覚醒の夢 2話 ~新津 三奈~

ポヨンッ!シューッ……ムクムクッ……パフッ。ベッドに寝転がった菜津葉の胸から出たり引っ込んだりするおっぱいを、机に座る小さなフリューは眺める。

「菜津葉さーん、何やってるんですかー?」
「んー、どれくらい強く念じると影響出るのかなって」
菜津葉は、ベッドの上で自分の魔力の実験をしていたのだ。外は夕焼けで赤く染まっている。
「あぁ、体が変化するボーダーラインは結構高めにしましたよ。本とか読んでるときに体型変わると困りますもんね」
「そうだね……って、体験者みたいに言うじゃない」
本当にそのとおりだったようで、フリューはため息を付いた。

「ええ、ワタシってあんなに筋肉モリモリでしたけど、あれも最初は制御が効かなくて、保健体育の教科書読みながらガリガリになったり肥満体になったり……」
「まさか、あの魔王ってやつ、他でも同じことやってたの?」
フリューはコクコクとうなずく。
「その当時は、まだ人間でしたけどね」
「へぇ……とんだ魔王もいたもんだね……」

呆れることしかできない菜津葉だったが、部屋の外から聞こえた母親の声に、服を着直した。
「菜津葉ー!三奈ちゃんが来てるわよ、忘れ物だって言うから通したわよ」
「え、三奈が?」
菜津葉が反応を返すと同時に、扉がガチャっと開いた。菜津葉の幼馴染である新津 三奈(にいつ みな)は、いつもは玄関でおとなしく待っていたが、部屋まで自分で来たのだ。なにかおかしい。
「菜津葉、ちゃん」

『気をつけてください、この子も魔力に汚染されています』
フリューはフッと姿を消し、また菜津葉の頭の中から声がした。
「三奈に限ってそんなことは……」
「菜津葉ちゃん、どうしたの……?」
――フリューに話しかけたことが、不自然な独り言に聞こえたのだろうか―少し、三奈は戸惑った。だが結局そのまま部屋に入ってきた。
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覚醒の夢 1話 ~古町 菜津葉~

古町 菜津葉(ふるまち なつは)は、北陸のとある町に住んでいる、普通の小学四年生。今は12月、日本海側特有の大雪に見舞われるが、学校は普通に授業を行う。

「じゃあ、行ってきます!」

学校は、小学生の菜津葉の足で20分程度のところにある。登校班は10人で、集まるのは家のすぐそばの公園だ。冬ということもあり、見送りの親を含めて全員厚着だ。

「菜津葉ちゃん、おはよ……」
「おはよー、三奈(みな)ちゃん!」

菜津葉を見るなり声をかけてきた、菜津葉より一回り小さな子。同い年の新津 三奈(にいづ みな)は、菜津葉の幼なじみ。気が弱く、いつも菜津葉にくっついて行動している。小学校でも別のクラスになったことはなかった――平日はだいたい一緒にいるし、休日も良く互いの家で遊んだりする。

「三奈ね、ちょっと怖い夢見たの」
小さい声で、そう菜津葉にしゃべりかけてきたのは、菜津葉と他の生徒との会話が落ち着き、学校につく直前になったころだった。

「え?どうしたの?」
「うーん、私、なんか……なっちゃって、みんなのこと……」
声がいつにもまして小さく、一部聞き取れない。その上、話の重要な部分が始まる前に、学校の門に到着してしまった。
「おはよう、みんな!今日も余裕の到着だな!」
教頭の声に遮られ、会話はそれで終わってしまった。
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覚醒の夢(仮) 序章

高層ビルの屋上に、二人の人間の影があった。少女と、黒いローブを羽織った、見るからに悪党が睨み合っている。
「魔法少女ナッツ!貴様もこれまでだ!」
「愛と正義の力、見せてあげるんだから!」
少女の名は魔法少女ナッツ。本名は古町 菜津葉(ふるまち なつは)。普段は普通の小学生だが、その正体は街を襲い来る魔人から守り抜く、正義の味方だ。

「フハハハ!強がっていられるのも今のうちだぞ!」
真剣な菜津葉に対して、悪党の方は余裕しゃくしゃくといった様子だ。ニヤける敵に、菜津葉は全力を魔法のステッキに込め、叫んだ。
「えーい!アイスフリューゲルス、ルミナスツーク!悪よ!滅び去れ!」

キュピィィッ!シュバッ!!

強い光を発した菜津葉のステッキから、強力な魔法が解き放たれる。――彼女の必殺技だ。これで、悪党は成敗される……

だが、迫りくる光の塊を見た悪党の表情は、急に冷めたものに変わった。

「ナッツ……いや、菜津葉よ。我の力を鍵とし、その力を覚醒させよ」

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菊月妄想2-2

「新人ちゃん、お疲れ様!いつもより潜水艦の位置が分かりやすくてよかったにゃ!」
――帰ってそうそう、睦月がキクに抱きつくと、キクの巨大な乳房に顔が当たって、ボヨンと揺れる。
「あ、あっ……」
慣れない、柔らかい感触に、睦月は少し狼狽しているようだった。

「ごめんね、キクちゃん……でもっ!」
「ひゃぁっ!」
今度は如月が、キクの胸をガシッとつかんだ。

「おっきすぎよぉっ!キクちゃんのおっぱい!司令官をどうする気!?」
「や、やめっ……んぁっ!」
胸をもんでもんでもみまくる。如月らしくない行動にキクはどうすることもできず、ただ喘ぐだけだった。加えて、如月は司令官の身を案じて、怒っているわけではなかった。

「ねぇっ、教えてよっ!!」
その顔は、やましいことを考えて興奮しまくっている変態の顔であった。寒気を感じたキクは本能的に如月から離れた。
「な、なにもしないぞ!」

如月は胸を揉む姿勢のまま少し硬直していたが、すぐに落ち着いた。
「あっ、ごめんなさいね。キクちゃんが大きくなったのは、自分の意志じゃないものね」
だが、如月は懲りずにキクに近づいていっていた。それを止めたのは、キィだ。

「おいおい、キクも疲れてるだろうに……その辺にしておいてやれ」
ここまで静観していたキィが言うセリフでもないようにキクは思った……

――そして菊月部屋に戻る。

「まぁ、如月は睦月型の中で一番体のメリハリがあったからな」
「メリハリ……?」

ぽかーんとするキクに、キィは思わず苦笑いである。いまや睦月型どころか艦娘を全員集めてもキクに勝るダイナマイトボディなどいない。実際司令官も鼻の下を伸ばしていたのだ。

「如月も、それは怒るだろう」
「ん……?如月が怒っていた?」

――キィはあのニヤけた顔を見ていなかったのだろうか。キョトンとした顔をしあう二人。

「まさか、気づいていないと……?まあいい、キクは私のものだ。私が守ってやる」
「あぁ…………うむ」
キィの表情は私を頼っていいぞ!という頼もしいものだった。と同時に、ほめてほめて!とも訴えているようにみえた。試しに、キクはキィの頭をなでてみた。

すると、キィはニコッと笑顔になる。
――かわいい……と、目の前で喜んでいる小さい子に庇護欲が生まれ……

……段々と独占欲に変わっていく。

――私は、キィのもの……なら、キィも、私のもの……

キィが自分の感情が漏れていることに気づいて、凛とした表情に無理矢理戻したことで、キクの欲望は高まっていった。

「おい、撫でるのをやめ……っ!」

キィの目に映ったキクの表情は、ついさっきまでのオドオドしたものではない。それは、キクを支配したい、自分のものにしたいという歪んだ笑顔だった。

「ひっ……!」
「怯えるキィも、かわいい……」

キクは頭を撫でるのをやめないまま、キィを座らせ、仰向けに寝かせる。キィの方も無意識にキクに従ってしまう。朝とは完全に攻守逆転した二人。杏仁豆腐を食べた直後に出現した、性欲にまみれたキクが、再び現れたのだ。

「昨日の続きだ……」
「あ……あ……」

キィのスカートが脱がされ、上着も全部はがされる。キクも上の服を脱いだ、その時だった。扉が、ギィッと音を立てて開いた。

「み、三日月……?」
「ん……?また邪魔に来たのか……?」

外にいたのは、長く黒い髪、金色の瞳、大きくはねた一房の前髪。10番艦の三日月が、うつむいて立っていた。そして、その手には……

「まさか、それは!」
「そう、杏仁豆腐……ですよ」
そう言ってゆっくり顔を上げた三日月もまた、キクのように歪んだ微笑みを浮かべていた。その手で持つ小さめの小鉢に、どこで手に入れたのか、昨日の杏仁豆腐が入っている。

「ふふ、そうか……面白い……」
キクは不敵な笑みを浮かべ、必死に三日月を止めようとするキィを床に押さえつける。

「三日月に、キィはやらんぞ」
「大丈夫ですよ、キク姉さん……」
三日月は、小鉢の杏仁豆腐を、口に滑り込ませた。そして、ひと噛みもせずに飲み込む。

「……欲しいのは、キク姉さんの方ですから……」
キクたちの方に歩みだした三日月の足が、スカートから伸び、三日月の身長が伸びていく。スカーフを外し、上着を脱いだときには、彼女の胸が膨らみだし、ムクムクと大きくなって、キクのそれと同じか、少し小さいくらいに成長する。ぷにぷにしていた子供の短い腕は、皮下脂肪を適度に蓄えながら伸びる。

「どうしたんだ、三日月、お前らしくないぞ!」
「キィ姉さんは、黙っていてください、ね?」
三日月から感じるとは思っても見なかった圧倒的威圧感に、キィは動けなくなってしまった。その間にも、三日月の体の変化は続く。脚にもむっちりとした脂肪が付き、スカートはくびれたウエストに巻き付いて、膨らんだヒップを隠しきれない。三日月は、歩きながら、自分の体についたウエストラインをなで、胸や尻を触って、成長を確かめる。そして立ち止まって、キクに向かってニコッと、いや、ニヤッと、笑顔を向けた。

