環境呼応症候群 眠気の子

人にとって睡眠とは日常に欠かせない行為の一つである。睡眠が足りなければ、日常の判断力に大きな影響が出てしまう。

「おはよー!」

しかし、この中一の少女の場合その影響は判断力に収まらない。

「おはよ。あ、また睡眠不足だな?」
「えへへ、私、ちょっと大きくなってるー?」

擦陽 あや(すりひ あや)というこの少女は、メタモルフォーゼ症候群にかかっている。周りや自分の状態に応じて体の形が変わるこの病気だが、彼女の場合、眠気に応じて成長したり小さくなったりというもので、常に変わり続けるこのパラメータのせいで、彼女の体が一定のサイズであることはない。

小学校からの幼馴染の安下 留子(やすした りゅうこ)は、いつもは自分より小さいあやが、自分と同じくらいの大きさに成長しているのを見てニヤニヤしている。

「バレバレだよ、セーラー服、一番起きてる時はいっつもぶかぶかじゃん。今日は違うもん」
「実は、漫画を読み始めたら止まんなくて。大丈夫、宿題はやってきてあるから!」

あやは、買ったばかりのカバンを机の上にどさっと置くと、中から宿題の紙を取り出し、ドヤ顔で友達に見せる。

「ほら!」
「はいはい、前は忘れてきたのに、いい子ですねー」
「こ、こら、バカにしないでよ!あんただって忘れてきたことあったでしょ!?」
「あやほどじゃないよ」

頬を膨らませ、むすっとするあやを見て、留子は口元を緩ませた。

「ほらほら、朝礼始まっちゃうよ」
「あ、そうだね」

あやがカバンから教科書を取り出し、椅子に腰掛けて、カバンを机の側に置くと、中年の男性教諭が入ってきた。

「朝礼を始めます。擦陽は……今日は大丈夫そうだな」
「もう、先生!どういう意味ですか!」

名指しで確認され、手を挙げて反論するあやだが、その途端少し背が縮んだのを、教諭は見逃さなかなかった。

「寝不足、ですね。そういうことです」
「む、むぅ……」

この体質のせいで、少しでも眠いようならバレてしまう。朝なのだから眠いのは当然であるのだが、今日は成長度合いが基準を超えていたらしい。だが、このあやという少女はかなり天然ボケが入っていて、この手の隠し事が出来ないことはあまり気にならない。

「では、出席を取ります」

そんな、少し普通とはずれているが日常と同じ朝礼が始まり、今日の授業へと続いていった。

だが、一つ落とし穴があった。1時間目の体育が、その落とし穴だった。

「新入生のみんな、

学期が始まって初めての体育は、1000m走という、女性にとってはハードな種目だった。

「はぁ……疲れたぁ」

体育の授業を終えたあやは息を切らしている。

「あや、よく3本も走れたね」
「私、走るのだけは得意なんだ」

留子のほうはというと、一回走っただけで体力を使い果たしてしまい、元気よく走り続けるあやをトラックの外からぼーっとながめていたのだ。

あやは、息を整えるとすぐに後者に向かって走り始める。

「次の授業すぐあるから、さっさと着替えないとね!」
「そ、そうだね!って、ちょっとまってー!」

留子は小さい体なのにかなり速く走っていくあやに、なんとかついて行った。

次の時間。授業の支度をして、席についた留子は、早速横に座っている小柄なあやを見る。すると、ペッタンコなセーラー服の胸の部分が、グググと前にせり出しているところだった。

「ちょ、ちょっと、あや……」
「うーん、なにぃ?」

留子に顔を向け、眠そうに答えるあや。胸の盛り上がりはさらに大きくなって、リボンで見えないセーラー服のボタンがだんだん張り詰めている。

「大丈夫なの?」
「だいじょうぶだってー、宿題ちゃんと……やって……」

運動で疲れたことからあやを眠気が襲っているようだ。体がメキメキいう音を立てると、あやの体が勢い良く縦に伸び、140cmの身長が165cmまでになった。スカートの下から足がニョキィと出てくると同時に皮下脂肪が付いて丸みを帯びる。

「おきて……られない……」

体を前に傾け、居眠りする体勢になると、いよいよセーラー服の限界が訪れたようで、ボタンがブチブチと取れ、中からプルンと蒸れたGカップの双丘が机の上に飛び出し、寝ようとする頭にちょうど良くクッションになった。

「あや……?」
「むにゃむにゃ……」

さらに机の上で大きくなる乳房は、スイカサイズにも達している。周りの生徒も気づいているらしく、ざわついている。教諭も気を取られて授業が思うように進まなくなっている。それでも注意しにこないのは、その中学生に見合わないスタイルの良さを目の当たりにして、もう少し見ていたいという欲望が現れた結果だろうか。だが、その姿を見慣れていた留子は、少しため息をついて、すやすやと寝息を立てているあやを見守るだけだった。留子にとって問題なのは、この後だった。

「そろそろ、アイツが出てくるかな」

留子がつぶやくと、寝ているはずのあやの口から、色っぽい声が発せられた。

「だれが、アイツ、ですって?」

あやはパチッと目をさます。しかし体つきは全く変わらない。それどころか、足を組み、体のメリハリを強調するような姿勢になったおかげで、さらに扇情的になっている。

「ふふ、留子ちゃん、お久しぶり」
「お久しぶり、あやさん」

天真爛漫なあやとは一線を画す、もう一人のあやがそこにいた。

「1週間ぶりだっけ?あ、今授業中ぅ?」
「そうだよ」
「もう、この子ったら、居眠りしちゃてるのね」

メタモルフォーゼ症候群を発症してから、あやの中に居座るようになったもう一つの人格。「元」のあやが眠ると、表に出てくる「裏」のあやだ。

「体育の授業があってね。それよりも……」

その「あや」に、留子はニヤニヤしながら喋っている。

「はやく、私にご褒美、ちょうだい?」
「はいはい。もう留子ちゃんったらせっかちね❤」

あやは席から立ち上がり、乳首を留子の口に近づける。

「ほら、後はあなたの好きにしていいわよ、私のかわいいかわいい留子ちゃん」
「ありがたき幸せ……!」

留子は、顔を前に突き出し、あやから母乳を吸うように、その豊満な果実の先をくわえた。

「留子ちゃんは、もう完全に私のトリコね。ほら、周りのみんなもどう?❤」

あやの周りに、生徒たちが男女問わずぞろぞろと集まってきた。症候群によって形成されたあり得ないほどグラマラスな体に、幻術でも掛けられたかのようだ。全員があやに頬ずりし、さわり、撫でた。異様な空間が、そこには形成されていた。

授業時間の半ばになってやっと、あやの言葉でそれは終わりを迎えた。

「あ、あの子起きちゃう❤みんな、席に戻って?」

何も答えずに、生徒たちは自分の席に帰っていく。今までずっとおっぱいを吸い続けていた留子もぱっとそれをやめた。それを見たあやは自分も席に戻り、目を閉じて机の上に突っ伏した。

数秒の沈黙の後、教諭があやに指名をする。

「それでは刷陽さん。ここ読んでください」
「はっ……!?私、寝てた!?」

あやの体が、風船が割れたときのような勢いで元に戻った。

「あやちゃん、ここ、ここ」
「あっ、そこね!私、練習してきたから大丈夫!」

留子は何事もなかったかのように振る舞う。それは留子だけではなく、教諭も含めて周り全員も同じだった。

「わかりましたから、読んでください」
「はーい!えーと、『あいあむ……』」

そして、「日常」はいつものように続いていくのである。症候群のせいで何かが狂った「日常」が。

成長

小学生である俺の弟には、成長ホルモンのバランスに問題があるらしい。健康診断で問題が出て、紹介された病院の医者にそう言われた。俺も、母さんも父さんも、かなり慌てたものだ。それから1ヶ月後。実際の所、問題は全然なかった。

俺を除いては。

「兄ちゃんお帰り!」
「おう、ただいま」

夏の暑い日、汗だくで帰った俺を、リビングで迎える弟の太一(たいち)。髪を短く切って、シャツと短パンで涼しく決めている。母さんは俺のぐしょぐしょに濡れた服を見て、呆れ顔だ。

「汗びっしょりじゃない。お風呂入ってきたら?」
「ああ、そうするよ」
「ちょっと待ってね、入浴剤持ってくるから」
「あ、あぁ……」

母さんは廊下の方に出ていった。さて、さっきの問題というのなんだが……

「兄ちゃん、部活って楽しい?」

弟がいたはずの所に、高校生の俺と同じくらいの背丈の女の子が立っている。髪は長く、胸はサイズが合わない服をピンピンに引っ張り、ムチッとした尻に短パンが食い込んでいる。後ろに腕を組んで前のめりになって聞いてくるせいで、胸の谷間が自分の存在をこちらに強烈に主張してくる。

これが、俺の弟だ。普段は普通の活発そうな小学生男子だが、俺しか見ていない時に限って出るところは出て締まるところはキュッと締まった女に急成長するのだ。ホルモンバランスの崩れから来てるんだろうが、一体全体、成長ホルモンってなんなんだよ……

「ねえねえ?」
「……!?」

かわいい女の子、いや弟の顔がギュッと急接近してきた!思わず狼狽してしまう俺に、どんどん弟は接近してくる。

「ほら、持ってきたわよ……って何顔赤らめてるの?」

母さんがいきなり部屋に入ってきて、飛び上がってしまった。

「こ、これはそういうのじゃなくて!」
「……何が?」
「あ……」

魅惑的な体つきの少女は、跡形もなく姿を消し、いつもの弟が少し不満気な顔をしているだけだった。思わずため息をついてしまう。

「……はぁ……風呂入ってくる」

毎日弟が変身するのを見て慣れていたはずなのに、あんなに近寄られるなんて思ってもみなかった。太一は太一で、自分が変身していることに全く気がついていないらしい。胸を触ってみてもいいかとダメ元で聞いた時は、ちょっと首を傾げただけで了解された。その時触った感覚は、太一が本当に女の子になっていることを証明していたけど……

風呂場に着くと、すでに湯が沸かしてあった。母さんに渡された入浴剤を入れると、シャワーの蛇口をひねった。と、その時だった。扉越しに、いつの間にか風呂場の前に来ていた母さんがとんでもないことを言った。

「ねえ、太一も一緒に洗ってあげて、お母さん忙しいから」
「え、ちょ……!?」

普通に考えればとんでもないことでも何でもない。が、俺の場合はそうも行かない。でもシャワーを止めて拒否する前に、太一が入ってきてしまって、抱きつかれた。

「兄ちゃん久し振りにお風呂一緒だね!」
「え、えっ」
「じゃあお願いね」

風呂場の扉がガチャッと閉められると、俺の体にムニィッと弾力感が伝わってきた。おっぱいだ。弟のおっぱい。

「背中洗いっこしよ!」
「えぇっ!?」

服越しには分からなかったキメの細かい肌と、柔らかそうな丸い輪郭。混乱した俺にはそれしか分からなかった。しかし、俺の体に胸を押し当てている女の子はどうあがいても弟だった。

「え、してくれないの?」

そんな泣き顔するな!そんな顔されたら断れないだろ!?

