同化 後編

「お兄ちゃん……❤」
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幼馴染はトロンとした目で少年を見つめながら、四つん這いになって近づいてくる。元の面影を残した童顔と、その下でたぷんたぷんと揺れる二つの豊満な果実は、少年の目覚めかけの男性としての性欲をかきたてた。だが、少年の理性はそれ以上に強く、恐怖で少年は後ろに逃げて行く。

「つ~かまえたっ」

しかし、体格の差に勝つことはできず、すぐに腕を押さえられ、少年は上から覆いかぶされ、地面に押し倒されてしまった。

「いつもみたいに、あそぼ~?」
「や、やめて……っ!」

幼馴染はその巨大な乳房を少年の胸板に押し付け、上体を前後左右に揺らして、むにゅむにゅと変形させる。少年は自分の胸を包み込む柔らかい感覚に、身を任せずにはいられなくなり、全身の力が抜けてしまった。ただでさえ体重も力も劣る肉感的な女性に完全に屈してしまったのだ。

幼馴染はその様子をみると少年の腕を放し、その下半身の上へと移動する。そして、未だ小さなペニスを挟むように、乳房を少年の上にタポンと落とした。

「うっ……」
「お兄ちゃん、やっぱりここがいいんだね……❤」

体を上下に動かし、性器にかかる乳圧を周期的に変化させる。腰にコリコリと当たってくる乳首の感覚も相まって少年は絶頂へと近づいて行く。

「だめ……こんなこと……しちゃ……」
「なんで~?とっても、気持ちいいでしょぉ?」

幼稚園児とは思えないテクニックと小悪魔の誘惑のような声で、服をいつの間にか全て脱がし、幼馴染はどんどん攻めたててくる。少年はつい昨日まで一緒に遊んでいた年下の女の子が、今のように至上の快楽を与える存在になっていることが受け入れられず、どうするべきか判断する間も与えられず、最後に残っていたわずかな理性も風前の灯火となっていた。そして……

ドピュゥ!

出してしまった。自分でも正体のわからない白濁液が少年から放たれ、幼馴染の顔にかかった。

「あ……あっ……」

少年の頭がパンクしたようだった。

「ふふっ……お兄ちゃんも、おっぱいほしい?」

姿勢を直した幼馴染が、胸をむぎゅっと掴み、少年の目の前で強調してくる。さっきまでなら目をつぶって意識することを避けられたが、今はそれをただ見つめ、意識してしまう。途端に、胸が熱くなってきた。

「えっ……」

胸板を見ると、少年の鼓動と同期して、乳首がムクッムクッと大きくなってきていた。手でそれを押さえつけ、その成長を抑えようとするが、逆に、触覚でもその成長を感じてしまい、余計に意識してしまう。

「んんっ……」

胸全体の熱がさらに強くなると、少年の手の下で乳腺が発達し始め、乳首の周りがムリッムリッと盛り上がっていく。

「いやだ、やめて……」
「お兄ちゃん❤️」
「えっ」

幼馴染の声に思わず上を向くとたわわな乳房がやはりそこにあって、緊急時にも関わらずドキッとしてしまう。その瞬間、少年自身の胸の膨らみが、一気にリンゴサイズになり、激しい鼓動に合わせて、ムギュムギュッと成長を止めなくなった。

「だめ、だめっ……!」

再び、両腕でその膨らみを押さえつけるが、その腕の上下から、肌色がはみ出し、段々抑えていられなくなってしまう。

「ねえねえ、私の体、どう?」
「……!」

幼馴染は、大きな体と、そのウエストからヒップにかけての曲線を強調する。少年は、それを意識せざるをえない。背骨や骨盤のあたりに痛みが走ると、腰が横に引っ張られるように広がり、上半身は縦に引き伸ばされ、同時にムチムチとした皮下脂肪がついて、尻がボンッと膨らんだ。そして、ついさっきの幼馴染と同じように、自分の手足では動くことができなくなっていた。

「少年、幼馴染の体はもういいから、鏡見てみなさい?」

人形のような少女が言うと、幼馴染はいきなり気絶した。その体から空気が抜けていくように、手足は細く短く、乳房は元の胸板に戻り、髪も肩まで戻った。その代わりという感じで、仰向けに倒れている少年の真上に、大きな鏡が出現した。

「なに、これ……」

少年が自分の体を見ると、胸には頭と同じくらいの乳房がつき、ウエストはくびれ、腰が大きく横に広げられ、胴体だけは豊満な女性になっている自分自身の姿が映った。逆に言えば、手足と頭が、元のままの女性に、少年はなっていたのだ。そして、股に付いている小さい男の象徴が、目につく。

「ねえ、気持ち悪いでしょ?女の人になっちゃえば、楽よ。意識するだけでいいから、ね?……って、あなたそれ最初に意識しちゃう?」
「うっ……」

その瞬間、少年のペニスが脈打ち始め、膨らみ始めるが、ある程度膨らむと、いきなり潰されるような痛みが生じた。

「あぐっ……くぅっ!!!」

筆舌に尽くしがたい痛みとともに、ソレは少年の腹部に向かって沈み込むように縮み始めたのだ。少年は必死になって耐えるが、数秒後にはソレはスッと入った溝に沈没してしまい、完全に姿を消してしまった。

「ふぅ……っ、おなか、中が、ぐるぐるする……」

かき回されるような感覚の原因は、少年には知るすべもないが、子宮ができあがっていくものだった。それに繋がる卵巣が、今まであった精巣を置き換え、女性としての生殖機能を与えていくものに他ならなかった。少年は不安な表情で下腹部がうごめいているのを鏡で見ていることしかできない。

「あなたも、これで立派な人間のメスね」

うごめきが止まると、少女が満足そうな声で変身の成果を確認した。

「な、なんでこんなことするの」

素朴な疑問だった。こんなに大掛かりな魔法じみたことで自分が苦しめられるのには、何か理由があるはずだと思うのは、当然だ。

「そうね……あなた、ちやほやされるの、好きよね。人に褒められるのとか、撫でられるのとか」
「えっ……?」
「あら?小さい子は全員そうって思ってたけど、そうじゃないのかしら?とにかく、私はその目的のために生まれてきたんだけどね、あなたにもそれを体験してもらおうと思って」

大人の女性になれば、ちやほやされるのだろうか?少年は、テレビで綺麗な女性が褒められたり、羨ましがられていたりしていたのを思い出した。すらっと伸びた脚のこととか……

「あら、意識したわね」
「ふぎゅっ……!」

少年の足が、胴体から何かが送り込まれるかのように、膨らんでいく。ももにはムッチリとした肉がつき、二倍の太さに膨れ上がる。長さの方も、ググッググッと大きくなり、思い浮かべた女性ーーグラビアアイドルだったのだがーーと同じような、健康的な女性の足に育った。

「ボーイッシュもいいけれど、今のあなたの顔じゃ、ただの子供ね」
「僕は女の人になんか……!」

鏡の中の自分は、容赦なくその意思を潰してきた。むしろ、頭と手だけが少年のままとなった体は、全て女性であるべきであるもののようにも見えてしまう。

「(腕が、ほそい、ちっちゃい……)」
「はぁい、意識したー」
「うぐぁっ!」

腕はニョキニョキと伸び、女性になった体に合わせるように、適度に脂肪を蓄え、筋肉は控えめについたものになった。

「さあ、どうするの?女の人になるの、ならないの?」
「ぼ、僕は……」

少年は抗おうとするが、「女性になった状態」と「元に戻った状態」を、両方とも思い浮かべてしまった。選択を迫られた時には、人間はそのあとの結末を想像してしまうものである。そう、少年は想像したのだ。

「はい、時間切れっと。あなた、ちょろいわね」
「う、うわぁあああっ!!」

叫んだときにはもう遅く、少年の顔は少し童顔ではあるが色気のある女性のものに変わり、髪もサラサラと伸びて背中にかかるほどまでになった。

「僕は、これで、もう……」
「なっちゃったわね、完全に、女の人に。だけど……」
「今度は何?もう終わったでしょ?」

少女は、ニンマリとした。

「これからが、本番よ」

少年の掌から、ベキッという音がした。

「えっ」

少年が目を動かして手を見ると、そこには人間の肌ではなく、ゴムやプラスチックのようなもので覆われた掌があった。指を動かそうとすると、ギシギシと言うだけで、あまり自由がきかない。もっと注意深く見ると、指の関節の周りに色々な割れ目が付き、フィギュアの可動関節のようになっていた。

「あらあら?見るのは、おててだけでいいのかしら?」

少年が肘に目をやると、指と同じような溝が彫り込まれていくところだった。それはまるで皮膚が沈みこんでいくようで、中にある骨や血管は無視したような動きだ。そして、数秒後には、その現象は肩に伝わり、球体関節が、体の中でベキベキと形作られていく。これだけの変化が起きているのに、少年には全く痛みが伝わってこない。

「ぼく、どうなって……」
「いったでしょ?ちやほやされるようにしてあげるって。フィギュアとしてだけどね」

少年は、少女、いや、周りの風景全てが巨大化しているのに気づいた。フィギュアになっていくとともに、サイズが縮んでいるのだった。

「やだ、やめて!!こんなとこで死にたくないよぉ!!」
「死ぬ?失礼ね。全ての人形には魂が宿っているのよ?この私にだって、魂があるんだからね」
「わけわかんないよ!お姉さんも……人間……でしょ!?」
「私?私はたくさん、すごくたくさんの人形の魂のかたまりよ。あなたたち人間に愛してもらえなかった人形たちのね」
「なに……いってる……の……?」

少年の言葉の自由が奪われていく。足や、腰の中にも溝が彫られ、人形としての関節が出来上がっていく。そして、少し前は動かせた指や腕が全く動かなくなってしまった。

「そろそろ完成ね」
「や……だ……」

口もただの顔の表面に彫られた浅い穴となり、その瞳を残して、少年は完全に豊満美少女フィギュアとなってしまったのだった。少女は、変化が終わり、路上に倒れたまま動かなくなったフィギュアを拾い、まじまじと見つめる。

「ふふん、私のコレクションが、また一つ増えたわね。それにしても、人間から作る人形って最高!私みたいなつくりものじゃ、勝てないわ」

しかし、柔らかいゴムでできた胸をプニプニと触ると、多少不満そうになった。

「もうちょっと大きくしておけばよかった?まあいいわ、あとで付け足してあげれば。さぁて、どんなお服を着せてあげようかしら?」

少女はニコッと笑うと、フィギュアもろとも消え去った。

同化 前編

少年の目の前に、ケーキが置かれている。イチゴの乗った、1ピースのショートケーキだ。普通のケーキに見えるが、その場所が問題だった。

ケーキは、住宅街の道路のど真ん中に不自然に置かれた、一本足の机の上に置かれているのだ。

「おいしそ~」

普通の大人なら、不信がって、それを食べようとは微塵も思わないのだが、小学生低学年の彼は違った。ケーキに近づくと、誰も見ていないのを確認して、ケーキの脇に置いてあったフォークで、半分くらい一気に口に突っ込んだのだ。

「ん、んっ!?」

しかし、舌に伝わってきたのは、少しのにがみと、包み込んでくるようなゲル状の物体の感覚だけ。そして本来するはずの味が全くしないケーキは、生きているかのように、のどの奥に滑り込んでいってしまった。

「や、やだっ……」

物体は、食道をむりやり下に向かう。そして、胃にたどり着くと胃壁から少年の身体に侵入し、全身にじわじわと広がっていく。

「か、体が熱いよぉ……」
「まんまと引っかかったわね、あなた」

いきなり、少年と同年代の少女の声がして振り向くと、ケーキと机があったところに、フリフリのついた、人形のような子が立っている。金髪で、金色の瞳のその子は、状況が状況でなければ一目惚れしてしまうような可愛らしい笑顔をたたえていた。

「誰?僕のこと、知ってるの?」

少年が尋ねると、少女は笑顔を崩さないまま、ソプラノの声で答えた。

「いいえ、今初めてあったばかり。それにしても……」

少女は、少年の体つきを頭から足まで吟味するように見た。

「いい素体ね。男性器もあまり成長してないようだし……」
「だんせいき?」

キョトンとする少年に、やれやれといった感じで肩をすくめる少女。

「それの、ことよ」
「う、ぐっ……!」

股間に痛みを感じた少年が、手で痛みの元を抑えようとすると、まだ剥けてもいないそれが、バナナのサイズまで膨れ上がり、短パンの上からはみ出して赤黒く脈動した。

「ふっ、くぅ……!」

慣れない感覚に、その場で崩れ落ちてしまう少年。少女はなおも輝くような笑顔で言う。

「あら?少しやり過ぎちゃった?ごめんごめん」

その言葉と共に、今の現象が幻だったかのように元の大きさに戻るソレ。

「なんで……おおきく……」
「あなたが食べたケーキ。あれは、私の一部なの。食べられることで食べた人間と一体化し、その体型をある程度操れるのよ」
「……?」

少年はイマイチ少女の言葉の意味がわからないようだが、少女は構わず続けた。

「でもね、それには条件があって、宿主、いまはあなたのことだけどね、その人間が意識したり言葉にした部分だけしか変えられないのよ。さっきだったら、あなたが男性器って言ったから私はその大きさを変えられたわけ。分かった?」

