うたたねの姫 前編

あむぁいおかし製作所様での投稿(http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-26218.html)と同内容です。イラストは春瀬めいお様に描いていただきました。

ここはとある男子校の教室。昼休み中も終わりに近づいている中、二人の生徒が話し合っていた、というより、椅子に座った気弱な生徒を、その前にドンと立つもう一人がいじっていた。

「で、学(まなぶ)、その薬がなんだって?」
「な……なんでもないよ、太地(たいち)……。そ、それより、そろそろ授業始まるよ……?」
「うっせぇな、ちゃんと答えろよ!」

気弱な方ーー学と呼ばれた生徒は、渋々と机の中に隠していた小瓶を出して、目の前に立つ太地に見せた。

「……成績が上がって、目立つようになれる、薬……だよ……」
「はっ?お前、そんなもん信じてるのか?そんな薬だけでいきなり成績がよくなったら、この世に学校はいらねぇよ」
「だ、だって、これを買った店でそう書いてあったんだ」
「そんなんにダマされるから、お前はいつまでも馬鹿なんだよ、ほらっ!」

太地は、学から薬瓶を取り上げると、中身をぐいっと飲み干してしまった。

「あっ、何するんだっ!」
「……味もただのエネルギードリンクじゃねぇか、やっぱりお前ダマされてたんだよ!」
「そ、そんな……」

周りの生徒にも二人の声が聞こえていたのか、教室中からクスクスと笑う声がする。学が赤面し下を向いてしまったところで、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。

「……ったく、バカバカしくてやってらんねぇ。それに成績上がったところで急に目立つわけないだろ」

太地はそう言い捨てると、自分の席に戻った。

そして、老先生のつまらない授業が始まる。古文の教科書を淡々と読み上げ、その意味を書いていく先生の背中を、太地はシャーペンを回しながらボーッと眺めていた。

「(……ちくしょ、眠くなってきやがった。体が熱い……あのエネルギードリンクのせい……か……)」

その日の陽気もあってか、太地は教科書を枕にうたたねを始めてしまった。そのクラスの誰しもが夢にも見なかったことが、始まろうとしているとも知らずに。

「では、ここ、読んでみなさい……おい、君、居眠りしてるのか?」

老先生が居眠りしている太地に気がついたのは、それから5分が経ったあとだった。

「お、おい……太地……ん?」

太地を起こそうとした隣の生徒は、異変に気づいた。その髪の毛が、しゅるしゅると伸びて、肩までかかろうとしていたのだ。そして、その髪はさらに伸び続けていた。

「君!起きた……まえ……うむ?私の目がおかしいのか……?」

やがて、サラサラとした髪が腰まで覆うような長さになったところで、目の悪い教諭も変化に気がつき、メガネを直して太地を凝視した。それを見て、隣の生徒だけでなく周りの生徒も太地の方を見た。

今度は、がっしりとしていた体つきがなで肩になり、少ししぼむように小さくなっていく。ゴツゴツしていた腕は、ふっくらとした柔らかい輪郭に変わり、これも一回り短くなった。

「ん……んん……」

太地は、周辺の様子がおかしくなったことに気づいたのか、ゆっくりと目を覚ました。

「なんだよ、この……髪の毛……?」

視界を邪魔する自分の髪の毛を触る太地。その声も、普段より2オクターブほど高いアルトボイスに変わっていた。

「え、何だこの声!?これ、腕が細くなって!?」

驚愕から体をばっと起き上がらせると、長く伸びた髪がなびいた。

「俺、まさか、女に……!?んっ……、胸がっ……」

太地が上げた、男子校ではありえない女子の喘ぎに、数人の生徒が股間を押さえる。

「胸が、あついっ……んあっ……!」

体が小さくなったことでぶかぶかになっていたシャツの胸の部分が、ググッと押し上げられた。

「これ、おっぱい……?んんあぁっ……!!」

太地が声を上げるとその膨らみはリンゴサイズにまで膨らみ、シャツは胸でいっぱいになった。

「うそ、だろ……でも、まだ大きくなるっ!!」

シャツをギチギチと引っ張りながら、2つの果実はさらに成長していく。

「んひゃっ、どこまでおおきくなるんだっ……!」

そしてそれは、小ぶりなメロンほどのサイズまで、ムチムチと大きくなる。その先端にはぷっくりとした突起の形が、シャツに浮き上がってしまっている。胸に引っ張り上げられた服の下から、腹部の肌色が覗いた。

「はぁ……はぁ……やっと、落ち着いた……」

変化が終わった太地は、彼自身が見たことがないほどの美少女になっていた。しかも、これも見たことがないほどのサイズの乳房を持った美少女に。

色気が一切ない男子校には刺激の有りすぎる姿になった太地には自覚がないが、頭も冴え渡っていた。

「……で、では……授業の続きを……」

そして事もあろうに、老先生はそのまま授業を再開してしまった。頭が固い老人として、目の前で起こった普通ではありえないことを、完全に無視しようとしているのだろう。

「ほら、教科書を読みなさい」

そして、黒板の方を向いて、太地の方を震える指で指した。

「えっ……」
「いいから」

太地は、巨大な胸に邪魔されながらも教科書を読み始めた。すると、これまで分からなかったところも実にスラスラと読めてしまう。学が言っていた、薬の「成績が上がる」効果は嘘ではなかったらしい。「目立つようになる」効果は想像とは全く別の方向、つまり成績が上がることによる副次的なものではなく、美少女になることで物理的に目立つようになる効果だったが。

そして、突然出現した爆乳美少女に悶々としながらも、授業は進んでいった。

「……太地、だよね?」
「あ、ああ……そうらしい……」

放課後、学が太地の席まで来た。太地はというと、授業中はなんとか現実から目を背けられていたのだが、シャツをギチギチとひっぱるおっぱいを見て現実に引き戻されていた。

「まさか、こんなことになるなんて」
「……なあ、学。さっきはごめんな、こんなに効き目のある薬を無理やり飲んじまうなんて」
「え?」

太地は、薬の効果もあってか特に努力をしなくても授業の内容を完全に記憶できていた。テストの成績も保証されているだろう。

「だから、代わりに勉強教えてやる。図書室でな」
「……うん」

いつも太地に逆らえない学は、このときも逆らうことはできなかった。

場所は変わって、夕暮れの図書室。他の生徒は部活に励んだり、帰宅している時間、図書室で二人きりになるスペースを探すのには苦労しなかった。二人は、机に並んで座り、数学の教科書を開いていた。薬の効果は、これまで学んだ知識にも適用されるらしく、太地にはこれまでハードルとなっていた問題も当たり前のように解けるようになっていた。

