環境呼応症候群 酔いの子

「本日はお日柄もよく……」
「そんなことはどうでもいいから!乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
「……乾杯!」

今日は月に1回の飲み会。課の皆参加する、近くの居酒屋でやるものだ。別に、強制参加とかではないけれども、腹を割って愚痴を言い合ったりする、ストレス発散のいい機会になっているから、周知すれば皆こぞってやってくるのだ。ただ僕はというと、新入社員として、これまでは忙しすぎて参加を見送っていたけれど、やっと今回都合を合わせることができた。ビールをぐいっと一口飲んだ後、グループリーダーの高井さんが話しかけてきた。

「やっぱり最初はビールだよなー!なあ新人!」
「ですねー!」

本当は焼酎の方が好きだけど、話を合わせておこう。

「お、すごい……織田さん、あんなに小さいのに」
「織田か……あいつにはちょっとした秘密があってな」

織田さん、というのは、課にいる唯一の女性社員で、おまけに女性としても背も低いから、まるで課に子供が迷い込んでいるかのような光景が毎日見られる。といっても、もう打ち解けたし、その光景にも慣れてきた。それが、今日また驚かされてしまった。

「ぷはっ!これこれ!やっぱりこれよね!」

もうジョッキが空いた。1分も経ってないのに。遅目の一気飲みレベルだ。

「大丈夫なんですか?あんなに飲ませて」
「大丈夫だって!まあ、間違いなく潰れるだろうけど」

高井さん、それはどっちなんですか。

「そういえば山崎は初めてなんだよな。あれはな、見ものだぞ」
「へ?織田さんがですか?」

山崎とは僕のことだ。織田さんが見ものって、今でも結構見ものなんですが。

「いいか?胸のあたり見てろよ」
「それってセクハラじゃ……」
「大丈夫だって、もう酔っ払ってて今の記憶なんて残らないし」
「は、はぁ……」

言われるがままに織田さんのペッタンコ……ゲフンゲフン、胸を見た。すると、何か膨らんでいるようにみえる。いやいや、女性なら当然多少の膨らみはあるだろうけど、織田さんは……しかも、だんだん大きくなってる?シャツのボタンも、左右から引っ張られている。これは……

「どうだ」
「うわぁっ!」

あまりにも集中していたせいか、高井さんの一言でかなり驚いた。高井さんも一瞬目を丸くした。

「……ははははっ!!びっくりしただろ?」
「いや、どちらにもびっくりしました」
「まだまだこれからだぞ、飲みながら見てな」

机においてあるまだキンキンに冷えているビールを、ゴクリと飲んだ。だけど、目の前で起きていることを見ていたせいで、味が全くわからない。続けざまにゴクゴクと飲んだけど。だって、織田さんのシャツから谷間が覗くくらい、胸が大きくなっていたからだ。

「な、なぜなんだ……」
「それは、よくわからないが、『メタモルフォーゼ症候群』ってやつらしいぞ?酔えば酔うほど、胸だけじゃなく体全体も大きくなる。そういうものらしい」
「体全体?」

確かに、織田さんとその隣にいる先輩社員の背丈の差が縮んでいる気がする。肩幅も大きくなっているかもしれない。そんな織田さんは、グビグビと飲み続けている。シャツの方はもう限界で、喋り声で音は聞こえないが、ところどころが裂けはじめ、胸肉がプルンと出ている。

「でもな、本人に聞くと、冗談のように笑い飛ばされてさ。全く覚えてないらしい」
「全く、ですか……あ、ビールお願いします」
「俺もお願い」
「あ、私もあと3杯ー!」

通りかかった店員にお代りを頼む。織田さんは飲み干すと本能的に頼んでいるが、もう5杯は飲んでいる。元々の彼女だったら、もう倒れていても仕方ないだろうけど、いつの間にか男性社員を追い抜かして大きくなっているその体では、まだ足りないのだろう。

「ところで、いつわかったんですか、その事」
「もちろん織田が初めて飲み会に来た時さ。最初は山崎みたいに、酒を大量に飲む織田を心配したんだ。そしたらさ、どんどんでかくなってくじゃないの!どれだけでかくなるかは、まあお楽しみだな」
「まさか、それを見るために参加している人も?」
「もちろん。そのことがあってから、参加者が急増したし。ただ、口止めはしてあるはずだけどな」

僕も今日まで知らなかったのは、その口止めがあったせいだろう。そんなとき、ガラスがキーンッとなる音が響いた。見ると、織田さんのシャツのボタンが1つ外れて、そこからムニュッとおっぱいがでている。

「そろそろ、来るぞ」
「来るって、何が?」
「だいぶ乗って来た!一気飲み行くよ!」

織田さんが立ち上がって大声を上げると、高井さんを含めた皆が歓声を上げる。学生の集まりじゃないのに。織田さんは、ビールを一杯、いや二杯、それにとどまらず三杯と、1分以内に全部飲んでしまった。すると、織田さんの体が、グイグイと大きくなり、すでにシャツからこぼれ落ちていた乳房が、ボンッ!バインッ!と、数十倍の大きさまで爆発的に大きくなった。その重さで、織田さんが前にのめって倒れてしまうと、バランスボールほどの胸はグラスジョッキもつまみの皿も全て破壊して、テーブルの上を専有した。これは高く付くぞ、という思考より前に、なんて大きくて柔らかそうなおっぱいなんだ……というものの方が先に頭に浮かんだのは、多分酔いのせいだ。

「う、動けないー。なんでー?」
「織田さん、もっと飲む?」
「あ、ありがとー」

織田さんの口に先輩社員が日本酒を注ぐ。少しこぼれつつも、織田さんの中に入っていった日本酒は、さらに織田さんを大きくしていく。身長は2mを超えた。おっぱいはテーブルの上からはみ出るほどになり、前にいた課長の体に何もしないでも触れるほどになった。