「私だって今なら……キク姉さんをイカせられるんです……」
そして、キィを拘束するために四つん這いになっているキクに後ろから抱きつき、首筋をペロッと舐めた。

「んんっ……!」
キクは予期しない快感に全身を震わせる。何とか耐えたが、キィの拘束は解けた……とはいえ、信じられないほどの変容を遂げた二人を前に、キィはただ打ち震えることしかできなかった。

「三日月、昨日の仕返しか……?」
「違いますよ……恩返し、です」

三日月はまた立ち上がって、一瞬にして成熟した体を二人に見せつけた。
「この快感に目覚めさせてくれた……だから、キク姉さんにも快感をあげます」

キクはキィの横に体を横たえ、キィを抱き寄せた。固まったままのキィに頬ずりをしたあと、三日月と同じように、体をくねらせ、ボディラインを見せつける。
「キィとの時間を邪魔しなければ、それでいいのだが……?」

「そうは行きませんよ、姉さん」
三日月はキクに胸を押し付けるように、自分も床に横たわる。
「私も、もっと楽しみたいんですから……」

環境呼応症候群 課金の子

俺の妹、按司千耶(あじ ちや)は、メタモルフォーゼ症候群にかかっている。100万人くらいに一人、この病気にかかっているらしい。日本に126人くらいいる計算になるが、今のところニュースで見た以外は別の症例に出会ったことはない。聞く話によると、自分のいる高度や移動スピードで体型が変わる奴もいるらしいのだが、そうすると千耶は特殊な例に入るのかもしれない。なぜなら千耶は……

「おっ、今月は課金していないのかな……?」
「したよ。ちょっとだけな」

兄に向かって生意気な口を叩く妹の体は、中学生くらいの大きさだ。今は。千耶はもう高校1年だから、小柄なほうである……今は。

「なんだよ兄貴、気持ち悪い顔して」

――喋らなければ美少女、というより普通に可愛い妹なのだが。赤い髪留めがチャームポイントの、長髪の少女。それで収まりがつくはずなのに、口が悪いのが玉にキズだ。

「なんでもねえよ」

――なんでもなくなかった。実のところ、オレは今日が楽しみで楽しみでたまらなかったのだ。

「んじゃ、もいっちょ課金して大人になっちゃいますかね~っと」
「おい、金の無駄遣いはやめとけよ」
「うっさい。ま、大きくなるのは明日でもいいかな」
「おう、そうしとけ」
――口が悪くても、俺になついてるのは昔から変わらないようだ。俺の言うことは素直になんでも聞く。……と、もうお分かりだろうが、千耶は『課金』で大きくなるのだ。どんなゲームでも、課金した額に応じて体が大きくなる。そして、もう一つの条件が、お小遣いをもらったとき、体は元に戻る……千耶の場合、小学生4年生くらいの体に。

この症候群にかかったのがその歳だったのかもしれない。その時期から、千耶の成長はパッタリと止まって、早熟な女子の成長に追い抜かれるかもしれないと思っていた俺との身長差が広がっていったからだ。さぞかし不便だったろうが、中学2年になって、小遣いに少し余裕が出たのか、自分がやっているゲームに課金したのだ。そのことを俺に自慢しながら。
そしたら、急に変な顔しはじめたから、失敗したのかと思えば、歳相応の体まで成長したじゃないか。びっくりした千耶は泣き始め、俺は必死になって泣き止ませようとした。

「ふふっ、それはさておき……」

おっと、声に出てしまった。俺、すごくキモい笑い方したな。でも、仕方ない。俺は、妹がやっているゲームのIDをひょんなことからゲットしたのだ。ハッキングとかしたわけではない。机の上に『千耶のID』と、紙に書いて置かれていたのだ。妹の可愛い字ではなく、親の丁寧な字でもない。外部の誰かが、俺に個人情報を漏らしてきたのだ。

――要するに、俺にアイツを成長させろと誰かが伝えてきた。そう思った俺は、好奇心にかられて、その情報を有効活用することにしたのだった。――そして、明日は月が変わる日、妹の小遣い日だ。今日成長させても、明日には元に戻るのだ。成長させすぎたとしても、妹なら笑って許してくれる……いや少しは怒るか。よし、コンビニで買ってきた課金カードを準備するとするか……

俺は、自分の机の引き出しに向かい、少し奥に入っていたカードを見つけ出して、ドキドキする心臓を鎮めながらタブレットを操作し、課金用サイトへアクセスした。途中手が震えて、結局10分程度かかってやっと正しいURLを入力できた。

――じゃあ、行くぞ。
俺は、扉を開けて廊下に出て、妹の部屋の扉をコンコンとゆっくり叩いた。やっぱり手が震えて、変な叩き方になってしまったが。

「おー、なんだよ、私のマンガでも読みたいの?」

ゲーム中だったのか、千耶がスマホを片手に持ちながら扉を開けた。あれ、心なしかさっきより小さくなっているような?いや、俺の錯覚だろう。小遣い日は明日なんだから。

「あー……そうだ、き、昨日新しいの買ってきてただろ……?」
緊張しすぎて思わず噛んでしまった。千耶は少し怪訝そうな顔をしたが――
「あー、あれね。兄貴も読んでたね」

なんとか、バレずにすんだ。
「あとさ、ここで読んでいってもいいか?」
「んー、私は別にいいけど、ゲームの音うるさいと思うぞ?」

妹の部屋でマンガを読むことは、日常茶飯事だった。自分の所有物を目に見えないところに持って行かれたくないのか、持ち出すことを禁止されたことはあるものの、ここで読むことを拒まれたことは一度もなかった。

「まあ、大丈夫だ」
「そう?なら、ゆっくり読んでってよ」
千耶は俺がいると安心するらしい。長居しても嫌な目をされたことがない。と、千耶は自分の椅子に座って、ゲームを再開した。

――ここからが、メインイベントだ。

俺は、ベッドに座った後マンガを広げるのを忘れ、タブレットのスリープを解除した。そして、妹の方に視線を向けながら、あらかじめ入力してあったコードを確定するボタンに、指を近づけていった。

「兄貴?なんかやっぱり変なこと考えてるだろ」
ドキッ!バレたか!とそこで指を引っ込めようとしたが、それとは反対に、驚いたせいで確定ボタンをポチッと押してしまった。ええい、もうどうにでもなってしまえ。

「い、いや?」
俺が今課金したのは五千円。千耶が上限と決めているらしい額と一緒だ。なけなしのバイト代よ、妹の体の糧となれ……そう念じた瞬間。

「な、なに……いつもの……アレが……どうしてっ!」
成長が始まったようだ。スカートからニョキッと脚が伸び、桃色のタンクトップが持ち上げられて、ヘソがちらっと見えるほどになった。ペッタンコだった胸にも、テントが張ったと思えば、全体が向くっと膨らんでBカップ程度の胸が出来上がった。

「うそぉっ……」
期せずして起こった成長に戸惑う千耶。当然だ。自分では課金していないのに、いつもの成長が起こったのだから。

「ハッ……あ、兄貴……!!」
完全にこっちのやっていることがバレた。こうなったら、もうどんどん課金してしまえ!

ノートパッドアプリにメモしてあったコードを早業でコピペし……と言うのは嘘で、成長の途中に無意識にコピペしていたらしく、俺はすぐに確定ボタンを押した。千耶はその指の動きを見て、不安をあらわにした。

「私、これ以上成長するの!?……んっ、きたぁっ……!!」
次の成長が始まった。俺の課金はさらに五千円。さっきの成長で中学3年くらいの体になっていたから、次は高校3年か?と思っていたら、千耶の成長は予想を上回っていた。

「ん、んんっ!!!」
Bカップの胸が、信じられないスピードでムギュギュギュッ!!とタンクトップを押し上げていく。C、Dとカウントする暇もなく、水風船のようにタプタプと揺れながら大きくなるそれは、俺のクラスの一番の爆乳をも5秒で追い抜かし、メロンサイズになっていく。脚の方も長くなるとともにムチムチと脂肪を蓄えていき、伸縮性がなく弱い生地だったスカートをビリビリと破っていく。胸が重いのか、千耶は伸びていく腕で乳房を支えた。

「……くぅっ、よ、よくも私をこんな……に……」
成長が終わって、俺に怒りをぶつけてきた妹の表情が固まる。俺はもう、コードを入力し終わり、確定ボタンに指を触れていたのだ。

「や、やめてっ……!」
腕で胸を支えながら立ち上がり、俺のタブレットを取り上げようとする千耶。160cmの身長は、俺よりちょっと低いだけになっていた。こんなに背が高い妹を見たことはなかったし……

「んひゃぁっ!!」
さらなる成長が始まって、千耶がバランスを崩して倒れなければ、普通にタブレットを持っていかれただろう。

「ひぅっ……!」
千耶の豊かな乳房が、ドユンと音を立てて床に落ちる。タンクトップがよほど苦しいのか、千耶はなんとか脱ごうとした。だが、肩の部分が外れただけだ。あとは、今やスイカサイズまで大きくなったおっぱいの弾性力で破れるのを待つしか無かった。

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「んぎゅっ……」
スカートが破れたせいで丸見えになっていたお尻も、すでに元の体の数倍くらいに膨れ上がって、素晴らしい曲線美を作り上げていた。

「おっもーい……」
そのすらっと長い腕に不釣り合いな、もはや爆乳の域を超えそうなスイカおっぱいを、何とか持ち上げる千耶。グラビア雑誌でも見たことがないほどデカイそれが、俺の目の前でタップンタップンと揺れていた。そして、妹のかわいさは美しさに昇華し、俺が見た中で最高の美少女がそこにいた。身長は、俺より頭一つ高いくらいだろうか。

「あ、に、きぃぃいいいっ!!!!」
怒り心頭とはこのことか。千耶の顔は真っ赤に染まり、俺を睨む瞳は、その鋭さだけで人を殺せそうだ。ドシンドシンと重い足音で近づいてくる妹は……

「あ、あっ、きゃあっ!」

揺れまくる乳房に体重バランスを崩され、またもや転んで……今度はベッドの上にいる俺の上に倒れた。

「うぎょごへぇっ!!」
おっぱい重っ!!!!骨が数本折れるかと思うほどの衝撃だぁっ!――重いスイカ二個が無慈悲に俺の体にのしかかったのだ。逆に妹の方は大丈夫なんだろうか……?

