老いた花の呪い(Grok生成)

第一章 老婆菊の静かな日常とざわつく心

朝の光が、薄いカーテンの隙間から静かに差し込んでいた。82センチの小さな体が布団の中で丸くなっている。菊はゆっくりとまぶたを開けた。目が覚めるたびに、隣の布団がふかふかと空いていることに、胸の奥が少し沈む。夫がこの家を去ってから、もう十年近くになる。年月は確実に彼女の体を縮め、顔に深いしわを刻み、記憶の端を少しずつぼやけさせていった。

「また、朝か……」

小さな声が、乾いた喉から漏れた。菊は布団から這い出すようにして起き上がった。足が床に着く瞬間、いつもより少し体が重く感じる。歳を取ると、骨が朝から軋むような気がした。立ち上がるのに、ベッドの枠に両手をついて、ゆっくりと体重を移動させる。82センチという身長では、床から立ち上がるだけでも一苦労だった。孫のハルトが買ってくれた小さな踏み台が、枕元に置いてある。それを足元に引き寄せ、ようやく安定した姿勢を取った。

鏡台の前に立つのも、毎日同じ動作だった。小さな踏み台をもう一つ持ってきて、その上に乗る。鏡に映る自分の顔を、菊は無表情に見つめた。白い髪は薄くなり、頭皮が透けて見える。額と目尻のしわは深く、頰はこけて、首の皮膚はたるんでいた。88歳という歳月は、容赦なく彼女を「老婆」に仕立て上げていた。夫が生きていた頃の自分を思い浮かべようとしても、若い頃の記憶はもう、はっきりとは蘇らなかった。ただ、胸の奥に残る温かい感覚だけが、時折、ふっと浮かんでくる。

「今日は……何曜日だったかしら」

菊は小さく首を傾げた。カレンダーを見ようとして、踏み台から降り、部屋の隅にある壁掛けのカレンダーに近づく。背伸びをしても、手が届かない。孫のハルトが「婆ちゃん、届かないときは呼んでくれよ」と言ってくれたのに、今日は一人で何とかしようとした。踏み台をもう一つ重ねて、無理に手を伸ばす。指先がカレンダーの端に触れた瞬間、体が少しふらついた。

「危ない……」

小さな体が傾きかけたところで、菊は慌てて踏み台から降りた。息が少し上がっている。こんな小さなことで息が切れる。夫がいた頃は、毎日を忙しく動き回っていたのに、今は一日が長く感じられる。家事をするにも、すべてが自分の体に合わない。流し台は高すぎて、洗い物をするときは踏み台が必要。冷蔵庫の上の段はほとんど使えない。洗濯物を干すのも、竿が頭より高く、孫に手伝ってもらわなければならなかった。

それでも、菊は毎日を丁寧にこなしていた。夫が残してくれたこの家を、汚したくなかった。息子夫婦が早くに亡くなり、孫のハルトだけが残った今、この家はハルトと二人で守っていくものだった。

台所に移動する。ガスコンロの前で、味噌汁の準備をする。小さな鍋に水を入れ、火をつける。味噌を溶くのも、指が少し震える。歳を取ると、細かい作業が難しくなった。味噌汁が沸騰するのを待ちながら、菊は窓の外を見た。小さな庭に、季節の花が少し咲いている。ハルトが時々水やりを手伝ってくれるが、今日はまだ起きていないようだ。

「ハルトは……大学、だったかしら」

菊は小さく呟いた。孫のハルトは22歳。地元の大学に通いながら、アルバイトもしている。忙しいはずなのに、よく菊の面倒を見てくれた。朝、大学に行く前に「おばあちゃん、今日も一人で大丈夫?」と声をかけてくれる。その声が、菊の心を少しだけ温かくした。

味噌汁が出来上がる。ご飯は炊飯器で昨日炊いたものを温め直した。朝食はいつも同じ。ご飯に味噌汁、ぬか漬けを少し。テーブルは低めのものを使っている。ハルトが「婆ちゃんが座りやすいように」と選んでくれたものだ。菊は小さな椅子に腰を下ろし、箸を取った。

一口食べると、味が薄く感じる。歳を取ると、味覚も鈍くなる。夫が生きていた頃は、もっと濃い味付けを好んでいたのに。今は、薄味でも十分だった。ただ、食べるたびに、夫が隣に座っていた頃の記憶が、ぼんやりと蘇る。夫の大きな手が、菊の小さな肩に触れていたこと。朝、夫が「今日も元気でな」と笑っていたこと。

「もう、いい加減に忘れなさいよ……」

菊は自分に言い聞かせるように小さく呟いた。夫の死を悼む気持ちは、もう何年もかけて少しずつ薄れてきた。でも、完全に消えることはない。ただ、毎日を生きるために、忘れるふりをしているだけだった。

食事が終わると、食器を洗う。流し台の前で踏み台に乗り、背伸びをして洗剤を手に取る。指先が少し冷たい。洗い終わった食器を、目の高さの棚にしまうのも一苦労だった。小さな体では、すべての動作に時間がかかる。昔なら、朝の家事は一時間もかからなかったのに、今は二時間近くかかってしまう。

洗い物を終えると、菊はリビングの掃除を始めた。ほうきを持って、床を掃く。小さな体でほうきを扱うと、背中が少し痛くなる。埃を掃き集めるのも、腰を曲げなければならない。ハルトが「婆ちゃん、そんな無理しなくていいよ」と言ってくれるのに、菊は「動かないと、体が固くなってしまうから」と答える。動くことが、彼女にとっての小さな誇りだった。

掃除の途中、菊はふと立ち止まった。壁にかけられた古い写真が目に入った。夫と若い頃の自分。菊は当時、22歳くらいだった。写真の中の自分は、笑顔が明るく、髪も黒くて艶やかだった。夫の隣で、幸せそうに寄り添っている。菊は小さな体を伸ばして、写真に触れた。指先がガラスの冷たさを感じる。

「若い頃の私……」

呟いた声が、部屋に小さく響いた。写真の中の自分は、もう遠い過去の人だった。今の菊は、その頃の自分をほとんど思い出せない。ただ、夫の温かさだけが、胸の奥に残っている。

写真から目を離し、菊は再び掃除を続けた。埃を掃き、床を拭く。体が少し疲れてきた頃、玄関のドアが開く音がした。

「おばあちゃん、ただいま」

ハルトの声だった。菊は掃除道具を置いて、リビングに戻った。小さな足で急ぐと、少し息が上がる。ハルトは靴を脱ぎながら、菊を見てにこっと笑った。

「おはよう、婆ちゃん。今日も元気?」

「うん、元気だよ。ハルトこそ、大学は大丈夫か?」

菊は優しく微笑んだ。ハルトは22歳の青年で、身長は170センチ近くある。菊から見ると、ずっと大きな存在だった。ハルトが菊の頭を軽く撫でるように触れると、菊は少し照れくさそうに体を縮めた。

「大丈夫だよ。今日は午後からゼミがあるんだけど、友達のノゾムが遊びに来るって言ってた。婆ちゃん、邪魔じゃないかな?」

「ノゾム……さん、だったね」

菊は小さく頷いた。ハルトの友達、ノゾム。23歳。時々ハルトと一緒に家に来て、菊にも優しく話しかけてくれる青年だった。菊はノゾムのことを「ハルトの友達」としてしか認識していなかったはずなのに、なぜかその名前を聞くと、胸の奥が少しざわつくのを感じた。

「邪魔じゃないよ。いつものように、お茶でも淹れてあげるから」

菊はそう言いながら、台所に向かった。自分の声が、少しだけ高く聞こえた気がした。いや、そんなはずはない。歳を取った声は、いつも掠れている。菊は自分を戒めるように、ゆっくりと歩いた。

台所で、急須にお茶を用意する。緑茶の葉を少し多めに摘む。ノゾムが来る日は、つい丁寧に淹れてしまう自分がいた。ハルトは「婆ちゃん、ノゾムに気を使わなくていいよ」と言ってくれるが、菊は「友達が来るんだから、ちゃんとしなきゃ」と返す。

お茶を淹れていると、ハルトがリビングで本を広げている声が聞こえた。菊は急須を持ってリビングに戻る。低いテーブルに急須と湯飲み茶碗を置く。自分の手が少し震えているような気がした。歳のせいだろう、と菊は思う。

「婆ちゃん、ありがとう。ノゾム、もうすぐ来ると思う」

ハルトがそう言ったとき、玄関のチャイムが鳴った。菊の胸が、一瞬、大きく鳴った。なぜだろう。ノゾムが来るのは、今日が初めてではない。ハルトの友達として、何度か会っているはずなのに、今日は胸のざわつきがいつもより強い。

菊は小さな体で玄関に向かった。ドアを開けると、ノゾムが立っていた。23歳の青年は、175センチの長身で、菊から見上げると本当に大きかった。優しい目元と、穏やかな笑顔。菊は思わず、息を呑んだ。

「おばあちゃん、お邪魔します。ハルト、いる?」

ノゾムの声が、優しく菊に降りかかった。菊は小さく頷き、ドアを大きく開けた。

「はい、はい。上がってください。ハルトはリビングにいます」

菊はそう言いながら、ノゾムが靴を脱ぐのを見ていた。ノゾムの大きな手が、靴を丁寧に揃える。菊は自分の小さな手を見下ろした。しわだらけで、指が曲がり始めている。ノゾムの若々しい手と、自分の手を比べて、菊は少し寂しくなった。

ノゾムが上がってくると、菊は急いで台所に戻り、湯飲み茶碗をもう一つ用意した。ハルトとノゾムがリビングで話している声が聞こえる。菊は急須を持ってリビングに入った。

「お茶、淹れました。どうぞ」

菊はテーブルに急須を置き、ノゾムに湯飲み茶碗を差し出した。ノゾムは菊を見て、優しく微笑んだ。

「ありがとうございます、おばあちゃん。いつも気を使ってくれて」

その言葉に、菊の胸がまたざわついた。ノゾムは菊を「おばあちゃん」と呼ぶ。普通の敬語で接してくれる。菊はそれが嬉しいような、寂しいような、複雑な気持ちになった。自分はもう、若い女性として見られる年齢ではない。それなのに、ノゾムの優しい視線が、なぜか菊の心を揺らす。

菊は小さな椅子に座り、ハルトとノゾムの会話を聞いていた。大学のこと、アルバイトのこと、将来の話。ノゾムは時折、菊にも話しかけてくれた。

「おばあちゃんは、どんな若い頃だったんですか?」

ノゾムがふと聞いた。菊は少し驚いて、ノゾムを見上げた。ノゾムの目が優しい。菊は自分の若い頃の写真を思い浮かべた。22歳の自分。夫と並んで笑っていた頃。

「若い頃、ですか……もう、遠い昔ですよ」

菊は小さく笑った。自分の声が、掠れている。ノゾムは「そんなことないですよ、おばあちゃんは今でも綺麗ですよ」と言ってくれた。菊は慌てて首を振った。

「もう、年寄りですよ。こんな体で……」

菊は自分の小さな体を、ちょっとだけ見せた。ノゾムは優しく微笑んだまま、「おばあちゃんの体は、小さいけど、温かい気持ちが詰まってると思います」と言った。菊の胸が、熱くなった。なぜだろう。こんな歳で、こんな言葉に動揺するなんて。菊は自分を恥じた。

「ありがとうございます。でも、私はもう、昔の自分を忘れかけてるんですよ」

菊はそう言って、話題をそらした。ハルトが「婆ちゃん、昔の話、聞かせてよ」と言うと、菊は昔のことを少しだけ話した。夫との出会い、結婚した頃の話。話しているうちに、ノゾムの視線が優しく自分を見つめていることに気づいた。菊は視線を逸らした。自分の顔が、少し熱い気がした。

会話は続いた。ハルトとノゾムが大学のことや将来の夢を話すのを、菊は静かに聞いていた。ノゾムの声が、菊の耳に心地よかった。なぜか、夫の声を少し思い出すような感覚。いや、違う。夫の声とは違う。若々しくて、優しくて、未来を語る声。菊は自分の気持ちを抑えようとした。

「こんな歳で、変なことを考えて……」

菊は小さく呟いた。誰にも聞こえないように。ハルトとノゾムの会話に紛れて、自分の胸のざわつきを隠した。ノゾムが時折、菊に「おばあちゃんも、もっと外に出た方がいいですよ」と勧めてくれる。菊は「もう、歳だから」と笑って答える。でも、心の奥では、ノゾムと一緒に外を歩いてみたいという、馬鹿げた願いが浮かんでいた。

やがて、ハルトが「ノゾム、ゼミの時間だから行こう」と立ち上がった。ノゾムも菊にお辞儀をした。

「おばあちゃん、今日はありがとうございました。また来ますね」

菊は小さく頷いた。「また来てください」と言いながら、玄関まで見送った。ノゾムの大きな背中が、玄関を出ていく。菊はドアを閉めたあと、しばらくその場に立っていた。胸のざわつきが、まだ収まらない。

リビングに戻ると、ハルトが「婆ちゃん、ノゾムのこと、どう思う?」と聞いた。菊は慌てて「いい青年だね」と答えた。ハルトは「ノゾム、婆ちゃんのことを気にかけてくれてるみたいだよ」と言った。菊は「そんなこと……」と首を振った。でも、心の奥では、ノゾムが菊のことを少しでも気にかけてくれていると思うと、嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになった。

ハルトが大学に出かけたあと、菊は一人になった。家の中が、急に静かになった。菊は窓辺に座り、庭を見た。花が少し揺れている。風が吹いている。菊は自分の小さな手を、膝の上に置いた。しわだらけの手。ノゾムの手と比べて、なんて違うのだろう。

「もう、いい加減に……」

菊は自分に言い聞かせた。88歳の老婆が、23歳の青年に心を動かされるなんて、馬鹿げている。夫を亡くして、ただ寂しいだけだ。ノゾムはハルトの友達で、ただ優しいだけだ。菊はそう思い込もうとした。でも、胸のざわつきは、なかなか消えなかった。

菊は立ち上がり、台所に向かった。もう一度、食器を洗う。流し台の前で踏み台に乗り、背伸びをして蛇口をひねる。水が少し冷たい。菊は食器を洗いながら、ノゾムの笑顔を思い浮かべていた。すぐに「いけない」と自分を叱った。

洗い物を終えると、菊は庭に出た。小さな体で、植物に水をやる。ジョウロが重くて、両手で抱えるようにして運ぶ。花に水をかけながら、菊は自分の人生を振り返った。夫と過ごした日々。息子を失った悲しみ。孫のハルトを育てる喜び。そして今、ノゾムという青年が、なぜか菊の心を揺らしている。

