菊月妄想2-2

「新人ちゃん、お疲れ様!いつもより潜水艦の位置が分かりやすくてよかったにゃ!」
――帰ってそうそう、睦月がキクに抱きつくと、キクの巨大な乳房に顔が当たって、ボヨンと揺れる。
「あ、あっ……」
慣れない、柔らかい感触に、睦月は少し狼狽しているようだった。

「ごめんね、キクちゃん……でもっ!」
「ひゃぁっ!」
今度は如月が、キクの胸をガシッとつかんだ。

「おっきすぎよぉっ!キクちゃんのおっぱい!司令官をどうする気!?」
「や、やめっ……んぁっ!」
胸をもんでもんでもみまくる。如月らしくない行動にキクはどうすることもできず、ただ喘ぐだけだった。加えて、如月は司令官の身を案じて、怒っているわけではなかった。

「ねぇっ、教えてよっ!!」
その顔は、やましいことを考えて興奮しまくっている変態の顔であった。寒気を感じたキクは本能的に如月から離れた。
「な、なにもしないぞ!」

如月は胸を揉む姿勢のまま少し硬直していたが、すぐに落ち着いた。
「あっ、ごめんなさいね。キクちゃんが大きくなったのは、自分の意志じゃないものね」
だが、如月は懲りずにキクに近づいていっていた。それを止めたのは、キィだ。

「おいおい、キクも疲れてるだろうに……その辺にしておいてやれ」
ここまで静観していたキィが言うセリフでもないようにキクは思った……

――そして菊月部屋に戻る。

「まぁ、如月は睦月型の中で一番体のメリハリがあったからな」
「メリハリ……?」

ぽかーんとするキクに、キィは思わず苦笑いである。いまや睦月型どころか艦娘を全員集めてもキクに勝るダイナマイトボディなどいない。実際司令官も鼻の下を伸ばしていたのだ。

「如月も、それは怒るだろう」
「ん……?如月が怒っていた?」

――キィはあのニヤけた顔を見ていなかったのだろうか。キョトンとした顔をしあう二人。

「まさか、気づいていないと……?まあいい、キクは私のものだ。私が守ってやる」
「あぁ…………うむ」
キィの表情は私を頼っていいぞ!という頼もしいものだった。と同時に、ほめてほめて!とも訴えているようにみえた。試しに、キクはキィの頭をなでてみた。

すると、キィはニコッと笑顔になる。
――かわいい……と、目の前で喜んでいる小さい子に庇護欲が生まれ……

……段々と独占欲に変わっていく。

――私は、キィのもの……なら、キィも、私のもの……

キィが自分の感情が漏れていることに気づいて、凛とした表情に無理矢理戻したことで、キクの欲望は高まっていった。

「おい、撫でるのをやめ……っ!」

キィの目に映ったキクの表情は、ついさっきまでのオドオドしたものではない。それは、キクを支配したい、自分のものにしたいという歪んだ笑顔だった。

「ひっ……!」
「怯えるキィも、かわいい……」

キクは頭を撫でるのをやめないまま、キィを座らせ、仰向けに寝かせる。キィの方も無意識にキクに従ってしまう。朝とは完全に攻守逆転した二人。杏仁豆腐を食べた直後に出現した、性欲にまみれたキクが、再び現れたのだ。

「昨日の続きだ……」
「あ……あ……」

キィのスカートが脱がされ、上着も全部はがされる。キクも上の服を脱いだ、その時だった。扉が、ギィッと音を立てて開いた。

「み、三日月……?」
「ん……?また邪魔に来たのか……?」

外にいたのは、長く黒い髪、金色の瞳、大きくはねた一房の前髪。10番艦の三日月が、うつむいて立っていた。そして、その手には……

「まさか、それは!」
「そう、杏仁豆腐……ですよ」
そう言ってゆっくり顔を上げた三日月もまた、キクのように歪んだ微笑みを浮かべていた。その手で持つ小さめの小鉢に、どこで手に入れたのか、昨日の杏仁豆腐が入っている。

「ふふ、そうか……面白い……」
キクは不敵な笑みを浮かべ、必死に三日月を止めようとするキィを床に押さえつける。

「三日月に、キィはやらんぞ」
「大丈夫ですよ、キク姉さん……」
三日月は、小鉢の杏仁豆腐を、口に滑り込ませた。そして、ひと噛みもせずに飲み込む。

「……欲しいのは、キク姉さんの方ですから……」
キクたちの方に歩みだした三日月の足が、スカートから伸び、三日月の身長が伸びていく。スカーフを外し、上着を脱いだときには、彼女の胸が膨らみだし、ムクムクと大きくなって、キクのそれと同じか、少し小さいくらいに成長する。ぷにぷにしていた子供の短い腕は、皮下脂肪を適度に蓄えながら伸びる。

「どうしたんだ、三日月、お前らしくないぞ!」
「キィ姉さんは、黙っていてください、ね?」
三日月から感じるとは思っても見なかった圧倒的威圧感に、キィは動けなくなってしまった。その間にも、三日月の体の変化は続く。脚にもむっちりとした脂肪が付き、スカートはくびれたウエストに巻き付いて、膨らんだヒップを隠しきれない。三日月は、歩きながら、自分の体についたウエストラインをなで、胸や尻を触って、成長を確かめる。そして立ち止まって、キクに向かってニコッと、いや、ニヤッと、笑顔を向けた。

「私だって今なら……キク姉さんをイカせられるんです……」
そして、キィを拘束するために四つん這いになっているキクに後ろから抱きつき、首筋をペロッと舐めた。

「んんっ……!」
キクは予期しない快感に全身を震わせる。何とか耐えたが、キィの拘束は解けた……とはいえ、信じられないほどの変容を遂げた二人を前に、キィはただ打ち震えることしかできなかった。

「三日月、昨日の仕返しか……?」
「違いますよ……恩返し、です」

三日月はまた立ち上がって、一瞬にして成熟した体を二人に見せつけた。
「この快感に目覚めさせてくれた……だから、キク姉さんにも快感をあげます」

キクはキィの横に体を横たえ、キィを抱き寄せた。固まったままのキィに頬ずりをしたあと、三日月と同じように、体をくねらせ、ボディラインを見せつける。
「キィとの時間を邪魔しなければ、それでいいのだが……?」

「そうは行きませんよ、姉さん」
三日月はキクに胸を押し付けるように、自分も床に横たわる。
「私も、もっと楽しみたいんですから……」

環境呼応症候群 課金の子

俺の妹、按司千耶(あじ ちや)は、メタモルフォーゼ症候群にかかっている。100万人くらいに一人、この病気にかかっているらしい。日本に126人くらいいる計算になるが、今のところニュースで見た以外は別の症例に出会ったことはない。聞く話によると、自分のいる高度や移動スピードで体型が変わる奴もいるらしいのだが、そうすると千耶は特殊な例に入るのかもしれない。なぜなら千耶は……

「おっ、今月は課金していないのかな……?」
「したよ。ちょっとだけな」

兄に向かって生意気な口を叩く妹の体は、中学生くらいの大きさだ。今は。千耶はもう高校1年だから、小柄なほうである……今は。

「なんだよ兄貴、気持ち悪い顔して」

――喋らなければ美少女、というより普通に可愛い妹なのだが。赤い髪留めがチャームポイントの、長髪の少女。それで収まりがつくはずなのに、口が悪いのが玉にキズだ。

「なんでもねえよ」

――なんでもなくなかった。実のところ、オレは今日が楽しみで楽しみでたまらなかったのだ。

「んじゃ、もいっちょ課金して大人になっちゃいますかね~っと」
「おい、金の無駄遣いはやめとけよ」
「うっさい。ま、大きくなるのは明日でもいいかな」
「おう、そうしとけ」
――口が悪くても、俺になついてるのは昔から変わらないようだ。俺の言うことは素直になんでも聞く。……と、もうお分かりだろうが、千耶は『課金』で大きくなるのだ。どんなゲームでも、課金した額に応じて体が大きくなる。そして、もう一つの条件が、お小遣いをもらったとき、体は元に戻る……千耶の場合、小学生4年生くらいの体に。

この症候群にかかったのがその歳だったのかもしれない。その時期から、千耶の成長はパッタリと止まって、早熟な女子の成長に追い抜かれるかもしれないと思っていた俺との身長差が広がっていったからだ。さぞかし不便だったろうが、中学2年になって、小遣いに少し余裕が出たのか、自分がやっているゲームに課金したのだ。そのことを俺に自慢しながら。
そしたら、急に変な顔しはじめたから、失敗したのかと思えば、歳相応の体まで成長したじゃないか。びっくりした千耶は泣き始め、俺は必死になって泣き止ませようとした。

「ふふっ、それはさておき……」

おっと、声に出てしまった。俺、すごくキモい笑い方したな。でも、仕方ない。俺は、妹がやっているゲームのIDをひょんなことからゲットしたのだ。ハッキングとかしたわけではない。机の上に『千耶のID』と、紙に書いて置かれていたのだ。妹の可愛い字ではなく、親の丁寧な字でもない。外部の誰かが、俺に個人情報を漏らしてきたのだ。

――要するに、俺にアイツを成長させろと誰かが伝えてきた。そう思った俺は、好奇心にかられて、その情報を有効活用することにしたのだった。――そして、明日は月が変わる日、妹の小遣い日だ。今日成長させても、明日には元に戻るのだ。成長させすぎたとしても、妹なら笑って許してくれる……いや少しは怒るか。よし、コンビニで買ってきた課金カードを準備するとするか……

俺は、自分の机の引き出しに向かい、少し奥に入っていたカードを見つけ出して、ドキドキする心臓を鎮めながらタブレットを操作し、課金用サイトへアクセスした。途中手が震えて、結局10分程度かかってやっと正しいURLを入力できた。

――じゃあ、行くぞ。
俺は、扉を開けて廊下に出て、妹の部屋の扉をコンコンとゆっくり叩いた。やっぱり手が震えて、変な叩き方になってしまったが。

「おー、なんだよ、私のマンガでも読みたいの?」

ゲーム中だったのか、千耶がスマホを片手に持ちながら扉を開けた。あれ、心なしかさっきより小さくなっているような?いや、俺の錯覚だろう。小遣い日は明日なんだから。

「あー……そうだ、き、昨日新しいの買ってきてただろ……?」
緊張しすぎて思わず噛んでしまった。千耶は少し怪訝そうな顔をしたが――
「あー、あれね。兄貴も読んでたね」

なんとか、バレずにすんだ。
「あとさ、ここで読んでいってもいいか?」
「んー、私は別にいいけど、ゲームの音うるさいと思うぞ?」

妹の部屋でマンガを読むことは、日常茶飯事だった。自分の所有物を目に見えないところに持って行かれたくないのか、持ち出すことを禁止されたことはあるものの、ここで読むことを拒まれたことは一度もなかった。

「まあ、大丈夫だ」
「そう?なら、ゆっくり読んでってよ」
千耶は俺がいると安心するらしい。長居しても嫌な目をされたことがない。と、千耶は自分の椅子に座って、ゲームを再開した。

――ここからが、メインイベントだ。

俺は、ベッドに座った後マンガを広げるのを忘れ、タブレットのスリープを解除した。そして、妹の方に視線を向けながら、あらかじめ入力してあったコードを確定するボタンに、指を近づけていった。

「兄貴?なんかやっぱり変なこと考えてるだろ」
ドキッ!バレたか!とそこで指を引っ込めようとしたが、それとは反対に、驚いたせいで確定ボタンをポチッと押してしまった。ええい、もうどうにでもなってしまえ。

「い、いや?」
俺が今課金したのは五千円。千耶が上限と決めているらしい額と一緒だ。なけなしのバイト代よ、妹の体の糧となれ……そう念じた瞬間。

「な、なに……いつもの……アレが……どうしてっ!」
成長が始まったようだ。スカートからニョキッと脚が伸び、桃色のタンクトップが持ち上げられて、ヘソがちらっと見えるほどになった。ペッタンコだった胸にも、テントが張ったと思えば、全体が向くっと膨らんでBカップ程度の胸が出来上がった。

「うそぉっ……」
期せずして起こった成長に戸惑う千耶。当然だ。自分では課金していないのに、いつもの成長が起こったのだから。

「ハッ……あ、兄貴……!!」
完全にこっちのやっていることがバレた。こうなったら、もうどんどん課金してしまえ!

