白い発情期(天彦こてさんから白扇さんをお借りしました・その2)

いつもと変わらない朝。天彦が目を覚ますと、寝床の脇に九音がニコニコ微笑みながら立っていた。

「とーさま、おはよ」
「おは…ぐふっ!」

挨拶を返す隙も与えず、天彦の胸の上に飛び込む九音。

「とーさまー!」
「ど、どうしたんだ九音、いきなり…」

天彦はある違和感を感じた。胸板の上に乗っている我が子から伝わってくる重みが緩やかだが確実に大きくなっている。ところが、目の前にいる桃色の髪の小さな子の姿が変わっている様子はない。

「とーさま、とーさま!」
「ちょ、九音、重い、重い!」

天彦の体を潰そうとする力は増える一方だ。

「つ、潰れる!」

天彦は目を覚ました。どうやら夢だったようだ。しかし胸を圧迫する力は消え去っていなかった。

「おはようございます、あなた…」
「び、白扇さん!?」

天彦の目に最初に入ったのは、のしかかっている人物の顔ではない、肌色の膨らみ。ふかふかと柔らかくも、人体の一部とは考えられないほどの大きさと、どっしりとした重量感、というより重量そのものを持っている球体。まがいもなく、天彦の妻であり人狐の白扇、その人の乳房だった。

「どうしたんですか!こんな朝から!」
「その…どうしても抑えられなくなってしまって…」
「まさか、発情期に…」
「そんなはずは…ありませんよぉ…」

しかしそのアメジストの瞳はトロンと虚ろで、息も荒い。白扇は定期的に、人狐としての力が暴走気味になり、自分でも抑えきれないものにかられてしまう体質があった。

「そんなことより、私のこれ、気持ちいいでしょう?今日は特別に大きくしてるんですから…」

自分の巨大な胸を撫で回し天彦に見せつけるように歪ませる白扇の仕草は、まさに子作りをしたがる狐のようだ。

「ちょ、ちょっと今日は買い物があるんですから!」
「では、朝ごはんだけでも…」

シュンと横に垂れてしまった白い狐耳を見て天彦は後ろめたさを感じたが、どうしようもない。二人は寝室を出て、朝食が用意してある食卓に向かうのだった。

「で、白扇さん…」
「なんですか…?」
「なんで、ついてきたんですか」

天彦はもともと一人で買い物に出かける予定だった。その彼に、白扇は何も言わずについてきたのだ。ただ、その大きな胸は縮ませ、狐耳は隠し、縦縞が入った袖なしのセーターに、カジュアルなスカートを履いて極力目立たないようにはしているようだ。しかし、男性として平均的な身長の天彦よりも頭ひとつ大きいその身長と、胸がなくても豊満な体型は、かなり人目を引いていた。

「発情期なんでしょう?ついてきて平気なんですか」
「はつ…じょう?何の話…ですか…?」

普段は発情期はゆっくりと段階的に訪れるものだったのが、今回は一気に最高段階まで行ってしまっているようだ。昨日までは、大人しく、しとやかな女性であった白扇は一晩過ぎただけで何を考えているかわからない状態まで遷移していて、彼女自身もその変化に順応するどころか、気づくだけでも難しいほど理性を失っていた。

「そういえば…さっきから体が疼いて…」
「ほら、だから帰ったほうが…」
「…天彦さん…いつもより素敵…」
「え?」

天彦が見ると、白扇の瞳の焦点が定まらなくなり、息が先程よりも荒くなっている。

「わたし…もう…たえられない…」

白銀の髪の中から狐耳がザザッと伸びてきた。

「こ、こんなところで…!?」
「あぁ…あなた…!」

セーターが押し上げられると同時に横に引っ張られ、その中身がムクムクと大きくなっていることが一目でわかる。体の尻の部分からも白い尻尾が何本も、ピンピンと生える。

「だめですよ!白扇さん!」
「んんっ!!」

膨らみ続ける胸はセーターが伸びきっても大きさは全く足りず、ビチビチと破けて穴が空き、はみ出した白扇の乳房がプルプルと揺れた。

「ああっ!」

最後の束縛が解け、それはブリュン!!と外に飛び出た。

「あちゃ…」
「ごめん…なさい…でも…まだ疼きが…!」

天彦の前で、白扇は元の姿に戻るだけでなく、更に大きくなっていた。スカートもギチギチと言い始めたと思うとすぐにビリッと破け、白扇は完全にその肌を晒してしまった。身長も2m、3mと大きくなり、発情期特有の甘い香り、いや濃すぎる甘さの匂いが周りに充満しはじめた。天彦には、最後に白扇の中に残っていた理性が消えていくのが見えた。

「わたし…あなたのために…もっと大きくしたい…」
「いけない!やめてください!」

白扇には天彦の言葉が耳に届いていないようだった。あっという間に3階建てのビルくらいまで大きくなった彼女の胸は直径4mはあるだろうか。天彦から見えるそれは、先端にほんのりと薄いピンク色が乗ったアドバルーンのようだ。

「はぁ…はぁ…」

白扇は荒い息を立て、その呼吸の度に球体はフルンフルンと揺れ、それと同時にムクッムクッと成長し続ける。天彦をぼんやりと見つめるアメジストの瞳も、地上から離れていく。そしてついに、

ガシャーン!!!!