「千耶、大丈夫……ぶふぅっ!!」
千耶の顔を確認する前に、その下に潰れる肌色の塊に目を奪われる。血行がよく、暖かく俺を包み込むそれは、衝撃の余波かムニムニと形を変える。

――この感覚、素晴らしすぎる……

「あいったたた……」
千耶もやっぱり痛かったようで。

「すげえおっぱいだな……」
「はぁっ!?あのさ、これから一ヶ月、この姿で過ごさなきゃいけなくなったの!わかる!?」
――何だって?

「嘘つくなよ、小遣い日は明日だろ」
「……前借りしたんだよ!!」
妹が少し恥ずかしそうに、でも怒りは冷めないまま大声を上げる。――え、ちょっと待って、っていうことは……本当にこの爆乳タプンタプンで高校行かせる羽目に……?

「ご、ごめんなさいぃっ!!!!」
「ごめんなさいですむかぁぁっ!!!」
おっぱい越しに、妹の大声が俺の体全体に響き渡る。……どうしよう。

結局、俺が千耶に小遣いをやることで、体はもとに戻った。ただし、ダメ元でIDとパスワードを入力してみたら、それを変えてはいないみたいで、すんなりとログインできた。

――これって、もしかして……

「あ、兄貴……今度は前借りとかしないから……」と朝食の場で言われて、思いっきり牛乳を吹き出すことになったのは次の月の小遣い日前だった。

――へへっ、冗談だろ……

風船に手が届くまで

街角で配られるヘリウム風船は、得てして家に帰る前に受け取った子供の手から離れていくものである。

「うわーん!」
「あぁ、あんな高いところに引っかかってる……」

この少女、未唯(みゆ)の場合も、途中の公園で手を離してしまった。空に飛んで行ってしまえば諦めが付いたのだろうが、風船は木の枝に引っかかっていた。父親である唯夫(ただお)も同伴していたが、引っかかった位置があまりに高くどうしようもない。

「未唯、ママも待ってるしそろそろ行こう。風船ならまたもらえるから……」
「やだ、やだ!」

唯夫自身も、子供時代によく味わった苦痛なだけに、あまり強く言うことができない。
そのうち、10分が経った頃、もうひとりの少女が近づいてきた。

「あの風船、ほしいの?」

そして、少女は未唯に喋りかけた。

「う、うん。取ってくれるの?」
「いや、それはキミがどうにかするべきだよ。ボクは、それを手伝うだけ」
「手伝う……?肩車でもしてくれるの?」

小学生である未唯と、その少女はあまり体の大きさも、体つきも変わらなかった。肩車などしようものなら、少女は未唯も耐えきれないだろう。唯夫は娘の身を案じて、突然あらわれ、助けを差し伸べてくれた少女に感謝を伝えつつも拒否しようとした。

「お嬢ちゃん、助けてくれてありがとう……」
「でも、ボクの助けはいらないって?これは、ボクがやりたいことなんだ。キミの許可はいらない」

明らかに年下である少女に、真っ向から拒絶されてしまい戸惑う唯夫。まるでそれは、唯夫よりはるかに大きな存在のようだった。それをよそに、少女は続けた。

「いいかい、ミユ。キミの目標には、キミ自身の力でたどり着かなきゃいけない。それは、その目標がなんであれ、同じことなんだ」
「……?」

いきなり哲学的なことを言い出した少女。だが表情は真面目そのものである。

「だけど、自分ひとりの力じゃなくて、誰かを頼ることも重要なんだ。今日は、ボクが力を貸してあげよう。いいかい?」
「うん。あ、ありがとう」

未唯がわけもわからないまま感謝すると、少女はニコッと微笑んだ。のではなく、ニヤァと表情を歪めた。

「なーんちゃって。風船は取らせてあげるけど、ボクのおもちゃになってね、ミユ」

途端、少女の体がまばゆいまでに光り始めた。未唯はそれをぼーっと見るしか無かったが、次に自分の体が熱くなり始めているのに気づいた。周りの空気から、熱を吸い込んでいるような妙な感覚だった。

「風船はキミの手で取ってもらう。でも、キミは飛べない。そうだよね?じゃあ……」

パァッ!!と少女が発する光が強烈になり、あたり一面が光に包まれた。

「大きくなるしかないよね!」

光が消え去ると、少女も姿を消していた。だが、その不可解な現象よりもさらに不可解なことが起き始めていた。

「ぱ、パパ、未唯……」
「大きくなってる……?」

唯夫の腹あたりまでしか無かったはずの未唯の背丈が、胸の部分まで伸びていた。

「お服がキツイよっ」

体は大きくなっていたが服はそのままなようで、所々がパツパツになり、縫い目がブチブチとほつれ肌色が見えていた。しかも、「大きくなる」というのは体のサイズだけでなく、体型、年齢もであったようだ。腕も脚も、もとの幼児体型のままではなく、すらっと細く長くなっていた。だが、腹部はまだぽっこりと膨らみ、子供のままだった。

「未唯……」
「パパ……」

未唯と唯夫は不安そうに見つめ合うことしかできない。中学生くらいの体型になった父娘は、ほとんど同じ身長になり、互いの目線が水平になったが、それも少しの間だけで、未唯はさらに大きくなっていく。少女が取らせると言った風船は、まだ10mは上にある。それは、未唯があとそれだけ大きくなること、つまり3階建てのビルくらいまで巨大化することを示していた。

「私、どうなっちゃうの……?」

少女が消えるときの強烈な閃光にも関わらず、周りにはほとんど人がいなかった。だがいまや身長が2mになっている、しかし体型は中学生のままの少女の姿は少しでも近寄れば違和感を感じざるをえないものだった。

「み、未唯の……おっぱい……」
「えっ?」
「い、いやなんでもないんだ……」

先ほどとは逆に、未唯の胸の高さに唯夫の目があった。その胸には、膨らみかけの、テントのような形の乳房があり、ささやかなピンクの突起がじわじわと大きくなっていた。

「すごい……」

周りをチェックするのに必死になっている未唯は、信頼する父親が娘である自分に性的な興奮を覚えているのに気づかない。そのうちにも、体の成長に比べて胸の膨らみの成長スピードは急激に上がり、前に突き出されてフルフルと揺れた。服はもはや何も覆っておらず、未唯は胸以外は若干幼児体型が残った姿を周りに晒していた。その身長は、まだ3mくらいで、風船にはまだ遠い。

「おぉ……」

自分の2倍、いや3倍くらいの身長の娘を見上げ、その少し膨らんだ腹の先に大きく丘のようにそびえる2つの乳房。唯夫はゴクリとつばを飲んだ。伸びるだけだった脚にも徐々に皮下脂肪がつき、唯夫の顔と同じ高さの所で女性的な柔らかさを蓄えていく。

未唯が身長5mにもなり、体型も高校生に近づいて、骨盤も大きくなり、腰にくびれが付いてきた、その時だった。一陣の風が、風船が引っかかっていた木に吹き付けられたのだ。

そして、風船が枝から外れ、天高く飛び上がった。

「あっ、風船が!」
「な、なんだ!?」

唯夫は、高度を上げていく風船を見た。次に、彼が覚えたのは興奮だった。

「(未唯は、どこまで大きくなるのだろう?見てみたい……)」

それに答えるように未唯の体からゴゴゴゴと地鳴りのような音がし始めた。

「ぱ、パパ、私、もっと、大きくなっちゃうぅっ!!」

5mの身長が、風船を追うようにドォンッ!!と伸びた。縦に伸びるということは、当然全体が大きくなるということである。脚は木の幹など屁でもない太さに、胸はアドバルーンのサイズをひとっ飛び。体重もトラックが何十台あっても足りないくらいに増えて、地面は大きくえぐられる。

20m、50mと指数関数的に伸びていく未唯の身長。街のどこからでも、未唯の高校生の体型となった体がはっきりと見えるくらいになった。風船が引っかかっていた木は、無残にも成長する脚にへし折られ、成長の速さのせいで旋風が発生して、いろいろなモノが巻き上げられていた。

「もう、風船なんていいから、もとに戻してっ」

無防備に揺れる胸は、100mの高さとなった未唯の体でもバランスが崩れるギリギリくらいまで大きく成長していた。バストトップは90mといったところだろうか。

「もしかして、風船を取ればもとに戻れるのかな……えーっと……」

風船は、上昇するだけでなく風に吹かれて何百メートルか横方向にも飛ばされていた。未唯から見ると前の方向で、未唯はすぐに見つけることができた。

超高層ビルと同等のサイズまで大きくなった未唯だったが、風船は上昇気流に煽られているのかもっと高いところにあった。気圧が低くなっているせいでサイズが大きくなっている。未唯は、足元のことを考えずに風船を追って走り始めた。

「まって、まって!!」

数キロトンある巨大な体は、一歩ごとに民家を押しつぶし、道路をえぐり、大きな地震を起こした。10mくらいの振幅で揺れる胸は、被害が及ばない遠くから見れば壮観であっただろう。しかも、移動中にも未唯の体は確実に大きくなっていく。日本一の高さのビルやタワーも超えて、物理法則を無視して質量と体積を増やしていく。普通の小学生だったはずの少女が、竜巻と突風を巻き起こしながら風船を追いかける。