ノートパッドアプリにメモしてあったコードを早業でコピペし……と言うのは嘘で、成長の途中に無意識にコピペしていたらしく、俺はすぐに確定ボタンを押した。千耶はその指の動きを見て、不安をあらわにした。

「私、これ以上成長するの!?……んっ、きたぁっ……!!」
次の成長が始まった。俺の課金はさらに五千円。さっきの成長で中学3年くらいの体になっていたから、次は高校3年か?と思っていたら、千耶の成長は予想を上回っていた。

「ん、んんっ!!!」
Bカップの胸が、信じられないスピードでムギュギュギュッ!!とタンクトップを押し上げていく。C、Dとカウントする暇もなく、水風船のようにタプタプと揺れながら大きくなるそれは、俺のクラスの一番の爆乳をも5秒で追い抜かし、メロンサイズになっていく。脚の方も長くなるとともにムチムチと脂肪を蓄えていき、伸縮性がなく弱い生地だったスカートをビリビリと破っていく。胸が重いのか、千耶は伸びていく腕で乳房を支えた。

「……くぅっ、よ、よくも私をこんな……に……」
成長が終わって、俺に怒りをぶつけてきた妹の表情が固まる。俺はもう、コードを入力し終わり、確定ボタンに指を触れていたのだ。

「や、やめてっ……!」
腕で胸を支えながら立ち上がり、俺のタブレットを取り上げようとする千耶。160cmの身長は、俺よりちょっと低いだけになっていた。こんなに背が高い妹を見たことはなかったし……

「んひゃぁっ!!」
さらなる成長が始まって、千耶がバランスを崩して倒れなければ、普通にタブレットを持っていかれただろう。

「ひぅっ……!」
千耶の豊かな乳房が、ドユンと音を立てて床に落ちる。タンクトップがよほど苦しいのか、千耶はなんとか脱ごうとした。だが、肩の部分が外れただけだ。あとは、今やスイカサイズまで大きくなったおっぱいの弾性力で破れるのを待つしか無かった。

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「んぎゅっ……」
スカートが破れたせいで丸見えになっていたお尻も、すでに元の体の数倍くらいに膨れ上がって、素晴らしい曲線美を作り上げていた。

「おっもーい……」
そのすらっと長い腕に不釣り合いな、もはや爆乳の域を超えそうなスイカおっぱいを、何とか持ち上げる千耶。グラビア雑誌でも見たことがないほどデカイそれが、俺の目の前でタップンタップンと揺れていた。そして、妹のかわいさは美しさに昇華し、俺が見た中で最高の美少女がそこにいた。身長は、俺より頭一つ高いくらいだろうか。

「あ、に、きぃぃいいいっ!!!!」
怒り心頭とはこのことか。千耶の顔は真っ赤に染まり、俺を睨む瞳は、その鋭さだけで人を殺せそうだ。ドシンドシンと重い足音で近づいてくる妹は……

「あ、あっ、きゃあっ!」

揺れまくる乳房に体重バランスを崩され、またもや転んで……今度はベッドの上にいる俺の上に倒れた。

「うぎょごへぇっ!!」
おっぱい重っ!!!!骨が数本折れるかと思うほどの衝撃だぁっ!――重いスイカ二個が無慈悲に俺の体にのしかかったのだ。逆に妹の方は大丈夫なんだろうか……?

「千耶、大丈夫……ぶふぅっ!!」
千耶の顔を確認する前に、その下に潰れる肌色の塊に目を奪われる。血行がよく、暖かく俺を包み込むそれは、衝撃の余波かムニムニと形を変える。

――この感覚、素晴らしすぎる……

「あいったたた……」
千耶もやっぱり痛かったようで。

「すげえおっぱいだな……」
「はぁっ!?あのさ、これから一ヶ月、この姿で過ごさなきゃいけなくなったの!わかる!?」
――何だって?

「嘘つくなよ、小遣い日は明日だろ」
「……前借りしたんだよ!!」
妹が少し恥ずかしそうに、でも怒りは冷めないまま大声を上げる。――え、ちょっと待って、っていうことは……本当にこの爆乳タプンタプンで高校行かせる羽目に……?

「ご、ごめんなさいぃっ!!!!」
「ごめんなさいですむかぁぁっ!!!」
おっぱい越しに、妹の大声が俺の体全体に響き渡る。……どうしよう。

結局、俺が千耶に小遣いをやることで、体はもとに戻った。ただし、ダメ元でIDとパスワードを入力してみたら、それを変えてはいないみたいで、すんなりとログインできた。

――これって、もしかして……

「あ、兄貴……今度は前借りとかしないから……」と朝食の場で言われて、思いっきり牛乳を吹き出すことになったのは次の月の小遣い日前だった。

――へへっ、冗談だろ……

風船に手が届くまで

街角で配られるヘリウム風船は、得てして家に帰る前に受け取った子供の手から離れていくものである。

「うわーん!」
「あぁ、あんな高いところに引っかかってる……」

この少女、未唯(みゆ)の場合も、途中の公園で手を離してしまった。空に飛んで行ってしまえば諦めが付いたのだろうが、風船は木の枝に引っかかっていた。父親である唯夫(ただお)も同伴していたが、引っかかった位置があまりに高くどうしようもない。

「未唯、ママも待ってるしそろそろ行こう。風船ならまたもらえるから……」
「やだ、やだ!」

唯夫自身も、子供時代によく味わった苦痛なだけに、あまり強く言うことができない。
そのうち、10分が経った頃、もうひとりの少女が近づいてきた。

「あの風船、ほしいの?」

そして、少女は未唯に喋りかけた。

「う、うん。取ってくれるの?」
「いや、それはキミがどうにかするべきだよ。ボクは、それを手伝うだけ」
「手伝う……?肩車でもしてくれるの?」

小学生である未唯と、その少女はあまり体の大きさも、体つきも変わらなかった。肩車などしようものなら、少女は未唯も耐えきれないだろう。唯夫は娘の身を案じて、突然あらわれ、助けを差し伸べてくれた少女に感謝を伝えつつも拒否しようとした。

「お嬢ちゃん、助けてくれてありがとう……」
「でも、ボクの助けはいらないって?これは、ボクがやりたいことなんだ。キミの許可はいらない」

明らかに年下である少女に、真っ向から拒絶されてしまい戸惑う唯夫。まるでそれは、唯夫よりはるかに大きな存在のようだった。それをよそに、少女は続けた。

「いいかい、ミユ。キミの目標には、キミ自身の力でたどり着かなきゃいけない。それは、その目標がなんであれ、同じことなんだ」
「……?」

いきなり哲学的なことを言い出した少女。だが表情は真面目そのものである。

「だけど、自分ひとりの力じゃなくて、誰かを頼ることも重要なんだ。今日は、ボクが力を貸してあげよう。いいかい?」
「うん。あ、ありがとう」

未唯がわけもわからないまま感謝すると、少女はニコッと微笑んだ。のではなく、ニヤァと表情を歪めた。

「なーんちゃって。風船は取らせてあげるけど、ボクのおもちゃになってね、ミユ」

途端、少女の体がまばゆいまでに光り始めた。未唯はそれをぼーっと見るしか無かったが、次に自分の体が熱くなり始めているのに気づいた。周りの空気から、熱を吸い込んでいるような妙な感覚だった。

「風船はキミの手で取ってもらう。でも、キミは飛べない。そうだよね?じゃあ……」

パァッ!!と少女が発する光が強烈になり、あたり一面が光に包まれた。

「大きくなるしかないよね!」

光が消え去ると、少女も姿を消していた。だが、その不可解な現象よりもさらに不可解なことが起き始めていた。

「ぱ、パパ、未唯……」
「大きくなってる……?」

唯夫の腹あたりまでしか無かったはずの未唯の背丈が、胸の部分まで伸びていた。

「お服がキツイよっ」

体は大きくなっていたが服はそのままなようで、所々がパツパツになり、縫い目がブチブチとほつれ肌色が見えていた。しかも、「大きくなる」というのは体のサイズだけでなく、体型、年齢もであったようだ。腕も脚も、もとの幼児体型のままではなく、すらっと細く長くなっていた。だが、腹部はまだぽっこりと膨らみ、子供のままだった。

「未唯……」
「パパ……」

未唯と唯夫は不安そうに見つめ合うことしかできない。中学生くらいの体型になった父娘は、ほとんど同じ身長になり、互いの目線が水平になったが、それも少しの間だけで、未唯はさらに大きくなっていく。少女が取らせると言った風船は、まだ10mは上にある。それは、未唯があとそれだけ大きくなること、つまり3階建てのビルくらいまで巨大化することを示していた。

「私、どうなっちゃうの……?」

少女が消えるときの強烈な閃光にも関わらず、周りにはほとんど人がいなかった。だがいまや身長が2mになっている、しかし体型は中学生のままの少女の姿は少しでも近寄れば違和感を感じざるをえないものだった。

「み、未唯の……おっぱい……」
「えっ?」
「い、いやなんでもないんだ……」

先ほどとは逆に、未唯の胸の高さに唯夫の目があった。その胸には、膨らみかけの、テントのような形の乳房があり、ささやかなピンクの突起がじわじわと大きくなっていた。

「すごい……」

周りをチェックするのに必死になっている未唯は、信頼する父親が娘である自分に性的な興奮を覚えているのに気づかない。そのうちにも、体の成長に比べて胸の膨らみの成長スピードは急激に上がり、前に突き出されてフルフルと揺れた。服はもはや何も覆っておらず、未唯は胸以外は若干幼児体型が残った姿を周りに晒していた。その身長は、まだ3mくらいで、風船にはまだ遠い。

「おぉ……」

自分の2倍、いや3倍くらいの身長の娘を見上げ、その少し膨らんだ腹の先に大きく丘のようにそびえる2つの乳房。唯夫はゴクリとつばを飲んだ。伸びるだけだった脚にも徐々に皮下脂肪がつき、唯夫の顔と同じ高さの所で女性的な柔らかさを蓄えていく。

未唯が身長5mにもなり、体型も高校生に近づいて、骨盤も大きくなり、腰にくびれが付いてきた、その時だった。一陣の風が、風船が引っかかっていた木に吹き付けられたのだ。

そして、風船が枝から外れ、天高く飛び上がった。

「あっ、風船が!」
「な、なんだ!?」

唯夫は、高度を上げていく風船を見た。次に、彼が覚えたのは興奮だった。

「(未唯は、どこまで大きくなるのだろう?見てみたい……)」

それに答えるように未唯の体からゴゴゴゴと地鳴りのような音がし始めた。

「ぱ、パパ、私、もっと、大きくなっちゃうぅっ!!」

5mの身長が、風船を追うようにドォンッ!!と伸びた。縦に伸びるということは、当然全体が大きくなるということである。脚は木の幹など屁でもない太さに、胸はアドバルーンのサイズをひとっ飛び。体重もトラックが何十台あっても足りないくらいに増えて、地面は大きくえぐられる。

20m、50mと指数関数的に伸びていく未唯の身長。街のどこからでも、未唯の高校生の体型となった体がはっきりと見えるくらいになった。風船が引っかかっていた木は、無残にも成長する脚にへし折られ、成長の速さのせいで旋風が発生して、いろいろなモノが巻き上げられていた。

「もう、風船なんていいから、もとに戻してっ」

無防備に揺れる胸は、100mの高さとなった未唯の体でもバランスが崩れるギリギリくらいまで大きく成長していた。バストトップは90mといったところだろうか。

「もしかして、風船を取ればもとに戻れるのかな……えーっと……」

風船は、上昇するだけでなく風に吹かれて何百メートルか横方向にも飛ばされていた。未唯から見ると前の方向で、未唯はすぐに見つけることができた。

超高層ビルと同等のサイズまで大きくなった未唯だったが、風船は上昇気流に煽られているのかもっと高いところにあった。気圧が低くなっているせいでサイズが大きくなっている。未唯は、足元のことを考えずに風船を追って走り始めた。

「まって、まって!!」

数キロトンある巨大な体は、一歩ごとに民家を押しつぶし、道路をえぐり、大きな地震を起こした。10mくらいの振幅で揺れる胸は、被害が及ばない遠くから見れば壮観であっただろう。しかも、移動中にも未唯の体は確実に大きくなっていく。日本一の高さのビルやタワーも超えて、物理法則を無視して質量と体積を増やしていく。普通の小学生だったはずの少女が、竜巻と突風を巻き起こしながら風船を追いかける。

「あ、あぁっ!」

そして、事もあろうに未唯は高速道路につまづいた。身長500mの体が宙を舞い、地面へと落下していく。

「きゃっ!!」

地面を最初に襲ったのは、巨大に膨らんだ乳房だった。普通の大きさなら、ボインッといった効果音ですまされるだろうが、未唯の大きさ200mくらいの胸は、あらゆる建造物を一瞬で破壊したうえで地面と衝突し、大きなクレーターを作り上げた。

胸だけでも街2つを消滅させられた。その次に落ちてきた体は、1つの都市を消滅させてしまった。

「う、うぅ、痛い……」

未唯の体は、ころんだ状態のままでも巨大化をやめない。胸は地面を擦りながら前進し、街を掃き掃除するかのように破壊範囲を広げる。脚は街も丘も同じように削り、さらに体型が大人に近づいているのかムチムチと膨らみ、股下に残っていた安全地帯すら潰していく。

未唯は手を付いて立ち上がった。身長は3000mに達し、上昇をやめようとしていた風船に、やっと手が届くまで大きくなったのだった。

「やった、風船!」

未唯は風船に手を伸ばす。すると、風船が急に大きくなり始めたではないか。未唯がそのひもをつかむ頃には、未唯の体に見合ったくらいの大きさまで、巨大化したのだった。

「風船、取れてよかったな。未唯」
「ぱ、パパ?」

しかし、それは風船が大きくなったのではなかった。未唯がもとの大きさまで戻っていたのだ。破れたはずの服も元通り。街を巨大娘が破壊した跡など、見えなかった。唯夫も、キョトンとした未唯を微笑んで見ているだけだった。