「もう、年寄りなんだから……」

菊は小さく呟いた。花に水をかけながら、目が少し潤んだ。歳を取ると、涙が出やすくなった。菊は袖で目を拭いた。ノゾムへの想いは、絶対に口に出せない。ハルトに知られたら、どんな顔をされるか。自分自身が、恥ずかしい。

水やりを終えると、菊はベンチに座った。小さな体が、ベンチの端に収まっている。風が吹いて、菊の白い髪を少し揺らした。菊は目を閉じた。ノゾムの優しい声が、耳に残っている。菊はそれを追い払おうとした。でも、追い払えない。

「変だわ、私……」

菊は小さく笑った。88歳の老婆が、恋をするなんて。ありえない。夫を亡くして、もう十分に生きてきた。ノゾムのような青年と、関わるべきではない。菊はそう自分に言い聞かせた。

でも、心の奥のざわつきは、消えなかった。菊はベンチに座ったまま、しばらく風に身を任せた。体が少し、暖かく感じる。気のせいだろう。歳のせいだろう。菊はそう思った。

やがて、菊は立ち上がった。小さな体で、家の中に戻る。リビングのテーブルに、ノゾムが使った湯飲み茶碗が残っていた。菊はそれを手に取った。まだ少し温かい。菊はそれを洗いながら、ノゾムの笑顔をもう一度思い浮かべた。

「もう、よしなさい」

菊は自分に厳しく言った。茶碗を棚にしまう。自分の手が、少し震えていた。菊はそれを無視して、次の家事に取りかかった。今日も、変わらない日常が続く。ノゾムが来る日は、時々ある。でも、菊は自分の気持ちを、絶対に表に出さない。

菊は小さな体で、部屋を掃除し続けた。埃を掃き、床を拭く。体が疲れてきた頃、菊は鏡の前に立った。自分のしわだらけの顔を見つめる。88歳の老婆。ノゾムのような青年が、なぜ自分に優しくしてくれるのか。菊はわからなかった。ただ、優しさが、胸をざわつかせるだけだった。

菊は鏡から目を離し、窓の外を見た。庭の花が、風に揺れている。菊は小さく息を吐いた。今日も、何事もなく過ぎていく。ノゾムへの想いは、心の奥にしまっておく。88歳の老婆が、恋をするなんて、夢物語だ。

でも、菊の胸のざわつきは、今日も消えずに残っていた。菊はそれを押し殺しながら、夕方の準備を始めた。ハルトが帰ってくる時間まで、菊は一人で家を守る。静かな日常の中で、菊は自分の心のざわつきと、静かに向き合っていた。


第二章 最初の若返り

夕暮れの家は、静まり返っていた。ハルトが大学に出てから、もう二時間近くが過ぎていた。ノゾムも一緒に帰っていった。菊はリビングの低い椅子に座ったまま、動く気力も失っていた。小さな体が、椅子に沈み込むように見える。82センチの身長では、椅子に座っていても足が床に届かない。足をぶらぶらさせながら、菊は今日のことを思い返していた。

ノゾムが来たときの優しい笑顔。ハルトと話しているときの穏やかな声。菊に「おばあちゃん」と呼びかけながらも、どこか敬意を込めた目線。菊はそれを、ただの若い人の優しさだと自分に言い聞かせようとした。でも、胸の奥がざわついて、なかなか収まらない。夫を亡くしてから何年も、こんな風に誰かの優しさに心を揺らされたことはなかった。ノゾムはハルトの友達で、23歳の青年。菊は88歳の老婆だ。それなのに、ノゾムの声が耳に残り、笑顔が目に焼きついて離れない。

菊は小さな手で、自分の膝を撫でた。しわだらけの皮膚、曲がり始めた指。ノゾムの手は大きくて、若々しくて、力強かった。あの大きな手が、もし自分の肩に触れたら……そんな考えが浮かんだ瞬間、菊は慌てて首を振った。

「馬鹿な……こんな歳で」

声が掠れて、部屋に小さく響いた。菊は立ち上がろうとした。小さな踏み台を足元に引き寄せ、ようやく床に足を着ける。台所に向かうつもりだったが、足が重い。今日は何もしたくない。ただ、ノゾムのことを考えて、ぼんやりとしていたい。いや、考えてはいけない。考えてしまうと、寂しさが募る。

菊は再び椅子に座った。夕日の光が窓から差し込み、部屋をオレンジ色に染めている。庭の花が風に揺れているのが見える。夫が生きていた頃、この時間は一緒に庭を眺めていた。夫の大きな体が隣にいて、菊の小さな肩を抱いていた。夫の死後、その温かさはもう二度と戻ってこない。ハルトがいる今も、根本の寂しさは消えなかった。そして今日、ノゾムが来たことで、その寂しさが新しい形で疼き始めた。

菊は古い写真立てを手に取った。夫と若い頃の自分。22歳の菊は笑顔が明るく、髪も黒くて艶やかだった。夫の隣で寄り添う姿が、幸せそうに見える。菊は指で自分の今の顔を触れた。しわ、たるみ、薄くなった白髪。写真の中の自分とは別人だ。ノゾムのような青年が、もしこの写真の中の自分を見たら……どう思うだろう。菊はそんなことを考えてしまい、すぐに「いけない」と自分を叱った。

でも、寂寥感は抑えきれなかった。家は静かで、風の音だけが聞こえる。ハルトもノゾムも、もうここにはいない。菊は一人で、88年の人生の重さを抱えていた。夫を失った悲しみ、息子を失った痛み、ただ生き延びてきた日々。そして今、ノゾムの優しさが、まるで新しい光のように、菊の心の暗がりを照らしている気がした。でもその光は、菊には届かない。届かないからこそ、余計に寂しい。

菊は写真を置いた。胸の奥が熱い。ノゾムの笑顔を思い出すたびに、胸がきゅっと締めつけられる。自分はもう、恋をする歳ではない。孫の友達に心を動かされるなんて、恥ずかしい。ハルトに知られたら、どんな顔をされるか。菊はそう思いながらも、ノゾムの声をもう一度思い出してしまった。

「優しい青年だ……」

小さく呟いたその瞬間、菊の胸の奥で、心臓が大きく脈を打った。

ドクン。

激しい鼓動が、全身を震わせた。菊は息を呑んだ。心臓の音が、耳にまで響く。普段の弱々しい鼓動とは違う。力強く、熱い血が体中に駆け巡るような感覚。菊は胸に手を当てた。心臓が、まるで何かを訴えるように、大きく跳ねている。

「なに……これ……」

声が震えた。体が熱い。腕に、脚に、胸に、じんわりとした熱が広がっていく。菊は立ち上がろうとしたが、足がふらついた。小さな体が、椅子から滑り落ちそうになる。菊は慌てて踏み台に手をついた。心臓の鼓動が止まらない。ドクン、ドクン、と激しく鳴り続けている。

そして、左腕に、強い疼きが走った。

菊は思わず右の手で左腕を押さえた。短い、しわだらけの左腕が、熱い。まるで何かが内側から押し上げてくるような感覚。菊は鏡台の前まで、ふらふらしながら移動した。踏み台を二つ重ねて、ようやく鏡が見える高さになる。鏡に映る自分の顔は、いつもの老婆の顔だった。でも、左腕が熱い。菊は左腕を上げてみた。短い腕を上に伸ばすと、突然、激痛が走った。

「っ……!」

菊は声を上げた。左腕が、引き伸ばされる。骨が軋む音が、部屋に響いた。ギリギリ……と、乾いた音。肉が引き伸ばされる湿った音も混じる。左腕が、みるみる長くなっていく。しわだらけの皮膚が、引き延ばされて滑らかになっていく。骨が伸び、筋肉が付き、若い女性の細くしなやかな腕に変わっていく。痛みが激しい。菊は歯を食いしばった。左腕が、元の二倍の長さになった瞬間、痛みが少し和らいだ。でも、右腕が今度は熱くなった。

「右も……やめて……」

菊は右腕を上げた。同じように、激痛とともに右腕が引き伸ばされる。骨の軋む音が連続する。ギリギリ、ギリギリ……と、部屋中に響く。肉が動く湿った音。皮膚が伸びる音。右腕も、二倍の長さになった。菊は両腕を下ろしてみた。短かった腕が、今は普通の若い女性の長さになっている。体とのバランスが、完全に崩れていた。短い胴体に、長すぎる腕。菊は鏡に映る自分の姿を見て、息を呑んだ。

「これは……私の腕……?」

声が震えている。痛みはまだ残っている。でも、腕の感覚が違う。力が入る。指が細くて長い。菊は自分の新しい左腕を、右手で触ってみた。滑らかな皮膚。温かい。歳を取って冷たくなっていた自分の腕とは、別物だった。

次に、左脚が熱くなった。菊はバランスを崩しながら、左脚を伸ばそうとした。激痛が脚全体を貫いた。骨が伸びる。ギリギリ……という音が、脚の骨から響く。肉が引き伸ばされ、太ももからふくらはぎまでが長くなっていく。左脚が、元の倍以上の長さになった。菊は右脚も同じように熱くなるのを感じた。右脚も、激痛とともに伸びていく。骨の軋む音と肉の動く音が、部屋を埋め尽くす。

「痛い……痛い……!」

菊は声を上げて、床に崩れ落ちた。長くなった脚で、バランスが取れない。胴体はまだ小さいままなのに、脚だけが長すぎる。菊は這うようにして、鏡の前に戻ろうとした。踏み台を蹴飛ばしてしまった。新しい長い脚で、床を蹴る。痛みがまだ続いている。脚の骨が伸びた後の、余韻のような疼き。

菊はようやく鏡の前に這い着いた。長くなった脚で、踏み台なしでも鏡が見える高さになっていた。背丈が、これから伸びる予感がした。菊は息を荒げながら、鏡を見つめた。顔はまだ老婆のまま。白髪もまだ。腕と脚だけが、若い女性のものになっている。体とのアンバランスが、グロテスクに見えた。

「何が……起こってるの……」

菊は呟いた。声が掠れている。心臓の鼓動はまだ激しい。胸の奥が熱い。ノゾムのことを思い、寂しさが募ったあの瞬間から、体がおかしくなった。菊はノゾムの優しい笑顔を、もう一度思い浮かべてしまった。すると、背骨に激痛が走った。

「っあ……!」

背丈が、伸び始めた。骨が一つずつ、引き伸ばされるような感覚。脊椎が軋む音が、背中から響く。菊の小さな体が、縦に引き延ばされていく。背丈が、90センチ、100センチ、120センチ……と増えていく。痛みが激しい。菊は床に這いつくばったまま、体を震わせた。肉が動く音。骨が伸びる音。部屋中に、菊の苦痛の音が満ちていた。

背丈が150センチ近くまで伸びたとき、菊の声が変化し始めた。喉の奥が熱い。菊は何か言おうとしたが、声が途中で変わった。

「痛い……うっ……あ……」

老いた、掠れたうめき声が、徐々に妖艶な喘ぎ声に変わっていく。声帯が若返り、響きが豊かになる。菊は自分の声の変化に驚いて、口を押さえた。でも、声はもう止まらない。背丈が伸びる痛みと混じって、喉から妖艶な声が漏れ出す。

顔が熱くなった。菊は鏡を必死に見つめた。額のしわが、ゆっくりと消えていく。目尻のしわも浅くなる。頰のたるみが、引き上がっていく。骨が動く小さな音が、顔の中から聞こえる。皮膚が引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まっていく。黒い色が、徐々に広がっていく。髪が伸びる。白かった髪が、黒く艶やかに長くなっていく。菊は自分の髪を、手で触れた。黒くて、柔らかい。長い髪が、肩まで届くようになった。

「これは……私……?」

声が、完全に若い女性のものになっていた。妖艶で、息が混じったような声。菊は自分の顔を鏡で確認した。しわのない、滑らかな若い女性の顔。目が大きく、唇がふっくらしている。88歳の老婆の顔は、どこにもない。22歳くらいの、妖艶な顔がそこにあった。

最後に、肉が付き始めた。菊の胴体が、熱くなった。ムチムチと、肉が体内から溢れ出すような感覚。菊は自分の腹を押さえた。肉が動く湿った音がする。体全体が、ふくらんでいく。胸の部分が、特に熱い。菊は息を呑んだ。

左の胸が、突然、爆発的に膨らんだ。痛みと快感が混じったような激しい感覚。乳房が、急激に大きくなっていく。皮膚が引き伸ばされる音。肉が充填される音。菊は自分の左胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、大きく、重く、ふくらんでいく。服が、胸の部分で裂け始めた。古い、ゆるい服が、急激に大きくなる胸に耐えられなくなっている。

「やめて……こんな……」

菊の声が、喘ぎに変わっていた。左の胸が、爆乳のように大きくなったあと、今度は右の胸が熱くなった。右の胸が、左を追い越すように、爆発的に膨らんでいく。左の胸よりさらに大きくなる。菊は体をよじった。痛みと、未知の感覚が体を駆け巡る。右の胸が、左の胸を追い越したあと、今度は左の胸が、再び膨らみ始めた。右に追いつき、合わせるように、両方の胸が、巨大でムチムチとした爆乳になっていく。

服が、完全に裂けた。胸の部分が大きく開き、谷間が強調される。白い肌が、露わになった。菊は自分の新しい胸を見て、息を呑んだ。大きくて、重くて、形の良い若い女性の胸。触れると、柔らかくて、熱い。菊は恥ずかしさで顔を赤らめた。でも、体はもう止まらない。

尻と太ももも、同じように膨らんでいった。左の尻がふくらみ、右の尻が追い越し、交互に肉が付いていく。太ももも、ムチムチと厚みを増していく。脚の長さと相まって、グラマラスな下半身になっていく。菊の体は、今や170センチ近くの、妖艶でムチムチとした若い女性の体になっていた。

変身が終わった瞬間、菊は床に崩れ落ちた。息が荒い。体中が汗で濡れている。新しい長い腕で、体を支える。鏡に映る自分の姿を見て、菊は言葉を失った。黒い長い髪、滑らかな若い顔、巨大な胸、ムチムチとした腰と脚。服は裂けて、ほとんどボロ布のようになっている。谷間が深く、胸の重さが、菊の新しい体にのしかかっている。