「もっと、もっとー……」

まだ酒を欲している織田さんは、ポフンと頭を胸に乗せ、そのまま寝てしまった。潰れたな。

「山崎、せっかくだから触ってみたらどうだ」
「お、新入社員も一緒に体感してみるか」
「え?」

それって、いいのか?と思って躊躇する僕の手を、高井さんが掴んだ。

「大丈夫。誰も気にしないから。ほら」

そして、僕の手は、目の前に鎮座する肌色の塊に押し付けられ……なんだこの感触……すごく……暖かくて、包み込まれるような……

「最高だろ……?」

高井さんの声が聞こえたような気がしたが、関係ない。僕はその感触を無我夢中で、全身で感じようとしていた。僕は胸に飛び込んだ。周りから拍手が聞こえるような気がする。そんなことはどうだっていい。トクン、トクンという織田さんの心臓の脈拍を感じ、胎内にいるような感覚すら覚えた。柔らかくて、暖かくて……このまま、寝てしまいたい……

「お客さん!終点ですよ!」
「えっ!?」

目が覚めた。ここは、どこだ。電車の中?服は着てる、でも着た記憶なんて無い。

「車庫に入りますから、降りてください」
「あ、はい……」

不思議と酔った感覚はない。そんなに酒を飲んでいないのに、気を失ったのは何か毒ガスでも吸わされたせいなのかもしれない。いやいや、まさか。

電車を出ると、名前だけは知っている遠くの街の名前があった。時計を見ると、もう帰れないことがすぐに分かった。明日が土曜日でよかった。

次の出社日、高井さんに打ち明けると、大声で笑われた。

「がはは、そんな所まで行ったのか!」
「ええ、なぜか記憶もなくて……」
「おっぱいに飛びかかってたもんな、椅子からさ」

僕の顔がすごく熱くなっていくのを感じた。そんなことをしたのか、僕は。

「ま、俺も同じことしたけどな。全然飲んでないのに倒れて」

もしかしたら、あのおっぱいには魔法の効果でもあるのかもしれない。まさに魔乳だ……

感染エボリューション 9話

「んっ……朝か……」

美優は、窓の外から聞こえる小鳥のさえずり……ではなくカラスの鳴き声で、ベッドから身を起こした。拉致され、なんとか戻ってきた昨日までのことが、まるで夢であったかのように感じられた。それが現実であったということの証拠は、何一つ無かったのだ。

「朝ごはん食べて……学校いこ……」

しかし、その声にはいつもの元気らしさは無い。沢山の出来事に翻弄され、体力が回復しきっていなかった。重い足取りで、居間へと向かっていくのだった。

「おはよう……あれ?」

学校についた美優は、始業時間ぎりぎりであるのに、伍樹の姿がないのに気づいた。結子は、心配そうな目で空いた席を見つめている。それでも、美優が入ってきて教室がざわつくと、やっと美優の方に目を移し、ニコッと微笑んだ。美優も微笑み返すと、自分の席へと歩いて行く。

「おはよ……」
「おはよう。美優ちゃん、元に戻れたんだね……」
「あ、うん……」

美優は昨夜までに起こったことを打ち明けたかった。しかしそれは、結子を巻き込むことになるのではないかと、その時はためらってしまった。そうこうするうちに、担任の龍崎が教室に入ってきた。

「今日もいい朝だな!出席を取るぞ!」

龍崎の目が、小さな体に戻っている美優に向けられているのを、クラスの誰もが感じ取った。

「ふふふ、じゃあ行くぞ!!青……きぐぅっ……!!」
「僕の名前は青器具じゃないです……」

教室中から笑い声が起きるが、それを結子が制した。

「ちょっと待って、先生変じゃない!?」
「本当だ、何が起こってるの!?」
「悪いものでも食べて当たったのか!?」

龍崎は身を抱えてうずくまってしまった。が、次の瞬間、その頭を覆っている黒い髪の毛がバサァッっと伸びた。

「く、く……苦しいっ!!うがぁっ!!」

今度は逆に胸を前に突き出すようにして痛みを堪える教諭。来ていたジャージが破れ、たくましく鍛えられた胸筋が強調されたのもつかの間、その先にボロンっと突起が現れた。

「いや、やらしい……」
「じゃなくて、先生を保健室に連れて……」
「うああああ!!!」

教室どころか、廊下にまで響き渡る声を出すとともに、教諭の胸の筋肉はゴリッ、ゴリッという音とともに消え去ってしまった。一瞬間を置いて、別の何かが胸から飛び出してきた。

「まさか、あれって……」
「おっぱい、だよね……」

ゴリゴリと萎縮していく胴の上で、その膨らみはブルンブルンと揺れながら前に突き出ていく。そして、破れたジャージからは深い谷間が形成されていくのが見て取れた。何も変化は胸だけではない。ゴツゴツとした顔立ちは鳴りを潜め、面影は残しつつも龍崎の顔は女性そのもののものになっていた。尻は後ろにプリっとでて、体全体の萎縮でぶかぶかになってしまったジャージが引っかかり、ずり落ちないほどの大きさを持つほどだ。

「ちょ、ちょっと、先生が……」
「女の人になってる!」
「しかもかなりデカイぞ!ふがっ!」

デリカシーを知らない男子生徒が女子生徒に殴られる音がしたと同時に、龍崎の変身も終わった。

「せ、先生?大丈夫?」
「……大丈夫?何が?バカなこと言ってないで、座りなさい」
「「えっ!?」」

龍崎は、何もなかったかのようにケロッとした顔で、心配して近寄った生徒を諌めた。

「なになに、何なのよ。みんなしてどうしたの?」
「い、いえ……先生は、男……ですよね?」

同じ生徒が尋ねる。当然、肯定されるはずだった。しかし、

「……あなた、放課後職員室に来なさい。お灸をすえてあげる。分かったら、席に戻りなさい」
「は、はぁ……」

ドスの利いた声で、というより殺気じみた低い声で、叱咤されてしまう。何もかもわけが分からず、クラスにいたほぼ全員が、困惑の表情を浮かべていた。残りは居眠りか、ケータイをいじっているだけだ。