「ああもう、すればいいんだろ、すれば」
「じゃあ太一の背中から!」
「はいはい」

俺は、風呂椅子に座った弟の後ろに回る。まずサラサラと背中に流れる長い髪を肩の前に回した。

「ゴクリ……」

出てきた背中のなんと綺麗なことか!俺と同じくらい大きいのに、汚れの全くない、真ん中に筋がすーっと通った、とても繊細そうな肌。写真で見たことはあっても、目の間にあるとまた違う。

「どうしたの?」
「あ、ああ、今洗うからな」

これ、いつものヤツで擦ったら絶対傷つけてしまう。どうやって洗ったらいいのか……考えた挙句、結局母さんが使っているスポンジの柔らかそうな方で洗った。

「ちょ、ちょっと痛いよー」
「あ、暴れるなって!」

四苦八苦しながらも何とか背中を洗い終わる。

「じゃあ髪の毛も!」
「はぁっ!?」

こんなに長い髪の毛、本当にどうやってあらうんだ……普通にロングだよな、これ……これこそ、細心の注意を払うべきところだろうが、洗い方なんて知るか。

「いつもどうやって洗ってるんだ?」
「んー、いつもは髪短いから……」

なるほどな。

「じゃあ、俺が出るから、自分で……」
「やーだっ!兄ちゃんに洗って欲しいの!」
「わがまま言うんんじゃない!そんな顔したって俺には通用しないぞ!」

そんな、ねだるような顔されたって、俺は……実際、完全に敗北してる。めちゃくちゃドキドキしている。

「そ、そう……?」

すごくがっかりしているようだ。俺だって洗ってやりたいのはやまやまなんだが。

「じゃ、髪が終わったら他の部分を一つだけ、何でも洗ってやるから……髪だけは洗えって」
「はーい」

俺は風呂場を出て、扉を閉めた。気になって中をのぞき込むと、いつもの弟のようだ。ワシャワシャと自分の頭を揉むようにして洗っている。あれなら、俺にもできるんだがなぁ……

「終わったから入ってきて!」
「おう」

扉をがらーっと開けると、目に飛び込んでくるのは突起のついた巨大な丸い膨らみと、長い髪に飾られた端正な顔。こんなに急に変身して、痛くもなんともないんだろうか?

「じゃあ、胸を洗って?」
「あぁ、胸な……ムネェッ!!?」
「そうだよ?ノリツッコミしてないではやくはやく!」

しゃべるたびタプンタプンと揺れるあの豊満な果実を、洗えと!変な気持ちが沸き起こりそうで恐ろしいったらありゃしないが、約束は約束だ……仕方ない。さっきのスポンジを使えばいいだろうか……

「あ、スポンジは痛いから素手でやってよ」
「はぁっ!?やめだやめだ、胸以外のどこかに……」
「なんでもって言ったじゃん」
「ぐぬぬ……じゃあ洗うぞ……」

手に石鹸をつけて、恐る恐る肌色の膨らみに近づける。これは弟だ、弟なんだぞ……なんでこんなに興奮しなくちゃならんのだ……

「あんっ……♥」

指の先がピトッと触れた瞬間、弟が変な声を……喘ぎ声を出しやがった……どこのエロゲだよ……こんなの、兄弟がすることじゃ……

「どうしたの……?手が止まってるよ?」
「あーもう!やればいいんだろ!?」

胸に手を付け、石鹸を一心に塗りたくり、泡を立てようとする。だが、力を入れるたび気が狂うくらいに変形するそれは、その質量と触感で俺の性欲をかきたてた。

「んあぅ♥ふあっ♥」

おまけに、弟はエロいとしか言いようがない喘ぎ声を続けざまに出してくる。目の前で、俺の手によって大きく形を変えるおっぱいと合わせて、俺の股間はとてつもなく固くなって、痛いほどだった。その時、風呂場の扉が一気に開いた。

「いつまで入ってるの!?」
「か、母さん!?」

み、見られた!弟の胸に欲情してるのを、現行犯で見られた!!

「こ、これは勘違いで……!」
「え?」
「あ。」

パニクった俺の精神は、元の姿に戻っている弟を見て落ち着いた。胸があった空間には何もなく、背も縮んだ弟の顔に、俺の手が当たっていた。

「何が勘違いなの?」
「い、いや……」
「それよりも、男同士がなんでこんなに風呂が長いのよ……おやつ準備してあるから、早く出てきなさい」
「はーい」

母さんは溜め息をついて、扉を閉めて去っていった。と同時に……俺の手にムニュゥ……と、柔らかい感触が戻ってきた。

「ひぁっ♥」
「も、もう大丈夫だろ……?」
「うん。それで、僕の体のことなんだけど……」

ん、急に雰囲気が変わったぞ。

「なんだ?」
「実は、兄ちゃん以外に今の姿を見せたこと、無かったけど……もう耐えられそうもないんだ」
「は?」
「これまでは成長を抑えて、元の姿でいられたんだけど、この頃、どんどん抑えきれなくなってて……トイレの中で成長したりして何とかしてたんだ」

どういうことだ。弟は周りの環境にあわせて、意思とは関係なく変身していたのではないのか?

「だけどもう限界みたいでさ、お母さんの前でもグッとこらえるくらいじゃないと、この姿になっちゃうんだ」
「ちょっと待て、それって……」
「男は、もうやめないとね。こんな大きなおっぱいで、男だなんて言えないから。だから……兄ちゃん、僕のこと、守ってね」
「まも……る……」

守る。その重大な責任について、俺はこの時全てを理解できなかったが、こくりと頷くしか無かった。これから女性として生きていく弟のためだ。

「ああ、守ってやる」
「兄ちゃん……ありがと……」

弟は、俺に抱きついてきた。俺は、少しの震えと、胸にムギュッと柔らかい何かが当たる感触を得ながら、覚悟を決めるのであった。

トリック・アンド・トリート ~クッキー編~

「こ、ここはどこ……?」

一人の女子大生が、路地裏で迷っているようだ。日も暮れ、街灯がぽつりと一つ、彼女の上で光っている以外は、真っ暗だ。

「わ、私今まで大通りを歩いてたよね……?スマホ見ながら歩いてたっていっても、こんなところ、入ってくるわけ無いし……とりあえず地図を調べて……」
「おじょうさん」
「うわぁっ!?」

暗闇の中からいきなり男の声がして驚く女子大生。そこには、時代遅れのローブを着た、RPGに出てきそうな男が立っている。

「こんな所を一人で歩いていては、危険ですよ」
「……ご、ご心配ありがとうございます……」

彼女には、不気味なローブ姿の男から一刻も早く遠ざかりたい、という直感にもにた恐怖が湧き上がった。しかし、足を動かそうとする意思に、体が従わなかった。

「え、なんなのこれ、足が動かない……」
「それは、そうですよ。私の結界の中にいるんですから」
「結界……?」

女子大生は、真上から自分を照らす光に、熱のようなものが加わってきているのに気づいた。

「ちょ、これ、熱い……!」

光を遮ろうとして、手をかざす。だが、その手に、妙な感覚が伝わってくる。

「なんかすごくカサカサする……!」

手を目の前に動かすと、その感覚の正体が分かる。しかし、彼女は安堵するどころか、恐怖を感じざるを得なかった。彼女の手は砂をかぶったように白い粉で覆われていた。いや、彼女の手自体が、粉になっていたのだ。手は、彼女がじっと見ているその前で手首からポロッと取れ落ち、床にぶつかった衝撃で、粉々になってしまった。

「……え……っ」

手だけではない。光が差す体の表面、服の表面が色を失っていく。同時に、サラサラとした粉が、体から分離し床に積もり積もっていく。

「……!」

悲鳴を上げようとした彼女の口も、いつの間にか固まり、瞳から流れだした涙も、粉に吸い込まれ、顎まで流れることはなかった。ついに、手の指や髪の毛の先が欠けていたが、女子大生は人間の形を保ったまま、完全に白い粉の塊と化した。

「ふむ……なかなか形が残りましたね……しかし、像にするのが私の目的ではないですし……」

男がパチッと指を鳴らすと、粉の像にピキッと亀裂が入り、各部分がバラバラに落ち、床にあたって砕け散った。最後に残ったのは、白い粉の山だ。

「よし、これで人間小麦粉の完成といったところでしょうかね。これに砂糖とバターと卵黄と……私特製のスパイスを……」

男の言葉とともに、どこからともなく現れた、白い粉、黄色い固まりと液体、そして光の粒のようなものが山に加えられ、竜巻のように舞い上がって、混ぜられていく。材料は、これも忽然と現れた無数の型に流し込まれ、一瞬にしてふっくらと焼けた。あたりには、とろけてしまいそうな甘い香りが立ち込める。

「おいしいクッキーの完成ですね。本来ならティータイムにピッタリの」

一口サイズに焼けたクッキーは、あっと言う間に数個ずつプラスチックの袋に梱包され、ひとりでに夜空へと飛んで行く。

「こんな夜にお菓子を食べる子は、いないでしょうが……まあ、明日が楽しみといったところでしょうかね」

ローブの男は、女子大生を小麦粉にした照明に向かってパチッと指を鳴らした。すると明かりは消え、逆に周りの風景が見え始める。そこは、女子大生が歩いていた大通りそのものだった。彼女は、この男の、照明に見立てた結界の中に入ってしまったせいで、周りが見えなくなり、逃げ出せなくなってしまったのだ。

明かりが消えると同時に、男も姿を消し、大通りの喧騒は何事もなかったかのように夜を明かした。

その翌日。夏の暑さに耐えかね、二人の小学生の男子が、クーラーの効いたリビングでゲームに勤しんでいた。二人とも元気いっぱいの育ち盛りで、こんなに暑くなければ仲間と野球をするような外見をしている。

「いただき!」
「あっ、そこでくるかメテオ!」

対戦ゲームのようで、かなりヒートアップしている。それで、彼らの横にスッとクッキー入りの袋が飛んできたことにも気づかなかった。

「そろそろおやつ食べよっか!」
「そうだな建人(けんと)!あ、こんなところにクッキーが……」

少しおとなしめな子のほうが、クッキーの袋に気づき、建人と呼ばれたもう一人に見せる。

「クッキーよりポテイトゥ食べようぜ」
「あ、もう一つ食べちゃった……なんだこれ、変な……あ……っ」

クッキーを食べた子が、胸を抑えて苦しみだした。そして、床に仰向けに倒れ、手を床に付け、ぐっと痛みをこらえるように、歯を食いしばった。

「な、大智(たいち)どうし……」
「んああっ……!!!」

急に叫び声を上げる大智と呼ばれた子。すると、手足がググッと伸び、薄手のTシャツの胸の部分に、ピクッと突起が立った。股間も、異常なまでな勃起を見せている。建人は、いきなりの親友の変化に、腰を抜かし、倒れてしまう。