「……だから、ここにこれを代用するんだよ」
「え、どこ……?」

学の方は要領を得ないため、一方的に教えられる側になっている。

「ここだって……」

太地は、学のノートを指さそうとして、無意識に学に体を近づけた。その拍子に、胸の先端が学の体に擦れてしまった。

「あぁっ……!」
「た、太地……!?」

いきなりの太地の喘ぎに、学はびくっと震えた。

「やっぱやりづれぇなこの体……。おっ、赤くなってんのか?」
「そ、そんなこと……」

学にとっては、ここ数年なかった、「女子」と二人きりの時間。しかも、口調は荒いがとびきりの美貌をもった女子が、体を触れてきているのだった。赤面するのもやむを得なかったのだ。

「お?こういうのがいいのか?」
「や、やめて……」

それを面白がって、太地は立ち上がって学の後ろに行き、学の背中におっぱいを押し付ける。

「そんなこと言って……やっぱり、ここ大きくしてんじゃねぇか」
「うぅっ……」

学のズボンを押し上げる、いきり立った股間を見た太地はニヤッとして、シャツのボタンを外し始めた。

「太地、何を……」

第三ボタンまで外すと、巨大なおっぱいがブルンッと外に飛び出す。

「やっぱでっけぇな……」
「な、何やってるんだよ……」
「学くぅん……私のおっぱい、揉んでみるぅ……?なんつって」

もちろん、揉まれる気なんてサラサラなく、学が恥ずかしがって縮こまってしまうのを笑い物にしようとしていただけだ。だが、次の展開は太地が予想したものの斜め上のものだった。

「もうがまん、できないっ……!!」
「うわっ!?」

太地は、前からぐいっと押され、背中にドンッとなにかがぶつかる衝撃を感じた。気づくと、学に肩をつかまれ、壁に押し付けられていた。

「てめ、真に受けやがって……」

太地は押し戻そうとする……が、力が入らない。体の変化のせいで、学よりも筋力が弱くなっていたのだ。

「……太地が悪いんだよ」
「んなっ……ひゃぁっ……!」

学は、太地から右腕を離すと、そのまま右胸を揉み始めていた。

「すごくやわらかいよ……」
「ま、学、や、やめっ……ひゃんっ!」

太地は、胸からもたらされる刺激と快感に耐えられず、へなへなと床に崩れ落ちてしまう。

「お、男の胸だぞ……っ!そんなん揉んだって……!」
「こんなに柔らかそうなのに、そんなこと言って……」

長い髪が、床の上にくしゃくしゃと広がる。学は左腕も太地の肩から離し、左の胸を掴んだ。

「ひゃぅっ……」
「すごいよ、僕の手じゃおおえないほどおおきい……」

太地は、慣れない感覚にビクンビクンと体を震わせた。数時間前まで存在もしなかった自分の胸を、学に揉みしだかれている。学が与えてくれる快感に、その身を委ねてしまおうとしたその時だった。

「な、なにやってるんだ……?」

すぐ隣から、急に聞こえた二人以外の声に、二人はハッとした。図書室で、他の生徒の前で痴態をさらしていることに、気づいたのだ。非常にまずい事態だと。

そのとき、太地の胸がシュルシュルと縮み始めた。髪も短くなっていく。腕には筋肉が付き、体つきもがっしりとしたものに戻っていく。

「な、なに……?男に戻ってるのか……?」

太地の想像通り、数秒もすると、彼の体は薬を飲む前の、男の体に戻った。

「太地、逃げ、逃げなきゃ……」
「そ、そうだな!!」

太地が外していたボタンを戻す間に、学は大急ぎで教科書を鞄にしまい、呆気にとられているもうひとりの生徒を置き去りにして、図書室から逃げ出した。

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学が変身/太地が再度変身

種族チェンジャー~牛娘~

『食べてすぐ寝ると牛になる』

これをやってみよう、とおやつを食べてからすぐソファで横になって漫画を読んでいる妹、香希(かき)を見て思った。気付かれないようにタブレットのカメラで捕捉すると、種族を「乳牛娘」、年齢感覚は人間と変わらないようなので「10歳」を「20歳」に変えて「変更」ボタンを押した。

「んっ」

その途端、香希はすこし声を出したが、漫画に夢中なのか、そのまま読み続けている。だが、変化は間違いなく始まっていた。薄着の香希の手足が、伸びている。少しづつ、体は縦にも横にも大きくなっている。身長が伸びつつ、サイズが合わずにむき出しになった脚にムチムチと肉がついている。

「ん?」

やっと違和感に気づいたのか、漫画から手を離して、自分の体をみる妹。すこしサイズが大きいはずの服は、もはやピチピチになっている。太っているわけではないが、健康的に成長したへそあたりが、服の間から覗いている。

「え?なんだこれ?」

成長したとは言え、まだ成人としては低身長である香希の体のその胸には、すでに片手で収まらないほどの膨らみができていた。それは、段々と成長のスピードを上げて、水風船のようにタプタプと揺れながら膨らんでいく。

「ちょ、ちょっと、なんでこんな……おっぱいが……!」

ソファから立ち上がる香希。その上半身には、巨乳の域はとうに超え、爆乳といっても大きいほどの乳が生成されていく。身長も伸びているのだが、その変化に気づけないほど、妹の胸は巨大なものになっていた。

「お、重い……!」

頭には小さめに角が生え、尻からは尻尾がぴょこんと飛び出てきた。その尻も、オーバーなくらいにムチムチなものになり、かろうじて服の中に収まっている。そこから生える脚は、抱きつきたくなるくらいの太いものだ。

ムグググと膨らむ胸の方は、ついに服の拘束力に打ち勝ち、布地が破れて中身のおっぱいが見え始めた。

「や、やだ……な、何かおっぱいの中に溜まってるっ」

人間であれば到底及ばないサイズになった胸は、ブチブチと服を破りながら、更に巨大化していた。妹はそれを手で抑えようとしているが、胸は全く影響を受けず膨らんでいく。かなりパンパンに張っているようだ。

「で、出ちゃうぅ、こんなところで……!!」

おっと、ここで牛乳を出されては掃除が大変だ、と元の妹の設定に戻して「変更」ボタンを押したときには……もう遅かった。妹の乳からは大量の白い液体が飛び出し、あたりに撒き散らされた。同時に体が小さく、元に戻るせいで香希の体全体から牛乳が絞り出されているかのようだった。

元に戻った香希はボロボロの布切れをまとい、牛乳まみれになった漫画をボーッと眺めるだけだった。濃い牛乳の匂いに両親が部屋に入って来たときには、大声で泣き始めていた。そこからなだめるのは、2リットルくらい噴霧された牛乳をすべて拭き取るのと同じくらい、かなり大変だった。

種族チェンジャー~序章~

『種族チェンジャー』なるアプリが僕のタブレットに現れたのは、ある日曜のことだった。動画アプリを開こうと、電源をつけた時、ゴシック体ででかでかと「異」の一文字だけが書かれたアイコンが、唐突に現れたのだ。