「ふふふふっ、いい表情ねぇ……八戸美優の、クラスメイトさん達……」

突然、唐突に廊下から入ってくるのは、豊満な体型の、キツキツの白衣を何とか羽織っている女性だった。美優には見覚えがあった。というより、忘れ用としても忘れられない顔。つい昨日逃げ出してきたばかりの研究所の所員、二本木頼子だった。体にはチューブが繋がれ、常に何かが吸いだされていた。

「だ、誰?あなたたち、勝手に……」
「寝てなさい」

自分を押し止めようとした龍崎に、二本木はスタンガンを容赦なくかました。そして、生徒の方に振り向くと、研究員らしい説明口調で語りだした。

「先生には、女性化する薬、いいえ。ウィルスを飲んでもらいました。効果こそ違いますが、そこにいる、八戸美優さんが体の中に持っているウィルスと基本的には同じです。そして、私達はウィルスを殺す抗体を持っています……」
「じゃあ、早く戻してあげてください!」
「……話は最後まで聞いてください。一度ウィルスに感染した人間は、研究所で手術を施さないと元には戻せません。先生はそれで直せますが、美優さんに限っては、私達でも手の施しようがありませんでした。もし身柄をお渡しいただけないと、このままウィルスは際限なく広がっていってしまいます」

美優は、二本木が事実と全く異なったことを言っているのに気づいた。昨日、二本木は美優を治療するどころか実験体にし、ウィルスの効果を測ったではないか。彼女は反論しようと席を立とうとした。その時だった。

(フエル……)
《ドクンッ!!》
「きゃあっ……!!!」
「おや、ウィルスの症状がどれだけ苦しいことなのか自分で見せてくれるらしいですよ」

あの衝撃が再び彼女を襲った。机に押し当てた小さな掌がグニグニと形を変え始めていた。

「み、みんな……っ!……うぐっ……!」

その一言ごとに、体の至る部分が成長し始め、服がギチギチと悲鳴を上げる。特に胸の部分はボタンをブチッと一気に吹き飛ばし、一気に爆乳のレベルに達していた。

「危ないから……!逃げてぇっ……!!」

服を破り成長し続ける美優をみて、他の生徒達は何かの化け物を想起したのだろう、悲鳴を上げパニックになりながら教室から出て行った。

「あらあら、感染しにくくなっちゃうじゃないの」
「あなた達は、何が望みなんですか!?」
「結子……っ」

元の体積の何倍にも成長する体全部からくる痛みに耐えながら、美優は結子が一人残ったことに涙を覚えた。結子もそれを見たのか、美優に頷いた。

「大丈夫、私がついてるから」
「結子……!ひゃ……っ」
「美優ちゃん!?」

美優の変身の様子がおかしかった。胸が大きくなるのはいつものことだが、今度は腹部が膨らみ始め、いつのまにか三つ子を孕んだ臨月の妊婦のようになっていた。しかも、まだ中から蹴られるようにボンッボンッと揺れながら膨らみ続けている。

「お、おなか……爆発……しちゃうっ!!」
「ふふっ、いいざまね……!」
「み、美優ちゃんに何を!!」
「私の研究所をオジャンにしてくれた報いよ。スポンサーが社会的地位を失って、なにもかもできなくなった。それで、何もかも、むちゃくちゃにしてやろうってわけ。危険な薬品もたくさん使ってね……でも、今の変身は私のせいでもなんでもない。中にいるウィルスが、暴走でもし始めたんでしょ」
「ぐっ……あ……うっ……!!」

際限なく膨らむ腹からでた球体は、教室の天井につくほどの大きさになり、張り詰めたその表面には血管が浮き出ている。巨大な乳房と合わせて、3つとなった球体は、ブブ……とゴム風船をこするときのような音を出しながら、今にも破裂しそうだ。

(変形……発射用意……)
「えっ……」

その膨らみの下でジタバタとしていた足が、ビシッと直径50cmほど円柱形に変わった。その真中には穴が繰り抜かれ、まるで大砲のようになった。そして。

(発射)
《ブシャァッ!!》

穴から、大量の水が吹き出た。その水圧は、水があたった壁をうがった。その水を蓄えていた美優の体はしぼみ、反動で逆方向に動いていく。

「な、なんなの!こんなこと、プログラムした覚えは……!」

その水流は、向きを変えて二本木に近づいた。

「こ、このままじゃ……見てなさいよ、これからどうなるか!」

たまらず、元研究員は逃げ出していった。しかしそれで水流は止まらず、美優は窓の方向に向かって急速に加速していった。

「ま、まって、このままじゃ!」

なすすべもなく、美優は窓の外に放り出されてしまった。

環境呼応症候群 月給の子

「はぁ……今週もバックダンサーしかやらせてもらえないなんて……それに、1回だけ……」

アイドル、月野興子(つきの おきこ)は、事務所のソファに座り、悩んでいた。それなりのプロポーションに、均整がとれているが、それなりの顔。人気がでるはずもなく、後輩に追い抜かされる日々。焦りを感じつつも何もできない彼女は、引退を考え始めていた。