「た、たすけ……んぅああっ!!!」

さらに手足が伸びるが、それは普通の男のように筋肉や骨で角ばったものではなく、まるで女のように皮下脂肪に覆われ、柔らかな輪郭を持ったものであった。同時に腰がグキキッと何かに引っ張られるように横に拡大する。スポーツ刈りにしていた髪の毛も、サラサラと伸びて、周りの床に広がっていく。

「た、い……ち?」

夢にも見なかった事態を受け入れられず、ただただ大智が変わっていくのを見届けるしか無い建人。

「あ、おちんち……んんっ!!!」

股間の突起が、グチッ、ミヂッ、と音を立てて、体に潜り込むように萎縮し、ついに見えなくなってしまった。

「ふぅ……ふぅ……んっ!あぅっ!」

左胸がグイッと盛り上がり、薄手のシャツの襟から、どうみても乳房の膨らみにしか見えない、肌色の固まりがはみ出る。続いて、右胸も同じサイズまで膨れ上がり、女子高生の体格まで大きくなっている体の上に、大きな双子の山が出来上がった。

「ふあっ……もっと……んぁっ!!」

大智が声を上げるごとに、ムクッ、ムクッと体が一回りづつ大きくなる。その吐息は、小学生のものは到底思えない色っぽさを醸し出している。着ていたシャツはビリビリ破け、短パンは尻と太股に食い込み、その肉感をさらに強調している。

《ビリーッ!!》

ついにシャツが胸からの圧力に負けて大きく破れ、頭と同じくらいのサイズになった胸が解放されて、タプンタプンと大きく揺れた。同時に、大智は喘ぎ声を出すのをやめた。

「た、大智?大丈夫か?」

建人はやっと我に返り、数分前の姿の面影が全くなくなった大智に近づいていく。仰向けに寝そべったその体の上で、大智の呼吸とともに揺れる胸は、建人の幼い好奇心を誘う。

「(ゴクリ……)」

建人は、その力にあっさりと負け、腕を豊満な乳房へと伸ばした。その瞬間、大智の目がカッと見開き、建人の腕をガシっと掴んだ。

「ひゃっ!?ご、ごめ……!」

しかし、建人が想像したのとは逆に、大智は友人の腕を、自分の胸に押し付けたのだった。

「どう?私のおっぱい……。やわらかいでしょ……?」
「えっ、ええっ……うん、やわらかい……」

建人のなかで、さっきまで対戦ゲームで盛り上がっていた大智とは思えない発言に対する警戒と、手に伝わってくるなんとも言えない柔らかい感触への興奮がせめぎあい、幼い精神はパンク寸前になっていた。

「じゃあ……」

大智は、寝そべったまま建人の服を超人的なスピードで脱がせ、両手でヒョイッと持ち上げて自分の体の上に寝かせた。

「私の体、全身で堪能して……!」

そしてギュッと腕で建人を抱きしめ、乳房に建人の頭を押し付ける。

――おっぱいやわらかい……いや!こいつは大智で……で、でも……おなかもすごくスベスベしてる、そしてこの汗の匂い……

建人は、今起こっていることの不可解さに混乱しつつ、小学生でも持ち合わせている本能に、徐々に抗えなくなっていった。

「まだ何もしないの……?じゃあ私から……」

その時だった。

「建人お兄ちゃん?誰か来てるの?」
「真都(まと)!」

建人の、同じく小学生の妹、真都が、いつの間にやら部屋に入ってきたのだ。

「駄目だ、今は入ってきちゃ……っ……」
「だれなの、このおねえちゃん……えっ」

建人の中で、何かの線がプツッと切れていた。何かを考える前に、いたいけもない妹の口に、親友を女性にしたクッキーを、有無をいわさず突っ込んでいたのだ。

「お、おにいちゃ……んっ……!」

その効果はすぐに現れた。身長が伸びる前に、膨らみかけにも入っていない胸が、ムクッ、ムククッと、部屋着の薄いシャツを盛り上げ始めたのだ。その大きさは、30秒ほども経たないうちに特大メロンサイズまでになってシャツの下からはみ出し、真都の体では支えきれなくなってしまった。

「なんで、私におっぱいが……んああっ……!!!」

後ろに突き出す形になっていた尻がムギュギュッと膨らみ、同時に足がニョキニョキと伸びて、未だ胸以外成長していない上半身を、下から押し上げていく。足には、ムチムチと脂肪が付き、腰もゴキゴキと広がる。

「いや、私これ以上大きくっ……!!」

腕も伸び、部屋着を限界まで引っ張る。背骨が伸びて、相対的にウエストが絞られ、女性特有の美しい曲線が描き出されていく。

「わ……私……」

声も、子供っぽい高い声から、落ち着いた声に変わる。そこで変身が終わったのか、大きくなった腕をついて、何とか立ち上がった。

「こんなに、大きくなっちゃったのね……」

建人は、何も考えること無く、自分よりも格段に背の高くなった妹の胸に飛びついた。

「あら、おにいちゃん。そんなに私のおっぱい好きなの……?」

妹の問いに、ただただ頷く建人に、理性はほぼ残っていない。起き上がってきた大智は、真都に目配せし、建人を持ち上げて真都の胸に押し付け、自分の胸も同じように押し当てた。建人は、頭を二人の乳で挟まれ、そして考えることを完全にやめた。

「今回は効能を大きくしすぎましたかね……性格や思考が完全に変わってしまうとは……」

疲れ果て、死んだようにリビングの床で眠る3人の子供を、ローブ姿の男が眺めていた。

「次にお菓子を作る前に、少し検討する必要がありそうですね……まあ、このお三方にはこれからも楽しんでもらうことにしましょうかね。この際、クッキーは差し上げることにしましょう」

まだ、中に15個は残っている包みを、男はニヤニヤしながら確認し、そして部屋から姿を消した。

知ってる パート1

私の目の前に、信じられない光景が広がっている。巨人に、いろいろな人が食べられてる。顔は見えないけど、とっても恐ろしい。……いや、実際、なぜか恐怖は感じていなかった。

私は知ってる。

このままだと、私以外の全員が食べられちゃう。でも、私は何もしようとしなかった。気づくと、轟音が後ろから近づいてきた。戦車みたいな、軍隊の車。その車は、巨人に大砲を向けて、撃った。


そこで、目が覚めた。私、梨乃(りの)は、地元の学校に通う女子中学生。
中学に入れば毎日が楽しいなんて思っていた日々はとっくのとうに過ぎた。今日はなにか起きないかな……

この一向に成長しないからだも、いつも通り。……そして、昼休み一人になるのも。

「はぁ……」

お母さんが作ってくれたお弁当を黙々と食べる。ごはん、ひじき、にんじん。周りではみんな楽しそうに話しているんだろうけど、私にとっては全部雑音にすぎない。食事を進めることだけが、昼休みにやることの全て。それよりも、いつもならお弁当を半分くらい食べれば満たされるおなかが、全く満たされないことが気になる。食べても食べても、満腹感が得られるどころか、空腹感が強くなっていく。

「おなか……すいた」

会話が終わったのか人が歩いてきた。女の子で、私よりも、とっても肉がついてる。胸や、尻や、脚。私にない何か。飢えを満たしてくれる何か。

《グゥゥーッ》

私のおなかが、まるでその子を求める野獣のように鳴いた。その音が大きかったのか、その子はこっちに意識を向けた。私は、無意識に立ち上がってシャツをたくしあげ、その手をさらけだされたお腹に引っ張りこんだ。すると、おへそが異常に広がって、手をグボッと飲み込んだ。

「えっ……」

その子は、驚きのあまり声も出ないみたい。でも、私にとっては、とても当然のことのように思えた。

《グチュチュ……》

私のおなかは、まるで生き物のように動き出し、腕をゴクンゴクンと飲み込んでいくと同時に前に突き出ていく。

「……っ!」

おなかの中で、手が動くと、これまで感じたことのない強い感覚、それも痛みというより快感が襲った。それは強烈過ぎて、最初は受け入れられなかった。

《グパッ……チュッ……》

腕がどんどん飲み込まれ、ついに肩に達してしまった。視界の下では、腕の形をした、いびつに膨れたおなかに、女の子がくっついている状態。その子はこっちを見て、懇願するように涙を流している。私に、とてつもない優越感が走る。今、この子の命は私にかかっているんだ。

「ふふ……あなたの体、頂戴❤」

おなかが、急激に膨らむ。いや、女の子が、飲み込まれていく。へその奥に、肩から、顔、もう片方の腕が飲み込まれ、腰から上が完全に入ってしまった。その時になってやっと逃げようとする意識が芽生えたらしく、おなかの中で暴れ、脚をジタバタさせる。おなかに伝わる振動、内臓が暴力的に殴られる感触が、さっきから続いている快感を増大させる。もっと、もっと食べたくなる。

《グチュルグチュル……》

体のバランスが崩れて、倒れてしまった。おへそに腰が引っかかって、入っていかない。力を入れると、おへそが信じられないほどに広がって、グニュグニュとうごめいて、脚をのみ込み始めた。飲み込まれるのにあがいている脚が、おへそを無理やり引っ張り広げたり、おなかに当たる。

「いやん……❤激しいんだから……」

膝まで入ると、おなかの中の動きが一層激しくなる。快感が激しすぎて、力が入れられなくなって、意識がもうろうとしてくる。

「はぁ……はぁ……❤あともうちょっと……!」

私の体より大きくなったおなかは、あの子の顔の形が出たり、暴れまわる手が皮にあたってバコッと飛び出たりしている。

でも、私は知ってる。

私は、何人でも飲み込める。いま出てる脚の下半分だって、ちょっと力を入れれば……

《ズルッ……プフ……》

脚も入ってしまい、おなかの中に巻き込まれていた空気が出てきた。

「うん……でも、本番はこれから……」
《グジュジュ……》

おなかが重くなって、人の形が出ていたのが、まんまるとなってきた。消化液が出てきたんだ。私はこれから、この子を吸収するんだ。

だんだん、おなかを蹴っていた力が弱くなっていく。それと一緒に、おなかから私の体に何かが染みこんでくる感じがし始める。その何かは、私の皮膚を下から押し広げるようにして、全身に広がっていく。

《ペキッ……ミチッ……グチュ……》

体のいたるところで、変な音がする。見てみると、その音のした所が、ムクッと膨らんだり、ニョキッと伸びている。何もなかった胸も、ギュッ、ギュギュッと盛り上がって、いつしか、縮んでいくおなかを追い越して大きくなっていき、メロンが入りそうなサイズまで膨れ上がっていく。

手足も、バラバラに大きくなっていくけど、私と、食べた子を足したほどの長さに成長していっているのがわかる。そして、おなかの方は、何もなかったかのようにすっきりするどころか、元々なかったくびれまでできてしまった。