「なんだよこれ……」

ウィルスや迷惑アプリだと困る。すぐに削除しようとしたが、どうやってもアンインストール方法が見つからなかった。ネットで調べても、このアプリの情報は一切出てこない。興味本位で、アプリを開いてみることにした。

すると、またもデザイン性のかけらもない画面が出てきた。いろいろな選択項目と、ボタンの山。ただ、アプリの『種族チェンジャー』という名前の通り、種族を選択するところと、「変更」というボタンがある。その上には、「名前」の欄と「年齢」、「性別」の欄があった。ただ、どれもグレーアウト、つまり選択も入力もできない状態だった。

「……どういうことなんだ……」

更に良くみると、「対象を選ぶには、カメラで対象を捉えてください。写真は撮らなくても結構です」と小さく注意書きがあり、その下に「カメラ」のボタンがあった。ボタンを押して、カメラへのアクセスを許可すると、いつもどおりのカメラ画面が出てくる。試しに、自分を映してみることにした。

「おっ、本当に僕の情報がでてきた」

ピコンと音がして、画面はメニューに戻り、僕の名前、「野田 茂雄(のだ しげお)」と、年齢と、性別が出てきた。種族ももちろん「人間」と情報が出てきた。

「ん、全部選択できるようになった」

グレーアウトしていた選択欄が、操作できる。名前は何でも入れられる。年齢は、1から100を選べる。種族は「エルフ」「獣人(猫)」「ドワーフ」とか、ファンタジーに出てくる種族ばかりだ。どうやら、人型以外の種族はないらしい。

「性別は、と、あれ?」

アプリの設計ミスなのか、性別は「女性」しか選べないようだ。それに、他の欄を操作すると、強制的に選択が「女性」になる。最後に、アプリを閉じたり、「リセット」ボタンを押すと、情報がもとに戻る。

「こうなるとなにか試したくなるな……」

無論、僕自身の体ではない。本当に種族が変わったら、大変なことだ。それに、種族を変えるイコール僕が女になるということらしいから、ますます自分で試してはダメだ。

「うーん、何か試しやすい相手は……」

その時、窓の外を母と娘の親子連れが通った。とっさに、小学生くらいの娘の方をカメラで捉える。そして、「種族」を「エルフ」にして、「変更」ボタンを押した。

「しまった、勢いでやっちゃった……」

女の子が立ち止まり、母親はそれに気づいて声をかけている。窓の外なのであまり音は聞こえてこない。だが、女の子がだんだん小さくなっていくのが分かった。母親は腰を抜かして床に倒れ込んでしまった。その間にも、女の子は服の中に埋もれていった。

「どういうことなんだ……まさか」

年齢の欄を見ると、「8歳」となっていた。小学生の年齢としては妥当……だが、種族をエルフに変えたからか、年齢は0から500歳まで選べるようになっている。長寿の種族らしいエルフにとって、「8歳」は赤ん坊にほかならない。

僕は、年齢を「40歳」にあげて、もう一回変更ボタンを押した。すると、ブカブカになった服の中から、光り輝くような金髪の女の子が出てきた。すくすくと大きくなり、幼児体型だが、身長は前よりも高くなった、くらいのところで成長が止まった。

おどおどする「40歳」の娘を前に、30歳くらいであろう母親は気絶してしまっていた。僕は「リセット」ボタンで女の子を元に戻そうとした。

「あれ?」リセットボタンは、操作できなくなっていた。ただ、その他の選択項目は操作できる。僕は手動で、種族を「人間」に、年齢を「8歳」に設定して、「変更」ボタンを押した。女の子の髪は元の日本人らしい黒に、身長ももとに戻った。数分すれば意識を取り戻すだろう母親が、記憶を失っていることを願いつつ、カーテンを閉めた。

どうやら、このアプリは本物らしい。

ふしぎなオーラ

ダイマックス。それは、ポケットモンスター、略してポケモンと呼ばれる、不思議な生き物、その中でも特定の個体だけが行える身体強化技能だ。

あるオーラをまとった特定のエリアでしか発揮できないそれは、まさに「巨大化」。巨大な体で、莫大な体力と攻撃力をもって、敵を破壊し尽くすのだった。

10歳の女ポケモントレーナーであるユウリは、まさに今ダイマックス化したポケモンの巣穴に入り込んでいた。普通のポケモンの巣穴など、人が通れる大きさのものは少ないが、巨大化したポケモンなら話は別だった。

ユウリは、腕につけたダイマックスバンドに、パワーがだんだんたまりつつあるのを感じつつ、奥に進んでいく。この巣穴のオーラは、ユウリが足を踏み入れた他のダイマックスポケモンの巣穴のどれよりも数段強かった。

やがて、広い空間に出た。ポケモンの寝床だろうが、そこには何もいない。ユウリが捕まえようとしていたダイマックスポケモンは、影も形もなかった。彼女は肩を落として、来た道を帰ろうとした。だが、ユウリが思っても見なかったことが起こった。

オーラが彼女の方に向かって凝縮され、ダイマックスバンドが強い光を発し始めたのだ。ユウリのこれまでのダイマックスポケモンとの戦いでも、巣穴のオーラを利用して自分のポケモンを巨大化させて使うことがあり、その時でもバンドは光っていた。だが、今回の光は目もくらむほどの強さであり、いつもよりも激しいものだった。ユウリが恐怖を感じ、バンドを取り外そうと手を当てた、その時だった。

バァァン!!

バンドが爆発したかのような音が響き渡るとともに、溜め込まれていた光がユウリの全身に注ぎ込むように流れたのだ。途端、ユウリは少し大きめのはずの服がきつくなっているように感じた。

光が収まって、ユウリは服を確認した。するとなぜか、全部の服のサイズが小さくなり、ユウリの体に合わなくなっていた。すぐにベルトがブチッと切れ、手持ちポケモンが入っているモンスターボールが床に落ちた。

衝撃で、中のポケモンが飛び出してくる。鳴き声を上げて主人を見たそれは、非常に驚いたような表情をした。驚いたのは、ユウリも同じだった。服と同じように、ポケモンのサイズも小さくなっていたのだ。

しかも服もポケモンも、さらに小さくなり始めていた。そこで、彼女は何が起きているのか悟った。自分が巨大化しているのだ。

だが、半ばパニックに陥ったユウリの体は、大きくなっているだけではなかった。破れている服から出ている腕や足は、そのサイズからしても明らかに長くなっていた。すでに膨らみ始めていた胸も、段々と服を大きく押し上げるように成長し、そして服を引きちぎってさらけ出された。

彼女は、目の前にいるポケモンから隠すように、自分の体を抱きながら、あることを思い出した。非常に限られたポケモンがダイマックスを超えた巨大化であるキョダイマックスをすることが可能だと聞いていたのだ。キョダイマックスをしたポケモンは、巨大化するだけでなく、見かけにも別のポケモンになったかのような変化が出る。