白扇の体がその通りに建っているビルに衝突し、窓ガラスが全部割れてしまった。そして、それでも止まることのない周期的な巨大化によって、ビルはぐいぐいと押されて、メキメキと音を立てて歪んでいく。

「あなた…」
「白扇さん!!」
「ふああ…っ!!」

基礎からポキッと折れてしまったのか、ビルが崩れた、というより横転した。それに寄りかかる形になっていた白扇は転倒してしまい、その衝撃で大きな地響きが起きて、天彦も床に倒れてしまった。

「あ…う…」

倒れたまま大きくなる人狐の体は、地面と道路の舗装に亀裂を走らせ、抉っていく。そして倒したビルや下敷きになった他の民家だけでなく、隣の建物もぐいぐいと押し、その巨大な乳房も数トンの重さになって、形を歪ませながらも、自分の占居する空間を押し広げていく。

「大丈夫ですか!?」
「あ、あ…はい…」

天彦の呼びかけに応えて、今や20mの身長がありそうな白扇が、フラフラとしながらも立ち上がった。その豊満な肉体と、存在感たっぷりの胸についた豊球がさらけ出されても、彼女が恥ずかしがる様子など微塵もない。

「天彦…さん…小さい…」
「白扇さんが大きいんですよ!!」
「あら…そう…なの?じゃあ…」

白扇はその事実をようやく受け止めても、自分を抑えようとするどころか、逆に背伸びをした。すると、急激に巨大化のスピードがあがり、近くの電波塔くらいの大きさになった。

「わたし…こういうことも…できるんですよ…?」

その電波塔に、足元を確認することなく白扇が歩いていく。そのドシンドシンという一歩ごとに地響きが起こり、ドユンッ!と直径が20mくらいの乳房が揺れ動くのが、遠目に明らかに分かった。

「えーい、なんちゃって…」

お茶目に笑いながら白扇は、自分の胸で電波塔をギュッと挟み込んだ。電波塔の強度は、できるだけ軽くした自重の何倍かと、風圧だけに耐えられるように設計してある。それが、ほぼ水と同じ密度を持つ巨大な物体にはさまれたのだ。一瞬でグシャッとつぶれてしまった。

「あらあら…天彦さんより…柔らかいなんて…」

白扇が挟んだまま動こうとしたせいで電波塔は根元からちぎれてしまい、その電波用の通信ケーブルが断線して、火花が飛び散った。その刺激は白扇にも伝わったようだが、痛みではなく快感としてだった。

「ひゃあっ…すごい…」

先ほどから続いていた甘い匂いがまたもや濃くなった。すると天彦のまわりで異変が起こった。それは、まず音として天彦の耳に伝わってきた。ギチギチ…だったり、ミチッだったり、ビリッ!!だったり。天彦がその音の方向を見ると、巨人から逃げ惑う人々の中で、女性全員の胸がはだけていたのだ。しかも、お年寄りもかなりの割合で含んでいたはずのその女性達は、全員が全員20代かそれより下まで若返り、晒されている胸には、白扇のものにはかなわないが、どう見てもいわゆる「爆乳」とよばれるサイズのものがついている。

「これは…いったい…」
「あ…あなた…?」
「白扇…さん…えっ!?」

天彦が驚いた理由。それは、その現象を見た白扇の表情の変貌ぶりだった。トロンとしていた空気が一気に吹き飛び、嫉妬や怒りのような負の感情が湧き出していたのだ。

「天彦さんは…」
「お、落ち着いて…」
「天彦さんは…この私、白扇のものなんです!」

先ほどにもまして我を失っている妻を見て、戦慄と同時に羞恥心を感じる天彦。

「はっ!?」
「どんなにお胸が大きくたって、私のものに敵いはしないんです!!」
「ま、まさか…この人たちが俺を誘惑してると思ってるのか!?」

白扇は、電波塔を谷間から引き抜いて、天彦の方に走ってくる。天彦はもはや大地震と呼べるほどの揺れで立っていることができず、地面に腕をついて、仰向けに倒れてしまった。

「さああなた、私のお胸、全身で味わってください!!」
「ちょ、ちょっとまって!!!」

白扇は天彦の方に飛び込んできた。というより、少なくとも天彦から見て、その胸が潰しにかかってきたと言ってよかった。それは、天彦の周りにあった全ての建物や電柱をいともたやすく破壊しながら、すさまじいスピードで天彦に迫ってきた。