「美味しかった……だけど……」

私は知ってる。まだまだ、私の体は求めている。

空腹感は全く消えてないし、むしろ強くなった気がする。まわりにいる人全員、おいしそうにみえてたまらないんだ。どうしてだろう、こんな感覚初めて。

「なあお前、床に座ってどうしたんだ?」

気づかないうちに、前に男子生徒が立っている。さっき倒れたままだった私が、通路に居座っていて邪魔なのだろう。

「ちょっとおなかがすいて、倒れちゃったの」
「……さっさと座ったらどうだ?それに、服も脱げてるし……」

でも、私にはそんなの関係ない。この男子も、私の食べ物。

「あ、このおっぱい、気になる?」

できたてほやほやのおっぱいを、持ち上げて見せつける。男子は、これにはかないっこない。

「そ、そうじゃなくて……」

そういう顔は、鼻の下が伸びている。狙い通りだ。そのまま、おっぱいの谷間に男子の顔を突っ込んだ。

「じゃ、あなたも私のおっぱいにしてあげるね❤」
「っ!!!!」

声にならない叫びを上げる男子の顔は、ズブリ、ズブリと谷間の奥底へ引きずられ始めた。それと同時に、胸の間がものすごく熱くなっていく。

「んっ……あっつい……」

今度は、私が言ったとおり、胸に直接養分が行ってるみたいで、おっぱいだけがムクムクと大きくなっていく。でも、大きくなるだけじゃなくて、なぜか自分で揺れ始めた。

「あんっ、きっと、あなたの、んあっ、え、エネルギーが胸に行ってるせいねっ」

おっぱいは、前にバイン!横にボワン!と揺れるというより暴れている。

「は、激しすぎっ……!」

男の子の体はというと、ぴくりとも動いてない。胸からの力で、揺さぶられてるだけだ。スイカ二個分のおっぱいになっても、まだ脚は吸収されてなかった。おっぱいは、バルンッ!ボワン!と飛び跳ね、私も体勢を保つのが大変なくらい活発に動いた。

「まだ入ってくるの?やだぁ、これ以上大きくしないでぇ❤」

飲み込んでるのは私だし、バランスボールくらいになったおっぱいが、ここで止まるのも不満があった。私は、今この男の子を食べてることを楽しみたかったのだった。その間にも、おっぱいの狭間にどんどん埋もれていく男の子の脚。ついに、かかとがスポッと谷間の中に消え、男の子は完全に私の一部になった。その瞬間、胸の動きも止まった。

「ごちそうさま❤あとは……」

「うわ、なんだこのおっぱい」
「こんな人、うちのクラスにいたっけ!?」

私の美貌に引きつけられてか、クラスのみんなが集まってくる。そして、私が食べやすい距離まで、近寄ってきた。

感染エボリューション 最終話

「こ、これが……」

唖然として立ち尽くす美優。声はしたものの、人の体の色をしているだけで、床にぶにゅっと潰れている巨大な肌色の塊には、それが祐希の妹であるどころか、人間であると判別できるものは何一つ無い。

「え、お客さん……?」

美優の声に気づいたのか、肉塊から声がしてきた。

「あぁ、そうだ……お前をアイツのウィルスから助けてやれるかもしれない、だから連れてきたんだが……」
「出てって!苦しいのは、私だけでいいんだから!」
「佑果……」
「それに、おばあちゃんは何も悪くない!だって……んっ!!」

肌色の塊から、ドクンッという鼓動が聞こえたかと思うと、ググッと一回り大きくなった。

「佑果、落ち着いてくれ!そうしないとまた大きく……」
「ご、ごめん……」

美優には、佑果をこのままにしておけば、いつかは部屋いっぱいになって、装甲車の中で大きくなった時のように、潰されてしまうのが目に見えて分かった。それでなくても、人の形を保てず、動けない佑果を、何とか助けたいという気持ちが芽生えた。その美優の頭の中に、声が響いた。

(この個体は治療可能。許可を)
「うん……佑果ちゃん、私はあなたを治してあげられる」
「本当か!!」

祐希は美優の肩をガシっとつかんだ。

「痛っ!ちょ、力強すぎ……!」
「す、すまない。それで、本当なのか?」
「うん。佑果ちゃん、あなたはなぜか体を治したくないみたいだけど……治させて」

佑果の方から声は聞こえてこない。美優は佑果が渋々同意したと見て、頭の中に答えた。

「いいよ。治療して」
(承知。まず接触を。リプログラミングが必要)
「わかった」

美優は、覚悟を決めて一歩一歩佑果に近づいていく。

「佑果ちゃん、行くよ」

そして、脂肪の山に手を触れた。すると、手が佑果の肌に融合した。

「んんっ……なにか、出て行く……」
(リプログラミング、開始)

佑果の体がビクンビクンと跳ね、表面がグニグニと動き始めた。

「おお……」

祐希は、美優の後ろで感嘆の声を上げる。しかし、その時だった。

(完了……。かかったな、マスターさん)
「えっ?」
ドクンッ!!

佑果の体が大きく脈動するのと同時に、美優の体にもとてつもなく大きな衝撃が走った。

「きゃああっ!!」
「美優!?」

その途端、佑果とつながっていた腕から、何かが大量に美優の中に流れこみ、美優の体を内側から押し広げ始めた。

(ふふふ、これこそ我々が求めていた進化、エボリューション。他の病原体の知識、能力も取り込んだ我々は、宿主の指図は完全に無視できる)
「や、やめて!!」

全身の骨がバキバキと言いながら伸長し、服が上へ下へと引っ張られ、ヘソが見えたかと思うと、ウエストが上下に伸びてくびれ、中心にはスッと線が入る。大きくなる骨盤はズボンを横に引きちぎり、出てきた尻は暴力的に膨らみ始めた。1秒もたたないうちに、美優は平均的な成人女性と変わらない体格になってしまったが、佑果からの吸収は速度を上げる一方だ。

(佑果、だったか。この子の治療はしてやるさ。というより、この子の中のウィルスを取り込み、お前の体を元に戻せないほど変形させ、最終的には精神を乗っ取るのだ)
「……!!」

ここまでまな板に等しかった胸にプクッと丘ができ、急激に膨れ上がって、乳房が形成される。それは一瞬のうちにリンゴサイズからメロンサイズになり、ムクリ、ムクリと2倍、3倍と体積を増やす。そしてあっと言う間に美優の体型のバランスを崩し、アドバルーンほどになってもまだ膨張を止めなかった。逆に佑果は、人の形に押し込められるように縮んでいく。

「だ、だめ……」

美優は暴走したウィルスの前に、為す術もなく膨らんでいくしかない。その時、部屋の扉に二人の女性が現れた。五本木と、捕らえられた伍樹だった。

「そこまでよ!あなたのボーイフレンドを傷つけたくなければ観念して実験台に……佑果ちゃん!?」
「美優ちゃん!?」

五本木は完全に元に戻ったのか、華奢な女子小学生の姿になっている佑果に、伍樹は吸収が終わってもなお大きくなる美優にそれぞれ駆け寄った。

「ねえ、佑果ちゃんなの!?……生きてたなんて……」
「おばあ……ちゃん……うん、ごめんね、今まであえなくて」

抱きしめ合う佑果と五本木だったが、祐希が無理やり引き離した。

「佑果から離れろ!このイカレ科学者!佑果はお前から守るために今まで俺が隠してたんだよ!」
「お兄ちゃん!違うの!おばあちゃんは私を治そうとして……!」
「そう、私は佑果ちゃんを……この子が、治したのね、今すぐ抗体をあげるから」
「この大嘘つきが!何が、佑果を治すだ、あんな実験に付きあわせて……」

祐希は二人の話に納得がいかず、五本木に殴りかかろうとする、が。

「た、助けて……!美優ちゃんが、美優ちゃんが!」

伍樹が三人に発した叫び声で、祐希も美優の危機に気づいた。美優は白目をむき、その胸は今もギュギュッ、ムギュッ!と膨らみ続けている。その大きさは部屋の半分を埋め尽くすほどで、あと数十秒すれば全て美優の乳房で埋まってしまうだろう。

「抗体じゃ……どうしようもないわね。このウィルス、いえ……今さら隠すこともないわ、ナノマシンは、究極の成長を遂げてしまったみたい。美優の精神も、もはや消えたも同然ね……」
「そ、そんな……美優ちゃん!」
「美優!しっかりしろっ!!」
「美優お姉ちゃん!」
「ダメよ、人間の精神が打ち勝てるものじゃない……」

だが、美優の目がぴくっと動いた。それを見て、伍樹が渾身の力で叫んだ。

「美優ちゃん!!!君ならできるはずだ!!!ウィルスに勝つんだ!!」

その叫びに応えるように、美優は意識を取り戻した。

「い、伍樹くん……うん、私!ウィルスになんか!負けないっ!!」

美優の叫びと同時に、巨大な体が光り始めた。その光は、次第に強くなり、直視するのが難しいほどになっていく。

「嘘、こんなこと……精神によるリプログラミング(再構成)なんて……!」

強烈な光に全員が目を閉じてしまう。だが、数秒すると光は弱くなっていき、そこでやっと、美優の姿を確認できた。そして、それは元に戻った美優。目を閉じて、ペタンと床に座り込んでいる。

「み……美優ちゃん!!」

伍樹が抱きつくと、美優は目を開け、伍樹に微笑んだ。

「勝ったよ、私……」
「うん……美優ちゃんは、すごいよ」
「伍樹くん……好き……」

何気ない衝動で、美優は伍樹とくちびるを合わせた。伍樹はすこし驚きながらも、美優を抱きしめた。

「外見は、レズだよなぁ……あいたっ!」

祐希に佑果のげんこつがお見舞いされる。

「お兄ちゃんは静かに!」
「いったたた……はいはい……」

そして、兄妹同士で微笑みあった。実験の失敗以来、一度も互いの顔を見ることが出来なかった兄妹は、幸せだった。

結局のところ、佑果には持病があり、脂肪があまり付かず体温の保持に支障をきたすほどだった。若返り薬の開発に成功していた五本木は脂肪を付けるウィルスを作り、佑果に使うことで、持病の影響を和らげようとしたのだ。それが失敗した上、研究所員の手違いで祐希が開発中のウィルスの実験台にされてしまった。失敗を認めようとしない頑固な性格のため、全て意図的に行ったと演じたところ、祐希も佑果も姿をくらまし、傷心のうちに人間の尊厳を顧みず人体実験を行うようになってしまった、というのが五本木の弁明だった。

「本当よ。その証拠に、ほら」

五本木は、確かにガリガリに痩せている佑果に、躊躇もせず薬を飲み込ませた。今回は正しく効果が出たようで、手足や顔にふっくらと脂肪が付き、健康的な体型になったが、美優は、自分が失敗することなど有り得ないというわけのわからない自信を持っているこの女性に、恐怖を感じざるを得なかった。