「あ、あぁっ!」

そして、事もあろうに未唯は高速道路につまづいた。身長500mの体が宙を舞い、地面へと落下していく。

「きゃっ!!」

地面を最初に襲ったのは、巨大に膨らんだ乳房だった。普通の大きさなら、ボインッといった効果音ですまされるだろうが、未唯の大きさ200mくらいの胸は、あらゆる建造物を一瞬で破壊したうえで地面と衝突し、大きなクレーターを作り上げた。

胸だけでも街2つを消滅させられた。その次に落ちてきた体は、1つの都市を消滅させてしまった。

「う、うぅ、痛い……」

未唯の体は、ころんだ状態のままでも巨大化をやめない。胸は地面を擦りながら前進し、街を掃き掃除するかのように破壊範囲を広げる。脚は街も丘も同じように削り、さらに体型が大人に近づいているのかムチムチと膨らみ、股下に残っていた安全地帯すら潰していく。

未唯は手を付いて立ち上がった。身長は3000mに達し、上昇をやめようとしていた風船に、やっと手が届くまで大きくなったのだった。

「やった、風船!」

未唯は風船に手を伸ばす。すると、風船が急に大きくなり始めたではないか。未唯がそのひもをつかむ頃には、未唯の体に見合ったくらいの大きさまで、巨大化したのだった。

「風船、取れてよかったな。未唯」
「ぱ、パパ?」

しかし、それは風船が大きくなったのではなかった。未唯がもとの大きさまで戻っていたのだ。破れたはずの服も元通り。街を巨大娘が破壊した跡など、見えなかった。唯夫も、キョトンとした未唯を微笑んで見ているだけだった。

「夢、だったのかな……?」
「がんばったね、ミユ」
「あ、さっきの……」
「そう、ボクだよ。名前はガイア。人間たちの間では『大地の神』と呼ばれているものだけど」

未唯も唯夫も、耳を疑った。目の前にいる普通の人間にしか見えない少女が、自分のことを神だと言ったのだ。

「ちょっとね、遊んでみたくなったのさ」
「私、夢の中でお山さんくらい大きくなってた……」
「オレも、夢の中で大きくなっていく未唯を眺めていたような……」

ガイアは、ニコッと微笑んだ。

「夢じゃないよ。あれは本当に起きたんだ。そしてボクが全て元通りにした」
「ほ、本当に?」
「ふふ、信じられないならそれでいいさ」

パッと姿を消すガイア。だが声は続いた。

「十分楽しませてもらったよ。その代わり、死ぬまでボクがキミ達に加護を授けよう。あと、どうやらタダオは、大きなおっぱいがお望みのようだね」
「な、なっ……」
「ミユの成長を楽しみにしてるといいさ。じゃあね!」

こうして、父娘の奇妙な体験が幕を閉じたのだった。そしてその言葉通り、数年後、未唯は唯夫好みの爆乳高校生に育ったそうな。

「……さて、次は誰で遊ぼうかな?」

変身描写だけ書きたい!(TS/AP1)

子供というものは、得てして好奇心が旺盛なものである。自分の家のリビングに、肌色の大きな袋があったら、入りたくなるものなのだ。

「(えへへ、秘密基地つくろー!)」

少年が今四つん這いになって入ろうとしている秘密基地、と言うよりは大人一人分くらいしか無いその袋は、大人が見れば背中に大きな口が開いている風船式のダッチワイフだった。しかも、かなり質が低い。

「(中が、光ってる?)」

袋の中に入った少年は、昼間のリビングには不釣り合いなネオングリーンの光で、自分の体が照らされていることに気づいた。その光に少年が見とれていると、急に入り口が小さくなり始めた。

「え、だ、だめ!外に出して!!」

少年は袋の口をこじ開けようとしたが、みるみるうちに入り口は縮小し、ついに消えてなくなってしまった。

「出して出して出して!!!」

袋の中で暴れ、膜を引きちぎって出ようとするが、突然緑の光が強くなり、少年の目をくらませてしまった。

「うわっ!!」

目を閉じた少年には、自分の心臓の鼓動が強く聞こえる。初めは、他の音が全くしないのでそのように聞こえると思っていたが、心臓の拍動は確実に強くなり、また速くなっていた。

「(な、なに、怖いよ……ママ、助けてっ)」

小さい子供にはよくあることだが、少年が家にいすらしない母親に助けを求めた瞬間。

《ドクンッ!!》
「うぐっっ!!」

全身に、大きな衝撃が走る。そして、体が段々と熱くなっていく。と同時に、袋が段々膨らみ、元の形、つまり等身大の女性に似た風船人形の形を取り戻していく。外から人形の様子を見られない少年には分からないことだが。

「ううっ!ボクの体が、動か……されてるっ!」

袋に入ったときのまま、四つん這いだった少年の体が、袋に合わせるように格好を変えられていく。少年を大きくしたら、ダッチワイフと同じ位置になるように。

「ボク、どうなっちゃうの……!?」

目だけを動かせる状態の少年だったが、腕の皮膚が張るような感覚に視線を動かす。

「えっ……ぼ、ボクの腕、膨らんでる……!?」

なんとその腕は、現在進行形でムクムクと大きく、長くなっているではないか。幼児の域を少しだけ抜け、少しずつ筋肉質になっているがまだまだ丸っこい少年の腕が、引き伸ばされるように成長していた。脚の方もしゅるしゅると伸び、同時に脂肪がついて、ムチッとした太ももが形成されていく。

「こ、このままじゃ破裂しちゃうよぉっ!!」

皮膚の成長が後回しなのか張ったままのせいで与えられる圧迫感に、体の成長を膨張としか捉えられない少年の混乱した精神は、次に起こった変化でさらに混乱を極めていく。少年の胸が、ムクムクと膨らみ始めたのだ。彼の母親の小さめなバストサイズを、ものの数秒で越えてしまう少年自身の乳房。製作者の性癖のせいかスイカサイズに大きいダッチワイフの胸に引き寄せられるように、ムギュギュギュと膨らみ続ける。だがその頃には体が十分に大きくなり、余裕があったダッチワイフと同じくらいの身長になった少年の視線は、ダッチワイフの頭部にすっぽりと隠されてしまった。

「んむむ~っ!!」

顎の動きすら抑えられ、うめき声しか挙げられない少年。その声音も、幼い子供ではなく、大人のアルトボイスに変貌を遂げていく。その間にも、男性として生活していた彼の、女性としての魅力が過剰なまでに引き出されていく。ムチムチとした足に対してあまり大きくなったヒップがボワンッ!と爆発するように大きくなり、風船人形をちぎらんばかりにその巨大さを主張する。異様なまでに大きいはずの人形の胸の部分すら、少年の大きく成長した乳房に更に引き伸ばされる。

足の部分などはピッチリどころかパンパンで、今にも破けそうである。

《ピリッ、ピリッ》

そして、それは実際に破け、ビニールの皮の中から、成長したばかりの透き通るような肌が見え始めた。

《ピリリッ、ビリーッ!》

破けるスピードが急激に早くなり、太ももの部分から上下に亀裂が広がっていく。プルッとしたヒップがあらわになり、キュッとしまった腰回りが見え、バァンっと抜け殻を破り去った乳房は、その衝撃でタプンタプンと揺れた。

「ぷは~っ、死んじゃうかと思ったぁ……」

体が自由に動かせるようになった元少年が、腕と頭に残った膜を剥がす。その顔は純粋無垢な子供ではなく、清楚な女性のものとなり、短く切っていた黒い髪は腰にも届くロングヘアに。指はすらっと美しく伸びていた。

沙月と命

男子中学生の少年は、目の前の机に置いてあるコップに入った、青と赤のスムージーをマジマジと見た。毒々しい色をしたそれの中では、何かが動いているようにも見える。

「なんだよこれっ!」
「今からキミに飲んでもらうものだよ、リア充くん」
「り、リア……?」

彼は、椅子に手足を拘束され、丸メガネをかけた科学部の男子生徒に、青のスムージーのコップを口に近づけられつつあった。その表面はもこもこと生きているように動き、まるで少年の中に入りたがっているようだ。

「く、こんなもの飲んだら死んでしまうっ!」
「大丈夫、死にはしない。ただちょっと、痛いかもねぇ。さぁ」

部員は少年の鼻をつまみ、スムージーを一気に少年の口の中に流し込んだ。

「うぅっ!ぐぼぼっ!!!」
「ほら、こぼしちゃだめじゃないか。キミの彼女も観ているんだからね」

少年の彼女は、二人の目の前で柱に縛り付けられ、スムージーを飲まされる少年に「沙月(さつき)!!」と叫んでいた。少年は、スムージーを飲み込みたくはなかったが、スムージーの方から、少年の中に潜り込んでいってしまう。

「んごごっ!」
「元気がいいねぇ、さすがボクが作った子たちだ……」

十秒もしないうちに、コップの中は空っぽになり、部員は少年からコップを離した。

「さて、お次はこっちを、カノジョさんに……と」

部員は、少年にしたのと同じように、少女には赤いスムージーを飲ませた。

「んぎゅうっ!?」

彼女も抵抗する様子を見せたものの、結局スムージーは一滴残らず少女の体の中に入っていってしまった。

「命(みこと)にまでそんなこと!ただではすませないぞ、この悪党め!」
「悪党で結構、結構。そんなことより、今飲み込ませたもの、何だか分かるかい?わからないだろうねぇ。だって、ボクが丹精込めて作った実験生物なんだからねぇ」
「実験……って、俺たちをモルモットにするつもりか!」

部員の丸メガネが、キラっと光った。

「ご名答」
「てめぇ、常識ねぇのかよ!!」
「常識……?そんなもの、とっくのとうに忘れてるねぇ。普段は、実験の秘匿性のためにただの根暗なヤツを演じてるが、それだけじゃ下らない下らない。ボクの知識と技術を活かしてなんぼの人生だからねぇ」