「OLになった在香の方が給料高いって……こんなはずじゃなかったのに……」

電話のSNSアプリに映る友人の写真を見て溜め息をつく。その時だった。

《ピリッ!》

「ひゃっ!?」

興子は突然体に走った電撃に、飛び上がってしまった。

「な、なに?静電気?……冬は乾燥するもんね、お肌に気をつけないと……」

いつもクリームを塗って保湿している腕を見た興子の口が開いたまま閉じなくなった。なんとその腕は、急激に小さくなっていく。それは、腕だけではなかった。

「え……な……服が、大きく……周りが、大きくなってる!!」

確かに、興子に対して、周りの世界は拡大しているようにみえる。しかしそれは、興子自身が小さくなっているゆえだった。

「え、私、小人になっちゃうの!?」

その発言が間違いであることを、落ち着こうとして触った胸が告げた。Bカップほどあった膨らみが、跡形もなく消え去っていた。彼女は、10歳ほどの少女に若返ってしまったのだ。

「ど、どういうこと!?私……」

言葉を遮るように、急に扉が開いた。そして、興子のプロデューサー、明石が入ってきた。

「ひっ!?」

明石は、興子に気づくと、やれやれといった呆れ顔で話しかけてきた。

「あれ、どこの子かな?うちの事務所に何か用……って月野さん!?」
「あ、私そのその、信じてもらえないと思うんですけど……って、えっ!?」

なぜか自身を認識したプロデューサーに、驚いてしまう興子。

「な、何で私がわかったんですか!?」
「それは、ホクロとか……瞳の色とかかなぁ?それより、どうしたんですかその姿!」
「これは……」
「いや、待って!これは、行けるぞ!!月野さん、これならブレイク間違いなしですよ!!ちょっと歌ってみて!」

明石は、興子を置きっぱなしのテンションだ。

「え、あ、はい。『せんのか~わ~に~、せんのか~わにな』……」
「小さくかわいい、歌がそれなりにいい!それでいて本当は大人!く~っ、これは最高だ!」
「歌はそれなり……」

興子の眉間にシワが寄った。

そして、明石の言ったとおり、その次の日からファンは激増した。『合法ロリアイドル現る!?』『新しいアイドルにアキバが踊る!』『歌の上手さなんて関係ない!』などなど、雑誌に取り上げられることも数えきれなくなった。ステージで歌う事や、握手会も日常的になり、これまでと比較にならないほど脚光を浴びる興子は、あっと言う間にトップアイドルの一人として名を連ねることになった。

「これよ、これが私の望んでたものなのよ……!!」
「どうです?私の言ったとおりでしょう?オファーが後を絶たないんで、管理するのに嬉しい悲鳴をあげてますよ」
「それは私も一緒ですよ……明日で、この姿になって一ヶ月になるかしら……?」
「そうです。その記念として、明日は特別なスケジュールを組んでおきましたよ」

その特別なスケジュールとは、高級フレンチレストランで、二人だけの貸し切りディナーというものだった。明石と興子は、特別にあつらえた衣装を着て、一ヶ月前は考えもしなかった二人での食事を楽しんだ。メインディッシュが終わり、あとはデザートだけというときだった。

「ふふ、美味しい料理でしたね!」
「あの、興子さん。実は、打ち明けたいことがありまして……」
「なんですか?なんでも聞いてあげますよ?」
「け、結婚を前提に、お付き合いしていただけませんか!?」
「えっ!!」

明石の言葉に、興子は胸を貫かれたかのようだった。心臓がドキドキ言って止まらなくなった。そのあまりの強さにうろたえる彼女。

「……無理、ですか……?」
「う、ううん……?そうじゃなくて……ドキドキしちゃって……」
「お答えを、いただけますか……」
「ちょっと待ってください……ね?……なんか、体が火照ってきちゃって……」

火照る、どころではない熱が、彼女の体に溜まってきていた。バクバク脈を打つ心臓から送り出された、熱い血液が全身を駆け巡っていた。

「汗、お拭きしましょうか……」
「そう、ですね……お願い、します……」
「あれ……月野さん……?」

耐えがたい熱をこらえて、興子は聞き返した。

「なん……です……か?」
「大きく、なってませんか……体が」
「えっ……!?」

興子は自分の腕を見た。それは、一ヶ月前とは逆に、風船にポンプで空気を入れているように、ググッと大きくなっていた。

「そ、そんな、元に、戻りたくない……!」

胸に大きな圧迫感を感じてさらに下を見ると、膨らみが形成されて、ムクムクと大きくなっている。興子の中に絶望感が広がっていった。

「いやぁぁあああ!!」
「月野さん!?」

変化を止めたい彼女の意思とは裏腹に、それは加速していく。グッグッと成長を続ける腕はテーブルの上にあった花瓶を突き飛ばし、服をビリビリと引き裂いて膨らみ続ける胸は、プルンプルンといやらしく揺れる。すぐに、興子は元の20代の姿に戻ってしまった。

「も、もう、おしまいだわ……私の……アイドル人生……」

すすり泣きを始める興子。しかし、それだけで終わらなかった。

「えっ……!?」

すでに服から出ていた胸がボワンッ!と一気にFカップほどになり、そこで小休止したあと、Jカップまでまた爆発的に成長した。

「こ、こんなの大きすぎっ……!!」

それを止めようとして腕でギュッと押さえる。乳房はそれを押しのけるようにドワンッ!!と爆発し、Zカップまで膨張して机の上にあるものを全て吹き飛ばしてしまった。

「や、やだぁ……!!」

最後の一押しとばかりに、ドォォォン!!ともう二回り大きくなり、重さに耐え切れなくなった机が足から潰れてしまった。

「こ、こんな体じゃもうお嫁にすら行けないじゃないの!!」
「い、いいぞ……」
「明石さん……?」

プロデューサーの恍惚の表情を見て、疑問を禁じ得ない興子。

「月野さん、立ってみてください」
「は、はい……え、こんなに背が高くなってる……」

彼女の体の他の部分も成長し、2.5m超えの巨体になっていた。一つがバランスボールほどの大きさの胸は大きかったが、足や腕のムチムチとした脂肪は男の性欲をそそるもので、プリっと大きくなった尻はむしゃぶりつきたいという本能を呼び起こすものだ。