「これは……わし……?」

菊は小さく呟いた。自分の声が、妖艶で、息が混じっている。体が、若さで満ちている。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいた。菊は自分の新しい腕を、触ってみた。滑らかで、力がある。胸を、そっと触れた。柔らかくて、重い。恥ずかしさが込み上げてきた。でも、同時に、ノゾムのことを思い浮かべてしまった。この体で、ノゾムに会ったら……どうなるだろう。菊は慌ててその考えを追い払った。

菊は立ち上がった。新しい長い脚で、安定して立っていられる。鏡の前に立ち、自分の体をもう一度確認した。88歳の老婆だった自分が、22歳くらいの、妖艶な女性になっている。名前を、菊は小さく呟いた。

「クリス……」

変身後の自分に、そう名付ける。なぜか、自然とその名前が口から出た。菊はクリスとして、鏡の中の自分を見つめた。体はまだ少し疼いている。骨が伸びた余韻、肉が動いた余韻。服はもう着られない。菊は裂けた服を、そっと脱ぎ捨てた。裸の体が、鏡に映る。巨大な胸、細い腰、ムチムチとした尻と脚。菊は自分の体を、両手で触れた。新しい感覚が、指先から伝わってくる。

寂寥感は、まだ残っている。でも、その寂しさの中に、新しい何かが混じっていた。ノゾムの優しさが、菊の心に残っている。クリスになった今、その想いは、もっと強く、熱く感じられた。菊は鏡から目を離し、部屋を見回した。長くなった腕で、裂けた服を拾い上げる。新しい体で、動くのが、少し不思議だった。

クリスは、ゆっくりと息を整えた。変身の痛みと音が、まだ耳に残っている。骨の軋む音、肉の動く音。激しい痛み。すべてが、ノゾムのことを思ったあの瞬間から始まった。クリスは、自分の新しい体を抱きしめるように腕を回した。恥ずかしさと、奇妙な喜びが、混じり合っていた。

この体で、明日をどう生きるか。クリスはまだわからなかった。でも、ノゾムの笑顔が、心の奥で、優しく光っていた。


第三章 出会いと、消えゆく寂寥

クリスは、長い黒髪を指で梳きながら、鏡の前に立っていた。変身が終わってから、まだ一時間も経っていない。部屋の中は、骨の軋む音と肉の動く音がまだ響いているような気がした。170センチの長身。左から右へと順に伸びた腕は、滑らかで力強い。脚も長く、ムチムチとした太ももと尻。胸は重く、服の裂け目から白い谷間が覗いている。クリスは自分の新しい体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。88歳の老婆だった自分が、22歳の妖艶な女性になっている。

服はもう着られない。古い服は胸の部分で完全に裂け、ほとんどボロ布になっていた。クリスはハルトの部屋から、大きめのTシャツとジャージのパンツを借りて着た。Tシャツは胸を締めつけ、谷間が強調される。パンツも太ももに張り付く。クリスは鏡に映る自分を見て、恥ずかしさで顔を赤らめた。でも、同時に、体の活力が心地よかった。痛みは残っているが、激しい変身のあと、奇妙な身軽さが体を包んでいる。

「外に出てみたい……」

クリスは小さく呟いた。ノゾムのことを思うと、胸がざわつく。今日、ノゾムが家に来てくれた。優しい笑顔。優しい声。菊として接していたときの温かさが、まだ心に残っている。寂寥感は少し薄れていた。でも、完全に消えたわけではない。この新しい体で、外を歩いてみたい。ノゾムに会いたいわけではない。ただ、息が詰まる家を出て、風に当たってみたいだけだ。クリスはそう自分に言い聞かせながら、玄関に向かった。

夜の町は、静かだった。街灯がオレンジ色の光を落としている。クリスは長い脚で、ゆっくりと歩いた。新しい体で歩くのは、少し不思議だった。地面が近く感じる。風が、長い黒髪を揺らす。Tシャツの胸の部分が、歩くたびに揺れる。クリスは時々、自分の胸に視線を落とした。重い。大きい。ノゾムがもしこの姿を見たら……どう思うだろう。クリスは慌ててその考えを追い払った。ノゾムはハルトの友達だ。自分はクリスという、初対面の女性だ。それ以上でも以下でもない。

でも、心の奥では、ノゾムの優しさが、寂寥感を少しずつ溶かしている気がした。菊として生きてきた日々。夫を失い、息子を失い、ただ小さく縮んで生きてきた日々。ノゾムが「また来ますね」と言ってくれたとき、菊の胸は熱くなった。この新しい体になっても、その熱は消えていない。クリスは歩きながら、ノゾムの笑顔を思い浮かべていた。寂寥感が、徐々に薄れていく。心が、少しずつ温かくなる。

そんなときだった。

クリスが角を曲がった瞬間、向かいから歩いてくる人影と、肩がぶつかった。バランスを崩したクリスは、転んでしまった。長い脚が絡まり、地面に倒れ込む。Tシャツがめくれ上がり、胸の谷間が大きく露わになった。クリスは慌てて服を直そうとしたが、間に合わなかった。

「大丈夫ですか!?」

低くて優しい声が、頭上から降りかかった。クリスは顔を上げた。そこに立っていたのは、ノゾムだった。175センチの長身。優しい目元。今日、家で見たのと同じ笑顔。クリスは息を呑んだ。ノゾムは、クリスを初めて見るような目で、こちらを見下ろしていた。

「す、すみません……転んでしまって……」

クリスは小さな声で言った。自分の声が、妖艶で息が混じっている。ノゾムは慌てて手を差し伸べてきた。大きな手が、クリスの腕を優しく掴む。クリスはノゾムの手に触れられて、胸がきゅっと鳴った。ノゾムはクリスを起こし上げた。

「怪我はありませんか? 急に曲がってきて、びっくりしました」

ノゾムの声が優しい。クリスは立ち上がって、服を直した。Tシャツの胸の部分が、大きく開いている。谷間が強調されている。ノゾムの視線が、一瞬、クリスの胸に落ちた。すぐに逸らされた。でも、クリスは気づいた。ノゾムの目が、時々、自分の胸や太ももに吸い寄せられる。嫌な気持ちはしない。むしろ、複雑な気持ちが込み上げてきた。恥ずかしい。嬉しいような。罪悪感のような。菊としてノゾムに接していたときの想いが、この体になって、さらに熱を帯びている。

「大丈夫です……ありがとうございます」

クリスは小さくお辞儀をした。ノゾムは「本当に大丈夫ですか? 一緒に歩きますよ」と言い、並んで歩き始めた。クリスはノゾムと並んで歩く。新しい長い脚で、ノゾムと同じ目線の高さになった。ノゾムはクリスに、時々視線を向けた。優しい。気遣っている。クリスはノゾムの横顔を見て、胸のざわつきが強くなるのを感じた。

「私はノゾムと言います。あなたは……?」

ノゾムが聞いた。クリスは少し戸惑った。ノゾムは自分を「クリス」として知らない。初対面の人として話すしかない。クリスは小さく微笑んだ。

「クリス……です」

「クリスさん、ですか。素敵な名前ですね」

ノゾムの声が、優しく響いた。クリスは心が温かくなるのを感じた。ノゾムはクリスの転んだ原因を気にかけ、ゆっくりと歩いてくれた。二人で夜の町を歩く。ノゾムは大学のことや、ハルトのことを少し話した。クリスは聞き役に回りながら、ノゾムの優しさに心を溶かされていった。寂寥感が、徐々に消えていく。ノゾムが「一人で歩くのは危ないですよ」と気遣ってくれるたびに、クリスの胸が熱くなった。

会話が続く。ノゾムは時々、クリスの顔を見て微笑んだ。その視線が、ふと胸に落ちる。Tシャツの谷間が、街灯の下で白く光っている。ノゾムの目が、一瞬、胸の形を捉える。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。でも、同時に、菊としての罪悪感が疼く。ノゾムはハルトの友達だ。この体は、呪いで作られたものだ。クリスは視線を逸らした。

「ノゾムさん……優しいんですね」

クリスは小さく言った。ノゾムは「そんなことないですよ」と笑った。でも、その笑顔が、クリスの心をさらに温めた。寂寥感が、完全に消え去っていく。夫を失った悲しみ。歳を取って縮んでしまった日々。すべてが、ノゾムの優しい声で溶けていく。クリスはノゾムを見て、初めて「この人と話せてよかった」と思った。

その瞬間だった。

左胸が、一気にしぼんだ。

激しい疼きとともに、左の胸が急激に萎んでいく。ムチムチと膨らんでいた肉が、しぼんでいく。皮膚がたるみ、胸の形が崩れていく。クリスは息を呑んだ。左胸が、元の小さなサイズに戻っていく。服の中で、胸の重さが急に軽くなった。クリスは慌てて自分の胸を押さえた。でも、間に合わない。左胸が、完全にしぼんでしまった。

「っ……!」

クリスは声を上げそうになった。ノゾムは気づいていない。まだ話している。クリスは「元に戻って……」と、心の中で強く念じた。すると、左胸が、一気に元のサイズまで膨らみ返した。爆発的に肉が充填される感覚。皮膚が引き伸ばされる音が、服の下で響いた。左胸が、元の巨大でムチムチとした爆乳に戻った。クリスは息を荒げた。ノゾムはまだ気づいていない。

でも、今度は右胸が熱くなった。右胸が、ゆっくりと萎み始めている。クリスは慌てて「すみません、ちょっと……」と言って、その場を離れようとした。ノゾムが「大丈夫ですか?」と声をかける。クリスは「トイレに行きたいんです」と言い、身障者トイレの方に急いで歩き始めた。右胸が、萎んでいく。バランスが崩れそうになる。クリスは走り出した。

走っている最中、右胸が爆発的に元に戻った。重い肉が、一気に胸に戻ってくる。クリスはバランスを崩しかけた。長い脚がふらつき、転びそうになる。右胸の重さで、体が傾く。クリスは必死に走り、身障者トイレに駆け込んだ。ドアを閉め、鍵をかける。息が荒い。

トイレの中で、クリスは鏡に映る自分を見た。左胸は元に戻っている。でも、右胸が少し萎んでいる。クリスは「元に戻りたくない……」と、心の中で強く思った。でも、体は逆らった。

左腕が、突然、縮み始めた。長い、滑らかな左腕が、短く、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは左腕を抱きしめた。左腕が、元の短い老婆の腕に戻った。すぐに、左腕が再び伸びた。クリスと菊の状態を行き来する。右腕も同じように、縮んだり伸びたりを繰り返す。

脚も、交互に変化した。左脚が縮み、右脚が伸び、バランスが崩れる。背丈が、170センチから縮み、150センチ、130センチ……と変動する。クリスはトイレの壁に手をついて、体を支えた。背丈が縮むたびに、骨の軋む音が響く。肉が動く音。声が、妖艶な喘ぎ声から老いたうめき声に変わり、また戻る。

顔が、熱くなった。しわが現れたり消えたりする。白髪が混じったり、黒い髪に戻ったりする。クリスは鏡を見て、自分の顔が交互に変化するのを見た。痛みが激しい。体の一部が菊に戻り、またクリスに戻る。胸も、左が萎んだり膨らんだり、右が同じように交互に変化する。クリスは「元に戻りたくない……」と念じながら、体を震わせた。

でも、体は止まらない。腕が縮み、脚が縮み、背丈が縮み、顔が老い、胸が萎む。声が老いる。クリスは壁に寄りかかり、体を支えた。激痛と、骨の軋む音、肉の動く音が、トイレを埋め尽くす。菊とクリスの状態が、何度も行き来する。クリスは「やめて……」と呟いた。でも、体は最後に、一気に老婆の姿に戻った。

背丈が82センチまで縮み、腕と脚が短くなり、胸が完全に萎み、顔にしわが刻まれ、白髪が戻る。服が、大きすぎて体に余る。クリスは、菊に戻っていた。88歳の小さな老婆。トイレの床に、へたり込むように座った。息が荒い。体中が痛い。変身の余韻が、まだ残っている。

菊は鏡に映る自分の顔を見た。老婆の顔。しわだらけ。白髪。ノゾムとの会話で心が温かくなり、寂寥感が消え去ったあの瞬間から、体が元に戻ろうとした。菊は小さく息を吐いた。ノゾムの優しい声が、まだ耳に残っている。菊はトイレに座ったまま、長い時間、動けなかった。


第四章 風呂の中の、静かな鼓動

菊は、身障者トイレから家に帰り着いたとき、もうほとんど体を動かせなかった。変身の余韻が、骨の奥まで残っている。腕も脚も、時々、勝手に縮んだり伸びたりするような感覚がする。家に着くと、ハルトが心配そうに迎えてくれたが、菊は「少し疲れただけ」と笑ってごまかした。ノゾムとの会話で心が温かくなったあの瞬間から、体が元に戻ろうとしたこと。菊はそれを誰にも言えなかった。ただ、ノゾムの優しい声が耳に残り、寂寥感が少しだけ和らいでいるのを感じていた。

その翌日、ノゾムがまた家を訪ねてきた。ハルトが「ノゾムが何か忘れ物をしたみたい」と言い、菊は少し胸の奥がざわついた。ノゾムは玄関で靴を脱ぎながら、菊に優しく声をかけた。

「おばあちゃん、昨日はありがとうございました。クリスさんという方に会ったんですが……」

ノゾムは昨日、クリス(菊が変身した姿)と出会ったことを少し話した。菊は心臓が大きく鳴るのを感じながら、老いた声で「そう、ですか」と答えた。ノゾムは菊の小さな体を気遣いながら、優しく話してくれた。菊はノゾムの笑顔を見て、昨日のクリスとして話したときの温かさを思い出した。でも、今の自分は88歳の小さな老婆だ。ノゾムはただ、孫の友達として優しく接してくれているだけ。菊は自分の気持ちを必死に抑え、茶を淹れて出した。

ノゾムとハルトは、リビングで少し話したあと、「ちょっと出かけてくる」と言い、二人で外に出ていった。菊は玄関で二人を見送りながら、ノゾムの背中を眺めた。大きな背中。優しい声。菊は小さく息を吐いた。家の中が、再び静かになった。

一人になった菊は、風呂を沸かした。体がまだ変身の疲れで重い。温かいお湯に浸かれば、少し楽になるかもしれない。菊は小さな体で脱衣所に入り、服を脱いだ。鏡に映る自分の姿を見て、ため息をついた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。胸はほとんど平らで、しぼんだように小さく、たるんでいる。菊は自分の胸を、そっと触れた。冷たい。重みがない。昨日、クリスとしてノゾムと話したときの、大きな胸の重みと熱さを、ふと思い出した。