ユウリにも、それと同じ現象が起きていたのだ。彼女の体は、子供から大人のものへと変貌を遂げようとしていた。ズボンをビリビリとやぶいていく腰回りにも、大きなヒップが生み出され、オーラの光に薄暗く照らされる彼女のシルエットはどんどん女性的になっていく。

巨大化も続いていた。元の何十倍も大きくなると、空間の天井に頭がガツンとあたり、体育座りにならざるをえなかった。足と体で、膨らんだ胸がムニュッと潰され、巨大ながらも弾力感を醸し出していた。しかも、莫大な大きさとなった今でも、それはむぎゅぎゅと膨らむことをやめなかった。これまでダイマックスさせたどんなポケモンよりも大きくなり、慣れない大人の体に、どうすることもできないユウリの前で、頭と同じくらいの体積になってやっと巨大化は止まった。

そこで、彼女はやっと、空間の隅に、ひときわ強く輝く宝石のようなものがあるのに気づいた。巣穴から出ることもできず、他にできることのないユウリは、その宝石に手を伸ばし、触れた。

途端、宝石が光を発し、収まっていた巨大化が再開した。しかも、今度はかなり急速だった。ググググと大きくなるユウリの体は一瞬で空間を埋め尽くした。

だが、巣穴の壁に潰されると思ったユウリが、やけくそで全身の力を込めて立ち上がろうとすると、あっけなく巣穴は崩壊し、ユウリの豊満となった体は地上へとさらけ出された。地上にいたポケモンは撒き散らされ、トレーニングやポケモンをゲットするために周りにいたトレーナーは、突如現れた、一つの街よりも大きい女性トレーナーの全裸を見せつけられることになった。

その地方の最も高い建物よりも高くなった体だけでなく、すべての湖を足しても負けそうなくらいの体積を持った胸も、島のどこからでも見ることができるくらい巨大なものだった。

とある世界~化学~

人の体が急成長するとか、巨大化するとか、そういうことは普通起こりえない。人間の体も化学物質でできている。細胞の分裂だってたくさんの複雑な化学反応の結果であって、37兆個の細胞を、綺麗な人体の形を、いや、生物の機能を保ったまま分裂させることは不可能だ。

そこで、この手の性癖では、最初に物理法則を否定しなければいけない。『こんなことはあり得ない』とか、『現実だったらこんなことにならない』とか、そういうツッコミは無粋なわけだ。

といっても、あまりにも現実味がないのも面白くない。そんなわけで、『どうして変身するのか』という理由は、それなりに重要になってくる。

まずは化学的な理由から行こう。ここからは、キーボードで作った世界の話だ。

ここは薄暗い地下室。真ん中に金属製の作業台のような机が置かれている。重そうな扉が開くと、大男が入ってきた。腕には、身寄りがないのだろう、ボロボロの服を着た痩せた小さな女の子が抱えられている。その後ろからは、意地悪そうな顔をした小男が続いてきた。
大男は、乱暴に女の子をおろした。

「何するんだよっ!いきなりこんな地下室に……」
「うるせえ!つべこべ言うと犬の餌にしてやるぞ!」

大男に女の子が気圧されている間に、小男は液体の薬が入った瓶を、いくつか机の上に並べた。
「旦那、準備ができましたぜ」

大男は、女の子を天井から吊るされた鎖につなぎ、逃げられないようにした。

「はなせ!はなせよ!」
「黙れ!うまく行けばお前はこれから俺たちの商品になるんだよ!サダル、さっさと薬をよこせ!」
「言われなくても、ほれ、ニデルの旦那」

サダルと呼ばれた小男は、大男、ニデルに赤い薬の瓶を渡した。
「なんだよそれ!」
「いいから、飲め!」

ニデルは女の子の鼻をつまむと、薬の瓶の口を、女の子の口に突っ込んで中身を流し入れた。
「よし、飲んだな」
「間違いがなければ、成長ホルモンが分泌され、体の成長が起こるはず!」
「な、なに言って……体が、熱いっ」

少女の体全体が、ゴキゴキ、グキグキと音を立てる。そして、皮膚が波が立ったように変形する。そして、サダルの言ったとおり、少女の手足はゆっくりと伸び始めた。
「おおっ!最初の実験は成功だ!」

短くなった服の下から、グッ、グッと足が飛び出し、色白な肌が露出される。20cmくらい身長が伸びたところで、薬の効果は終わる。

「サダル、お前と同じくらいの背まで成長したが……物足りねえなぁ」少女の体は、全体的にスラッと伸びたものの、痩せ気味なのは変わらなかった。胸の膨らみなどは少ししかない。

「心配なさらず。この薬を飲ませてみてくだせえ」
「おう」ニデルは、サダルから受け取った緑の薬を、少女に無理やり飲ませる。

「これは女性ホルモンの分泌を促す薬。つまり……」
「む、胸が痛いぃっ……!!」もがき苦しむ少女の胸が、風船に空気をいれるように、むく、むく、と膨らんだ。むき出しになった足も、ムギュッ、ムギュッと太くなる。
「ホルモンを受け取った乳腺や、皮下脂肪が発達して、女の体らしくなる……んですが……うむ、効果が薄い……」

まだ、学生のそれにも及ばないような痩せ型の少女。

「経口摂取ではだめか……ならば血管に直接……」サダルは、注射器を取り出して緑の薬を中に入れた。そして少女の腕を取ると、一気に注射した。

「やだぁぁっ!!!」途端に、少女の体が痙攣し始める。そして、今度は先程よりも確実に大きく、どくどくと脈を打つように、乳房が成長をしていく。一回り、また一回りと大きくなるそれは、服を引っ張り、元々あった裂け目から引き裂いていく。足の方もムチ、ムチと震えながら太さを増す。少し見えていたあばらも、皮下脂肪に覆われて見えづらくなっていく。

「おお、これは上物だぜ」ニデルが、ふるふると揺れる豊かな膨らみを揉む。柔らかい感触の奥に、心臓の鼓動がドクンドクンと伝わってくる。大男のニデルでも、両手で覆えなくなるほどの大きさになって、成長はやっと止んだ。
「この身長にしては少し、でかすぎるかもしれねえが……これはこれでいいものになりそうだな。どれ、最初に俺が使ってみるか……」
「すまねえ、旦那。副作用で、この薬を飲んだあと一時間は、ヤッた相手が女になるんだよ。ほら、新しい給仕の女がいただろ、あれがそうだ」
「なんだと、仕方ねえな……しかし、お前もすげえもの作るなぁ、この胸だけで連れ込んできたときのこいつの全身より重い感じがするぜ」

