同僚の秘密(若返る女・成長する少女8掲載)

俺はしがないサラリーマン。今日も朝から出勤だ。

「よし、ここなら誰にも発見されるおそれはないな」

ぼーっと歩いていると、路地裏から女の子の声が聞こえてくる。
見てみると、小学生くらいの小さな女の子が、こっちから見て、横を向いて突っ立っていた。
こんな朝から、何やってるんだ?ちょっと見ていくか。

「プロトコル1091045-1000、開始」

何だ、宇宙人ごっこかな?それにしちゃ気合入ってるな。あの子、目を閉じたし、もうちょっと近づいてみよう。

《ググッ…》

な、何だ…?女の子の背が、伸びている気がする。俺、まだ寝ぼけてるのか?いや、服とズボンの間にへそが見え始めてる。
確実に伸びている。足も、ズボンから段々、その素肌をのぞかせ始めている。

《ビリッ…ビリッ…》

服が、破け始めてる。女の子の体が、大きくなって、耐え切れなくなったみたいだ。
腰が大きくなって、何もなかったはずの胸にも、膨らみがついてる…これって…ただ大きくなってるんじゃなくて…成長してる…?

《ビリッ…ビリーッ!》

胸がムクーッと大きくなって、その拍子に服の破れ方が大きくなった。ズボンの方も、縫い目が段々ほころんで、中の肌が見えてきた。
でも、結構苦しいはずなのに、その子の、ちびっ子のようだった、今は思春期の顔は冷静そのものだ。

膨らんでいる胸は、周期的に空気が入れられるようにムクッ、ムクッと大きくなって、そのたびに揺れる。その揺れも、段々増長されて…
いかん…こんな朝から…勃ってきた…
足も、筋肉や脂肪が発達しているのか、すっと下まで伸びていたのが、次第に凹凸が付いてきた。ズボンの縫い目に掛かっていた糸が、切れ始めて…

《プツプツッ…プツッ…パンッ》

ズボンが彼女の体から落ち、パンツが丸見えになった。そして、その途端に、束縛から解放されたかのようにお尻がボンッと大きくなる。
パンツは悲鳴を上げながらも何とか耐え切った。

俺が胸に視線を戻すと、その大きさは、グラビアアイドル並みになって、ブルンブルンと揺れていた。服もほとんどが破れ落ち、
多少筋肉質なその胴体はキュッとくびれている。身長も、俺より少し低いくらいになった。先程の少女からは想像もできないほどに、
色気が漂ってくる。顔も、スッキリとした大人のそれになっていた。…待てよ、あの顔、どこかで見たことが…

「プロトコル完了。継続して、プロトコル1091045-10を開始」

また何かを口走った。さっきの幼い声とは違う、魅惑的な、どこか、聞き覚えのある声だ。
地面に落ちていた服が、解けてドロッと水銀のような銀色の液体金属になり、融合している。そして、ベチャッと、豊満な体を銀色に包み込んだ。
大きなおっぱいは、ギュッと持ち上げられ、伸びた髪が、纏められ、結い上げられている。体に付いていた銀色は、黒に染まり始め、
スーツの形になって、固まった…間違いない、あの人は…

「プロトコル、完了。出勤開始…ん?」

しまった、気づかれた!

「お前、見たな…?」
「な、何も見てません!」

一環のオシマイだ!光線銃でも出てきて、消し炭にされるんだろう、俺…
ん?その人は、首を傾げて、考えるような表情でこっちを見ている。

「…人体情報特定…人格構成開始…完了…あ!あなた!うちの会社の、春日部くんじゃない!」
「は、はい!」

やっぱり、会社でよく見るあの人だ!あんまりおっぱいが大きいから気になってたけど。でも、何で、俺の名前を知ってるんだ…?

「私、益戸って言います!近くに住んでたんだ!」
「え、えぇ…奇遇、ですね…」

あれ、ひょっとして、この人、変身を見られたの、誤魔化そうとしてる…?

「あの…何で、俺の名前を?」
「私、ずっとあなたの事が気になってて…これから、よろしくね!」
「あ、よろしく…」

とりあえず、今殺されることはなさそうだ。

壁ドンしてみた1

体育館の倉庫で、俺と、恋人の菜美は壁のそばに近寄りこそこそと話していた。

「孝康、本当に、やるの……?」
「ああ、俺らの愛が禁忌になんて負けないってことを、みんなに分からせるんだ」

この学校には禁忌、タブーがある。本当に馬鹿馬鹿しいが、その馬鹿馬鹿しさと同じくらい恐ろしい……ものらしい。それは……

「壁ドン、するぞ……!」
「うんっ……!」

壁ドン。昔はこの行為には別の名前があったようだが、今の流行語の意味と同じで、男が壁に背中で寄りかかっている女と話している最中に、壁を叩いて女に格好よくみせる行為だ。それが、この学校では禁止されている。風紀を重んじるため、とは言われているが本当は呪いとか何からしい。まあ、今のは一回くらいなら何も起こらないだろうという余裕を、格好良く言って見せただけだ。

「じゃあ……」

ドンッと壁を叩くと、菜美は小さな叫び声を上げた。

「きゃっ」
「俺のこと、見てくれ……」
「孝康、かっこいい……」

恐れを出さなかった俺の顔を見て、菜美が讃えてくれる。ああ、上目遣いのその可愛い顔をなでて、そのまま……

「ん?」
「ど、どしたの……?」
「いや、なんか……」

俺を大きな違和感が襲った。まるで、俺が立っている場所が下にしずんで行くような……逆に菜美は上がっているような、菜美をまえにたたせてエスカレーターで上がり始めたときと同じ感覚がする。

「ん……っ!体が……熱くなってるよう……」
「菜美っ……!?」

菜美が急に苦しみだし、喘ぐ。すると、突然シャツがギチギチと言い出した。見ると、それなりの大きさだった菜美の胸の膨らみが、数倍の大きさになって、シャツの中をいっぱいにし、それでも足りないらしくボタンを破って突き出してこようとしていた。

「んあっ……!!」

ボタンはその勢いに数秒しか耐えることができなかった。ブツブツというより、バババッ!!という音を出して飛んでいってしまい、中にあった豊満なおっぱいが、ぶるんと飛び出してきた。その下半分を抑えている下着のせいで、少し歪な形になっているそれは、紛れもなく本物だ。空気で膨らましたとかではなく、みっちりと脂肪がつまったものだ。しかも、ムクリムクリと菜美の心臓の鼓動に合わせるようにさらに大きくなっていく。

「あぅ……!!」

それは、だんだんと俺の顔に近づいてきた。大きくなると同時に、上昇してきているのだ。俺は、自分の体にも違和感を感じて、その胸よりもさらに視線を下に向けた。

「な、なんだ……これ!?」

地面がものすごく近くなっている。それが最初に思ったことだ。つぎに気づいたのは、ズボンがぶかぶかでいまにもずり落ちそうなこと。ここから出した結論。

「俺が、小さくなってる……?」
「あぁんっ……!」
「えっ……?」

いままで聞いたこともないような淫らな喘ぎ声が聞こえて、頭を上に向け直した。すこし華奢で背は女子としては普通だった菜美が、大きくなっている。元の俺よりも背が高く、いまや胸の部分だけでなく、全身の服がぴっちりと輪郭がそのまま出てしまうほど体に密着している。ついさっき可愛らしいと思った顔には、艶やかさがついてきて、口の緩み具合はその成長を楽しんでいるようだ。

「お尻……あつい……大きくなるぅっ!」

菜美の様子を確認している間に、俺の背の高さは菜美の腰のあたりまでのものとなってしまった。スカートは腰からビリビリと破け始めていたが、その菜美の声と同時に裂け目が急拡大し、尻の部分ががムクッと太くなった。服の丈が合わず出ているウエストが、同時にグギュッと絞られるようにくびれて、一層の女性らしさを醸し出した。

「な、菜美……?」
「たかやすくぅん……?もうちょっとまっててね……?んっ……!」

尻に対して少し細すぎる足に、ムチッと脂肪がついた。

「この体、最高ね……!」

菜美は自分の体を愛でる、撫でる。元の純粋な菜美からは考えつきもしない、妖艶なその表情は誘惑的どころか、俺に恐怖を与えるほどのものだ。

「ど、どうしたんだ菜美」

俺は、自分の小学生並みの高さになった幼い声は気にせず、恋人に問いかける。すると、菜美の瞳が、じっと俺が何かの獲物であるかのように見つめてきた。

「孝康くん……かわいい子ね……食べちゃおうかなぁ」
「ひっ!?」

逃げる。その一言が、頭の中に浮かんだ。しかしそれを行動にうつそうとしたときには、もう遅かった。菜美の手のひらは、俺の腕をつかんでいた。いつもなら、菜美の手のひらは小さく俺の腕は自分で言うのも何だがたくましい。腕を掴まれることも、戯れの一つだ。しかし今は違う。それは、もはや束縛、捕獲だ。

「逃げちゃダメよ……?うふふっ……」
「や、やめてぇ!」

俺は食われる餌、もてあばれる獲物だ。口で抵抗はできても、行動は菜美の言う通りにしか許されなくなっていた。

「もぷぅっ」

俺はもう一方の手で体を持ち上げられ、顔をおっぱいに突っ込まれてしまった。その顔いっぱいに、何とも言えない柔らかさと、暖かさと、プルプルした触感が伝わってくる。

「私のおっぱいで、いっちゃいなさい……」
「は、はぅ」

小学生程度の小さな体の中で、俺の精神は最後の抵抗をした。無駄で、短い最後の抵抗を。

「菜美さん……俺……あそんでください……」
「なぁに……?もう一回言って……?」
「俺の体を、もうどうにでもしちゃって……!!」
「ぼ、く。でしょ?それに、私のことはお姉ちゃんって呼びなさい」

そのとき、菜美の調教は始まろうとしていた。

「おねえ……ちゃん!」
「うふふ、よぉくできました……かわいいかわいいたかひろちゃん……」

感染エボリューション 8.5話

「ここまでくれば、大丈夫だろう…」
「あ、ありがと…」

息を切らした青年と美優がいるのは、小さなマンションの一室だった。研究所から下水道を使って脱出し、外に停めてあった車で逃走してきたのだった。

「だけど、白馬の王子様が軽自動車じゃ格好つかないよね…」
「余計なお世話だ」

意地悪に笑うのをキッと睨む青年だが、美優は動じなかった。

「でも、本当にありがとう」
「ふん、もう少しで存在を抹消されて一生実験台になるところだったんだ。感謝しろよ」
「そんざいを…ましょう?」
「死んだことにされてたってことだよ!ったく、いい体つきして頭は付いてきてないんだな」

目に疑問符が浮かんだ美優に青年は呆れ返った。美優は男物のジャージを羽織ってはいるが、その萎縮しきっていないFカップの胸は服を大きく押し上げている。

「し、死んだことに?」
「そうだよ、お前は交通事故にでもあって、遺体が無残なことになってるから遺族には渡せないとかいってな」
「え…」

絶句する美優。青年はそれを見て哀れむようにいった。

「夜が明けたら、家族に通知が行くはずだ。おおむね、捜索願やらなんやら提出してるはずだから、すぐに身元は知れる。警察もグルだからな」
「じゃあ、夜までに戻らないと!」
「その体でか。抗体もないんだぞ」
「あ…」

美優の体はかなり元に戻ったものの、完全では無かった。しかし美優には心当たりがあった。実験室にいる間に頭の中に流れてきた謎の声だ。とは言っても、幻聴かもしれないその事実を青年に伝える気にはなれなかった。

「これからどうするか…あそこから連れ出したのはいいが…」

思案している青年を前に、美優は躊躇する。言い出そうとするが、二の足を踏んでしまう。その時だった。

〈フエル…フエル…〉
「えっ…ううっ!」

ドクンッ!