言葉を紡ぐと同時に部員の顔に現れるその笑みは、悪魔のようにネジ曲がり、悪意に満ちたものだ。

「悪魔、め……っ!」
「ふっ。そろそろ、次のステップに移らせてもらうよ」

部員のポケットから、アンプルと注射器が取り出される。アンプルには、透明の液体が入っている。

「まだ俺たちに何か打ち込むつもりかっ」
「活性剤さ。さっきキミたちの体に入っていった子たちが、キミたちの細胞に十分になじんでいるころだろうからね。それでは」

少年は必死に拘束から逃れようとしたが、抵抗むなしく、注射器を通して活性剤が注入される。

「んぐぅっ!!!??」

それと同時に、少年の体全体が殴られたかのようなショックを受ける。ドキンッ!!ドキンッ!!と強い感覚が少年を襲う。少年は痛みを目を閉じ歯を食いしばって耐えるが、心なしか手足の拘束が緩んでいく気がする。

「(こ……れ、はっ……逃げる、チャンスっ……!!)」

衝撃が収まると、少年は逃走のために拘束を振りほどいて、目を開けた。これで自由、と立ち上がって逃げようとした少年を、しかし、大きな違和感が襲った。

「(周りのものが、でかくなってる……!?)」

ちょうどいい高さだった机が、かなり高めになり、椅子も高くなって、少年の足は宙に浮いていた。部員も大きくなったように見える。

「(ちょっと待て、俺の周りが全て大きくなった……って、ことは……俺が、俺が……)」
「おや、思ったより効果が出るのが早かったようだね」
「俺、縮んでる!!??」

驚く少年の前で、同じく活性剤を注入された少女も、ギュッギュッと押し潰されるように小さくなっていく。中学生が小学生に、そして幼稚園生くらいまで。

「はい。これで初期段階は完了」
「ふ、ふざけるなっ!!」

少年も、同じく幼稚園生くらいまで小さくなっていた。声もかなり高くなっている。椅子から飛び降りて弱い力で部員に立ち向かうが、手も足も出ない。

「まぁ、諦めたまえよ。男なのにみっともない……いや、今は男じゃないんだっけ……?」
「はっ!?何言ってんだ、こんなに小さくなっても俺のチンコは……」

『ついてるぞ』と言おうとして、股間をまさぐる元少年。だが、そこには何もない。幼稚園生にも大きな豆粒くらいのモノがついているはずなのだが、なにもないのだ。部員が、自分の姿を確認しろと言わんばかりに差し出した鏡を見ると、瞳の色が青くなっていた。

「お、お、俺が女になってる……?」
「いや、女でもない。無性(むせい)の状態なはずだよ。そんなことより、カノジョの様子を見てみたらどうだい?」
「そ、そうだな」

無性、の意味が少年にはあまり分からなかったが、うながされるがままに、少年は少女の元に駆け寄った。少女も体が小さくなったおかげで拘束が外れ、床の上に四つん這いになっていた。着ていた服はほとんど脱げ、ブラウス一枚になっていた。といっても、少年もTシャツ一枚になっていたが。

「命(みこと)、大丈夫……か……?」
「さ、つ、き……」

少女の目は赤く光っていた。そしてその目を見た途端、少年の中の何かが変わった。

「命、さま……って、俺は何を!?」
「わ、わわ、今すごくイケナイこと考えてたっ!」

少年には、少女が、自分のつき従うべき存在に見えた。逆に少女には、少年が奴隷のように見えたのだろう。あたふたする二人に、部員が近づいてきた。

「どうだい?新鮮な感覚だろう?メスとオス、いや、キミたちはメスと無性の特徴を得たんだよ。ボクの子たちが持っている社会構造を、引き継いだんだねぇ」
「意味分かんないんだけど……」
「確実な生殖のために、メスが強い社会構造と、そのための遺伝子の特徴を持っているのさ。メスはあらゆる環境で生殖に適した生体構造を作り上げ、無性はメスの指示に従う。簡単に言うと、メスは無性を好きにできる。そして、メスは自分の体を作り変えられるのだ」
「だから……?」
「少女よ、少年の髪が伸びたらいいな、とか、考えてみるがいい」
「は……?うーん……」

少女が考えこむと、少年の髪が、バサッと伸びて、肩に掛かる程度になった。

「うわっ、すごい!」
「お、俺の髪が……」
「いいだろう……少女よ、キミは少年を意のままに操れるのだ」

少女は、目をつぶって少し考えると、うん、とうなずいた。そして、少年に向かってニコッと微笑んだ。

「沙月、私の妹になって!」
「お、お姉ちゃん、そんなのやだよっ!……って、俺は今何て言った!?後輩にお姉ちゃんって!?」
「おや、同級生ではなかったのだね……」

頭を抱える少年を、少女が撫でる。

「そうなの、沙月のほうが一つ上級生。でも、今日から私がお姉さん!」
「ほぉ……面白い。では、ボクはカメラを残して録画しているから、あとは隙に続けてくれたまえ……」
「うん!」
「うん!……じゃねえよ!なんで俺らが……」

少女の瞳が赤く光った。

「沙月ちゃん!年上の人には優しくしなきゃダメだよ!」

と同時に、少年の瞳は青く光った。

「う、うん。ごめんなさい、命お姉ちゃん」

部員はフッと笑うと、部屋から出て行った。少しすると、カチャッと鍵がかかった音がした。

「あ、そうだ……お姉ちゃんなんだから、もうちょっと大きくならなくちゃ……」

少女が息を吸い込むと、手足が少しずつ伸びて、ブラウスから股が見えるほど成長した。それでも元の体よりは小さく、小学生低学年程度の幼児体型のままだった。

「さぁ、沙月ちゃん!」

少女の瞳は赤く光ったままだ。

「なに?お姉ちゃん」
「沙月ちゃん、私たち、これから子作りしないと!」

空気が固まった。数秒の沈黙の後、二人の瞳が光るのをやめ、二人は慌てて視線をそらし背中を向け合った。

「こ、子作りぃっ!!??じょ、冗談やめてくれよ、沙月!!」
「わ、私、何かに取り憑かれてたみたい!!もう、恥ずかしいよ!」

二人の幼女は、顔を赤らめながら下を向いた。

「それで、どうする……ここから何とかして出ないと」
「うん、私たち、何かに操られてるみたいだし、この状況は脱しないとね」

ほとぼりが冷めてくると、元少年は部屋のドアの方まで歩いて行く。少女は、それを心配そうに見つめる。

「ち、ちくしょ、背伸びしてもとどかないぃ……」

元少年は、幼稚園生の体でドアノブに手を伸ばすが、ノブが上の方に設置されているのと少年の背が低すぎるせいで、どうしても手が届かない。その様子を見て、少女はクスッと笑った。

「わ、笑わなくてもいいだろ!?」

少年は、少女にむくれ顔を見せる。

「ご、ごめん、っ、でも……」

そして、少年と少女の目が合ったとき、またもや瞳が光りだした。

「ちょっと、背を伸ばして、もらおっかな……」
「や、やだっ……んぐっ」

少女が身長を伸ばした時とは裏腹に、少年の体からはバキッ、メキッと痛々しい音が聞こえる。

「痛いよぉっ!!」

自分の体を抱きしめ、悶えると、少年の体がグググッと体積を増し、手も足もメキメキ成長して、中学生位のものになった。ただ、筋肉はあまりつかず、肌は白く繊細で、男性らしくはなかったが、かと言って女性の二次性徴も全く無く、女というわけでもなかった。

「あ、そっか……沙月ちゃんが『無性』っていうのは、男でも女でもない、ってことかぁ」
「えっ……」

少女が少年の後ろに回りこんで、背が伸びたせいでTシャツからはみ出て、さらけ出された股間を確認する。

「うん、私のと違うね……」
「お姉ちゃん、恥ずかしいからやめてっ!……」

少年がとっさに股間を手で隠すと、少年の瞳の青い光が消えかかる。

「あ、お、俺は……俺の体、元に戻って、ない……」
「沙月ちゃん」

逆に、少女の赤い光は強くなった。それに呼応するように、少年の青い光は強さを取り戻した。

「その言葉遣いは、ダメ」
「ごめんなさい、お姉ちゃん……でも、沙月、男でも女でもないんだよ……?」
「じゃあ、女の子にしてあげる」
「ひゅあっ……!」

少年の胸がピクピクっと痙攣し、足がガクガク震え始めた。メキィッと音がすると、腰が横に広くなり、尻がムチッと膨らんで、男の時にはなかった丸みを帯びた。脚は内股になり、太ももにも丸みが加わる。次に、Tシャツに小さめな突起がピクッと突き立った。

「は、恥ずかしいよぉっ」

それを隠そうと両手を当てると、その下で胸が膨らむ。手のひらの下を満たすように脂肪がつき、さらに少年の手を押しのけようとする。しばらくそれが続くと、上半身全体がメキメキと形を変え、少しのくびれができ、ヘソも位置を変える。

「沙月ちゃん沙月ちゃん、あともうちょっとで女の子になれるよ」
「へっ……?う、う、おなか、がっ」

少年の腹部に、新たな器官が作られていく。生殖に必要な、卵巣と子宮が、少年の腹部を満たすように成長する。

「よし、完成……」
「うぅっ、お姉ちゃん、私、どうなっちゃうの……?……お姉ちゃん?」

少女は難しい顔をしている。少年は不安げに、少女に近づく。

「私、お姉ちゃんぽくない……」
「え?」

中学生の身長に、中学生にしては少し大きめな胸と尻を持った『妹』と、小学生低学年のちんまりとした体の『姉』。それをそのまま、本当に姉妹として捉えるには、違和感が大きすぎた。