「もう……変身することはない、はずだ」

菊は小さく呟いた。昨日の変身は、ノゾムのことを強く思ったせいだったのかもしれない。でも、もう終わった。体は元に戻った。菊はそう思いながら、湯船に浸かった。熱いお湯が、古い体を包み込む。菊は目を閉じ、昨日のことを思い浮かべた。ノゾムと並んで歩いたこと。ノゾムの視線が時々、自分の胸や太ももに落ちたこと。嫌な気持ちはしなかった。むしろ、複雑な温かさが胸に広がった。寂寥感が、少し溶けていく感覚。菊は湯船の中で、ゆっくりと息を吐いた。

自分の老いた胸を見て、菊はもう一度ため息をついた。ほとんど平らな胸。乳首は小さく、しぼんでいる。菊は自分の胸を、指で優しく撫でた。冷たい皮膚。歳を取ると、こういうものなのだと、諦めのような気持ちが浮かんだ。

そのときだった。

左の乳首が、ぴくぴくと動いた。

菊は息を呑んだ。視覚だけ。乳首が、小さく脈動している。まるで、心臓の鼓動に合わせて動いているようだった。菊は目を凝らした。錯覚かと思った。熱いお湯のせいかもしれない。菊はもう一度、左の乳首を見つめた。すると、左乳首が、ゆっくりと大きくなっていく。ギチギチと、肉が付き始めるような感覚。左乳首が、太く、大きく、ぷっくりと膨らんでいく。菊は慌てて右の乳首を見た。右乳首も、同じように、ギチギチと大きくなり始めた。

「なに……これ……」

菊は小さな声で呟いた。両方の乳首が、明らかに大きくなっている。熱いお湯の中で、乳首だけが脈動しながら成長していく。菊は自分の胸を、両手で覆おうとした。手で押さえれば、止まるかもしれないと思った。でも、右手が、突然、長く大きくなっていくのを感じた。

右手が、ゆっくりと伸びていく。指が長くなり、手のひらが大きくなり、腕全体が長くなっていく。メキメキという、骨が伸びる乾いた音が、湯船の中で響いた。菊は右手を目の前に掲げてみた。長い、大きな手。滑らかな皮膚。歳を取って縮んだ自分の手とは、別物だった。菊は困惑しながら、左手も同じように熱くなるのを感じた。左手も、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨の伸びる音。肉の動く音。両手が、若い女性の長く大きな手に変わっていった。

菊は湯船の中で、体を震わせた。両手が長くなったせいで、湯船の縁を掴むのが少し不自然だった。菊は「こんなの……」と呟きながら、次の変化を待った。すると、今度は左脚に激痛が走った。

「っ……!」

左脚が、メキメキと伸び始めた。骨が引き伸ばされる乾いた音が、湯船に響く。肉が長く伸びていく感覚。左脚が、元の倍以上の長さになっていく。菊は湯船の中で、体をよじった。痛みが激しい。左脚が長くなったあと、今度は右脚が同じように熱くなり、メキメキと伸びていく。両脚が長くなり、湯船の中で足が届かなくなった。菊は長い脚を、湯船の外に伸ばした。背骨が、今度は熱くなった。

背骨が、ゆっくりと伸びていく。脊椎が一つずつ、引き伸ばされるような痛み。菊の小さな体が、縦に長くなっていく。背丈が、90センチ、110センチ、130センチ……と増えていく。骨の軋む音が、背中から響く。菊は湯船の中で、背中を反らした。痛みが続く。背丈が150センチ近くまで伸びたとき、左腕が、再び熱くなった。

左腕が、ゆっくりと長く伸びていく。すでに長くなっていた右腕に続き、左腕も同じ長さになっていく。菊は両腕を、湯船の外に伸ばしてみた。両腕が、クリスと同じ長さになっている。でも、皮膚はまだ老いている。ピンと張り詰めた、ガリガリとした瘦せた状態。筋肉がほとんどなく、骨が浮き出ている。菊は自分の腕を見て、息を呑んだ。

「こんなの……いやだ」

菊は小さく呟いた。声が、掠れている。体はクリスと同じ身長になったのに、皮膚と肉がまだ老いている。ガリガリで、張り詰めた状態。菊は湯船の中で、体を抱きしめるように腕を回した。痛みがまだ残っている。骨が伸びた余韻。肉が動いた余韻。

そのとき、急に、皮下脂肪が付き始めた。

ミチミチという、湿った音が、菊の体中から聞こえた。皮下に、脂肪が急速に着いていく。ガリガリだった腕に、柔らかい肉が付き始める。皮膚が、張り詰めていた状態から、ふっくらと若返っていく。菊は自分の腕を触れた。滑らかで、温かい。歳を取って冷たくなっていた皮膚が、若々しくなっていく。ミチミチという音が、胸や腹、脚にも広がっていく。皮下脂肪が、音を立てながら体を埋めていく。皮膚が、若返る。

声が、変化し始めた。喉の奥が熱い。菊は何か言おうとしたが、声が妖艶な響きに変わっていく。掠れていた声が、息が混じったような、甘い声になっていく。菊は自分の声を聞いて、息を呑んだ。

胸と尻が、今度は脈動し始めた。左の胸が、ゆっくりと膨らみ始める。乳首がすでに大きくなっていた胸が、ムチムチと肉を付けていく。右の胸も、同じように脈動しながら大きくなっていく。尻も、太ももも、同じように肉が付き、ふくらんでいく。菊は湯船の中で、体を震わせた。胸と尻が、徐々に大きくなっていく。重みが増していく。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まっていく。黒い色が広がり、髪が長く伸びていく。菊は自分の顔を、湯船の水面に映して見た。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。

最後に、胸と尻が、爆発的に膨らんだ。

左の胸が、一気に大きくなる。肉が急速に充填される感覚。皮膚が引き伸ばされる音。菊は自分の左胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、巨大でムチムチとした爆乳になっていく。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。尻も、太ももも、同じように大きくなる。菊の体は、今や170センチの、妖艶でムチムチとした若い女性の体になっていた。

変身が完了した瞬間、クリスは湯船の中で、息を荒げた。熱いお湯が、新しい体を包み込んでいる。巨大な胸が、水面に浮かんでいる。長い黒髪が、湯船の縁に広がっている。クリスは自分の体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。重い。昨日の変身と同じ体。クリスは小さく呟いた。

「クリス……」

声が、妖艶で甘い。体が、若さで満ちている。痛みは残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいた。クリスは湯船からゆっくりと立ち上がった。長い脚で、脱衣所の鏡の前に立つ。鏡に映る自分の姿を見て、息を呑んだ。黒い長い髪、滑らかな若い顔、巨大な胸、ムチムチとした腰と脚。昨日と同じ、妖艶な体。

クリスは新しい体を、両手で抱きしめた。ノゾムのことを思うと、胸が熱くなる。昨日、ノゾムと話したときの温かさ。寂寥感が消え去ったあの瞬間。クリスは、ノゾムに会いたいという想いが、胸の奥で疼いているのを感じた。

この体で、もう一度、ノゾムに会いたい。クリスはそう思いながら、湯船から上がった。新しい長い腕で、タオルを取る。体を拭きながら、クリスは自分の新しい胸の重みを感じた。ノゾムがこの姿を見たら、どう思うだろう。クリスは恥ずかしさで顔を赤らめながらも、心の奥で、ノゾムへの想いが熱を帯びているのを感じていた。


第五章 映画館の闇と、消えゆく手

クリスは、湯船から上がったあと、長い黒髪をタオルで拭きながら鏡の前に立っていた。新しい体はまだ熱を帯びている。巨大な胸が重く、ムチムチとした腰と脚が、服の布地に張り付く。昨日と同じ、妖艶な姿。クリスは自分の胸をそっと触れた。柔らかくて、熱い。ノゾムのことを思うと、胸の奥がざわつく。昨日、ノゾムと話したときの優しい声と視線が、まだ心に残っている。寂寥感は、ほとんど消えていた。でも、別の恐怖が、静かに胸の底に沈んでいる。

「また……元に戻ってしまうかもしれない」

クリスは小さく呟いた。昨日、トイレで体が菊に戻っていった恐怖が、鮮明に蘇る。骨が縮む痛み。肉が萎む感覚。声が老いること。クリスはそれを二度と味わいたくないと思った。でも、ノゾムに会いたいという想いが、それを上回っていた。クリスはハルトの部屋から大きめの服を選び、着た。Tシャツは胸を強調し、谷間が深く見える。パンツは太ももと尻にぴったりと張り付く。クリスは鏡で自分の曲線を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムの視線を、掴みたいと思った。恥ずかしい気持ちと、でもこの体でノゾムに見てほしいという気持ちが、混じり合っていた。

クリスは家を出た。夜の町を歩く。長い脚で、ゆったりとした歩幅。胸が歩くたびに揺れる。クリスは時々、自分の胸や腰に視線を落とした。昨日と同じ体。でも、ノゾムに会えるかもしれないと思うと、心臓が少し速く鳴る。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムのことを思い浮かべていた。優しい笑顔。優しい声。昨日、クリスとして話したときの温かさ。寂寥感が消え去ったあの瞬間。

そんなとき、クリスは町の中心にある公園のベンチで、ノゾムを見つけた。ノゾムは一人で座り、スマホを眺めていた。クリスは少し緊張しながら、近づいた。

「ノゾムさん……?」

ノゾムは顔を上げ、クリスを見て目を丸くした。

「クリスさん……! また会いましたね。昨日は本当にありがとうございました」

ノゾムの声が優しい。クリスは心が温かくなるのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスは微笑んだ。

「こちらこそ……。少し、散歩していたんです」

二人は一緒に歩き始めた。夜の町を、並んで。クリスは意識的に、胸を張って歩いた。Tシャツの谷間が、街灯の下で白く光る。ノゾムの視線が、時々、クリスの胸や太ももに落ちる。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。昨日と同じ視線。でも、今日はもっと近くにいる。クリスは恐怖を胸の奥に押し込みながら、ノゾムと話した。

「ノゾムさんは、どんな映画が好きですか?」

クリスが聞いた。ノゾムは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑った。

「最近は、ちょっとした恋愛ものとか……心が温かくなるやつが好きです」

ノゾムはクリスに、最近見た映画の話を少しした。クリスは聞きながら、ノゾムの横顔を眺めた。優しい目元。穏やかな声。クリスは自分の想いが、ノゾムに向かっているのを感じた。菊としての記憶と、この体の想いが、重なり合っている。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに近づいた。意識的に、腕が触れそうになる距離で歩く。胸が、ノゾムの腕に近づく。

会話が続く。ノゾムはクリスのことを気遣いながら、優しく話してくれた。クリスは自分の過去を、ぼかしながら話した。寂しかったこと。誰かと話したかったこと。ノゾムの優しさが、それを少しずつ溶かしていく。クリスは恐怖を押し殺しながら、ノゾムの声に耳を傾けた。

「ノゾムさんと話していると……心が温かくなります」

クリスは小さく言った。ノゾムは優しく微笑んだ。

「僕もです。クリスさんと話していると、なんだか……不思議な気持ちになります」

ノゾムの視線が、またクリスの胸に落ちた。クリスは気づき、意識的に胸を張った。谷間が強調される。ノゾムの目が、一瞬、熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。恥ずかしい。でも、嬉しい。ノゾムが自分を見てくれている。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに微笑みかけた。

二人は自然と、近くの映画館に入った。夜の映画。暗い館内で、隣の席に座る。クリスはノゾムの隣で、スクリーンを見つめた。映画が始まる。恋愛映画。心が温かくなるシーンが続く。クリスはノゾムの横顔を、時々盗み見た。ノゾムは映画に熱中している。クリスは自分の手を、膝の上に置いた。ノゾムの手に、触れそうになる距離。

スクリーンの明るいシーンで、ノゾムの右手が、クリスの左手に触れた。指が重なる。クリスは息を呑んだ。ノゾムの温かい手。大きな手。クリスは恐怖を抑えながら、指を少し動かした。ノゾムの指が、クリスの指に絡まる。手が触れ合った。幸せな感覚が、胸に広がった。寂寥感は、もうどこにもない。ノゾムの温かさが、すべてを溶かしている。

クリスはノゾムの手に、そっと力を込めた。ノゾムも、同じように力を返してきた。二人で手を繋いだまま、映画を見続ける。クリスは心が、熱く鳴るのを感じた。この瞬間が、ずっと続けばいいと思った。恐怖を完全に忘れていた。

そのときだった。

触れ合っていたクリスの左手が、突然、小さく縮み始めた。

左手の指が、短くなり、皮膚がしわだらけになっていく。骨が縮むような痛みが、指先から走った。クリスは息を呑んだ。左手が、老いた小さな手に変わっていく。ノゾムは映画のシーンに熱中していて、まだ気づいていない。クリスは慌てて左手を、膝の下に隠した。でも、変化は止まらない。左手が、完全に老婆の小さな手に戻ってしまった。

クリスは恐怖で体を震わせた。元に戻ってしまう。昨日と同じように。クリスは「戻りたくない……」と、心の中で強く思った。すると、左手が、一時的に元の長さに戻った。滑らかな若い女性の手に。クリスは息を荒げた。でも、すぐにまた縮み始める。左手が、老いた手に戻っていく。

ノゾムはまだ映画に夢中だ。クリスは左手を隠したまま、立ち上がった。

「す、すみません……ちょっとトイレに……」

クリスは小さな声で言い、ノゾムの隣を離れた。ノゾムは「大丈夫ですか?」と声をかけたが、クリスは「すぐ戻ります」とだけ言って、女性用トイレに急いで逃げ込んだ。狭い個室に飛び込み、ドアを閉めて鍵をかける。息が荒い。

トイレの狭い空間で、クリスは鏡に映る自分を見た。左手が、老いた小さな手に戻っている。クリスは「また老いるのは嫌だ……」と強く思った。すると、左手が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮み始める。左腕全体が、縮んでいく。骨の縮む音。肉が萎む音。クリスはトイレの壁に手をついて、体を支えた。

「戻りたくない……戻りたくない……」

クリスは抵抗するたびに、腕が一時的にクリスの状態に戻る。左腕が伸び、滑らかになる。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭いトイレの中で、腕をぶつけた。壁に当たる。痛みと、変化の感覚が混じり合う。

