシーをみて、ふふっと笑う工場長。

「我々の食料は、人間の出す体液すべてと、それが蒸発したもの。ジュースは、人間をおびき寄せるための餌です。では、これで」
「え、な、置いてかないでよーっ!!」

少女は、力なく膨らんでいく。その悲鳴は工場の外へと漏れることはなかった。その街は発展を続け、大都市となり、ジュースは今だに名産品として売り続けられているという。

投稿者: tefnen

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