「へへ、ま、あとで楽しんでくだせえ。俺は片付けをしてくる」サデルは、部屋を出ていった。

「ご、ご主人様……そろそろ下ろしてください……」
「お、おう、そうだな……」口調が変わり、従順になった少女を見て、ニデルは鎖を解いた。「性格まで変わるたあ、とんでもねえな」

「ふふ、ニデルさま……」少女は降ろされると、ニデルにすり寄った。「私と遊びませんか……?」
「へへ、いいぜ……少しだけなら副作用とやらも大丈夫だよな」

ニデルは、少女を床に寝かせ、その上に覆いかぶさった。
「じゃあ、いくぞ……」
「ニデル……さま……」

だが、その行為に達した瞬間、少女の体がまたグキグキと言い始めた。
「まだ大きくなるのかよ……お、おい……うそだろ……」
ニデルの体も、同じように音を立て始めたのだった。そして、少女の体がさらに大きくなり始めたと同時に、ニデルの体は小さくなり始めた。

「あっははは、かかったな、マヌケ野郎!セーエキに触れると、また大きくなるとは思ってなかったけどな!」
「や、やめろぉっ!」

サデルが言っていた通り、ニデルは女になっていた。少女の身長はさらに伸び、胸も尻もググッと膨らむ。まるで、少女がニデルから力を吸い取るように、少女とニデルの力関係は逆転していった。

「この体があれば、この街、いや国一番の娼婦になれる……」
「なに、言って……」
「ニデル、だったよな……いや、だったかしら……?あなたは私の子分よ」

ニデルはもはや、多少胸が大きいくらいの若い女になっていた。少女は、緑の薬を注射器に入れると、ニヤッと笑って扉の前に行った。

「あのサデルとかいうのも、私の子分……それも、特大サイズの子にしてあげる……」

「おーい、戻ったぞ……」
扉が開いた瞬間、サデルの右腕に薬が注射された。

「うぎゃあああああ!!!」
夜の街に、男の叫び声が響いた。

……とばかりに、化学薬品を使うと、大体はホルモンとか、人体の仕組みを使うことになる。まあ、そんな説明抜きに薬を使ったから成長した、だけでもいいのだが。
成長や、変化が起こるタイミングは、薬を飲んだ直後として、分かりやすくなっていることもあれば、遅効性で、『今更になって、なんで……?』という風に、薬を飲むタイミングと無関係にもできる。
変身させたあとでもう一回飲ませることで、同じような効果がもう一回起きることを期待できたりもする。あと、『副作用』という言葉で何が起こるか予測不能にすることも、また可能だ。

とある世界~タイムスケール~

とあるキーボードがある。このキーボードは、打った文字を、専用の空間に具現化する機能がある。例えば、「雨が上がり、晴れになった」と打てば、本当に雨が上がって、晴天となる。
本当に何でもありだ。空間を限れば、宇宙や、神を作ることもできれば、消すこともできる。どこかの筆や、ペンにも同じ機能を持つものがあるらしいし、こんなキーボードも星の数ほどある。

まあ、難しい話はやめにして、私はこのキーボードで好きなことをできるわけだ。ならば、現実にありえない、私の性癖に従ったものもいくらでも作れる。
私の性癖は、動物、とくに人間の女性の質量が増える過程を楽しむことだ。例えば、胸を文字通り膨らませてみたり、人体の成長を急速に進めて子供を大人にしたり。人間のスケールを超えた大きさにしてみたり。

まず、私の空間に小さい子を作り上げてみよう。キーボードに、「女の子がいる」と打つと、女の子が出現した。この子はこの空間だけに存在して、現実世界にはいない。ただ、科学的な構造は本物の人間と全く一緒だ。

とりあえず、この子を大人にしてみる。私の一番興味のないパターンから。それは、『いつの間にか大人になっていた』パターンだ。漫画で言えば、『子供の頃の幼馴染に久しぶりに会ってみたら、スタイルが想像もしないほどいい女性になっていた』パターン。

「いつの間にか急成長していた」とキーボードに打つと、瞬き一回しただけで、女の子は面影を残した大人になる。これだと、単に人を入れ替えるだけで済ませてしまえる。女の子が、成長前と同一人物であるという感覚はあまりないし、変身過程はまったくないから私の心には全く響かない。このあとに本番シーンがあったとしても、元々子供であったという事実はいらない。『寝て起きたら成長していた』、『魔法をかけたらポンッと成長した』も、これに近い。

本番シーンを売りにしている商業漫画のほとんどはこのパターンだから、私はあまり商業誌に興味が無いわけだ。

キーボードで女の子を元に戻す。つぎのパターンは、『数秒で全身が成長する』パターン。体の一箇所か、全体にしか集中できないものだ。文章で書けば、「女の子はぐんぐん大きくなって、あっという間に大人になった」というところか。
漫画では数コマで済まされるが、変身過程があるだけ私のストライクゾーンに入ってくる。ただ、文字作品ではもう少し欲しいというところ。

次は、『数十秒で成長する』パターン。成長中に、色んな所に集中できる。文字に起こす一例としては、「胸が大きくなり、戸惑う女の子。だが、その他の部分も同じように大きく、長くなっていく。指は一本一本が長く、細く伸びていき、足はスラッと伸びると薄っすらと肉が乗ってくる。髪も腰まで伸びるとふわりと揺れた。母親と同じくらいの大きさになったところで、成長は終わった」。まあ、味気ないがタイムスケールとしてはこれくらいだ。
書きやすいし、理解しやすい。一番私が好きなパターンでもある。

『数分で成長する』ところまでくると、時間が長くなり表現が難しい。ある程度途中の経過をスキップするか、段階的な成長にする必要がある。ただスキップしすぎると、タイムスケールに現実感がなくなる。ただ、ありえないスピードで成長していることは変わらないから、うまく表現できれば楽しめることにも変わりはない。

『数時間で成長する』ものは、ほぼ段階的な成長の表現のものになる。どこかのアニメ作品で、数時間かけて体が肥大化する女の子がいたが、途中の経過はやはり省かれている。表現試してみたいものではあるが。

まあ、今日は前座だ。明日からは具体的な変身過程で私の性癖を語るとしよう。

狂戦士の薬

「これでやっと、理想の体が……」

自分の家の風呂場で一人、ニヤニヤしながら手に持った小瓶を見つめる男が一人。名前は細田と言った。

「毎日「かわいい」だの「守りたくなる」だの言われる生活はもう懲り懲りだ、この薬さえあれば、僕はたくましい男に……!」

思えば、電車の中で痴漢され、それを他の乗客に救ってもらったあげくに「大丈夫ですか、お嬢さん」と声をかけられ、完全に女性扱いを受けたあの日。学生時代から溜まっていた鬱憤についに堪忍袋の緒が切れたあの日から、弱々しい体を与えた親や神に悪態をつきつつ、解決法を探っていたのだ。

「いくら鍛えてもナヨナヨした体とも、今日でお別れだ。このケルトの秘薬さえあれば……!」

小瓶の中身は、その昔、狂戦士を作り出すために使われた薬。ネットでも数々の口コミがあり、本当に効果があるらしい秘薬を、細田は瓶の蓋をあけ、一気に飲み干した。

「ぐっ……に、にがいっ……」

喉の中が焼け付くような、劇物を飲んだような刺激。その刺激は、段々と全身に伝わり、やがて熱へと変わっていく。

「ふぅ、ふぅ……あつい……」

風呂場の鏡に映る細田の体は、全身を駆け巡る熱によって、赤く染め上げられた。

ドクンッ!!