また美優の頭の中に声が響き、衝撃が走ったのだった。

「どうした!…お前、まさか…!」
「また…っ!大きくなっちゃうう!!」

驚きつつ、顔をしかめる青年の前で、ジャージを押し上げている胸がドンッと外に広がり、ジャージがギチッと音を立てた。

〈フエル…〉
「増えないで!っっ!!」
「何言ってんだ!?」

ジャージのズボンの先から、スス…と足が伸び、同時にズボンがパンパンに張る。青年はそのことよりも、美優の言葉が気になっているようだった。

〈フエナイ…ムリ〉
「そんなこと…ぐっ…言わないでぇ!」
「…まるで、こいつの中に何かがいるような…?ウィルスに話しかけてるってのか!?」

無理に張力を掛けられたジッパーがブチブチと壊れていき、ミチッと詰まった胸肉が垣間見えはじめた。

〈ソレナラ…ソイツ…ウツル…〉
「この人に移る…!?男の人だよ!?」
「は!?」

そのとき、部屋の扉がバァン!と破られた。

「警察だ!女児誘拐現行犯で逮捕する!」
「ちっ…」

美優は、ほぼ反射的に入ってきた警官に手を向けた。

「この人たちに、移って!!」
〈…ワカッタ〉

すると、実験室で起きたことと同じことが起きた。美優の掌に穴が空き、そこから液体が吹き出して、警官を飲み込んだのだ。

「なっ!?や、やめろ…っ!!?」

その先で、警官の声が徐々に音階を上げて行った。男の声が、子供の声になっているのだ。美優の体が萎み、完全に元に戻ったところで、液体は出るのをやめた。

「何が起こって…!」

青年は口を開けたまま顔が固まった。それもそのはず、押し入ってきていた警官は全員、いなくなっていたのだ。いや、服の中に埋れて見えなくなったと言った方が正しいだろう。

「む、むだなていこうはやめろお!」

舌足らずな幼い声が制服から聞こえた。その制服はモゾモゾ動くと、中にいる人の姿を外にさらした。

「お、おい…何だよこれ…!」

それは、幼い子供、しかも股には付くべきものが付いていない、小さな女児だった。

「あたしが…やったの?」
「そうとしか言えないだろ!とりあえずずらかるぞ!」

青年はジャージがブカブカになった美優の手を引っ張った。美優は素直に従い、部屋から夜の街に駆け出した。

「あ、ま、まて!」

元警官の高い声を、美優は聞かなかったことにした。


青年に連れられて到着したのは、美優の家だった。

「俺はまだ逃げなきゃならんが、お前には当分誰も手出しできないはずだ。それに、まだ訳がわからないにしろ、見えない味方もいるみたいだしな」
「味方…かな…」
「…。まあ、またすぐに会うはずだ。今は、家族を安心させてやれ。じゃあな!」

そう言って、青年は美優を引っ張っていたときよりもずっと速く走りだし、すぐに美優の視界からいなくなってしまった。

「大丈夫…かな…ううん、大丈夫なはず!」

美優は不安を振り切るように大声を出した。すると家から母親が飛び出してきた。

「美優、美優なの!?どこに行ってたの!」
「お母さん!ごめんなさい…」

美優は覚悟した。こんなに遅くまで帰らなかったことは無かった。どんな叱責でも、美優は受け入れるつもりだった。そんな美優に与えられたのは、抱擁だった。

「心配、したんだから…」
「お母さん…ヒクッ…お母さぁん!怖かったよ…!!」

その優しさで、これまで美優を襲った恐怖が全て思い出され、号泣してしまう。母の愛に、全てを託したかった。

「私だって怖かったのよ…でも、帰ってきてくれて本当に安心したわ…」

美優は母親に抱きつき、長い間泣き続けた。

環境呼応症候群 降水確率の子

修学旅行の夜。京都と奈良の名所を回るだけのつまらない行程の終わり。

「はぁつかれた。もうお寺は十分だー」

わたし、堀下 照(ほりした てる)は合宿所の6人部屋にいた。クラスメートたちも荷物をおろしている。

「あはは、てるちゃんお疲れ様」

友達グループの一人、古雨 鳴(ふるあめ なる)が話しかけてきた。仏閣好きの鳴は一日中ものすごく楽しそうだったな。

「なるちゃんありがと」

わたし達二人は名前が似ているし、いつも一緒にいるからクラスではセット物のように考えられてるけど、性格からなにからほとんど対照的。体格だって、わたしは不必要なほど大きなおっぱいと、あとはすらっとした自慢の体型があるけど、鳴は背は低いし、幼児体型って言われてる、まあ、今のところはね。それだからセットとしてはいいんだろうけど。

今のところは、って言ったのは、鳴がメタモルフォーゼ症候群にかかってるからなんだけどね。ある決まったもの、例えば温度とかが変わると、体が大きくなったり小さくなったりする「病気」らしいんだけど、鳴の場合は某配信料を取るTV局の、日が変わる直前の天気予報で発表された降水確率が基準なんだって。ほんと、誰かが天気予報を見て鳴の体を操作してるみたい。

それで、夕ごはんも食べ終わって、あっと言う間に夜もふけて、消灯時間も過ぎた。

「そろそろ12時になっちゃうから、寝ようか…って、あれ?」

鳴はもう、ずっと前に敷いていた布団の上でスヤスヤと寝息を立てていた。

「もう、なるったら…」
「天気予報だけ見たらテレビ消すね」

他のクラスメートに言われてわたしは気づいた。さっきケータイで見たときは、明日、雨っていう予報だったはず。最終日の自由行動ができなくなるって嘆いてたし…ってことは…いや、雨でもそんなに降水確率が高くないときもあるし…

気になってテレビに向かう。

『明日の近畿地方の降水確率です。明日は、前線の影響で…』

京都の降水確率は50%。なら、大丈夫かな?何が大丈夫かって、鳴の服のことだ。体が大きくなりすぎると、今の服ではどうやっても入らない。12時になれば変身する鳴を、わたしは見た。そういえば、鳴が変身してるのを見たことなかったっけ。お泊まり会をやったときも、変身するときだけは部屋から追い出されて、戻ってきたときには鳴は別人みたいだった。今日の鳴は0%だったけど、50%の鳴は160cmのわたしより背が高くて、おっぱいだってクラスで一番大きくなる。鳴が変わる様子を見て見たくなった。

わたしは、鳴の布団を剥がした。

「ん、んん…」

寒気を感じたのか、すこし身を縮めた。だけど起きない。白いネグリジェに包まれた、凹凸に乏しい、小さな体。小さな口をすこしだけ開け、スゥスゥと小さい息を立てる。やっぱり、何もかもが小さい。これが0%の鳴。だけど、ケータイの時計が12時になると、変わり始めるんだ。

「んっ!」

縮こまっていた鳴が急に体を開き、仰向けになった。よく見ると、ネグリジェの胸の部分からサーカスのテントのように盛り上がりができて、今は荒い鳴の息に合わせて、ムクッ、ムクッと高くなっている。それだけじゃない。すこし余裕のあったネグリジェの腕と腰の部分が引っ張られ、パツパツになっていた。

「んん!んああっ!」

鳴は寝たままだけど、大きな声を出した。そのせいで、みんなが寄ってきた。

「どうしたの!?あ…」

一人のクラスメートが、鳴が成長していく様子に気づいたみたい。腕がキュッキュッとネグリジェから生えるようにして長くなり、子供らしかった丸っこい掌も、長く細く伸び大きくなっている。さっきはテントのようだった胸の盛り上がりも、ムニュゥとした丸みを帯びて、ネグリジェを限界まで引き伸ばしていた。髪だって、枕の上でバサッと伸びている。

「なるちゃん、また大きくなってる」
「まあでも、これ以上は大きくならないよ」

鳴が大きくなる事実を知っているのは何もわたしだけじゃない。いろいろな体型でクラスに現れるのだから、むしろ知らない方がおかしいんだ。それに、今のFカップほどの鳴は50%の時の鳴だ。もうこれ以上は大きくならない。

「んはぁっ!わ、私!寝ちゃいけなかった…のにぃ!」

と思っていた。だけど、ネグリジェからギチギチと、繊維が切れていく音がし始めて、間違いに気づかされた。鳴はようやっと目を覚ました。

「どういうこと?明日の降水確率は50%なのに?」
「それは…!京都の…降水確率…でしょ!?」

鳴が精一杯言葉を紡ぐ間にも、ネグリジェが下から破れて、プルッとしたお尻が飛び出てきた。胸の方も、襟から胸肉がはみ出しているし、服の所々に空いた穴から抜け出そうとしているみたいに、おっぱいが成長を続けていた。

「そ、そうだけど…」
「私のは…!仙台のなの!」
「へっ?」

わたし達が住んでいるのは新潟だ。何もかもおかしいけど、それも気にせず、おっぱいがネグリジェを千切って出てきた。仰向けになった体の上で、鳴の頭くらいあるそれは鳴の呼吸でフルフルと揺れて、とってもエロい。周りからも息を呑む音が聞こえた。これだけでも十分な大きさなのに、さらに、お餅を焼いている時みたいにムクリムクリと膨らんでいく。身長だって、今は180cmくらいはいってるんじゃないかな。敷布団から足がはみ出しちゃってる。その足も、抱きしめればすごくモチモチしそうなふっくらとした脂肪に覆われて、肌も綺麗だ。さっきまでみたいな棒のような鳴の足とは全然違う。

「仙台の降水確率、90%だって」

誰かが言った。90%。なるほど、今もわたしの目の前で膨らみ続ける、ビーチボール大の脂肪の球に納得がいった。90%なら、とんでもない大きさになるんだ。その腰まで届く長い髪と、もう自分の体重で折れてしまうんじゃないかと思うほど括れた腰と、胸に比べると控えめだけど、わたしのより大きいお尻。

「どうしよう…お服がないよ」
「はっ!?」

どうやら、このサイズにあう服を持ってきていなかったらしい。変身が終わったらしい鳴は困り果てている。自分の鞄から服を出して、無理やり着ようとするけど、なにより胸が大き過ぎて全然入ってない。

「わたしも手伝うから」

だけど2人いた所で服のサイズが変わるわけでもない。結局、服の腕の部分を紐上にして胸を覆うように結ぶしかなかった。その上に、他の子の上着を羽織らせたけど、これもボタンが締まらない。ズボンは伸縮性の高いものを持ってきていたようで、何とか収まったけどパンパンだ。

「きついよー」

まるで海岸に遊びに来たグラビアアイドルも涙目のグラマラスなモデルのような服装になった。

「なるちゃん、すごく刺激的」
「アグレッシブだね」

明日、京都の街をこれで歩いたら、雅な空気、なんてどこにもなくなっちゃうかもしれない。そこにあるのはただ大きいおっぱいだ。動いてもないのにブルンと揺れるそれは、歩いたらどうなるんだろう。想像もつかない。

感染エボリューション 8話

地下鉄はトンネルの中を高速で進んでいく。ただ、途中に駅は無く、真っ暗な中をただただ走っている。

「これからどこに行くんですか?」

不安に思った美優が研究員の女性に尋ねる。彼女は微笑んで答えた。

「あなたの病気を治しに、研究所まで連れて行くの」
「研究所、ですか?」
「そうよ、私達がウィルスを作った場所よ。地下深くにあって…」
「ちょっと待ってください、抗体はもう飲んだんですよね!」