「夢、だったのかな……?」
「がんばったね、ミユ」
「あ、さっきの……」
「そう、ボクだよ。名前はガイア。人間たちの間では『大地の神』と呼ばれているものだけど」

未唯も唯夫も、耳を疑った。目の前にいる普通の人間にしか見えない少女が、自分のことを神だと言ったのだ。

「ちょっとね、遊んでみたくなったのさ」
「私、夢の中でお山さんくらい大きくなってた……」
「オレも、夢の中で大きくなっていく未唯を眺めていたような……」

ガイアは、ニコッと微笑んだ。

「夢じゃないよ。あれは本当に起きたんだ。そしてボクが全て元通りにした」
「ほ、本当に?」
「ふふ、信じられないならそれでいいさ」

パッと姿を消すガイア。だが声は続いた。

「十分楽しませてもらったよ。その代わり、死ぬまでボクがキミ達に加護を授けよう。あと、どうやらタダオは、大きなおっぱいがお望みのようだね」
「な、なっ……」
「ミユの成長を楽しみにしてるといいさ。じゃあね!」

こうして、父娘の奇妙な体験が幕を閉じたのだった。そしてその言葉通り、数年後、未唯は唯夫好みの爆乳高校生に育ったそうな。

「……さて、次は誰で遊ぼうかな?」

変身描写だけ書きたい!(TS/AP1)

子供というものは、得てして好奇心が旺盛なものである。自分の家のリビングに、肌色の大きな袋があったら、入りたくなるものなのだ。

「(えへへ、秘密基地つくろー!)」

少年が今四つん這いになって入ろうとしている秘密基地、と言うよりは大人一人分くらいしか無いその袋は、大人が見れば背中に大きな口が開いている風船式のダッチワイフだった。しかも、かなり質が低い。

「(中が、光ってる?)」

袋の中に入った少年は、昼間のリビングには不釣り合いなネオングリーンの光で、自分の体が照らされていることに気づいた。その光に少年が見とれていると、急に入り口が小さくなり始めた。

「え、だ、だめ!外に出して!!」

少年は袋の口をこじ開けようとしたが、みるみるうちに入り口は縮小し、ついに消えてなくなってしまった。

「出して出して出して!!!」

袋の中で暴れ、膜を引きちぎって出ようとするが、突然緑の光が強くなり、少年の目をくらませてしまった。

「うわっ!!」

目を閉じた少年には、自分の心臓の鼓動が強く聞こえる。初めは、他の音が全くしないのでそのように聞こえると思っていたが、心臓の拍動は確実に強くなり、また速くなっていた。

「(な、なに、怖いよ……ママ、助けてっ)」

小さい子供にはよくあることだが、少年が家にいすらしない母親に助けを求めた瞬間。

《ドクンッ!!》
「うぐっっ!!」

全身に、大きな衝撃が走る。そして、体が段々と熱くなっていく。と同時に、袋が段々膨らみ、元の形、つまり等身大の女性に似た風船人形の形を取り戻していく。外から人形の様子を見られない少年には分からないことだが。

「ううっ!ボクの体が、動か……されてるっ!」

袋に入ったときのまま、四つん這いだった少年の体が、袋に合わせるように格好を変えられていく。少年を大きくしたら、ダッチワイフと同じ位置になるように。

「ボク、どうなっちゃうの……!?」

目だけを動かせる状態の少年だったが、腕の皮膚が張るような感覚に視線を動かす。

「えっ……ぼ、ボクの腕、膨らんでる……!?」

なんとその腕は、現在進行形でムクムクと大きく、長くなっているではないか。幼児の域を少しだけ抜け、少しずつ筋肉質になっているがまだまだ丸っこい少年の腕が、引き伸ばされるように成長していた。脚の方もしゅるしゅると伸び、同時に脂肪がついて、ムチッとした太ももが形成されていく。

「こ、このままじゃ破裂しちゃうよぉっ!!」

皮膚の成長が後回しなのか張ったままのせいで与えられる圧迫感に、体の成長を膨張としか捉えられない少年の混乱した精神は、次に起こった変化でさらに混乱を極めていく。少年の胸が、ムクムクと膨らみ始めたのだ。彼の母親の小さめなバストサイズを、ものの数秒で越えてしまう少年自身の乳房。製作者の性癖のせいかスイカサイズに大きいダッチワイフの胸に引き寄せられるように、ムギュギュギュと膨らみ続ける。だがその頃には体が十分に大きくなり、余裕があったダッチワイフと同じくらいの身長になった少年の視線は、ダッチワイフの頭部にすっぽりと隠されてしまった。

「んむむ~っ!!」

顎の動きすら抑えられ、うめき声しか挙げられない少年。その声音も、幼い子供ではなく、大人のアルトボイスに変貌を遂げていく。その間にも、男性として生活していた彼の、女性としての魅力が過剰なまでに引き出されていく。ムチムチとした足に対してあまり大きくなったヒップがボワンッ!と爆発するように大きくなり、風船人形をちぎらんばかりにその巨大さを主張する。異様なまでに大きいはずの人形の胸の部分すら、少年の大きく成長した乳房に更に引き伸ばされる。

足の部分などはピッチリどころかパンパンで、今にも破けそうである。

《ピリッ、ピリッ》

そして、それは実際に破け、ビニールの皮の中から、成長したばかりの透き通るような肌が見え始めた。

《ピリリッ、ビリーッ!》

破けるスピードが急激に早くなり、太ももの部分から上下に亀裂が広がっていく。プルッとしたヒップがあらわになり、キュッとしまった腰回りが見え、バァンっと抜け殻を破り去った乳房は、その衝撃でタプンタプンと揺れた。

「ぷは~っ、死んじゃうかと思ったぁ……」

体が自由に動かせるようになった元少年が、腕と頭に残った膜を剥がす。その顔は純粋無垢な子供ではなく、清楚な女性のものとなり、短く切っていた黒い髪は腰にも届くロングヘアに。指はすらっと美しく伸びていた。

沙月と命

男子中学生の少年は、目の前の机に置いてあるコップに入った、青と赤のスムージーをマジマジと見た。毒々しい色をしたそれの中では、何かが動いているようにも見える。

「なんだよこれっ!」
「今からキミに飲んでもらうものだよ、リア充くん」
「り、リア……?」

彼は、椅子に手足を拘束され、丸メガネをかけた科学部の男子生徒に、青のスムージーのコップを口に近づけられつつあった。その表面はもこもこと生きているように動き、まるで少年の中に入りたがっているようだ。

「く、こんなもの飲んだら死んでしまうっ!」
「大丈夫、死にはしない。ただちょっと、痛いかもねぇ。さぁ」

部員は少年の鼻をつまみ、スムージーを一気に少年の口の中に流し込んだ。

「うぅっ!ぐぼぼっ!!!」
「ほら、こぼしちゃだめじゃないか。キミの彼女も観ているんだからね」

少年の彼女は、二人の目の前で柱に縛り付けられ、スムージーを飲まされる少年に「沙月(さつき)!!」と叫んでいた。少年は、スムージーを飲み込みたくはなかったが、スムージーの方から、少年の中に潜り込んでいってしまう。

「んごごっ!」
「元気がいいねぇ、さすがボクが作った子たちだ……」

十秒もしないうちに、コップの中は空っぽになり、部員は少年からコップを離した。

「さて、お次はこっちを、カノジョさんに……と」

部員は、少年にしたのと同じように、少女には赤いスムージーを飲ませた。

「んぎゅうっ!?」

彼女も抵抗する様子を見せたものの、結局スムージーは一滴残らず少女の体の中に入っていってしまった。

「命(みこと)にまでそんなこと!ただではすませないぞ、この悪党め!」
「悪党で結構、結構。そんなことより、今飲み込ませたもの、何だか分かるかい?わからないだろうねぇ。だって、ボクが丹精込めて作った実験生物なんだからねぇ」
「実験……って、俺たちをモルモットにするつもりか!」

部員の丸メガネが、キラっと光った。

「ご名答」
「てめぇ、常識ねぇのかよ!!」
「常識……?そんなもの、とっくのとうに忘れてるねぇ。普段は、実験の秘匿性のためにただの根暗なヤツを演じてるが、それだけじゃ下らない下らない。ボクの知識と技術を活かしてなんぼの人生だからねぇ」

言葉を紡ぐと同時に部員の顔に現れるその笑みは、悪魔のようにネジ曲がり、悪意に満ちたものだ。

「悪魔、め……っ!」
「ふっ。そろそろ、次のステップに移らせてもらうよ」

部員のポケットから、アンプルと注射器が取り出される。アンプルには、透明の液体が入っている。

「まだ俺たちに何か打ち込むつもりかっ」
「活性剤さ。さっきキミたちの体に入っていった子たちが、キミたちの細胞に十分になじんでいるころだろうからね。それでは」

少年は必死に拘束から逃れようとしたが、抵抗むなしく、注射器を通して活性剤が注入される。

「んぐぅっ!!!??」

それと同時に、少年の体全体が殴られたかのようなショックを受ける。ドキンッ!!ドキンッ!!と強い感覚が少年を襲う。少年は痛みを目を閉じ歯を食いしばって耐えるが、心なしか手足の拘束が緩んでいく気がする。

「(こ……れ、はっ……逃げる、チャンスっ……!!)」

衝撃が収まると、少年は逃走のために拘束を振りほどいて、目を開けた。これで自由、と立ち上がって逃げようとした少年を、しかし、大きな違和感が襲った。

「(周りのものが、でかくなってる……!?)」

ちょうどいい高さだった机が、かなり高めになり、椅子も高くなって、少年の足は宙に浮いていた。部員も大きくなったように見える。

「(ちょっと待て、俺の周りが全て大きくなった……って、ことは……俺が、俺が……)」
「おや、思ったより効果が出るのが早かったようだね」
「俺、縮んでる!!??」

驚く少年の前で、同じく活性剤を注入された少女も、ギュッギュッと押し潰されるように小さくなっていく。中学生が小学生に、そして幼稚園生くらいまで。

「はい。これで初期段階は完了」
「ふ、ふざけるなっ!!」

少年も、同じく幼稚園生くらいまで小さくなっていた。声もかなり高くなっている。椅子から飛び降りて弱い力で部員に立ち向かうが、手も足も出ない。

「まぁ、諦めたまえよ。男なのにみっともない……いや、今は男じゃないんだっけ……?」
「はっ!?何言ってんだ、こんなに小さくなっても俺のチンコは……」

『ついてるぞ』と言おうとして、股間をまさぐる元少年。だが、そこには何もない。幼稚園生にも大きな豆粒くらいのモノがついているはずなのだが、なにもないのだ。部員が、自分の姿を確認しろと言わんばかりに差し出した鏡を見ると、瞳の色が青くなっていた。

「お、お、俺が女になってる……?」
「いや、女でもない。無性(むせい)の状態なはずだよ。そんなことより、カノジョの様子を見てみたらどうだい?」
「そ、そうだな」

無性、の意味が少年にはあまり分からなかったが、うながされるがままに、少年は少女の元に駆け寄った。少女も体が小さくなったおかげで拘束が外れ、床の上に四つん這いになっていた。着ていた服はほとんど脱げ、ブラウス一枚になっていた。といっても、少年もTシャツ一枚になっていたが。

「命(みこと)、大丈夫……か……?」
「さ、つ、き……」

少女の目は赤く光っていた。そしてその目を見た途端、少年の中の何かが変わった。

「命、さま……って、俺は何を!?」
「わ、わわ、今すごくイケナイこと考えてたっ!」

少年には、少女が、自分のつき従うべき存在に見えた。逆に少女には、少年が奴隷のように見えたのだろう。あたふたする二人に、部員が近づいてきた。

「どうだい?新鮮な感覚だろう?メスとオス、いや、キミたちはメスと無性の特徴を得たんだよ。ボクの子たちが持っている社会構造を、引き継いだんだねぇ」
「意味分かんないんだけど……」
「確実な生殖のために、メスが強い社会構造と、そのための遺伝子の特徴を持っているのさ。メスはあらゆる環境で生殖に適した生体構造を作り上げ、無性はメスの指示に従う。簡単に言うと、メスは無性を好きにできる。そして、メスは自分の体を作り変えられるのだ」
「だから……?」
「少女よ、少年の髪が伸びたらいいな、とか、考えてみるがいい」
「は……?うーん……」

少女が考えこむと、少年の髪が、バサッと伸びて、肩に掛かる程度になった。

「うわっ、すごい!」
「お、俺の髪が……」
「いいだろう……少女よ、キミは少年を意のままに操れるのだ」

少女は、目をつぶって少し考えると、うん、とうなずいた。そして、少年に向かってニコッと微笑んだ。

「沙月、私の妹になって!」
「お、お姉ちゃん、そんなのやだよっ!……って、俺は今何て言った!?後輩にお姉ちゃんって!?」
「おや、同級生ではなかったのだね……」

頭を抱える少年を、少女が撫でる。

「そうなの、沙月のほうが一つ上級生。でも、今日から私がお姉さん!」
「ほぉ……面白い。では、ボクはカメラを残して録画しているから、あとは隙に続けてくれたまえ……」
「うん!」
「うん!……じゃねえよ!なんで俺らが……」