頭がパンクしたようなポカンとした少年の表情をみて、少女はうなずく。

「ま、わかんないよね。いいわ、これから分からせてあげるから」

少年は、少女から突如放たれた邪悪な気配に身震いし、きびすを返して逃げ出そうとした。しかし、少女はそれが行動に移される前に気づいた。

「あら?私から逃げられると思ってるの?」

少年はその言葉と同時に逃亡を始めようとした。が、彼の足が、体が、急に重くなり、その場から動けなくなった。

「うふふ、言い忘れてたけど、体を小さくするのは私が全部勝手にできるのよ」

少女の視線は少年の足に向けられている。それに従うように自分の足を見ると、信じられないほどに瘦せこけ、ピクピクと震えている。少女は、少年の足から筋肉のほとんどを奪ってしまったのだ。

「胎児にされたくなかったら私に従いなさい?あ、誰か来たわ」

少年は、遠くから拍子のいい足音が聞こえてくるのに気づいた。そちらを見ると、地元の幼なじみの女の子、といっても年下の幼稚園児で、いつも少年が兄であるかのように遊んでやっている子が、走ってきた。

「あ、お兄ちゃん!どうしたの!?」

地べたに座っている少年に気づくと、そのままのペースで駆け寄ってくる幼なじみ。少年は、逃げろ、と叫びたかったが、なぜかそれが許されないことのように感じて、何もできない。自分の足の異常さから、危険を察してもらおうとしたが、いつの間にか足は元に戻っている。少年が横を見ると、少女の姿はなく、少年がさきほど口にしたケーキと同じように、幼なじみに合わせてあつらえられたかのようなかなり低いテーブルに、コーラのような茶色のジュースがコップ一杯に注がれ、置かれていた。

「あれ?なんだろ、これ?おいしそう!お兄ちゃん、これ飲んでいいかな!」

少年は、幼なじみが少女の支配下に入ってしまうのを止めるため、首を横に振った……はずだったが、なぜかうなずいていた。

「ほんと!?じゃあ、いただきます!」

幼なじみは、ぐいっと一口、液体を飲み込んだが、目を見開いて、すぐにコップを戻した。

「ふぇ、な、なにこれ、気持ち悪いよぉ……」
「はぁい、少年よくやった!」

青ざめた顔になっている幼馴染をよそに、飲み物とテーブルは、さっきの少女に形を戻し、パチパチと拍手した。少年は罪悪感から、なにも言うことができない。気分が悪そうな顔をしながら、幼なじみは突然現れた少女に驚いた。

「お姉ちゃん、だれ?」
「私?そうね……いたずら好きのモンスターっていうところかしら?あなた、よっぽどその小さな体にコンプレックスがあるみたいね」
「こんぶ?」

まだ語彙が足りない幼稚園児に、少女は手を近づけた。少女の顔は、先ほどの笑顔のままだ。

「だから、大きくしてあげる。まずはその『おっぱい』から」
「おっぱい……?」
「うふ……」

4,5歳なのだからおっぱいと呼べるようなものは何もない。これはもちろん、幼馴染にそれを意識させるために言ったことだった。少女の手が小さな胸に達すると、幼馴染の「んぅっ!」という喘ぎに近い叫びとともに、乳首がビクンビクンッ!と左右バラバラにTシャツを突き上げた。
そして、体から何かが送り出されるように、ムギュ、ムギュと、胸が盛り上がり、小さな体に不釣り合いな乳房へと成長していく。

「わたしに、おっぱいがぁ……!重いよぉ……」

Tシャツは左右に引っ張られ、印刷してある文字が横に伸びていく。いまやリンゴ、いや、また膨らんで幼馴染の顔くらいになった「おっぱい」は、体重バランスを大幅に崩し、ついには幼馴染は地面に手をついて倒れてしまった。襟からは、膨れ上がった胸の肉が溢れ、下からは柔らかい肌色の塊がプルプル揺れるのが見える。それでも、まだ成長は止まらず、Tシャツはさらに引き伸ばされて、ところどころがビリビリ言い始めた。

少年はというと、それをじっと見つめ、鼻の下を伸ばしていた。と同時に、はずかしめられている幼馴染を助けられず不甲斐なさを感じ、複雑な感情になにもできなくなっていた。

「うーん、胸だけ大きくしすぎたかなー」

幼馴染の胸は、元々の体の半分くらいの質量になり、幼馴染の動きを封じていた。

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「ねーねー、手とか足とかも大きくしたいんでしょ」
「えっ、そんなこと」

半泣きになっている幼馴染に、またも笑顔で尋ねる少女。

「だって、動きづらそうじゃないの」
「……それは……。ふぐぅっ!」

何とか動こうとじたばたさせていた腕が、肩と一緒に、メキメキと大きくなり、パンパンになっていたTシャツをさらに引っ張る。そして、耐えきれなくなったシャツの生地にところどころで穴が開き始め、幼馴染の露出がさらに上がっていく。掌も大きく成長し、指も親指から、人差し指、中指と、子供の小さいものから大人のものへと、ピキッと音を立てて無理やり押し広げられるように大きくなっていく。

足も、骨盤がグキグキと大きくなったとおもうと、腰の方から骨が太く、長くなり、それを包んでいたスカートがビリビリと破ける。成長が足の先に達すると靴下がちぎれ、靴も爆発するように破壊されてしまった。何とか意識を保っていた幼なじみは、体勢を直して、地面に座った。

「はぁ……はぁ……」
「私好みに育ったじゃないの。髪がちょっと短めだけど」

バサァッ!と、肩にかかるほどだった髪が一気に腰まで伸びた。ついに、幼なじみは意識を失ってしまい、地面に仰向けになって倒れた。

「あらら、ちょっとやりすぎたかしら?」

服で何とかデリケートな部分が隠れている幼なじみ。ほとんどはだけている自分の頭より一回り大きい肌色の果実は、呼吸とともにゆっくり振動し、健康的に育った体は傷一つ付いていない。丸見えになったウエストはくびれ、足はムチムチとした脂肪に覆われている。少年より小さかったその体は、今は大学生くらいの身長と、それにしてもメリハリのついた、グラビアアイドルのような体型を手に入れていた。

それを見た少女は少し満足気な表情になっている。

「上出来ね。さぁ、起きなさい。私の眷属ちゃん。一緒に遊びましょ」

その言葉を聞いた幼なじみはパッと起き上がった。その黒かった瞳は、少女と同じ金色に染まり、虚ろになっている。

「はい、マスター」

感情が抜けた声で喋るその女性は、もはやそれまでの幼稚園児の面影を残していない。少女が何かつぶやくと、破れていた衣服が幼なじみにまとわり付き、一瞬光ったと思うと赤いビキニに変わった。

「これで、準備完了ね。それで、どう、少年?私の力、分かったでしょ?」
「えっ」

終始放心状態だった少年は、最初の笑顔に戻った少女に話しかけられ我に返った。金色の瞳に見つめられた少年の本能は、逃げろと叫んだ。

「(に、逃げないと……で、でも……)」
「逃げさせなんてしない。次は、あなたの番よ」
「(なにも、何も考えちゃダメだ!)」

少年の元に、大人の女性になった幼なじみが近づいてきた。

環境呼応症候群 眠気の子

人にとって睡眠とは日常に欠かせない行為の一つである。睡眠が足りなければ、日常の判断力に大きな影響が出てしまう。

「おはよー!」

しかし、この中一の少女の場合その影響は判断力に収まらない。

「おはよ。あ、また睡眠不足だな?」
「えへへ、私、ちょっと大きくなってるー?」

擦陽 あや(すりひ あや)というこの少女は、メタモルフォーゼ症候群にかかっている。周りや自分の状態に応じて体の形が変わるこの病気だが、彼女の場合、眠気に応じて成長したり小さくなったりというもので、常に変わり続けるこのパラメータのせいで、彼女の体が一定のサイズであることはない。

小学校からの幼馴染の安下 留子(やすした りゅうこ)は、いつもは自分より小さいあやが、自分と同じくらいの大きさに成長しているのを見てニヤニヤしている。

「バレバレだよ、セーラー服、一番起きてる時はいっつもぶかぶかじゃん。今日は違うもん」
「実は、漫画を読み始めたら止まんなくて。大丈夫、宿題はやってきてあるから!」

あやは、買ったばかりのカバンを机の上にどさっと置くと、中から宿題の紙を取り出し、ドヤ顔で友達に見せる。

「ほら!」
「はいはい、前は忘れてきたのに、いい子ですねー」
「こ、こら、バカにしないでよ!あんただって忘れてきたことあったでしょ!?」
「あやほどじゃないよ」

頬を膨らませ、むすっとするあやを見て、留子は口元を緩ませた。

「ほらほら、朝礼始まっちゃうよ」
「あ、そうだね」

あやがカバンから教科書を取り出し、椅子に腰掛けて、カバンを机の側に置くと、中年の男性教諭が入ってきた。

「朝礼を始めます。擦陽は……今日は大丈夫そうだな」
「もう、先生!どういう意味ですか!」

名指しで確認され、手を挙げて反論するあやだが、その途端少し背が縮んだのを、教諭は見逃さなかなかった。

「寝不足、ですね。そういうことです」
「む、むぅ……」

この体質のせいで、少しでも眠いようならバレてしまう。朝なのだから眠いのは当然であるのだが、今日は成長度合いが基準を超えていたらしい。だが、このあやという少女はかなり天然ボケが入っていて、この手の隠し事が出来ないことはあまり気にならない。

「では、出席を取ります」

そんな、少し普通とはずれているが日常と同じ朝礼が始まり、今日の授業へと続いていった。

だが、一つ落とし穴があった。1時間目の体育が、その落とし穴だった。

「新入生のみんな、

学期が始まって初めての体育は、1000m走という、女性にとってはハードな種目だった。

「はぁ……疲れたぁ」

体育の授業を終えたあやは息を切らしている。

「あや、よく3本も走れたね」
「私、走るのだけは得意なんだ」

留子のほうはというと、一回走っただけで体力を使い果たしてしまい、元気よく走り続けるあやをトラックの外からぼーっとながめていたのだ。

あやは、息を整えるとすぐに後者に向かって走り始める。

「次の授業すぐあるから、さっさと着替えないとね!」
「そ、そうだね!って、ちょっとまってー!」

留子は小さい体なのにかなり速く走っていくあやに、なんとかついて行った。

次の時間。授業の支度をして、席についた留子は、早速横に座っている小柄なあやを見る。すると、ペッタンコなセーラー服の胸の部分が、グググと前にせり出しているところだった。

「ちょ、ちょっと、あや……」
「うーん、なにぃ?」

留子に顔を向け、眠そうに答えるあや。胸の盛り上がりはさらに大きくなって、リボンで見えないセーラー服のボタンがだんだん張り詰めている。

「大丈夫なの?」
「だいじょうぶだってー、宿題ちゃんと……やって……」

運動で疲れたことからあやを眠気が襲っているようだ。体がメキメキいう音を立てると、あやの体が勢い良く縦に伸び、140cmの身長が165cmまでになった。スカートの下から足がニョキィと出てくると同時に皮下脂肪が付いて丸みを帯びる。

「おきて……られない……」

体を前に傾け、居眠りする体勢になると、いよいよセーラー服の限界が訪れたようで、ボタンがブチブチと取れ、中からプルンと蒸れたGカップの双丘が机の上に飛び出し、寝ようとする頭にちょうど良くクッションになった。

「あや……?」
「むにゃむにゃ……」

さらに机の上で大きくなる乳房は、スイカサイズにも達している。周りの生徒も気づいているらしく、ざわついている。教諭も気を取られて授業が思うように進まなくなっている。それでも注意しにこないのは、その中学生に見合わないスタイルの良さを目の当たりにして、もう少し見ていたいという欲望が現れた結果だろうか。だが、その姿を見慣れていた留子は、少しため息をついて、すやすやと寝息を立てているあやを見守るだけだった。留子にとって問題なのは、この後だった。

「そろそろ、アイツが出てくるかな」

留子がつぶやくと、寝ているはずのあやの口から、色っぽい声が発せられた。

「だれが、アイツ、ですって?」

あやはパチッと目をさます。しかし体つきは全く変わらない。それどころか、足を組み、体のメリハリを強調するような姿勢になったおかげで、さらに扇情的になっている。

「ふふ、留子ちゃん、お久しぶり」
「お久しぶり、あやさん」

天真爛漫なあやとは一線を画す、もう一人のあやがそこにいた。

「1週間ぶりだっけ?あ、今授業中ぅ?」
「そうだよ」
「もう、この子ったら、居眠りしちゃてるのね」

メタモルフォーゼ症候群を発症してから、あやの中に居座るようになったもう一つの人格。「元」のあやが眠ると、表に出てくる「裏」のあやだ。

「体育の授業があってね。それよりも……」

その「あや」に、留子はニヤニヤしながら喋っている。

「はやく、私にご褒美、ちょうだい?」
「はいはい。もう留子ちゃんったらせっかちね❤」

あやは席から立ち上がり、乳首を留子の口に近づける。

「ほら、後はあなたの好きにしていいわよ、私のかわいいかわいい留子ちゃん」
「ありがたき幸せ……!」

留子は、顔を前に突き出し、あやから母乳を吸うように、その豊満な果実の先をくわえた。

「留子ちゃんは、もう完全に私のトリコね。ほら、周りのみんなもどう?❤」

あやの周りに、生徒たちが男女問わずぞろぞろと集まってきた。症候群によって形成されたあり得ないほどグラマラスな体に、幻術でも掛けられたかのようだ。全員があやに頬ずりし、さわり、撫でた。異様な空間が、そこには形成されていた。