脚も、縮み始めた。左脚が、短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという、骨の縮む音。クリスはバランスを崩し、トイレの壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い空間で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる感覚。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。顔が、熱くなった。しわが現れ始める。黒い髪が、白く染まっていく。クリスは鏡を見て、自分の顔が交互に変化するのを見た。抵抗するたびに、顔が一時的に若返る。でも、すぐに老いる。クリスは狭いトイレの中で、体を震わせた。

「元に戻りたくない……また老いるのは嫌だ……」

クリスは抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らみ、顔が若返る。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスはトイレの壁や洗面台に、腕や脚をぶつけた。狭い空間で、体が変化するたびにバランスを崩す。痛みと、肉が萎む感覚。骨が縮む音。クリスは喘ぎ声を漏らしながら、体を支えた。

胸が、完全に萎んでいく。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。背丈が、82センチまで縮んでいく。クリスは「戻りたくない」と最後に強く思った。でも、体はもう止まらなかった。顔が完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭いトイレの中で、菊はへたり込むように床に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は鏡に映る自分の顔を見て、息を吐いた。ノゾムとの会話で心が温かくなったあの瞬間。手が触れ合った幸せな感覚。そして、元に戻ってしまう恐怖。菊は小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。菊はトイレに座ったまま、長い時間、動けなかった。ノゾムの優しい声が、耳に残っている。寂寥感は、また少しずつ、胸の奥に広がり始めていた。


第六章 テレビの呪いと、リビングのソファ

前半

夕方のリビングは、薄暗いテレビの光に包まれていた。菊は小さな体をソファの端に寄せて座り、ハルトと並んでテレビを見ていた。ハルトは22歳の大学生で、今日も大学から帰ってきて、菊と一緒に夕食を済ませたあと、テレビの前に座っていた。菊はハルトの横顔を時折見ながら、静かに息を吐いた。ノゾムへの想いは、まだ胸の奥に残っている。昨日、クリスとしてノゾムと話したときの温かさ。手が触れ合った感覚。そして、元に戻ってしまった恐怖。菊はそれをハルトに話すことができなかった。ただ、今日も変わらない日常を、静かに過ごしている。

ハルトがリモコンを手に取り、チャンネルを変えた。偶然ついた番組は、オカルト特集だった。司会者が、暗いスタジオで真剣な顔をして話している。

「今夜は、昔の嫉妬からかけられた呪いについてお送りします。ある女性が、若い頃に夫を巡ってライバルからかけられた呪い。夫の死後、孤独が極限に達したとき、呪いが目覚め、老いた体を強制的に若返らせる……しかし、その若返りは常にグロテスクで苦痛を伴い、すぐに元に戻ってしまう。呪いは、老いた女性にだけ二度目の青春を与えるが、真の愛で両方の姿を受け入れられる者と出会わなければ、二度と安らぎは得られないというものです」

菊の体が、びくりと震えた。番組の説明が、彼女の状況と完全に一致していた。夫を亡くしたあと、孤独が募り始めた頃から、体がおかしくなり始めたこと。ノゾムのことを強く思った瞬間に、激しい変身が起きること。昨日も、ノゾムと手が触れ合った瞬間に、元に戻り始めたこと。菊は息を呑んだ。心臓が、大きく鳴る。

ハルトはテレビを見て、くすくすと笑った。

「ありえないよね、こんなの。呪いとか、現代で本気にする人いるのかな。婆ちゃん、どう思う?」

ハルトは菊を見て、笑いながら聞いた。菊は慌てて笑顔を作った。でも、笑顔が硬い。唇が震えている。菊は自分の胸に手を当てた。心臓の鼓動が、止まらない。番組の説明が、頭の中で繰り返される。嫉妬からかけられた呪い。夫の死後、孤独が極限に達したとき目覚める。グロテスクな若返り。真の愛で両方の姿を受け入れられる者と出会わなければ……菊は「自分は呪われている」と、はっきりと気づいた。昨日も、ノゾムとの会話で心が温かくなった瞬間に、体が元に戻ろうとした。あれは、呪いの力だった。菊はそれを、ハルトに話そうとした。でも、声が出ない。喉が、締めつけられているような感覚。口を開けようとするが、言葉が喉に詰まる。

「ハルト……」

菊は小さく呟いた。でも、声は掠れて、ほとんど聞こえない。ハルトはテレビに夢中になっていて、気づいていない。菊はもう一度、助けを求めようとした。でも、声が出ない。体が、熱くなり始めている。胸の奥で、何かが疼く。菊はソファに深く沈み込むように体を縮めた。小さな体が、ソファのクッションに埋もれる。

ハルトは番組が終わると、 yawn をしながら立ち上がった。

「婆ちゃん、もう寝るね。明日も早いから。婆ちゃんも、早く休んで」

ハルトは菊の頭を軽く撫でて、リビングを出ていった。菊はソファに座ったまま、動けなかった。ハルトの足音が、寝室の方に消えていく。家の中が、再び静かになった。テレビの電源は切れていて、リビングは暗い。街灯の光が、窓から少し差し込んでいる。菊は自分の胸に手を当てた。心臓が、激しく鳴っている。番組の説明が、頭から離れない。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。菊は「助けて」と、もう一度言おうとした。でも、声が出ない。喉が、完全に塞がれているような感覚。

そのとき、左腕に、激しい熱が走った。

菊は息を呑んだ。左腕が、熱い。短い、しわだらけの左腕が、突然、激しく疼き始めた。菊は右の手で左腕を押さえた。でも、抑えきれない。左腕が、引き伸ばされていく。骨が軋む音が、リビングに響いた。ギリギリ……という、乾いた音が、大きくなる。左腕が、元の二倍どころか、三倍近くの長さにまで一気に伸びていく。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。肉が、爆発的に伸びていく。菊はソファに体を沈めながら、声を上げた。

「っ……あ……!」

痛みが、激しい。これまで以上の痛み。左腕が、異常に長く伸びたあと、ゆっくりと元のクリスの長さに戻っていく。でも、痛みは残っている。菊は左腕を、目の前に掲げてみた。長い、若い女性の腕。滑らかな皮膚。でも、さっきの変化は、明らかにこれまでより激しかった。菊は息を荒げた。

次に、右腕が同じように熱くなった。右腕も、激しく引き伸ばされていく。骨の軋む音が連続する。右腕も、三倍近くまで伸びてから、クリスの長さに落ち着く。菊は両腕を、ソファの背もたれに置いた。異常に長い腕が、ソファから はみ出している。痛みが、腕の奥に残っている。

「こんなの……いやだ……」

菊は小さく呟いた。でも、声はまだ掠れている。次に、左脚が熱くなった。左脚が、メキメキと激しく伸びていく。骨が、異常に引き伸ばされる音。肉が、爆発的に長くなる。左脚が、ソファから床に届かなくなるほど長く伸びてから、クリスの長さに戻る。痛みが、脚全体を貫く。菊はソファに体をよじった。右脚も、同じように激しく伸びていく。両脚が、ソファの上で長くなりすぎて、バランスを崩す。菊は長い脚を、ソファから下ろした。痛みが、まだ続いている。

背骨が、今度は熱くなった。背丈が、激しく伸びていく。脊椎が、一つずつ、異常に引き伸ばされる。骨の軋む音が、背中から大きく響く。菊の小さな体が、ソファの上で縦に引き延ばされていく。背丈が、200センチ近くまで伸びてから、クリスの170センチに落ち着く。痛みが、背骨の奥に残っている。菊はソファに深く沈み、息を荒げた。

顔が、熱くなった。しわが、激しく動く。皮膚が、引き伸ばされて若返っていく。白髪が、根元から黒く染まり、異常に長く伸びていく。顔の骨が、大きく動く音。菊は自分の顔を、両手で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。でも、変化はこれまでより激しかった。菊は鏡を見たくて、リビングの鏡台の方に視線を向けた。でも、動けない。

胸が、今度は激しく熱くなった。左の胸が、爆発的に膨らみ始める。肉が、異常に急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。左の胸が、これまで以上の巨大さにまで膨らんでから、クリスのサイズに落ち着く。痛みと、未知の感覚が混じり合う。菊は自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。服が、胸の部分で完全に裂けた。谷間が、深く強調される。菊は息を呑んだ。

尻と太ももも、同じように激しく変化した。肉が、爆発的に付き、異常に大きくふくらんでから、クリスのサイズに落ち着く。菊の体は、今や完全にクリスの姿になっていた。でも、変化の激しさは、これまでとは比べ物にならない。痛みが、体中を貫いている。骨の軋む音と肉の動く音が、リビングに満ちていた。

クリスはソファに座ったまま、息を荒げた。新しい体が、熱を帯びている。巨大な胸が、重くのしかかる。長い黒髪が、肩に落ちている。クリスは自分の体を、両手で触れた。滑らかで、若々しい。でも、さっきの激しい変化の余韻が、まだ残っている。菊としてテレビを見ていたときの恐怖。番組の説明。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。クリスは小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、妖艶で甘い。体が、若さで満ちている。でも、心の奥では、恐怖がまだ残っている。もう一度、元に戻ってしまうかもしれない。クリスはソファに深く沈み、長い腕で自分の体を抱きしめた。リビングは暗い。ハルトは寝室で寝ている。クリスは一人で、ソファに座ったまま、息を整えた。

クリスはソファに座ったまま、長い時間息を整えていた。リビングの暗がりの中で、自分の新しい体を両手で触れていた。巨大な胸の重み。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ体に残っている。痛みは少しずつ引いていくが、恐怖は消えなかった。テレビで見た番組の説明が頭から離れない。自分は呪われている。ノゾムへの想いが、呪いを刺激している。クリスは小さく呟いた。

「ノゾムさん……会いたい」

声が、妖艶で甘い。恐怖を抑えながら、クリスは立ち上がった。長い脚で、リビングを歩く。服は裂けていて、もう着られない。クリスはハルトの部屋から大きめの服をもう一度借り、着替えた。Tシャツは胸を締めつけ、谷間が強調される。パンツも太ももに張り付く。サイズが、少し合わない。胸の部分がきつくて、谷間が深く見える。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

クリスは家を出た。夜の町は静かで、街灯だけがオレンジ色の光を落としている。クリスは長い脚で、町の中心に向かった。デイト用の服を買おうと思った。ノゾムに会うなら、少しちゃんとした服が欲しい。近くの24時間営業の服屋に入り、ブラウスとスカートを選んだ。ブラウスは胸の部分が少しきつい。スカートも、太ももと尻にぴったりと張り付く。サイズが、完全に合わない。でも、クリスはそれを買った。鏡で自分の曲線を確認しながら、恐怖を胸の奥に押し込んだ。

ノゾムに連絡を取った。遅い時間だったが、ノゾムはすぐに返事をくれた。

「今からでも大丈夫だよ。どこかで会おう」

ノゾムの返事に、クリスは胸が温かくなった。遅い時間なのに、ノゾムは不安げな顔で待っていてくれた。クリスが少し不安そうな表情をしていると、ノゾムは優しく「大丈夫?」と声をかけてくれた。クリスは心が熱くなるのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムと一緒に、近くのカフェに入った。

店内は静かで、照明が柔らかい。クリスとノゾムは向かい合って座った。クリスはブラウスを意識的に胸を張って着ていた。谷間が強調される。ノゾムの視線が、時々、クリスの胸や太ももに落ちる。クリスは気づいた。嫌な気持ちはしない。むしろ、ノゾムが自分を見てくれていることに、複雑な喜びを感じた。昨日と同じ視線。でも、今日はもっと近くにいる。

パスタを注文した。クリスはフォークを手に、ノゾムと話した。恐怖を抑えながら、クリスは少しだけ本音を漏らした。

「昨日、テレビで変な番組を見て……呪いみたいな話が出てきて。自分もそんな風に思えることがあって……」

クリスはぼかしながら言った。ノゾムは少し驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

「クリスさんがおばあちゃんでも、構わないよ。僕にとっては、クリスさんでいいから」

ノゾムの言葉に、クリスは息を呑んだ。心が、大きく鳴った。ノゾムは「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた。でも、普段のノゾムが菊(おばあちゃん)に対して接する態度を思い浮かべると、完全に信じられなかった。ノゾムは菊に対しては、ただ礼儀正しく、優しいが、少し距離を置いているように見えた。クリスはそれを、胸の奥で感じていた。でも、ノゾムの優しい声と視線に、クリスは心が溶けていくのを感じた。幸せな時間が、流れていく。

パスタを食べながら、二人は心の内を少しずつ語り合った。ノゾムは大学のことや、将来の夢を話した。クリスは聞きながら、ノゾムの優しさに包まれているのを感じた。恐怖を抑えながら、クリスはノゾムに微笑みかけた。ブラウスの中の胸が、ノゾムの視線を捉えている。クリスはそれを意識的に強調した。ノゾムの目が、時々熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。嬉しい。でも、どこかで疑いも残る。ノゾムが本気で「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言っているのか。菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。でも、今この瞬間は、幸せだった。

食事が終わると、二人はカフェを出た。夜の町を、並んで歩く。クリスはノゾムの隣で、長い脚をゆっくりと動かした。ブラウスが胸を強調している。ノゾムの視線が、またクリスの胸に落ちる。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに近づいた。幸せな時間が、続いている。

そのときだった。

視力が、突然、低下し始めた。

クリスの視界が、ぼやけていく。遠くの街灯が、二重に見える。ノゾムの顔が、ぼんやりとしか見えない。クリスは目をこすった。でも、視力はどんどん悪くなっていく。左目が、まずぼやける。右目も、同じように視界が霞んでいく。クリスは息を呑んだ。元に戻る予兆だ。昨日と同じように、体が菊に戻ろうとしている。クリスは「戻りたくない」と心の中で強く思った。でも、視力は止まらない。

カフェから少し離れた裏路地に入ったとき、クリスは足を踏み外した。視界がぼやけていて、地面の段差が見えなかった。長い脚が絡まり、クリスは転んでしまった。ブラウスがめくれ上がり、胸の谷間が露わになる。クリスは慌てて服を直そうとしたが、間に合わなかった。

「大丈夫ですか!?」

ノゾムが慌てて駆け寄ってきた。でも、クリスはすでに体が熱くなり始めていた。視力が、さらに悪くなっていく。ノゾムが手を差し伸べてくれたが、クリスは「大丈夫です……ちょっと休みたい」と言い、ノゾムを振り切って裏路地の奥に逃げ込んだ。狭い路地で、クリスは壁に寄りかかった。視界が、ほとんど見えないほどぼやけている。