研究員は微笑むのをやめて、真顔に戻った。

「そうね。実は、あれは抗体じゃないの。ウィルスを体の外に流そうとする薬なんだけど、効果が完全じゃなくて」
「え、じゃあ…私の友達は…」

美優と同じく一回は感染した結子のことを思い出して不安にかられる美優。

「お友達も、一緒に研究所に来てもらってるから大丈夫よ」
「あ、そうなんですか…」

ほっと胸を撫で下ろす。そのうち電車は目的地に到着したのか、減速し始め、すぐに止まった。

「さあ、研究所に着いたわ」

扉が開くと、美優が見たことの無い世界が広がっていた。部屋の中の物は全て銀色に光る金属。それに本当に使えるのかわからない計器類。その説明がどこの国の言葉で書かれているかも、美優には分からなかった。

「いい顔ね。ここの誰もが、ここに初めてきたときはそんな顔になるわ。私だってそうだった」

美優のぽかんとした表情を見て、研究員が笑った。

「あ、そうそう。自己紹介ね。私はこの研究所の所長、二本木頼子(にほんぎ よりこ)って言うの。あなたのお名前は?」
「八戸美優です」

美優は聞かれるがままに答えた。

「はちのへみゆさん…」
「って、ちょっと、あたしの名前も知らないでここに連れてきたんですか!」
「そんなこと言われても、私にそれを知る方法なんてないし…いいじゃない。あなたの病気だって治るんだから」

美優は反論できない。

「さあ、ここでずっと立っててもしかたないわ。行きましょう」

美優は二本木に連れられ、施設の中を進んだ。不気味なまでに静かな空間と、無数の扉の前を通り過ぎた後、一際大きな扉をくぐって、その扉とは不釣り合いな小さな部屋にはいった。そこには、手術台のようなベッドが一つ置いてあった。

「じゃあ、ここに寝て」

美優は一瞬悪い予感がしたが、言われた通りにベッドに横たわった。

「次は、どうなるんですか?何も手術する機械がないみたいですけど…」
「そうね。実験、かしら」

二本木がパチっと指を鳴らした。すると突然、部屋の壁から四つのロボットアームが現れ、美優の手足を拘束した。

「な、何を!」
「ふふ、どうかしら。我が研究所が開発した拘束用アームの性能は」

二本木の顔にはもはや先ほどまでの優しさなど毛頭なくなっていた。そこには何か人間性にかけた、狂気の科学者、まさにマッドサイエンティストしかいない。

「ちょっと力が強過ぎるとか言われてたけど、潰れなくてよかったわね」
「冗談言わないでください!さっさと放してあたしの病気を…」
「治せですって?まだ分からないの?あなたは私のモルモットよ!どこでウィルスを手に入れたか知らないけど、あんなに広めてくれた以上責任を取ってもらう!」

二本木は部屋から出て行った。少し静かになった後、部屋全体が揺れ出した。

「逃げないと!」

美優はアームから逃れようともがいた。それにもかかわらず、アームは手足をがっちりと固定していて、びくともしない。部屋の揺れは大きくなる一方だったが、あるとき壁や床に割れ目が入った。

「こんなところで死ぬのはいや!」

その割れ目は急速に広がり、美優を支えていたベッドもしたに落ち始めた。というより、降り始めた。部屋の崩壊は何かの力によって制御されているように見えた。それに、アームだけは全く動かない。美優は、その割れ目の奥にまた違う空間が存在しているのに気づいた。元々の部屋の壁は、その空間に美優の体をさらけ出している途中だった。それが終わると、美優は直径10mほどの球状の部屋の中心に、四肢を固定され、浮いていた。

「あたし、どうなるの…」
『あなたにはこれまでやってきたことを、やってもらう。成長よ』

どこからともなく、二本木の声がした。みると、部屋の覗き窓のようなものの奥に二本木と、もう一人の男性の姿があった。

『この方がこの研究の出資者、大村さん』

二本木はその男性を紹介する。背広に身を包んだ、温和そうな男性だ。

『八戸くん、だったかな。今回は済まないが、我々の実験に付き合ってもらうらしいな。少子化対策のため、手を貸してくれ』
「あたしが成長することと少子化対策に何の関係も…」
『そこは大義名分というものだ。実験を開始してくれたまえ』
『はい』
「やめてぇぇええ!!」

美優は、手足を拘束するアームから、何か液体が注入され、それとほぼ同時に自分の体がビクッと痙攣するのを感じた。そして、体のどこかしこで服がきつくなったりゆるくなったりし始める。美優の体が、変化を始めていたのだ。

『これはなんだ』
『ウィルスが周りの細胞の情報を読み取って、どの部分に擬態するか探っているんです。体の外形が定まらなくなりますが、じき収まります。あ、骨格が変わり始めましたよ』
『おおっ!』
「ぐ、ぐぅぁあ!!」

部屋の外で話し続ける二人に見せつけるように、腕や足、頭や体が大きくなり始めた。まるで白衣から美優の手足が伸びてきているようだ。美優は、自分の体が無理やり引き伸ばされるような感覚に何とか耐えていた。

『痛みが走るのか?』
『それは、細胞に割り込んで強制的に体積増加を引き起こすわけですから。当然です』
『そうなのか…仕方ないな。お、縦に伸びてたのが今度は横に…』
『ええ、脂肪細胞も増加を開始してますね』
「くぅっ!…うぁああ!」

白衣からはみ出してきた足が急激に太くなる。それと時を同じくして、白衣の胸の部分がムクムクと盛り上がり、プツ、プツとボタンを飛ばしながら、一瞬のうちに熟れた二つの果実が外気にさらされた。プルプルと揺れるそれは大村の心をつかんだようだが、美優の方は、体の中から外に向かって押し出される感覚に圧倒されそうで、それどころではない。

『おお、あんなに華奢だった子がこんなに魅力的に』
『素晴らしいでしょう』
『限界はどこなんだ』
『やって見ますか』
『ああ、是非とも』
「や、やだ…んぅっ!!」

アームから前回の2、3倍くらいの液体がつぎ込まれた。すると、美優には全身を激しくかき回されるような感覚が走った。全身が波打つように動き、乳房も左右バラバラに引っ込んだり逆にドンッと爆発するように大きくなったりしている。そして、それが止み始めると、グッ、ググッと、美優の体が巨大化し始めた。元々の成長で170cmほどの身長だったのが、2m、3mと大きくなり、体重で言うと元の体の9倍ほど、400kgになっていた。

『大村さん、そろそろアームが持たないので…』
『そ、そうか…』
「んぎゅううっ!!」

実験を中止しようとする2人をよそに美優は成長を続けていた。乳房に至ってはアドバルーンほどの大きさになり、身長は6mになって、最初は巨大に見えた部屋が、今はサイズ不足になっていた。

『と、止まりません!』
『なんだと!』
〈フエル…フエル…〉
「えっ」

声が一つ増えた。美優は、それが自分の頭の中に直接聞こえたような気がした。自分の声に似ているその声は、「フエル」と繰り返す。その度に、美優の体がググッと大きくなって、球状の部屋を満たし、アームをゆがませていった。

〈フエル…〉
「ね、ねぇ…もう…やめて…!」
〈ヤメル…ナゼ…〉

アームがついに破壊され、解放された美優だったが、身長が10mを越え、屈まないと部屋に入らなくなっていた。

『誰に喋ってるの!?』
「あたしが、つぶれちゃうから…」
〈…キョウリョク…スレバ…ヤメル〉

二本木の声を無視して、美優は自分の中の誰かと喋った。

「協力!?」
〈キョウリョク…シナイ…フエル〉

美優の体がグワッと一回り大きくなり、ついに身動きが取れなくなってしまった。

「わ、わかった!協力する!」
〈ウデ…アイツ…ムケロ〉
「そんなこと言ったって!」
〈ムケロ〉
「あぁんもう!」

美優は大きくなり過ぎて動きを拘束している乳房を何とか押しのけて、二本木に腕を向けた。

『な、何する気?』
〈ハッシャ〉

美優の手のひらにクワッと穴が空き、水が勢い良く吹き出し始めた。

『…まさか!』

その水圧は凄まじく、耐圧ガラスを一瞬にして破壊してしまった。二本木と大村はなすすべもなく水に飲まれた。その後も水は噴出し続け、結子の体格まで、美優は縮んで行った。

〈ニゲロ〉
「逃げる!…どうやって!?」

美優は出口を見つけることができず、右往左往した。そこに、聞き覚えのある若い男の声が掛かった。

「おい、チビ!今連れ出してやるからな!」
「お兄さん!」

それは、最初にウィルスを持っていた青年その人だった。美優は裸のまま彼の方に走って行き、飛びついた。

「怖かったよ!本当に来てくれて…げふっ!」

青年からの腹部へのパンチが決まり、むせかえる美優。

「今は時間がねえんだ!さっさとここを出るぞ!…ん…?」

青年は二本木と大村がいたところの窓を見て、怪訝そうな顔をした。

「ど…どうしたの?」
「いや、なんでもない!行くぞ!」

青年は裸の美優を肩に抱え、走り出す。

「お姫様抱っこじゃないんだー……」
「うるせえ!でっかい胸つけやがって!」

美優は自分の乳房が青年の背中にポヨポヨ当たるのを見てクスッと笑ったのだった。

感染エボリューション 7話

美優の目が覚めると、外は真っ暗になっていた。蛍光灯の明かりが煌々と室内を照らしている。

「あたし、どれくらい寝てたんだろ…ん?」

足にぽよぽよと柔らかいものが触れているのに気づいてそちらを見ると、伍樹がすやすやとベッドに寄りかかって寝ていた。そのよく育った胸が、体にかけられた布団の上からあたっていたのだ。

「伍樹くん…看病してくれてたのかな…でも…」

美優は自分よりも重い体に押さえられ、動くことが出来ない。仕方なく、伍樹の肩をポンポンと叩いて起こそうとする。

「伍樹くん、伍樹くん!起きて!」
「あ…美優ちゃん…」

すぐに目を覚ます。寝ぼけた顔は女の美優でも心を動かされそうなきれいなものだ。美優は多少顔が熱くなるのを感じたが、気にとめないことにした。

「おはようございます、伍樹…」
「あれ!もうこんな暗くなったのか!?」
「伍樹くん!?」

美優の言葉に被るように伍樹が叫ぶ。そして慌て始めたのを何とか美優が抑えようとする。

「やばいって早く帰らないと補導されちまう!」

まるで経験者のようである。あるいは本当に経験済みなのかもしれない。

「あの、ちょ…」
「え!何で俺下ジャージなんだ!!まあいいか!」

自分の鞄を探しているのかあたりを見回している。振り向く度胸がブルンブルンと揺れた。

「えっと、あ…」
「何か胸が重い!ってなんだこのおっぱい!!」

胸を鷲掴みにして叫ぶ。さも女性化したのを初めて知ったかのように。

「おちついて!!」
「え…!」

美優の言葉にやっと気がついた。多少息が整っていない伍樹は、更に取り乱した。長めの髪をどうにかこうにか整えたり、シャツを入れたりしつつ、落ち着かない。

「み、美優ちゃん…!ごめん、こんなに遅くまで学校いるの久しぶりでさ、俺!わけわからないことばっかだし!」

憧れの相手の滑稽な姿を見て、思わず美優は吹き出してしまった。

「あはは!伍樹くんって、思ったより面白い人なんだね」
「えっ!?」
「いいの。じゃあ帰ろ?」

体面を保てずショックを受けてたたずむ伍樹をよそに、帰り支度を始める美優。変身で服がただの布切れになっていた美優は保健室の白衣を拝借することにした。美優の小さな体にはおあつらえ向きの、膝まで隠れるほどの長さのものだ。一つ一つボタンを締めていく。