「うぅっ……!体がっ……!」

心臓が、強く鼓動する。そのたびに、細田の体はビクン、ビクンと脈動する。心なしか、そのシルエットが段々と大きくなる。

「よし……その調子だっ……!」

いくらトレーニングしても一向に発達しなかった筋肉が、一瞬のうちにメキメキと大きくなる。腹筋はビキビキと音を立てて割れ、足は長くなると同時にムキムキと太くなっていった。

「うおおっ、うおおおっ!!」

声は野太くなり、本物のバーサーカー、狂戦士のように、凶暴とも言える体つきになる細田。

だが、そこで一瞬の迷いが生じた。

(力がみなぎるっ!!だけどこんなに大きくなったら、みんなに怖がられるかもしれない……それに、普通に生活ができなくなるかも……)

ビクンッ!

「な、なんだっ……!?」

体が精神の迷いを受け取ったかのように、ずっと続いていた発達が急に止まった。その時点で、細田の体はレスラー並みの筋骨隆々なものになっていた。

「……や、やった!これだけ逞しくなれば、もう馬鹿にされずに……!うぅっ……!?」

これもまた突如として、細田の股間に耐え難いほどの激痛が走った。細田が鏡を見ると、その体から何かが欠けていた。

「僕の……アレがない……!?」

鏡越しではなく、自分の目でそれを見ようとする。だが、胸筋が邪魔で見れない。

「僕の、ちんちん……、っ!?」

自分の目を疑う細田。視線の先で、乳首が急激に膨張したのだ。そして同時に、腕や足の筋肉がしぼむように無くなり始めた。

鏡を見ると、身長も縮んでいく。元の高さまで、いや、それよりも低くなっていく。

「な、なんだこれっ!?」

体毛という体毛がサラサラと抜け、肌が白くなる。割れに割れた腹筋が、スゥッっと消えていく。

「これじゃ、まるで……女性みたいじゃないか!!」

それを肯定するように、細田のウエストがギュウギュウと絞られ、逆に腰骨は横に広がっていく。

「や、やだ、僕は女になんかなりたくないっ!!」

太ももに圧迫感を覚え、手で抑えると、その下で無くなった筋肉の代わりというように皮下脂肪が発達し、次第に細田の輪郭が丸みを帯び始める。

「やめろ、やめろーっ!!」

肩がバキッと音をたてると、元々なで肩気味だったものがさらに下にさがる。髪がゆっくりと伸び始め、次第に背中を覆っていく。

「なんで、なんで僕がこんな目にっ!!」

手指が細くなり、顔も小さくなる。もはや細田の体はどこからどうみても女性そのものであった。そして、仕上げとばかりに胸の膨らみがムクムクと大きくなり始めた。筋肉ではなく、授乳器官としての胸が。

「う、うそだ、うそだそんなことーっ!!」

小さな盛り上がりが、大きな山に、そしてさらに大きくなろうとするのを、細田はギュッと腕で抑えようとする。しかしそれによって寄せられた乳房の間に谷間ができ、その大きさが更に強調される。そして、人並みよりひとまわり大きくなってしまった。

そしてバランスを取るように尻がムチッと膨らんだところで、それは終わった。

中身が空になった小瓶を、半泣きで睨みつける細田。

「くそ、お前の、お前のせいでっ!!」

床に叩きつけ、割ってしまおうと、小瓶を持ち上げる細田だったが、そこで初めて小瓶に刻み文字が入っているのに気づいた。

「なんだ、これ……英語か……?」

見たこともないその言語だったが、スマホで翻訳させると、ウェールズ語と判定された。そこにはこう書かれていたようだ。
『この薬によって世の男は、狂戦士の体と力を手に入れる。だがその過程において少しでも迷いを持ったものは、臆病者として女の体を与えられる。覚悟のあるものだけが、狂戦士となれる』

絶望の中で細田は、自分のたわわに実った胸を揉むことくらいしかできなかった。

ラド的な子

ここは、核戦争が起き、破滅してしまった世界。どこかで致命的な間違いが起き、人類がほぼ吹き飛んでしまった時間軸の話。
ハリボテ小屋の中で、一人の少女、ジーンが、腕につけたモバイルコンピュータ、ポップガールの値を読み取っていた。

「そろそろ、ラド値を落とさないと……」

ラド値とは、この汚染された世界で、そこら中に分布している人体に害をなす汚染物質、「ラド」の体内濃度の指標である。幸いにも、ラドバイバイという薬を使うことで、濃度を落とすことができ、人類はなんとかこの「ラド」がある世界で生活することができていた。

「よし、と……」

点滴のように血液に注入するその薬だが、少し不純物が混ざっていることは日常茶飯事で、それに耐えることができるように、人間の体は少し変化を遂げていた。
だが、その日の不純物は、いつもと違うものだったということにジーンが気づくのは、まだ先の話である。

「これで、また全力で探索できるね」

空になった薬の袋を机の上に置く。この袋も、重要な物資だ。ジーンの小屋の中には、さまざまなガラクタが置いてあった。産業という産業が存在しないこの世界では、ベッド、椅子、机、すべてをガラクタで作る他ない。愛用の銃も、パイプや、針金などを組み合わせて作り出した、手作り感満載のものだ。

「食べ物も、飲み物も腐ってきちゃってるし……また、あの水たまりに水をくみに行こうかな」

そう言って、銃を腰のベルトにさし(これもお手製のものだ)、弾や、もしもの時の保存食品や、銃の補修部材をカバンに入れる。そしてジーンは、荒れ果てた世界へと家を後にした。

ジーンは道中、ラドに汚染されたモグラの群れに出会った。
外には、ラドに汚染され大型化したネズミや蚊、他にも危険な動物がたくさんいる。しかし、その動物を食わねば、生きていくことはできない。一人で倒せそうであれば、動物の群れにも攻撃をしかけるのが普通だった。

「一匹、ラドまみれのやつがいる……でもやるっきゃないか」

モグラは、比較的弱い部類の動物だ。ただ、一匹ラドをまとい、緑の光を体内から発しているものがいた、噛みつかれれでもすれば、ラドがジーンの体内に入ってしまうだろう。しかし、ジーンとしては、この獲物は確実に仕留めておきたいものだった。