「う、うわあああ!!……で、でも……」

倒れたままの彼は避けることもできず、絶望を感じると同時に、大きな喜びも感じていたのだった。

「でもまあ、白扇さんの胸なら…むぐ!!!」

天彦は、文字通り全身で、白扇の乳房の柔らかさと強烈な質量感を感じた。そして、彼が本当に潰されることはなく、単にその柔軟なものに包まれるだけだった。

「気持ちいい…」

天彦の口をついて、そんな言葉が出てきたのだった。

「申し訳ありませんでした!!!」
「いや、もういいんですよ、過ぎたことですから…」

土下座する白扇を、なだめる天彦。結局、すぐに我に返った白扇は元の姿に戻ったのだった。白扇によると、突然発情期に入ったのは地磁気の乱れとか何とからしい。

「お恥ずかしい限りで…」
「でも周りの人の記憶だって元に戻したんですよね、だから大丈夫ですって」

白扇は頭を上げたくないようだった。

「母さま、すごく大きくなってたの?九音、一緒に行きたかった」

しかし、すこし寂しそうに耳を垂れながら、九音がつぶやくと、白扇は真っ赤な顔のまま娘を諫めた。

「こら、九音!」
「まあまあ…」

九音は悪びれる様子もあまりなく、笑った。

「あはは、母さま顔まっかっか!」

それで、天彦の緊張もほぐれて、吹き出してしまった。

「クスッ…本当だね」
「もう、あなたまで…でも、あなたがそこまで言ってくれるから、私も気が晴れました」

白扇は顔を赤らめたまま、微笑んだ。

「そうですか、よかった」
「ええ、ありがとうございます、天彦さん」
「おっと…」

白扇は天彦をギュッと抱きしめた。白扇は目をやさしく閉じていて、それは築かれた信頼を再確認するかのような抱擁だった。天彦も、白扇の長身のせいで、その顔に当たるムニュムニュした胸から温もりを感じ取り、抱き返した。

「ふふ、どういたしまして、白扇さん…」

いたずら神のE道具 格上の押下

「ただいまー……って誰も居ないか」

学校から帰ってきた中学生の少女は自分の部屋に向かった。宿題をする前に少し漫画でも読もう。と思った彼女の目に飛び込んできたのは、勉強机の上においてある見慣れないものだった。

「なんだろう、これ?」

それは、押しボタン。小さな金属の箱の上に、スケルトンのボタン部分が付いている。昔どこかのテレビ番組で、芸能人が押していたような、簡単なボタンだ。しかし、少女の記憶には、これを机の上に置いた記憶も、買った記憶すらもない。

「理恵が遊んだまま置いてったのかなぁ……それとも愛お姉ちゃんが私にびっくりでも仕掛けてるのかな?それなら……」

少女はボタンに恐る恐る手を伸ばし、そして押した。

『ほぁー!』

なんとも間抜けな音が出たが、それだけだった。少女はほっと一息ついて、ボタンはそのままに本棚から漫画の単行本を取り出し、読み始めたのだった。しかし、一話を読み終わった時、異変が起こった。

「なんか、暑くなってきてる……」

少女の体から汗が噴き出始めたのだ。暖房もつけておらず、かと言って日が差し込んでいるわけでもない。夕方で室温が下がっていく一方なはずなのに、少女は暑さを感じた。身を起こした彼女は、自分の体の中から熱が発せられているのに気づいた。

「ちがう、私の体が熱くなってきてる……あっ……!」

そのとき、少女に軽い衝撃が走り、それを境に熱は冷めていった。

「何だったんだろ、今の……あれ、なんか服が……」

すこし余裕があったはずの服がきつくなっている。下を見ると、もともと膨らみかけだった胸に、大きな膨らみがくっつき、服を押し上げていた。少女がそれを触ると、フヨフヨと変形すると同時に、少女の胸の部分に触られている感触が伝わってきた。

「えっ……これ、おっぱい……?もしかして、おしりも……」

腰に手を当てると、姉である愛と同じ程度の大きさの尻が付いていた。よく見ると、体の部分一つ一つが、高校生のそれに成長を遂げていた。少女は部屋の鏡に映り込む自分を見た。

「うそ……これが私……?」

姉と瓜二つの高校生になった自身の姿に呆気にとられてしまい、ゲームソフトを借りるために姉本人が部屋に入ってきたことに気づかないほどであった。

「え、アタシが何で二人いるの!?」
「あ!お姉ちゃん、いつの間に!?」
「お姉ちゃ……ってことは双葉なの!?」
「そ、そう……私双葉だよ!」
「でも、どうして?あ……」

愛は自分の生き写しのようになった妹の奥に、机に置かれたボタンを見とめた。勘がいい彼女は、机の上からボタンを取り上げ、妹の前に持ってきた。

「これでしょ?これを押したら大きくなったのね」
「え、お姉ちゃんなにか知ってるの?」
「いや、そういうわけじゃないけどさ。どれ」

愛はそのままボタンをポチッと押した。

『ほぁー!』

双葉が押した時と同様、音が出るが何も起きない。ところが、愛は早とちりをしてしまった。

「何も起きないってことは、今のはハズレってことね」

ポチッ。

『ほぁー!』
「またハズレー?」
「ちょ、お姉ちゃん……」

ポチッ。

『ほぁー!』
「どうなってるのよ、えい!」

ポチッ。

『ほぁー!』
「あーもう!双葉、どうしたら大きくなったのよ!」

思っていた結果が出ない苛つきを妹に押し付ける愛だが、双葉も反撃しようとした。

「何で私に怒るかな!」
「いいから早く教えなさいよ!」

だが、その剣幕に、一瞬で双葉は折れてしまうのだった。

「えーとね、押したらその音が鳴って、その後少し経ってから大きくなったんだよ」
「って、ことは……」
「お姉ちゃんも待ってれば大きくなるよ」
「な、なんでもっと早く言ってくれないの!何が起こるか分からないじゃない!」
「だ、だって……」
「だってじゃないで……しょ……あ……あ……」