「……そ、そうだよ……私、お姉ちゃんの妹じゃなくて……命のカノジョなわけだし……俺が女なわけないし……」

少年の瞳から光が消えていく。

「でも、お、俺に、おっぱいが……」

シャツを控えめに押し上げる自分の胸に、戸惑いながらも目がくらんでしまう少年。

「ふへ、ふへへ、触り放題……」
「沙月……」

自分だけの世界に入りかけていた少年だったが、少女の存在を思い出した途端、背筋が凍った。

「命!!ご、ごめん、俺はそんなつもりじゃ!!」

少女は怒りを露わにしていた。しかし、それは少年が思っていたものとは違った。

「沙月は、私に付き従うものなの……だから……」

小学生サイズの少女の体が震え始める。ただ、怒りからくる震えとは確実に違う震えだ。少女の体は、急速な成長の準備をしていた。

「み、命……?」
「だからぁっ!!」
「うわぁっ!」

少女の体が爆発した、ように見えた。というのも、130cm程度だった少女の体が一気に170cmまで伸びて150cm程度の少年を追い越したのだ。それだけでなく、胸もバインッと膨らんでGカップほどになり、ブラウスはいたるところが破れてしまい、大きく伸びた手足にはムチッとした脂肪がついが。その成長の衝撃で、部屋の中の物がごちゃまぜに吹き飛ばされ、床に少女の脚がめり込んだ。

「沙月ちゃんは、私以外見ちゃダメなの……」

元々より成長した少女は、淫らな目で少年を見つめた。そして、大きな胸をさらに強調するように手で持ち上げ、少年に見せつける。

「命……お姉ちゃん……っ」
「ほら……」

そして少女は、少年を抱きしめた。少年は、柔らかく大きな体に包み込まれ、その腕の中で安心感を覚えた。

「大好き、お姉ちゃん……」
「ありがと、沙月ちゃん……でもね、私たち、子作りしなきゃ……」

先程から強さが回復してきていた、少年の瞳の光が、一瞬にして弱まった。

「だ、ダメだ……沙月、そんなの違う!アイツの、いや、俺たちの体の中にいる得体のしれない生き物の言いなりになるなんて、ダメだっ!」

対して、少女の赤い光は、弱まるどころかさらに強まった。

「沙月ちゃん、何を言うの……?おとなしく、私のものになってよ……」

少年は、少女の意思で活性化される実験生物に心を乗っ取られまいと、これまでにない抵抗を見せ、瞳の光は点滅した。

「ダメだ、ダメだ、ダメだ!」
「そう、なの……それなら……」

すると、少女の体が、更に大きくなり、180cm、190cmと、グイッ、グイッと背が伸び、ブラウスを引きちぎるように胸が膨らみ、顔と同じくらいになる。そして少女は、増えた体重に任せて、少年を床に押し倒した。

「無理矢理服従させてあげる……」
「ダメ、だ……命、お姉ちゃん……違う、違うっ……俺は……私は……っ!」

光が激しく点滅し、少年の口調が一言ごとに変わる。

「命、は……、命お姉ちゃんは……なんでっ……これで……いいのかよっ……」
「私……?沙月ちゃんを私のものにできるなんて、願いがかなったようなものだから」
「えっ」
「沙月ちゃんは、私のものにはなりたくなかったみたいね?だから、そんなに抵抗する。でも、私は違うの。だから……」
「ん、んごごっ!!!んああっ!!」

少女の瞳が強く光った途端、少年のBカップほどの慎ましやかだった胸が、ムクッ、ムクッと大きくなり始め、シャツを押し上げる。

「私のものになって、楽になって?」
「んうっ!!……命、そんな……私、やだ……うううっ!!!」

胸の成長スピードが上がり、いつしか大きくなりすぎた少年の胸は、持ち主の動きを止めてしまうほどになった。

「私の言うこと聞かないと、一生動けない体にしちゃうよ……?」

少女の言葉は、本気だった。強く光る赤い瞳は、少年の青い瞳を捕らえて離さなかった。とめどなく大きくなる乳房は、自分の意志ではどうしようもなく、さらに少年にのしかかる少女の体は、どうやっても押しのけることはできない。逃れようのない現実を突きつけられ、少年の心は重圧で潰れ始めた。

「私っ……は、命の……命、お姉ちゃんの……」
「私の……?」

そして、プチッと、何かが切れた。

「俺は命の妹……、私は、命お姉ちゃんの、妹……」

青い瞳の光が、消えなくなった。

「もう一回、お願い」
「私は、命お姉ちゃんの妹、命お姉ちゃんの、好きにしていいもの、だよ……」
「うん……沙月ちゃんを、絶対に離さないよ……」
「うふふっ……うっ、ふっ……」

少年の胸が小さくなる代わりに、体全体が生殖に適した大きさまで成長した。

「じゃあ、いくよ、沙月ちゃん」
「うん、命お姉ちゃん……」

少女のヘソから産卵管が生成され、少年のヘソに突っ込まれる。はたから見れば異様すぎる風景ではあるが、二人にはこれが当然に思えた。

「お姉ちゃんの子供が、私の中に……」
「ちゃんと、元気な子を産んでね……」

そして、二人は抱きしめ合い、二人だけの時間を楽しんだ。

「……ふむふむ……この星の知的生命体には、思いの外なじめたようだな……」

ところ変わって、二人の様子を隣の部屋で、ずっとカメラを通して眺めていた、部員。

「宿主と繁殖方法を求め、この星に来て5年。長い道のりだった……二人の中で頑張ってくれた同志たちよ、実験生物と呼んですまなかった。だが、これからも健闘を祈っているぞ。生まれてくる子供にも、期待をかけよう」

部員の口から、ピュッと青い液体が飛び出した。部員はその場で跡形もなく消え去り、液体は空中をふわふわと漂ったあと、窓の外に出て、空の彼方に消えた。

『機関』(pixivより転載)

ここは私達が住んでいる世界とはまた別の世界。見た目は似ているが、歴史がどこかでネジ曲がり、地球全体を破滅に導く核戦争が起きてしまった後の、荒廃した、漫画で言えば世紀末の世界。

賊がはびこり、人々の心はすさみ、文明などほとんど存在しないこのパラレルワールドに、たったの一箇所だけ、技術進歩が途切れることなく続いた場所が、存在した。

『機関』と呼ばれるその場所は、荒廃した都市の真下に作られ、核戦争があったときから、少しずつではあるが発展をつづけていた。『機関』では、優れた科学者たちがアンドロイドや放射能のない水や食べ物などの生産法などの革新的な技術を開発し続け、いつしか戦争前の技術を上回るほどの近代的な世界を生み出していた。

「……」

そのメインロビーに、一人の少女が連れられてきていた。連れられて、といっても、テレポーテーション、つまり瞬間移動技術で転送されてきたようなものだ。彼女が着ている赤いジャンプスーツは、この世界に点在する対核兵器用のバンカーの出身であることを示していた。バンカーの中では、外の放射能だらけの世界とは違い、あらゆる生活機能が備わった、快適な暮らしができるようになっていた。金髪のサラサラした長い髪も、世紀末の世界ではなく、バンカーでの安寧な暮らしの中で生きてきた証拠になっていた。
日本で言えば小学生くらいの少女は、その幼く可愛い顔に、暗い、死んだような表情を浮かべていた。この少女を連れてきた、今は隣に立っている男も、あまり浮かない顔をしている。

「君にはすまないことをしたが、君の能力を買ってのことなんだ……」
「私の、能力……」

少女は言われた言葉を落ち込んだ声で繰り返すのみで、反応らしき反応を示さない。その二人に、白衣を着た白髪の男性が近づいてきた。

「ドミニコ博士。言われたとおり、バンカーから女の子を一人連れて来ました」

ドミニコは、落ち込んでいる少女を見るなり、男性に怒りの目を向けた。

「途中、何かあったのかね!3G-543(さんじーごよんさん)!」

3G-543。これが、少女を拉致した男の名前、というよりシリアルコード。男は、人間にそっくりのアンドロイドだったのだ。

「申し訳ありません、バンカーの中でこの子を探す際、警備に見つかってしまい……住民を全滅させるしかありませんでした」
「なんということだ!543、お前は室内農場送りだ!」
「……はっ」

男はお辞儀をして、その場から去っていく。ドミニコは、少女に向き直り、「すまない」と頭を撫でようとした。だが、少女はその手をパンッと自分の腕で弾き飛ばした。

「なんで、お父さんも、お母さんも……友達のジェニーも!みんな殺しちゃったの!?」
「こんなことになるとは思っても見なかったのだ……我々のアンドロイドには、世界一のステルス技術が搭載されていたのだから、まさか見つかるとは」
「そんなことはどうでもいいの!ねえ、みんなを返して、ねえ!!」
困り切ったドミニコは、近くにいた女性研究員に手招きした。

「君、すこしなだめてやってくれ」
「は、はぁ……ねぇ、あなたの名前……」
「名前なんていいでしょ!?」

一度怒りのタガが外れた少女は、まくし立てるように怒鳴り続けた。

「私も殺してよ!」
「それはできない相談よ、女の子を殺すなんて」
「いいのよ!私が殺してっていってるんだから!」

「……仕方ない」

見るに見かねたドミニコは、少女の腕を握った。

「い、いたいっ……」
「少しの間、眠っていてもらう。落ち着いたら、ここがどんなにいいところか分かってくれるはずだ」

そしてドミニコは、薄い睡眠薬が入ったアンプルを白衣から取り出し、針をつけて、少女の手首に刺した。

「何するのよ!……あ、あ……だめ……眠くなって……」
「おやすみ」

少女は睡眠薬の効果に、ただ従うだけしかできなかった。


次に目が覚めた時、少女はベッドの上に寝ていた。

「お、お母さん……」

来るはずのない母親を呼び、起こったことを思い出して、涙をながす少女。だが、一人の時間は長く続かなかった。ドミニコが、少女の部屋に入ってきたからだ。

「どうだね。ゆっくり休めたかな」
「……ふん」
「……まあいい。『機関』へようこそ。アン、それが君の名前だね?」
「……そうよ」

少女はベッドに横たわったまま、ドミニコから目をそらしている。ドミニコはそのまま話を続けた。

「『機関』は、この世界で最も技術が進んでいる人々の集まりだ。そこに君が連れられてきた理由は一つ。君の能力が、我々に必要だからだ」
「……また、私の能力、なのね?」
「その通り!アン、君は、この世界においては稀有な存在なのだよ。大きなポテンシャルを秘めているのだ」
「バンカーでも一番頭が悪くて、力もないのに?」