「よし、いくぞ!」

まずは一匹目に気付かれないように近づき、そして頭部に一発、銃弾を打ち込んだ。その銃声で、周りのモグラが一斉に地面に潜る。モグラが潜るのは、逃げているのではなく、地面の下から不意打ちを食わせるための攻撃手段だった。ジーンの記憶が正しければ、生きているのはあと二匹である。

「ここから出てくるか……」

地面の音を聞きながら、攻撃を喰らわないように位置取りをするジーン。そして思ったとおりの場所から出てきた二匹を、確実に射撃した。

「ふぅ……あれ?あのラドまみれのやつは……?」

その時、ジーンの真下から、緑に光るモグラが飛び出し、間髪入れずに足に噛み付いた。

「うぐぁっ!」

ジーンの中に、ラドが入り込む。しかしその時、普段感じない衝撃が、ジーンの体を貫いた。

「な、なに……!?」

再びモグラは地面に潜った。気を抜いている暇はないが、なぜか手にはめている手袋が、すこしきつくなっているのに気づく。

「き、気のせいだよね?」

集中が切れたジーンは、さらなる攻撃を受けないように、後ろへと下がる。だが、ラド物質がたんまりと入ったドラム缶が後ろにあった。

「あ、やば……」

その存在に気づいたときには、もう遅かった。ジーンはドラム缶を押し倒してしまい、飛び出してきたラド物質を全身にかぶってしまった。

「くぅぅ、また貴重な薬を使わないといけないの……?」

遠くでモグラが地面から飛び出した音がしたが、もうこちらを見失っているようで、地面を走ってきたり、再び潜る音はしてこなかった。それよりも、体についたラド物質から、ラドが皮膚を通して侵入をはじめたときの衝撃のほうが、ジーンを驚かせた。

「うぐっ!な、なにっ!!??」

普段、ラドが体内に入るときは、体力がどんどん削られていく。しかし今は、体の中に大きな熱が入ってきていた。そして、その熱が体のなかで膨らんでいくような感覚が、ジーンを襲った。

「お、おかしいよ、何が起こってるの!?」

ジーンの手や足が、徐々に長く、太くなっていく。メキメキと音を立てながら、骨格が成長していくのだ。まるでラドが体の一部になるかのように、ジーンの体を作り変えているのだ。ジーンは、ラド物質を急いで拭き取るが、その間にも、胸当ての中で胸が膨らみ、圧迫感が大きくなっていく。

「や、やめて、こんなところで装甲が合わなくなるなんて、死ねと言ってるみたいじゃない!」

しかし、完全に合わなくなる前にラド物質を拭き取り終わり、ジーンは九死に一生を得た。

「うぅ、なんなのよ……これ、薬を使えばもとに戻るのかな……」

一回り、二回り長くなった手足と、明らかに大きくなって、胸当てを押し上げている自分の乳房を見つめながら、ジーンはそれでも、進み続けるほかなかった。ラド値はまだ低く、薬を使うのはもったいない。
最後の一匹のモグラも無事仕留め、肉を切り出すことができたジーン。

変身描写だけ書きたい!(AP)

魔法がありふれた世界の学校。魔法使い同士の決闘……ではなく、変身術の講義の実践をしている男女の生徒のペア。

「くらえ!スタイル抜群のお姉さんになる魔法!!」
「そんな魔法ないわよ、ふざけてんの!?アタシの体型馬鹿にしてるでしょ!!」

確かに、呪文でも何でもない言葉と魔法の杖を向けられた女子生徒の体型はそのクラスの中でも華奢で、身長も低かった。そして、教科書にはそのような魔法は存在せず、女子生徒が正しいはず……だったが。

「へへへ……お、おい、なんか変な魔法が……」

杖の先は光りはじめ、明らかに何らかの魔法を少女に向かって放とうとしていた。

「え、えっ?そんなはずがあるわけ……」

少女が言葉を終える前に、少年の杖から魔法が発射され、彼女の体に吸い込まれるように飛び込んでいった。少女はあまりの衝撃にうずくまってしまった。

「お、おい、大丈夫か!?」
「う、ぐぐ……体が、熱いっ……あんた、魔力の量だけは半端ないんだから……!うぅっ!?」

少女の体から、ドンッ!ドンッ!と小さな爆発のような音が聞こえ始める。

「な、なによこの魔法っ!?」

その小さな手が、爆発音と同時に大きくなり、すぐにもとに戻る。足も、ミチッ、ミチッと音を立てて大きく脈動していた。

「なにをやっているのだ、そこの二人!」

少女から発せられる音に、周りの視線が集まっていた。それに気づいた教師が、二人に近づいてきていた。

「せ、せんせ……!こいつが、変な魔法をあたしにっ!」
「なに!?どれ……」

教師は、少女の腕を取った。腕の太さが、脈拍とともにドクンドクンと大きく変動していた。それは、変身術の教師ですら見たことのないたぐいの魔法であった。

「なんだこの魔法は……まあいい……全術式解除!」

教師が杖を振ると、その先から光が溢れ出し、少女を包んだ。

「これでもとに戻るだろう……ん?」
「せ、先生……?」

教師の想像とは裏腹に、その細い腕は脈動をやめず、さらに大きくなりだした。ドクンッ、ドクンッと、彼女の体全体が成長を始めたのだ。骨がメキメキと軋み、関節がポキポキという生々しい音が、あたりに響き渡る。そのたび、手足が伸び、少女のシルエットが大きくなる。

「なっ、なんだこれはっ!?お前、一体どんな魔法をかけたのだ!」
「は、はい!『スタイル抜群のお姉さんになる魔法』ですが……」
「ふざけるな!そんな簡単な魔法が術式解除で無効化されないはずがないだろう!?」

口論を始める二人の横で、どんどん大きくなる少女。服はパンパンになり、いたるところで糸がほつれていく。足はさらけだされ、ほっそりとしていたそれに、段々と肉が付き始めていた。

「む、むねがっ……」

その平らだった胸にも、小さなポンプで空気が入れられるように膨らみが付き、一回り、さらに一回りと大きくなる。服をビリッ、ビリッと少しずつ破り、肌色の柔らかい塊が外気にさらけ出されていく。その深い谷間が、すでに手で覆いきれないほど大きくなった胸の大きさを物語っていた。

「とにかく、変身術に特化した術式解除を再度かけてみることとしよう……」
「先生、何か嫌な予感がするのですが……」
「うるさい!変身術式解除!」

少年の制止を振り切り教師が大声を上げる。再び教師の杖から光が放たれ、少女の体を包む。

「う、うぅぅっっ!!!」

だが、的中したのは少年の予感の方だった。少女がうめき声とも叫び声ともつかない声を上げるとともに、その胸がギュギュギュギュと急激に膨らみ、服を一気に破って飛び出してきた。ブルンブルンと大きく揺れるそれは、なおも大きくなり続けている。身長の方も、教師を超えるほどになってしまった。