そして、一ヶ月後。
美優が再構成したナノマシンを下水に流した結果が、顕著になっていた。宿主の意思に完全に従う体型変化ナノマシンを手にした人々は、自分の理想の体を手に入れ、性別や年齢を越えた変身も、日常茶飯事だった。

「おっはよー」
「おはよ、美優」

結子と美優は、昔の体型のまま暮らしている。

「伍樹くんも」
「おはよう、美優ちゃん」
「お、美優じゃん、おはよう」

伍樹は元の男の姿に戻った、が、親友の望は、女子の姿である「のぞみ」が気に入ったようで、伍樹と友達としての距離は保ちつつ、付き合いを続けていた。

「おーい、着席しろー……着席して、お願い!」

教諭の龍崎はというと、幼女――つまり小学生くらいの女子のことだが――としての生活を楽しんでいるようだった。しかしクラスからの冷たい視線は、一部が妙な興奮の視線に変わっただけだった。

「美優、今日はロングヘアにしてるんだね」
「えへへ、あとでおっぱいも大きくしちゃおっかなー」
「本当、美優ったら見えっ張りなんだから」
「ふふん、でも、中の子が増えたい増えたいってうるさいの。だから……」

美優の胸が膨らみ、セーラー服がギチッと悲鳴を上げた。

「ちょっとだけ、また成長しちゃおうかな!」

『洞窟の物の怪』(若返り急成長画像掲示板より)

ここは、ある廃坑の入り口。そこに、二人の大柄なゴロツキが見張っていた。

「こう何もねえとつまんねぇなあ…」
「まあそう言うなって…」

二人はぼやいていた。だが、急に声がかかった。

「おじちゃんたち、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
「あぁ?」

そこには、革の服を着た小さな少女が涙目な顔をゴロツキに向けて立っていた。栗色のおかっぱ頭で、弱々しく見える少女だった。

「どうした、嬢ちゃん、何か用か?」
「私、道に、迷っちゃって…」

二人は互いに向き合い、相談する。

「おい、どうする?」
「ボスへの貢物にしようぜ、まだ体は小さいが一級品だ、見てみろよ。ん?」
「なんだ?あれ、アイツどこに行きやがった!?」

少女の姿は消えていた。

「逃げられたかな…?」

その次の瞬間、一人の首が何かにガシッと掴まれる。

「逃げたと思った?違うよ。それに、逃げられないのはアンタだよ!」

先ほどの少女が、首に後ろから腕を巻き付け、動きを封じていた。

「はぁっ!?おい、お前一人でなにができるってんだ?」
「確かにボク一人じゃ無理だけど…今だよ!エリーナ!」

すると、急に電撃がゴロツキに向かって放れた。当たる寸前に少女はもう一人に向かって飛びのいた。

「うぎゃああああっ!」
「おい、お前!ぐはっ!」

一人が倒れると、空中から繰り出された少女の拳が急所に命中して、他の一人もその場に倒れた。

「ラッキーだったね!ボクたちが人殺しが嫌いな賞金狩りで!」
「こら、そんなにはしゃがないの!マリー!」

先ほど電撃が放たれた方から、青いローブを着た女性が近寄ってきた。フードを外した頭からはポニーテールに纏めた長い金髪が伸び、その上からでも分かる大きな胸を携えている、大柄な女性。

「はーい、エリーナ」
「いい?この洞窟には人さらいが一杯いて、これまでの敵とは比較にならないほど強いモンスターも飼っているかもしれないんだから」
「山賊やモンスターなんて、ボク達にかかればイチコロだよ!」
「その油断がいけないの。こいつら、なにか裏があるわ。村や街の人から聞いた犯行が、計画的すぎるもの…」
「そーお?とりあえず、中に入ろうよ!ここで喋ってたら日が暮れちゃうよ」
「そうね」

そして、エリーナとマリーは、洞窟の中に入っていった。

——————–

エリーナの予想に反して、掃討は順調に進んでいった。そして、ついに最後の部屋に辿り着いた。

「あなたが、ここのボスね」

そこにあった豪華に装飾された大きな椅子に座っていたのは、これまでの野蛮で凶暴な男、ではなかった。エリーナと同じように、黒いローブを着た、一人の男性。

「その通り、よくぞ、ここまで参られた。エリーナ殿、そして、マリー。お噂はかねがねお聞きしておりましたぞ」
「…?なぜ、ボクたちのことを?エリーナ、心当たりある?」
「…あるわ…この国で最も恐れられているネクロマンサー、リーフロット…」
「またまた正解。まあ、我輩の趣味は少し変わりましてな。今かお見せする生物を創りだしたのもそのため。いでよ、マナ・サッカー!」

リーフロットが叫ぶと、部屋の中に巨大な肉塊のようなものが姿を現した。あらぬ所にギョロッとした目があり、体から伸びる管のような口があらゆる所に付いている。

「マナ・サッカー?」
「安直な名前でしょう?魔力を吸い出すから、マナ(魔法)・サッカー(吸引するもの)。さあ、君達も我が下僕の餌食になるのだ…」

怪物がのそのそと動き始めた。

「エリーナ、どうする?」
「逃げるわよ!テレポート!」

そして、二人の姿はふっと消えた。だが、エリーナだけは怪物の目の前にテレポートしてしまった。

「おっと、残念、残念。この空間では、全てが我輩の思い通り。テレポートの目標地点もずらしてやったぞ」
「な、なんてこと…んっ!」

肉塊から触手が伸び、エリーナの体に触れ、巻き付いていく。触手にローブが抑えられたせいで、大きな胸が強調される。

「こんなやつ、私の魔法で!ファイアバースト…あ、あれ…魔力が…」
「はは、無駄、無駄」

エリーナが呪文を唱えても、何も起きる気配がない。その魔力は、触手を通じて魔物に吸われていたのだ。ついに、触手に体が持ち上げられ、肉塊の口がエリーナの口に合わさった。

「むむぅ!」
「さあ、この女の魔法を吸い尽くせ!」
「(いやぁっ!)」

魔物の口に、エリーナから何かが出て行っていた。

「(やめて、私から魔法を奪わないで…)」

それにともなって、なんとローブを押し上げていた胸が縮み始めた。

「(いや、私の体小さくなってる!)」

長く伸びた髪も短くなり、身長も縮んで、ローブの中に体が埋もれ始めた。

「(子供に戻ってる!?)」

5年前の姿、10年前の姿、15年前、とどんどん遡っていく。

「ふむ…ここ辺りで止めにしますか」

リーフロットの命令にしたがって、肉塊は口を離した。だが、その時にはもうエリーナの体は3歳児程度に若返り、触手が離れても、ローブの中でじたばたともがいていた。

「私の服、大きくて動けない!」
「ふふ…おや、エリーナさんのお仲間が、助太刀してくれるそうだぞ?」
「マリーが?ダメ!」

マリーは洞窟の入り口に飛ばされ、エリーナを助けに最深部まで走ってきたのだった。

「エリーナ、今助けるからね!」

そして、魔物の方にに刃物を向け、飛びかかる…が、ヒット直前に触手にガシッと体を掴まれてしまった。

「うぐっ…離せ!離せったら!」
「そうだな、我が下僕に魔力が過度にたまっているゆえ、君にそれを分けてやる。その後なら」

そう言う間にも、魔物の口がマリーの口に合わさった。

「むうっ!むうっ!」
「では、注入開始…」
「(ボクの中に、何か入ってきてる!!?)」

そして、エリーナの時とは逆に、マリーの体が膨らみ始めた。

「(ボクの体、あついよぉ…)」

革の服の中で、平だった胸が盛り上がり始めた。すぐに乳房となった胸は服に圧迫され、形を歪ませた。

「(服に潰されちゃうぅ…!)」

手足も何かを詰め込まれるかのように伸び、服の中からニョキニョキと出てくる。

「(お…お尻が…ぁ!)」

ズボンの中でもギュウギュウと脂肪が詰まり、膨張する尻。結び目から、肉がはみ出る。

「(やめてぇぇっ!)」

栗色の髪がざわざわと伸びて、腰に届いた。

「(ああああっ!)」

革の服の縫い目がバスッと破れ、メロンサイズの乳房がブルンッと飛び出た。

「ふむ、中々のべっぴんだな…あの無鉄砲でやんちゃな子が、こんな成長の仕方をするとはね。そろそろ、やめにするか」

肉塊の口が離れると共に、魔物は姿を消した。そこには、体の大きさが逆転したエリーナとマリーが残された。二人とも服のサイズが全くあっておらず、戦うことも出来ずに、恥ずかしさに顔を真赤にしながら、涙目になっている。マリーの方も今回は流石に演技ではないようだ。

「私達を、どうしようっていうの?奴隷にでもするの?」
「ボク、奴隷はやだよぅ!」
「いや、これまでさらった女達と同様、記憶を改ざんして村に送り返すだけゆえ、安心しろ。二人は母娘として生きるのだ。もちろん、マリーが母親、エリーナが娘だ」
「そんな、やめて!」
「無駄口を叩くな。村で平和な生活をおくるんだな」

リーフロットの指から魔法の光が飛び出し、二人に当たった。

「きゃああああっ!」
「うわあああっ!」

——————–

その次の日、村に二人の女が現れた。一人はつぎはぎの革の服を着た金髪の少女、もう一人はローブを着た栗色の髪の女性だった。

「よくいらっしゃった。ここあたりでは、人さらいが出るから、ここまで無事で来ることができたアンタ達はラッキーだったな」

村の村長が出迎えた。すると、ローブの女性のほうが言った。

「そうですね…それより、私達、住む家がなくて…ここに少しの間泊めて頂けませんか?踊り子でもなんでもしますので…」
「すまんな、踊り子は一杯いるんだ。なぜか女子供がうちの村にはよく来るんでな。どうやら、アンタは良い物持ってるみたいだが…」

村長はローブを大きく押し上げる二つの膨らみを見て言った。

「とりあえず一晩泊まって、隣の村まで行ってくれ。護衛を出すから。あ、そうだ。名前を聞こうか」
「私がマリー、この子がエリーナです…ほら、エリーナ、ご挨拶を」

金髪の少女は、ニコニコしながらいった。

「村長さん、よろしくお願いします!」

こうして、2人の賞金稼ぎが存在を消したのだった。

環境呼応症候群 速度の子 その後

気まずい。なぜか非常に空気が重い。高校の修学旅行の帰り、広島始発ののぞみ号車内で、友達がいない僕は、ある知らない女の子と隣に座っていた。いつもは周りの女の子とわいわいしゃべってるのに、低体温症で毛布を膝にかけた僕が隣りに座ったせいかだんまりしている小さい女の子。速見(はやみ)さん、だったかな。

窓側に座っている速見さんはむすっとした顔をしながら外をじっと見ている……とおもいきや、こちらのこともチラチラ見ている。なにか話をすれば、東京までの3時間この空気のまま行くこともなくなるんだろうか?よし!