愛の様子がおかしくなり始めた。全身の皮膚が赤らみ、汗が吹き出始める。

「お姉ちゃん……?」
「あ、あ……あついぃぃいい!!」

愛が叫ぶと同時に、全身を覆う服がビリビリと音を立て、中から膨張する愛の体がグググッと出てきた。あっと言う間に服は千切れ、愛は一糸まとわぬ姿になってしまう。それでも成長は続き、普通の大人を通り越して、背は伸び、胸はムクムクと膨らみ、それを覆うように皮下脂肪がムチムチと急増殖する。

《ゴツンッ!》
「うぁっ!!」

ついに部屋の天井の高さに届き、激しすぎる成長のせいで、頭を強く打ってしまった。たまらず床にドサッと倒れると、家全体にドーンッと衝撃が走り、至るところからギシギシと軋みが聞こえてきた。

「でも!……まだ!……あつい!!!」

愛の全身はドクンドクンと脈打ちながら巨大化を続け、部屋いっぱいになったところで、やっと成長が終わった。

「う……動けない……胸も苦しいし……」

その巨大な体に対しても大きい、大玉ころがしの玉くらいの乳房が、部屋の壁と床と天井によって歪み、愛の体を圧迫していた。本棚やベッド、勉強机などはその弾力で押しつぶされてしまっていた。

「お姉ちゃん!?大丈夫!?」
「だ、大丈夫なわけ……!」

『ほぁー!』

「「はっ!?」」

愛と双葉の会話を遮るように、間の抜けた、しかし身の毛もよだつような音が響いた。

『ほぁーほぁほぁほほほほぁー!』
「ちょ、機械が故障したの!?」

身動きが取れず音の源の方を確認できない愛。その質問に答えた双葉の声は、絶望に満ちていた。

「ううん……理恵が……」
『ほぁー!ほぁー!』
「これ、楽しい!もらってもいい!!?って、この肌色の壁、どうしたのっ?」
『ほぁー!』

末っ子の理恵。小学生の彼女が、ボタンを際限なく、何回も押していた。

「ちょ、まさか……理恵!やめなさい!って、もう……」

双葉はそれを止めようとしたが、理恵の体が姉と同じように、赤みを帯びてきたのに気づいた。

「あれ?なんか気持ち悪くなってきちゃった……」
「時、すでに遅し……愛お姉ちゃんあとよろしく!」
「はぁ!?ちょっと待ちなさいよ!!」

双葉は姉の制止を聞かなかったようで、ドタドタと逃げていった。その次の瞬間、壁と天井と自分の胸だけが見えていた愛の視界が、急に開けた。信じられないような轟音とともに。

「ん、なんで……り、理恵!?」

自分と同じくらいの身長になった理恵が目の前にいた。それで、家が吹き飛ばされたせいで、自分が解放されたことに気づいた。理恵の体型は小学生のままだが、身長は刻一刻と伸びていく。

「お姉ちゃん、怖い……よぉ……!んあっ……ああっ!!!」

愛の時と同じように、理恵は大きな叫びとともにその体型を変え始めた。まず足がグキグキと伸びていき、同時にムチムチと肉がついて、ぽってりとしていたそれは、美しい曲線を纏った大人のそれに変化する。全身の巨大化が止まらないのも相まって、身長はゆうに5階ほどの中層ビルを超えていた。家ほどの大きさになっていた愛ですら身の危険を感じるほどになり、急いで離れる。

「理恵……!」
「んんっ……くきゃっ……」

妹の顔が遥か上にあるのを見て、大きすぎる違和感に立ちくらみを起こしそうになる愛。その視線の先には、さらなる変化を遂げていく「小学生」の体があった。

「かはっ……んんんぅっ!!」

足に取り残されていた他の体の部分も成長を始め、幼児体型が長く、細く、曲線的な輪郭を帯び、大人の階段を数十段ひとっ飛びしていく。この時点で、140cmにも満たなかった理恵は高さ140mの高層ビルすらも超えるような巨人に成長していた。巨大化が止まらないまま、胸板の一部がぷっくりと膨れ始めた。

「胸が……いたいっ……!」

乳首の周りが小山のようにプクーッと膨れたかと思うと、その小山は大噴火を起こしたように何十倍、何百倍もの大きさに膨れ上がり、その中に熱気球が何個も入るような大きさまで、一気に成長してしまった。あまりの重さに理恵はバランスを失い……

《ドゴォォォオオオオン!!!》
「あうう……!!!チクチクする!!」

密集した住宅街、いやそれに隣接した駅前の商店街までも巻き込んで、倒れた。発生した非常に強い揺れもともかく、理恵の重さはどんなに堅牢なつくりの建物も一瞬で破壊するほどのものだった。チクチクするどころではない。

「うわあん!私、どうしちゃったのー!!」

なんとか巻き込まれていなかった愛と双葉は、目の間にそびえる肌色の壁を眺めつつ、ため息をつくほかなかった。

大鑑巨人主義!前編

ここはとある巨大テレビ局の仮眠室。取材続きの疲れの中、俺はぐっすり寝ていた。が…

ドーンッ!!

