環境呼応症候群 課金の子

俺の妹、按司千耶(あじ ちや)は、メタモルフォーゼ症候群にかかっている。100万人くらいに一人、この病気にかかっているらしい。日本に126人くらいいる計算になるが、今のところニュースで見た以外は別の症例に出会ったことはない。聞く話によると、自分のいる高度や移動スピードで体型が変わる奴もいるらしいのだが、そうすると千耶は特殊な例に入るのかもしれない。なぜなら千耶は……

「おっ、今月は課金していないのかな……?」
「したよ。ちょっとだけな」

兄に向かって生意気な口を叩く妹の体は、中学生くらいの大きさだ。今は。千耶はもう高校1年だから、小柄なほうである……今は。

「なんだよ兄貴、気持ち悪い顔して」

――喋らなければ美少女、というより普通に可愛い妹なのだが。赤い髪留めがチャームポイントの、長髪の少女。それで収まりがつくはずなのに、口が悪いのが玉にキズだ。

「なんでもねえよ」

――なんでもなくなかった。実のところ、オレは今日が楽しみで楽しみでたまらなかったのだ。

「んじゃ、もいっちょ課金して大人になっちゃいますかね~っと」
「おい、金の無駄遣いはやめとけよ」
「うっさい。ま、大きくなるのは明日でもいいかな」
「おう、そうしとけ」
――口が悪くても、俺になついてるのは昔から変わらないようだ。俺の言うことは素直になんでも聞く。……と、もうお分かりだろうが、千耶は『課金』で大きくなるのだ。どんなゲームでも、課金した額に応じて体が大きくなる。そして、もう一つの条件が、お小遣いをもらったとき、体は元に戻る……千耶の場合、小学生4年生くらいの体に。

この症候群にかかったのがその歳だったのかもしれない。その時期から、千耶の成長はパッタリと止まって、早熟な女子の成長に追い抜かれるかもしれないと思っていた俺との身長差が広がっていったからだ。さぞかし不便だったろうが、中学2年になって、小遣いに少し余裕が出たのか、自分がやっているゲームに課金したのだ。そのことを俺に自慢しながら。
そしたら、急に変な顔しはじめたから、失敗したのかと思えば、歳相応の体まで成長したじゃないか。びっくりした千耶は泣き始め、俺は必死になって泣き止ませようとした。

「ふふっ、それはさておき……」

おっと、声に出てしまった。俺、すごくキモい笑い方したな。でも、仕方ない。俺は、妹がやっているゲームのIDをひょんなことからゲットしたのだ。ハッキングとかしたわけではない。机の上に『千耶のID』と、紙に書いて置かれていたのだ。妹の可愛い字ではなく、親の丁寧な字でもない。外部の誰かが、俺に個人情報を漏らしてきたのだ。

――要するに、俺にアイツを成長させろと誰かが伝えてきた。そう思った俺は、好奇心にかられて、その情報を有効活用することにしたのだった。――そして、明日は月が変わる日、妹の小遣い日だ。今日成長させても、明日には元に戻るのだ。成長させすぎたとしても、妹なら笑って許してくれる……いや少しは怒るか。よし、コンビニで買ってきた課金カードを準備するとするか……

俺は、自分の机の引き出しに向かい、少し奥に入っていたカードを見つけ出して、ドキドキする心臓を鎮めながらタブレットを操作し、課金用サイトへアクセスした。途中手が震えて、結局10分程度かかってやっと正しいURLを入力できた。

――じゃあ、行くぞ。
俺は、扉を開けて廊下に出て、妹の部屋の扉をコンコンとゆっくり叩いた。やっぱり手が震えて、変な叩き方になってしまったが。

「おー、なんだよ、私のマンガでも読みたいの?」

ゲーム中だったのか、千耶がスマホを片手に持ちながら扉を開けた。あれ、心なしかさっきより小さくなっているような?いや、俺の錯覚だろう。小遣い日は明日なんだから。

「あー……そうだ、き、昨日新しいの買ってきてただろ……?」
緊張しすぎて思わず噛んでしまった。千耶は少し怪訝そうな顔をしたが――
「あー、あれね。兄貴も読んでたね」

なんとか、バレずにすんだ。
「あとさ、ここで読んでいってもいいか?」
「んー、私は別にいいけど、ゲームの音うるさいと思うぞ?」

妹の部屋でマンガを読むことは、日常茶飯事だった。自分の所有物を目に見えないところに持って行かれたくないのか、持ち出すことを禁止されたことはあるものの、ここで読むことを拒まれたことは一度もなかった。

「まあ、大丈夫だ」
「そう?なら、ゆっくり読んでってよ」
千耶は俺がいると安心するらしい。長居しても嫌な目をされたことがない。と、千耶は自分の椅子に座って、ゲームを再開した。

――ここからが、メインイベントだ。

俺は、ベッドに座った後マンガを広げるのを忘れ、タブレットのスリープを解除した。そして、妹の方に視線を向けながら、あらかじめ入力してあったコードを確定するボタンに、指を近づけていった。

「兄貴?なんかやっぱり変なこと考えてるだろ」
ドキッ!バレたか!とそこで指を引っ込めようとしたが、それとは反対に、驚いたせいで確定ボタンをポチッと押してしまった。ええい、もうどうにでもなってしまえ。

「い、いや?」
俺が今課金したのは五千円。千耶が上限と決めているらしい額と一緒だ。なけなしのバイト代よ、妹の体の糧となれ……そう念じた瞬間。

「な、なに……いつもの……アレが……どうしてっ!」
成長が始まったようだ。スカートからニョキッと脚が伸び、桃色のタンクトップが持ち上げられて、ヘソがちらっと見えるほどになった。ペッタンコだった胸にも、テントが張ったと思えば、全体が向くっと膨らんでBカップ程度の胸が出来上がった。

「うそぉっ……」
期せずして起こった成長に戸惑う千耶。当然だ。自分では課金していないのに、いつもの成長が起こったのだから。

「ハッ……あ、兄貴……!!」
完全にこっちのやっていることがバレた。こうなったら、もうどんどん課金してしまえ!