「下がスースーするけど、仕方ないよね」
「あ、あの、美優ちゃん」
「何?」
「なんで俺の前で隠れないで着替えたの?俺男だけど」
「あっ…」

美優の中に理不尽な怒りと恥ずかしさが一気にこみ上げてきた。俯いてもそれは止まらない。

「美優ちゃん?」

下を向いた美優に尋ねてくる伍樹の声で、それは爆発した。

「伍樹くんの…」
「えっ?」
「馬鹿!!」

パシーン!!という痛みに満ちた音が部屋中に響く。

「ほげっ!」
「変態!マヌケ!」
「うぎゅ!ふにょ!」

往復ビンタを受け伍樹は床に倒れた。

「気にしてなかったのに伍樹くんがいったせいで!恥ずかしい!」
「そんな…」
「もう!さっさと帰りましょ!」


学校から出て、通勤ラッシュも峠を越えた駅前に着いても、美優は不機嫌なままだった。足早に歩く彼女の数歩後ろを、伍樹が追いかける。美優は微妙な罪悪感を感じ、居心地が悪かった。それで、今日のところはさっさと別れようとした。

「ねえ、伍樹くんはどこまでついてくるの?電車通学なんでしょ?」
「それは…」
「じゃあ、ここでお別れだよね。さよなら」
「待って!」

伍樹を背に家路を急ごうとする美優だが、肩を掴まれて振り返る。

「何?」
「あの、その、美優ちゃんのことが心配で…そんな格好で夜の道を一人は危ないよ」

美優は伍樹の可愛らしい顔の奥に親切心と、それとは別の何かを感じ取った。美優をじっと見つめる瞳に、また顔が熱くなった。

「そ、それなら…でも」
「でも?」
「正直、伍樹くんの方がよっぽど危ないよ…?」

美優はぽんっと伍樹の柔らかくシャツを押し上げている胸を叩いた。当たりどころがいいのか悪いのか、嬌声を上げる伍樹。

「あうっ!」

その声で、周りの人々の視線が一瞬美優たちの方を向いた。ほとんどはすぐに散っていったが、いくつかはしつこく残っている。

「ね、だから…はや…」
ドクンッ!!
「くぅっ!」

しかし次に嬌声を上げたのは美優の方だった。あの衝撃がまた体に走り始めていたのだ。

「美優ちゃん!?」
「何で、またっ!?」

保健室で抗体を飲み、ウィルスは駆逐していたはずだった。それなのに、またもや美優の体は変化しようとしていた。顔だけ熱かったのが、ブワッと手足の先まで広がっていく。

「あ、あつい…」
ドクンッ!
「うわぁっ!」

白衣から出ていた脚がグワッと伸び、一気に重心が高くなったせいで、バランスを崩した美優は前に手をついて倒れてしまう。その慣性の力で、というように胸に急激に脂肪がつき、白衣を限界まで引っ張って膨らむ。あまりの大きさに腕の長さを追い越し、タプンと地面についてしまう。

「ひゃっ…冷た…」
ドクンッ!
「あっ!」

その状態から体が脱したがっているかのように、腕がグイッと伸びて、美優の上体が持ち上がる。その視線の先には、何も出来ず戸惑うばかりの伍樹の姿があった。

「伍樹くん…」
ドクンッ!
「んんっ!!」

ただ伸びているだけだった手足にムチッと脂肪がつき、腕は白衣の中を満たし、外に出された脚はふっくらと膨れて、曲線を描き出す。そこで、美優は周りがパニック状態になっているのに気づいた。二人を除いて、ほぼ全員が走り回ったり叫んだりしている。警察を呼ぶ声もある。

「警察?救急車じゃなくって…?」
ドクンッ!
「えあっ!」

美優は自分の顔がグキグキと形を変え、髪が伸びて首にかかるのを感じた。それで熱は引いていき、自分の体を確認することが出来た。

「さっきみたいには、大きくなってないみたい…よかった」
「み、美優ちゃん」
「何?」

見ると、伍樹は自分のほうではなく、自分に歩み寄ってくるコツコツという靴の音の方に目を向け、固まっていた。美優が伍樹と同じ方向に向くと、そこには数人の紺の制服と帽子をまとった人々がいた。

「この人で間違いないでしょうか」
「ああ、間違いない」

その互いに話しかける人々は、どうみてもその土地の警察官だった。

「そこの学生の方、すみませんが」
「なんですか?」

警察官の一人が美優に話しかける。その目は威圧感を体現したかのような眼差しを美優に向けていた。

「任意同行をお願いします」
「え?」
「ほら、取り押さえろ!この子が幽閉対象に違いない!早く!」

社交辞令の優しい声もすぐに消えてしまった。

「や、やめて…あっ!」

弱々しくも逃げ出そうとする美優を、容赦なく二人の警察官が地面に押さえつけ、手錠を付ける。

「同行者もだ!」
「や、やめろ!」

もう二人の警察官は、伍樹を拘束した。それを確認した、最初に話しかけた警官が、今度は暴力的な口調で言葉を発した。

「やっと捕まえたぞ!街を危険にさらすウィルスどもを!」

美優はあまりの突然の出来事を理解できずにいたが、沸き起こってくる悪い予感を否定することだけはできなかった。


数分後、美優がいたのはひとつの部屋の中。2つの椅子が向かい合うように設けられ、ひとつは美優、もう一つは先ほどの警官が座っている。

「あ、あの~うわっ!」

部屋がガタンと揺れる。エンジン音も聞こえる。それは部屋ではなく、特殊な車の荷台に相当する部分だった。

「何だ」
「ちょっとこれ、蒸れるんですけど…」

美優も、着ていた白衣の上に、気密性の防護服のようなものを着せられ、顔に付けられたガスマスクの小さな窓から、警官を覗くしか無かった。しかも体が動かない。手足を固定されていたのだった。

「つべこべ言うな、これ以上ウィルス…だかなんだかを感染させないためだ。俺だってここにいたくないのに」
「じゃあここにいなければいいのに」

強気に出る美優。いつか見たドラマで、警官は容疑者であろうと被告であろうと、傷つけることは許されていないのを知っていたのだ。

「うるさいぞ!護送中は警護してなきゃいけないんだ。そうお達しが出てる」

案の定、警官は手を出してこない。

「お達し?」
「お前には知る必要のないことだ。ああもう、必要以上に刺激するなって言われてるんだから…」

最後の方は小声で美優は聞き取ることが出来なかった。それよりも気になることがあった。

「あの、伍樹くんは…」
「誰だって?あー、あの同行者の…もう一台の装甲車に乗ってるぞ。まったく、どうしてこんな大掛かりなこと…」
「そうこう…しゃ?」

装甲車とは現金を輸送するときに使われる、犯罪組織に襲撃されても多少は耐久できるように、特別に設計された車のことだ。美優にはその知識がなかったが、警官は構わず続けた。

「そうだ。お前らの身柄を引き渡すために、地下鉄の車庫に向かってるんだ」
「身柄を…引き渡す…」

美優は、逃げなければいけない、と反射的に感じ、体がなんとか動かないかとジタバタと暴れ始めた。

「おいおい、そう暴れるなって。あと1分くらいすれば着くんだから」
「1分しかないの!?」
「うむ。まあその華奢な体じゃどんなに頑張っても拘束は外れないさ」
「私の体が小さいから無理…?…じゃあ」

ガスマスクの下で美優は念じた。すると、体が熱くなり、大量の汗が出始めた。全身を激しく貫くような衝撃も、心臓の脈拍と同期して美優の中を走る。

「どうするつもりだ?」
「大きく、なる!」

美優に合わせたサイズの防護服の中で、膨らみ始める体。すぐに全身が満杯になり、伸縮性のいいゴムのお陰で体の輪郭がはっきりと現れる。プチプチと穴が開き始めると、そこから中に溜まっていた汗が吹き出し、車内に飛び出した。

「な、なんだと…!」
「ん、んんっ!!」

ついにその巨大な乳房が防護服をブチブチと破って、肌色の部分が見え始めたと思うと、防護服は引き裂かれ、ブルンッと飛び出た。

「い、いたっ…!あっ…!」

拘束具がその成長とともに破壊され、美優の体は解放されていく。胸から発した防護服の裂け目はどんどん広がり、あらわになっていく。

「んぎゅ…!」

美優は成長するだけでなく、全身が巨大化していた。周りのものがスケールダウンし、最初は背が高かった警官も今は見降ろす形になっている。

「あたっ!」

身長が急激に伸びるせいで、ガツンッと頭を打ってしまうが、それでも成長は止まることはない。ひしゃげた椅子を潰し、四つん這いになる美優で、車内が満たされていく。

「お前、どんどんでかく…!だ、誰か助けてくれ!!」
「逃がさない…!」

車外へ出ていこうとする警官を、両手で押さえる。変身する前は体を使って全力で飛びかかってもムリだったろうが、今は軽々と警官の動きを止めることが出来る。今や、部屋の半分は胸と顔と腕だけで占められ、もう半分は残りの体の部分で埋め尽くされていた。

「う…これじゃ…潰されちゃう…!」

少し残っていた空間も、美優のムチムチとした脂肪が詰まっていく。警官は手から解放された物の胸に押しつぶされそうになっていた。

「た、助けて…」

美優がどう動こうとしても車の壁も天井もびくともしない。万事休す、そう思った時車の扉が開かれた。

「な、これは!抗体の準備早く!」

美優は白衣を着た女性がいるのを見た。そして、彼女は部下らしき、これも白衣の男性に指示して、液体の入った小瓶を出させた。

「さあ、これを飲んで!」

美優は言われるがままに液体を飲み込んだ。

「んっ!ああああっ!!!」

美優の中で爆発が起こる。その爆風は汗となって美優から出て行く。開け放たれた扉から、汗の洪水が流れ落ちていくと同時に、美優は小さく、小さくなり、元の姿に戻っていく。最後にはびしょぬれになった美優と警官が二人、車内に倒れていた。

「う、うう…」
「大丈夫?さあ、研究所に行きましょう。あなたの体を治してあげるわ」
「は、はい…」

朦朧とする意識の中、美優は女性に連れられて外に出た。そこにあったのはたくさんの電車。地下鉄の車庫に、到着していたのだ。女性は、その沢山の電車のうち、窓が少なく、無骨な電車に乗り込み、美優も続いた。美優が入り口をくぐるとそれはすぐに閉められ、電車は動き出した。

感染エボリューション 6話

手を握り合ったまま、二人はしばらくの間見つめあっていた。身長差が1m以上あるせいで、伍樹は美優を見上げ、逆に美優は伍樹をしたに見る形になっていた。

「手を繋いだら、俺の体から何かが出て行った…」
「そしてあたしには…何かが入って来た」
「俺は元通り…小さく」
「あたしは…もっと大きく」

そこに、保健室の扉がガラガラと開かれる音が飛び込んで来た。

「誰!?」
「私だよ、ジャージと抗体、持ってきたよ」

結子は部屋に入って来て、二人を見た。そして少し目を大きく開いて、美優を品定めするように眺める。

「美優ちゃん…だよね?」
「うん…」
「また、大きくなっちゃったんだね」
「そうなんだよ。治ってなかったみたい」

結子は深くため息をついた。

「それで、結子ちゃん」
「なに?伍樹君」
「不思議なことが起こって…結子ちゃんがこんなに大きくなる時点で十分不思議なんだけど、俺と美優ちゃんが手を繋いだら…」
「あたしが大きくなって伍樹くんが小さくなったの」

結子はそれを聞いて、首を傾げた。

「どういうこと?」
「まるで、あたしの中に何かが入り込んで来たみたいな感覚がして、そしたら体がもっと大きくなって…」
「ふーん…それ、ウィルスが移動したってことかな」

美優と伍樹が同時に手をポンと打った。

「そういうことか!」
「え、そこで納得する?普通、思いつかないかな」
「仕方ないでしょ、立て続けに大きくなったり小さくなったりしたんだから、こっちは」
「いや、責めるつもりはないけどね。それよりほら、美優は抗体のもうよ。それ以上大きくなると保健室からでられなくなっちゃうよ」
「うん」