「素晴らしいです……!!何で大きくなったのかは、この際どうでもいい!」
「いや、どうでもよくな……」
「豊満な体をしたグラビアアイドル!しかも昨日まで幼女だった!歌もそれなりに歌える!これは行けるぞ!!」
「だから、歌はそれなり……」
「明日からも、頑張りましょうね!一緒に!」

興子は、ハイテンションなプロデューサーに呆れると同時に、笑いがこみ上げてくるのを感じた。

「ふふっ。ええ、頑張りましょう!一緒に……!」

城プロ妄想

「城主様、城主様!」
「ん……?」

小さな声で、目が覚めた。立ち上がると、周りは緑一色。俺は野原の上で寝てしまっていたようだ。

「って!?どこだよここ!」

周りには田園風景が広がっている。家や学校の周りには、こんなに開けた場所はない。それに、見える家は全部みすぼらしい木造建築で、まるで中から時代劇に出てくるお百姓さんが出てきそうだ。と思ったら本当に出てきた。

「ごめんなさいなの!適格者を見つけたのに寝てたから無理やり連れてきたの!」
「連れてきた!?どこに……」
「そんなことは今はどうでもいいの!」

どうでもいいはずがない。俺は反論しようとしたが、地平線になにか奇妙なものが見え始めた。それは、甲冑。甲冑だけなら奇妙でもなんでもないが、そのサイズが、明らかにおかしい。はるか遠くにあるはずなのに、それより近くにある家々よりとても大きく見える。山すらその大きさにかなっていない。

「なんだ……あれ」
「兜なの……早くしないとやられるの!」

しかし考えてみれば、俺に話しかけてくる声の主もそうだ。奇妙、というよりは見えてないだけなのだが。

「お前は誰なんだよ。どこにいるんだよ」
「千狐のことが見えないの?ここにいるなの!」
「ここって……あ。」

いた。足元に小さい女の子が。狐の耳と尻尾が生えている。

「城主様、こんなことにうつつを抜かしている暇はないの!」
「なんだよ、さっきから城主様、城主様って……俺は城どころか家すら……」
「あ、城主様。おなかすいた、なにか食べるものない?」
「は!?」

俺と小人の会話に横槍が入った。見ると、今度は小人ではないが小学生ほどの小さな女の子が喋りかけてきた。

「……?」
「三木城なの!あなたの城娘なの。寝てる間に築城したの!」
「ちく……じょう……?」

このボブカットの和服を着た可愛い子と、『築城』という言葉が全く吊り合わない。俺の混乱はさらに加速していっている。

「そんなことどうでもいいの!早く三木城に指示を出すなの!」

先ほどの兜はどんどん近づいてきている。この子にはそれを倒す能力があるのだろう。

「指示って、どうやって……」
「三木城に手を伸ばして、城娘が敵を攻撃しやすい所に配置するようにどらっぐあんどどr……念じるの!」

どうやら三木嬢ではなく三木城らしい。『城娘』。もう全く訳がわからない。それに、今こいつコンピュータ用語言いかけた!?

「ねえねえ、おなかすいたー!」

上目遣いでねだってくる『三木城』。なにかあげたくなるのはやまやまだが、兜もすぐそこまで迫ってきていた。俺は意を決して、三木城の方に手を伸ばした。

「うぎゅぅー……!」

すると、女の子はビル10階くらいの高さに舞い上がる。何かに掴まれているかのように、結構苦しそうにもがく。

「じゃああそこの道の上に……」
「道の上はダメなの!他の場所を選ぶなの!」
「はぁ!?じゃあそこの隣で」

道の隣には家があるが、あの華奢な子が何か害を及ぼすとは考えづらい。千狐に言われたとおり、そこに三木城を配置するようにむんっと念じた。

「え、えっ!?」

次に起こったことは、俺の想像を超えていた。なんと、女の子の体が大きくなり始めたではないか。人が大きくなる、という時は小学生から中学生へとか、12歳から14歳へとか、そういう年齢の変化を表すのだが、今は違う。着ている和服をビリビリに引き裂きながら、三木城の体が、そう、巨大化していくのだ。

「はっ!?どうなって……」
「あの敵と戦うには、それなりの体の大きさが必要なの」

幼いもちもちとした肌が、遠くからも分かるくらいに拡大していく。先程はあまり気づかなかった金色に輝く瞳が見える。俺なんかの大きさはとうに超え、下にある家の大きさにも達しそうである。……待てよ?

「あー、言い忘れたけど城娘の力を使うには資源が必要なの……」
「まさか、それって……」

三木城の体はさらに巨大化を続け、体の位置が下がったわけではないのに、足が地面にぐんぐんと近づく。丸裸の幼い少女の足は、ついに……

バキバキ……!!バーンッ!!
「ひぇっ!」

家の屋根を突き破り……というより、家全体を押しつぶした。三木城が小さく叫び声を上げるが、持ち主は阿鼻叫喚だろう。

「ちょ、なんでこんなに大きくなってるの!?あっ……」

三木城は巨大になった自分の体を見て、ものすごく戸惑っている。彼女自身も予測していなかった変化らしい。そのビル20階くらいの身長の体が、先ほどとは違う、動きやすそうな和服に包まれ、手にはその体にしても大きな木槌が出現した。