少女の瞳が赤く光った。

「沙月ちゃん!年上の人には優しくしなきゃダメだよ!」

と同時に、少年の瞳は青く光った。

「う、うん。ごめんなさい、命お姉ちゃん」

部員はフッと笑うと、部屋から出て行った。少しすると、カチャッと鍵がかかった音がした。

「あ、そうだ……お姉ちゃんなんだから、もうちょっと大きくならなくちゃ……」

少女が息を吸い込むと、手足が少しずつ伸びて、ブラウスから股が見えるほど成長した。それでも元の体よりは小さく、小学生低学年程度の幼児体型のままだった。

「さぁ、沙月ちゃん!」

少女の瞳は赤く光ったままだ。

「なに?お姉ちゃん」
「沙月ちゃん、私たち、これから子作りしないと!」

空気が固まった。数秒の沈黙の後、二人の瞳が光るのをやめ、二人は慌てて視線をそらし背中を向け合った。

「こ、子作りぃっ!!??じょ、冗談やめてくれよ、沙月!!」
「わ、私、何かに取り憑かれてたみたい!!もう、恥ずかしいよ!」

二人の幼女は、顔を赤らめながら下を向いた。

「それで、どうする……ここから何とかして出ないと」
「うん、私たち、何かに操られてるみたいだし、この状況は脱しないとね」

ほとぼりが冷めてくると、元少年は部屋のドアの方まで歩いて行く。少女は、それを心配そうに見つめる。

「ち、ちくしょ、背伸びしてもとどかないぃ……」

元少年は、幼稚園生の体でドアノブに手を伸ばすが、ノブが上の方に設置されているのと少年の背が低すぎるせいで、どうしても手が届かない。その様子を見て、少女はクスッと笑った。

「わ、笑わなくてもいいだろ!?」

少年は、少女にむくれ顔を見せる。

「ご、ごめん、っ、でも……」

そして、少年と少女の目が合ったとき、またもや瞳が光りだした。

「ちょっと、背を伸ばして、もらおっかな……」
「や、やだっ……んぐっ」

少女が身長を伸ばした時とは裏腹に、少年の体からはバキッ、メキッと痛々しい音が聞こえる。

「痛いよぉっ!!」

自分の体を抱きしめ、悶えると、少年の体がグググッと体積を増し、手も足もメキメキ成長して、中学生位のものになった。ただ、筋肉はあまりつかず、肌は白く繊細で、男性らしくはなかったが、かと言って女性の二次性徴も全く無く、女というわけでもなかった。

「あ、そっか……沙月ちゃんが『無性』っていうのは、男でも女でもない、ってことかぁ」
「えっ……」

少女が少年の後ろに回りこんで、背が伸びたせいでTシャツからはみ出て、さらけ出された股間を確認する。

「うん、私のと違うね……」
「お姉ちゃん、恥ずかしいからやめてっ!……」

少年がとっさに股間を手で隠すと、少年の瞳の青い光が消えかかる。

「あ、お、俺は……俺の体、元に戻って、ない……」
「沙月ちゃん」

逆に、少女の赤い光は強くなった。それに呼応するように、少年の青い光は強さを取り戻した。

「その言葉遣いは、ダメ」
「ごめんなさい、お姉ちゃん……でも、沙月、男でも女でもないんだよ……?」
「じゃあ、女の子にしてあげる」
「ひゅあっ……!」

少年の胸がピクピクっと痙攣し、足がガクガク震え始めた。メキィッと音がすると、腰が横に広くなり、尻がムチッと膨らんで、男の時にはなかった丸みを帯びた。脚は内股になり、太ももにも丸みが加わる。次に、Tシャツに小さめな突起がピクッと突き立った。

「は、恥ずかしいよぉっ」

それを隠そうと両手を当てると、その下で胸が膨らむ。手のひらの下を満たすように脂肪がつき、さらに少年の手を押しのけようとする。しばらくそれが続くと、上半身全体がメキメキと形を変え、少しのくびれができ、ヘソも位置を変える。

「沙月ちゃん沙月ちゃん、あともうちょっとで女の子になれるよ」
「へっ……?う、う、おなか、がっ」

少年の腹部に、新たな器官が作られていく。生殖に必要な、卵巣と子宮が、少年の腹部を満たすように成長する。

「よし、完成……」
「うぅっ、お姉ちゃん、私、どうなっちゃうの……?……お姉ちゃん?」

少女は難しい顔をしている。少年は不安げに、少女に近づく。

「私、お姉ちゃんぽくない……」
「え?」

中学生の身長に、中学生にしては少し大きめな胸と尻を持った『妹』と、小学生低学年のちんまりとした体の『姉』。それをそのまま、本当に姉妹として捉えるには、違和感が大きすぎた。

「……そ、そうだよ……私、お姉ちゃんの妹じゃなくて……命のカノジョなわけだし……俺が女なわけないし……」

少年の瞳から光が消えていく。

「でも、お、俺に、おっぱいが……」

シャツを控えめに押し上げる自分の胸に、戸惑いながらも目がくらんでしまう少年。

「ふへ、ふへへ、触り放題……」
「沙月……」

自分だけの世界に入りかけていた少年だったが、少女の存在を思い出した途端、背筋が凍った。

「命!!ご、ごめん、俺はそんなつもりじゃ!!」

少女は怒りを露わにしていた。しかし、それは少年が思っていたものとは違った。

「沙月は、私に付き従うものなの……だから……」

小学生サイズの少女の体が震え始める。ただ、怒りからくる震えとは確実に違う震えだ。少女の体は、急速な成長の準備をしていた。

「み、命……?」
「だからぁっ!!」
「うわぁっ!」

少女の体が爆発した、ように見えた。というのも、130cm程度だった少女の体が一気に170cmまで伸びて150cm程度の少年を追い越したのだ。それだけでなく、胸もバインッと膨らんでGカップほどになり、ブラウスはいたるところが破れてしまい、大きく伸びた手足にはムチッとした脂肪がついが。その成長の衝撃で、部屋の中の物がごちゃまぜに吹き飛ばされ、床に少女の脚がめり込んだ。

「沙月ちゃんは、私以外見ちゃダメなの……」

元々より成長した少女は、淫らな目で少年を見つめた。そして、大きな胸をさらに強調するように手で持ち上げ、少年に見せつける。

「命……お姉ちゃん……っ」
「ほら……」

そして少女は、少年を抱きしめた。少年は、柔らかく大きな体に包み込まれ、その腕の中で安心感を覚えた。

「大好き、お姉ちゃん……」
「ありがと、沙月ちゃん……でもね、私たち、子作りしなきゃ……」

先程から強さが回復してきていた、少年の瞳の光が、一瞬にして弱まった。

「だ、ダメだ……沙月、そんなの違う!アイツの、いや、俺たちの体の中にいる得体のしれない生き物の言いなりになるなんて、ダメだっ!」

対して、少女の赤い光は、弱まるどころかさらに強まった。

「沙月ちゃん、何を言うの……?おとなしく、私のものになってよ……」

少年は、少女の意思で活性化される実験生物に心を乗っ取られまいと、これまでにない抵抗を見せ、瞳の光は点滅した。

「ダメだ、ダメだ、ダメだ!」
「そう、なの……それなら……」

すると、少女の体が、更に大きくなり、180cm、190cmと、グイッ、グイッと背が伸び、ブラウスを引きちぎるように胸が膨らみ、顔と同じくらいになる。そして少女は、増えた体重に任せて、少年を床に押し倒した。

「無理矢理服従させてあげる……」
「ダメ、だ……命、お姉ちゃん……違う、違うっ……俺は……私は……っ!」

光が激しく点滅し、少年の口調が一言ごとに変わる。

「命、は……、命お姉ちゃんは……なんでっ……これで……いいのかよっ……」
「私……?沙月ちゃんを私のものにできるなんて、願いがかなったようなものだから」
「えっ」
「沙月ちゃんは、私のものにはなりたくなかったみたいね?だから、そんなに抵抗する。でも、私は違うの。だから……」
「ん、んごごっ!!!んああっ!!」

少女の瞳が強く光った途端、少年のBカップほどの慎ましやかだった胸が、ムクッ、ムクッと大きくなり始め、シャツを押し上げる。

「私のものになって、楽になって?」
「んうっ!!……命、そんな……私、やだ……うううっ!!!」

胸の成長スピードが上がり、いつしか大きくなりすぎた少年の胸は、持ち主の動きを止めてしまうほどになった。

「私の言うこと聞かないと、一生動けない体にしちゃうよ……?」

少女の言葉は、本気だった。強く光る赤い瞳は、少年の青い瞳を捕らえて離さなかった。とめどなく大きくなる乳房は、自分の意志ではどうしようもなく、さらに少年にのしかかる少女の体は、どうやっても押しのけることはできない。逃れようのない現実を突きつけられ、少年の心は重圧で潰れ始めた。

「私っ……は、命の……命、お姉ちゃんの……」
「私の……?」

そして、プチッと、何かが切れた。

「俺は命の妹……、私は、命お姉ちゃんの、妹……」

青い瞳の光が、消えなくなった。

「もう一回、お願い」
「私は、命お姉ちゃんの妹、命お姉ちゃんの、好きにしていいもの、だよ……」
「うん……沙月ちゃんを、絶対に離さないよ……」
「うふふっ……うっ、ふっ……」

少年の胸が小さくなる代わりに、体全体が生殖に適した大きさまで成長した。

「じゃあ、いくよ、沙月ちゃん」
「うん、命お姉ちゃん……」

少女のヘソから産卵管が生成され、少年のヘソに突っ込まれる。はたから見れば異様すぎる風景ではあるが、二人にはこれが当然に思えた。

「お姉ちゃんの子供が、私の中に……」
「ちゃんと、元気な子を産んでね……」

そして、二人は抱きしめ合い、二人だけの時間を楽しんだ。

「……ふむふむ……この星の知的生命体には、思いの外なじめたようだな……」

ところ変わって、二人の様子を隣の部屋で、ずっとカメラを通して眺めていた、部員。

「宿主と繁殖方法を求め、この星に来て5年。長い道のりだった……二人の中で頑張ってくれた同志たちよ、実験生物と呼んですまなかった。だが、これからも健闘を祈っているぞ。生まれてくる子供にも、期待をかけよう」

部員の口から、ピュッと青い液体が飛び出した。部員はその場で跡形もなく消え去り、液体は空中をふわふわと漂ったあと、窓の外に出て、空の彼方に消えた。

『機関』(pixivより転載)

ここは私達が住んでいる世界とはまた別の世界。見た目は似ているが、歴史がどこかでネジ曲がり、地球全体を破滅に導く核戦争が起きてしまった後の、荒廃した、漫画で言えば世紀末の世界。

賊がはびこり、人々の心はすさみ、文明などほとんど存在しないこのパラレルワールドに、たったの一箇所だけ、技術進歩が途切れることなく続いた場所が、存在した。

『機関』と呼ばれるその場所は、荒廃した都市の真下に作られ、核戦争があったときから、少しずつではあるが発展をつづけていた。『機関』では、優れた科学者たちがアンドロイドや放射能のない水や食べ物などの生産法などの革新的な技術を開発し続け、いつしか戦争前の技術を上回るほどの近代的な世界を生み出していた。

「……」

そのメインロビーに、一人の少女が連れられてきていた。連れられて、といっても、テレポーテーション、つまり瞬間移動技術で転送されてきたようなものだ。彼女が着ている赤いジャンプスーツは、この世界に点在する対核兵器用のバンカーの出身であることを示していた。バンカーの中では、外の放射能だらけの世界とは違い、あらゆる生活機能が備わった、快適な暮らしができるようになっていた。金髪のサラサラした長い髪も、世紀末の世界ではなく、バンカーでの安寧な暮らしの中で生きてきた証拠になっていた。
日本で言えば小学生くらいの少女は、その幼く可愛い顔に、暗い、死んだような表情を浮かべていた。この少女を連れてきた、今は隣に立っている男も、あまり浮かない顔をしている。

「君にはすまないことをしたが、君の能力を買ってのことなんだ……」
「私の、能力……」

少女は言われた言葉を落ち込んだ声で繰り返すのみで、反応らしき反応を示さない。その二人に、白衣を着た白髪の男性が近づいてきた。

「ドミニコ博士。言われたとおり、バンカーから女の子を一人連れて来ました」

ドミニコは、落ち込んでいる少女を見るなり、男性に怒りの目を向けた。

「途中、何かあったのかね!3G-543(さんじーごよんさん)!」

3G-543。これが、少女を拉致した男の名前、というよりシリアルコード。男は、人間にそっくりのアンドロイドだったのだ。

「申し訳ありません、バンカーの中でこの子を探す際、警備に見つかってしまい……住民を全滅させるしかありませんでした」
「なんということだ!543、お前は室内農場送りだ!」
「……はっ」

男はお辞儀をして、その場から去っていく。ドミニコは、少女に向き直り、「すまない」と頭を撫でようとした。だが、少女はその手をパンッと自分の腕で弾き飛ばした。

「なんで、お父さんも、お母さんも……友達のジェニーも!みんな殺しちゃったの!?」
「こんなことになるとは思っても見なかったのだ……我々のアンドロイドには、世界一のステルス技術が搭載されていたのだから、まさか見つかるとは」
「そんなことはどうでもいいの!ねえ、みんなを返して、ねえ!!」
困り切ったドミニコは、近くにいた女性研究員に手招きした。