美優は結子から差し出された抗体を受け取り、飲んだ。すると、前と同じように信じられない量の、それこそ美優の縮む量と同じくらいの、汗を出して、美優は元の小さな体に戻った。

「はぁ…ふぅ…これが…ウィルス…なんだね…」

床にできた水たまり、というより保健室の床一杯に溢れる洪水を見ながら美優が言った。ベッドの上に避難した結子は、苦笑いした。

「あはは、こんなに美優の中にウィルスがいたなんてね…正直、信じられないよ」
「だよ…ね…」

熱に精神を疲弊した美優が、息も途切れ途切れに喋る。そのうちにも、汗の海は干上がって行った。

「これで伍樹君以外元通りだね!」
「俺も元通りになりたいんだけど…」

結子は安心した顔を一瞬見せたが、表情が凍った。

「どうしたの?結子」
「ねえ、あの人」
「どの人?」

美優は真顔だ。どうやら昼に会った青年のことをわすれてしまったらしい。結子は頭を抱えた。

「あのねえ…とにかく、感染してるのは伍樹君だけじゃないってこと」
「え?」
「そういえば…望のやつも…」

伍樹も難しい顔に戻る。美優は今だに話について行けず、二人を見ているだけだ。暇をもてあそぶように、手で太ももをすりすりと撫で始めた。

「そう。望君も伍樹君が変身する時、汗を触っちゃったの」
「てことは…」

ちょうどその時、保健室の扉がガラッと開いた。

「どなたですか?」

結子がその扉の方に呼びかける。

「伍樹くぅん…ここにいるんでしょ…?」

聞き覚えの無い、幼いが淫らな口調の声が聞こえてきた。

「まさか…」
「そのまさかよ!」

飛び込んで来たのは体操用のジャージの上着だけ羽織った、今の伍樹と同じような小さな少女だ。そして、ベッドに腰掛けた伍樹に抱きつく。

「伍樹くん…会いたかった…」
「お、おい…」

なにが起こっているか見当がつかない美優は、その少女に尋ねた。

「ねえ、あなた、誰?」
「わたしぃ…?のぞみ、よ」
「のぞみ!?」

大声を上げる伍樹をよそに、さらに混乱した美優。「のぞみ」など聞いたことが無い名前だった。

「ね、ねえ…どうなってるの?」
「気づかないの?美優ちゃん。これ、望君だよ」
「その名前はもう捨てたの!」
「え…望君?名前、捨てた?」

結子と、のぞみと名前を変えた望から同時に話しかけられ、混乱は頂点に達する。結子は美優の両肩に優しく手を置いた。

「美優ちゃん、深呼吸」

美優は胸に手をおいて、深く呼吸した。

「落ち着いた?」
「うん」
「じゃあ、一つ一つ説明するね。まず、伍樹君が教室の中で成長した時、望君は伍樹君の肩に触れてたでしょ?」
「あー、そうだったね」
「それで、望君にもウィルスが感染したの」
「うん」
「で、伍樹君は感染した後、こんなに小さな子になったよね」
「そうだね」
「てことは、同じように感染した望君も…」
「小さな子になるわけだ」
「そう!だからここにいるのは」
「望君」
「正解!」
「やった!」

子供のように喜ぶ美優。結子は再度頭を抱えた。

「美優ちゃん、こんなに子供っぽかったっけ?」
「それよりも…伍樹くん…」
「な、なに…?」

のぞみが伍樹に擦り寄る。外見からすると小学生二人がイチャイチャしているようだ。

「わたし、気づいたの…伍樹くんのこと、ずっと前から好きだったって…」
「へ?」
「わたしも女の子になって、同性愛でもなんでもいいことがようやくわかったの」
「いや、良くないだろ!」

先ほど「俺は同性愛者じゃ無いんだ!」と教室から飛び出して行った望とは、まるで主張が異なっている。伍樹はのぞみの肩をがしっと掴み、前後に揺さぶった。

「目を覚ませ、望!お前はこんなこと言うやつじゃなかったはずだ!」

しかし、のぞみは揺さぶられ終わると、とろんとした目で伍樹の瞳を覗き込む。

「違うの伍樹くん…これが本来のわたしなの」

伍樹の着ているワイシャツのボタンを一個一個外し始める。

「でも、こんな体じゃつまらないでしょ?わたしも、さっきの伍樹くんみたいに大きくなる」
「え…」

伍樹のシャツを脱がせ終わると、自分もジャージを脱ぎ捨てる。結子と美優が見ている前で、のぞみの凹凸の無い綺麗な体があらわになった。のぞみは、自分の胸と伍樹の胸を合わせ、こすり始めた。

「あん…体が…疼いて来たぁ…」
「や…やめ…ろっ!望…!!」
「わたしも、大きくなる…大きく…なるぅ!!」

のぞみが叫ぶと、それは始まった。すり合わされている胸が、脂肪と乳腺が同時に発達し、内側からムクムクと押し広げられる。そして、体の動きに合わせて、上下左右にムニムニと動く。

「ん…いい…この感覚…いいよぉっ!」
「のぞ…む…!!」

その動きを支える下肢も、ググッと長くなり、動き自体が大きくなって行く。しかし、それに釣られるように乳房も大きくなり、動きによってより大きな歪みを発生させて行く。

「わたしの…なまえは…はぁん!!」
「おもいよ…あぁっ」

脊椎が長く太く発達し、上体が伸び、それと時を同じくして太くなる。体重が重くなり、伍樹はベッドの上に押し倒されてしまった。

「のぞ…み…!だって…くぅっ!」

伍樹の上に覆いかぶさる形になったのぞみが、ベッドの上についた腕がグキュッと長くなり、同時に掌もそれに釣り合って成長する。髪も伸び、伍樹の顔の方に垂れ下がる。

「言ってる…でしょおっ!」

全身にムチッと脂肪がつく所につき、それまで胸以外の凹凸に乏しかった見事な曲線美が作り出された。のぞみは、その大きくなった体と二つの潰れた果実で小さな伍樹をベッドの上に拘束した。

「ね…?伍樹くん…?」
「ひ…」

のぞみの口元は緩み、影の中で光っているような瞳のおかげで、その顔はまるで獲物を手に入れたヒョウのようだった。伍樹は震え上がって、動くことができない。

「あなたはもう、わたしのもの…」
「の…のぞ…うっ…!」
「あら?伍樹君も大きくなるの…?」

のぞみの言ったとおり、先ほど小さくなったばかりの伍樹の体の表面がざわざわと波立っていた。

「ち…ちが…俺は…」
「なにが違うの…?体は正直なようだけど」

のぞみの胸を押し上げるように、伍樹の胸板に厚みがで始める。二人の胸はムニィッと横に潰れていく。力なくベッドの上に横たえられている腕も、ムギュムギュと、大人の腕へと成長し、押された手は横へと進んでいく。ベッドの端から垂れている脚は、ムクムクと体積を増加させる。

「ん…ぐっ…」
「わたしに追いついて来たわね…じゃあ…わたしももっと大きくなっちゃおうかな…」

のぞみの肢体も、自分で言った通りに、どんどん大きくなる。伍樹に体重を預けたままの乳房も、プルプルと振動しながら拡大する。

「んはぁっ…!」

伍樹が先ほどの、結子と同じくらいの大きさまで成長した時、のぞみはその二倍の身長と、比べ物にならないほど大きな、呼吸でたゆんたゆんと揺れる双つの乳房を、伍樹の身体の上に乗せていた。伍樹がのしかかられ、動けないことには変わりなかったのだ。

「伍樹くんの体もこんなに大きくなっちゃうなんて…ふふ…これからが楽しみ…」

上半身の体重を胸とその下にいる伍樹に預け、のぞみが、伍樹の顔を愛でる。

「すべすべしたお肌…ああ、なんて素敵なの」

のぞみは狂気の混じった顔に恍惚の表情を浮かべる。

「望…」

対して、伍樹の方に浮かぶのは、絶望と悲哀。

「お前は、俺の親友…のはずなのに…どうして…」
「伍樹くんはわたしのペットよ…伍樹くんがかわいいのがいけないの…」

今度は身体を上から下までスーッと撫でる。

「それに、こんなに魅力的…最高よ」
「…最低だよ…お前がこんなになっちまうなんて…」
「わたしだって…こんなになるとは思っても見なかったわ…でもそれは神様からの祝福…さあ…存分に…二人で…っ?」

言葉が急に途切れる。のぞみは、顔をゆがませ、振り向いた。美優が、その太ももに触れていたからだ。

「なにするのよ、わたしたちの至高の時に、水を差すつもり…?」
「うん、そうだよ。もう、伍樹くんから離れて」

美優はいつになく強い声を出す。その声は、決意に溢れている。

「ふん、美優ちゃんの小さい体じゃ、なにもできないわよ…」
「それは、どうかな」
「なっ…あ…わたしの…体が…!!」

のぞみの体が、縮み始めていた。特に成長の大きかったその胸が、風船から空気が抜けて行くように、内側に引っ込み始める。

「あたしが、全部吸い取る…っ!」

美優は、伍樹の時と同じように、腕から何かが流れてくるのを感じていた。その何かは、体の中に入り込み、美優を内側から外に押し出していく。あっという間に、美優は結子の体型に追いついた。

「やめて!わたしの体を…取らないで!!」

のぞみは喚き立てるが、美優にその体型を奪い取られるかのように、急激にしぼんでいく。美優ののぞみに当てられた手は、その身長差が逆転するのと並行して、太ももから背中、そして肩へとその位置を変える。

「んっ…おっぱい…重い…」

あまりにも大きくなった、もはや球となっている二つの膨らみに、美優が耐えきれずしゃがみ込む。乳房はその脚に乗り、ムニュンと横にゆがんだ。

「いや!いやだ!伍樹くんはわたしのもの!美優ちゃんなんかに、絶対渡さないんだから!!」

中学生の大きさまで縮んだのぞみが、伍樹にしがみつく。伍樹はその頭を撫でた。

「大丈夫、だけど俺とお前は親友、それ以上にはなれないんだ」
「伍樹…くん…」

美優に吸い尽くされ、伍樹は幼稚園児、最後には2歳ほどまで小さくなった。

「ごめん…わたし…どうにかしてた…」

舌足らずの言葉を紡ぎ出すのぞみ。伍樹は母性溢れる女性の体で、優しく抱きしめる。

「だけど、伍樹くんのこと好きなのは、ほんと」
「分かったよ、だから二度とこんなことしないでね」
「う、うん。わたし、おうちかえるね」

のぞみは伍樹の抱擁が解かれると、床に落ちていたジャージを着直して、トテトテと小さな足音で保健室から出て行った。

「ふう…一時はどうなることかと思ったよ、ありがと、美優ちゃん…」
「えへ…伍樹くんが苦しそうだった…から…」

美優は床にしゃがみこんだまま、立てば天井に頭を打ちそうなほど大きな体を抱きかかえていた。

「また、抗体、飲まないと」
「うん、美優ちゃん。はい」

美優は、前回と同じく、何十リットルもの汗を床に垂れ流し、元に戻った。

「なんか…わたし、疲れちゃった…ちょっと…休ませてね」

保健室のベッドの上に横たわった美優は、深い眠りに落ちた。

感染エボリューション 5話

そのまま、昼休みが終わってしまった。

「みんな席につけ〜!」

保健体育の教諭である龍崎が、教室に入ってきた。

「ほら、そこの三人…も…?」

美優と結子、伍樹に声をかけようとする教諭。だが、彼はそこにいる小さな少女が誰か、当然わからなかった。

「おい八戸、その子は誰だ。妹さんか?」
「え…」

上の空だった美優がかろうじて反応した。

「だから、その子は誰だと!妹なら、すぐに帰らせろ!」

あまりに薄い反応に龍崎の怒号が飛ぶ。その荒らげられた声とは裏腹に、目がキラキラしている。うわぁ…と周りの視線はもはや救い用がない人を見るものだった。

「あ、こ、この子は…」
「その、篠崎伍樹君です…」

喋り出せない美優を、結子が補足した。

「し、しし…し」

教諭は故障した機械のように震え声になる。普通なら、とんだ戯言と、軽く済ませられるのだが、つい一昨日成長していた美優のことを考えると、簡単には否定できないのだろうと、美優は感じていた。
教諭は何十回も篠崎の「し」を繰り返し続けてやっと、深呼吸をして、息を落ち着けた。