「あ、あの……」
「なに……?」

怖っ!?速見さんは鬼の形相を浮かべている。小学生くらい小さく幼い体から、ものすごい強さの負のオーラを感じる。

「な、なんでも……」
「はぁ……ねぇ、これから何が起こってもびっくりしないでよね?って言ってもムリだろうけど」
「え?」
「加奈子達と席を離してもらったのにも理由があるんだから」

加奈子……っていうのは、いつも帰る時に一緒にいるあの子のことかな?速見さんはというと体が小さくて目立ってて、クラスで知らない人は誰もいないけど……

『17:04発、のぞみ138号東京行きです。途中、岡山、新神戸、新大阪、京都、名古屋、新横浜、品川に停車します。間もなく発車いたします』

車内放送が流れると、速見さんは深呼吸をした。

「ふぅ……あと1分くらいかな」
「速見さん、新幹線が怖いの?」
「んなわけ……!……でもある意味怖い……かな」

速見さんの言葉の意味がはっきりしない。ある意味怖いって?いつもすごく元気な子が、かなり不安そうな顔を見せると、それを見ているこっちまで不安になってくる。と、外から発車ベルが聞こえてきて、程なくしてドアが閉まり、電車が動き始めた。といっても、最初はのろのろとホームを出て、あまり速度は上がらない。

「も、もう……早く速くなりなさいよ」
「そんなこと言ってもどうしようもないよ。……?」

速見さんを見たとき、とても強い違和感を覚えた。何かがおかしい。速見さんが近めに見える。と、電車がホームから完全に出たのか、加速が強くなった。

「来た……わね……!服がきつく……」

服がきつく?どういうことなんだろう、と思っていると、さっきの違和感がさらに大きくなってきた。というより、速見さんの体が、大きくなっている。

「えっ!?」

思わず声を上げてしまうと、速見さんに口をふさがれた。その手は最初僕の口を押さえきれてなかったけど、だんだん長く、それでいて細く、手の甲も指も大きくなって、そのうち完全に覆われてしまった。その間にも、速見さんが着ていた学生服は、パンパンになって持ち上がり、ヘソが見えるようになっていた。背丈は、中学生位になったと思ったら、いつの間にか僕を抜かしている。

「く、くるし……」

速見さんの声、いつもと全然違う。大人のような深い響きが感じられる。ど、どういうことなんだ!?僕の目の前で、速見さんが大人になろうとしているのか!?胸もペッタンコだったのに、今はDカップくらいなんだろうか、かなり大きくなっていて、それが学生服の中で押しつぶされて、お饅頭のようになっている。お饅頭は、どんどん横に縦にと大きくなり、必死に抑えている服からは、ギチッギチッと破れる音がし始め、今にも弾けそうなボタンと、無理矢理こじ開けられた真ん中の部分から、ムチッとした肌色の膨らみと谷間が露出されている。

「ん……んんぅっ!!」

速見さんが力を解放するかのように小さく叫ぶと、ついにボタンがはじけ飛び、バインッ!!と2つの膨らみが飛び出してきた。

「ふぅ……ふぅ……死ぬかと……思った……」

その一言ごとに、ムクッ、ムクッと大きくなっていくように見える……おっぱい。速見さんの胸に、タプンタプンとゆれるおっぱいがついている!?これまで、いや、数十秒前までは考えられないことだった。僕の隣には小学生くらいの小さい速見さんが座っていたはずなのに、今そこにいるのは、メロンサイズになってもまだ成長を続ける、信じられないほど大きな胸を持った、美しさと可愛さが混じりあったような僕と同じかそれ以上の年代の女の人がいる。まるで、グラビア雑誌からおっぱい特盛りで飛び出してきたかのような。

「ま、まだ……速くなるの……?」

確かに新幹線は加速をやめていなかったし、記憶が正しければ今の1.5倍くらいには速く走るはずだ。でも、それとこれとは何の関係があるんだろう?といって、口をふさがれているままなのできくこともできない。速見さんの手は、僕の手より大きくなっていて、僕の力では剥がせそうにもない。身長も今は180㌢はあるんじゃないだろうか?学生服は完全にサイズが合わず、スカートからはムチッとした太ももが見える。しかも、僕の足にモロにあたって、包み込むような弾力が感じられる。それに、その弾力はどんどん強くなっている。

「おっぱい……大きすぎるよぉ……」

もう、ネット上でも見たことがないような大きさになっているおっぱい。赤ちゃんが2人くらい入っててもおかしくないような2つの球は、張りを失うこと無く、それでいてかなり柔らかい。僕の腕にムニムニと押し付けられていて、その成長する感覚がじかに伝わってきている。速見さんの体温と鼓動が、胸越しに伝わってきて、鼓動ごとに、ムギュ、ムギュと押し付けられる力が強くなっているけれど、同時に、太ももと同じように包み込まれるような……そう、気持ちよさを感じるのだ。僕のアソコが、固く、ズボンを持ち上げている感触が伝わってきた。

「ちょ、ちょっと……何、勃ててるのよ」
「むぐぐ」

今や僕より頭ひとつくらい上にある速見さんの顔。かなり恥ずかしそうだ。そりゃ、僕という男子生徒の目の前でバランスボール並みのおっぱいを晒していれば、恥ずかしくはなるだろうし、学生服も、ほぼただの布切れと化している。その上で太ももに僕のアソコの感覚が伝わってきては、もうどうしようもないほど恥ずかしいのだろう。仕方ないけど……

「えっ……この毛布……」

僕にできること、それはほぼ裸体の速見さんに毛布をかけて、おっぱいを隠すことくらいだった。おっぱいのプルプルとした揺れは、毛布でも抑えきれていないようだけど。

「もう、速見さんの体温のお陰で僕の体が冷えることもなさそうだし……」
「むむっ」

速見さんが素っ頓狂な声を出して、巨大な胸が僕の体にあたっていることを手で確認した。成長する前の速見さんからは考えられないほど落ち着いた声だったし、大きな手だった。

「まぁ、いいわ。ありがとう」
「どういたしまして」
「私、『メタモルフォーゼ症候群』なの」
「え?」

『メタモルフォーゼ症候群』。聞いたことがないなぁ。

「聞いたことがないっていう顔ね」
「うっ」
「図星か。まぁいいわ、私は速度が上がると体がこんな風に大きくなっちゃうの。逆に、小学生の時それが発症して以来、自然な成長は完全に止まっちゃったの」

だから、普通は小学生サイズなのか。確かに、小さすぎるとは思っていたけど。

「クラスのみんなには内緒にしてたんだけど……バレたのがあなたでよかった」

速見さんは初めて微笑んだ。そう言われるとこちらも嬉しくなる。

「でも、こんなに大きなおっぱい、見たことないでしょ?」
「え、うん……」
「中学生のときも新幹線で修学旅行に行ったんだけど、その時は先生に隣りに座ってもらったのね。そしたら……倒れちゃった。でも、あなたは大丈夫みたいだから……」

正直言うと、体に伝わってくる訳の分からない重さと快感でどうにかなりそうだったけど、なんとか理性を保っていたのだった。次の岡山で速見さんは1回元に戻った。風船から空気が抜けていくように、ゆっくりと戻っていくのを見るのは、なんというか安心感があった。しかし、発車するとまた成長をはじめて、今度は僕も耐え切れずに理性をかなぐり捨て、周りからは見えないように巨大な胸をもみしだいたのだった。速見さんはというと、すこし喘ぎながら何故か楽しんでいるようだった。

あっと言う間に東京に着き、僕はおっぱいを名残惜しみながら、荷物をまとめて席を立とうとした。すると、元に戻って、僕が貸した学生服の上着を何とか羽織った速見さんからトントンと肩を叩かれた。

「ねぇねぇ、実はハワイ旅行当てちゃって……一緒に、行く?」

速見さんと乗る飛行機が楽しみだ。

目 2話

「俺、女になってる」
「はぁ!?エイは男のはずでしょ!?何馬鹿なこと言って……よく見たら、顔つきも全然違うし、小学生みたいに小さい!さては別人!?」
「なんでそうなるんだよ!図書室にいたのは、俺と美代だけだっただろ!?」
「そ、そうだよね……でも信じられるわけ無いでしょ。ムサイ男が撫でたくなるような可愛い女の子に一瞬で変わるなんて」
「ムサイ言うな!」

図書室の司書がいれば、確実に怒鳴られるような大きな声で叫び合う二人。らちが明かないようにも見えたが、美代は諦めたかのようにため息をついた。

「はぁ……分かった。あんたは英二で、女になったと。それで、そうなる前に何かあったんでしょ?」
「あ、あぁ……それはだな……」

「あんたのおちんちんが爆発したって!あっはは!あんな小さいのが!」
「何で俺のアソコのサイズを知ってるんだよ!」
「いいじゃんそんなの。ねえねえ、お姉さんに見せてみい、爆発したアソコを」

英二はこれまで見たこともないわけでもない、美代の変態親父のようなにやけ顔に戦慄を覚えた。

「や、やめろ……」
「痛くないから!」
「うわぁ!」

美代の迫り来る魔の手から逃げようと、英二は走りだそうとしたが、

「……へぶっ!」
「だ、大丈夫!?」

あまりにも小さくなった体に服のサイズが全くあわず、それにつまづいて転んでしまった。

「……う……うう……」
「英二?……!」

かわいらしくなった顔に、涙が浮かんでいた。美代は何かに胸を貫かれたような表情を浮かべ、ぽかーんと口を開けてしまった。

「い、痛い……帰る……」
「ご、ごめん英二……おぶって帰ってあげるから」
「おぶって……?そっか、俺、そんなに小さくなったのか」

少ししゃくりあげながら、美代の背中に乗って家まで帰ったのだった。

「……というわけで、この可愛くてモフモフしたくなるような可愛い子が英二なんです……」
「モフモフ!?可愛い2回言った!?」
「信じられないわ……このちっちゃくて守りたくなるような女の子があのどら息子だなんて……」
「母さん……」

英二の自宅。当の本人を置いてきぼりにして、美代と英二の母親の佳代子(かよこ)の話は続いていた。大きく変貌した英二の説得だけでは、本人と認められなかったのだった。

「何か、英二を英二だって認められるものって無いんですか……」
「うーん、そんなこと言われてもねえ……」
「がふっ……こんなときにゲップが……」

その一言に、佳代子が驚いて英二の方を見た。

「がふっ……?まさか、あなた英二なの!?」
「そこ!?」
「そんなゲップの仕方、英二しかしないでしょ?」
「あ、確かに……よかったね、英二」

複雑な表情になる英二。

「もっと、家族の思い出とかで判別するとか、そっちのほうが……」
「あなたにはお似合いだと思うけど。美代ちゃん、息子がお世話になって、ありがとう。今度何か持って行くから」
「いえいえ、そんなお気遣いなさらず……私は帰りますから……英二、また明日ね」
「お、おう。ありがとな」
「どういたしまして。じゃあ」