「な、なんだなんだ!!」

俺は、大きな揺れに飛び起きた。そのゆれは地震のように長く続かず、すぐに収まった。俺が寝ていた仮眠室に、編集長が飛び込んできた。

「おい、スクープが取れるぞ、早くヘリに乗れ!」
「は!?」
「いいからはやく!」

俺は編集長に怒鳴られるままに、取材ヘリが収容してある屋上へと向かった。ヘリコプターはすでにローターを起動し、すぐに飛び立てる準備がしてあった。

「お、渡辺!お前つい3時間前まで徹夜の取材してたのに大丈夫か!」

パイロットの岡部が、ヘリコプターの方に走ってくる俺を見て笑った。あいつだって、同じ取材で疲れきってたはずなのに。

「編集長に言われたんだよ、それで、なんだよスクープって、さっきの揺れと関係有るのか?」
「あ?なんだお前、知らないのか。まあ離陸すればすぐ分かるさ」

俺が寝ている間に多くのことが起きたかのように言われた。地震か?それとも火山の噴火?疑いながらも、ヘリのカメラの後ろに腰を下ろし、ヘッドセットに喋った。

「いいぞ、さっさと終わらせよう!」
「ふん、きっと驚くぞ」

ローターの回転数が上がり、ヘリはヘリパッドを離れた。テレビ局の屋根が離れていく。

「な、なんだありゃ……!」
「すげーだろ」

隠れていたテレビ局の下の風景が一気に広がったが、見えたのはいつもの港や町並みだけではなく、なにかすごく大きいもの。いや、明らかに人間なのだが、そのスケールは俺の常識をはるかに上回っていた。こんなの、テレビの特撮もの以外で見たことがない。

「あれは……女性か……?」

そこには、東京タワーより少し背が低めで、体型的には長身、緑なす黒髪は、中層ビルほどの高さにある腰まで伸びている。弓を持ち、矢筒を背中に抱えていることから、射手なのだろうが、あの矢は高層ビルすら貫き通すだろう。全体的に赤を貴重とした射手の服の上に、黒い大きな胸当てを当てている。足の方は、何やら下駄のような、はたまた軍船の艦首のような、何かを履いている。それに、何だろう。肩から下げている盾には、まるで旧型の航空母艦のような……

「お、おい、寝ぼけてんのかよ!さっさとカメラを回せ!」
「はっ!俺としたことが……」

俺がぼーっと「ソイツ」を眺めているのを見かねて、岡部が言ってきた。といっても、どこを撮ればいいのやら。そのものすごく戸惑っている顔か、胸当てがあってもわかるようなふくよかな胸か、それともニーソックスに包まれた健康的な脚か……どうにもこうにも、全身が大きすぎてカメラに収まりきらない。身長が250mはありそうだ。

「こ、ここは東京、ですよね……?多分、あれが陛下のおわします所で……じゃあ南に行けば……」

少し動くだけで何もかも破壊してしまいそうな大きな体とは裏腹に、汚れのない、どこかにプライドを漂わせる声で、彼女は独り言をつぶやいた。どうやら、東京を破壊しに来た無慈悲な生物では、少なくともないらしい。

「南って……どっちです……?」

なんだろう、何かかわいそうになってきた。半分涙声になってきたその巨人に、俺は話しかけてみることにした。

「おい、岡部、もう少し近づけるか?」
「大丈夫かよ、あんな大きいのに近づいて……」
「スクープを取りたいんだろ、俺が独占インタビューしてやるからさ!」
「なにバカなこと言って……ああもう、近づきゃいいんだろ!?」

岡部は機体を動かし、彼女に近づいていった。200mくらいになったところで、あちらもこちらに気づいたようだ。

「な、なんですか?この飛行機……?何で浮いてられるんですか……?すごいです!」

こんな状況でも好奇心いっぱいなのか、顔を近づけてきた。おかげで、喋りやすくなった。俺は拡声器の電源を入れ、巨人に向かって叫んだ。

「あの!!お名前をお伺いしても!?」
「ひゃっ!?」

いきなり声を出したせいで、巨人がたじろいだ。それで一歩後ろに退いてしまい、その足からドーンッ!という轟音が聞こえてきた。みると、下のビルが粉砕され、跡形もなく消え去っていたのだ。

「ああ……大丈夫ですよね……?」
「ああ!!この地帯は避難命令が出て誰も居ないはずだから!!それよりもお名前!!」
「あ、私は、連合艦隊、第一航空戦隊の赤城と申します。母港を探していたら……いつの間にかここに……」

赤城?ミッドウェー海戦で喪失したことで、連合艦隊の能力が大きく低下してしまったという、あの赤城?

「あの、赤城は航空母艦のはずで、こんな大きな人間女性ではないですよね?」
「……信じられないとは思いますが、私も信じられないのです。人間の形を持つことになるなんて、夢にも思っていませんでした。だけど、現にこうなってしまったのです。横須賀に、横須賀に帰らないと……」
「横須賀、ですか……」

神奈川の大きな米軍基地がある、今の横須賀。もし彼女が旧日本軍の空母であったとして、母港のほとんどが敵国の基地になっていると知ったら、どうなることだろうか。

「あ、そうですよ、あなたならどちらにあるかご存知ですよね?」
「うっ」

本当に案内すべきか迷った。日本に現れた巨大女が、米軍の基地を壊滅させる、なんて、とんだ大事件だ。しかし、横須賀まで飛んでいける燃料はあるし、他の海上自衛隊の基地を見せても納得しないだろうし……今さらこのネタを逃すわけにも行かない。