「これって、戦えってこと?おなかすいてるのにー!」
「ほら、なにか言ってあげてなの」

駄々っ子のようにゴネる三木城を見て、千狐が俺に問題の解決責任をぶん投げてきた。

「……お前……」
「やーだ、ご飯が先にして!」

三木城は俺を見ながら大声を出し、今にも泣き始めそうである。仕方ない。

「あー、戦ってくれたらご馳走にしてあげるから!」
「今ご馳走にしてよ!」

信じられないほど大きな声で叫ばれる度、鼓膜が破けそうだ。

「倒さないと、あの敵がご馳走を持ってっちゃうんだよ!だからあげられなくなるんだ!」
「そ、そうなの……?」

お、手応えありか。このまま押し通すか。

「ああ!だから精一杯やるんだ!」
「うん!」

三木城は、木槌を構えた。どうやら戦闘準備は整ったみたいだ。そこに、ついに兜が到着した。

「えーい!」

三木城は思い切り木槌を振り、兜にぶち当てた。すると、兜は粉々になり、光の粒になって消えた。

「これでごちそう……あ、まだくる!」

兜は20体ほど押し寄せてきていた。三木城は攻撃できる範囲に敵がくるたび、木槌を振り回して破壊していく。彼女は周りへの被害を考えてか、一歩たりとも動かず、自分から敵の方に突撃などはしなかった。しかし、15体目ともなると大分へばってきたようで、はぁはぁと息を荒らげている。ときおり、腹の虫が鳴く音も聞こえる。

「この、この……!あぁ、もう……」

三木城の表情が険しい。そして、ある時、三木城の何かがプツッと切れた。

「お、お前らなんか……」

木槌を高く据える彼女の顔は、鬼の形相であった。嫌な予感がした。

「大っ嫌いだぁああ!!!」

ドォオオオン!!

勢い良く地面に振り下ろされた木槌。それは地響きを起こすと同時に謎の光を発した。その光は辺り一帯を覆い尽くし、残り数体の兜を一気に吹き飛ばしてしまった。それだけならよかった。吹き飛ばしたのは敵だけではなく、家や道、田んぼや畑などとにかく生活に必要なものまで全部だった。

「はぁ、はぁ……」

三木城は武器を振り下ろしたまま、それに体重を少し預ける形で、顔を下に向け息を整えている。

「じょ、城主様……」

戦慄する俺に、話しかけてくる彼女。

「なんだ……?」
「おなか、すいたぁ……」

俺に向けられた彼女の表情は、罪悪感を引き出すような、それはもう崩れたものだ。ほとんど白目を剥き、口はだらしなく開いている。ついさっきまで勇敢に戦っていた少女とは思えない。

グギュルルル……

彼女の空腹をこれでもかという感じで俺に実感させる音が、街中に響いた。いっぱい食わせてやろう、と思うが……

「これ、どうしよう……」
「だから言ったの、資源が必要だって……」
「やっぱり、再建用の資源かよ……」

荒れ地と化した村を作り直すには、たくさん仕事をしなければならないようだ。三木城にも、手伝ってもらうしかないんだろうな……

トリックアンドトリート

夕焼けに赤く染まる街。その裏路地を、スマートフォンを触りながら歩く一人の人影。突然立ち止まる彼女は、近くの大学に通う生徒のようだ。カジュアルに決めた服には、近頃では太めではあるが、若々しさが滲み出るような健康的な体が包まれていた。

「あれ?私、いつの間にこんな所に?さっきまで駅に続く道にいたのに」
「私めが呼び寄せたのですよ、かわいい子羊さん」
「え?」

その女子大生の目の前にはローブをかぶった、声から察するに30代ほどの男が立っていた。のぞき見える口は微笑みをたたえている。

「ハロウィンの仮装ですか?」
「似合ってるでしょう?トリックオアトリート、お菓子をくれなければ…」
「ちょっと待って、あれって大人が子供にお菓子をあげるイベントでしょ?何で私が大人のあなたにあげなくちゃいけないんですか?」

それを聞いて、落胆するでもなく、はたまた怒るわけでもなく、ニヤリ、と歪む男の口の形。

「交渉決裂ですね。では、あなたにお菓子になってもらいましょう…」
「な、なにを…」

身構える女子大生。男はおもむろにローブから筒のようなものを取り出し、彼女に向けてフッと筒の中に入った何かを飛ばし、それは右腕に突き刺さった。

「いたっ!?ふ、吹き矢?」
「ふふふ、魔法薬入りのね」
「ま、魔法…?あなた、どんな時代錯誤してるんですか……っ!?」

女子大生は、矢の刺さった腕を見た。すると、服に茶色のシミが広がっている。

「何してくれるんですか!?服を弁償してください!」
「服?それだけでいいんですか?ちゃんと見てみてくださいよ」
「え……なにこれ!?」

そのシミは、どんどんまわりに広がっている。それに、袖から出ている手のひらも、茶色に染まっていく。

「きゃあ!!な……体が動かなくなってく……!?」

その茶色に染まった部分は全身を食い尽くすように拡大し、染まった所は固まって動かなくなり、表面がすべすべで、まるで……

「チョコレート……みたい……?いや、やだぁあ!!」
「ふふ、やっと気がつきましたか」

腕から広がり始めたそれは、体や足にもどんどん広がり、女子大生の体を固めていく。体の芯はもはや完全にチョコレートになり、彼女が逃げようとしても、もはや遅すぎた。

「おいしそうですねー、私めは食べませんがね」

髪も根元から固まり、一房一房がまとまっていく。

「わ……わたし……こんな所で……しに……た……」

顔にも侵食が広がり、口も動かなくなってしまった。そして、最後に残った目の輝きが消えたとき、彼女は完全に、チョコレートでできた彫像となった。

「さて、と……このままずっと見ているのもいいんですが……《砕けろ》」

ローブ男が、日本語ではない何かの言語を口走ると、人型チョコレートの至る所に亀裂が入る。

「おっと、入れ物を用意しておかないと……」

男はピキピキと音を立てて壊れ始めたチョコレートを、どこからともなく現れた大きな釜に、ヒョイッと投げ入れた。元々女子大生だったそれは、その衝撃でバラバラに崩れ落ちてしまい、鍋の中にゴロゴロと転がった。