授業時間の半ばになってやっと、あやの言葉でそれは終わりを迎えた。

「あ、あの子起きちゃう❤みんな、席に戻って?」

何も答えずに、生徒たちは自分の席に帰っていく。今までずっとおっぱいを吸い続けていた留子もぱっとそれをやめた。それを見たあやは自分も席に戻り、目を閉じて机の上に突っ伏した。

数秒の沈黙の後、教諭があやに指名をする。

「それでは刷陽さん。ここ読んでください」
「はっ……!?私、寝てた!?」

あやの体が、風船が割れたときのような勢いで元に戻った。

「あやちゃん、ここ、ここ」
「あっ、そこね!私、練習してきたから大丈夫!」

留子は何事もなかったかのように振る舞う。それは留子だけではなく、教諭も含めて周り全員も同じだった。

「わかりましたから、読んでください」
「はーい!えーと、『あいあむ……』」

そして、「日常」はいつものように続いていくのである。症候群のせいで何かが狂った「日常」が。

逆転の日~兄の場合~

あむぁいおかし製作所(http://okashi.blog6.fc2.com/)に掲載させていただいたものです。
挿絵はシガハナコ様(http://l-wing.amaretto.jp/)に描いていただいたものを、あむぁいおかし製作所管理者のあむぁい様に許可をとって転載しています。

この世には、様々な人間がいる。

「いひ、いひひ……」

その中には当然、倫理観が狂っている者、頭がいい者、そして金を持っている者も、いる。

「うふふふ……」

しかし、今泡を立てている丸底フラスコに入った薬品を、恍惚とした表情で見つめるこの男女2人は、そのどれもに当てはまる。

「あいつら、どんな顔するかな……」
「楽しみだねぇ……」

顔立ちがうり二つの二人は、邪悪な笑みを惜しげもなく顔に出していた。

兄の場合

同じ建物の中。

「う……ふあーっ……よく寝た……」

あくびをかき、伸びをする男子高校生。黒い髪と、年相応の体格をした青年の名前は、高町祐輔(たかまち ゆうすけ)。

「ん?なんだろう、この手紙」

自分の部屋から出ようとして、扉に画鋲で封筒が留められているのに気づく。黒く、なにか禍々しい雰囲気を発しているその封筒を、ため息混じりに扉から外し、開ける。中には万年筆のようなもので文字が書かれた紙が入っている。

「どうせ、あのろくでなし達、もとい、兄さんと姉さんだろ……」

祐輔の予感は的中する。手紙の筆跡の特徴は、これまで幾度と無く見てきたものと完全に等しい。

【今日は実験に参加してもらう】
「あぁ、もう……今日は学校があるってのに……」

手紙の内容に、呆れ果てる青年だが、その次の文に少し驚かされる。

【内容は秘密だ。普通に生活を送ればよい。 KとA】
「実験なのに、普通に生活だって?どういうことだ……」

手紙をゴミ箱にポイッと捨て、扉を開けてリビングに向かう。そのままキッチンに入り、トースターをセットして、卵を割り、ベーコンを敷いたフライパンに入れる。両親がほぼ家にいない彼にとっては、これが日常だった。兄妹たちの家事を一気に背負うのには、それなりの理由があった。

「実験……かぁ。今日は何なんだろう。あいつらマッドサイエンティストの実験なんか毎回ろくなことがないが……」

そう言いながらトースターを見つめる。前に、トースターが兄姉が開発したものにすり替わっていた。祐輔はそれに気づかず、トーストをいつものようにセットした。すると、一瞬のうちに消し炭となってしまい、トースターが爆発してキッチン中に炭になったトーストと、トースターの破片が飛び散り、掃除するのに丸一日かかってしまったのだ。

「まあ、命にかかわることじゃないだろ、いくらなんでも」

トースターとフライパンから、いい匂いがし始めると、リビングの方から声が聞こえてきた。

「おはよー、お兄ちゃん」
「ああ、鈴音、おはよう」

寝ぼけ眼でキッチンに入ってくる、黒髪セミロングの、中学生くらいの女の子。祐輔の妹、鈴音(すずね)だ。彼女は食パンがトースターから飛び出したのを見て、皿を取り出し、自分と兄の分をスッと載せ、フライパンの蓋を開けて目玉焼きをパンの上に滑り出させた。

「あれ、浩輔(こうすけ)お兄ちゃんと彩音(あやね)お姉ちゃんの分は?」
「うーん、昨日夜遅くまでなにかやっていたみたいだし、昼まで起きてこないから大丈夫なはずだ」
「そう」

一番上の兄と姉の食事について確認した鈴音は、小さなあくびをした後皿をリビングの方に運ぶ。祐輔は、流しに残っていたコップを軽く洗うと、牛乳を入れ、冷蔵庫からマーガリンを取り出して鈴音に続く。朝食の支度が整うと、二人は椅子に座り、手を合わせた。

「「いただきまーす」」

二人同時に、トーストをカリッとかじる。その一かけらを咀嚼し、飲み込むと、鈴音が切り出した。

「あ、そういえば……またお姉ちゃん達がお手紙をね」
「うん。俺も」

祐輔でなく鈴音も、実験の通知をされていたのだった。それもまた、いつものことなのだ。

「どういうことなんだろうね、いつも通りにしていいって」
「さぁ……」

朝食を黙々と進める二人は、ほどなく牛乳を残して全てを食べ終わった。

「「ごくごく……」」

最後に残った牛乳を、一気に飲み干す二人。そこまでは、文字通り普通の朝だった。そう、そこまでは。

「じゃあ、一緒に片付け……うぐっ!!??」

体全体に、息を止めた時のような苦しさを感じる祐輔。

「な、なんだよ……これっ……ぐふぅっ!!」

胸にパンチを食らったような痛みが加わり、思わず胸に手を伸ばす祐輔。すると……

《ムニュッ》

「なに……これ?」

手が柔らかい何かに当たる。同時に、胸の方にも押さえつけられた感触が走る。祐輔の目線の下で、自分の胸が着ていたパジャマを大きく押し上げていたのだ。

「もしかして……これって……ふぐぁっ!!」

その膨らみを手で揉んでみようとした矢先、さらなる衝撃が加わる。その瞬間、パジャマが破れそうになるくらい盛り上がりが前につきだし、祐輔は肩と胸に重いものがくっついている感覚を覚えた。

「や、やっぱり……」

左右に引っ張られたパジャマのボタンの隙間から見える肌色と、中心に走る線は、紛れも無く乳房と、その間にできた谷間だった。普通の男子高校生である祐輔の胸に、Eカップほどの乳房がいきなり現れたのだ。

「……こ、これが、実験……か……ぐはっ!!」

次の衝撃で、乳房は完全にパジャマを突き破り、祐輔の目の前でバインッ!!と外に飛び出した。メロンくらいの二つの果実は、寄せるものが無くとも互いにくっつき、自然に谷間ができている。ぷっくりとした突起は、男の時からは考えられないほど大きくなっている。

「……もしかして、俺は……っ、女に……!?」

腹筋を触ると、メキメキといいながら萎縮していく。さらに脂肪が皮膚の下を移動するかのように波打ち、ウエストにくびれがついていくのが分かる。視界にも、短かったはずの髪が、垂れて入ってくる。

「……んはぁっ……こ、声までっ……くそぉっ……」

首が押しつぶされるような痛みとともに、祐輔の声が高くなる。左手で首を触ると、喉仏が消え去っていた。顔も、全体が見えない手に潰されたり引っ張られたりするように、頭蓋の形が変化していく激痛が走る。

「……い、痛い……っ!!?」

しかし、それをも上回る鋭痛が、股間を襲う。嫌な予感を感じ、とっさに手でイチモツを触ると、もはや昨日までの大きさの数分の一になっている。目で確認しようとしても、胸が邪魔で直接見ることができない。せいぜい、筋肉がふっくらとした脂肪に置き換わり、むっちりとした太ももが見えるだけだ。

「ま、まって……これだけは……っ!!」

手で守るかのように自分の息子を掴む祐輔だったが、その手の中でペニスは萎縮を続け、ついに股間にできた溝の中に埋もれていってしまった。

「んくっ……ひゃあっ……おなかっ……なかがぁー!!」

たった今沈み込んでいったモノが、今度は腹部を掘削していくかのような痛みが走る。女性器が形成されているのだった。

「……はぁっ、はぁ……はぁ、ふぅ……」

痛みが落ち着き、祐輔は、多少小柄になった自分の胸に実っている、たわわすぎる果実を手で触る。

「にせもの、だよな……?」

現実から逃げたい祐輔の最後の希望を蹴落とすかのように、手で触ったのと同時に、胸からピリッと電流が感じられる。

「んっ……」

自分の口から思わず漏れた喘ぎ声が信じられず、固まってしまう。

「そ、そんな……俺がこんな……」
「うおっ……」
「えっ!!?」

祐輔が聞いたことのない、少しだけではあるが元の自分よりも低い男の声に飛び上がりそうになって驚く。恐る恐る声のした方を向く祐輔。すると、さっきまで妹がいた所に、ビリビリに破けた布切れを身にまとった、金髪の大学生が座っている。

2ss

「だ、誰だっ!?」
「え……え?お姉さんこそ、だれ!?……まさか、祐輔お兄ちゃん?」
「はっ……?」

自分の名前を知っている妙な口調の男に祐輔は困惑しつつも、朝起きてからこれまでの記憶をつなぎあわせて一つの答えを出した。

「鈴音……なのか?」
「う、うん……」
「もしや、これが……」

祐輔の言葉を遮って、リビングの扉がバァンと勢い良く開けられる。

「そう!それが……」
「私たちの実験だ」

ドヤ顔で台詞を言いながら現れたのは、白衣を身にまとった男女。男の方はかなり体格がよく、女の方はかなり大きくなった祐輔の胸に負けないほど前に張り出した胸と、惜しげも無く晒されているムチムチとしたグラマラスな足を持っている。そして、二人の顔は男性と女性としての違いを差し引けば、全くと言っていいほど同じだった。

「どういうこと、ですか……!兄さん、姉さん」

両親がいない間の実質的な一家の稼ぎ頭である二人に、あまり反抗できない祐輔。その負い目につけ込まれて参加を強制された実験は数知れずだ。

「祐輔と鈴音の性別を入れ替え、鈴音を大きくすることで立場を逆転させる……」
「そして、日常生活を行ってもらうことで、どのような反応を祐輔達が示すか、また、周りの社会が示すか、観察するのだ!」

全く悪びれる様子もなく、大きな声で弟と妹に告げる兄と姉。

「こ、こんな状況で日常生活なんて……」
「それは問題ない!たった今、周りの記憶をいじって、性転換したことを認知させたからな!」
「兄さん……それって、普通に元から性別が逆だったことにしたほうが……」
「それだとこの実験をする意味が無いだろう!性転換したものに対する反応が見たいのだからな!それにほら!服だって用意したし、鈴音に関しては元から高校生だったことにしてあるぞ!さあ、さっさと高校にいけ!」

祐輔が反論する前に、リビングの至るところからロボットアームが伸び、神業じみた操作で破れかけのパジャマを引きちぎり、二人に制服を着せた。同じ学校の、今の性別にあったもので、祐輔に至っては、胸のサイズもピッタリのブラまで付けられ、押し上げられた乳房がさらに大きくなったように強調されていた。

そして、歯磨きや、長くなった祐輔の髪のセットも次の一瞬で施され、家から放り出された祐輔と鈴音だった。

「「いってらっしゃい!!」」
「「い、いってきます……」」

玄関についたスピーカーから聞こえる兄と姉の声を聞き、二人は仕方なく歩き出す。すぐに祐輔の、爆乳、という言葉でも足りないほど大きな祐輔の胸が歩行で生み出される振動を大きく増幅してブルンブルンと揺れ、二人とも目が釘付けになる。

「おおきいね……私はぺったんこだったのに」
「おおきすぎるぞ……姉さんたち、本当に悪趣味だなぁ」

胸の大きさを際立たせる、逆にキュッとしまったウエストは、祐輔の目からは胸に遮られて完全に見えない。背の高くなった鈴音に若干圧迫感を感じながら、道を進んでいく。

「(なんというか、今の鈴音、頼れそうだなぁ……いや、体が大きいだけで精神は女子中学生なんだから、俺が守ってやらないと)」

家から離れ、多くの生徒が集まり始める学校近くになって、周りの視線を感じる回数が増えていく。昨日まで同じ部活動をしていた友人も多くいたが、みな祐輔を好奇の目で見ていた。男になった鈴音にも若干目が向けられているようだったが、胸のせいで圧倒的に動きの多い祐輔が注目の的になっているのだった。