アンは、ドミニコを睨んだ。

「とにかく、我々は君にバンカー以上の安全を与えられる。バンカーにいたときよりも、ずっと重要な役目を背負ってもらうけどね」
「ホントに?私が重要?」

アンは、少しだけ敵意を緩ませた。

「私、バンカーではずっと役立たずって言われてきたのよ?」
「ここでは、そんなことはない。むしろ、我々の存亡に関わるくらい、君は重要なんだ」
「そ、そうなの?」

アンは、少し目を輝かさせた。

「そうだよ。さあ、今日からその役目にとりかかってもらうことになっている。身体検査に来てくれないか」
「……わかったわよ。行けばいいんでしょ」

アンは、ドミニコに用意された着替えを着たあと、ドミニコに連れられ、『機関』の中にある生体研究施設に足を運んだ。『機関』の中では、アンがバンカーで見てきたものより新しく、洗練された世界が形作られ、子供の好奇心をそそるものがたくさん存在していた。アンは子供心ながらに、この施設に自分が大きく貢献できると分かって、心を弾ませていた。

「さあ、ついたぞ」

10分ほど歩いて付いた小さな部屋には、横倒しになったポッドのようなものが一つ設置されていた。それはアンの体よりもかなり大きく、大人が一人入っても十分に余裕がありそうだった。ポッドは大きなガラスが嵌めこまれ、中が見えるようになっていた。

「これに、入るの?」
「そう、君の体をくまなく検査しないとならないんだ。外は放射能汚染がひどいと聞いているからな」
「私、外に出たことなんて……」
「まあ、決められた手順というものがあるのだよ。さあ、入ってくれたまえ」

アンは、ドミニコの言葉とともに開いたガラス扉から、恐る恐るポッドの中に入り、枕のようなクッションに頭を横たえた。

彼女が、二度とそこから出られないことも知らずに。

「入った……わよ」
「よろしい。それでは、はじめよう」

ドミニコは、表情一つ変えずに、ポッドのそばにある操作盤の、大きな緑のボタンを押した。すると、シューッという音とともに、ガラス扉が閉じた。アンは、ドキドキしながら次の動作を待っていたが、その口を覆うように、ガスマスクのようなものが枕から飛び出し、アンの頭部をがっちりと掴んだ。

「んっ、んんーっ!!」

次に、マスクから逃げようとジタバタともがく手足を、ロボットアームが正確に捕まえてひっぱり、アンはポッドの中で強制的に大の字にされてしまった。

「どうだね。そんなに痛くないだろう」
「ん~っ!!(放して!ここからだして!)」
「ほうほう。放せ、出せ、か。できないな」

アンの思考はポッドに伝わるらしく、操作盤に表示されたその思考を、ドミニコは読み取っていた。そのうちにも、アンにシャワーのようなものがかけられ、服がびしょぬれになった。いや、濡れただけでなく、その場で溶け始めた。

「この日のために特別に用意した服だ。少しの食塩をかけるだけで、すぐに溶ける」

アンの小さな体がだんだんとさらけ出され、裸を赤の他人に見られる恥ずかしさのあまりアンの顔が紅潮した。

「(私をこんなにして、嘘をついたのね!)」
「嘘?嘘などついていないぞ?すぐにわかる」

完全に服が溶けきると、今度はその股を包むように、吸盤のようなものがアンに取り付いた。

「(もういやぁ!)」
「もう?いやいや、まだまだこれからだよ」

ドミニコは操作盤の表示を確認し、次のスイッチを入れた。すると、アンの手首にチクッと刺される刺激が、そして次の瞬間に、心臓がドクンッと強く脈を打つ衝撃が伝わった。脈が打たれるごとに、心臓だけだったその衝撃が、全身に伝わっていき、アンの体が、ビクンッビクンッと痙攣した。

「君は、この世界にはびこる、破壊と殺戮をもたらす巨人のことを知っているかね?」
「(こ、こんな状態でそんなこと……!)」

アンの体全体が、ビクンッビクンッと動き、全身の静脈が浮き立ち始めるのを見て、ドミニコは説明を始めた。

「彼らは、もともと人間だったらしい。我々と同じね。それが、一種のウィルスで強制的に怪物に変えられたらしい」

アンは、自分の体が次第に熱くなっていくのを感じた。

「その名も、『強制進化ウィルス』と言うらしいがね。核戦争前に、ここにあった国が超人兵器を創りだそうとして開発したものらしい」

アンは、自分の体が自分のものではなくなっていく感覚に襲われた。体内でグツグツと煮えくり返った細胞たちが、形を歪め始めていた。

「我々は、そのウィルスをある経路で入手した。そして徹底的に研究し、新しく作り上げたのが今君に注入している『強制成長ウィルス』だ」

そこまで説明が達した時、ついにアンの体が変化をし始めた。アンの骨がゴキゴキと言いながら大きく伸びはじめたのだ。

「ウィルスに遺伝子を書き換えられた破骨細胞と造骨細胞が動きを急加速させはじめたな。かなり痛いはずだが、我慢してくれ」
「んんんんーーーっ!!!!」

アンの手足は、太さを変えずに伸びていたが、次第に、体から何かが送り込まれるかのようにグググッと太くもなり始めた。

「(私が、押し広げられてくよぉ……!)」
「脂肪細胞にも、ウィルスの効果が出始めたようだな。胸部はあまり成長してないようだが、これは参ったな」

ドミニコが言うとおり、胸の部分はまだ小さな乳首しか存在しなかったが、これも、次第にプクッと膨れてきた。

「おお、乳腺が成長を始めたか。となれば次は……」

大きくなる乳首とともに、胸部に膨らみが見え始め、次の瞬間、ドカンッと大きくなった。ポヨンポヨンと揺れるメロン大の乳房は、まだ足りないというようにムクッムクッと成長していく。

「胴体も伸びて、女性らしいくびれができ始めているな。子宮も、今頃成熟しているはずだ。もともとのウィルスは不妊という副作用を引き起こしていたようだが」

股の中で、性器がムクムクと大きくなっていくのが、ドミニコにはポッドに付いたセンサーで、アンには急激に大きくなっていく股間からの快感で分かった。同時に、肉がついていなかった尻も、プクーッと膨れた。

「(あっ……んんっ……!)」
「よし!アン、君は『機関』の子供を授けられる、立派な女性だ!」

すでに170cm位になっていたアンの肉体は、ビクンビクンと震えていた。足にはむっちりとした脂肪がつき、胸にはバスケットボール並の大きさの乳房がタプンタプンと揺れている。幼さを少し残した顔には、体が変わる前と同じ、サラサラした金髪。貧相な体だったアンは、今や『機関』一のグラマラスで、美しい女性に変わったのだった。

「(こ、こんな体にして……なにするつもりなの……)」
「まだ、気づかないのかね。仕方ない、一から説明しよう。『機関』は、もともとは15人くらいの小さな団体だった。核戦争の時に生き残れた、幸運な我々の祖先だ。今『機関』にいる200人全員が、その15人の子孫、というわけだ」
「(それが……どうして、私に関係あるの……?)」
「ふむ。このように小さい団体から大きな共同体を作るには、何回も遺伝的に近しい者同士で、生殖行為を行わなければならない。ただ、これは遺伝子的にリスクが大きいことがわかっている」
「(……)」
「つまり、アン、君のような外部からもたらされた遺伝子が必要なのだ」
「(私に、子供を産んでほしいの?そんなの、いや!)」
「もう、断る権利は君にはないよ」

ドミニコは、操作盤のスイッチをポンと押した。と同時に、アンの性器の中に、股の拘束具から何かが送り込まれた。

「(な、なにしたのよ!)」
「アン、君の最初の子種だ」
「(えっ……んんっ、おなか、おなかがふくらんでる!)」

子種を受け取ったアンの子宮の中では、すでに受精が済み、胎児が成長して、アンのくびれた腹部を中から押し広げていた。あっという間に臨月の大きさまで育つと、そこで膨張は収まった。

「(いた、いたいっ!)」
「陣痛のようだね」
「(ぐっ、ああああっ!!)」
「ちなみに、今のは私の精子だ。やっと子供ができて、私も嬉しいよ」

アンの膣から、赤子が飛び出すように出てきた。そして、股間の拘束具からポッドの外に送り出されると、産声を上げた。ドミニコはその赤ん坊を取り上げ、ニコニコしながらあやすと、ポッドの脇においてあったベビーベッドのようなものに載せた。

「(ひどい、ひどいよ……私、ずっとこのままなの……?)」
「ああ、そうだ。君はそのポッドから出られはしない。その代わり、仮想現実の世界を見せよう。両親といつまでも中にいられるぞ。それに、この行為はそこまでひどくないぞ。上の世界では、奴隷商が人を人として扱わず、無害な住民が、賊によってスポーツ代わりに殺されることもあると聞いている。それと比べたら、君の体は傷つけられることはない」
「(でも……)」
「我々も生きることが必要なのだ。明るい未来をつくるためには、どんな犠牲でも惜しまない。とうの昔にそう決め、実際そうしてきた。アン、君だけ例外とはいかないのだ」
「(う、うう……)」