美代は足早に出て行ってしまった。少しの沈黙の後、佳代子に言われて英二は風呂に向かった。

「この服で学校行けって言ってもなあ……でかすぎるって。いや、俺が小さいのか……」

洗濯カゴに何とか自分の服を入れ、風呂場に入ると、そのいたいけな姿が鏡に写ったのが、目に止まった。

「本当に、ちっさいな……」

腕や足は元の自分が力を掛ければ簡単に折れてしまいそうだ。おなかはプニプニとして、凹凸には乏しい。胸などは膨らみかけてすらいない。

「どうせ女になるならもっとスタイルいい方がよかった……へくちっ!あー、とっととシャワー浴びようか……」

腰掛けをシャワーの前において、キュッと蛇口をひねると、冷たい水が英二の体に襲いかかった。

「ひゃうう!!……ってなんだ今の声……」

自分の信じられないほど高い声にうろたえる英二。すぐに水は暖まったが、その刺激はしばらくのあいだジンジンと続いていたのだった。

「(俺、これからどうなるんだ……?)」

その夜だった。夢の中、英二は金色の砂の大地の中にいた。

「(ここは、エジプト……?)」

目の前にそびえ立つ、白く巨大な四角錐。そのふもとに、豪華な金色の宮殿が建っている。中には、これまた豪華絢爛な衣装を身にまとった神官が行き交う。

「(すげぇ……こんな光景、テレビでも見たことがないな)」

宮殿の内部に視点が動く。中心の大きな部屋には玉座が据えられ、王が座っている……が、英二が最も威圧感を感じたのはその隣に控えている一人の神官だ。その目は赤く光り、顔立ちは「彼女」の狡猾さ、知識がどれほどのものであるか物語っていた。そう、彼女。キッと釣り目の顔だけではなく、大きく盛り上がっている胸でも、神官が女であることが分かる。

「(でっけぇ……)」

英二は幾重にも重ねられた服の上からでも分かるその胸の虜になっていた。だが、彼女の目がギロッと英二の方に向けられると、英二は向けられた目から視線をそらすことができなくなった。

「(なんだ、この感覚……あいつが、こっちに……)」

彼女の「目」が、英二に急接近してくる。そして、またあの声が聞こえてくる。今度は、英二でも意味がわかった。日本語でもないその言葉の意味が。

《汝……我の……器に……》
「(う、う……)」

「うわあああっ!!!」

目が覚めた英二だったが、心臓がバクバク言って止まらず、熱い血液が体中を駆け巡る感覚に襲われる。

「あ、あつい……!!あついい!!」

なんとか熱を逃がそうと、布団をはがし、胸をはだける。そこで英二が見たものは、風呂で見たものよりかなり大きくなった胸の突起の周りが、グググッと盛り上がってくるところだった。

「な、なんだよこれ!!うぐああ!!」

背骨がベキベキ音を立てて伸び、腹がギュッと絞られてくびれができる。手を見ると、幼く小さいそれが、長く細く成長していく。箪笥の奥から取り出した、子供の時の寝間着が、腕が太くなっていくのか、ギチギチと音をたてる。

「む、むねが……あつ……」

ある程度膨らんだ胸が、押し込まれるように縮む。英二は、その胸がゴゴゴゴとエネルギーを貯めこんで、とんでもない量の熱を発しているのを感じた。

「あついいいいいい!!!」

そして、胸が爆発した。ムクッでもバインッでもなく、ドッカーンッ!!という言葉が似合っていた。Aカップだった胸が一瞬のうちにLカップまで育ったのだ。それと同時に、全身にムチッと肉がついたのか、寝間着が至るところでビリビリと破け、ほとんど全裸と化してしまった。

「ふ、ふぅ……終わっ……た……」

変身の激しい感覚に精神をすり減らした英二は、そのまま眠りの世界へと戻っていった。

環境呼応症候群 恐怖心の子

「いってきまーす!」

俺は、いつもの様に忘れ物率10%のカバンをひっさげ、家を出た。遅刻も日常茶飯事だが、今日は遅れることはないはずだ。あの子の体質に、魔が差ささなければ……いや……

「おはよ……おにいちゃん……」

後ろから聞こえてきた小さく弱々しい女の子の声。隣の家に住んでいる中学生の小和田 チカ(こわだ ちか)。幼い頃から遊んでやっていたら、いつの間にか俺にくっつきっぱなしになっていた。小柄なせいで、かなり怖がりで、人見知りも激しいこともあったのだろう。

「おっ。おはようチカ」
「えへ……」

この笑顔も、見ることができるのは俺だけなんだろうか。でも、その奥には不安も混じっている。俺はその理由を知っていた。それだけではない。制服がない中学校に通うチカのチェック柄のダッフルコートがつぎはぎだらけなことも、「それ」の証拠だ。

「えっと……今日も中学校まで一緒に……」
「一緒に行ってやるよ」
「ひっ……」

ちょっと言葉を遮るだけでも驚く。どこかの小動物かと思うが、その驚きだけでも、「その」症状が出る。ショートに切ってある黒い髪が、肩までスッと伸びるのだ。チカは気づいてないみたいだけど……でも、今日くらい、遊んでやってもいいかな?

10分と少し歩いていくと、他の中学生やら高校生やらと段々と合流し、人通りが多くなってきた。チカは俺にひっついて歩いている。ここらへんで、始めるとするか。

「なぁ、チカ……」
「えっ?」

チカが俺の方に意識を向けた瞬間、俺は大声を出した。

「わぁっ!」
「きゃぁっ!」

チカも大声を出して俺を突き飛ばすように逃げた。そして同時に、そのコートの胸の部分ががムクムクっと盛り上がってパンパンになり、足もニョキニョキと伸びた。

「おにいちゃんの……いじわる」

それで恥ずかしがるだけでほとんど怒らないのはチカの気の弱さからかもしれない。チカは、「メタモルフォーゼ症候群」を患っていた。何かに怖がると、体が成長して出る所が異常なまでに出る。今だって、あのコートを脱がせたら高校生でも大きい胸が出てくるだろう。それに、なぜか俺と一緒の時にしか症状が出ない。なぜ、俺なのか。まあいいや。

チカはその体のまま、また体をくっつけてきた。さっきよりもその力が強く、腕に柔らかい感触が伝わってきて、まだ落ち着かない息が近くに聞こえてくる。

「わざと驚かさないって……言ったのに」
「ごめんごめん。もう今日はしないからさ」
「今日は……って、むぅ……ひぃっ!?」

チカの体がまた大きくなるのを、自分の触感で感じた。コートがブチブチと破け始めた音も聞こえる。あのコート、破けるの何回目なんだろう……しかし、今度は俺は何もしてないぞ?

「どうしたんだ?」
「あ……あそこにネコの死体が……ある……!」

チカはどんどん大きくなっているみたいで、その息がゆっくりと耳元の高さを通り過ぎ、俺にがっしりと抱きつく腕が長くなり力も強くなっている。そして、コートの糸がほつれる音が止まらない。

「あれって、ただのぬいぐるみじゃないか……?」
「そ、そう?」
「確かめてきてやるから……」
「お願い、おにいちゃん……!」
「あの、放して……」
「それはいや……!」

困ったぞ。完全にパニック状態だ。チカの髪が俺の顔に触れ、サラサラとした感触が伝わってくる。

「じゃあ一緒にいくか?」
「ひっ!?……そんなの絶対いやぁ……!」

俺に選択肢が何一つない。今や俺より頭ひとつ身長が高く、無理矢理首を動かしてコートの方を見てみると、もうキッツキツのギチギチで、スイカサイズに膨れ上がった胸しか覆っていない。そしてそれも……

《ビリビリーーーッ!!》
「いやぁっ!!」

ドッバーンッ!!……これが一番正しい音の表現だと思う。胸の洪水が、俺の背中と腕に襲いかかったのだ。柔らかいってもんじゃない。もう包み込まれる感覚しか無い。しかも、チカはもっと強く俺を抱きしめてくる。その感覚は、強くなる一方だ。

「ち、チカ……?」
「お、おにいちゃんっ……チカ……」

ああ、これが来たか。チカの吐息は荒くなる一方で、体がかなり熱くなっている。こうなると止められない。

「カラダが……熱くって……!おっぱいじんじんする……!だから……」

俺の体がヒョイッと持ち上げられ、180度回転する。さっきまで135cmくらいしか身長のなかった子がすることではない。実際、今目の前にみえているのは一瞬巨人かと思えるほどの体躯で、俺の目の高さには、巨大な2つの柔丘の上にピンク色の突起がそれぞれ1つずつ立っている。

「チカのこと……責任取って……?」

責任ってなんだ。しかしそんなことを今のチカに問いただしても答えは得られないだろう。恐怖に染まりながらも上気しているチカの目は虚ろで、何かに取り憑かれているかのようだ。

「じゃ、じゃあ……」
「ひゃぅ!」

まずは目に見えているものからだろう。両手で、一瞬にして育ったチカの豊かな2つの丘を、ゆっくりと揉み、上下左右に動かす。しっとりとした触感とともに、まだ、まるで空気が送り込まれるように中から押し広げられ続けているそれが、俺の手を押し返すような力を感じた。

「き、きもちいい……!」
「あはぁ……あぁん……!」

中学生が出す声だろうか。でも、今のチカを中学生と言ったら誰も信じないだろう。俺はそこが通学路であるのにもかかわらず、チカの身体の感触に徐々に夢中になっていった。次にチカに抱きつくと、チカのすべすべとした背中の肌触りが感じられ、その美しくかたどられた曲線にそって動かすと、腰のくびれ、そしてプリッとしたお尻に辿り着いた。そして、顔はチカの胸の谷間に押し付けられ、ムニュッとした柔感が頭を覆い尽くし、むしばんでいく。

「む、むふふ……!」
「おにい……ちゃん……!もっと、もっと……!!」

ムチムチとしたチカの身体を愛で、その火照った身体の熱を全身で受け取りながら、自分のアソコが硬くなっていくのを感じる。チカもそれに気づいたのか、ズボンのジッパーを勝手に下げてくる。変身した後のチカは、性格が豹変するけど、ここまでは初めてかもしれない。

「ね、ねえ……パイズリ……してみる?」
「ふぇっ!?」

体を離すと、チカが路上に仰向けに寝そべり、誘ってくるような表情で、胸をムニュッと左右から潰してアピールしていた。パイズリなどどこで覚えたのか、だけど今は関係ない。周りの視線をすごく感じるが、今は関係なかった。