「いいでしょう、ただし、できるだけ市街地に被害は出さないようにしてくださいね!」
「え、ええ、それはもちろん……」

俺は岡部の方にアイコンタクトをした。岡部は肩をすくめて、横須賀に進路をとった。

「では、ついてきてください」
「はい、ってうわぁ!!」

いきなりのハプニングだ。赤城は低層ビルにつまづいてしまい、天王洲アイル駅の真上に倒れてしまった。東京モノレールの線路はポキッと折れ、埋立地の弱い地盤はえぐられ、手を突いた先の首都高の橋桁は破壊されて下の運河に落ちていってしまった。

「あいったたた……」

本人は痛がっているが、真下の人の安否が心配だ。それにどう転んでも、この地帯の修復には何週間もかかるだろう。だが、それは俺の知ったことではない。コミュニケーションが成功した今、赤城自体のことをまともに取材できる一員になったのだ。下の被害は誰か他の奴らがやってくれるにちがいない。

「すみません……本当に……」

すぐに立ち上がった赤城のスカートにはモノレールの車両がひしゃげてくっついていたが、赤城が払うとぺろっと落ちていき、地面に激突して粉々になった。

「多分、大丈夫ですから……」
「気をつけます……」

赤城は履物を運河の水面に付けた。すると履物は沈むこと無く赤城の体重を支え、赤城はスケートをするように運河の上を流れ始めた。

「じゃあ、行きましょうか」

赤城はそのまま、東京湾のほうに滑っていった。(つづく)

白い惑星(天彦コテさんから白扇さんをお借りしました)

天彦コテさん(http://www.pixiv.net/member.php?id=2570859)に許可をいただきこの方のオリキャラである爆乳狐っ子の白扇さんを、私の書ける範囲まで巨大化させてみました。


日本のある日本家屋。そこに、二人の女性が住んでいた。

「そろそろお帰りかしら…」

時計を見ながら呟く、銀白色の長い髪を垂らしている、身長190cmほどの、背の高い女性は、白扇(びゃくせん)。女性といっても、その髪からはスッと一対の狐耳が立ち、腰からはふかふかした尻尾が生えている。白扇は狐の神なのだ。ただその彼女を狐たらしめている特徴の他にも、着ている振り袖の胸の部分を、大きく押し上げる乳房はそれ一つ一つがビーチボールが入りそうなほど大きい。

「とーさま遅い…」

白扇に寄り添う、小さな女の子は九音(ここね)。二人が待っている男性の人間、天彦と、白扇の間に生まれた人と神のハーフである。母親の外見とかなり似ているが、白扇の豊満で長身な体型は受け継がれていないのか、華奢だ。それに、白扇がアメジストの瞳と銀色の髪を持つのに比べると、九音は全体的に桜色が混じり、髪も肩までしかとどかない、フワフワとした内巻きのくせ毛だ。

そんな二人に、呼び鈴が父親の帰宅を知らせた。

「とーさま!」

九音はすぐに玄関に駆けていき、引き戸を開けた。

「とーさま!とーさまおかえり!」

白扇も微笑みをたたえながら九音に遅れて玄関に脚を運んだ。

「おかえりなさい」

九音に抱きつかれ、頭を撫でている天彦に、声をかける。

「白扇さん、ただいま帰りました」

その顔は、冬の冷気で熱を奪われたのか、すこし青ざめているようだった。白扇は、用意しておいた夕食を告げる。とっておきの、秘密の材料をふんだんに使ったものだ。

「お疲れでしょう。今日はお手製のクリームシチューですよ」
「そうですか!それは楽しみですね」
「さ、上がってください」

白扇は天彦の部屋についていき、服を着替えるのを手伝う。乳房がむにむにと当たり、天彦の耳が赤くなっているのをみて、白扇はクスッとしながら言った。

「今日も、お疲れ様です」
「いいえ、そんなことは…」

一連のことがすむと、二人は共に食卓についた。

「じゃ、いただきます!」
「どうぞ召し上がれ」

天彦は食器を手にとって、シチューをゆっくりと口に入れると、すぐに満足そうな表情になった。

「おいしい…」

彼の褒め言葉に、白扇の心は浮き上がった。

「あなたの言葉、嬉しいです……頑張って作った甲斐がありましたね、九音」
「とーさまの為に二人で作ったんだよねっ!」
「そうなんですか。じゃあちゃんと味を確かめて食べないと」

天彦はシチューを一口一口、ゆっくりと食べていく。そうするごとに、目を閉じ、味を確かめているようだ。食べ終わると、天彦は惜しそうに言った。

「ああ、もうなくなってしまった。美味しかったなあ、もっと食べたいですね…」
「あら、それではミルクをもっと沢山お作りしないと」

実は、シチューの秘密の材料とは、白扇自身からでた母乳だったのだ。

「えっ、白扇が作ったんですか…通りで」
「ええ…また、余計なことをしてしまいました?」
「いえいえ、これ以上の満足感はどうやっても得られませんよ…」

白扇の綺麗な尻尾がパタパタと勢い良く動く。よほど嬉しいらしい。

「では、今からでもお作りしますね!」
「え、ちょっと…」

自分の能力で乳房を膨らまし始める白扇。肌色の部分が振り袖からムクムクとその姿をのぞかせ始める。だが、天彦はそれを制した。

「なんですか?」
「今日は、大丈夫ですよ…」
「そ、そうですか…」

少しシュンとして、耳が垂れてしまう。天彦は申し訳無さそうな顔をしているが、それ以上なにか言う前に、白扇は異変に気づいた。

「あ、あれ?あ、あなた…ちょっと…」
「どうしたんで…あ!」
「母さま!」

膨らますのを止めようとしても、胸の双丘は隆起を止めない。

「ど、どうしましょ…止まらないわ!」

ムギュムギュと育っていくそれは、不思議な力で支えられているように垂れること無く、どんどん大きくなる。食卓の上を覆い尽くしてしまったそれを、身長が高く、豊満な体を持つ白扇も支えきれなくなっていく。