「(は、はずかしい……)」

注目されている状態を脱しようと、腕で胸を押さえつけようとするが、腕の上下から胸肉が溢れだし、ムギュッと寄せられた二つの丘の間に深い谷間ができてしまい、むしろさらに注目されてしまう祐輔。

「(いやだ……やめてくれ……)な、なぁ、鈴音、もうちょっと速く行こうか」
「え、うん……」

羞恥心から足を早め、一刻も早く教室にたどり着くことにした祐輔だったが、誤算があった。

「んっ……ひゃっ……やめっ……きゅっ……!」

激しく揺れるようになった胸の先端と、ブラが擦れ始めてしまい、祐輔の体に電撃が走るようになってしまったのだ。思わず喘ぎ声を出してしまう祐輔。

「お、お兄ちゃん、大丈夫?」
「男の声で、あんっ……!お兄ちゃんは、ふゅっ……よしてくれ!」

電撃が加えられ続けるのに何とか耐えていたがしかし、祐輔が体験したことのないような感覚が下腹部に溜まり始める。

「(おなかがあつい……なんだこれっ……)」
「じゃあ、に、兄さんで、いい?」
「あ、あぁ……」

やっとのことで教室に飛び込み、そのまま自分の席にドサッと座り込み、突っ伏そうとする祐輔。それを、胸についた大きなクッションが邪魔をする。

「あぁんっ!」

あまりに強い衝撃が胸に伝わり、大きな奇声を発してしまう祐輔。ハッと気が付くと、周りからムラムラとした色欲とピリピリとした嫉妬が突き刺さってくる。

「お、おはよう、みんな……」

気まずくなった祐輔が声をかけても、誰も返答しない。少しの沈黙の後、一人のポニーテールの女子が近づいてくる。彼女は、祐輔の後ろに棒立ちになっている鈴音を一瞥し、祐輔に質問した。

「高町だよね?」
「は、はい……」

ほぼ殺気に近い女子の気迫に、たじろぐ祐輔。女子は祐輔の顔の下、自らのものとは正反対に、大きく自らを主張する爆乳をジッと見る。

「こんな……大きな……おっぱいしちゃって」
「あ、あの……?」

女子は、手を伸ばして、その盛り上がりに触れようとする。

「こんなもの……こうしてっ!!」

《キーンコーンカーンコーン!》
手が服の表面に達する前に、始業時間を知らせるチャイムが鳴り響いた。

「チッ!ほら、鈴音、あんたの席はそこでしょ?なにぼーっとしてるの」
「は、はい!」

女子は祐輔の隣の席を指さす。元女性の鈴音には若干甘いようで、少なくとも殺気は向けていないようだった。鈴音はビクッとしながら言われた席に座った。

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兄達が言った通り、鈴音は、転校生ではなく、本当にそのクラスに元からいたような扱いを受け、なぜか鈴音のことが気になっていたかなにかで、鈴音の方を見ながらこの世が終わったような顔をしている男子が一人いるくらいだった。鈴音は、大きくなった体にすぐに慣れたようで、意味の分からない授業を、板書だけは書き写しながら、ボーッと受けていた。

問題は、祐輔だった。板書を取ろうとしても手元が胸で見えず、あまり前かがみになると長い黒髪が視線の中になだれ込んでくる。何度も何度も、手で髪を肩の後ろに回そうとする必要があり、その度、重い胸が邪魔をした。授業が一時限終わる頃には、ものすごい肩こりになってしまっていた。

「ふぅ……疲れたぁ……」
「ねぇ、ね、おにいちゃ……兄さん……」
「なんだ、鈴音」

授業が終わった途端、鈴音がソワソワしながら祐輔に尋ねた。

「あのね、トイレに行きたいんだけど……教えて?」
「ああ、わかった……えっ!?ちょ、ま、まて!今、俺は女なんだぞ!?」

思わぬ妹の依頼にうろたえる祐輔。

「でも……」

困り果てる二人の元に、さっきの女子が近づいてきた。

「トイレ?なら……富士根、あんたついてってやって」

女子は、鈴音の泣きそうな顔を見て、その前に座っていた男子生徒に声をかけた。メガネを掛けた清純そうなその生徒は、二つ返事で了承し、鈴音も不安そうではあったがついていった。

「さて、高町……」
「なんだよ馬橋、さっきから……」

ついさっきと同じように殺気を向ける、馬橋と呼ばれた女子だったが、微妙にやけくそになったように涙を流しながら胸を鷲掴みにした。

「私のことも考えずに、女になっちゃったのね!?このっ!!」
「ひゃぁっ!?」

祐輔の脳内に、刺激を越えた何かが溢れかえる。

「ま、まばしっ……ひゃ、そこ、やっ、やめてぇっ!!」
「うるさいっ!この、このっ!!」

馬橋の手が、双丘を上下左右にこねくり回す。祐輔はただただ嬌声を上げ、快感から逃げることすらままならない。

「き、きちゃうっ!あっ!!だめぇっっ……!」
「あらあら、体は正直なようよ?立派に勃てちゃって!」

胸の先端が、少し盛り上がっている。

「す、すずねに、見せられないよぉっ……!!」
「あっはは、それは大丈夫だから安心しなさい!あんなうぶな奴に、兄の痴態を見せるわけに行かないじゃない!あら?今は姉だったかな?」
「ふあっ!」

体中の筋肉が緩んでしまい、口がだらしなく開き、目は上を向いてしまう。

「(こ、これが女の快感なのか……!?いや、今はそんなことよりもぉっ!)すずね、もどってきちゃうぅ!!」
「まだ平気平気!あんたには痛い目見てもらわないと気がすまないからぁっ!あっ……」

理性を手放しそうになった瞬間、責苦が終わる。祐輔はなんとか我に返り、口がぽっかり開いた馬橋の視線の先を見る。

「な、なにぃ……?っ……!!!」
「高町、ごめん……」

その先には、唖然とした鈴音がいた。

「おにい、ちゃん?」
「すず……すずね?……鈴音!!?」

鈴音の顔は、驚愕から嫌悪へと変わっていく。

「す、鈴音、これは、違うんだ……!」

祐輔は、必死に説得しようとして、席から立ち上がる。その動きで、大きく揺れる乳房を見て、鈴音は急に走り去ってしまった。

「鈴音!!待って……くっ!」

馬橋をキッと睨み、鈴音を追って祐輔は走りだした。

「んひゃっ……!も、もうだめ……っ!」

祐輔は荒い息を立てて立ち止まった。汗だくで疲れきった爆乳美女に話しかける馬橋は、汗など一滴も出していない。

「ねぇ、どんだけ体力なくなってるの?」
「う、うるさいっ!体が敏感なんだよ!」

祐輔がいるのは、自分の隣の教室の前だった。その距離、約15mといったところか。

「無理に走ろうとするから……」
「こ、こんなに感じるなんて思ってなかった」

早歩きだけでもギリギリだった祐輔の精神は、走ることによる全身と服の擦れからくる刺激に耐えられるはずがなかったのだ。

「変身したばかりなんだから、皮膚が慣れてないんじゃない?」
「そうだな……なあ、女になってすまなかった」
「ふん……謝るのが遅い」

祐輔は、前から馬橋に間接的にアタックされているのに気づいていた。最初に責められた時は、恐怖とともに申し訳無さを感じ強く出ることができなかった。

「まぁ、鈴音のことについては、私も……」
「あぁ、そうだぞ。罰として……」
「うぅ……」
「俺の代わりに鈴音を探してくれないか。それでチャラだ」
「え、それだけ?」

馬橋に向かって、微笑む祐輔。馬橋は安堵したのか、大きく息を吐くと、答えた。

「分かった!」

馬橋が駆け出していくのを見送り、自分は教室に戻る。妹の嫌悪の顔が、頭の中にこびりついていた。うつむくと、歩くのと同期してプルンプルンと揺れる胸が目に入る。今日の朝まで夢でも見たことのないような大きさのそれは、今は確実に自分のものだ。

「はぁ……」

いつ戻るのかわからず、不安の溜め息をつきながら教室に入ると、先ほどに増して異様な雰囲気が漂っていた。

「なんだこの嫌な予感……」

男子生徒がガタガタと立ち上がり、ゾンビのようにヨロヨロと祐輔に近寄ってくる。

「お、お前らどうしたんだよ……」

祐輔が怖気づいて尋ねても、「たかまち……」「ゆう……すけ……」と、本当にゾンビのような理性のかけらもない答えしか返ってこない。クラスメートたちはゆっくりと歩いていたが、祐輔も恐怖に腰が抜けてしまい、体力が切れていたこともあってその場に崩れ落ちてしまう。

「な、なんだよ……やめろ……」

魔の手がじわじわと、祐輔に詰め寄る。手が触れそうになったその時、教室に大きな声が響いた。

「お兄ちゃん!」
「す、すずね……?」

教室に入ってきたらしい鈴音の低めな声に、心をなでおろす。ただ、男子生徒にはその声は届かなかったようで、さっき馬橋が下のと同じように、胸をまさぐりはじめ、足をなではじめ、腕を愛ではじめた。

「ふゃっ……おまえら、あっ……そこ、そこはっ……!!」

鈴音に続いて、馬橋も入ってきた。

「高町、約束通り、鈴音を連れてきた……って何なのよこれ!」
「お兄ちゃん、逃げないと!」
「すずね……お願いっ!」

鈴音は、その大きな体格でクラスメートたちをなぎ倒し、床にへたり込んだ兄を、背中と膝を腕で持って支え、持ち上げた。

「おい、これって……」
「え?早く逃げようよ!」
「あ、あぁ……(お姫様だっこ、だよな、これ……)」

妹に「お姫様抱っこ」で担がれ教室から逃げ出し、嬉し恥ずかしの兄は窮地を脱したのだった。

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結局、保健室に逃げ込んだ二人と、馬橋。幸い保健室には誰も在室しておらず、何も聞かれること無くベッドを借りることができた。

「もう大丈夫だよね……」
「こ、こわかったよぉ……じゃなくって!ありがとう……はぁ、やっと落ち着いた……なんであいつら……」

クラスメートの変貌ぶりを思い出し、身震いする祐輔。馬橋は、それを見て額を手で押さえた。

「ごめん、クラスの中であんな痴態を見せられたら、みんな興奮しちゃうよね……さっきの祐輔、エロビデオの女優さながらだったし」
「……そうか」

祐輔の方に向き直る馬橋は、取り繕ったような笑顔を祐輔に向けた。

「私、教室に戻るよ。あいつらぶちのめしてこないと、収まりが付かないだろうから」
「……頼む」
「それから、鈴音」
「な、なんですか?」

鈴音は、高校生でも大柄な方の体をビクッと震わせる。

「ちょっと、そんなに怖がらないでよ。さっき、ちゃんとお話したでしょ」
「あ、そうでした。ごめんなさい……」
「ああもう、あんたと話してると調子狂うわー。まあ、お兄ちゃんを守ってあげてね。じゃ!」

馬橋はベッドのカーテンを閉めると、保健室から出て行ったようだ。

「(さっきのこと、説明しないとな……)鈴音……」
「お兄ちゃん、ごめん!」

祐輔の声は、もっと大きな鈴音の声に遮られた。

「鈴音?」
「私、お兄ちゃんに興奮しちゃったの……その、おちんちんが硬くなっちゃって」

目を逸らしながらしゃべる鈴音の声は一転、消え入りそうな弱々しい物になって、震えていた。

「え?」
「授業中も、さっきトイレに行った後も……それで、私自分のことが嫌になって逃げ出しちゃった」
「そうだったのか……(俺だって、こんな女の子がいたら少しくらいは興奮するんだろうな……)」
「こんな妹、いやだよね」

祐輔は、とっさに答える。

「いやじゃないぞ」
「え?」
「仕方ないだろ。それが男ってやつさ。むしろ、クラスのあいつらより、よっぽど理性的だと思うけどな」

祐輔は、そう言った後で、自分の中にそれ以外の理由があることを、かすかに感じていた。

「(鈴音と一緒にいると、すごく安心するし……)」

だが鈴音は、その言葉を素直に受け取ったようで、少し申し訳無さそうではあるが、うなづいた。

「うん……」
「だけど、お互い慣れたほうがいいと思うことは、確かだな」
「じゃあ……」

だが、次に鈴音がしたことは、祐輔にとっては信じがたいことだった。急に服を脱ぎ始めたのだ。

「鈴音?何、やって……」
「お互いを知るんでしょ?それなら、脱いじゃったほうが……」
「いやいやいや、それはおかしい」
「おかしくないよ。お兄ちゃんを守れるのは私だけなんだから。もう逃げ出したりしないよ」

急に攻めてきた鈴音に、祐輔はたじろいだ。ただ、その次に浮かんだのは恐怖感ではなく、淡い期待感だった。あっと言う間に服を脱ぎ終わると、鈴音は祐輔の服を左右から引っ張った。

「おい、ちょっと……」
「だから、ね」

そして、力を入れると、プツプツプツっとボタンが全てはねとび、中からバレーボールが入りそうなほど大きな乳房が飛び出てきた。

「ひゃんっ!鈴音、だめ、だめだぞ……」
「お兄ちゃんの、おっぱい……」

金髪の頭を、その谷間に突っ込む鈴音。祐輔は、妹に手荒なことができず、されるがままだ。鈴音は、少し赤らめてはいるが、真面目そのものの顔で、双丘の先端についた突起をつまみ、コリコリと揉む。