「君、すこしなだめてやってくれ」
「は、はぁ……ねぇ、あなたの名前……」
「名前なんていいでしょ!?」

一度怒りのタガが外れた少女は、まくし立てるように怒鳴り続けた。

「私も殺してよ!」
「それはできない相談よ、女の子を殺すなんて」
「いいのよ!私が殺してっていってるんだから!」

「……仕方ない」

見るに見かねたドミニコは、少女の腕を握った。

「い、いたいっ……」
「少しの間、眠っていてもらう。落ち着いたら、ここがどんなにいいところか分かってくれるはずだ」

そしてドミニコは、薄い睡眠薬が入ったアンプルを白衣から取り出し、針をつけて、少女の手首に刺した。

「何するのよ!……あ、あ……だめ……眠くなって……」
「おやすみ」

少女は睡眠薬の効果に、ただ従うだけしかできなかった。


次に目が覚めた時、少女はベッドの上に寝ていた。

「お、お母さん……」

来るはずのない母親を呼び、起こったことを思い出して、涙をながす少女。だが、一人の時間は長く続かなかった。ドミニコが、少女の部屋に入ってきたからだ。

「どうだね。ゆっくり休めたかな」
「……ふん」
「……まあいい。『機関』へようこそ。アン、それが君の名前だね?」
「……そうよ」

少女はベッドに横たわったまま、ドミニコから目をそらしている。ドミニコはそのまま話を続けた。

「『機関』は、この世界で最も技術が進んでいる人々の集まりだ。そこに君が連れられてきた理由は一つ。君の能力が、我々に必要だからだ」
「……また、私の能力、なのね?」
「その通り!アン、君は、この世界においては稀有な存在なのだよ。大きなポテンシャルを秘めているのだ」
「バンカーでも一番頭が悪くて、力もないのに?」

アンは、ドミニコを睨んだ。

「とにかく、我々は君にバンカー以上の安全を与えられる。バンカーにいたときよりも、ずっと重要な役目を背負ってもらうけどね」
「ホントに?私が重要?」

アンは、少しだけ敵意を緩ませた。

「私、バンカーではずっと役立たずって言われてきたのよ?」
「ここでは、そんなことはない。むしろ、我々の存亡に関わるくらい、君は重要なんだ」
「そ、そうなの?」

アンは、少し目を輝かさせた。

「そうだよ。さあ、今日からその役目にとりかかってもらうことになっている。身体検査に来てくれないか」
「……わかったわよ。行けばいいんでしょ」

アンは、ドミニコに用意された着替えを着たあと、ドミニコに連れられ、『機関』の中にある生体研究施設に足を運んだ。『機関』の中では、アンがバンカーで見てきたものより新しく、洗練された世界が形作られ、子供の好奇心をそそるものがたくさん存在していた。アンは子供心ながらに、この施設に自分が大きく貢献できると分かって、心を弾ませていた。

「さあ、ついたぞ」

10分ほど歩いて付いた小さな部屋には、横倒しになったポッドのようなものが一つ設置されていた。それはアンの体よりもかなり大きく、大人が一人入っても十分に余裕がありそうだった。ポッドは大きなガラスが嵌めこまれ、中が見えるようになっていた。

「これに、入るの?」
「そう、君の体をくまなく検査しないとならないんだ。外は放射能汚染がひどいと聞いているからな」
「私、外に出たことなんて……」
「まあ、決められた手順というものがあるのだよ。さあ、入ってくれたまえ」

アンは、ドミニコの言葉とともに開いたガラス扉から、恐る恐るポッドの中に入り、枕のようなクッションに頭を横たえた。

彼女が、二度とそこから出られないことも知らずに。

「入った……わよ」
「よろしい。それでは、はじめよう」

ドミニコは、表情一つ変えずに、ポッドのそばにある操作盤の、大きな緑のボタンを押した。すると、シューッという音とともに、ガラス扉が閉じた。アンは、ドキドキしながら次の動作を待っていたが、その口を覆うように、ガスマスクのようなものが枕から飛び出し、アンの頭部をがっちりと掴んだ。

「んっ、んんーっ!!」

次に、マスクから逃げようとジタバタともがく手足を、ロボットアームが正確に捕まえてひっぱり、アンはポッドの中で強制的に大の字にされてしまった。

「どうだね。そんなに痛くないだろう」
「ん~っ!!(放して!ここからだして!)」
「ほうほう。放せ、出せ、か。できないな」

アンの思考はポッドに伝わるらしく、操作盤に表示されたその思考を、ドミニコは読み取っていた。そのうちにも、アンにシャワーのようなものがかけられ、服がびしょぬれになった。いや、濡れただけでなく、その場で溶け始めた。

「この日のために特別に用意した服だ。少しの食塩をかけるだけで、すぐに溶ける」

アンの小さな体がだんだんとさらけ出され、裸を赤の他人に見られる恥ずかしさのあまりアンの顔が紅潮した。

「(私をこんなにして、嘘をついたのね!)」
「嘘?嘘などついていないぞ?すぐにわかる」

完全に服が溶けきると、今度はその股を包むように、吸盤のようなものがアンに取り付いた。

「(もういやぁ!)」
「もう?いやいや、まだまだこれからだよ」

ドミニコは操作盤の表示を確認し、次のスイッチを入れた。すると、アンの手首にチクッと刺される刺激が、そして次の瞬間に、心臓がドクンッと強く脈を打つ衝撃が伝わった。脈が打たれるごとに、心臓だけだったその衝撃が、全身に伝わっていき、アンの体が、ビクンッビクンッと痙攣した。

「君は、この世界にはびこる、破壊と殺戮をもたらす巨人のことを知っているかね?」
「(こ、こんな状態でそんなこと……!)」

アンの体全体が、ビクンッビクンッと動き、全身の静脈が浮き立ち始めるのを見て、ドミニコは説明を始めた。

「彼らは、もともと人間だったらしい。我々と同じね。それが、一種のウィルスで強制的に怪物に変えられたらしい」

アンは、自分の体が次第に熱くなっていくのを感じた。

「その名も、『強制進化ウィルス』と言うらしいがね。核戦争前に、ここにあった国が超人兵器を創りだそうとして開発したものらしい」

アンは、自分の体が自分のものではなくなっていく感覚に襲われた。体内でグツグツと煮えくり返った細胞たちが、形を歪め始めていた。

「我々は、そのウィルスをある経路で入手した。そして徹底的に研究し、新しく作り上げたのが今君に注入している『強制成長ウィルス』だ」

そこまで説明が達した時、ついにアンの体が変化をし始めた。アンの骨がゴキゴキと言いながら大きく伸びはじめたのだ。

「ウィルスに遺伝子を書き換えられた破骨細胞と造骨細胞が動きを急加速させはじめたな。かなり痛いはずだが、我慢してくれ」
「んんんんーーーっ!!!!」

アンの手足は、太さを変えずに伸びていたが、次第に、体から何かが送り込まれるかのようにグググッと太くもなり始めた。

「(私が、押し広げられてくよぉ……!)」
「脂肪細胞にも、ウィルスの効果が出始めたようだな。胸部はあまり成長してないようだが、これは参ったな」

ドミニコが言うとおり、胸の部分はまだ小さな乳首しか存在しなかったが、これも、次第にプクッと膨れてきた。

「おお、乳腺が成長を始めたか。となれば次は……」

大きくなる乳首とともに、胸部に膨らみが見え始め、次の瞬間、ドカンッと大きくなった。ポヨンポヨンと揺れるメロン大の乳房は、まだ足りないというようにムクッムクッと成長していく。

「胴体も伸びて、女性らしいくびれができ始めているな。子宮も、今頃成熟しているはずだ。もともとのウィルスは不妊という副作用を引き起こしていたようだが」

股の中で、性器がムクムクと大きくなっていくのが、ドミニコにはポッドに付いたセンサーで、アンには急激に大きくなっていく股間からの快感で分かった。同時に、肉がついていなかった尻も、プクーッと膨れた。

「(あっ……んんっ……!)」
「よし!アン、君は『機関』の子供を授けられる、立派な女性だ!」

すでに170cm位になっていたアンの肉体は、ビクンビクンと震えていた。足にはむっちりとした脂肪がつき、胸にはバスケットボール並の大きさの乳房がタプンタプンと揺れている。幼さを少し残した顔には、体が変わる前と同じ、サラサラした金髪。貧相な体だったアンは、今や『機関』一のグラマラスで、美しい女性に変わったのだった。

「(こ、こんな体にして……なにするつもりなの……)」
「まだ、気づかないのかね。仕方ない、一から説明しよう。『機関』は、もともとは15人くらいの小さな団体だった。核戦争の時に生き残れた、幸運な我々の祖先だ。今『機関』にいる200人全員が、その15人の子孫、というわけだ」
「(それが……どうして、私に関係あるの……?)」
「ふむ。このように小さい団体から大きな共同体を作るには、何回も遺伝的に近しい者同士で、生殖行為を行わなければならない。ただ、これは遺伝子的にリスクが大きいことがわかっている」
「(……)」
「つまり、アン、君のような外部からもたらされた遺伝子が必要なのだ」
「(私に、子供を産んでほしいの?そんなの、いや!)」
「もう、断る権利は君にはないよ」

ドミニコは、操作盤のスイッチをポンと押した。と同時に、アンの性器の中に、股の拘束具から何かが送り込まれた。

「(な、なにしたのよ!)」
「アン、君の最初の子種だ」
「(えっ……んんっ、おなか、おなかがふくらんでる!)」

子種を受け取ったアンの子宮の中では、すでに受精が済み、胎児が成長して、アンのくびれた腹部を中から押し広げていた。あっという間に臨月の大きさまで育つと、そこで膨張は収まった。

「(いた、いたいっ!)」
「陣痛のようだね」
「(ぐっ、ああああっ!!)」
「ちなみに、今のは私の精子だ。やっと子供ができて、私も嬉しいよ」

アンの膣から、赤子が飛び出すように出てきた。そして、股間の拘束具からポッドの外に送り出されると、産声を上げた。ドミニコはその赤ん坊を取り上げ、ニコニコしながらあやすと、ポッドの脇においてあったベビーベッドのようなものに載せた。

「(ひどい、ひどいよ……私、ずっとこのままなの……?)」
「ああ、そうだ。君はそのポッドから出られはしない。その代わり、仮想現実の世界を見せよう。両親といつまでも中にいられるぞ。それに、この行為はそこまでひどくないぞ。上の世界では、奴隷商が人を人として扱わず、無害な住民が、賊によってスポーツ代わりに殺されることもあると聞いている。それと比べたら、君の体は傷つけられることはない」
「(でも……)」
「我々も生きることが必要なのだ。明るい未来をつくるためには、どんな犠牲でも惜しまない。とうの昔にそう決め、実際そうしてきた。アン、君だけ例外とはいかないのだ」
「(う、うう……)」

アンは、目を閉じて、自分の悲運を恨んだ。しかし、「それでは、仮想現実装置オン」というドミニコの声が聞こえた後、目を開くと、そこには自分のこれまでの生活、両親や親友があった。

「アン、どこに行ってたの?心配したわよ」
「アン、そろそろ食事が配給される時間だぞ」
「アン、明日もまた遊ぼうね!」

「お母さん、お父さん、ジェニー……うん」

苗床となってしまった自分の現実から逃げるように、仮想現実にのめり込んでいくアンだった。

環境呼応症候群 風邪の子

子供は風の子、とはよく言ったものだ。2月に入って、俺が住んでいる場所はかなり冷え込んでいるが、外で遊んでいる子供をよく見かける。という俺も、部活やらバイトやらで家の外にいることは多いのだが。

しかし、俺の妹には、子供は『風邪』の子の方がよくあてはまる。病弱な妹は、冬だろうが夏だろうが関係なくよく風邪を引く。俺もよく風邪をうつされたが、俺が微熱が出たりせきが出たりする程度の症状で収まるのに対し、妹はよく高熱を出して、同じ風邪を引いているのに俺が妹を看病することはざらにあった。

ただ、子供、といっても、俺も妹も高校生で、子供と呼んでいいのか分からない年代になった。妹の方は、体が小学生のように小さいので子供に間違われることも多々あるが……この前なんて、家族で外食したときに俺がアイツの保護者に間違われて、帰ったあと八つ当たりにあった。アイツ、体は小さいくせに殴ったり蹴ったりするのはうまいんだよな。

だけど、最近になって妹はめっきり風邪を引かなくなった。学校での早退欠席が日常茶飯事だったのに、少なくとも今年に入ってからは一回も遅刻すらしていない。俺だって月に一回はするのに。そんなことはさておき、妹はそれまでの病弱さが嘘のように消え去り、内向的だった性格が段々と変わってきている。

「兄貴!兄貴ったら!」

兄貴、か。数ヶ月前は確実に「お兄ちゃん」としか呼ばれなかったが、性格が変わったのか何なのか、俺のことを兄貴と呼ぶようになったのだ。病弱だった頃は俺への依存が強かったから、自立してくれるのはありがたい。ただ……

