とある世界~化学~

人の体が急成長するとか、巨大化するとか、そういうことは普通起こりえない。人間の体も化学物質でできている。細胞の分裂だってたくさんの複雑な化学反応の結果であって、37兆個の細胞を、綺麗な人体の形を、いや、生物の機能を保ったまま分裂させることは不可能だ。

そこで、この手の性癖では、最初に物理法則を否定しなければいけない。『こんなことはあり得ない』とか、『現実だったらこんなことにならない』とか、そういうツッコミは無粋なわけだ。

といっても、あまりにも現実味がないのも面白くない。そんなわけで、『どうして変身するのか』という理由は、それなりに重要になってくる。

まずは化学的な理由から行こう。ここからは、キーボードで作った世界の話だ。

ここは薄暗い地下室。真ん中に金属製の作業台のような机が置かれている。重そうな扉が開くと、大男が入ってきた。腕には、身寄りがないのだろう、ボロボロの服を着た痩せた小さな女の子が抱えられている。その後ろからは、意地悪そうな顔をした小男が続いてきた。
大男は、乱暴に女の子をおろした。

「何するんだよっ!いきなりこんな地下室に……」
「うるせえ!つべこべ言うと犬の餌にしてやるぞ!」

大男に女の子が気圧されている間に、小男は液体の薬が入った瓶を、いくつか机の上に並べた。
「旦那、準備ができましたぜ」

大男は、女の子を天井から吊るされた鎖につなぎ、逃げられないようにした。

「はなせ!はなせよ!」
「黙れ!うまく行けばお前はこれから俺たちの商品になるんだよ!サダル、さっさと薬をよこせ!」
「言われなくても、ほれ、ニデルの旦那」

サダルと呼ばれた小男は、大男、ニデルに赤い薬の瓶を渡した。
「なんだよそれ!」
「いいから、飲め!」

ニデルは女の子の鼻をつまむと、薬の瓶の口を、女の子の口に突っ込んで中身を流し入れた。
「よし、飲んだな」
「間違いがなければ、成長ホルモンが分泌され、体の成長が起こるはず!」
「な、なに言って……体が、熱いっ」

少女の体全体が、ゴキゴキ、グキグキと音を立てる。そして、皮膚が波が立ったように変形する。そして、サダルの言ったとおり、少女の手足はゆっくりと伸び始めた。
「おおっ!最初の実験は成功だ!」

短くなった服の下から、グッ、グッと足が飛び出し、色白な肌が露出される。20cmくらい身長が伸びたところで、薬の効果は終わる。

「サダル、お前と同じくらいの背まで成長したが……物足りねえなぁ」少女の体は、全体的にスラッと伸びたものの、痩せ気味なのは変わらなかった。胸の膨らみなどは少ししかない。

「心配なさらず。この薬を飲ませてみてくだせえ」
「おう」ニデルは、サダルから受け取った緑の薬を、少女に無理やり飲ませる。

「これは女性ホルモンの分泌を促す薬。つまり……」
「む、胸が痛いぃっ……!!」もがき苦しむ少女の胸が、風船に空気をいれるように、むく、むく、と膨らんだ。むき出しになった足も、ムギュッ、ムギュッと太くなる。
「ホルモンを受け取った乳腺や、皮下脂肪が発達して、女の体らしくなる……んですが……うむ、効果が薄い……」

まだ、学生のそれにも及ばないような痩せ型の少女。

「経口摂取ではだめか……ならば血管に直接……」サダルは、注射器を取り出して緑の薬を中に入れた。そして少女の腕を取ると、一気に注射した。

「やだぁぁっ!!!」途端に、少女の体が痙攣し始める。そして、今度は先程よりも確実に大きく、どくどくと脈を打つように、乳房が成長をしていく。一回り、また一回りと大きくなるそれは、服を引っ張り、元々あった裂け目から引き裂いていく。足の方もムチ、ムチと震えながら太さを増す。少し見えていたあばらも、皮下脂肪に覆われて見えづらくなっていく。

「おお、これは上物だぜ」ニデルが、ふるふると揺れる豊かな膨らみを揉む。柔らかい感触の奥に、心臓の鼓動がドクンドクンと伝わってくる。大男のニデルでも、両手で覆えなくなるほどの大きさになって、成長はやっと止んだ。
「この身長にしては少し、でかすぎるかもしれねえが……これはこれでいいものになりそうだな。どれ、最初に俺が使ってみるか……」
「すまねえ、旦那。副作用で、この薬を飲んだあと一時間は、ヤッた相手が女になるんだよ。ほら、新しい給仕の女がいただろ、あれがそうだ」
「なんだと、仕方ねえな……しかし、お前もすげえもの作るなぁ、この胸だけで連れ込んできたときのこいつの全身より重い感じがするぜ」

「へへ、ま、あとで楽しんでくだせえ。俺は片付けをしてくる」サデルは、部屋を出ていった。

「ご、ご主人様……そろそろ下ろしてください……」
「お、おう、そうだな……」口調が変わり、従順になった少女を見て、ニデルは鎖を解いた。「性格まで変わるたあ、とんでもねえな」

「ふふ、ニデルさま……」少女は降ろされると、ニデルにすり寄った。「私と遊びませんか……?」
「へへ、いいぜ……少しだけなら副作用とやらも大丈夫だよな」

ニデルは、少女を床に寝かせ、その上に覆いかぶさった。
「じゃあ、いくぞ……」
「ニデル……さま……」

だが、その行為に達した瞬間、少女の体がまたグキグキと言い始めた。
「まだ大きくなるのかよ……お、おい……うそだろ……」
ニデルの体も、同じように音を立て始めたのだった。そして、少女の体がさらに大きくなり始めたと同時に、ニデルの体は小さくなり始めた。

「あっははは、かかったな、マヌケ野郎!セーエキに触れると、また大きくなるとは思ってなかったけどな!」
「や、やめろぉっ!」

サデルが言っていた通り、ニデルは女になっていた。少女の身長はさらに伸び、胸も尻もググッと膨らむ。まるで、少女がニデルから力を吸い取るように、少女とニデルの力関係は逆転していった。

「この体があれば、この街、いや国一番の娼婦になれる……」
「なに、言って……」
「ニデル、だったよな……いや、だったかしら……?あなたは私の子分よ」

ニデルはもはや、多少胸が大きいくらいの若い女になっていた。少女は、緑の薬を注射器に入れると、ニヤッと笑って扉の前に行った。

「あのサデルとかいうのも、私の子分……それも、特大サイズの子にしてあげる……」

「おーい、戻ったぞ……」
扉が開いた瞬間、サデルの右腕に薬が注射された。

「うぎゃあああああ!!!」
夜の街に、男の叫び声が響いた。

……とばかりに、化学薬品を使うと、大体はホルモンとか、人体の仕組みを使うことになる。まあ、そんな説明抜きに薬を使ったから成長した、だけでもいいのだが。
成長や、変化が起こるタイミングは、薬を飲んだ直後として、分かりやすくなっていることもあれば、遅効性で、『今更になって、なんで……?』という風に、薬を飲むタイミングと無関係にもできる。
変身させたあとでもう一回飲ませることで、同じような効果がもう一回起きることを期待できたりもする。あと、『副作用』という言葉で何が起こるか予測不能にすることも、また可能だ。

投稿者: tefnen

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