その少女、美優はその日も普通の学校生活を送るため、
「いけない、遅刻遅刻!」
小さい体で町の人ごみの中をすり抜け、走っていく。
「すみません、すみませーん」
ぶつかる前に謝って行く美優。運動神経がよく、
「あーん、やっちゃった!すみませんでした!」
しかし、美優はすこし頭を下げただけですぐに走り始めた。
「お、おい!待て!」
相手の呼び止める声も聞かずに、走り去る美優。
「おはよー!」
「遅刻だ、八戸」
教室の扉を駄目元で元気良く開けた美優は、
「す、すみません、先生。でも電車が遅れてしまって」
「お前の通学は徒歩だけだろう!」
「寝坊しました」
「よろしい。まあまだ朝礼中だから、今回は許してやろう。
「ありがとうございます!」
美優は何もなかったかのように意気揚々と席に向かって行く。
「また、顔真っ赤になってるよ、みゆちゃん」
「う、うるさいな!」
「うるさいのはお前だぞ、八戸」
結子のつっこみに対してかなり慌てふためき、
「すみませんでした」
そして大人しく座ると、その後は押し黙った。
1時間目が終わると、即座に美優は愚痴をこぼした。
「たくもう、しつこいんだよ。龍崎のやつ」
龍崎というのは担任の教諭の名前である。
「まあ、ちょっと、厳しすぎかもね」
「ほんとだよ!1分くらい遅刻したからって…」
「大声も、出したけどね」
美優の顔がまた真っ赤になる。
「それは結子がおちょくるからじゃないの」
「私は見たまま言っただけだよ。
「うるさい!」
そこで、美優は周りの視線が自分に集まっていることに気づいた。
「な、なによ」
美優はその視線に言い返すように細々と声を出した。
「また、笑われちゃった、伍樹くんに」
「伍樹君だけ気にするんだね」
「し、仕方ないでしょ…」
「まあね」
2時間目が始まると、すぐに嫌なことは忘れてしまい、
ーー何…?どこ?ここ…
美優の目に見えている世界。どこか雲の中のような、
服も全て無くなり、美優は生まれたままの姿になっている。
ーー何…?
はっきりとしない視界の中で、
ーー私、どうなってるの?
「美優ちゃん」
そしてこれも何の前触れもなくかけられる言葉。それは、
「伍樹……くん?」
「きれいだよ、美優ちゃん」
伍樹は美優にすっと近づき、体を抱きしめた。
「伍樹くん…」
美優も抱きしめ返す。
「美優ちゃん」
「伍樹くん…えっ?なんだ結子か」
「そんなことより、起きて!」
美優はいつの間にか自分のカバンを抱きしめ、
「八戸さん。私の授業、
怒りと老い、
「え…。うそお」
夢の中の幸せと、現実の辛さのギャップに嘆く美優。
その日の夜。
「あの夢、なんだったんだろう?今まで見たこと無いような。
身長が140cmから160cmまで伸び、
「結子みたいなおっぱいが大きくて、背が高くて、
しかし、夢の中と現実の違いは、
「はぁ…まあ、仕方ないよね。私は、ちんちくりんだって事実は、
突然美優の体を襲った衝撃に、奇声をあげてしまう。
「なに…?今の…っっ!!?」
再びドクンッと衝撃が襲う。
「えっ…何よ!…うぐっ!!」
衝撃は止まることがなかった。
「体の中が…変に…」
その発生源がわからない熱は、とどまるところを知らないように、
「熱い、熱いよ!!」
そして、美優の体の中で何かが動き回っているかのように、
「私、私…うわあああ!!!!」
耐えきれなくなった美優が悲鳴を上げると、
「はぁ…ふぅ…何…今の…」
美優は精神を解放され、
「わ…私、大きくなっちゃった!」
美優を支配したのは困惑ではなく無上の喜びだった。
「これだったら、伍樹くんも……明日が楽しみ!」
これから起こる惨事など、今の美優に知るすべは無い。