「また私の服を兄貴の汗まみれのくっさいシャツと一緒にしやがったな!?このくそっったれ!」

俺の部屋の扉の外から聞こえてくる妹のセリフは、明らかに汚すぎる。これまでの関係とのギャップが酷すぎるのだ。前だったら、「お兄ちゃんにくっついてると、安心するの……」とか言ってきたくせに!ああ、あの時のほほえみが懐かしいぞ!だが、噂によるとこういう口調で話してくるのは俺だけらしく、他の友達や先生に対する態度は、明るくなっただけであまり変わってないらしい。

そんなこんなで、妹は全く病気をしなくなった……わけではない。風邪を引かなくなった、といったが、それは外から見たときの場合だけで、家の中では立派に病弱娘のままであった。さっきの罵倒も、かなりの鼻声だったし、また風邪を引くのだろう。そうなると、俺には気になることが一つできるのだった。俺は、自分の部屋を出て、妹の部屋の扉をこんこんと叩いた。

「入るぞ?またおまえ風邪引いてるだろ?」
「ああ、いいよ。また兄貴の世話になるね」

妹はすんなり俺のことを部屋に迎え入れる。部屋の中はいつも整理整頓されていて、まるでいつでも誰かを迎えることができるようにしているかのようだ。そして、妹はすこし顔が赤くなり、寒気がするのか厚着をしている。部屋は少し強く暖房が効いている。ボブカットの黒髪は、少しだが汗に濡れていた。

「やっぱり、大きくなってるな」

そして、いつも小学生の高学年程度の妹の体は、年齢に合った、高校生の体に成長していた。いつも見下ろすくらい下にある妹の顔が、頭一つ程度下にあるくらいの高さまで上がってきている。これが、妹に最近起こった変化の原因であった。妹は、風邪を引くと成長する体質を会得したのだ。

「うん、おっぱいも今はDカップくらいになってるかな?」

妹は、厚着の上から自分の胸の膨らみを触って、大きさを確かめた。少し伸びた手にすっぽり収まる程度の膨らみは、少しずつ大きくなっているようにも見える。微かだが、服が押し上げられつつあるように。

「ほんと、もうちょっと風邪を引かないような生活を送ってくれよ」
「うっさいな。頭痛いんだから説教するな!」

妹の息は段々荒くなってきている。ハァハァと胸が上下に動き、そのたびに膨らんでいる。さっき「Dカップ」と言われた胸の膨らみが、完全に外に見えるくらい大きくなっている。と、妹は何を思ったのか、急にその服を脱ぎ始めた。

「な、なにしてんだ!」
「ずっと見られてるのも恥ずかしいんだよ!だから、今日は早めに終わらせる!」

あっという間に、あと1枚脱げば上半身が裸という状態になった。その一枚の下で、リンゴくらいの大きさのおっぱいが荒い息と同期してムクッ、ムクッと膨張している。そして、最後の一枚を脱ぐと思いきや、今度は部屋の窓をバッと開けた。

「お、おい!」

俺は、妹が開け放った窓をすぐに閉めた。だが、妹には外の冷たい空気が相当の効果があったらしい。妹は、そのままベッドに倒れてしまった。ここまで繊細な奴も珍しいが、そんなことより、妹の息がさらに荒くなった。手足からはギシギシと骨がきしむ音が聞こえる。と同時に、目に見えるスピードで妹の体がさらに大きくなり、俺の大きさを通り越して、ベッドの上をいっぱいにしていく。リンゴ大だった胸も、息のせいでフルフルと震えながら、ひとまわりずつ、ムギュッ、ギュギュッと大きくなる。一枚残った服はギチッ、ギチッと破られ始め、中からおっぱいがこぼれだしている。

「おにいちゃん、そろそろだよぉ……」

妹は意識がもうろうとしているのか、ぼんやりした表情でこっちを見てくる。俺がうなずくと、妹は急に大きく「ひゃうんっ!」と嬌声をあげた。すると、いまやメロンの大きさになっていたおっぱいが、バウンッ!と服を引きちぎり、スイカ大まで拡大する。その後も、バインッ!ボワンッ!と2秒くらい間を置きつつも爆発的に大きくなり、そのたびに妹は「きゃうっ!」と大声をあげ、全身をビクンッ!と震わせた。

そして俺は、胸を揉み始めた。決して、性欲に負けて理性を投げ出した、とかではない。多分。これは、妹の風邪を治すために必要な行為なのだ。

「きゃっ、いいよぉっ……!」妹はこれでかなりの快感を感じるらしく、全身の力が抜けてしまうようだ。「もっとぉ……おにいちゃぁん……」

毎度のこと、妹の発する声はそんじょそこらのAVよりもエロい。なんせ、いつもの小さい状態の妹を知っているから、そのギャップがものすごく股間にくるのだ。

「おっぱい、できりゅぅ……」という妹の言葉とともに、胸の弾力が一気に強くなり、乳首が膨らみ始めた。重力で少しつぶれていたおっぱいは、球体のような膨らみに少しずつ形を変えていく。ある程度弾力が強くなって俺が揉むのを止めると、妹は顔を上げ、右の乳房の先っぽを口にくっつけた。俺は左の方に口を付ける。抵抗はないのかと言われると、実はもう何回もやってきたから、そんなに抵抗はない。だが、血流が促進され、あったかくなったおっぱいに口を付けるのは何回やっても興奮するものだ。

「むぅっっ!!!」そして、その口の中が、妹の母乳で満たされ始めた。勢いが強すぎて最初にやったときは喉を直撃して酷いことになったが、今はそれを受け流すことができる。母乳は、とても甘くて、いい香りがする。いつまでも飲んでいたいものだが、俺が口を付けているおっぱいが、しぼみ始めている。この母乳には、妹の風邪に対する特効薬の成分が含まれていて、それを飲むことで妹は風邪を引いてもすぐ回復できるのだった。

体の方も、風船から空気を抜くようにしぼんでいき、高校生、中学生を経て小学生の体へと戻っていく。こうして、いつもの行為が終わるのだった。

「兄貴、もういいぞ」

おっと、口を妹の胸に付けっぱなしだった。特大のおっぱいが付いていた胸には、いまやちょこんと突起がついているだけになった。これが、二週間に一回はあるのだから、兄としても気に病まれるというものだ。

環境呼応症候群 リツイートの子

「今日のネタツイートも反応ないなぁ……」

パソコンの画面をまじまじと見つめる少女がいた。

「フォロワーの数もだいぶ増えてきたのに、なんでかなぁ……」

目を落とし、ぺったんこの胸を触る少女、円谷 律(つぶらや りつ)のその行動は、一見脈絡のないものに思える。しかし、彼女がわずらっているメタモルフォーゼ症候群のことを考えると、SNSサイトでの自分の投稿があまり拡散されないことと、彼女の小学生のような体型が関連づけられる。つまり、彼女の場合、投稿がどれだけシェアされるかで、身体の大きさが変わるのだ。

「ああん、もう!」ショートヘアに、前髪に髪留めを2つ並べて付けたその頭を、引っ掻き回す。「どうしてよ!」

少女は、パソコンの画面の左上に貼りつけられた写真を睨む。そこには、前途有望なスタイルをした中学生が映っている。何を隠そう、この中学生こそが律なのだ。発症前の彼女は、今よりも頭一つ大きく、Bカップのバストを持つ普通の女子中学生だった。それがある日、突然ピリッと電流が走ったかと思うと身体が小さくなり始め、それ以降少し成長したり若返ったりを繰り返し、2ヶ月くらい前にやっと症状が何に依っているかが分かったばかりだ。

元々得意だった絵の技術を磨いて人気が取れるイラストを描き、拡散されやすい投稿はどういうものか研究し、とにかく自分の身体が元に戻るように努力を惜しまなかったが、今のところ効果は見られず、彼女は小さいまま学校での不便な生活を強いられていた。

パソコンの電源を付けたまま、律は布団に飛び込んだ。「もう、どうしろっていうのよ!!」考えても考えても、これ以上の方策が思いつかなかった。何もかも考えたつもりでいた彼女は、自分の症状に気づいている者が律自身だけではない可能性にまでは考えが及んでいなかった。

次の日。いつものようにブカブカの昔の制服を着て登校し、自分の席についた律。ぼーっとしながらケータイを眺めていると、彼女の机の前に、発症する前からずっと想いつづけていた男子生徒が近づいてきた。

その少年は、ぎょっとした律をまじまじと見た。「え、なに……?」律はなにが起こっているかわからず、男子に尋ねる。彼の名前は日下部 太一(くさかべ たいち)。サッカー部のエースである太一は、律に限らず多くの女子生徒に好意を持たれている。鍛え上げられた恰幅のいい身体は、律の小さなそれとは対照的ですらある。

「あ、あの……」律は、ずっと自分を恥ずかしくなるほどじっと見つめている太一に、もう一度声をかけた。すると、やっと気づいたのか、太一はなぜか震えた声を出した。

「円谷、だっけ……メタモルフォーゼ症候群の……」

律は、話したこともなかった太一に自分の名前を覚えられていることにドキッとした。なにしろ、律はこれまで教室の端から彼に見とれていることしか出来なかった。それくらいは、クラスの女子の誰もがやっていたことであって、律が特別視されるほどのことでもない。

「なんで、私の名前を……」律は、なおもじっと自分を注視している太一に問いかける。そのときだった。

《ブーッ》

「んっ……」ケータイのバイブが作動すると同時に、律の体にトクンッと小さくも普通とは違う鼓動が響いた。律は、そのバイブが、自分の投稿がシェアされた通知であることに気づいて、自分の手をじっと見た。案の定、手指が合わせて5mmくらい伸び、それで終わる……はずだった。

《ブーッ……ブーッブッブブブブブブ》

手から目を離した途端、ケータイのバイブが、ものすごい早さで繰り返され始めたのだ。

「え、何っ!?」律がケータイをポケットから取り出すと、通知欄がすさまじいスピードでスクロールされ、10回、20回、いや30回と、シェアが非常に早いペースで何回も行われていることを示した。

「ちょ、ちょっと待って……ってことは」

《ドクンッ!!》

これまでないほどに強い衝撃が、律の体を襲った。「ひゃうん!」

《ニョキッ!!》

律の奇声とともに、右腕が伸びた。長さが一気に2倍くらいになって、袖口から飛びだしてきたようにも見えた。左腕もピクッ、ピクピクッと震えたと思うと、バァン!と伸び、右腕と同じ長さになった。

「や、やっぱり、円谷って……」「あ、あぁああっ!!」太一の言葉を遮るように律が叫ぶ。

《ムギュギュギュッ!!》

と、そのスカートから伸びる脚が形をゆがませる。「噂通りだ……」太一は、その脚を机をどけて確認しようとするが、律は恥ずかしさから伸びた腕で隠そうとする。その間にも脚は伸長をはじめ、最初は地についていなかったのが、地面に押し付けられるように成長する。

「円谷、元の姿に戻るんだな」「たいち、くん……なんで、わたし、のこと……」上半身の成長と共に、律の目線がクックッと上がり、太一のそれに近づいて行く。「オレ、実は円谷のこと気になってたんだ……だが見ろ、あんなに小さくなってしまって……告白しづらくなってたんだよ」

変身を終えたらしい律の体は中学生の平均的なものに戻っていた。ブカブカだった制服はちょうど良くなり、突然の憧れの人からの告白にドキドキする心臓の動きが、制服の上からも分かった。「太一くん、そうだったの?本当に?」

信じられないという顔をしている律に、太一は顔を赤らめながら頷いた。律は、喜びのあまり席から跳ぶように立ち上がり、太一に抱きついた。「ちょ、ちょっと円谷……」「太一くん!私も、ずっと、あなたのこと……っ!!??」彼女の返答は、途中で止まってしまった。

《ブブブブブブブーッ!》

スカートの中にいれていたスマホが、再び狂ったようにバイブを作動させはじめたのだ。彼女の投稿が、さらにシェアされている……つまり、律がさらに成長することを示唆していた。

「う、うそ……でも、私、元に戻ったから、もうこれ以上は……ひゃああっ!!」

《ムクムクッ!ムギュッ!》

ぴったりになった制服の胸の部分が、今度は異常なまでに盛り上がった。襟口から、むぎゅ、むぎゅ、と脈動しながらおっぱいがこぼれ出してきて、左右に引っ張られた服には先端の突起の形も含めてくっきりと律の成長して行く乳房の形が浮き上がっていた。Dカップだったそれは今やメロンサイズで、それでもなお膨張をやめようとしない。

「私、もっと、大きくなっちゃうぅ!」

体の成長からくる慣れない感覚に、体をのけぞらせる律。そのせいで、巨大化し続ける胸の膨らみがさらに強調され、胸は上に向かって、ブルン、ブルンン!!と突き上げるように成長する形になっている。それを支える体の方も大きくなり、最初は140cmもなかった身長が、1回目の成長で160cmになったのもつかの間、もう170cmに達しようとしている。