「白扇!」
「お、重いー!あ!」

ついに白扇がバランスを崩し前に倒れてしまった。食事用の机をぶち壊して、床にドタプーン!と胸の洪水が起こる。

「大丈夫ですか!」
「発情期でも無いのに、こんな、はしたない事を…でも胸に飛び込んでくる神通力が止まらないんです…それに、気持ちよくって、もう、なんて言ったらいいのか……」

今や白扇の体は胸の上に乗っかっている。不定期に訪れる発情期にはこれくらいの大きさにして天彦を誘ってくることもあるのだが、今の彼女は涙顔で、とても恥ずかしそうだ。

「とーさま、母さまを励ましてあげて!」

九音がすがるように天彦の脚にくっつく。すると天彦は少し考え、決心したようにその柔らかい膨らみに抱きついた。

「ひゃうっ!?あ、あなた一体どこを……」
「俺の大好きな白扇……俺を包み込んでくれ!」
「九音も母さまのこと好き!」

それは部屋を満たしていく。

「ああ、それでも、止まりません……」
「いいさ、俺はついていくよ……」
「九音もついてく!」

白扇の膨らみ続ける乳房に、二人は掴まっていた。ついには、家をいっぱいにした2つの球体は、家の構造を歪ませていく。家中の柱や梁がギシギシときしみ、ベキッと折れたりバキッと破断する。

「もう、もう、わたしっ!」

家の木材を吹き飛ばすように、ドンッと大きくなった。建材が粉々に砕け散り、家は一瞬で瓦礫と化した。

「はぁっ……あ、あらあら……直すのが大変……あら?」
「どうしたんです……?あっ!」
「母さま、大きくなってる!」

今や大きさを増しているのは胸だけではない。白扇の豊満な体全体がムクムクと大きくなっていた。しかし、敷地を満たし始めた、直径が20mはある肌色の柔球に乗っている状態は、全く変わらない。

「確かに、全身が熱くなってる……どうしましょう……」

その落ち着いた声と裏腹に、乳房はドドドドと庭にある井戸や納屋、とにかく全部のものを押しのけ壊し、自分の存在する場所を増やしていく。

「これは、すぐには収まりそうにありませんね」

天彦も、もうどうにでもなれ、と言った感じに落ち着いている。白扇は神であるし、神通力が体の中に溜まっていっているなら全て元通りにできると踏んでいたのだ。

「そうですね……」

庭の塀と生け垣をバサッとなぎ倒し、道に溢れ出す乳房。天彦たちがいるところは、もはや10階建のビルより高い。それに、膨張のスピードは加速度的に上がって、直径が30mから50m、50mから100mとドンッドンッと毎回何かが爆発するかのように大きくなり、どんどん周りの土地をえぐり返し、吹き飛ばしながら侵食していく。隣の家などはもう潰されてしまった。そして、今は3階建てのマンションに圧力をかけ始めたと思ったら、次のボワンッとした胸の爆発で、倒壊するというより飲み込まれてしまった。

「わぁい、母さまのお胸ふかふかー!」
「こら、九音……」

肌色の文字通り丘の上ではしゃぐ娘を諌める白扇の声は、今は街中に響く。身長はもう10mを超え、小さな九音の声をどうやって聞いたのか、わからないほどだ。

「俺も気持ちいいですよ」
「あなたまで……」

街の明かりに照らしだされる2つの球体の上で、白扇は半ば困ったように微笑んだ。

「もう、しかたないですね…ひゃぅっ!?今何かピリッと……」

ついに近くの高圧電線に達した、東京ドームにも収まらないであろう乳房が、それをプチッと切ってしまったのだ。

「はうっ!……気持よかった……ハッ……」

その電撃が、白扇の体に伝わっていた。電源を失った街は、フッと暗くなった。暗い中で、ゴゴッゴゴゴゴッと膨張を続けるそれは、頑丈な鉄筋コンクリートで作られた町役場や学校をいともたやすく飲み込み、押しつぶしていく。

「わたしのお胸が……コリコリするっ……ひぃっ!?」

コンクリートが立てるゴロゴロという音が、雷嫌いの白扇の耳に伝わったようだ。何が起こっているか察しがついていた天彦は、そんな彼女をからかうように言った。

「雷神様を、怒らせてしまったかもしれないですね」
「えっ!お助けを!」
「くわばらくわばらー!」

白扇に加えて九音もそのピンっと立った耳を手で押さえて震える。その身長が1kmになっている、巨大な体の震えは10kmを超える乳房にも伝わり、大地震を巻き起こしていたが、そこまでは気づかない天彦だった。