「…そ、そうか…そうなのか…」
「納得してくれるんですか」
「ううむ…そうせざるを…得ない…な。だが、その格好で授業は無理だろう」

伍樹は、変身した時からずっとYシャツ一着だけを羽織っていた。その下に下着が着いているかどうかもわからない。

「先生、伍樹君を、早退させてあげてください」

結子が、衝撃から立ち直れていない伍樹の代わりに促す。教諭も大きく頷いた。

「ああ。だがな…それは、元に戻るのか?八戸だって元に戻ったんだから、篠崎だって大丈夫だろ?」
「それは…」

そこで、伍樹が急に立ち上がって大声を出した。教室じゅうにその幼い声が響いた。

「元には、もどれねえんだよ!!ふざけんな、どういうことだよ!!俺は一生小さい女の子のままだとか、俺がなにをしたっていうんだよ!!!」
「伍樹くん!?」

美優は癇癪を起こした伍樹に恐怖を感じた。

「落ち着け!伍樹!」

そう抑えるのは、伍樹の親友の男子生徒だった。伍樹はそれに気づいたのか、大きくため息をついた。

「望(のぞむ)、ああ…叫んでもどうすることもできないしな…」
「美優ちゃんだってこんなに怖がってるぞ」

伍樹は横目で美優を見た。その目の奥には、怒りの炎が燃えている。しかしすぐ目をそらして、言った。

「ごめん。美優ちゃんのせいじゃないのは分かってるけど…どうしても、納得がいかないんだよ」
「伍樹くん…こっちこそごめん…」
「じゃあ、俺帰るから…」

そそくさと帰ろうとする伍樹。その肩を、望と呼ばれた生徒が抑える。

「ま、待てよ…」
「望っ…うっ…!!」

急に苦痛の表情になる伍樹。

「そんなに俺、強く握ったか…?」
「ち…っ!違うんだっ!うぅっ!!」

美優はその様子を見て気づいた。伍樹は成長しようとしていたのだ。

「望さん!すぐに、伍樹くんから離れて!!」
「は?ん、なんだこの…汗か?」

伍樹の体全体が汗で濡れ始め、そして望はその体を服の上から手で触ったままだった。

「時すでにおそし…だね…」
「なに言って…なんだ伍樹の肩、変な感じになってるぞ!」

ウィルスが体を作り変え始めたせいで、それはムギュムギュと変形し始めていた。

「体が…熱いいっ!!」

伍樹が大声を出すと、シャツの胸の部分が盛り上がり始めた。

「もしかして元に戻るのか?いや、これって…」

その膨らみはまるでプリンのようにフルフルと揺れている。その小さな体に見合わない、結子ほどの大きさのそれは…

「おっぱい!?」
「ん…んぐぅ…」

伍樹はその重さでバランスを崩し、床の上に四つん這いになった。

「ふ…ぐっ!!」

その床についた腕が、グキグキと長くなり、ぶかぶかなシャツの中を満たして行く。小さな手のひらの指一本一本がバラバラに長くなり始め、全てが長くなると、手のひら全体がグキッと大きくなる。

「あ、足が…いた…うぅっ!」

次に足と胴が同時に長くなり、ぶかぶかの服からスルスルと体が出てきた。

「むぐぅっ!」

そして、ムクッと太くなり、健康的な下肢がむき出しになった。露わになった小さな可愛らしい尻が、ボンッと膨らんで、プリッと張った。

「あ、ああああっ!」

最後に髪がバサッと長くなって、変身が終わった。

「ふぅ…はぁ…」
「い、伍樹…」

望は目の前で起こったことが信じられなかったようだ。床の上で荒い息を立てる伍樹を、じっと見つめるしかなかった。

「望ぅ…。俺…!」

その四つん這いの格好のまま、そして尻を親友に向けたまま、首だけを動かして伍樹が声を出す。美優はその声に自分にはない女性の魅力を感じた。それを証明するように、望の顔が紅潮してきた。

「そんな声、出すなよ!お、俺…」
「どうしたんだよ、望…」

先ほどと同じ、誘うような声で伍樹が言う。

「あーもう!俺は同性愛者じゃないんだあああ!!」

望は頭を抱えて、教室から飛び出して行ってしまった。

「望?望!!…仕方ないやつだ。それにしても」

伍樹は立ち上がった。そして、自分の体を確認する。伍樹は10年ほど時を飛び越えたようで、幼稚園児のようだったその体は高校生のものに変わっていた。特に、そのシャツを大きく押し上げる胸、シャツの下端から微妙に見える尻、そして長く黒い髪の毛は、周りにフェロモンを撒き散らしているようだった。

「…俺の…おっぱい…」

伍樹の視界に、すぐ真下に見える大きな膨らみがどうしても入ってくるためか、それを自分の手でポヨポヨと触り始めたのだった。

「ちょ、ちょっと…伍樹くん!周りのみんな見てるよ!!」
「え?…うわあああ!!見ないでくれ!!」

しかし、その華奢な腕で乳房を隠そうとしたせいで、その大きさが逆に強調され、「見てくれ」と言わんばかりの格好になってしまった。

「も、もう!!」
「篠崎!!」
「はい、せんせ…い…」

伍樹の声が途中で途切れる。それもそのはず、教諭の顔にはいやらしい笑みが浮かび、鼻血が途切れることなく流れていたのだ。

「さっさと帰れ!ここはストリップじゃないんだぞ!」

美優にとって、抑揚が足りずほぼ棒読みのその台詞は、教師としての最後の尊厳のように思えた。

「言われなくても!」
「あ、待って!あたし、伍樹くんを送ってきますね!!」
「む、そうだな!行ってこい!」

相変わらず感情がこもらない台詞を背に、二人は教室を出た。

「本当に、ごめんね」

保健室で、二人は話していた。下着を持っていなかった伍樹がそのまま学校から出て行こうとするのを、美優が止めたのだ。次の休み時間に、結子がジャージを持ってくるまで、この場所で待つことにしたのだった。

「望にあんな目で見られるなんて、思っても見なかった。あの変態教師はどうでもいいけど」
「あはは…」
「俺は男なのに」

その言葉とは裏腹に、体つきは美優よりも女性らしい。美優はそれが少しだけ羨ましくもあったが、なにも言わないことにした。

「俺、これからどれくらい成長するんだろうな」
「それは…」

美優は、青年の、ウィルスが体を無限大に成長させる、と言う言葉の『無限大』の意味を捉えかねていた。

「多分、男の子はそんなに成長しないよ」
「…そうだといいんだけど」
「それに…!!」

美優の体に、あの衝撃がまた走り、体が跳ねた。

「どうしたの!?」
「そんな…どうしてっ…ああっ!!」

美優の体がまた跳ねる。美優は、自分の体の中で、熱が溜まり始めるのを否応無しに感じ取った。

「なおった…はずだった…っ!!のにぃぃいい!」

脚がググググッと伸び、太さがボンッボンッと膨れ上がる。スカートの口が無理やり押し広げられ、ギチギチと悲鳴をあげ始める。

「うううううう!!!!」

腕もバンッと一気に2倍ほどの長さを得て、シャツから飛び出してくる。同時に胴もポンプで空気を入れられるように大きくなり、シャツは引き裂かれてしまった。そして、凹凸のなかったウエストが、ギュッと締められる。

「んんっ!!」

顔はすでに幼さを失い、さらに衝撃のせいで涙が流れている。髪もサラサラと体のラインに沿って、腰のあたりまで伸びた。

「私の…おっぱい…がああああ!!!」

ついに、その平らだった胸板に、美優の一息一息ごとに脂肪が注入され始め、ムクッムクッと前に突き出されて行く。それは数秒の間に、リンゴのサイズに成長し、次の数秒にメロン、その次はスイカとなった。その成長により生じた揺れが、時間とともに大きくなり、最後には暴力的に揺れる特大のスイカが、美優の感覚を翻弄していた。

「み、美優ちゃん…」

その身長は2mに達し、体積は2、3倍になっている。そしてその体は、全身からかなりの量の液体、汗を滴らせていた。

「あ…あたし、どうして…抗体は飲んだはずなのに…」

当惑する美優の前で、何かが変わり始めていた。それは、伍樹の体だった。彼はすでに次の成長を始めようとしていたのだった。

「あ、あれ…俺の体…また…」

今度は暑がることも、苦しむこともしない。しかしその服の中が胸の脂肪で満たされて行く。身長もクイッと伸び、シャツから体がはみ出て、露出が大きくなる。脚も腕も、髪も長くなり、静かにその成長は終わった。

「さっきみたいに…痛くなかった…」

美優はその大きな体を動かし、伍樹の体を見た。その体には、汗が一滴もついていない。

「あれ…?」
「はぁ…ともかく俺は成長し続けるんだな。こんな早いペースで。しかも美優ちゃんとは違って元に戻れない」
「そんなことないよ、きっと元に戻る方法はあるって!」

美優は伍樹の手を握る。

「美優ちゃん…そうだね。ちょっと悲観的になりすぎてたかもしれないよ。ありがとう」

伍樹も握り返す。

「よし、じゃあ結子ちゃんが戻って来る前に元に…あれ、手が動かない?」
「あたしも手が…あっ…」

美優は奇妙な感覚に陥った。

「何かが、腕から流れ込んで…!!」
「俺から何かが抜けてく!!」

美優の爆乳とでも言うべき巨大な胸の膨らみが、ブルンと自分で揺れたかと思うと、さらなる膨張を始めた。

「あたし、もっと大きく…!!」
「俺は…!」

伍樹の方は、はち切れんばかりに張ったシャツが、スルスルと元に戻って行く。したからはみ出た脚も、細く、短くなっていく。

「伍樹くんの体から、何かが来てるよお!!」

美優の脚は、逆にムクムクと膨らみ、さらにムチムチとした脂肪を蓄えて行く。それが終わった時、そこにはついさっきより一回り大きくなった美優と、子供の体に戻った伍樹が、呆然として座っていた。

「どういう、ことなの…」

美優の中では、今まで以上の疑問と困惑が渦巻くだけだった。

感染エボリューション 4話

「どういうことなんだろ…」
「そんなこと今はどうでもいい!さっさとお薬飲まないとまた大きくなっちゃうよ!」

美優と結子の二人は美優の家へと急ぎ足で向かっていた。結子の体調不良ということにして、学校を早退したのだった。

「ね、美優ちゃん」
「何?」

胸をゆっさゆっさと揺らしながら、美優に一生懸命ついていく結子が聞いた。

「さっきから行ってるお薬って、何のことなの?美優ちゃんは、自然に元に戻ったんじゃないの?」
「あ…」

正体のわからない青年に助けられたことを、なかったことにしていた美優の矛盾に、結子が気づいたのだった。美優は立ち止まって、申し訳ない気持ちで答える。

「あのね、そのことなんだけど」
「うん」
「あたしがね、うちの中でもっと大きくなってる時に、ある人が入ってきたんだ」
「え…」

結子は少し青ざめた。よく考えなくても不法侵入である。美優はそれを認めながらも、続ける。

「それでね、その人が言ってたんだけど、私が大きくなってたのは変なウィルスのせいだって」
「ウィルス!?」
「うん、それで、たいさいぼう……に、ぎ…ぎ…なんだっけ、そう、擬態して…せ…」