「あぁ……!ふあっ!そんなとこっ……!」
「女の人は、ここが弱いんだよ」
「そんなの……わかってるよぉっ……!あんっ!」

今度は、口を近づけてペロペロと舐める。

「やめ、やんっっ!!」
「どう?気持ちいい?」
「き、きもちいいよぉっ!」
「ふふ、よかった」

口を離すのを見て、これで一段落かと祐輔が思った次の瞬間、スカートを外され、ニーソックスを脱がされて、あらわになった足がツーッと指でなでられる。

「あぁぁんっ……」
「こーんなきれいな足、羨ましいなぁ……」
「ほめられても、うれしくない……」
「本当?」

祐輔は実際、自分が手に入れた体の魅力に気付かされ始めていた。鈴音から見を守ろうとして手で覆ったウエストは、その下につながっている足から想像もできないほどくびれていて、肌もすべすべしている。時折窓やスマホの画面の反射で目に映っていた自分の顔も、釣り目で凛々しく、人の性欲をそそるものだ。

「う、うぅ……」
「かわいいね」
「あ、ありがと……」

自分以外の誰もが、自分の姿を見ている。それでいて、自分自身は見ていない。その事実のせいで、もっと自分の外見が気になってしまう。

「ね、ねぇ……私って、綺麗……?(あ、あれ?今、自分のこと私って言ったか?)」

頭の中に浮かぶ自分の姿に合わせた言葉を、思わず紡いでしまう祐輔。鈴音も、すこし驚いたようだが、すぐニッコリして答える。

「うん、綺麗だよ」

妹の言葉に心躍らせる祐輔。自分が褒められたのは間違いない。何かが間違っている気がしたが、どうでもよかった。

「じゃ、僕は?かっこいい?」
「えっと……」

妹に聞かれ、これまであったことを思い出す。登校中の、鈴音の側にいた時や、教室に助けに来てくれた時の安心感。気づいてみれば授業中も、横にいてくれるだけで落ち着いていられたのだった。

「うん。かっこいい、かな」
「そっか」
「それより、もっと私を教えて?」

妹の瞳に映る自分の顔は、自分でも信じられないくらい扇情的だった。その姿にハッとする。

「(違う、俺は男、なんで妹を誘ってるんだよ)」

思考を元に戻そうとするが、もう遅かった。

「そうだね……すごく、髪が綺麗」

妹に褒められるときのときめきは、もう抑えられなかったのだ。

「それは、鈴音も一緒だよ」

シーツとカーテンに包まれた白い空間で、金髪が輝いている。その美しさと、包み込んでくれるような鈴音の優しい表情に、祐輔は心惹かれるのだった。

「ありがと……お姉ちゃんには敵わないけどね」
「うふふ、言ってくれるじゃないの」

どんどん、今までの自分とは別の人格が形成されていく。グラマラスな体にふさわしい、誘惑的な女性としての人格だ。

「(この体になったっていうのに、男だっていうことを固辞しても、仕方ないよな……)」
「あとね、おっぱいもすごく大きいし」
「そんなの、私が一番解ってる……誰にも負けないよ」

今度は、自分から乳房を寄せ、鈴音に見せつける。

「ふふ、またそんなに硬くしちゃって、いけない子ね」

鈴音のトランクスが盛り上がっているのを、もはや愛嬌のあるものとしてみている祐輔。鈴音は顔を赤くする。

「姉さんが悪いんだろ」
「はいはい、ごめんなさいね。それじゃ、そろそろ戻りましょっか。イケメンさんっ」
「また、見せてくれる?」
「じゃあ、鈴音が女の子に戻って、成長したときに、お返しに見せて?」
「わ、わかったよ」

こうして、その日一日、祐輔は、男性を演じる鈴音と一緒に、女性としての自分を演じることにしたのだった。

その数日後。二人は、戻れていなかった。いや実際は、戻っていなかった。元に戻る薬品を渡された時、二人の同意でもう一日だけ、男女逆転の生活をしてみようということになって、それが一日延長では終わらず、同じことが何日も繰り返されているのだ。

変身して以来、登校中は二人はいつも一緒だ。

「まって、鈴音!」
「ゆうねえが遅いんだ」
「もうっ、それなら……えいっ!」

祐輔は鈴音の背中に自分の胸を押し付けるように抱きついた。鈴音は赤面する。

「ね、姉さん……やめてったら」
「いいじゃないの、姉弟なんだからぁ」

祐輔が、最初は仮初めのものとして作り上げた女の性格が、元の性格、男としての祐輔に上書きしていた。

「鈴音の背中、大きくてほっとするなー」
「バカなこと言ってないで、行くよ!」
「はいはーい」

祐輔にとっては、もはや元に戻る理由などなくなっていた。

「(鈴音さえいれば、私は生きていける。たとえ、どんな体になっても!)」

鈴音に寄り添いながら、高校へ向かう祐輔だった。


 

あむぁいおかし製作所の他のSSはこちらから。

成長

小学生である俺の弟には、成長ホルモンのバランスに問題があるらしい。健康診断で問題が出て、紹介された病院の医者にそう言われた。俺も、母さんも父さんも、かなり慌てたものだ。それから1ヶ月後。実際の所、問題は全然なかった。

俺を除いては。

「兄ちゃんお帰り!」
「おう、ただいま」

夏の暑い日、汗だくで帰った俺を、リビングで迎える弟の太一(たいち)。髪を短く切って、シャツと短パンで涼しく決めている。母さんは俺のぐしょぐしょに濡れた服を見て、呆れ顔だ。

「汗びっしょりじゃない。お風呂入ってきたら?」
「ああ、そうするよ」
「ちょっと待ってね、入浴剤持ってくるから」
「あ、あぁ……」

母さんは廊下の方に出ていった。さて、さっきの問題というのなんだが……

「兄ちゃん、部活って楽しい?」

弟がいたはずの所に、高校生の俺と同じくらいの背丈の女の子が立っている。髪は長く、胸はサイズが合わない服をピンピンに引っ張り、ムチッとした尻に短パンが食い込んでいる。後ろに腕を組んで前のめりになって聞いてくるせいで、胸の谷間が自分の存在をこちらに強烈に主張してくる。

これが、俺の弟だ。普段は普通の活発そうな小学生男子だが、俺しか見ていない時に限って出るところは出て締まるところはキュッと締まった女に急成長するのだ。ホルモンバランスの崩れから来てるんだろうが、一体全体、成長ホルモンってなんなんだよ……

「ねえねえ?」
「……!?」

かわいい女の子、いや弟の顔がギュッと急接近してきた!思わず狼狽してしまう俺に、どんどん弟は接近してくる。

「ほら、持ってきたわよ……って何顔赤らめてるの?」

母さんがいきなり部屋に入ってきて、飛び上がってしまった。

「こ、これはそういうのじゃなくて!」
「……何が?」
「あ……」

魅惑的な体つきの少女は、跡形もなく姿を消し、いつもの弟が少し不満気な顔をしているだけだった。思わずため息をついてしまう。

「……はぁ……風呂入ってくる」

毎日弟が変身するのを見て慣れていたはずなのに、あんなに近寄られるなんて思ってもみなかった。太一は太一で、自分が変身していることに全く気がついていないらしい。胸を触ってみてもいいかとダメ元で聞いた時は、ちょっと首を傾げただけで了解された。その時触った感覚は、太一が本当に女の子になっていることを証明していたけど……

風呂場に着くと、すでに湯が沸かしてあった。母さんに渡された入浴剤を入れると、シャワーの蛇口をひねった。と、その時だった。扉越しに、いつの間にか風呂場の前に来ていた母さんがとんでもないことを言った。

「ねえ、太一も一緒に洗ってあげて、お母さん忙しいから」
「え、ちょ……!?」

普通に考えればとんでもないことでも何でもない。が、俺の場合はそうも行かない。でもシャワーを止めて拒否する前に、太一が入ってきてしまって、抱きつかれた。

「兄ちゃん久し振りにお風呂一緒だね!」
「え、えっ」
「じゃあお願いね」

風呂場の扉がガチャッと閉められると、俺の体にムニィッと弾力感が伝わってきた。おっぱいだ。弟のおっぱい。

「背中洗いっこしよ!」
「えぇっ!?」

服越しには分からなかったキメの細かい肌と、柔らかそうな丸い輪郭。混乱した俺にはそれしか分からなかった。しかし、俺の体に胸を押し当てている女の子はどうあがいても弟だった。

「え、してくれないの?」

そんな泣き顔するな!そんな顔されたら断れないだろ!?

「ああもう、すればいいんだろ、すれば」
「じゃあ太一の背中から!」
「はいはい」

俺は、風呂椅子に座った弟の後ろに回る。まずサラサラと背中に流れる長い髪を肩の前に回した。

「ゴクリ……」

出てきた背中のなんと綺麗なことか!俺と同じくらい大きいのに、汚れの全くない、真ん中に筋がすーっと通った、とても繊細そうな肌。写真で見たことはあっても、目の間にあるとまた違う。

「どうしたの?」
「あ、ああ、今洗うからな」

これ、いつものヤツで擦ったら絶対傷つけてしまう。どうやって洗ったらいいのか……考えた挙句、結局母さんが使っているスポンジの柔らかそうな方で洗った。

「ちょ、ちょっと痛いよー」
「あ、暴れるなって!」

四苦八苦しながらも何とか背中を洗い終わる。

「じゃあ髪の毛も!」
「はぁっ!?」

こんなに長い髪の毛、本当にどうやってあらうんだ……普通にロングだよな、これ……これこそ、細心の注意を払うべきところだろうが、洗い方なんて知るか。

「いつもどうやって洗ってるんだ?」
「んー、いつもは髪短いから……」

なるほどな。

「じゃあ、俺が出るから、自分で……」
「やーだっ!兄ちゃんに洗って欲しいの!」
「わがまま言うんんじゃない!そんな顔したって俺には通用しないぞ!」

そんな、ねだるような顔されたって、俺は……実際、完全に敗北してる。めちゃくちゃドキドキしている。

「そ、そう……?」

すごくがっかりしているようだ。俺だって洗ってやりたいのはやまやまなんだが。

「じゃ、髪が終わったら他の部分を一つだけ、何でも洗ってやるから……髪だけは洗えって」
「はーい」

俺は風呂場を出て、扉を閉めた。気になって中をのぞき込むと、いつもの弟のようだ。ワシャワシャと自分の頭を揉むようにして洗っている。あれなら、俺にもできるんだがなぁ……

「終わったから入ってきて!」
「おう」

扉をがらーっと開けると、目に飛び込んでくるのは突起のついた巨大な丸い膨らみと、長い髪に飾られた端正な顔。こんなに急に変身して、痛くもなんともないんだろうか?

「じゃあ、胸を洗って?」
「あぁ、胸な……ムネェッ!!?」
「そうだよ?ノリツッコミしてないではやくはやく!」

しゃべるたびタプンタプンと揺れるあの豊満な果実を、洗えと!変な気持ちが沸き起こりそうで恐ろしいったらありゃしないが、約束は約束だ……仕方ない。さっきのスポンジを使えばいいだろうか……

「あ、スポンジは痛いから素手でやってよ」
「はぁっ!?やめだやめだ、胸以外のどこかに……」
「なんでもって言ったじゃん」
「ぐぬぬ……じゃあ洗うぞ……」

手に石鹸をつけて、恐る恐る肌色の膨らみに近づける。これは弟だ、弟なんだぞ……なんでこんなに興奮しなくちゃならんのだ……

「あんっ……♥」

指の先がピトッと触れた瞬間、弟が変な声を……喘ぎ声を出しやがった……どこのエロゲだよ……こんなの、兄弟がすることじゃ……

「どうしたの……?手が止まってるよ?」
「あーもう!やればいいんだろ!?」

胸に手を付け、石鹸を一心に塗りたくり、泡を立てようとする。だが、力を入れるたび気が狂うくらいに変形するそれは、その質量と触感で俺の性欲をかきたてた。

「んあぅ♥ふあっ♥」

おまけに、弟はエロいとしか言いようがない喘ぎ声を続けざまに出してくる。目の前で、俺の手によって大きく形を変えるおっぱいと合わせて、俺の股間はとてつもなく固くなって、痛いほどだった。その時、風呂場の扉が一気に開いた。

「いつまで入ってるの!?」
「か、母さん!?」

み、見られた!弟の胸に欲情してるのを、現行犯で見られた!!

「こ、これは勘違いで……!」
「え?」
「あ。」

パニクった俺の精神は、元の姿に戻っている弟を見て落ち着いた。胸があった空間には何もなく、背も縮んだ弟の顔に、俺の手が当たっていた。

「何が勘違いなの?」
「い、いや……」
「それよりも、男同士がなんでこんなに風呂が長いのよ……おやつ準備してあるから、早く出てきなさい」
「はーい」

母さんは溜め息をついて、扉を閉めて去っていった。と同時に……俺の手にムニュゥ……と、柔らかい感触が戻ってきた。

「ひぁっ♥」
「も、もう大丈夫だろ……?」
「うん。それで、僕の体のことなんだけど……」

ん、急に雰囲気が変わったぞ。

「なんだ?」
「実は、兄ちゃん以外に今の姿を見せたこと、無かったけど……もう耐えられそうもないんだ」
「は?」
「これまでは成長を抑えて、元の姿でいられたんだけど、この頃、どんどん抑えきれなくなってて……トイレの中で成長したりして何とかしてたんだ」

どういうことだ。弟は周りの環境にあわせて、意思とは関係なく変身していたのではないのか?