「はぁっ、はぁっ……」

そしてそれは、少女が立ち上がったことでさらに顕著になった。

「……ふぅっ……みんなが、下に見える……?」
「き、君……」

少女は、教師を見下ろした。そして、視界の下半分を占拠する頭よりも大きくなってしまった乳房に気がついた。

「すごくおっきい……」
「ふ、服を着たまえっ!!」
「服……合うものがないです……」

どんな男性にも目の毒になるほどのスタイルを、目の前で見せつけられた教師は目を背ける。だが、大きくなりすぎた女性の体に合う服などない。

「そ、そうだな……では、魔法で作ることとしよう……」
「だ、だめですよ、また魔法を当てたらっ!!」

だがついに、服を作る魔法を少女に向かって放つのを、止めることはできなかった。杖から放たれた魔法を受けた少女の体は、また成長を始めたのだった。

「い、いやあああっ!!」

どんどん膨らんでいく胸をおさえ、そして自分に杖を向ける数人の同級生を見つめながら、少女は叫ぶほかなかった。

校舎日和

『さあ、猫松さん、一緒に食べましょう』
「そ、そう……じゃな……」

ねこますの眼下には、鉄筋コンクリート製の学校校舎があった。その一部は、隣にいたのらきゃっとに食べられている。

(なんで、こんなことになったのじゃ……?)

この話は、二人がこの世界で『起きた』ときから始まる。

『猫松さん、猫松さん』
「あっ、はいれた……」

ねこます、通称バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん、略してのじゃおじ、と呼ばれる彼女は、中学生くらいの背丈の巫女服姿の金髪狐耳の少女だ。ただし……

「のらちゃんお久しぶりー」

その口から発せられる声はアラサー男性そのもの。この世界の特異性として、姿と声が合わないのは普通のことなのだ。

『お久しぶりです、猫松さん』

それに対して答えるのは、のらきゃっと。戦闘用アンドロイドの銀髪美少女だ。ゴシック調で、紫がかった黒の服は、大きく胸が押し上げられ、その後ろからはネオンのように赤く光るしっぽが飛び出ている。頭の上から生えている猫耳は、放熱板のようなフィンが埋め込まれた機械のようなものだ。

「あ、あっ……やっぱり、のらちゃんを近くで見ると……あはは……」

ねこますは、背丈が低い彼女の方にかがみ込んでいた、のらきゃっとの頭をなでた。

『猫町さんも、かわいいですよ』

のらきゃっとの方は、少し焦点が合わなくなっているねこますの頬を撫でた。

「ああぁぁ……これ、すげ……触感までちゃんと分かる……のらちゃんの香りまで……ほんとに」

我を失いかけたねこますの唇は、色白の指にピッと押さえられた。

『猫松さん、ちゃんとバーチャル、バーチャル見て』
「あ、すみません……のじゃ。ねずみさんから紹介してもらった試験用VRシステム、こんなにすごいと思わなかった……のじゃ」

ねこますはぺこりと謝った。

『まあ、私のご認識さんまで再現しなくても良かったと思うんですが』

「ご認識さん」は簡単に言えば、のらきゃっとに内蔵された言い間違いを一定の法則で起こすシステムのようなものだ。このせいで、彼女はねこますのことを「猫松さん」と呼ぶしかなかったり、一般的でない言葉を言うのは難しかったりする。

「そうじゃよね……。でも、のらちゃんはそれも合わせてのらちゃんだから、それでいいのじゃ」
『それもそうですね。じゃあ、このワールドを回ってみましょうか。何か、大きな街のようですね』

二人の周りには、大きな広場が広がっている。ブティックや喫茶店がならぶ、ヨーロッパ風のおしゃれな空間だ。ねこますは、その店の一つに、カラフルなスイーツが並べられているのに気づいて、近づいていった。

「あ、マカロン……たくさん積まれてるのじゃ……」
『マカロンですか。入ってみましょう』

洋風のお菓子が並んだ店に足を踏み入れる二人。焼き菓子の甘い香りがただよっている。

「本当に甘い香りがするのじゃ……」
『新体幹……新体験……ですね。香りを、この世界で感じられるのは』

のらきゃっとは、棚からクッキーを取り上げ、口に入れた。

『甘い、甘いですね』
「本当に甘そうなクッキーですよね」
『猫松さん、こっち来て』
「のじゃ?」

誘われるがままに、ねこますはのらきゃっとの側によった。その口に、クッキーが突っ込まれる。

「うおっ!!って、甘い……」
『味までするのは、びっくりです』

クッキーを噛み砕く感触まですることに、驚きを隠せない。そんなねこますに、ポッキーが差し出された。

『今なら、ちゃんとしたポッキーゲームができますよ』

銀髪美少女が、目を細め、妖艶な表情でねこますを誘っていた。思わず飛び退いてしまう狐耳。

「そ、そんな……、俺、恥ずかしくって……!」
『冗談、冗談ですよ』

のらきゃっとは、差し出したポッキーをニコニコと食べてしまった。

「ふぅ……か、カウンターでは、何が売ってるのじゃ?」
『村ショット……村ショップ……』

ここに来て「ご認識さん」が発動するが、彼女が言いたいのは……

『ノラ ショット。そうです、そうです』
「そうです、そうです!……で、のらショットって、あの紅茶とエネルギードリンクを混ぜて作るアレ、ですよね」
『そう。校舎と、ですね。……紅茶』
「いまは、遠慮しておくのじゃ……」

二人は、店から出た。その後も、服を着せ替えてみたり、髪型をいじってみたり、飾りをつけてみたりと、二人でいろいろな体験をしていった。このどれもが、他の世界では体験しづらいことなのだが。

「この世界って、不思議じゃな……」
『楽しくて、いいじゃないですか。あっ』

そこで、のらきゃっとの体が、服ごと少し大きくなった。

「おっ、どうしたんですか!?」
『なんか、面白い機能があるようですね』

また、彼女の体が大きくなり、一軒家くらいまで巨大化した。

「おおー、大きいのらちゃんだ」
『かわいい猫松さん』

その大きな手、いや、指で、ねこますの頭を撫でる。

『そうだ、猫松さん。一緒に、校舎でも頂きませんか』
「紅茶、ですよね?」

のらきゃっとは、また目を細めてねこますを誘った。

『校舎、です。校舎。すぐそこに、学校があるんです』
「え、ええっ!?」
『行きましょう』

ゆっくりと歩いて行ってしまうのらきゃっと。といっても大きくなった体だとねこますが走らなければならないくらい速い移動だったが。

『着きましたよ、って、猫松さん?』
「は、速すぎるのじゃ……」