「ち、チカが言うなら……」

いや、望むところだった。俺は遠慮なく、もう特大スイカになったチカの果実の間に、突っ込んだ。もう、想像以上の快感だった。

「おにいちゃんの……硬くて……大きい……!」

これまで他のものを見たことがないんだなと思いつつ、チカに身を任せた。

「う、こ、これが……夢にまで見た……」
「あはぁん……はふぅ……」

見てない。断じて見てない。が、夢でだってここまでのものは手に入らないだろう。ここまで柔らかく、大きく、質量感のあるものがこの世にあるだろうか。

「そ、そろそろ……出ちまう……」
「えっ……もう……?」
「う、うっ……」

俺は、チカのきれいな顔めがけて、射ってしまった。

「ふわぁ……!」

そこで、冷静になった。周りの視線が、一気に頭の中にぐさっと刺さり、そして、俺達が邪魔で止まっていた自動車のボンネットが急に目に入り、驚いて飛び上がった。

『うわぁすごい……』『露出狂か……?』

意識が明晰になり、周りからの言葉も段々と耳に飛び込んでくるようになった。

「ご、ごめんチカ……!」

俺はすぐに、いつの間にか元に戻ったチカに謝ったが、返ってきたのは意外というかなんというか、ある意味場違いではない答えだった。

「いいよ、おにいちゃん……でも、責任取って、お嫁さんにしてね……?」
「は、はい……」

だから責任ってなんだ。と、満更でもない俺は思うのだった。

トキシフィケーション BE編

私の家に突然訪れた女性。唐突に尋ねられた。

「あなたが、私をグラマラスでボンキュッボンな身体にしてくれるお医者さん?」
「……ようこそ、我が手術室へ」

確かに、私は密かに身体を成長させる手立てがあると吹聴していたが、医者までとは言っていない。だが、まぁいいだろう。このうら若きお嬢さんは喜んで私の実験台、もとい患者になってくれるようだ。

「で、どういう手術をするの?シリコンを埋め込むの?それだけじゃないわよね?骨を移植したりとか……それに、よく考えてみたらすごく高いでしょ?」
「いいえ、非常に簡単な手術ですし、無償でやって差し上げますよ」
「ほんとう!?ラッキー!」

むしろ、こういう状況でないと、いくら金を払っても私の毒の被験体になる人間など一人も出てこないだろう。この頭の悪そうなティーンエージャーは奇跡のような存在だ。それに、手術が楽なのはこちらの方で、被験体には考えられないほどの痛みが走るはずである。まあ、私の知ったことではないが。

「あの、お名前は……」
「アリサでーす!」
「では、地下室の方へどうぞ」
「はーい」

ここまで何も疑わずに実験室に入った人物は弟を除けば誰もいない。服を脱いで手術台の上に横たわり、毒を注入するチューブがつながった鎖をかける時にも少し恥ずかしがったぐらいで、何の抵抗も示さなかった。

「んー、やっぱり私の身体って貧相ね」

背が低く寸胴で、尻はそれなりにあるが、驚くほど胸の膨らみが小さい。これで授乳の機能があると思えない。

「じっけ……手術を始める前に聞いておきますが、どこで私の事を聞いたんですか?」

こう聞いたのは、好奇心が少しと、私の噂の広がり方を確認するためだった。すでに噂が広まっている所で同じことを吹き込んだって、骨折り損だからな。

「私、これまで色々なサプリメントや運動を試してきたの。でも何の効果もなくて……それで学校の友達にあなたの事を聞いたの」
「なるほど……」

騙されやすいタイプなんだろうか、友達の話を真に受けて来たというわけだ。まあいい、余興はこれくらいにして、実験を始めるとしよう。

「それでは、始めます」

私は彼女に毒を送り込むスイッチに手を掛けた。

「ちょっと待って……それって」

私はアリサが何か言おうとするのを無視して、毒をスイッチをガチッと入れた。

《ゴボゴボゴボッ!!!》
「きゃあああっ!!!」

今回は実験的に100ml程度入れた所で止めてみることにした。アリサの痛覚は異物を感知して激しい刺激を脳に送っているようだ。彼女には済まないが、これは成長が終わるまで続く痛みだ。あっと言う間に100mlが入り終わったが、彼女は痛みに悶えているだけで、身体に変化は見られなかった。だが、私がスイッチを切った時だった。

《ボンッ!!!》
「うああああっ!!!!」

胸が急に隆起したのだ。平らな胸板に、スイカ大の球体が急に現れ、それに押しのけられた空気が私に吹き付けてくるのを感じるほどだった。それは、これまでの実験台と同じく、萎縮していく。そして、その分が他に行くように、手足が長く成長し、アリサは他の学生と変わらない体格になった。縮んだ胸はBカップといったところか。

「はぁ……これ、が……私!?やったぁ……」
「まだ終わってませんよ」
「え、いいです!これでお、終わりでいいです!!」
「あなたに決める権利はありませんよ」

再度スイッチに手をかけると、アリサの顔から血の気が引いた。

「や、やめて……」
「そうですね……いま緩やかな成長を見させていただいたので……」

スイッチの隣にある、「注入速度」と無駄に大きく書かれたつまみを、これまた派手に回した。もちろん「最大速度」だ。

「もっと、激しく……」
「いや、やだ……」
「成長してもらいます!!」

映画の悪役のように、パフォーマンスでもやるかのようにスイッチを入れた。

「ああああっ!!!!」

彼女は痛みで身体をこわばらせた。毒は容赦なく彼女の中に入っていき、侵された体細胞は一気に不安定になり、彼女の全身の皮膚がグニグニと波打った。死にはしないだろうかと我ながら不安になるほどだ。

《ビクンビクンッ!!》
「んあああっ!!」

乳首が異様に勃起し……というよりは他の部分と同じだろう、サイズが一定で無くなり、親指ほどに膨らんだり、逆に赤ん坊のそれと同じほどに縮んだりしている。Bカップに落ち着いていた胸のサイズも、左右バラバラに膨張収縮を繰り返している。

《ボワンッ!!》
「んぐぁぁああっっ!!!」

一瞬、彼女の体全体が爆発するように膨らんだが、いつもように体が抵抗しているのか、ギュギュギュッと痙攣しながら元に戻る。

「んんんんっっ!!!っ!!」

筋肉が不規則に痙攣し、手術台の上で彼女の体は暴れた。よく見ると、右腕が最初のサイズを下回って、小学生のようなサイズに落ち込んでいるのが分かる。逆に左腕はかなり大きくなって、大きく発達した筋肉で鎖を引っ張るせいで拘束具が悲鳴を上げている。

《ムクムク!ブワンッ!ミチミチッ!!》
「んはっ!!ふぁああっ!!」

アリサがエビ反りになったと思うと、その上で胸がブルンブルンと揺れながら大きくなっていく。そのまま左右が均等なまま成長していくとおもいきや左乳房が爆発的にバレーボールくらいに成長し、右乳房がコンマ数秒遅れてバスケットボールほどになった。それは彼女の心拍と連動してムクッ!ムクッ!とさらに大きくなろうとするが、さらに時間を開けて始まった収縮に追いつかず、10秒も経つとただの胸板に戻った。

《プルン!ボンッ!!》

もとの仰向けに戻ると、今度は臀部が左右別に張りを持ったまま急激に膨張し、彼女の体が持ち上がった。

《バキバキバキッ!!!》
「ああああっ!!」

それに合わせるかのように骨盤が大きく広がったのか、骨がきしむような音がして腰が横に張った。その幅は手術台からはみ出すほどになり、今さっき膨らんだ尻は引き伸ばされて厚さを失った。

《メキメキッ!ポキッ》
「くぅっ!あぅ!!」

骨盤から毒が骨伝いに伝わっていくように両足が伸びる。脂肪は発達しないのか、引き伸ばされてかなりガリガリな足の形が出来上がった。

《ググググッ……ムチィッ!!》

左足が震え始め、地響きのような音がして、その後すぐに骨が爆発したかのように脂肪が付いた。ほんの1秒で直径80cmほどになったそれは、太さが10cmくらいしかない右足に比べてかなり太い。

《ガクガクガクッ……ビチッ!!》

右足も左足に続き、太くなる。その中で何かが蠢いているように、足の形は一定にならず、加えてますます太く、長くなっていくように見える。目に見えてブクブクと膨れ上がるそれは、あまり成長していない上半身にかなり不釣り合いだ。と思っていると、

《ムギュゥウウッ!!ボワンッ!!》
「うわああッ!!はじけちゃうううう!!!」

足が何かに絞られるように細くなり、その反動と言わんばかりに乳房が上に飛び出した。足は縮み終わったあと、すぐにまた太くなり始めた。無理矢理急成長した乳房はかなりの張力を持っているようで、破裂直前の状態になっている。よく皮膚が持つなと思う。

《ブニュッ!!グキィッ!!》

その乳房自体も、脚と同じように、上からおもりが落ちてきて潰されたかのように一気に萎縮した。その分は、今度は右腕に詰め込まれ、中から腕を押し広げ、小学生のようであったそれは、ソーセージのようにパンパンに膨れ上がった。

《ムギュワッ!!!ボワァン!!》

再度かなり膨れていた足が一気に縮み、乳房が飛び上がるように膨張した。乳首が信じられない程に巨大化したが、すぐに乳房に吸収され、釣り合いの取れた大きさとなった。といっても、その乳房も手術台から1mの高さまでそびえる2つの山とも言えるほどの巨大なものになっていたが。腕の方は、太さを失うとともに伸び始め、かなり長く、肉感的なものになった。そこで体の不安定さは収まった。

「はぁ……はぁ……ちょっ……大きすぎ……それに……」
《ムクッムクッ……》
「まだ大きくなってる……!!」

私はスイッチを切っていなかった。毒は彼女の体に流れ続けている。手術台の上で、アリサの体はどんどん膨らんでいく。ジェニファーが大きくなった時の2mの身長を超え、毒が細胞に回るタイミング、心臓が血液を送り出すタイミングで、一回り、また一回り、断続的に大きくなる。

「いや、いやぁ……」

乳房は張りを保ちながら、すでに天井につきそうなバストが1サイズずつ上がっていく。もし、この私の体でも入りそうなサイズに名前が割り当てられていればの話だが。足の豊かな太ももも、ムチッ、ムチッと空気を入れられるように膨らみ続ける。注入量を見ると、ジェニファーに注入した500mlに対して、もう4倍の2000mlは投入していることがわかった。実験は十分だろう。私はスイッチを切った。

「どうですか?」
「も、もうお嫁に行けない……」
「この薬を飲めば元に戻れますよ」

アリサを手術台から開放すると、私はいつも手渡す薬を一錠、彼女に飲ませた。すると、彼女の体はある程度戻ったのだが、元のチンマリとしたものには戻らず、身長180cmほどの爆乳ムチムチな、わがままボディで止まってしまった。

「ふむ……興味深い。ある程度までしか戻らないか」
「興味深い、じゃないわよ!……でも、ちょっとアグレッシブだけど、この体も良さそう……」

アリサは手術台に座り掛け直し、ギリギリ自分の手で持てるほどになった、Zカップほどの豊満な乳房を抱きしめた。元々深い谷間がもっと深くなった。そのムニュムニュと変形する様からも、その素晴らしい質感がうかがえる。これからも被験者を増やしていくべきかもしれない。おっと、あの少年のことを忘れていたな……明日で薬が切れる彼のことを。