「だけどもう限界みたいでさ、お母さんの前でもグッとこらえるくらいじゃないと、この姿になっちゃうんだ」
「ちょっと待て、それって……」
「男は、もうやめないとね。こんな大きなおっぱいで、男だなんて言えないから。だから……兄ちゃん、僕のこと、守ってね」
「まも……る……」

守る。その重大な責任について、俺はこの時全てを理解できなかったが、こくりと頷くしか無かった。これから女性として生きていく弟のためだ。

「ああ、守ってやる」
「兄ちゃん……ありがと……」

弟は、俺に抱きついてきた。俺は、少しの震えと、胸にムギュッと柔らかい何かが当たる感触を得ながら、覚悟を決めるのであった。

トリック・アンド・トリート ~クッキー編~

「こ、ここはどこ……?」

一人の女子大生が、路地裏で迷っているようだ。日も暮れ、街灯がぽつりと一つ、彼女の上で光っている以外は、真っ暗だ。

「わ、私今まで大通りを歩いてたよね……?スマホ見ながら歩いてたっていっても、こんなところ、入ってくるわけ無いし……とりあえず地図を調べて……」
「おじょうさん」
「うわぁっ!?」

暗闇の中からいきなり男の声がして驚く女子大生。そこには、時代遅れのローブを着た、RPGに出てきそうな男が立っている。

「こんな所を一人で歩いていては、危険ですよ」
「……ご、ご心配ありがとうございます……」

彼女には、不気味なローブ姿の男から一刻も早く遠ざかりたい、という直感にもにた恐怖が湧き上がった。しかし、足を動かそうとする意思に、体が従わなかった。

「え、なんなのこれ、足が動かない……」
「それは、そうですよ。私の結界の中にいるんですから」
「結界……?」

女子大生は、真上から自分を照らす光に、熱のようなものが加わってきているのに気づいた。

「ちょ、これ、熱い……!」

光を遮ろうとして、手をかざす。だが、その手に、妙な感覚が伝わってくる。

「なんかすごくカサカサする……!」

手を目の前に動かすと、その感覚の正体が分かる。しかし、彼女は安堵するどころか、恐怖を感じざるを得なかった。彼女の手は砂をかぶったように白い粉で覆われていた。いや、彼女の手自体が、粉になっていたのだ。手は、彼女がじっと見ているその前で手首からポロッと取れ落ち、床にぶつかった衝撃で、粉々になってしまった。

「……え……っ」

手だけではない。光が差す体の表面、服の表面が色を失っていく。同時に、サラサラとした粉が、体から分離し床に積もり積もっていく。

「……!」

悲鳴を上げようとした彼女の口も、いつの間にか固まり、瞳から流れだした涙も、粉に吸い込まれ、顎まで流れることはなかった。ついに、手の指や髪の毛の先が欠けていたが、女子大生は人間の形を保ったまま、完全に白い粉の塊と化した。

「ふむ……なかなか形が残りましたね……しかし、像にするのが私の目的ではないですし……」

男がパチッと指を鳴らすと、粉の像にピキッと亀裂が入り、各部分がバラバラに落ち、床にあたって砕け散った。最後に残ったのは、白い粉の山だ。

「よし、これで人間小麦粉の完成といったところでしょうかね。これに砂糖とバターと卵黄と……私特製のスパイスを……」

男の言葉とともに、どこからともなく現れた、白い粉、黄色い固まりと液体、そして光の粒のようなものが山に加えられ、竜巻のように舞い上がって、混ぜられていく。材料は、これも忽然と現れた無数の型に流し込まれ、一瞬にしてふっくらと焼けた。あたりには、とろけてしまいそうな甘い香りが立ち込める。

「おいしいクッキーの完成ですね。本来ならティータイムにピッタリの」

一口サイズに焼けたクッキーは、あっと言う間に数個ずつプラスチックの袋に梱包され、ひとりでに夜空へと飛んで行く。

「こんな夜にお菓子を食べる子は、いないでしょうが……まあ、明日が楽しみといったところでしょうかね」

ローブの男は、女子大生を小麦粉にした照明に向かってパチッと指を鳴らした。すると明かりは消え、逆に周りの風景が見え始める。そこは、女子大生が歩いていた大通りそのものだった。彼女は、この男の、照明に見立てた結界の中に入ってしまったせいで、周りが見えなくなり、逃げ出せなくなってしまったのだ。

明かりが消えると同時に、男も姿を消し、大通りの喧騒は何事もなかったかのように夜を明かした。

その翌日。夏の暑さに耐えかね、二人の小学生の男子が、クーラーの効いたリビングでゲームに勤しんでいた。二人とも元気いっぱいの育ち盛りで、こんなに暑くなければ仲間と野球をするような外見をしている。

「いただき!」
「あっ、そこでくるかメテオ!」

対戦ゲームのようで、かなりヒートアップしている。それで、彼らの横にスッとクッキー入りの袋が飛んできたことにも気づかなかった。

「そろそろおやつ食べよっか!」
「そうだな建人(けんと)!あ、こんなところにクッキーが……」

少しおとなしめな子のほうが、クッキーの袋に気づき、建人と呼ばれたもう一人に見せる。

「クッキーよりポテイトゥ食べようぜ」
「あ、もう一つ食べちゃった……なんだこれ、変な……あ……っ」

クッキーを食べた子が、胸を抑えて苦しみだした。そして、床に仰向けに倒れ、手を床に付け、ぐっと痛みをこらえるように、歯を食いしばった。

「な、大智(たいち)どうし……」
「んああっ……!!!」

急に叫び声を上げる大智と呼ばれた子。すると、手足がググッと伸び、薄手のTシャツの胸の部分に、ピクッと突起が立った。股間も、異常なまでな勃起を見せている。建人は、いきなりの親友の変化に、腰を抜かし、倒れてしまう。

「た、たすけ……んぅああっ!!!」

さらに手足が伸びるが、それは普通の男のように筋肉や骨で角ばったものではなく、まるで女のように皮下脂肪に覆われ、柔らかな輪郭を持ったものであった。同時に腰がグキキッと何かに引っ張られるように横に拡大する。スポーツ刈りにしていた髪の毛も、サラサラと伸びて、周りの床に広がっていく。

「た、い……ち?」

夢にも見なかった事態を受け入れられず、ただただ大智が変わっていくのを見届けるしか無い建人。

「あ、おちんち……んんっ!!!」

股間の突起が、グチッ、ミヂッ、と音を立てて、体に潜り込むように萎縮し、ついに見えなくなってしまった。

「ふぅ……ふぅ……んっ!あぅっ!」

左胸がグイッと盛り上がり、薄手のシャツの襟から、どうみても乳房の膨らみにしか見えない、肌色の固まりがはみ出る。続いて、右胸も同じサイズまで膨れ上がり、女子高生の体格まで大きくなっている体の上に、大きな双子の山が出来上がった。

「ふあっ……もっと……んぁっ!!」

大智が声を上げるごとに、ムクッ、ムクッと体が一回りづつ大きくなる。その吐息は、小学生のものは到底思えない色っぽさを醸し出している。着ていたシャツはビリビリ破け、短パンは尻と太股に食い込み、その肉感をさらに強調している。

《ビリーッ!!》

ついにシャツが胸からの圧力に負けて大きく破れ、頭と同じくらいのサイズになった胸が解放されて、タプンタプンと大きく揺れた。同時に、大智は喘ぎ声を出すのをやめた。

「た、大智?大丈夫か?」

建人はやっと我に返り、数分前の姿の面影が全くなくなった大智に近づいていく。仰向けに寝そべったその体の上で、大智の呼吸とともに揺れる胸は、建人の幼い好奇心を誘う。

「(ゴクリ……)」

建人は、その力にあっさりと負け、腕を豊満な乳房へと伸ばした。その瞬間、大智の目がカッと見開き、建人の腕をガシっと掴んだ。

「ひゃっ!?ご、ごめ……!」

しかし、建人が想像したのとは逆に、大智は友人の腕を、自分の胸に押し付けたのだった。

「どう?私のおっぱい……。やわらかいでしょ……?」
「えっ、ええっ……うん、やわらかい……」

建人のなかで、さっきまで対戦ゲームで盛り上がっていた大智とは思えない発言に対する警戒と、手に伝わってくるなんとも言えない柔らかい感触への興奮がせめぎあい、幼い精神はパンク寸前になっていた。

「じゃあ……」

大智は、寝そべったまま建人の服を超人的なスピードで脱がせ、両手でヒョイッと持ち上げて自分の体の上に寝かせた。

「私の体、全身で堪能して……!」

そしてギュッと腕で建人を抱きしめ、乳房に建人の頭を押し付ける。

――おっぱいやわらかい……いや!こいつは大智で……で、でも……おなかもすごくスベスベしてる、そしてこの汗の匂い……

建人は、今起こっていることの不可解さに混乱しつつ、小学生でも持ち合わせている本能に、徐々に抗えなくなっていった。

「まだ何もしないの……?じゃあ私から……」

その時だった。

「建人お兄ちゃん?誰か来てるの?」
「真都(まと)!」

建人の、同じく小学生の妹、真都が、いつの間にやら部屋に入ってきたのだ。

「駄目だ、今は入ってきちゃ……っ……」
「だれなの、このおねえちゃん……えっ」

建人の中で、何かの線がプツッと切れていた。何かを考える前に、いたいけもない妹の口に、親友を女性にしたクッキーを、有無をいわさず突っ込んでいたのだ。

「お、おにいちゃ……んっ……!」

その効果はすぐに現れた。身長が伸びる前に、膨らみかけにも入っていない胸が、ムクッ、ムククッと、部屋着の薄いシャツを盛り上げ始めたのだ。その大きさは、30秒ほども経たないうちに特大メロンサイズまでになってシャツの下からはみ出し、真都の体では支えきれなくなってしまった。

「なんで、私におっぱいが……んああっ……!!!」

後ろに突き出す形になっていた尻がムギュギュッと膨らみ、同時に足がニョキニョキと伸びて、未だ胸以外成長していない上半身を、下から押し上げていく。足には、ムチムチと脂肪が付き、腰もゴキゴキと広がる。

「いや、私これ以上大きくっ……!!」

腕も伸び、部屋着を限界まで引っ張る。背骨が伸びて、相対的にウエストが絞られ、女性特有の美しい曲線が描き出されていく。

「わ……私……」

声も、子供っぽい高い声から、落ち着いた声に変わる。そこで変身が終わったのか、大きくなった腕をついて、何とか立ち上がった。

「こんなに、大きくなっちゃったのね……」

建人は、何も考えること無く、自分よりも格段に背の高くなった妹の胸に飛びついた。

「あら、おにいちゃん。そんなに私のおっぱい好きなの……?」

妹の問いに、ただただ頷く建人に、理性はほぼ残っていない。起き上がってきた大智は、真都に目配せし、建人を持ち上げて真都の胸に押し付け、自分の胸も同じように押し当てた。建人は、頭を二人の乳で挟まれ、そして考えることを完全にやめた。

「今回は効能を大きくしすぎましたかね……性格や思考が完全に変わってしまうとは……」

疲れ果て、死んだようにリビングの床で眠る3人の子供を、ローブ姿の男が眺めていた。

「次にお菓子を作る前に、少し検討する必要がありそうですね……まあ、このお三方にはこれからも楽しんでもらうことにしましょうかね。この際、クッキーは差し上げることにしましょう」

まだ、中に15個は残っている包みを、男はニヤニヤしながら確認し、そして部屋から姿を消した。

俺は男だ!

「だから俺は真也(しんや)だって!」

俺は、昨日まで見たこともなかった女の子に迫られている。懇願するように、肩をつかまれ大声を出されている。ショートヘアで小柄、言ってしまえばボーイッシュなのだが、胸は膨らみかけ。声もアルトと男にしては高く、正真正銘の女の子。それが、朝学校に来た瞬間すがりつかれたのだからこちらも大混乱している。

「わかった、わかったから落ち着け」

とはいえ、休み時間中に見ていたエロ本の内容をすらすらと言い当てたのだ。間違いなくこいつは俺の親友の真也だ。

「ほ、ほんとか?」
「仕方ないだろ……それよりも、何でそんなことになってるんだよ」

真也は、俺の幼なじみで、昨日帰りに別れるまでは、運動神経のいい、男の中でも筋肉が人一倍ついた、いわゆるマッチョ体型の男だったはずだ。それが今は、腕はほっそりとして、胸筋が付いていたはずの胸は多少の膨らみがあるだけだ。

「俺が知るかよ……朝起きたらこんな事になってて、ショックで思考停止状態になってここまで来たんだ」
「普通そういう時って学校休むよな」
「来ちまったんだから、しょうがないだろ」

俺が女になったらそうする。それで、色々な所を物色して……まぁそんなことは置いといて、今女になっているのは真也だ。この状況をどうするべきか。昨日までエロ本を共有する仲であったとしても、いきなり体を見せてくれとは言えないだろう。

「じゃあ、体を見せてくれ……」

あれ、俺今なんて言った?