ノートパッドアプリにメモしてあったコードを早業でコピペし……と言うのは嘘で、成長の途中に無意識にコピペしていたらしく、俺はすぐに確定ボタンを押した。千耶はその指の動きを見て、不安をあらわにした。

「私、これ以上成長するの!?……んっ、きたぁっ……!!」
次の成長が始まった。俺の課金はさらに五千円。さっきの成長で中学3年くらいの体になっていたから、次は高校3年か?と思っていたら、千耶の成長は予想を上回っていた。

「ん、んんっ!!!」
Bカップの胸が、信じられないスピードでムギュギュギュッ!!とタンクトップを押し上げていく。C、Dとカウントする暇もなく、水風船のようにタプタプと揺れながら大きくなるそれは、俺のクラスの一番の爆乳をも5秒で追い抜かし、メロンサイズになっていく。脚の方も長くなるとともにムチムチと脂肪を蓄えていき、伸縮性がなく弱い生地だったスカートをビリビリと破っていく。胸が重いのか、千耶は伸びていく腕で乳房を支えた。

「……くぅっ、よ、よくも私をこんな……に……」
成長が終わって、俺に怒りをぶつけてきた妹の表情が固まる。俺はもう、コードを入力し終わり、確定ボタンに指を触れていたのだ。

「や、やめてっ……!」
腕で胸を支えながら立ち上がり、俺のタブレットを取り上げようとする千耶。160cmの身長は、俺よりちょっと低いだけになっていた。こんなに背が高い妹を見たことはなかったし……

「んひゃぁっ!!」
さらなる成長が始まって、千耶がバランスを崩して倒れなければ、普通にタブレットを持っていかれただろう。

「ひぅっ……!」
千耶の豊かな乳房が、ドユンと音を立てて床に落ちる。タンクトップがよほど苦しいのか、千耶はなんとか脱ごうとした。だが、肩の部分が外れただけだ。あとは、今やスイカサイズまで大きくなったおっぱいの弾性力で破れるのを待つしか無かった。

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「んぎゅっ……」
スカートが破れたせいで丸見えになっていたお尻も、すでに元の体の数倍くらいに膨れ上がって、素晴らしい曲線美を作り上げていた。

「おっもーい……」
そのすらっと長い腕に不釣り合いな、もはや爆乳の域を超えそうなスイカおっぱいを、何とか持ち上げる千耶。グラビア雑誌でも見たことがないほどデカイそれが、俺の目の前でタップンタップンと揺れていた。そして、妹のかわいさは美しさに昇華し、俺が見た中で最高の美少女がそこにいた。身長は、俺より頭一つ高いくらいだろうか。

「あ、に、きぃぃいいいっ!!!!」
怒り心頭とはこのことか。千耶の顔は真っ赤に染まり、俺を睨む瞳は、その鋭さだけで人を殺せそうだ。ドシンドシンと重い足音で近づいてくる妹は……

「あ、あっ、きゃあっ!」

揺れまくる乳房に体重バランスを崩され、またもや転んで……今度はベッドの上にいる俺の上に倒れた。

「うぎょごへぇっ!!」
おっぱい重っ!!!!骨が数本折れるかと思うほどの衝撃だぁっ!――重いスイカ二個が無慈悲に俺の体にのしかかったのだ。逆に妹の方は大丈夫なんだろうか……?

「千耶、大丈夫……ぶふぅっ!!」
千耶の顔を確認する前に、その下に潰れる肌色の塊に目を奪われる。血行がよく、暖かく俺を包み込むそれは、衝撃の余波かムニムニと形を変える。

――この感覚、素晴らしすぎる……

「あいったたた……」
千耶もやっぱり痛かったようで。

「すげえおっぱいだな……」
「はぁっ!?あのさ、これから一ヶ月、この姿で過ごさなきゃいけなくなったの!わかる!?」
――何だって?

「嘘つくなよ、小遣い日は明日だろ」
「……前借りしたんだよ!!」
妹が少し恥ずかしそうに、でも怒りは冷めないまま大声を上げる。――え、ちょっと待って、っていうことは……本当にこの爆乳タプンタプンで高校行かせる羽目に……?

「ご、ごめんなさいぃっ!!!!」
「ごめんなさいですむかぁぁっ!!!」
おっぱい越しに、妹の大声が俺の体全体に響き渡る。……どうしよう。

結局、俺が千耶に小遣いをやることで、体はもとに戻った。ただし、ダメ元でIDとパスワードを入力してみたら、それを変えてはいないみたいで、すんなりとログインできた。

――これって、もしかして……

「あ、兄貴……今度は前借りとかしないから……」と朝食の場で言われて、思いっきり牛乳を吹き出すことになったのは次の月の小遣い日前だった。

――へへっ、冗談だろ……

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投稿者: tefnen

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