その瞬間、左腕が縮み始めた。

左腕が、ゆっくりと短くなり、皮膚がしわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは「戻りたくない」と強く思った。すると、左腕が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭い路地で、腕を壁にぶつけた。痛みと、変化の感覚が混じり合う。

脚も、縮み始めた。左脚が短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという音。クリスはバランスを崩し、路地の壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い路地で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。顔が、熱くなった。しわが現れ始める。黒い髪が、白く染まっていく。クリスは路地の壁に手をついて、体を支えた。抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らみ、顔が若返る。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスは狭い路地で、体を震わせた。

視力が、完全に悪くなっていく。ノゾムの顔が、もう見えない。クリスは「ノゾムさん……」と呟いた。でも、声は老いたうめき声になっている。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、完全に萎む。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭い裏路地で、菊はへたり込むように地面に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、また胸の奥に広がり始めていた。

第七章 夢のような記憶と、玄関先の視線

翌日の朝、菊はリビングのソファで目を開けた。昨夜の裏路地での変身の余韻が、まだ体に残っている。骨の奥が疼き、肉が萎んだ感覚が薄っすらと続いている。菊は小さな体を起こそうとしたが、頭がぼんやりしていた。昨日の出来事が、夢のようにぼやけている。ノゾムとカフェで話したこと。手が触れ合った感覚。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言われた言葉。そして、視力が悪くなり、裏路地で転んで、体が元に戻っていったこと。すべてが、はっきりしない。まるで長い夢を見ていたような感じだった。

菊は自分の胸に手を当てた。しわだらけの小さな胸。昨日、クリスとして巨大でムチムチとした胸だった記憶が、遠いもののように感じられる。菊は小さく息を吐いた。ストレスが、ボケを進行させているのかもしれない。昨日、ノゾムとの幸せな時間と、元に戻ってしまった恐怖が、重なり合って頭を混乱させている。

「ハルト……」

菊は小さく呟いた。ハルトの顔が、一瞬、思い出せなかった。孫の名前が、喉の奥で詰まる。菊は慌てて目を閉じ、深呼吸をした。数秒後、ようやくハルトの顔が浮かんだ。22歳の優しい孫。菊は自分の頭を軽く叩いた。ボケが、確実に進んでいる。呪いにかかったストレスが、それを加速させている。菊はソファに深く沈み、視界をぼんやりとさせた。

ハルトが大学から帰ってきたのは、午後だった。菊は台所で簡単な昼食を用意しようとしていたが、手が少し震えていた。ハルトは菊の様子を見て、すぐに心配そうな顔をした。

「婆ちゃん、大丈夫? なんか、ぼーっとしてるみたいだけど……」

ハルトは菊の肩に手を置いた。菊は慌てて笑顔を作った。

「大丈夫だよ。少し、疲れてるだけ」

でも、声が掠れていて、説得力がない。ハルトは菊をソファに座らせ、自分はスマホを取り出した。

「ちょっとノゾムに相談してみるよ。婆ちゃんの様子が変だから」

ハルトはノゾムに電話をかけた。菊はソファに座ったまま、ぼんやりとテレビを見ていた。画面の映像が、はっきり見えない。昨日、視力が悪くなった記憶が、薄っすらと蘇る。菊は自分の目をこすった。クリスとしてノゾムと話したときの記憶が、夢のように遠い。巨大な胸の重みや、ノゾムの優しい視線が、まるで別の人の記憶のように感じられる。

ハルトは電話でノゾムと話したあと、玄関先に出て行った。ノゾムが心配して来てくれたらしい。菊はソファに座ったまま、二人の声が玄関で聞こえるのをぼんやりと聞いていた。ハルトがノゾムに菊の様子を相談している。ノゾムが「心配だね」と優しく答えている。菊は自分の胸に手を当てた。ノゾムが来てくれているのに、菊としてしか接することができない寂しさが、胸に広がる。

そのとき、リビングのソファで、菊の体に熱が走った。

左の腹が、突然、異常に膨らみ始めた。菊は息を呑んだ。腹が、風船のように大きくふくらんでいく。皮下に何かが急速に溜まっていくような感覚。菊は自分の腹を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。腹が、異常に大きく膨らんだあと、今度は急激に凹んでいく。ミチミチという、湿った音が、リビングに響いた。腹が、風船がしぼむようにへこんでいく。菊は体をよじった。痛みと、未知の圧迫感が腹を貫く。

「っ……なに……これ……」

菊は小さく呟いた。でも、声はまだ老いたまま。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊はソファに体を沈め、腹を抱きしめた。腹の変化が止まらない。膨らみ、凹み、膨らみ、凹み……。菊は息を荒げた。

次に、左腕が熱くなった。左腕が、激しく引き伸ばされていく。骨が軋む音が、リビングに大きく響く。左腕が、これまで以上に異常に長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。菊は左腕を、目の前に掲げてみた。長い、若い女性の腕。でも、さっきの腹の変化が、まだ余韻として残っている。菊は息を呑んだ。

右腕も、同じように激しく伸びていく。骨の軋む音が連続する。右腕も、異常に長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。菊は両腕を、ソファの背もたれに置いた。腹が、また膨らみ始めた。ミチミチという音。腹が、異常に大きくふくらんでから、急激に凹む。菊は体を震わせた。

左脚が、今度は熱くなった。左脚が、メキメキと激しく伸びていく。骨が、異常に引き伸ばされる音。左脚が、ソファから床に届かなくなるほど長く伸びてから、クリスの長さに落ち着く。痛みが、脚全体を貫く。菊は長い脚を、ソファから下ろした。腹が、また膨らむ。菊は腹を押さえながら、脚の変化を見つめた。

右脚も、同じように激しく伸びていく。背骨が、今度は熱くなった。背丈が、激しく伸びていく。脊椎が、一つずつ、異常に引き伸ばされる。骨の軋む音が、背中から大きく響く。菊の小さな体が、ソファの上で縦に引き延ばされていく。背丈が、200センチ近くまで伸びてから、クリスの170センチに落ち着く。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊は体をよじった。

顔が、熱くなった。しわが、激しく動く。皮膚が、引き伸ばされて若返っていく。白髪が、根元から黒く染まり、異常に長く伸びていく。顔の骨が、大きく動く音。菊は自分の顔を、両手で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。腹が、また異常に膨らむ。菊は息を呑んだ。

胸が、今度は激しく熱くなった。左の胸が、爆発的に膨らみ始める。肉が、異常に急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされて破れそうになる。左の胸が、これまで以上の巨大さにまで膨らんでから、クリスのサイズに落ち着く。痛みと、未知の感覚が混じり合う。菊は自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。右の胸も、同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。服が、胸の部分で完全に裂けた。谷間が、深く強調される。腹が、また膨らむ。菊は体を震わせた。

尻と太ももも、同じように激しく変化した。肉が、爆発的に付き、異常に大きくふくらんでから、クリスのサイズに落ち着く。菊の体は、今や完全にクリスの姿になっていた。意識が、はっきりとしてきた。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいる。クリスはソファに座ったまま、息を荒げた。

服が、ボロボロになっていることに気づいた。Tシャツは胸の部分で完全に裂け、ほとんどボロ布のようになっている。パンツも、太ももと尻の部分で破れている。クリスは自分の体を、両手で触れた。巨大な胸。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。クリスは小さく呟いた。

「クリス……」

声が、妖艶で甘い。意識がはっきりしている。昨日、ノゾムとカフェで話した記憶が、夢のようにぼやけていたのが、今は鮮明に蘇る。ノゾムの優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。クリスはソファから立ち上がった。長い脚で、部屋を歩く。服がボロボロなので、昨日の服をもう一度着なおした。ブラウスとスカート。サイズが、少し合わない。胸の部分がきつい。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

クリスは玄関に向かった。ハルトとノゾムが、玄関先でまだ話している。クリスは玄関のドアを開け、外に出た。ノゾムが、クリスを見て目を丸くした。

「クリスさん……? なぜ、菊のおばあちゃんの家から……?」

ノゾムの声が、驚きに満ちている。クリスは慌てて笑顔を作った。

「えっと……私は、菊のおばあちゃんの親戚で……ちょっと、用事があって来てたんです。昨日もお会いしましたよね」

クリスは必死に言い訳をした。ノゾムは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

「そうなんですね。昨日は本当に楽しかったです。また、話しましょう」

ノゾムはクリスに優しく声をかけた。ハルトも「婆ちゃんの知り合いだったんだ」と納得した様子だった。クリスは心臓が大きく鳴るのを感じた。ノゾムが自分を「クリス」として認識してくれている。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、どこかで疑いも残る。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに微笑みかけた。

二人は玄関先で、少し話した。ノゾムはクリスのことを気遣いながら、優しく話してくれた。クリスはノゾムの視線が、時々、自分の胸や太ももに落ちるのを感じた。クリスは意識的に、ブラウスを胸を張って着ていた。谷間が強調される。ノゾムの目が、熱を帯びる。クリスは複雑な気持ちになった。嬉しい。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。でも、今この瞬間は、ノゾムの優しい声に包まれている。寂寥感が、少しずつ溶けていく。

会話が続く。ノゾムはクリスのことを少し不思議がった。

「クリスさん、なんか……菊のおばあちゃんに似てる気がするんですけど……気のせいかな」

ノゾムはそう言った。クリスは心臓が止まるかと思った。でも、ノゾムは深くは追及しなかった。ただ、優しく微笑んだ。クリスは恐怖を抑えながら、ノゾムに微笑みかけた。ハルトも「婆ちゃんの親戚だから、似てるのかもしれない」と軽く流した。クリスはほっとした。でも、心の奥では、ノゾムが自分の正体に気づきかけているのを感じていた。

やがて、ノゾムが「また電話するね」と言い、帰っていった。ハルトも大学の準備で部屋に戻った。クリスは一人になった。玄関先で、ノゾムの優しい声がまだ耳に残っている。幸せな時間が、流れていた。でも、恐怖が、胸の底に沈んでいる。

そのとき、視界が、ぼやけ始めた。

クリスの視力が、突然、低下し始めた。遠くの街灯が、二重に見える。ノゾムの顔が、ぼんやりとしか見えない。クリスは目をこすった。でも、視力はどんどん悪くなっていく。左目が、まずぼやける。右目も、同じように視界が霞んでいく。クリスは息を呑んだ。元に戻る予兆だ。クリスは「戻りたくない」と心の中で強く思った。でも、視力は止まらない。

クリスは家の中に戻り、狭い廊下で体を支えた。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは「戻りたくない」と強く思った。すると、顔が一時的に若返る。でも、すぐにまた老いる。クリスは壁に手をついて、体を支えた。

左腕が、縮み始めた。長い、滑らかな左腕が、短く、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。クリスは「また老いるのは嫌だ」と強く思った。すると、左腕が一時的に元の長さに戻った。でも、すぐにまた縮む。右腕も、同じように交互に変化し始める。クリスは狭い廊下で、腕を壁にぶつけた。

脚も、縮み始めた。左脚が短くなり、老いた脚になっていく。メキメキという音。クリスはバランスを崩し、廊下の壁にぶつかった。右脚も、同じように縮む。背丈が、170センチから縮んでいく。クリスは「戻りたくない」と念じると、脚が一時的に長く戻る。でも、すぐにまた縮む。クリスは狭い廊下で、体をよじった。

胸が、脈動し始めた。巨大な左の胸が、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。クリスは自分の胸を、両手で押さえた。でも、抑えきれない。左の胸が、萎んでいく。右の胸も、同じように萎み始める。クリスは「戻りたくない」と念じると、胸が一時的に元の巨大なサイズに戻る。でも、すぐにまた萎む。クリスは喘ぎ声を漏らした。

「っ……あ……」

声が、老いたうめき声になっている。腹が、膨らんだり凹んだりし始める。ミチミチという音。腹が、異常に大きくふくらんでから、急激に凹む。クリスは体を震わせた。抵抗するたびに、体の部分部分が一時的にクリスの状態に戻る。顔が若返り、腕が伸び、脚が長くなり、胸が膨らむ。でも、すぐにまた菊の状態に戻っていく。クリスは狭い廊下で、体を支えた。

視力が、完全に悪くなっていく。ノゾムの顔が、もう見えない。クリスは「ノゾムさん……」と呟いた。でも、声は老いたうめき声になっている。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、完全に萎む。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、菊に戻っていた。

狭い廊下で、菊はへたり込むように床に座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、また胸の奥に広がり始めていた。


第八章 廊下の崩れと、後ろからの抱きつき

廊下の床にへたり込んだ菊は、視界がぼやけたまま動けなかった。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が大きすぎて体に余る。昨日、ノゾムとカフェで話した記憶が、夢のように遠い。でも、心の奥ではノゾムへの想いが、熱を帯びて疼いている。呪いの頻度が、確実に増している。昨日も、今日も、体がおかしくなる。菊は自分の胸に手を当てた。ほとんど平らな小さな胸。昨日、クリスとして巨大でムチムチとした胸だった感覚が、薄っすらと蘇る。菊は小さく息を吐いた。

そのとき、左の胸が熱くなった。

ブカブカになった服の中で、左の胸が、突然、爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされる音が、服の下で響いた。左の胸が、服の緩い布地を満たすように、巨大に膨らんでいく。菊は息を呑んだ。服は破れず、布地が伸びて胸の形を包み込む。左の胸が、異常に大きくなったあと、クリスのムチムチとした爆乳に落ち着く。菊は体を支えきれず、前に倒れ込んだ。胸を床に押しつけたまま、バランスを崩す。

「っ……あ……!」

右の胸が、今度は同じように爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。右の胸が、左の胸を追い越すように膨らんでいく。服が、胸の部分で伸びきる。菊は床に胸をつけたまま、体を震わせた。両方の胸が、クリスのサイズに落ち着いた。服は破れず、布地がぴったりと胸の形を包み込んでいる。菊は床に倒れたまま、息を荒げた。

次に、右脚がムチムチと伸び始めた。肉が、急速に付き、太く長くなっていく。骨が、引き伸ばされる音。右脚が、床に届くようになり、ムチムチとした太ももとふくらはぎが成長していく。菊は胸を床に押しつけたまま、右脚が伸びるのを感じた。痛みと、未知の感覚が混じり合う。右脚が、クリスの長さに落ち着いたあと、今度は左脚が同じようにムチムチと伸びていく。両脚が、ムチムチと厚みを増し、長くなっていく。菊は床に倒れたまま、体を支えようとした。