「お、俺は男だぞ……?」
「いや、女……」
「男だって言ってるだろ!」

真也は大きな声で怒鳴ってきた。俺は答えを返すことができない。それは、大きな声でひるんだせいではない。真也の胸がいきなり、ボワン!と大きくなったのだ。しかも、かなり大きく。

「な、何これ……!」

真也は、胸にいきなりついた重量に狼狽している。小さいメロンくらいのサイズはあるだろうか、シャツの中でタプンタプンとゆれる、それは紛れも無くおっぱいだ。それに、足の方も、さっきに比べてムチッと肉が付いている気がする。髪も少し伸びて、最初言った、ボーイッシュという表現があてはまらなくなった。つまり……

「お前、女っぽく……」
「俺は男だ!」

今起こっている事象を全部否定したいのだろうけど、どたぷんと揺れるおっぱいが俺の視界を誘惑する。どうしても、思春期の男の性というか、見ざるを得ない。女の、乳房だ。しかも、俺の目が釘付けになっているその時に、またギュッと一回り大きくなった。俺の股間もギュッとなったのは言うまでもない。親友に性的興奮を覚えている俺は、どうしてもこいつが女だと認識するしかない。そうじゃなきゃ、俺がホモだってことになる。

「……大人しく女だって認めろよ」
「なにいってるんだ!、俺は男だ、男だ、男だっ!!」

もうさっきから気づいていたけど、真也は自分が男だと思う、というか主張するたびに、体が反抗するように女の特徴が大きくなっている。髪はみるみる伸びてロングヘアに、尻もでかく、胸の方は落ち着いてきたがそれでも大きくなり続け、心なしか、胸に引っ張りあげられたシャツの隙間から見えるウエストが、更にくびれている気がしてならない。

「お、落ち着け!おい!!」
「はっ……」

俺が手を伸ばし、制したところでやっと、真也は自分の体の変貌に気がついたようだ。

「これが、私の体……?」

どうやら女になりすぎて、思考も変わってしまったらしい。身振り手振りが周りの女がしているのとほとんど変わらない。ああ、真也よ、今お前はいずこに……

「そうだよ。分かったらこれ以上お前自身が男だなんて……」
「責任、とって?」

ん?こいつ、今責任って言ったか?

「私をパニック状態にしたのは、あなたでしょ?ね、責任取ってよ」
「何言って……」
「いいから、ね」

さっきとは打って変わって、自分からその肢体を見せつけるような格好をしている。誰だ、こいつ。と思いつつも、俺の心臓は強く拍動していた。

「……ああ、なんでもしてやるさ」

巨大兵器

「未確認航空機、発見!来ます!」

コンピュータがこれでもかというように配置されている、特撮の司令室のような部屋で、大声が飛び交う。

「戦闘機部隊を派遣し、できるだけ被害を抑えろ!その間に、アレの展開を!」
「司令!アレは遺伝子G1A-NT35Sを持たない人間には……」
「だから遺伝子スキャナーを搭載して、自律的に適合者を見つけられるようにしたんだ!今すぐ展開!」
「り、了解!」

部下は、とんでもなく大きい赤いボタンに拳を叩きつけ、「アレ」を起動した。

ある中学校の校庭で、その子はバレーボールをプレーしていた。

「えーいっ!」

跳躍し、大きく動かした手が強いスマッシュを繰り出した。その球は、地面に叩きつけられる……

《パァン!》

直前に、破裂した。

「え、なに!?あ……」

《ゴゴゴゴゴ……》

地響きがしたと思うと、爆音とともに白の機体が少女の真上を通り過ぎた。白い機体に、日の丸が付いている。

「自衛隊のジェット戦闘機……?じゃあ、今のは流れ弾?でも……」

敵がいなければ、弾を撃つ必要など無い。平和を謳歌する日本に、敵などいるはずがない。だが、少女の疑問を解消するとともに、あらたな疑問を投げかけることが起こった。ジェット戦闘機を追うように、黒い、プロペラの飛行機が猛スピードで飛んでいた。第二次世界大戦の映画で見たような、一見古いその機体には、ネオンのように青く輝く塗装がなされ、SFチックにも見える。その飛行機は、ジェット戦闘機に置いて行かれるどころか、その後ろにピッタリとつけ、そして……

《バァン!!》

一瞬にしてジェット機が火に包まれた。

「な、なに……」
『適合者、発見!融合します!』
「えっ!?」

映画さながらの壮観を見上げていた少女は、声がした方を見た。すると、DVDのような銀色の円盤が飛んでいるのを確認できた瞬間、少女の腹部に突き刺さった。

「んぐっ……!」

円盤が刺さったところから出たのは血ではなく、光だった。

『融合シークエンス開始!』

そして円盤は少女の体の中にグリグリと入っていってしまった。

「え、ちょ、ちょっと!」

少女は円盤が入っていった腹部を触ってみたが、傷ひとつ付いていない。

「え、えぇ……!?きゃっ!?」

困惑する少女に追い打ちをかけるように、その隣に巨大な金属の塊がドーンッ!と落ちてきた。塊には、金属の筒が何個も付き、まるで戦艦に付いている砲塔のようだった。

『さあ、触ってください』
「へ?」

少女に、男の声が聞こえた。軍人じみた、正しい規律と威厳を感じさせる低い男の声だ。

『あなたには申し訳ありませんが、我々の敵と戦っていただきます』
「て、敵?」
『今は説明している暇はありません!その兵器に触ってください!』
「そんなこと言っても……」

少女の頭上に、プロペラの音が響いた。上を見ると、先程の戦闘機が、少女に向かって突っ込んできていた。

『さあ、早く!!』
「え、えぇい!!」

戦闘機に襲われる恐怖と、それから逃れるただ一つの窓を与えられ、少女は言われたとおりにするしかなかった。少女が兵器を触ると、砲が戦闘機に向けられ、ドドドド!!と連続して発射した。その弾は戦闘機に当たることはなかったが、驚いたのか、戦闘機は向きを変え、通常の飛行に戻った。少なくとも戦闘機を追い払うことはできたようだ。

「たすかったぁ……でもこれじゃ、アレを倒せないよ……」
『巨大化シークエンス開始!』
「へっ!?」

急に空から光が舞い降り、少女は光に包まれた。

「え、え、あああああっ!」

光はすぐに収まったが、少女の体の中にとてつもないエネルギーが貯めこまれ、全身が光り輝いていた。

(か、体が、熱いっ!!)

ついに、それは始まった。少女の体がグーッと大きくなり始め、服のあらゆるところがバリッ、ビリッと裂けていく。靴は縫い目がほつれ、収まりきらなくなった指が外に出ていく。1m半くらいだった身長は、あっという間に、2m、4mと大きくなり、先ほどは体より大きかった兵器を、片手で持てるほどの大きさまでどんどん巨大化する。地面は少女が動くたびにえぐれ、服は腕や足に巻き付く糸のように千切れてしまった。身を包むものが無くなった少女の周りに光の粒が集まり、セーラー服を形成すると、校舎の2倍くらいの高さになった少女は、変身を完了した。

『さあ、兵器を持って戦ってください!』
「も、もう、やればいいんでしょ!」

地面に置かれていた兵器を持ち上げ、少女は飛行機との戦闘を始めた。

《パァン!》
「ふぅ、やっと全部落とせた……」

ハエのように不規則な飛行をする戦闘機に手間取りつつも、10分ほどで少女の圧勝が決まった。とはいえ、服はビリビリにやぶれ、もともと大きめな少女の胸が下から見えてしまっていた。

「やっと、これで元に……」
《ドォン!》
「今度はなに……えっ!!??」

頭上から聞こえてきた大砲の音に、目線をそちらに向ける少女。そこには、今の少女より大きな古い戦艦が空を飛び、砲塔を少女の方に向けていた。

『ちっ、トヤマが出てくるとは……さらなる巨大化シークエンス開始!』
「と、とやま……?て、ちょっと待って!!」

納得行かない少女に、またもや光が降り注いだ。

「ね、ねぇ……もうこれで終わりだよね?」
『た、多分……』
「多分じゃないわよ!もう、今私がどれくらいの大きさになってるか、解ってるんでしょ!?」

その大声は、太陽系中に響いていた。少なくとも、真空でなければ響いていただろう。少女は、今や太陽よりも大きくなっていた。兵器は少女の巨大化に合わせ、変形に次ぐ変形を遂げ、地球がその砲塔に何個も入るほどの大きさまでになり、同じくらい巨大な敵の主力艦を木っ端微塵にした。

「じゃあ、戻してよ!」
『そ、それが……君の巨大化をコントロールしていたマイクロ波発生器が暴走して……』
「そ、それじゃ私……」

これもまた、巨大化に合わせて繕い直されていたセーラー服が、ビリビリと音を立て始めていた。

「も、もういや!!……あっ」

激しく動いた少女の体は、近くにあった地球を粉々にしてしまった。少女はその意思とは関係なく、人類を滅ぼしてしまったのだった。

知ってる パート1

私の目の前に、信じられない光景が広がっている。巨人に、いろいろな人が食べられてる。顔は見えないけど、とっても恐ろしい。……いや、実際、なぜか恐怖は感じていなかった。

私は知ってる。

このままだと、私以外の全員が食べられちゃう。でも、私は何もしようとしなかった。気づくと、轟音が後ろから近づいてきた。戦車みたいな、軍隊の車。その車は、巨人に大砲を向けて、撃った。


そこで、目が覚めた。私、梨乃(りの)は、地元の学校に通う女子中学生。
中学に入れば毎日が楽しいなんて思っていた日々はとっくのとうに過ぎた。今日はなにか起きないかな……

この一向に成長しないからだも、いつも通り。……そして、昼休み一人になるのも。

「はぁ……」

お母さんが作ってくれたお弁当を黙々と食べる。ごはん、ひじき、にんじん。周りではみんな楽しそうに話しているんだろうけど、私にとっては全部雑音にすぎない。食事を進めることだけが、昼休みにやることの全て。それよりも、いつもならお弁当を半分くらい食べれば満たされるおなかが、全く満たされないことが気になる。食べても食べても、満腹感が得られるどころか、空腹感が強くなっていく。

「おなか……すいた」

会話が終わったのか人が歩いてきた。女の子で、私よりも、とっても肉がついてる。胸や、尻や、脚。私にない何か。飢えを満たしてくれる何か。

《グゥゥーッ》

私のおなかが、まるでその子を求める野獣のように鳴いた。その音が大きかったのか、その子はこっちに意識を向けた。私は、無意識に立ち上がってシャツをたくしあげ、その手をさらけだされたお腹に引っ張りこんだ。すると、おへそが異常に広がって、手をグボッと飲み込んだ。

「えっ……」

その子は、驚きのあまり声も出ないみたい。でも、私にとっては、とても当然のことのように思えた。

《グチュチュ……》

私のおなかは、まるで生き物のように動き出し、腕をゴクンゴクンと飲み込んでいくと同時に前に突き出ていく。

「……っ!」

おなかの中で、手が動くと、これまで感じたことのない強い感覚、それも痛みというより快感が襲った。それは強烈過ぎて、最初は受け入れられなかった。

《グパッ……チュッ……》

腕がどんどん飲み込まれ、ついに肩に達してしまった。視界の下では、腕の形をした、いびつに膨れたおなかに、女の子がくっついている状態。その子はこっちを見て、懇願するように涙を流している。私に、とてつもない優越感が走る。今、この子の命は私にかかっているんだ。

「ふふ……あなたの体、頂戴❤」

おなかが、急激に膨らむ。いや、女の子が、飲み込まれていく。へその奥に、肩から、顔、もう片方の腕が飲み込まれ、腰から上が完全に入ってしまった。その時になってやっと逃げようとする意識が芽生えたらしく、おなかの中で暴れ、脚をジタバタさせる。おなかに伝わる振動、内臓が暴力的に殴られる感触が、さっきから続いている快感を増大させる。もっと、もっと食べたくなる。

《グチュルグチュル……》

体のバランスが崩れて、倒れてしまった。おへそに腰が引っかかって、入っていかない。力を入れると、おへそが信じられないほどに広がって、グニュグニュとうごめいて、脚をのみ込み始めた。飲み込まれるのにあがいている脚が、おへそを無理やり引っ張り広げたり、おなかに当たる。

「いやん……❤激しいんだから……」

膝まで入ると、おなかの中の動きが一層激しくなる。快感が激しすぎて、力が入れられなくなって、意識がもうろうとしてくる。

「はぁ……はぁ……❤あともうちょっと……!」

私の体より大きくなったおなかは、あの子の顔の形が出たり、暴れまわる手が皮にあたってバコッと飛び出たりしている。

でも、私は知ってる。

私は、何人でも飲み込める。いま出てる脚の下半分だって、ちょっと力を入れれば……

《ズルッ……プフ……》

脚も入ってしまい、おなかの中に巻き込まれていた空気が出てきた。

「うん……でも、本番はこれから……」
《グジュジュ……》

おなかが重くなって、人の形が出ていたのが、まんまるとなってきた。消化液が出てきたんだ。私はこれから、この子を吸収するんだ。

だんだん、おなかを蹴っていた力が弱くなっていく。それと一緒に、おなかから私の体に何かが染みこんでくる感じがし始める。その何かは、私の皮膚を下から押し広げるようにして、全身に広がっていく。