膨れ上がる律の体を包んでいる制服にも限界が近づいているようで、律の頭が軽く入る程度になった乳房が、服の上からも下からもはみ出し、縫い目がブチブチとほつれていく。

足もムチムチと成熟し、ソックスが太ももに食い込んでその柔らかさを強調していた。

《ムギュッムギュッ!》

「ひゃんっ」尻は胸と同じく、周期的に体積を増し、パンティが引きちぎれる音がスカートの中から聞こえてくる。

「ん、んんっ……」「す、すごい……」太一の目の前にいる少女は、この10分にも満たない時間の間に、幼い少女からグラビアアイドルも顔負けの長身爆乳女性に育ち上がっていた。最初は、座っていたせいもあるが、見下ろす状態だったのが、今は自分より頭一つ大きく、激しい変化を見せつけられた少年は、大きな興奮を覚えていた。

「太一、くん……」幼さがすっかり抜け、色気すら感じさせる声で尋ねる律。「教えて、なんで、私の病気のこと、知ってるの?」

だが、太一の方は放心状態で、応答するのに少しかかった。「病気のこと?あ、いや、俺も今日聞かされたんだよ。円谷のこと観察していたやつがいてな。一週間くらいで気づいたらしい」

たどたどしい言葉だったが、律は何とか理解した。どうやら、毎日変わる律の体の大きさと、SNS上での律のシェアのされ具合を両方とも観察していた者がいるらしい。律はそこでハッとした。その人物が、知り合い全員、いや学年全員、いや、学校全員に投稿をシェアをするように仕向けたら……

「ところでさ、円谷……」鼻息が荒い太一が、しどろもどろに言葉を発した。「その……おっぱい触ってもいいか……?」

初めて話す女子に聞くことでは到底ないその質問への答えはしかし、与えられることはなかった。スマホが、これでもかとばかりにバイブを作動させていた。律は、再び自分を襲い始めた体が爆発しそうになる感覚に耐え、SNSアプリを起動し、通知欄を見た。

「嘘……でしょ?」

思ったとおり、シェアの数がうなぎのぼりになっていたが、その数は全校生徒の5分の1にも満たなかったのだ。

「これでこんなに大きくなるの……?そんな、私、どこまでおおきく……」スマホの振動とともに、体の中にバネのように溜め込まれていく力を感じる律。胸を触ると、細かく震えながら段々と張り詰めていく。制服は、強くなって行く胸の弾力にギチギチと悲鳴をあげ、生地自体が引きちぎられて肌色が露出しはじめた。そして……

《ドクンッ!!!!》

「ひゃああっ!!」強い心臓の拍動のような衝撃とともに、ついに成長が再開される。溜まっていた力が解放され、律の体はグワッ!グワワッ!と押し広げられる。

《バインッ!ボワンッ!》

胸も爆発するように何回も膨張し、制服はたまらず破れてしまった。

「いやんっ!」制服から拘束を解かれ、ブルンッ!と外に飛び出したそれは、一つ一つに赤ん坊が入りそうなほど巨大で、それでもまだまだ大きくなり続けている。スカートも腰の部分から破れ落ちてしまったが、律はデリケートゾーンを何とか隠した。胸は不釣り合いに大きくなっているものの、背も190cm、210cmとグイグイと伸び、そしてついに……

《ゴシャッ》

「あいたっ!」天井に頭がついてしまった。その頃には、たゆんたゆんと揺れる二つの果実はバランスボールくらいになり、元の小さい律が入ってしまいそうだった。

「これじゃ、教室に潰されちゃうっ!」律は、成長をやめない体がつっかえてしまわないように、前に両手をついて屈んだ。

「あっ……」

後先考えずに行ったその行動で、太一は巨大な乳房の下敷きになっていた。「重い、重いっ!」「太一くん!」律は急いで胸をどかそうとするが、太一の様子がおかしい。

「幸せ……」自分の体を包み込む柔らかさに堕ちてしまっているのだ。そんな太一をよそに、律は更なる成長を遂げようとしていた。

《ピクピクッ……ドワァン!!!!》

右胸が細かく揺れると、一気に二十、三十倍の大きさへと拡大し、周りにあった机や椅子や生徒を吹き飛ばした。衝撃波で、教室の窓という窓が割れ、黒板にヒビが入った。

《ムギュギュ……ドォンッッ!!!!!!》

左胸も、ゆっくり拡大を開始したかと思いきや、右よりも強い勢いで爆発し、教室の半分が律の胸でうめつくされていた。

《ドックン!!ドックン!!》

今や、胸の脈動は教室全体を振動させるほどに強くなり、鉄筋コンクリートの建物を崩壊させようとしている。教室の床に横たわる二つの大きな肌色の塊は、天井や床のタイルをえぐり取りながら侵食を続け、その度にドユンッ!!と振動する。律は、自分の乳房に寄りかかりながら必死で止めようとした。

「も、もう大きくなるのはいやぁ!」

結局、教室の全部が埋め尽くされるまで成長は続き、窓からはみ出したり、床と天井が乳房の弾力で大きく歪むほどに、律、いや、律の胸は成長したのだった。

それから幾日か経った後。

「太一くぅん!」
「お、律か。おはよう」

太一に手を振りながら駆け寄って行く律の体は、大きかった。中学生にしては大きすぎる170cmの体から突き出ている、Iカップくらいの胸の膨らみが暴力的に振動する。

なぜ律が成長したままになったかというと、校内全体に律の病気の特性がばれてからというもの、つまらない投稿でもシェアする生徒が激増したのだ。それでも、際限のないシェアはされず、律は常識的なサイズで、といってもかなり大きい方だが、生活することができていた。

「私、こんな写真撮っちゃったの」
「どれどれ……?ブフゥッ!」律から手渡されたスマホを見て、太一は吹き出してしまった。今の体のサイズで撮った、律のヌード写真だった。胸のサイズを強調するようなポーズを取り、その質感が伝わってくるかのようだ。

「ど、どうかな……?」律がはずかしそうに聞く。「つい嬉しくって、撮ってみたんだけど」「とうこう……してやる」

「え?」太一にあまりに小さい声で反応され、律は聞き取ることが出来なかった。

「もっと、大きくなってもらう!」太一は、素早くスマホを操作し、写真をSNSに載せてしまったのだ。

「えっ……」律は一瞬困惑したが、すぐに笑顔になった。「そうだよね、太一くんも、おっぱい好きだもんね」

律は自分でボタンを外し、外に飛び出し、膨らみ始めた乳房を太一に見せつけた。

「私で、いっぱい、楽しんでね!」

同化 後編

「お兄ちゃん……❤」
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幼馴染はトロンとした目で少年を見つめながら、四つん這いになって近づいてくる。元の面影を残した童顔と、その下でたぷんたぷんと揺れる二つの豊満な果実は、少年の目覚めかけの男性としての性欲をかきたてた。だが、少年の理性はそれ以上に強く、恐怖で少年は後ろに逃げて行く。

「つ~かまえたっ」

しかし、体格の差に勝つことはできず、すぐに腕を押さえられ、少年は上から覆いかぶされ、地面に押し倒されてしまった。

「いつもみたいに、あそぼ~?」
「や、やめて……っ!」

幼馴染はその巨大な乳房を少年の胸板に押し付け、上体を前後左右に揺らして、むにゅむにゅと変形させる。少年は自分の胸を包み込む柔らかい感覚に、身を任せずにはいられなくなり、全身の力が抜けてしまった。ただでさえ体重も力も劣る肉感的な女性に完全に屈してしまったのだ。

幼馴染はその様子をみると少年の腕を放し、その下半身の上へと移動する。そして、未だ小さなペニスを挟むように、乳房を少年の上にタポンと落とした。

「うっ……」
「お兄ちゃん、やっぱりここがいいんだね……❤」

体を上下に動かし、性器にかかる乳圧を周期的に変化させる。腰にコリコリと当たってくる乳首の感覚も相まって少年は絶頂へと近づいて行く。

「だめ……こんなこと……しちゃ……」
「なんで~?とっても、気持ちいいでしょぉ?」

幼稚園児とは思えないテクニックと小悪魔の誘惑のような声で、服をいつの間にか全て脱がし、幼馴染はどんどん攻めたててくる。少年はつい昨日まで一緒に遊んでいた年下の女の子が、今のように至上の快楽を与える存在になっていることが受け入れられず、どうするべきか判断する間も与えられず、最後に残っていたわずかな理性も風前の灯火となっていた。そして……

ドピュゥ!

出してしまった。自分でも正体のわからない白濁液が少年から放たれ、幼馴染の顔にかかった。

「あ……あっ……」

少年の頭がパンクしたようだった。

「ふふっ……お兄ちゃんも、おっぱいほしい?」

姿勢を直した幼馴染が、胸をむぎゅっと掴み、少年の目の前で強調してくる。さっきまでなら目をつぶって意識することを避けられたが、今はそれをただ見つめ、意識してしまう。途端に、胸が熱くなってきた。

「えっ……」

胸板を見ると、少年の鼓動と同期して、乳首がムクッムクッと大きくなってきていた。手でそれを押さえつけ、その成長を抑えようとするが、逆に、触覚でもその成長を感じてしまい、余計に意識してしまう。

「んんっ……」

胸全体の熱がさらに強くなると、少年の手の下で乳腺が発達し始め、乳首の周りがムリッムリッと盛り上がっていく。

「いやだ、やめて……」
「お兄ちゃん❤️」
「えっ」

幼馴染の声に思わず上を向くとたわわな乳房がやはりそこにあって、緊急時にも関わらずドキッとしてしまう。その瞬間、少年自身の胸の膨らみが、一気にリンゴサイズになり、激しい鼓動に合わせて、ムギュムギュッと成長を止めなくなった。

「だめ、だめっ……!」

再び、両腕でその膨らみを押さえつけるが、その腕の上下から、肌色がはみ出し、段々抑えていられなくなってしまう。

「ねえねえ、私の体、どう?」
「……!」

幼馴染は、大きな体と、そのウエストからヒップにかけての曲線を強調する。少年は、それを意識せざるをえない。背骨や骨盤のあたりに痛みが走ると、腰が横に引っ張られるように広がり、上半身は縦に引き伸ばされ、同時にムチムチとした皮下脂肪がついて、尻がボンッと膨らんだ。そして、ついさっきの幼馴染と同じように、自分の手足では動くことができなくなっていた。

「少年、幼馴染の体はもういいから、鏡見てみなさい?」

人形のような少女が言うと、幼馴染はいきなり気絶した。その体から空気が抜けていくように、手足は細く短く、乳房は元の胸板に戻り、髪も肩まで戻った。その代わりという感じで、仰向けに倒れている少年の真上に、大きな鏡が出現した。

「なに、これ……」

少年が自分の体を見ると、胸には頭と同じくらいの乳房がつき、ウエストはくびれ、腰が大きく横に広げられ、胴体だけは豊満な女性になっている自分自身の姿が映った。逆に言えば、手足と頭が、元のままの女性に、少年はなっていたのだ。そして、股に付いている小さい男の象徴が、目につく。

「ねえ、気持ち悪いでしょ?女の人になっちゃえば、楽よ。意識するだけでいいから、ね?……って、あなたそれ最初に意識しちゃう?」
「うっ……」

その瞬間、少年のペニスが脈打ち始め、膨らみ始めるが、ある程度膨らむと、いきなり潰されるような痛みが生じた。

「あぐっ……くぅっ!!!」

筆舌に尽くしがたい痛みとともに、ソレは少年の腹部に向かって沈み込むように縮み始めたのだ。少年は必死になって耐えるが、数秒後にはソレはスッと入った溝に沈没してしまい、完全に姿を消してしまった。

「ふぅ……っ、おなか、中が、ぐるぐるする……」

かき回されるような感覚の原因は、少年には知るすべもないが、子宮ができあがっていくものだった。それに繋がる卵巣が、今まであった精巣を置き換え、女性としての生殖機能を与えていくものに他ならなかった。少年は不安な表情で下腹部がうごめいているのを鏡で見ていることしかできない。

「あなたも、これで立派な人間のメスね」

うごめきが止まると、少女が満足そうな声で変身の成果を確認した。

「な、なんでこんなことするの」

素朴な疑問だった。こんなに大掛かりな魔法じみたことで自分が苦しめられるのには、何か理由があるはずだと思うのは、当然だ。

「そうね……あなた、ちやほやされるの、好きよね。人に褒められるのとか、撫でられるのとか」
「えっ……?」
「あら?小さい子は全員そうって思ってたけど、そうじゃないのかしら?とにかく、私はその目的のために生まれてきたんだけどね、あなたにもそれを体験してもらおうと思って」

大人の女性になれば、ちやほやされるのだろうか?少年は、テレビで綺麗な女性が褒められたり、羨ましがられていたりしていたのを思い出した。すらっと伸びた脚のこととか……

「あら、意識したわね」
「ふぎゅっ……!」

少年の足が、胴体から何かが送り込まれるかのように、膨らんでいく。ももにはムッチリとした肉がつき、二倍の太さに膨れ上がる。長さの方も、ググッググッと大きくなり、思い浮かべた女性ーーグラビアアイドルだったのだがーーと同じような、健康的な女性の足に育った。

「ボーイッシュもいいけれど、今のあなたの顔じゃ、ただの子供ね」
「僕は女の人になんか……!」

鏡の中の自分は、容赦なくその意思を潰してきた。むしろ、頭と手だけが少年のままとなった体は、全て女性であるべきであるもののようにも見えてしまう。

「(腕が、ほそい、ちっちゃい……)」
「はぁい、意識したー」
「うぐぁっ!」

腕はニョキニョキと伸び、女性になった体に合わせるように、適度に脂肪を蓄え、筋肉は控えめについたものになった。

「さあ、どうするの?女の人になるの、ならないの?」
「ぼ、僕は……」

少年は抗おうとするが、「女性になった状態」と「元に戻った状態」を、両方とも思い浮かべてしまった。選択を迫られた時には、人間はそのあとの結末を想像してしまうものである。そう、少年は想像したのだ。