左腕が、今度は熱くなった。左腕が、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨が伸びる音。肉が、滑らかに成長していく。左腕が、クリスの長さに落ち着いたあと、右腕も同じように伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になっていく。菊は床に胸を押しつけたまま、両腕を伸ばしてみた。服の袖が、伸びて腕を包み込んでいる。服は破れず、布地が体にぴったりとフィットしていく。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が、引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まり、長く伸びていく。顔の骨が、ゆっくりと動く音。菊は自分の顔を、床に押しつけた胸の間から触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。背丈が、今度は伸び始めた。脊椎が、ゆっくりと引き伸ばされる。菊の小さな体が、床から浮き上がるように長くなっていく。背丈が、クリスの170センチに落ち着く。服が、全体的に伸びて新しい体にフィットしている。破れていない。菊は床に倒れたまま、息を荒げた。

変身が完了した。クリスは床に胸を押しつけたまま、ゆっくりと体を起こした。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。服はブカブカだったものが、ぴったりと新しい体にフィットしている。クリスは自分の体を、両手で触れた。柔らかい。熱い。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。でも、意識がはっきりしている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。呪いの頻度が増している。もう、抑えきれない。

クリスは立ち上がった。長い脚で、廊下を歩く。服が、体にぴったりと張り付いている。胸の谷間が、深く強調される。クリスは鏡で自分の姿を確認し、意識的に胸を張った。ノゾムに会いたい。恐怖を抑えながら、でもこの体でノゾムに見てほしいと思った。

玄関の方から、ノゾムの声が聞こえた。ノゾムはハルトと話したあと、帰ろうとしているらしい。クリスは長い脚で、玄関に向かった。ノゾムが靴を履き、玄関のドアを開けようとしている。クリスは後ろから、ノゾムに抱きついた。巨大な胸が、ノゾムの背中に押しつけられる。クリスはノゾムの体に、自分の体を密着させた。

「ノゾムさん……」

クリスの声が、妖艶で甘い。ノゾムはびっくりして体を硬直させた。

「クリスさん……? どうしたんですか……?」

ノゾムは困惑した声で言った。クリスはノゾムの背中に顔を埋めたまま、愛の告白をしようとした。でも、菊の記憶が、突然、よぎった。88歳の老婆として、ノゾムに接していたときの記憶。ノゾムが菊に対して礼儀正しく、でも少し距離を置いていた態度。クリスは言葉を飲み込んだ。告白しようとした口が、塞がる。

「ノゾムさん……私は……」

クリスはノゾムの背中に抱きついたまま、涙がにじむのを感じた。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスはノゾムを振り向かせようとした。ノゾムがゆっくりと振り返る。クリスはノゾムの顔を見て、ほとんどキスしかけるほど顔を近づけた。唇が、触れそうになる。

その瞬間、クリスの顔が、一瞬、菊の老婆の顔になった。

ノゾムは後ずさった。目を見開いて、クリスから離れる。

「っ……! なに……?」

ノゾムの声が、驚きと混乱に満ちている。クリスは自分の顔を、両手で触れた。まだクリスの顔に戻っている。でも、さっきの一瞬の変化が、ノゾムに衝撃を与えた。クリスは泣きながら、ノゾムから離れた。涙が、頰を伝う。ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスは泣きながら、玄関から飛び出し、家の裏庭に逃げ込んだ。

裏庭は、夜の闇に包まれていた。花壇が少し荒れている。クリスは長い脚で、庭の奥に走った。涙が止まらない。ノゾムへの想いが、熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。クリスは庭の木陰にしゃがみ込んだ。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。クリスは自分の体を、両手で抱きしめた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。クリスは「老いたくない」とは思わなかった。ただ、ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。涙が、止まらない。クリスは庭の地面に座り込んだ。体が、熱くなり始めた。視界が、ぼやけていく。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは抵抗することなく、体を任せた。

左腕が、ゆっくりと短くなり、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。左腕が、元の短い老婆の腕に戻っていく。右腕も、同じように縮む。両腕が、短く小さくなっていく。脚も、短くなり、老いた脚になっていく。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、巨大なものから、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、抵抗することなく、菊に戻っていった。

裏庭の地面に座った菊は、82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が、大きすぎて体に余る。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。「クリスがおばあちゃんでも構わない」と言ってくれた言葉。でも、普段のノゾムが菊に対して接する態度を思い出すと、完全に信じられなかった。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、胸の奥に広がり始めていた。ノゾムへの想いが、熱く疼いている。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は裏庭に座ったまま、長い時間、動けなかった。


第九章 夢の終わりと、布団の中の鼓動

裏庭から家に戻った菊は、視界がぼやけたまま小さな体を支えていた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。服が大きすぎて体に余る。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。でも、昨日と今日の出来事が、夢のように遠い。菊はリビングに入り、ソファに座ろうとしたが、足がふらついた。ハルトの顔が、一瞬、完全に思い出せなくなっていた。孫の名前はわかるのに、顔の輪郭がぼんやりとして、はっきりしない。菊は自分の頭を軽く叩いた。ボケが、急速に進んでいることを、うっすらと感じた。呪いにかかったストレスが、それを加速させている。菊は小さく息を吐いた。

「ハルト……」

名前は出た。でも、顔が思い出せない。菊はソファに深く沈み、視界をぼんやりとさせた。ノゾムが菊の家に戻ってきたのは、その直後だった。ノゾムはハルトと話したあと、菊の様子が心配で再び戻ってきたらしい。玄関のドアが開く音がして、ノゾムの声が聞こえた。

「おばあちゃん、大丈夫ですか? さっきのクリスさんのこと……気になります」

ノゾムの優しい声が、リビングに響いた。菊は一瞬、ノゾムの顔も思い出せなかった。でも、ノゾムが菊の様子を心配してかける言葉に、胸が張り裂けそうになった。ノゾムは菊に対して、いつも礼儀正しく、優しい。でも、少し距離を置いているように感じる。その優しさが、今、菊の心を痛めつける。菊はソファに座ったまま、ノゾムに笑顔を作ろうとした。でも、顔が硬い。

「大丈夫だよ……少し、疲れてるだけ」

声が、掠れている。ノゾムは菊の小さな体を見て、心配そうな顔をした。ハルトも「婆ちゃん、今日は早めに休んだ方がいいよ」と言い、菊を布団のある部屋に連れて行った。菊は布団に横になった。パジャマを着て、布団に包まれる。体が重い。ボケが進行している感覚が、頭の奥で疼く。ノゾムへの想いが、胸を熱くする。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は布団の中で、目を閉じた。

そのとき、布団の中で、菊の体に熱が走った。

左の腹が、突然、異常に膨らみ始めた。布団の中で、腹が風船のように大きくふくらんでいく。ミチミチという、湿った音が、布団の中で響いた。菊は息を呑んだ。腹が、異常に大きく膨らんだあと、今度は急激に凹んでいく。布団の中で、体がよじれる。痛みと、圧迫感が腹を貫く。菊は布団の中で、腹を抱きしめた。腹が、膨らんだり凹んだりを繰り返す。菊は声を抑えようとした。でも、声が漏れそうになる。

パジャマが、胸の部分で伸び始めた。左の胸が、爆発的に大きくなり始めた。肉が、急速に充填される。皮膚が、引き伸ばされる音。左の胸が、パジャマの布地を満たすように巨大に膨らんでいく。パジャマは破れず、布地が伸びて胸の形を包み込む。でも、布地が限界まで伸びきっている。左の胸が、クリスのサイズに落ち着いたあと、今度は右の胸が同じように爆発的に大きくなり始めた。右の胸が、左の胸を追い越すように膨らんでいく。パジャマが、胸の部分で限界まで伸びる。菊は布団の中で、体を震わせた。

「っ……ん……」

声が、漏れそうになる。菊は口を押さえた。ノゾムがまだ家にいる。声を出せない。左脚が、今度はムチムチと伸び始めた。肉が、急速に付き、太く長くなっていく。骨が、引き伸ばされる音。左脚が、布団の中で長くなり、ムチムチとした太ももとふくらが成長していく。パジャマのパンツ部分が、伸びきる。左脚が、クリスの長さに落ち着いたあと、今度は右脚が同じようにムチムチと伸びていく。両脚が、ムチムチと厚みを増し、長くなっていく。パジャマが、下半身で限界まで伸びる。菊は布団の中で、脚を伸ばした。

左腕が、熱くなった。左腕が、ゆっくりと長く大きくなっていく。骨が伸びる音。肉が、滑らかに成長していく。左腕が、クリスの長さに落ち着いたあと、右腕も同じように伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になっていく。パジャマの袖が、伸びきる。菊は布団の中で、両腕を伸ばしてみた。パジャマが、体全体で限界まで伸びている。布地が、薄く張りつめている。

顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと消えていく。皮膚が、引き締まり、滑らかになっていく。白髪が、根元から黒く染まり、長く伸びていく。顔の骨が、ゆっくりと動く音。菊は自分の顔を、布団の中で触れた。しわのない、若い女性の顔。黒い長い髪。目が大きく、唇がふっくらしている。背丈が、今度は伸び始めた。脊椎が、ゆっくりと引き伸ばされる。菊の小さな体が、布団の中で縦に引き延ばされていく。背丈が、クリスの170センチに落ち着く。パジャマが、全体的に伸びきっている。布地が、薄く張りつめ、限界を迎えている。

変身が完了した。クリスは布団の中で、息を荒げた。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。パジャマはボロボロになっている。布地が、胸や脚の部分で限界まで伸びきり、ところどころ薄く破れかけている。クリスは布団の中で、自分の体を両手で触れた。柔らかい。熱い。昨日よりも激しい変身の余韻が、まだ残っている。でも、意識がはっきりしている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。ノゾムはまだ家にいる。クリスは布団からゆっくりと出た。ボロボロのパジャマを着たまま、部屋を出た。

家の中は静かだった。ノゾムがハルトと話している声が、リビングから聞こえる。クリスは長い脚で、リビングに向かった。正体を告白しようと思った。ノゾムに「私は菊です」と言う。恐怖で胸が張り裂きそうになる。でも、ノゾムへの想いが、それを上回っていた。クリスはリビングの入り口で、ノゾムを見た。ノゾムはハルトと話している。クリスは一歩踏み出そうとした。でも、恐怖が、足を止めた。ノゾムが自分を「クリス」として見てくれている。でも、菊として接するノゾムの態度を思い出すと、完全に信じきれない。クリスは恐怖で押し入れの中に身を隠した。狭い押し入れの中で、息を荒げた。

押し入れの中で、クリスは自分の体を抱きしめた。巨大な胸が、重くのしかかる。恐怖が、胸を締めつけている。ノゾムに告白したい。でも、菊の記憶が、それを止めてしまう。クリスは押し入れの中で、目を閉じた。そのとき、視界がぼやけ始めた。左の顔が、熱くなった。しわが、ゆっくりと現れ始める。皮膚が、たるんでいく。黒い髪が、白く染まり始める。声が、妖艶な喘ぎから、老いたうめき声に変わっていく。クリスは「戻りたくない」と心の中で思った。でも、恐怖が、それを上回っていた。体が、菊に戻り始めている。

左腕が、ゆっくりと短くなり、しわだらけになっていく。骨が縮む音。肉が萎む音。左腕が、元の短い老婆の腕に戻っていく。右腕も、同じように縮む。両腕が、短く小さくなっていく。脚も、短くなり、老いた脚になっていく。背丈が、82センチまで縮んでいく。胸が、巨大なものから、ゆっくりと萎んでいく。肉が引き締まる。皮膚がたるむ。尻と太ももも、同じように肉が引き締まる。顔が、完全に老い、白髪が戻る。声が、老いたうめき声になる。クリスは、恐怖で抵抗することができず、菊に戻っていった。

狭い押し入れの中で、菊はへたり込むように座った。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。パジャマが、ボロボロになっている。菊は視界がぼやけたまま、ノゾムのことを思い浮かべた。優しい声。心配してかけてくれた言葉。胸が張り裂けそうになる。でも、菊の記憶が、それを抑えてしまう。菊は押し入れの中で、長い時間、動けなかった。ボケが、急速に進んでいる。ハルトの顔も、ノゾムの顔も、はっきり思い出せない。でも、ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。菊は小さく息を吐いた。寂寥感が、胸を満たしている。


第十章 告白と、最後の変身

菊は押し入れから這い出たとき、自分の体があまりに小さく感じられた。82センチの小さな体。しわだらけの皮膚。白髪。パジャマはボロボロのまま、床に落ちている。菊は床に座ったまま、視界をぼんやりとさせた。ボケが、急速に進んでいる。昨日まで鮮明だったクリスとしての記憶が、薄い霧のようにぼやけ始めている。巨大な胸の重みや、ノゾムと手が触れ合った感覚が、夢のように遠い。菊は自分の胸に手を当てた。ほとんど平らな小さな胸。クリスだったときの感覚が、はっきりと思い出せない。

「クリス……だった、はず……」

名前は出た。でも、顔や体が、ぼんやりとして思い出せない。菊は自分の頭を軽く叩いた。ハルトの顔も、ノゾムの顔も、はっきりしない。ただ、ノゾムへの想いだけが、胸の奥で熱く疼いている。呪いにかかったストレスが、ボケを加速させている。菊は小さく息を吐いた。何もかも忘れてしまう前に、ノゾムに会わなければ。クリスは自分だということを、告白しなければ。

菊はボロボロのパジャマを脱ぎ、古い服を着なおした。服が、体に余る。菊は小さな体で、リビングに向かった。ノゾムはまだ家にいる。ハルトと話している声が聞こえる。菊はリビングの入り口で、ノゾムを見た。ノゾムはハルトとソファに座り、菊の様子を心配そうに話している。菊は一瞬、ノゾムの顔も思い出せなかった。でも、ノゾムが菊の異変を心配してかけてくれる言葉に、胸が張り裂けそうになった。

菊はリビングに入り、ノゾムの前に立った。小さな体で、ノゾムを見上げた。ノゾムは菊を見て、優しく微笑んだ。

「おばあちゃん、どうしましたか?」

菊は息を呑んだ。ノゾムへの想いが、胸を熱くする。でも、ボケが進行していて、言葉がうまく出ない。菊は自分の胸に手を当て、必死に声を出した。

「ノゾムさん……私……クリスは、私です」

声が、掠れている。ノゾムは目を丸くした。ハルトも、びっくりした顔をした。

「婆ちゃん……何を言ってるの?」

ハルトは信じようとしない。菊はハルトを見て、必死に続けた。

「クリスは、私が変身した姿です。呪いで……若返るんです。ノゾムさんと話したときも、私だったんです」

ハルトは首を振った。

「婆ちゃん、疲れてるんだよ。無理に考えないで。休んだ方がいい」

ハルトは菊をソファに座らせようとした。でも、菊はノゾムを見て、涙がにじむのを感じた。ノゾムは菊の小さな体を、じっと見つめていた。優しい目が、菊の顔を丁寧に見ている。ノゾムはゆっくりと立ち上がり、菊の前に膝をついた。大きな体で、菊と同じ目線の高さになった。