《ペキッ……ミチッ……グチュ……》

体のいたるところで、変な音がする。見てみると、その音のした所が、ムクッと膨らんだり、ニョキッと伸びている。何もなかった胸も、ギュッ、ギュギュッと盛り上がって、いつしか、縮んでいくおなかを追い越して大きくなっていき、メロンが入りそうなサイズまで膨れ上がっていく。

手足も、バラバラに大きくなっていくけど、私と、食べた子を足したほどの長さに成長していっているのがわかる。そして、おなかの方は、何もなかったかのようにすっきりするどころか、元々なかったくびれまでできてしまった。

「美味しかった……だけど……」

私は知ってる。まだまだ、私の体は求めている。

空腹感は全く消えてないし、むしろ強くなった気がする。まわりにいる人全員、おいしそうにみえてたまらないんだ。どうしてだろう、こんな感覚初めて。

「なあお前、床に座ってどうしたんだ?」

気づかないうちに、前に男子生徒が立っている。さっき倒れたままだった私が、通路に居座っていて邪魔なのだろう。

「ちょっとおなかがすいて、倒れちゃったの」
「……さっさと座ったらどうだ?それに、服も脱げてるし……」

でも、私にはそんなの関係ない。この男子も、私の食べ物。

「あ、このおっぱい、気になる?」

できたてほやほやのおっぱいを、持ち上げて見せつける。男子は、これにはかないっこない。

「そ、そうじゃなくて……」

そういう顔は、鼻の下が伸びている。狙い通りだ。そのまま、おっぱいの谷間に男子の顔を突っ込んだ。

「じゃ、あなたも私のおっぱいにしてあげるね❤」
「っ!!!!」

声にならない叫びを上げる男子の顔は、ズブリ、ズブリと谷間の奥底へ引きずられ始めた。それと同時に、胸の間がものすごく熱くなっていく。

「んっ……あっつい……」

今度は、私が言ったとおり、胸に直接養分が行ってるみたいで、おっぱいだけがムクムクと大きくなっていく。でも、大きくなるだけじゃなくて、なぜか自分で揺れ始めた。

「あんっ、きっと、あなたの、んあっ、え、エネルギーが胸に行ってるせいねっ」

おっぱいは、前にバイン!横にボワン!と揺れるというより暴れている。

「は、激しすぎっ……!」

男の子の体はというと、ぴくりとも動いてない。胸からの力で、揺さぶられてるだけだ。スイカ二個分のおっぱいになっても、まだ脚は吸収されてなかった。おっぱいは、バルンッ!ボワン!と飛び跳ね、私も体勢を保つのが大変なくらい活発に動いた。

「まだ入ってくるの?やだぁ、これ以上大きくしないでぇ❤」

飲み込んでるのは私だし、バランスボールくらいになったおっぱいが、ここで止まるのも不満があった。私は、今この男の子を食べてることを楽しみたかったのだった。その間にも、おっぱいの狭間にどんどん埋もれていく男の子の脚。ついに、かかとがスポッと谷間の中に消え、男の子は完全に私の一部になった。その瞬間、胸の動きも止まった。

「ごちそうさま❤あとは……」

「うわ、なんだこのおっぱい」
「こんな人、うちのクラスにいたっけ!?」

私の美貌に引きつけられてか、クラスのみんなが集まってくる。そして、私が食べやすい距離まで、近寄ってきた。

感染エボリューション 最終話

「こ、これが……」

唖然として立ち尽くす美優。声はしたものの、人の体の色をしているだけで、床にぶにゅっと潰れている巨大な肌色の塊には、それが祐希の妹であるどころか、人間であると判別できるものは何一つ無い。

「え、お客さん……?」

美優の声に気づいたのか、肉塊から声がしてきた。

「あぁ、そうだ……お前をアイツのウィルスから助けてやれるかもしれない、だから連れてきたんだが……」
「出てって!苦しいのは、私だけでいいんだから!」
「佑果……」
「それに、おばあちゃんは何も悪くない!だって……んっ!!」

肌色の塊から、ドクンッという鼓動が聞こえたかと思うと、ググッと一回り大きくなった。

「佑果、落ち着いてくれ!そうしないとまた大きく……」
「ご、ごめん……」

美優には、佑果をこのままにしておけば、いつかは部屋いっぱいになって、装甲車の中で大きくなった時のように、潰されてしまうのが目に見えて分かった。それでなくても、人の形を保てず、動けない佑果を、何とか助けたいという気持ちが芽生えた。その美優の頭の中に、声が響いた。

(この個体は治療可能。許可を)
「うん……佑果ちゃん、私はあなたを治してあげられる」
「本当か!!」

祐希は美優の肩をガシっとつかんだ。

「痛っ!ちょ、力強すぎ……!」
「す、すまない。それで、本当なのか?」
「うん。佑果ちゃん、あなたはなぜか体を治したくないみたいだけど……治させて」

佑果の方から声は聞こえてこない。美優は佑果が渋々同意したと見て、頭の中に答えた。

「いいよ。治療して」
(承知。まず接触を。リプログラミングが必要)
「わかった」

美優は、覚悟を決めて一歩一歩佑果に近づいていく。

「佑果ちゃん、行くよ」

そして、脂肪の山に手を触れた。すると、手が佑果の肌に融合した。

「んんっ……なにか、出て行く……」
(リプログラミング、開始)

佑果の体がビクンビクンと跳ね、表面がグニグニと動き始めた。

「おお……」

祐希は、美優の後ろで感嘆の声を上げる。しかし、その時だった。

(完了……。かかったな、マスターさん)
「えっ?」
ドクンッ!!

佑果の体が大きく脈動するのと同時に、美優の体にもとてつもなく大きな衝撃が走った。

「きゃああっ!!」
「美優!?」

その途端、佑果とつながっていた腕から、何かが大量に美優の中に流れこみ、美優の体を内側から押し広げ始めた。

(ふふふ、これこそ我々が求めていた進化、エボリューション。他の病原体の知識、能力も取り込んだ我々は、宿主の指図は完全に無視できる)
「や、やめて!!」

全身の骨がバキバキと言いながら伸長し、服が上へ下へと引っ張られ、ヘソが見えたかと思うと、ウエストが上下に伸びてくびれ、中心にはスッと線が入る。大きくなる骨盤はズボンを横に引きちぎり、出てきた尻は暴力的に膨らみ始めた。1秒もたたないうちに、美優は平均的な成人女性と変わらない体格になってしまったが、佑果からの吸収は速度を上げる一方だ。

(佑果、だったか。この子の治療はしてやるさ。というより、この子の中のウィルスを取り込み、お前の体を元に戻せないほど変形させ、最終的には精神を乗っ取るのだ)
「……!!」

ここまでまな板に等しかった胸にプクッと丘ができ、急激に膨れ上がって、乳房が形成される。それは一瞬のうちにリンゴサイズからメロンサイズになり、ムクリ、ムクリと2倍、3倍と体積を増やす。そしてあっと言う間に美優の体型のバランスを崩し、アドバルーンほどになってもまだ膨張を止めなかった。逆に佑果は、人の形に押し込められるように縮んでいく。

「だ、だめ……」

美優は暴走したウィルスの前に、為す術もなく膨らんでいくしかない。その時、部屋の扉に二人の女性が現れた。五本木と、捕らえられた伍樹だった。

「そこまでよ!あなたのボーイフレンドを傷つけたくなければ観念して実験台に……佑果ちゃん!?」
「美優ちゃん!?」

五本木は完全に元に戻ったのか、華奢な女子小学生の姿になっている佑果に、伍樹は吸収が終わってもなお大きくなる美優にそれぞれ駆け寄った。

「ねえ、佑果ちゃんなの!?……生きてたなんて……」
「おばあ……ちゃん……うん、ごめんね、今まであえなくて」

抱きしめ合う佑果と五本木だったが、祐希が無理やり引き離した。

「佑果から離れろ!このイカレ科学者!佑果はお前から守るために今まで俺が隠してたんだよ!」
「お兄ちゃん!違うの!おばあちゃんは私を治そうとして……!」
「そう、私は佑果ちゃんを……この子が、治したのね、今すぐ抗体をあげるから」
「この大嘘つきが!何が、佑果を治すだ、あんな実験に付きあわせて……」

祐希は二人の話に納得がいかず、五本木に殴りかかろうとする、が。

「た、助けて……!美優ちゃんが、美優ちゃんが!」

伍樹が三人に発した叫び声で、祐希も美優の危機に気づいた。美優は白目をむき、その胸は今もギュギュッ、ムギュッ!と膨らみ続けている。その大きさは部屋の半分を埋め尽くすほどで、あと数十秒すれば全て美優の乳房で埋まってしまうだろう。

「抗体じゃ……どうしようもないわね。このウィルス、いえ……今さら隠すこともないわ、ナノマシンは、究極の成長を遂げてしまったみたい。美優の精神も、もはや消えたも同然ね……」
「そ、そんな……美優ちゃん!」
「美優!しっかりしろっ!!」
「美優お姉ちゃん!」
「ダメよ、人間の精神が打ち勝てるものじゃない……」

だが、美優の目がぴくっと動いた。それを見て、伍樹が渾身の力で叫んだ。

「美優ちゃん!!!君ならできるはずだ!!!ウィルスに勝つんだ!!」

その叫びに応えるように、美優は意識を取り戻した。

「い、伍樹くん……うん、私!ウィルスになんか!負けないっ!!」

美優の叫びと同時に、巨大な体が光り始めた。その光は、次第に強くなり、直視するのが難しいほどになっていく。

「嘘、こんなこと……精神によるリプログラミング(再構成)なんて……!」

強烈な光に全員が目を閉じてしまう。だが、数秒すると光は弱くなっていき、そこでやっと、美優の姿を確認できた。そして、それは元に戻った美優。目を閉じて、ペタンと床に座り込んでいる。

「み……美優ちゃん!!」

伍樹が抱きつくと、美優は目を開け、伍樹に微笑んだ。

「勝ったよ、私……」
「うん……美優ちゃんは、すごいよ」
「伍樹くん……好き……」

何気ない衝動で、美優は伍樹とくちびるを合わせた。伍樹はすこし驚きながらも、美優を抱きしめた。

「外見は、レズだよなぁ……あいたっ!」

祐希に佑果のげんこつがお見舞いされる。

「お兄ちゃんは静かに!」
「いったたた……はいはい……」

そして、兄妹同士で微笑みあった。実験の失敗以来、一度も互いの顔を見ることが出来なかった兄妹は、幸せだった。

結局のところ、佑果には持病があり、脂肪があまり付かず体温の保持に支障をきたすほどだった。若返り薬の開発に成功していた五本木は脂肪を付けるウィルスを作り、佑果に使うことで、持病の影響を和らげようとしたのだ。それが失敗した上、研究所員の手違いで祐希が開発中のウィルスの実験台にされてしまった。失敗を認めようとしない頑固な性格のため、全て意図的に行ったと演じたところ、祐希も佑果も姿をくらまし、傷心のうちに人間の尊厳を顧みず人体実験を行うようになってしまった、というのが五本木の弁明だった。

「本当よ。その証拠に、ほら」

五本木は、確かにガリガリに痩せている佑果に、躊躇もせず薬を飲み込ませた。今回は正しく効果が出たようで、手足や顔にふっくらと脂肪が付き、健康的な体型になったが、美優は、自分が失敗することなど有り得ないというわけのわからない自信を持っているこの女性に、恐怖を感じざるを得なかった。

そして、一ヶ月後。
美優が再構成したナノマシンを下水に流した結果が、顕著になっていた。宿主の意思に完全に従う体型変化ナノマシンを手にした人々は、自分の理想の体を手に入れ、性別や年齢を越えた変身も、日常茶飯事だった。

「おっはよー」
「おはよ、美優」

結子と美優は、昔の体型のまま暮らしている。

「伍樹くんも」
「おはよう、美優ちゃん」
「お、美優じゃん、おはよう」

伍樹は元の男の姿に戻った、が、親友の望は、女子の姿である「のぞみ」が気に入ったようで、伍樹と友達としての距離は保ちつつ、付き合いを続けていた。

「おーい、着席しろー……着席して、お願い!」

教諭の龍崎はというと、幼女――つまり小学生くらいの女子のことだが――としての生活を楽しんでいるようだった。しかしクラスからの冷たい視線は、一部が妙な興奮の視線に変わっただけだった。

「美優、今日はロングヘアにしてるんだね」
「えへへ、あとでおっぱいも大きくしちゃおっかなー」
「本当、美優ったら見えっ張りなんだから」
「ふふん、でも、中の子が増えたい増えたいってうるさいの。だから……」

美優の胸が膨らみ、セーラー服がギチッと悲鳴を上げた。

「ちょっとだけ、また成長しちゃおうかな!」