「ふむ、いい材料になりそうですね……ほぼ完璧だ」

満足げな声を出す男。釜は独りでに熱くなり、中のものに熱を加え始めた。そしてあっというまにチョコレートは溶け、釜の中でぐつぐつと泡を立てる。

「ううむ、これまでにないいい香り……あとはこれを加えれば」

これも、何もないところから現れた瓶の中身を液状のチョコにふりかける男。見た目は変わらないようだが、香りが一層濃くなったようで、むせ返ってしまった。

「げほっ……これで配る準備はできましたね……《分かれ、固まれ》」

男の呪文で、釜の中の液体が小分けになって飛び出し、瞬時に固まって、男が持っていたいくつもの袋に、それぞれ10個ほど飛び込んだ。

「ふむ……よし……」
「おじさん、トリックオアトリート!」
「と、トリート!」
「おや?」

男に声がかかり、振り返る。二人の1年生くらいの男子小学生が、かごを男の方に差し出して立っていた。一人はやんちゃそうで、元気がその笑顔から溢れているが、もう一人は連れ合いに寄り添うように、もじもじとして、髪も男子としては長く、その服がなければ男と分からないくらいの中性的な体格と顔立ちだ。

「お菓子をくれなきゃ……ほら、荘治(そうじ)……」
「あ……い、いたずりゃしちゃう……ぞ!」

二人のあまり足の揃わないコンビネーションに、考える素振りを見せる男。

「ふむ……いたずらされるのは困りますね。ですから、これをあげましょう」

そして、先ほどのチョコレートが入った袋を1つだけ渡す。

「一袋だけ!?」
「量が少ないんです、二人で分けてもらえませんか?」
「ふ、二人で……英太(えいた)くんとなら……」
「もう、仕方ないな……」

英太と呼ばれた少年が男からチョコを受け取ると、荘治と呼ばれたもう一人はペコリと頭を下げた。

「ありがとう、ございました」
「あ、ありがとうございました」

英太もそれに渋々続くのをみて、男は微笑んだ。

「行儀のいい子たちですね、きっといい大人に成長できますよ」
「えへへ……」

ニコニコと笑う荘治だが、英太は待ちきれないようだ。

「ほら、荘治行くぞ!まだ二つしか集まってないんだから!」
「あ、まって!」

その二人の背中を見る男の微笑みは、一瞬で歪みに歪んだ。

「そう、いい大人に……ふふふ……」

それから1時間後。英太の家でジュースを飲む二人は、あまり多くのお菓子を集められなかったようだ。特に英太はものすごく不満そうな顔をしている。

「もっと集まると思ったんだけどな……」
「でも、どれもおいしそうだよ?それに、このチョコレートなんか、すごくいい香りがするよ?」
「あ、おい!!勝手に食べるなよ!」

荘治は袋を開けて一つ頬張るのを見て、英太の不満が爆発したようだ。

「んー、おいしい……んぎゅっ」
「何個入ってるかわかんないんだから!」

荘治の首根っこをつかむ英太だが、ある異変に気がついた。荘治の顔が、ありえないほど紅潮しているのだ。

「え……荘治、どうしたんだ……?」
「ああ……英太くん……大好き……!」

荘治は突然、英太を床に押し倒した。

「あいったっ!なにす……るんだ……よ?」
「英太くんの……おちんちん……」

顔が真っ赤になっている華奢な少年は、もう一人のズボンのジッパーを下ろし、中のブリーフから、まだ小さい男の象徴を取り出し、そして……

「ペロ……」
「ひゃあっ!?」

なんと、コーンに乗ったアイスを少しずつ食べるときのように、舐め始めたのだ。英太は、その未知の快感のようなものに襲われ、体がガクガクとふるえてしまう。

「や……やめ……ろ……!!」
「英太くんは……かっこいいのに……ペロ……」
「んんっ……!」
「こっちは……小さくて、かわいいんだね……」

英太は、また別の事にも衝撃を受けた。足に当たる荘治の胸の部分に、自分の母親のそれと同じような柔らかさが生まれていたのだ。

「おまえ……まさか……!」
「え……なに……?」
「その、胸!」
「僕の……胸?」

男根に近づけていた顔を離し、座りなおる荘治。そして、おもむろに着ていた服を脱いだ。その胸には、大きく膨らんだ乳頭と、それと比較すると小さな盛り上がりがついている。

「女の子……みたい……」
「おかしいよ、きっとあのチョコの……」
「それだったら……ちょうどいいよね……」
「は……?」
「僕が女の子で、英太くんが男の子。ちょうどいい……ふぷ……」
「ふにゃ!」

今度は、荘治はソレを舐めるどころではなく、完全にくわえてしまった。

「ぼきゅが……えいたくんのこと……きもちよくさせて……あげるんだから……」
「や、やめろぉ……!気持ちよくなんか……ないって……!」

英太は、胸に当たっている柔らかい何かの厚みが、徐々に増してきているのを感じていた。自分のモノを咥えているその口も、時が立つごとに大きさを増し、顔立ちも幼さをだんだんと失っている。それに、荘治が自分にしていることが、自分に快感を与えていることを否定できなくなってきていた。逃げようとしても、自分の本能がそれを許さないのだ。彼は、最後の理性を振り絞って、言葉を発した。