「おばあちゃんが言うなら、本当だよ」

ノゾムの声が、静かで優しい。菊は息を呑んだ。ノゾムは菊の言葉を、信じてくれた。ハルトはまだ信じようとしない顔だったが、ノゾムは菊の小さな手を、優しく握った。

「クリスさんが、おばあちゃんだったんですね……。でも、僕にとっては、どっちでもいい。菊さんでいいから」

ノゾムの言葉に、菊の胸が熱くなった。涙が、頰を伝う。ノゾムは菊の言葉を、疑わずに受け入れてくれた。菊はノゾムの大きな手に、自分の小さな手を重ねた。ノゾムへの想いが、胸を張り裂きそうになる。でも、その瞬間、体が熱くなり始めた。

全身に、激痛が走った。

菊は体を震わせた。全身の筋肉が、けいれんし始めた。左腕が、勝手にびくびくと動く。右腕も、同じようにけいれんする。脚も、勝手に痙攣する。菊はソファに深く沈み、息を荒げた。体が、熱い。まるで内側から何かが燃えているような感覚。ノゾムは慌てて菊の肩を支えた。

「大丈夫だ……大丈夫だよ」

ノゾムの声が、優しい。菊はノゾムの腕にしがみついた。全身の筋肉が、激しくけいれんする。痛みが、体を貫く。菊は声を上げそうになった。でも、ノゾムが菊の服を、優しく脱がせ始めた。古い服が、菊の小さな体から剥がれ落ちる。ノゾムは菊の全身の肌を、じっと見つめた。

菊の皮膚が、波打っている。

全身の肌が、ゆっくりと波打っている。まるで、水面に風が吹いているように、皮膚がうねり、動いている。菊は自分の腕を、震える手で触れた。皮膚が、勝手に波打っている。痛みが、激しい。全身の筋肉が、けいれんしながら、皮膚が波打つ。ノゾムは菊の小さな体を、優しく抱きしめた。

「大丈夫だ……僕はここにいる」

ノゾムの声が、菊の耳に優しく響いた。菊はノゾムの胸に顔を埋めた。全身が熱い。筋肉がけいれんする。皮膚が波打つ。痛みが、体を貫く。でも、ノゾムの温かさが、菊を包んでいる。菊は小さく呟いた。

「ノゾムさん……」

声が、掠れている。体が、熱くなり続けている。全身の筋肉が、激しくけいれんする。皮膚が、波打つ。菊はノゾムの腕にしがみついたまま、息を荒げた。変身が、始まろうとしている。菊はノゾムの優しい声に、耳を傾けた。痛みが、激しい。でも、ノゾムが「大丈夫だ」と言ってくれている。菊は小さく息を吐いた。

体が、熱くなり続けている。全身の筋肉が、けいれんする。皮膚が、波打つ。菊はノゾムの胸に顔を埋めたまま、痛みに耐えた。ノゾムは菊の小さな体を、優しく抱きしめ続けている。菊はノゾムの温かさを感じながら、激しい痛みとけいれんに耐えた。

全身の筋肉が激しくけいれんし、皮膚が波打つ中、菊はノゾムの腕にしがみついたまま、息を荒げていた。体が熱い。痛みが、全身を貫く。ノゾムは菊の小さな体を優しく抱きしめ続け、「大丈夫だ」と繰り返していた。ハルトはリビングの隅で、固唾を飲んで見守っている。

そのとき、菊の喉から、抑えきれない悲鳴が漏れた。

「っあああああっ……!」

悲鳴が上がった瞬間、菊の全身が、爆発的に一瞬で変化した。体が、異常に豊満で若い女性の姿に膨れ上がる。胸が、異常に巨大に膨らみ、尻と太ももがムチムチと異常に厚みを増し、腕と脚が長く滑らかになる。肌が、ぴんと張り、黒い長い髪が一瞬で伸びる。体が、クリスよりもさらに豊満で妖艶な姿に、一瞬で変わった。骨が軋む音が、ギリギリ……と大きく響く。肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。

ハルトは腰を抜かして床に座り込んだ。

「ば、婆ちゃん……!?」

ノゾムも一瞬驚いて手を離しかけたが、すぐに菊のそばに戻り、彼女の小さな体を支え続けた。悲鳴が上がってから、ほんの一瞬で体が豊満な若い女性になり、そして間髪置かずに、元の小さな老婆の体に戻った。骨が縮む音が、ギリギリ……と響く。肉が萎む音が、ミチミチ……と聞こえる。菊は体を震わせ、ノゾムの腕にしがみついた。

「痛い……痛い……」

菊は小さく呟いた。全身が痛い。骨と肉が、激しく動いた余韻が残っている。ノゾムは菊の小さな手を握り、「大丈夫だ」と繰り返した。ハルトは床に座ったまま、目を丸くしている。

次に、左胸が爆発的に膨らみ始めた。布団の中で脱がされた菊の体が、ソファに横たわったまま、左の胸が異常に大きくふくらんでいく。肉が急速に充填される音が、ミチミチ……と響く。左の胸が、異常に巨大になり、右の胸も同じように爆発的に膨らむ。両方の胸が、異常に大きくなったあと、すぐに元の小さな胸に戻っていく。骨が軋む音と肉が動く音が、ずっと続いている。

菊がうめき声を上げると、今度は両脚がムチムチと豊満なものに変わり始めた。肉が急速に付き、太ももとふくらが異常に厚く長くなっていく。尻が、爆発的に膨らむ。菊の小さな体が、跳ねるように浮き上がる。骨が軋む音が、ギリギリ……と続き、肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。両脚と尻が異常に豊満になったあと、すぐに元の小さな体に戻る。菊は体をよじりながら、ノゾムに懇願した。

「ノゾムさん……見ていて……お願い……」

ノゾムは菊の小さな手を強く握り、うなずいた。

「見てる……ずっと見てるよ」

ノゾムの声が、優しく響いた。菊は少し安心したような顔をしたが、すぐに痛みに顔を歪めた。

次に、左腕がグキグキと異常に伸び始めた。骨が、3倍近くの長さに引き伸ばされる音が、グキグキ……と大きく響く。肉が、異常に長く伸びていく。左腕が、クリスの長さを超えて異常に長くなったあと、ゆっくりとクリスの長さに落ち着く。右腕も、同じようにグキグキと伸びていく。両腕が、長く滑らかな若い女性の腕になったあと、再度胸が爆発的に膨らみ始める。左の胸が異常に大きくふくらみ、縮みかけたあと、また爆発的に膨らむ。肉が動く音が、ミチミチ……と続き、骨が軋む音が、ギリギリ……と響く。

顔が、グニグニと激しく動き始めた。皮膚が、老いたり若返ったりを繰り返す。しわが現れたり消えたりする。白髪が、黒く染まったり白く戻ったりする。顔の骨が、グニグニと動く音が聞こえる。声も、菊の老いたうめき声とクリスの妖艶な声の間を行き来する。

「痛い……っ……あ……ん……」

声が交互に変わる。足も背中も、ゆっくりと伸びていく。全体的に、クリスの姿に近づいていく。骨が軋む音と肉が動く音が、ずっと続いている。菊はノゾムの手にしがみついたまま、体を震わせた。痛みが激しい。でも、ノゾムがそばにいてくれる。菊は少しずつ、クリスに近づいていくのを感じた。

落ち着きかけたと思った瞬間、今度は全体が菊に戻り始めた。背丈が縮み、胸が萎み、腕と脚が短くなり、顔にしわが戻る。骨が縮む音が、ギリギリ……と続き、肉が萎む音が、ミチミチ……と聞こえる。菊は体をよじりながら、呟いた。

「呪いが激しい……もう耐えられない……」

声が、老いたうめき声になっている。菊はノゾムにすがりついた。痛みが、激しい。体が、菊とクリスの間を行き来し始めている。胸が、また爆発的に膨らみ始めたのをきっかけに、今度は全身がクリスに近づき始めた。全身が、菊とクリスの状態を激しく行き来し始める。骨が軋む音と肉が動く音が、止まらなくなるかと思った。

そのとき、ノゾムが菊(クリス)の唇に、優しくキスをした。

ノゾムの温かい唇が、菊の唇に触れた瞬間、全身が爆発的に膨らんだ。体が、一瞬で異常に豊満で若い女性の姿に変わる。胸が、異常に巨大に膨らみ、尻と太ももがムチムチと異常に厚みを増し、腕と脚が長く滑らかになる。骨が軋む音が、ギリギリ……と大きく響き、肉が動く音が、ミチミチ……と全身から聞こえる。体が、少しの間、その豊満な姿のまま止まったあと、ゆっくりとクリスの体に落ち着いていった。

全身が、激しく動いた余韻で震えている。骨が軋む音と肉が動く音が、ようやく静かになった。クリスはノゾムの腕の中で、息を荒げた。巨大な胸が、重くのしかかる。ムチムチとした腰と脚。長い黒髪。体が、クリスとして安定している。痛みはまだ残っているが、激しい変身のあと、奇妙な活力が体を包んでいる。

クリスはノゾムの胸に顔を埋め、感謝の涙を流した。

「ありがとう……ノゾムさん……」

声が、妖艶で甘い。涙が、頰を伝う。ノゾムはクリスの体を優しく抱きしめ、静かに言った。

「どっちの君も、君だよ」

ハルトは床に座ったまま、目を丸くしたまま固まっていた。リビングは静かになった。骨が軋む音も、肉が動く音も、もう聞こえない。クリスはノゾムの腕の中で、ゆっくりと息を整えた。体が、若さで満ちている。ノゾムへの想いが、胸の奥で熱く疼いている。呪いは、ノゾムの愛で溶かされた。クリスはノゾムの胸に顔を埋めたまま、静かに涙を流し続けた。

変身が完全に落ち着いたあと、クリスはノゾムの腕の中でゆっくりと体を起こした。巨大な胸が重く、ムチムチとした腰と脚が、布団の上で安定している。長い黒髪が肩に落ち、肌は若々しく滑らかだ。全身に、激しい変身の余韻が残っているが、痛みはもうほとんどない。骨が軋む音も、肉が動く音も、完全に消えていた。

クリスは自分の体を、両手で丁寧に触れた。左の胸、右の胸、太もも、尻……すべてが、クリスの姿のまま、変わらない。昨日まで、何度も繰り返していた「元に戻る」感覚が、完全に消えている。体が、熱く安定している。クリスは小さく息を吐き、ノゾムの顔を見上げた。

「もう……戻らない」

声が、妖艶で甘い。ノゾムはクリスの体を優しく抱きしめ、静かに頷いた。

「戻らないよ。もう大丈夫だ」

ハルトは床に座ったまま、目を丸くしたまま固まっていたが、徐々に現実を受け入れ始めていた。クリスはハルトを見て、優しく微笑んだ。

「ハルト……私、クリスよ。婆ちゃんは、もういない」

ハルトはしばらく言葉を失っていたが、やがて小さく呟いた。

「……姉さん、みたいだな」

その言葉に、クリスは胸が熱くなった。ハルトにとって、クリスはこれから「姉」になる。88歳の老婆だった自分が、22歳の妖艶な女性として、ハルトの姉として生きていく。クリスはハルトの肩を、優しく叩いた。

「これからは、よろしくね」

ノゾムはクリスの手を握ったまま、静かに言った。

「僕も……一緒にいるよ。クリスさんで、いい」

ノゾムの言葉に、クリスは再び涙を浮かべた。呪いは、ノゾムの愛で完全に溶かされた。真の愛で両方の姿を受け入れられたことで、呪いの力はもう、菊を苦しめることはない。クリスはノゾムの胸に顔を埋め、静かに涙を流した。

その日から、クリスは菊の姿に戻ることはなくなった。

家の中は、少しずつ変わっていった。クリスはハルトの「姉」として、優しく家事を手伝い、ノゾムと一緒に家を支えていくようになった。ノゾムはクリスと恋人になり、やがて同棲するようになった。夜、クリスはノゾムの隣で眠り、朝、ノゾムの温かい声で目覚める。巨大な胸が重く、ムチムチとした体が、ノゾムの腕に包まれる。クリスは毎朝、ノゾムの胸に顔を埋めて、「ありがとう」と小さく呟いた。

ハルトは最初、戸惑っていたが、徐々にクリスを「姉」として受け入れていった。大学から帰ってきたハルトに、クリスが優しく「おかえり」と声をかける。ハルトは照れくさそうに「ただいま、姉さん」と返す。夕食の時間になると、三人でテーブルを囲み、笑いながら食事をした。ノゾムはクリスの隣に座り、時々クリスの手をそっと握る。クリスはそれを、静かに受け止めた。

呪いのことは、もう誰にも話さなかった。ノゾムだけが、すべてを知っている。クリスはノゾムにだけ、時々、昔のことを話した。88歳の老婆だった頃の寂しさ。ノゾムへの想いが、呪いを刺激したこと。そして、ノゾムの愛が、すべてを救ってくれたこと。ノゾムはいつも、優しく耳を傾け、クリスの手を握ってくれた。

「もう、戻らないよ。君は、君のままでいい」

ノゾムの言葉に、クリスは微笑んだ。巨大な胸が、ノゾムの胸に寄り添う。ムチムチとした体が、ノゾムの温かさに包まれる。クリスはノゾムの唇に、優しくキスをした。

「ありがとう、ノゾムさん」

家の中は、穏やかで温かい空気に包まれていた。クリスはハルトの「姉」として、ノゾムの恋人として、そして一人の女性として、新しい人生を歩み始めていた。呪いは、もう二度と彼女を苦しめることはない。クリスは毎朝、鏡に映る自分の若い姿を見て、静かに微笑んだ。

「もう、寂しくない」

クリスはそう呟き、ノゾムの待つリビングに向かった。大きな胸が、優しく揺れる。ムチムチとした腰と脚が、床を踏みしめる。クリスはノゾムの元へ、幸せな笑顔で歩いていった。

(完)

投稿者: tefnen

pixiv上にAPまたはTSFの小説をアップロードしている者です。