「はい、時間切れっと。あなた、ちょろいわね」
「う、うわぁあああっ!!」

叫んだときにはもう遅く、少年の顔は少し童顔ではあるが色気のある女性のものに変わり、髪もサラサラと伸びて背中にかかるほどまでになった。

「僕は、これで、もう……」
「なっちゃったわね、完全に、女の人に。だけど……」
「今度は何?もう終わったでしょ?」

少女は、ニンマリとした。

「これからが、本番よ」

少年の掌から、ベキッという音がした。

「えっ」

少年が目を動かして手を見ると、そこには人間の肌ではなく、ゴムやプラスチックのようなもので覆われた掌があった。指を動かそうとすると、ギシギシと言うだけで、あまり自由がきかない。もっと注意深く見ると、指の関節の周りに色々な割れ目が付き、フィギュアの可動関節のようになっていた。

「あらあら?見るのは、おててだけでいいのかしら?」

少年が肘に目をやると、指と同じような溝が彫り込まれていくところだった。それはまるで皮膚が沈みこんでいくようで、中にある骨や血管は無視したような動きだ。そして、数秒後には、その現象は肩に伝わり、球体関節が、体の中でベキベキと形作られていく。これだけの変化が起きているのに、少年には全く痛みが伝わってこない。

「ぼく、どうなって……」
「いったでしょ?ちやほやされるようにしてあげるって。フィギュアとしてだけどね」

少年は、少女、いや、周りの風景全てが巨大化しているのに気づいた。フィギュアになっていくとともに、サイズが縮んでいるのだった。

「やだ、やめて!!こんなとこで死にたくないよぉ!!」
「死ぬ?失礼ね。全ての人形には魂が宿っているのよ?この私にだって、魂があるんだからね」
「わけわかんないよ!お姉さんも……人間……でしょ!?」
「私?私はたくさん、すごくたくさんの人形の魂のかたまりよ。あなたたち人間に愛してもらえなかった人形たちのね」
「なに……いってる……の……?」

少年の言葉の自由が奪われていく。足や、腰の中にも溝が彫られ、人形としての関節が出来上がっていく。そして、少し前は動かせた指や腕が全く動かなくなってしまった。

「そろそろ完成ね」
「や……だ……」

口もただの顔の表面に彫られた浅い穴となり、その瞳を残して、少年は完全に豊満美少女フィギュアとなってしまったのだった。少女は、変化が終わり、路上に倒れたまま動かなくなったフィギュアを拾い、まじまじと見つめる。

「ふふん、私のコレクションが、また一つ増えたわね。それにしても、人間から作る人形って最高!私みたいなつくりものじゃ、勝てないわ」

しかし、柔らかいゴムでできた胸をプニプニと触ると、多少不満そうになった。

「もうちょっと大きくしておけばよかった?まあいいわ、あとで付け足してあげれば。さぁて、どんなお服を着せてあげようかしら?」

少女はニコッと笑うと、フィギュアもろとも消え去った。

同化 前編

少年の目の前に、ケーキが置かれている。イチゴの乗った、1ピースのショートケーキだ。普通のケーキに見えるが、その場所が問題だった。

ケーキは、住宅街の道路のど真ん中に不自然に置かれた、一本足の机の上に置かれているのだ。

「おいしそ~」

普通の大人なら、不信がって、それを食べようとは微塵も思わないのだが、小学生低学年の彼は違った。ケーキに近づくと、誰も見ていないのを確認して、ケーキの脇に置いてあったフォークで、半分くらい一気に口に突っ込んだのだ。

「ん、んっ!?」

しかし、舌に伝わってきたのは、少しのにがみと、包み込んでくるようなゲル状の物体の感覚だけ。そして本来するはずの味が全くしないケーキは、生きているかのように、のどの奥に滑り込んでいってしまった。

「や、やだっ……」

物体は、食道をむりやり下に向かう。そして、胃にたどり着くと胃壁から少年の身体に侵入し、全身にじわじわと広がっていく。

「か、体が熱いよぉ……」
「まんまと引っかかったわね、あなた」

いきなり、少年と同年代の少女の声がして振り向くと、ケーキと机があったところに、フリフリのついた、人形のような子が立っている。金髪で、金色の瞳のその子は、状況が状況でなければ一目惚れしてしまうような可愛らしい笑顔をたたえていた。

「誰?僕のこと、知ってるの?」

少年が尋ねると、少女は笑顔を崩さないまま、ソプラノの声で答えた。

「いいえ、今初めてあったばかり。それにしても……」

少女は、少年の体つきを頭から足まで吟味するように見た。

「いい素体ね。男性器もあまり成長してないようだし……」
「だんせいき?」

キョトンとする少年に、やれやれといった感じで肩をすくめる少女。

「それの、ことよ」
「う、ぐっ……!」

股間に痛みを感じた少年が、手で痛みの元を抑えようとすると、まだ剥けてもいないそれが、バナナのサイズまで膨れ上がり、短パンの上からはみ出して赤黒く脈動した。

「ふっ、くぅ……!」

慣れない感覚に、その場で崩れ落ちてしまう少年。少女はなおも輝くような笑顔で言う。

「あら?少しやり過ぎちゃった?ごめんごめん」

その言葉と共に、今の現象が幻だったかのように元の大きさに戻るソレ。

「なんで……おおきく……」
「あなたが食べたケーキ。あれは、私の一部なの。食べられることで食べた人間と一体化し、その体型をある程度操れるのよ」
「……?」

少年はイマイチ少女の言葉の意味がわからないようだが、少女は構わず続けた。

「でもね、それには条件があって、宿主、いまはあなたのことだけどね、その人間が意識したり言葉にした部分だけしか変えられないのよ。さっきだったら、あなたが男性器って言ったから私はその大きさを変えられたわけ。分かった?」

頭がパンクしたようなポカンとした少年の表情をみて、少女はうなずく。

「ま、わかんないよね。いいわ、これから分からせてあげるから」

少年は、少女から突如放たれた邪悪な気配に身震いし、きびすを返して逃げ出そうとした。しかし、少女はそれが行動に移される前に気づいた。

「あら?私から逃げられると思ってるの?」

少年はその言葉と同時に逃亡を始めようとした。が、彼の足が、体が、急に重くなり、その場から動けなくなった。

「うふふ、言い忘れてたけど、体を小さくするのは私が全部勝手にできるのよ」

少女の視線は少年の足に向けられている。それに従うように自分の足を見ると、信じられないほどに瘦せこけ、ピクピクと震えている。少女は、少年の足から筋肉のほとんどを奪ってしまったのだ。

「胎児にされたくなかったら私に従いなさい?あ、誰か来たわ」

少年は、遠くから拍子のいい足音が聞こえてくるのに気づいた。そちらを見ると、地元の幼なじみの女の子、といっても年下の幼稚園児で、いつも少年が兄であるかのように遊んでやっている子が、走ってきた。

「あ、お兄ちゃん!どうしたの!?」

地べたに座っている少年に気づくと、そのままのペースで駆け寄ってくる幼なじみ。少年は、逃げろ、と叫びたかったが、なぜかそれが許されないことのように感じて、何もできない。自分の足の異常さから、危険を察してもらおうとしたが、いつの間にか足は元に戻っている。少年が横を見ると、少女の姿はなく、少年がさきほど口にしたケーキと同じように、幼なじみに合わせてあつらえられたかのようなかなり低いテーブルに、コーラのような茶色のジュースがコップ一杯に注がれ、置かれていた。

「あれ?なんだろ、これ?おいしそう!お兄ちゃん、これ飲んでいいかな!」

少年は、幼なじみが少女の支配下に入ってしまうのを止めるため、首を横に振った……はずだったが、なぜかうなずいていた。

「ほんと!?じゃあ、いただきます!」

幼なじみは、ぐいっと一口、液体を飲み込んだが、目を見開いて、すぐにコップを戻した。

「ふぇ、な、なにこれ、気持ち悪いよぉ……」
「はぁい、少年よくやった!」

青ざめた顔になっている幼馴染をよそに、飲み物とテーブルは、さっきの少女に形を戻し、パチパチと拍手した。少年は罪悪感から、なにも言うことができない。気分が悪そうな顔をしながら、幼なじみは突然現れた少女に驚いた。

「お姉ちゃん、だれ?」
「私?そうね……いたずら好きのモンスターっていうところかしら?あなた、よっぽどその小さな体にコンプレックスがあるみたいね」
「こんぶ?」

まだ語彙が足りない幼稚園児に、少女は手を近づけた。少女の顔は、先ほどの笑顔のままだ。

「だから、大きくしてあげる。まずはその『おっぱい』から」
「おっぱい……?」
「うふ……」

4,5歳なのだからおっぱいと呼べるようなものは何もない。これはもちろん、幼馴染にそれを意識させるために言ったことだった。少女の手が小さな胸に達すると、幼馴染の「んぅっ!」という喘ぎに近い叫びとともに、乳首がビクンビクンッ!と左右バラバラにTシャツを突き上げた。
そして、体から何かが送り出されるように、ムギュ、ムギュと、胸が盛り上がり、小さな体に不釣り合いな乳房へと成長していく。

「わたしに、おっぱいがぁ……!重いよぉ……」

Tシャツは左右に引っ張られ、印刷してある文字が横に伸びていく。いまやリンゴ、いや、また膨らんで幼馴染の顔くらいになった「おっぱい」は、体重バランスを大幅に崩し、ついには幼馴染は地面に手をついて倒れてしまった。襟からは、膨れ上がった胸の肉が溢れ、下からは柔らかい肌色の塊がプルプル揺れるのが見える。それでも、まだ成長は止まらず、Tシャツはさらに引き伸ばされて、ところどころがビリビリ言い始めた。

少年はというと、それをじっと見つめ、鼻の下を伸ばしていた。と同時に、はずかしめられている幼馴染を助けられず不甲斐なさを感じ、複雑な感情になにもできなくなっていた。

「うーん、胸だけ大きくしすぎたかなー」

幼馴染の胸は、元々の体の半分くらいの質量になり、幼馴染の動きを封じていた。

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「ねーねー、手とか足とかも大きくしたいんでしょ」
「えっ、そんなこと」

半泣きになっている幼馴染に、またも笑顔で尋ねる少女。

「だって、動きづらそうじゃないの」
「……それは……。ふぐぅっ!」

何とか動こうとじたばたさせていた腕が、肩と一緒に、メキメキと大きくなり、パンパンになっていたTシャツをさらに引っ張る。そして、耐えきれなくなったシャツの生地にところどころで穴が開き始め、幼馴染の露出がさらに上がっていく。掌も大きく成長し、指も親指から、人差し指、中指と、子供の小さいものから大人のものへと、ピキッと音を立てて無理やり押し広げられるように大きくなっていく。

足も、骨盤がグキグキと大きくなったとおもうと、腰の方から骨が太く、長くなり、それを包んでいたスカートがビリビリと破ける。成長が足の先に達すると靴下がちぎれ、靴も爆発するように破壊されてしまった。何とか意識を保っていた幼なじみは、体勢を直して、地面に座った。

「はぁ……はぁ……」
「私好みに育ったじゃないの。髪がちょっと短めだけど」

バサァッ!と、肩にかかるほどだった髪が一気に腰まで伸びた。ついに、幼なじみは意識を失ってしまい、地面に仰向けになって倒れた。

「あらら、ちょっとやりすぎたかしら?」

服で何とかデリケートな部分が隠れている幼なじみ。ほとんどはだけている自分の頭より一回り大きい肌色の果実は、呼吸とともにゆっくり振動し、健康的に育った体は傷一つ付いていない。丸見えになったウエストはくびれ、足はムチムチとした脂肪に覆われている。少年より小さかったその体は、今は大学生くらいの身長と、それにしてもメリハリのついた、グラビアアイドルのような体型を手に入れていた。

それを見た少女は少し満足気な表情になっている。

「上出来ね。さぁ、起きなさい。私の眷属ちゃん。一緒に遊びましょ」

その言葉を聞いた幼なじみはパッと起き上がった。その黒かった瞳は、少女と同じ金色に染まり、虚ろになっている。

「はい、マスター」

感情が抜けた声で喋るその女性は、もはやそれまでの幼稚園児の面影を残していない。少女が何かつぶやくと、破れていた衣服が幼なじみにまとわり付き、一瞬光ったと思うと赤いビキニに変わった。

「これで、準備完了ね。それで、どう、少年?私の力、分かったでしょ?」
「えっ」

終始放心状態だった少年は、最初の笑顔に戻った少女に話しかけられ我に返った。金色の瞳に見つめられた少年の本能は、逃げろと叫んだ。

「(に、逃げないと……で、でも……)」
「逃げさせなんてしない。次は、あなたの番よ」
「(なにも、何も考えちゃダメだ!)」

少年の元に、大人の女性になった幼なじみが近づいてきた。