「そろそろやめないと……ひどいぞ」

だが、それを聞いて荘治が口を離し、胸をなでおろしたのもつかの間、荘治は英太が思いもかけないことを口走った。

「英太くんも、僕のこと気持ちよくしてくれるの……?」
「は?」
「僕だけにやらせるのが、ひどいんでしょ……?」

その一言一言に、妖艶さが混じる。もはや、そこに元々の荘治はなかった。胸がぷっくりと成長して、Aカップはありそうなくらいの膨らみがついたその体からは、フェロモンのようなものが発せられ、目つきも、餌を求めている獣のそれになっている。

「これ、食べて」
「むぐっ!?」

その容姿に愕然としていた英太の不意をつくように、チョコレートが口に突っ込まれた。思わず英太は、飲み込んでしまう。と同時に、彼の体が異常なほどの熱を帯びはじめ、感覚が麻痺していく。

「あ……あ……」
「僕の……おちんちん……気持ちよくして……ね?」
「うん……荘治の……舐める……」

今の英太には、目の前にいる荘治を、愛でることしか頭に浮かばなくなっていた。

「かわいい……荘治の……アレを……」

そして、荘治がしたと同じように、彼の小さなソレを引きずり出し、

「ペロ……」
「あんっ……」

舐めた。それだけで、英太の中の何かが満たされていくような感覚が湧き上がってきて、彼は、自分を止められなくなった。

「ペロ……ペロ……チュパ……」
「いいよ……いいよ、英太くん……」

英太は、体が内側から外側に押し出されるような感覚を覚えた。そして、自分の胸を触ると、そこに、荘治と同じようにふっくらとした膨らみができているのを感じた。

「俺も……女の子に……なるのかな……チュパ……」
「一緒になっちゃお……ほら……」
「ん……」

荘治は、袋から二つのチョコレートを取り出していた。そして、二人はそう命令されたかのように、何も言わずにパクリとそれを口にした。一瞬にして、チョコレートの甘味は口いっぱいどころか体全体に熱として広がり、二人の体を火照らせた。

「これで……もっと女の子に……」
「んぐ……もっと、気持ちよくなれる……」

控えめだったその胸が、ムクク……と脂肪を蓄え、水風船に水が入るときのようにフルフルとふるえながら、何倍にも大きくなる。それだけでなく、全身の皮下脂肪が発達して、輪郭から角がとれ、丸みを帯びていく。髪、特に短かった英太のものはファサッと伸びて肩を被う。ほぼ完全に、18歳ほどの女性の体になった二人の、男性器は逆に発達し、数倍にも膨れ上がった。

「すごい……おっきい……」
「僕のおっぱいも……大きいよ……ほら……」

荘治は、いきり立った英太のソレを、今できたばかりの胸の谷間で挟み込み、Fカップはあろうかという大きな胸全体を使って揉みしだいた。

「んあっ……すごいよ……んんっ!……俺……こんなの……初めてだ」
「僕……英太くんと……一緒にいられて……すごく幸せ」

二人のアルトの声は、チョコレートを食べる前の無垢な子供と同じ二人が出しているとは普通なら思えない、性欲と快感に満ちたものだ。

「ん……!何か……出ちゃう……!!ううっ!!」
「うぷっ……なんだろ……これ……?」

保健の授業をまだ受けていない小学生が知り得ない、白く濁った液体が英太のソレの先端から飛び出した。

「でも……熱くて……英太くんが……直接感じられる……みたい」
「それなら……もっと……」
「もっと……!!」

そして迎える二度めの射出。荘治の顔はドロドロとした液体まみれになってしまった。ペロリとソレを味わうように舐める彼は恍惚の表情を浮かべた。

「あのチョコレートと同じ……あったかい……」
「チョコレート……もっと食べよう……」
「うん……」

そして、二人は一つずつ、さらにチョコレートを摂取した。すると、すでに巨大になっていた乳房はそれほど成長することはなかったが、全身の皮下脂肪がさらに増殖して、肉感的なムチムチとした身体になった。そして……

「あ……俺のこれ……止まらなくなっちゃった……」
「僕も……」

怒張していた男性器からは、白濁液の放出が止まらなくなり、同時に、ソレは体積をどんどん減らしていく。しまいには、股の間に新しくできた溝の、小指よりも小さな突起になってしまった。

「俺たち……女の子に……」
「そんなことより……続き……しよ……?」
「ああ……」

英太は、本能にしたがって、荘治の巨大な双丘の先端をつまんで、コリッと動かす。

「ひゃうっ……もっと……もっとお願いぃ……」
「それなら……そうじも……」
「うん……」

二人はお互いの突起をつまみあい、快感と興奮を分かち合う。

「あん……はう……」
「やっ……んくぅ……」

いつしか、お互いの足を絡み合わせ、股を打ち付けあっている二人。

「えいた……くん……!……僕の……赤ちゃん……!……つくってぇ!!」
「それを……言うなら……っ!そうじが……!!」

その動きは激しさを増して、互いの肉体同士でパンパンと音が出るようになっていた。

「ふたりで……!つくろ……!!」
「うん……!これからも……!!!」
「ずっと……!いっしょにぃ……!!」

二人の息は荒く、熱くなりきった二人の身体からは、汗の湯気が出ている。

「ぼ、ぼく……!な、なにか……!くるぅぅ!!」
「お、おれも……!!」
「「いくぅぅぅうううう!!!!」」

ついに、絶頂に達したのだった。

二人が気がつくと、何もなかったかのように、身体は元に戻り、二人が大いに汚していたであろう絨毯や家具も元通りになっていた。しかし、体を交えた記憶だけは残っていて、互いの顔を見た瞬間、二人共顔が真っ赤になってしまい、うつむいた。

「でもまた……」
「またやりたい、かも……」