「あはは、冗談ですよ。雷では、無いと思います」
「え?もう……あなたったら……」
「とーさまの意地悪!」
「あら……?」

白扇は遠くに見える港町の明かりを見て、目を輝かせた。

「綺麗……」
「そうですね……」
「ひゃっ!冷たい!」

30kmを超えるようになった乳房が海にも入り込み、冷たい水に浸かっているのだった。段階的にボワンッと大きくなる巨大な質量のせいで、船舶は転覆を免れず、津波が起きてしまうほどだった。

「ね、ねえあなた、あなたったら!」

白扇が天彦を見ると、なんと凍りついていた。高度はもう対流圏から抜け、成層圏の真ん中。気温は今は上がっているものの、マイナス40℃で、人体が耐えられるわけがなかった。

「とーさま、大丈夫!?」
「わたしとしたことが、今治してあげますからね」

白扇は天彦にふーっと息を吹きかける。すると氷はすぐに溶け、天彦は元に戻った。

「結構、高くまで来ましたね……富士山もあんなに下に……って、どうしたんです?」

凍っていた時の記憶がないようだ。心配そうに見つめる巨大な白扇の顔――今はそれだけで1kmくらいの大きさがあるが――を見て、きょとんとする。気が緩んだのか、白扇は吹き出してしまう。

「だ、だからなんですかって!」
「いいんです、それに、いい景色ですよ」

高度は200kmに達していて、雲の上から日本列島の形がくっきり見えていた。同時に、地表では肌色の巨大な何かに飛行機は衝突し(というより飛び込んで包み込まれ)、地面はえぐられ、山は削られ、街は潰されて、とどめを刺すように、それがゴゴゴッと大きくなる度に衝撃波が生まれて、何もかも破壊されつくされていた。

「んっ……!ちょ、ちょっと冷たいですけどっ!それに、またピリピリっ!」

ほぼ真空で凍りつかないほうがおかしい高度にある体の方は耐えられているのに、胸の方は感度が高いらしく、太平洋の冷水で白扇は刺激を受け続けているようだ。それに今度は本物の雷が繊細な肌に襲いかかっていた。白扇は少し顔を赤らめている。

「段々、収まっては来ていますけどね……!」
「あはは、そうですか……」

それも白扇の体熱が海水に移るのに加え、地上にあるもの全部を足しあわせても追いつかないほどの大きさの胸が、爆発的に膨張する衝撃で、海水が撹拌されて温まっていたのだ。もうその大きさを図れるものといえばどこかの小惑星程度だろう。それでも、止まること無く成長していく。

「あら、月が……気持ちいい……」

白扇の体に、沈んでいた月の月光が当たり始めていた。すると、成長の度合いがこれでもかというくらいに高まり、白扇の乳房は一気に日本列島と日本海を覆い尽くし、大陸プレートが、偏って掛かった重さに耐え切れず折れてしまった。

「ひゃっ、あついっ!」

その下から出てきたマントルが白扇に仕返しするように刺激する。返しうちするように白扇の球体はユーラシア大陸と太平洋をあっと言う間に覆い、地球の形が歪んでいく。

「今度は、太陽が……あら……」

当たり始めた太陽光に呼応するように先端からピューッと白い液体が出始める。しかしピューッというのは白扇から見た母乳の出方の例えであって、地表では地殻を削り取るドリルのようにゴゴゴゴッッッ!!!という音を出して地面に当たっているのだった。あっと言う間に地表は白い液体で満たされ、地球の裏側まで、真っ白に染まってしまった。今や地球は白い惑星だ。

「ちょ、あ……!」

乳房の巨大化も衰えを知らず、地球を3分の2は覆っている。もはや地球にそれを支える力はなかった。グシャッという音を立てて、地球は白扇の乳房に潰された。

「あらあら……」

今となっては地球は乳房が発する重力に引きつけられる、白扇の母乳に混じったただのケイ素の塊だ。

「どうしましょうかね……」

天彦の声が乳房の上から聞こえてくる。体の大きさは何億倍も違うが、白扇はその声が聞こえてきた方にニコッと笑って言った。

「もとに戻すのは簡単ですよ、でも、今は3人だけの時間を楽しみましょ……」
「ふふ、そうしましょうか」

白扇と、彼女の力で大きくなった天彦と九音は、太陽の光を浴びながら、しばらく宇宙を舞うことにした。地球の10倍、100倍、1000倍とますます拡張していく白扇の乳房は、その大きさに対して石粒程度しかない月を、さも液体であったかのようにクシャッと潰してしまう。

「かーさま、お月様が!」
「まあ……どうしましょ……」

太陽系の中で一番大きな惑星である木星のサイズまで膨らみ、今なお膨らむことを止めない乳房は、火星を吸い寄せて飲み込み、ついに太陽に近づいた。

「すごい力を感じます……!……んあっ!」

太陽の何万倍にも膨張した肌色の双球は、いとも簡単に太陽を破壊し、吸収した。それに呼応するように白扇の体がほのかに光りだした。

「おっぱいからすごい力が……これは……わたしが太陽に取って代わってしまったんですね!」
「さすが白扇です」
「うふふ」

太陽系の真ん中を埋め尽くす白扇の乳房は、他の星系に近づくまで大きくなった彼女が、さすがに辟易して全て元に戻すまで、周りの星々に淡い光を放っていた。