自分でも納得行かなかった文章はSNSサイトにアップロードせずにこちらに公開します。こちらのシリーズの没作品です。
今日の被験体は、ユージーン・ジョンソン、私の会社の理事だ。彼には、ある秘密があって、私の実験には最適だった。
「お、おい!ここはどこだ!お前!」
「ミスター・ジョンソン、私の実験室へようこそ」
「なぜ…私の名前を…?お…お前…!見たことあるぞ!あの陰湿な…清掃員か…!」
「その通りです、今日は私の実験にお付き合いいただこうと思って」
彼は、すでに私の実験台の上に寝かせてある。睡眠薬の効きが弱く、ジャケットしか脱がせることが出来なかった。だが、50歳にしてはほっそりして、健康的だった。
「何するつもりだ!このチューブは何だ!今すぐ放せ!さもなくばクビにしてやるぞ!」
「まあ、そうかっかなさらず。きっと気に入っていただけるはずです」
「気に入る?何を…?」
「私の毒。これは、人の体を、豊満な女性に変えるのです」
「な…?お前…まさか…!」
「さあ、始めましょうか」
スイッチをカチッと入れ、毒の注入を開始した。
「ぐ…!」
ユージーンは体を強ばらせた。時折、ビクンと体が跳ねる。
「んああああっ!」
《ムクムクムクッ!》
彼が大きな声を上げると、胸のあたりが急激に膨らんできた。ワイシャツは限界まで引っ張られるが、それでも止まらない膨張で、ボタンがプツッ!プツッ!と取れる。現れた膨らみは、筋肉の発達というよりは、脂肪の増殖のような形だった。
「んんんっ!」
《ビリッ…ビリッ…!》
下に着ているシャツが徐々に破れ始める。
「おいおい…」
そこに現れたのは、老婆のようなしわしわな乳房だった。大きさだけがものすごい。
「うがぁっ!」
《シュルシュルシュル…》
ユージーンが力を抜くと、同時に乳房が収縮を始めるが、その分の脂肪が行ったのか、腕の部分が太くなって、そこからもビリビリと音がし、袖が縫い目からとれ、さらに一部が破けた。私は、そこから、袖を完全に破り、上半身はほぼあらわになった。
「ん…ぐ…」
あらゆる所に刻まれた深いシワが、消えたり、また刻まれたりを繰り返す。だが、少し黒ずんでいた皮膚は、徐々に白さを帯びていく。
「ああああっ!」
白髪を少し含んだ黒い短髪が、バサッ!と伸び、同時に根本から金色に変わった。
「んっ…ああっ!」
声が変わっていく。年季の入った、所謂ダンディーな声がみずみずしさを取り戻す。
「あああああああ」
そしてトーンが上がり、女性のものとなる。
「ぐあああっ!」
《ビリッ!》
ズボンの左足が破けた。中からは、むっちりと脂肪が付いた、女性の足が出てきた。それはすぐに萎むが、
《ビリッ!》
続けざまに右足が破ける。またそれも萎む。
「あぅっ!」
《ビリリッ!プルンッ!》
その縦に入った裂け目が、一気に腰の方まで行ったかと思うと、プルッとした柔らかそうな塊がでてきた。同じように縮む。
そして、その変化が移っていくように、ウエストがギュッとしまり、乳房が膨らみ始める。どちらも、ハリとツヤを取り戻した綺麗な肌に包まれていた。
「んっ…くうっ…!」
《ムクッ!ムクムクッ!》
乳房はどんどん膨らむが、ウエストが元の中年の男に戻ると、収縮を開始した。そして、何もなかったかのようにシワの入った平らな胸板に戻った。
「い、いたいぃっ!」
顔の作りが変わる。顎は小さくなり、唇は大きくなる。目はキッとしたつり目に成る。
《ボンッ!》
「うぐっ!」
《バインッ!》
「がぁっ!」
乳房が、右から順に、その顔と同じくらいまでに急激に大きくなった。今度は、そのままだった。
《ムククーッ!》
下半身が、風船が膨れるように大きくなった。シワはほとんどが綺麗に消え去り、若々しくて、ムチムチとしている。これまでの3人と、変わりない。
「んっ…!」
他の部分からもシワは消え去るとともに、ゴツゴツとしていた体の表面がふっくらとした皮下脂肪に覆われ、なだらかになる。
「あああっ!」
ゴキゴキと骨格が変わり、腰は太く、足が内股に近くなる。
そして、変身が終わった。
[newpage]
今回は、注入量を100mlにしたせいか、あまり体は大きくならず、女性の特徴もそんなに大きくならなかった。
「終わりましたよ」
「…ん…なんだこれはぁ!」
ユージーンは鏡に写る自分を見て、かなり驚いている。だが、思った通り、満更でもないようだ。
「ミスター・ジョンソン、こういう服はお好きでは?」
それを見た私は、クローゼットからゴシックドレスを取り出した。
「ん…?そ、それは!」
「そうです、あなたのご趣味の、女性の衣装です」
「なぜ、それを…!」
「それは、とにかく…」
私は、リモコンで拘束具を外した。
「お召しになってみては…?」
「わ、私は…そんな…」
「さあ、自らの欲求を抑えることはありません。それに、これ以外に服がありませんし」
「くっ…」
ユージーンは、慣れた手つきで、ドレスを着ていく。
「これが…私…サイズも…ピッタリ…」
「化粧も、必要ないですよ」
「そうね…いや!…そうだな…」
「男口調を作る必要なんて無いですよ。むしろ、不自然です」
「そ、そう?じゃあ…エヘンッ…」
ユージーンは、咳払いをし、ポーズを取った。
「私、ユージーナ!ジーナって呼んでね!」
非常にかたわら痛い。だが、ここは我慢だ。
「ジーナさん、お綺麗で」
「ありがとう!あなたの、名前は?」
「ジャック・マクファンです」
「ジャック!これから、よろしくね!…はぁっ…」
ユージーンは、嬉しそうに息を吐いた。
「どうですか?気持ちいいでしょう?」
「そうだな…これまでの体では、感じられない快感だ…」
「体を小さな女の子になる薬もありますが?」
「ん…また今度…お願いするよ…ではなくて…なぜ、このことを知っていたんだ?」
「ちょっとした、レシートを拾いましてね…」
本当は、女装癖を嗅ぎつけた私が、シュレッダーに細工をしてまで手に入れたものだったが。そのレシートには、奥さんの歳にも見合わないドレスが数着記載されていたのだった。中には特注のものも。
「そ、そうか…まあ、いいんだ。こんな体験、お前抜きじゃ出来なかっただろうからな」
「お喜びいただけたようで、なにより」
「あと…これ、元に戻れるんだろうな」
「ご心配なく。一定時間毒の効果を抑える薬がありますよ」
「完璧だ。…そうだ、何か私にできることがあったら、いつでも私の番号に掛けてくれ」
「ありがとうございます」
[newpage]
ユージーンは、若い女性の姿のまま、ドレスを来て帰っていった。服代はまかなってもらったが、これからも、薬を作る資金を、提供してもらうことにしよう。
…私の計画も、もうそろそろ実行に移す時が来たようだ。しかし、あと一回、実験を行う必要があった。