美優の中で青年が口にした「セックスアピール」という言葉がとても卑猥なものに思えて、なかなか次を話すことができない。驚きが弱まって、美優の真っ赤になった顔を見かねた結子が助け舟を出した。

「それで、体が大きくなっちゃうんだね」
「う……そうなんだって」
「それで、そのウィルスの抗体か何かをもらったんだね」
「そう、そうなの!こうたい!」

結子は首を傾げた。

「でも、本当にそんなウィルス、あるの?もしそうだとしたら、私だけじゃなくて他の人にも感染してるはずじゃない?」
「うーん、その人は『俺のウィルス』って言ってた気がする…」
「その人の?」
「でも本当はそうじゃないとも言ってた」
「複雑な話…なんだね」
「うん、ふくざつ。じゃなくて、さっさと帰らないと!」

二人は再び歩き始め、抗体がある家へと向かって行った。

玄関につくと、扉には鍵がかかっていた。

「ちょっと待ってね」
「ね…美優…ちゃん…」
「何?あっ」

美優が見ると、結子の顔をだらだらと汗が流れている。

「体が…熱くなって…きちゃった…」

変身が始まろうとしていた。

「結子!…くっ」

美優は鍵を思いっきり差し込み、錠が壊れるほど勢い良く回した。

「待っててね!」

美優は朝食を食べた時、白衣を受け取り、自分の部屋に置いていた。それを取りに行くために、全速力で家の中を駆け抜けた。部屋に着くと、白衣のポケットをまさぐる。中の小瓶の一つを取り出すと、他の瓶がポケットからこぼれ落ち、割れてしまった。だが今の美優にそれを気にしている余裕はなかった。結子は死ぬことはないが、成長の苦しみを味わわせたくなかったのだ。

「よし、これで!」

玄関に掛け戻ると、美優が苦しそうに胸を押さえていた。その胸はまるで生きているようにムギュムギュと形をゆがませ始めていた。

「結子!これ飲んで!」
「み…ゆ…!うん」

美優は、薬を注いで欲しいと言っているように開けられた結子の口に、グイッと小瓶の中身を入れた。その瞬間、結子はむせ混んだ。

「あ、あついい!!」

いつもはおとなしい結子の口から信じられないほど大きな声が出て、美優は狼狽してしまった。それをよそに、結子の体からこれもまた信じられない量の汗が吹き出て、服がびしょ濡れになって行く。

「これで、これで大丈夫だから…ね!」
「う、うううっ!!」

そして、結子の体は美優がそうなったように、一回り縮んで、元に戻った。

「ふぅ…ふぅ…」
「結子!」
「美優…ちゃん…、ありがと…」
「すごい汗だよ、うちのお風呂で流した方がいいよ」
「うん…そうする」

美優は結子を招き入れた。結子が服を脱ぎ、シャワーを浴びている間、美優はその服を洗おうとした。

「ん…あれ?」

しかしその服はすでに乾いていて、汗でよれている様子すらなかった。

「おっかしいな…」

美優は、それで洗うのをやめた。そして、20分もすると、結子が風呂場から出てきた。

「ふぅー、まだお昼なのに疲れちゃったわ。まるで、私の体が私のものじゃなかったみたいな、変な感じだったの」
「うん、あたしもそんなだった…いつもよりもずっと背が高くて、見える世界も全然違ったもん」
「ふーん。そうだよね、美優ちゃんは私よりすごく大きくなってたから…あれ?」
「あ、その服」

結子も、美優と同じ違和感を感じたようだ。

「さっきまで…びしょ濡れだったのに…」
「うん、変だよね」
「まさか…!!」
「えっ?」

結子が頭を抱えた。

「ねえ、私たちが大きくなったのって、ウィルスのせいだって言ってたよね」
「うん」
「ウィルスって、すごく感染性が高いんだけど、何かを媒介しないと他の人にはうつらないんだよ」
「かんせんせい…?ばいかい…?」

語彙がいまひとつ足りない美優の顔に疑問符が浮かび上がる。結子は一回ため息をついて、言い直した。

「つまり、一回体の中に入ったらウィルスの症状が出ちゃうんだけど…症状、くらいわかるよね」
「バカにしないでよ!いくらあたしでも分かるって!」
「なら良かった。でもね、体の中にあるものが、人間の体同士を移動するのには、一度体の外にでないといけないでしょ?」
「うん」

美優がコクコクとうなずくのを見て、結子が続けた。

「その時にね、たとえば乾いた空気だけあればいいのとか…」
「え、それって普通じゃないの?」
「…ううん、そうじゃないみたい。それに、もしそうだったらこのウィルスで周りみんなが大きくなってるはずでしょ?私だけじゃなくて」
「あ、そうか」
「とにかく、このウィルス、この汗を通って感染するものじゃないかな、て思ったんだよ」
「ほー…」

イマイチ合点がいかない美優だが、結子は話し続けた。

「私、美優ちゃんが教室で大きくなった時に汗に触ったでしょ」
「そうだっけ」
「その時に感染したんだよ、多分」
「じゃあ、もう大丈夫だよね、二人とも飲んだもん。こうたい…だっけ」
「そう、抗体。だから大丈…夫…」

結子の声がだんだん小さくなる。

「どしたの…?」
「ううん、嫌な予感がしただけ。多分、気のせい。ふぅ、私、もう帰るね。ちょっと疲れすぎちゃった」
「あ、お菓子食べてかないの?」
「いいよ…それに、美優ちゃんは学校に戻りなさい」
「えー」

むーっと頬を膨らませる美優を見て、結子は呆れた顔をした。

「子供じゃないんだよ、それに美優ちゃんは成績危ないんだから」
「わかったよう」

結局その日は結子は戻ってこなかったが、それより他はいつもの平和な日常だった。

「あ、結子、おはよー」
「おはよう」

次の日には結子は普通の生活に戻ったようだった。しかしその表情は少し曇っているように、美優には見えた。

「大丈夫?」
「うん、もう平気」

結子が笑顔になったことで、美優はそれ以上気にかけないことにした。しかし、昼休みが始まると、やはり結子は不安そうな表情をしている。

「ねえ、本当になんもないの?」
「うーん…実は」
「え、何?」

その時、叫びが聞こえてきた。

「う、うわ、うわああああ!!な、なんなんだよこれええ!!!」

トイレから聞こえるらしい声は最初伍樹のもののように聞こえたが、次第に高くなって行った。

「俺の、俺の体がああ!!」

そして、最後には幼い、小さな女の子が叫んでいるようになった。結子は顔を手で覆って、つぶやいた。

「やっぱり…」
「え、どういうことなの結子!」

その疑問に答えるように、バタバタと誰かが教室に駆け込んできた。

「み、みんな!!」

その誰かは先ほどの叫び声の主のようだ。幼稚園児ほどの女児がサイズが合わないYシャツだけを羽織って、教壇の上で仁王立ちになっていた。

「お、俺の体が、小さくなっちまった!!」

教室がざわめく。クラスの誰もが、突然の小さい女の子の登場に当惑していた。その子は、美優を見つけると、走ってきた。

「ね、ねえ美優ちゃん!!俺、伍樹だよ!」

その可愛らしい顔に見合わない男口調で、美優に向かって叫ぶように喋るその子。だが、美優の方は状況が飲み込めない。

「え、え?」
「だから、俺は伍樹なんだって!」
「こんな小さな子が伍樹くんのはずが…」
「美優ちゃん」

結子が口を挟んだ。

「この子、伍樹君だよ。間違いなく」
「え、何言ってるの結子、そんなわけ…」
「分かってくれるのか!?…ゆ、結子ちゃん?」

伍樹と名乗る小さな子が顔を輝かせて結子の方に抱きつく。

「い、伍樹君…」
「俺、どうしちゃったんだよ!どうして体が小さく!それに髪は長くなってるし!小便してたらどんどん体の中身が抜けてくように、小さくなったんだ!」

さも結子を責めるように騒ぎ立てる少女。

「…あのね、ちょっと長いお話になるんだけど、いい?」
「あ、ああ。俺がどうなってるか分かるなら何でもいい!」
「あと、美優ちゃんも覚悟して聞いてね」
「え?う、うん…」

「あれが、ウィルスの仕業で、結子ちゃんの汗を触ったから観戦したと…?」

ここ2日の経緯を聞いて、信じられないという風に伍樹が発言する。

「私も正直信じられなかったけど、実際私も美優ちゃんも、その人からもらった抗体で元に戻ったの。ね、美優ちゃん」
「え、うん…」

説明をほとんど結子に任せていた美優は、一瞬遅れて反応した。

「でも、その人もこのウィルスがどういうものか分かってなかったみたい」
「え、それは初耳だよ」
「なんか、人づてに聞いたような話し方、してた気がする」
「気がする…って…」

美優の曖昧さに不満げな伍樹。

「仕方ないもん…あたしも大きくなる途中で苦しかったんだよ…」
「とにかく、その人が作ったウィルスじゃないんだね。まあ、抗体使って直しましょう、これ以上広がる前に」
「抗体…あっ!」

美優が飛び上がって、大声を出した。

「どうしたの?」
「抗体…もうないんだよ」
「「えええええっ!?」」

二人も大声を出した。

「ごめんなさい…昨日結子ちゃんにあげようとした時、他の全部こぼしちゃったの」
「そんな、あはは…」

伍樹が下を向き、そのまま動かなくなってしまった。結子は顔を覆った。

「ごめん伍樹くん…あたしのせいで…」
「い、いや…君のせいじゃ…ないよ…うん…」

「こうなったら、もう一回その人を見つけるしかないよね」

結子が提案する。

「うん、でもどうしよう…」
「とにかく行動行動だよ!……」
「おい、どういうことだよ!!」

結子の言葉にかぶるように、大声がした。振り返ると、そこにはフードをかぶった青年が立っていた。

「あ、あの人だ!」
「えっ!?」

青年はズカズカと美優に近づいてきた。

「感染広がってるじゃねえか!!まさかお前、抗体をやる前に誰かにうつしたのか!?」
「えっと、うん」

結子が私ですと手を上げる。青年が机に両手をついてうつむく。

「やっぱり…」
「どうしたんですか?」

美優が声を掛けると、青年はキッと美優を睨んだ。

「『どうしたんですか?』じゃないだろ!校庭で漏らしてる奴がいるなって見てたら、どんどん小さくなってくじゃないか!それであっという間に…」

青年の視界に小さい伍樹が映った。青年は伍樹を指差し大声を出した。

「そうだよ!こいつみたいに小さな女の子に!!」
「あの、そのことなんですけど…」
「なんだよ」
「抗体余ってません?」

青年はハッと冷静を取り戻し、姿勢を直した。

「抗体…な。余ってるが…」
「じゃあ早くそれを!!」

うつむいたままだった伍樹がバッと起き上がり青年に言った。

「お前、元々男だよな?じゃあ無理だ」
「え、なんで…」
「なんでか知らないが、抗体を男の感染者に使うと、重大な副作用が起きて死ぬらしい」
「は…」

三人の表情が凍りつく。

「だから男に移る前に止めておきたかったんだよ!こうなったらもう、感染を止める方法はお前らを殺すしかない」
「殺すって…」
「が。俺にはそんな度胸はない」

周りが四人を見つめているのを無視して、会話は続く。

「じゃあ俺はどうなるんですか」
「…さあな。もう、俺の知ったことか」
「そんな無責任な」
「そもそもこのチビがぶつかってきたのが…!…いや…俺が悪い。すまない…一応残りの抗体を渡しておく」