アンは、目を閉じて、自分の悲運を恨んだ。しかし、「それでは、仮想現実装置オン」というドミニコの声が聞こえた後、目を開くと、そこには自分のこれまでの生活、両親や親友があった。

「アン、どこに行ってたの?心配したわよ」
「アン、そろそろ食事が配給される時間だぞ」
「アン、明日もまた遊ぼうね!」

「お母さん、お父さん、ジェニー……うん」

苗床となってしまった自分の現実から逃げるように、仮想現実にのめり込んでいくアンだった。

地下に潜む触手

それは、父である俺と小学生の娘の真奈、二人で買い物に行ったときに起こった。河川敷を歩いていたときに、真奈が何か見つけたのか、土手にあいていた排水口らしき大きなトンネルの方に走って行ってしまったのだ。この前まで、こんなトンネルなどなかったはずなのだが。

「真奈!危ないから中に入ったらダメだぞ!」という俺の制止も聞かず、真奈は暗く大きいそのトンネルの中に入っていってしまった。俺は仕方なく後に続いて、暗闇の中に入った。

「く、くらいなぁ……」中には、電灯の一個すらも付いていない。入ったすぐ先が曲がっているせいで、太陽光すらもあまり届かない。と、だんだん目が慣れてきて、内部が見えるようになる。だが、そこにあったのはただの排水用トンネルではなかった。

俺がいるところから少し先に進んだところで、トンネルは終わっていた。そこから先はとてつもなく広い空間だ。その中で、一カ所だけ淡い光が灯っているところがあって、そこに真奈がぼーっと立っていた。俺とは逆の方向、空間の奥を食い入るように見つめている。こんなところ、早く出たい。さっさと真奈を連れだそう。

「真奈、さあ、出るぞ」と声をかけながら近づいていくが、真奈はやはり空間の奥を見つめている。なにかあるのだろうか?俺よりも視力が良い真奈には、なにか見えているのだろうか。段々不安になってきて、真奈まであと少しというところで、一回足を止めて、真奈の視線の先を見ようとした。

俺はその時になって初めて、空間に微かに聞こえるジュルジュルという粘りけのある何かがうごめく音に気づいたのだった。そして、逃げるにはもう遅すぎた。空間の奥から急に飛び出してきた四本の赤い触手が、真奈の体に絡みついたのだ。一本は胸、もう一本は腰、あとの二本は足に一本ずつ。次の瞬間、真奈は空中に持ち上げられ、一回見えなくなった。

「きゃああああっ!!」という真奈の悲鳴と同時に、ないと思っていた空間の照明が徐々に点灯し始めた。真奈を持ち上げた触手の持ち主は、今まで見た中で一番大きな動物だった象の、数十倍の大きさの赤い塊だった。その表面には無数の血管が走り、ドクンドクンと脈打っている。

さらに照明が明るくなると、その生物の表面にびっしりとニキビのようなブツブツした物が付いているのが分かった。それが何だか俺には分からなかったし、今は真奈の安全の方が重要だった。真奈は、高さ二メートルのあたりで、触手に下半身を固定され、必死で逃げようと、ジタバタ暴れている。

「真奈を放せ!この怪物が!」俺は、真奈の真下に走り、ジャンプすれば届く位置にある、真奈の足をつかんでいた触手に手を伸ばし、引きはがそうとした。だが、急に視界がフッと動き、体がグワッと動かされた。

「な、なにが……」と下を見ると、真奈を捕まえているのと同じような触手が、真奈と同じく、胸と腰と足をつかんでいた。そして、俺の体は宙に浮き、真奈の目の前に、同じ高さで固定されている。

「放せ!放せっ!!」俺は死にものぐるいで拘束から逃れようとしたが、俺の足と同じくらいの太さの触手はびくともしない。触手は赤黒く、怪物の本体と同じように表面に血管が浮き立ち、脈動していた。さらにぬめぬめとした粘液に覆われている。

「って、この粘液、俺の服を溶かして……」粘液は、触れた繊維を溶解させている。真奈の方を見ると、トンネルに入る前には全身を覆っていた服が、今や重要な部分しか隠していない。ただ、粘液が皮膚に触れても溶けるどころか痛みすら感じない。

「どういうことだ……」と、俺が頭を抱えていると、額にぴとっと触れる物があった。紛れもない触手だが、その瞬間、頭の中に声が聞こえてきた。『フフッ……我がトラップにまんまとひっかかったな、人間よ……』声は、ファンタジー映画で出てきそうな黒魔術師の、悪意に満ちた低い物にそっくりだった。

「……っ!」俺の声が、出ない。口は動くが声帯が従ってくれない。

『声は奪わせてもらった。男がわあわあ喚くのは、みっともなくて見ておれん。何か言いたければ、ただ考えれば、我が耳に届こう』怪物が、俺の考えを読んできた。相手は、人間には到底敵わない、いわば天敵だった。

『天敵。そう、天敵だ。我は人間を食らって生きる。お前たちは、これまで食われてきた多くの人間の仲間入りをする、単なるエサに過ぎん』怪物は触手を動かし、俺と真奈を怪物本体のイボイボに近づけた。すると、遠くからは見えなかった中身が、少しだけ見えた。人間だ。人間の顔が、中にある。俺たちも、こいつのようになるのか。

『そうだ。だが、その前にお前たちの体を作り替えなければならぬ。まずは娘の方からだ。父親のお前には、特等席で見物させてやろう』

真奈に、何をするつもりなのだ!?体を作り替えるだって?なぜそんなことを……

『我は、すべての生物と同じく子孫を残すために生きている。種族を残すために。しかし、不便なことに他の生物の卵子なければ、子供を作ることかなわぬ。それに、子宮も。そのために、体を変形させやすい人間を巣におびきよせ、我が子を身ごもるのに適した形に変えるのだ』

ということは、真奈の子宮や、卵子を使うというわけか!?まだ子供がどうやってできるかもしらない、小さな子の!?

『言っただろう。形を変えると』

怪物からの言葉と同時に、「うあっ……あっ!!」と真奈がうめいた。いつの間にか、もう一本の触手が近づき、真奈の二の腕に触れている。よくみると、その先端には細い針のような物があり、皮膚に突き刺さっている。そして、針が伸びている触手がグニッと膨らんだ。中に何かが詰め込まれているようだ。ま、待て、何かを真奈に注入するつもりなのか!

『ご名答』

「きゃあああっ!!」真奈が金切り声を上げた。触手の方は、今度は縮み始め、怪物の液体が真奈の中に入っていく。液体が、真奈に相当な痛みをあたえている。そして針が刺さっている腕の血管が、緑に光り、その光は全身へと広がっていく。俺は、取り返しの付かないことが起こったことを痛感した。触手は縮み終わると針を抜き、怪物の方へと引っ込んでいった。一方の真奈は緑に光る体を抑えながら、歯を食いしばって悶えている。光は段々と弱まっていったが、その様子は消えるというより、真奈の体になじんでいっていると言った方が正しいように思えた。

「はぅっ……ひぅっ……」

光が完全に消えたと思いきや、まだほのかに光っている真奈の体が、ビクンビクンと痙攣している。それは、心臓の動きに同調しているようにも見える。

『あの液体には、我のマクロファージ、大食細胞が大量に含まれているのだ。この娘の血管の中を通って、全身に送り込まれた。すぐに次の段階に移行するだろう』

「うっ……うぐぅっ……おむねに何かが……」真奈が、露出していた乳首を手で押さえた。すると、手のひらの下で平らだった胸に、プルンッと二つの盛り上がりが生まれた。「あついよぉ……っ」その盛り上がりは、プクッ、プクッと、真奈の手を押しのけながら大きくなる。どうみても女性の乳房だ。あっという間に頭と同じくらいの大きさになったが、まだ成長をやめない。

『人間の雌の授乳器というのは、変形させやすくて助かる。多大な栄養素を送り込むのに、うってつけの種族だ』

また、怪物の方から二本の触手が伸び、膨らむ胸を押しとどめようとする真奈の手を引きはがした。解放された乳房はへそを隠すくらい大きくなり、もはや漫画でも大きすぎると思うほどのサイズになっていた。たぷんたぷんと揺れるそれは、小学生の体とはかなり不釣り合いだった。腕を引き離した触手はそのまま、電光石火の動きで乳首に吸い付いた。「ひゃんっ!」という幼い喘ぎは、俺の股間に効いた。実の娘なのだが、どうしてもエロい。

「ひゃううっ!!」触手は乳房にたまった物を吸い出すと思った。しかしそれは間違っていた。もう巨大どころではない胸が、さらに膨らんだのだ。真奈は首をのけぞらせて痛みに耐えている。おっぱいは、フルフルと揺れながら、やがて体と同じくらいの大きさになっていく。

いつまでも膨張が続くように見えたが、いきなり触手が外され、触手から注入されていたのであろう液体が乳首からピュッと飛び出して、その『段階』は終わり、すぐに次が始まった。

グ、グググッ……

乳房が、音を立てて縮み始めた。まるで、真奈の体に押し込まれていくかのように、ブルブルと震えながらしぼんでいくのだ。すると同時に、おなかの部分が膨らみ始める。「んん~っ……!」真奈は、腹部が張る感覚でも感じているのか、手をおなかに回して膨らみを止めようとする。すると、胸がしぼむスピードが下がり、おなかの膨らみは緩やかになる。

「はぁ……」真奈は安堵のため息をついたが、それもつかの間、頭と同じくらいの大きさに戻っていた胸は、一気に真奈の体に飛び込んでいき、真っ平らになった。と同時に、臨月の妊婦程度のおなかが、二倍程度に急に膨れあがった。「かはっ……!」衝撃が強かったらしく、真奈は口を大きく開け、舌を出して、声にならない叫びを上げた。