青年は持っていたナップザックを机の上におろした。

「じゃあな」

そして、そのまま立ち去って行った。三人は追いかけることもせず、ただ沈黙していた。

感染エボリューション 3話

「返せよ、俺のウィルス」
「あんたの…!ウィルス…っ!?」

体に走り続ける衝撃に耐えつつ、美優は声を出す。

「ああ、厳密には俺のじゃないが…それに…かなり苦しそうだな」
「説明…してよ!私の体に…っ!なにが起こってるの!?」

美優の体に熱がこもり始め、肌が汗で濡れて行く。

「お前、最近誰かにぶつかって何か液体をかぶったの覚えてないか?」
「えき…たい…?」
「ま、その様子じゃ覚えてないようだな。お前はその時ウィルスを体内に取り込んだんだ」
「ウィルスって…なによう…!」

乳房が意思を持ったようにムニムニと形を歪め始めた。

「基本的には他のウィルスと変わらない、自己複製が目的のRNAの容器。そして今お前の体の中にいるのは…」

体全体がザワザワと波打つように、脂肪の移動が起こる。

「難しいことはわからないんだが、体細胞に擬態し、感染者のセックスアピール、性的な魅力を増大させる」
「んぎゅ…っ!」

そして、すでに巨大な乳房がムクッムクッとこれでもかという風に体積を増やし、その重さで美優の体をソファーに沈める。

「抗体がなければ、それこそ無限大に」
「くぅ…っ!」

背骨がボキボキと音を発し、成長して、美優の体がソファーの上からはみ出す。

「エネルギーは普通の空気から得られるようだ」
「あ…ああっ!」

脚が伸び、ソファーの端からはみ出して行く。尻と脚の太さが同時にギュッと太くなり、ソファーの上を埋め尽くす。

「しかし、こんなに大きくなるとは…本当に、ぶつかって来たのはお前だよなあ」
「んあっ!!」

腕も脚と同じように成長して、他の体の部分と釣り合う。

「たく、今俺が見つけなかったら、この家を壊すまでずっと成長してたろうよ、お前」
「ふぅ…ふぅ…」

体の熱を冷やそうとする汗にまみれ、びしょ濡れになったソファーの上で、荒い息を立てる美優。

「妹を喜ばせようとやったのに。制御すれば、こんなに大きくなることもないはずだったのに、まあいい。こうなったら事が明らかになる前にお前に抗体をやろう」

男は、ポケットから小さな試験管のようなものにコルクで栓をしたものを取り出し、蓋を開けて、いまだ息が荒い美優の口に近づけた。

「本当はこうやって摂取させるものじゃ無いんだろうが、このウィルスだって肌にぶっかけただけで感染したんだ。抗体だってかなり強いはず。飲め」

美優は言われるがままに、差し出された液体を飲んだ。吐き出しそうなほどの味など気にせずに、飲み干した。

「あ…あっ!」

すると、美優の体の中で引き始めていた熱が戻って、さらに中で何かが燃えるように、熱くなった。

「も、燃えるっ!!」

汗が大量に出る。普通では考えられないほどの量の液体が出る。逆に、体は縮小し始め、まるで、美優という水が入ったスポンジが絞られて行くようだった。

「まあ、これでお前は元に戻るだろう。念のため、今のやつを5本くらい置いておくからな。もう会うことはないだろう」

男は美優が着ていた白衣のポケットに瓶を数本入れると、立ち去って行った。一方の美優は、ゆっくりと縮み続けていた。

「熱い!熱いよぉっ!」
「どうしたの!?美優なの!?」

玄関先から母親が呼びかける声がする。

「お母さん…助けて…!」
「美優!」

ドタドタという足音がすると、母親が飛び込んできた。母親は美優のまだ元に戻り切っていない、結子よりも一回り大きめな体をみて、驚愕した。

「美優…!?」

そして数秒後に、美優は完全に元に戻った。美優の周りはまるで水が入ったバケツが何杯もこぼされたかのように濡れていた。

「おかあ……さん…」

美優は母親をみて安心し気が抜けたのか、すぐに気絶してしまった。

美優が目を覚ますと、自分の部屋の天井が見えた。

「ん……」
「目が覚めた?」

母親がそばに座っている。

「あ、お母さん…」
「よかった。帰ってきたら倒れてるんだもの、びっくりしたわ」
「ごめん…」
「それに妙なことなんだけど、あなたが一瞬大きくなってたように見えたわ…」

美優はなにを言うべきか考えた。母親に、男から言われたことを打ち明けるべきか。しかし、抗体を飲まされたおかげで、ウィルスを駆逐し、もう大きくなることはない。美優は、白を切ることにした。

「変な幻覚だね」
「そ、そうよね…幻覚よね…床もびしょ濡れになってると思ったら、すぐに乾いちゃったし」

その言葉に美優は何かが引っかかったが、気にせず続けた。

「お母さん、あたしお腹空いちゃった」
「じゃあすぐんいお夕飯にするわね」
「私も手伝うよ!」
「あら、いいの?」
「うん!さあさあ行こう!」

今までずっと気を失っていた娘の威勢のよさをみて、母親は少し困惑しつつも安心したようだ。美優のほうは元気を出すことで、その日の出来事を全て忘れようとしていた。

次の日。学校に登校した美優は、話しかけて来た結子が心底安心しているのを感じた。

「あ、美優ちゃん元に戻れたんだ」
「そうなの。気づいたら夢みたいに元に戻っててね!」
「ほんと、夢みたいだよね。あんなに大きくなってたの」

今は結子より頭二つ分背が低い美優が、その前に分かれた時は逆に頭二つ分背が高かったのだ。結子も相当困惑していたのだ。

「もう、大丈夫だから」
「そう、なんだ。良かった」

二人は少しの間沈黙した。美優は昨日の出来事のショックが、こだましているように感じた。

「おはよう!朝礼を……」

教諭が教室に入って来て、声を出しかけた。ところが、元の体に戻った美優に目が止まった途端、目を見開き、さらに大きく、つんざくような大声で叫んだ。

「八戸が元に戻ってる!!」
「は、はぁ……」

その大声のターゲットにされた美優はたまらない。しかし何とか曖昧な答えを返せた。教諭は満面の笑みを見せて続けた。

「良かったあああっ!!」

教室全体から「えぇ……?」と声が聞こえ、侮蔑の目が向けられる。気がついた教諭は顔を整え、咳払いをする。

「いや、昨日八戸が飛び出して行ってしまったと聞いてな。ちゃんと学校に戻って来たということを喜んだわけで、決して俺はやましいことを考えたわけではないぞ」

最後の部分だけ小声で、教諭は主張したが、もはや説得力はない。教諭はクラス全員の冷たい視線を浴びながら、朝礼を始めるしかなかった。

「あのロリコンが……」
「あはは……」

美優は教諭を睨みつけ、結子はその後ろから苦笑いするしかなかった。

「ま、まあお子さんと同じように生徒を愛したいってことじゃ無いかな……ちょっと気持ち悪いけど」
「すごくキモいって!」

二人の言葉で教諭がビクッと震えたように見えた。

昼休み。美優はまたドキドキしていた。

「ねえ、本当に伍樹くんに話しかけた方がいいかな……?」
「いや、だって、このままだと終わっちゃうよ?それに、昨日のハプニングだって、チャンスに変えられるって!」

美優は学食で買ったパンを潰さんとしているかのように握りしめ、伍樹の方を見つめる。伍樹は他の男子生徒と楽しそうに会話をしている。そして、その額には昨日飛ばして当てたボタンの跡が少し残っている。

「う、うん…」
「昨日みたいに大きくなることも無いんだから」
「まあ、ね…」
「じゃあ行ってらっしゃい」

結子が美優の背中をポンと押した。美優は受けた力で動くロボットのように、ぎこちなく歩いていく。

ーーパン、食べよ…パン、パン……

今度は昨日のような衝撃を感じることもなく、伍樹の前にたどり着いた。

ーーなにか、話さなくちゃ……

そして、口をついて出た言葉。

「伍樹パン!!」

大声で二つの単語を叫んだ美優の周りで、一瞬空気がこおった。名指しにされた伍樹が言葉の意味を捉えかね、声を出した。

「えっ!?」
「あっ!」

美優は我に返った。

「あ、あの!!」
「はいっ!!」

美優の大声に、思わずかしこまる伍樹。美優もハッとして、深呼吸した。

「パン、一緒に、食べ…ませんか?」
「え、あ、うん…いいよ」

二人の緊張した会話に、周りも硬直していたが、やっと話が通じたのをみて、すこし胸をなでおろした。

「じゃあ伍樹、かわいい美優ちゃんを泣かせるんじゃねえぞ?」
「は?お前なに言って…」

伍樹と喋っていた男子生徒が気を利かせて席を空けた。

「ま、いっか……じゃあ…あの…座って?」

伍樹もあまり女子生徒と話すことがなく、かなり言葉を選んで喋る。

「あ、ありがとう…ございます」

美優はフラフラとしながら男子生徒が空けた席に座る。

「それで、えっと……」
「き、昨日はごめんなさい!!ボタン、当てちゃって」

伍樹の顔が真っ赤になった。

「怒ってますよね、すごい勢いで飛ばしちゃったから」
「い、いや、違うんだよ……いや、でも、うん、違う。大丈夫だよ、怒ってない」
「じゃあなんで顔が真っ赤に」
「い、いやこれはその……ああ畜生!」

伍樹は目線を大きく逸らし、頭を抱えて大きく叫んだ。

「えっ!?」
「正直なこと言っても、いいかな……」
「ど、どうぞ……」

美優は身構える。あまりいいことの予感はしなかった。

「あの、昨日の、はちの……美優ちゃんの……その、胸が……」
「あっ」

美優の顔も真っ赤になった。目の下に見えた自分の大きな胸の谷間が、頭の中に鮮明に蘇って来た。

「ごめん……」
「い、いいよ……伍樹くんも……その、男の子なんだもん」

美優はうつむいて下を見ると、そこにはぺったんこの胸板。美優はそれを服の上からペタペタと触った。

「今の私なんて……」
「ち、違うんだ!そういう……意味じゃ……それに、元の美優ちゃんの方が俺としては、その、好き、かな」
「ほんと!?」

影がさしていた美優の表情がぱぁっと明るくなる。

「そうだよ、元気で、健気で。正直、龍崎のことなんにも言えないよ」
「そうなの!?私も、伍樹くんのこと、好きなんだ!」
「美優ちゃんくらい声が大きいとそれくらい知ろうとしなくても分かるよ。ありがとう」

美優は本来の明朗さを取り戻し、伍樹とずっと話し続けた。そしてあっという間に昼休みは終わり、それを知らせるチャイムが鳴る。

「じゃあね、伍樹くん」
「うん、楽しかったよ」

美優はルンルンと自分の席に戻る。結子は、グッと親指を立てた。

「大成功だね!」
「うん、ありがと、後押ししてくれて」
「実行に移したのは美優ちゃんの方だよ、とりあえず、お弁当しまって、次の授業の準備を……っ…」

結子の表情が急にゆがんだ。

「どうしたの?」
「う、ううん。なんでもな……あっ!!」

美優に悪寒が走った。今の結子の仕草は、昨日までの美優の成長の前段階に、いやというほど似ていた。

「まさか……!」
「あ、あれ……熱くなって来た……っ!?」

顔から汗が吹き出ている。間違いなかった。結子の体は成長しようとしていた。

「嘘でしょ、終わったはずだったのに」
「ん、んんっ……!」

机に押し付けられている掌がグニグニと変形して、体からは聞き覚えのある奇妙な音が聞こえ始める。

「結子!!」
「あぁっ!!」

ついに成長が始まった。机の下で脚がグイッグイッと伸び、スカートからスッスッと出る。もともと大きい胸がグググッと制服を突き上げるように膨らみ、シャツが左右に引っ張られて、その上の方からグニッと胸の肉がはみ出した。

「ん…苦しっ…んうっ!」

腕が伸びて太くなり、制服がゆがむ。胴がクイッと伸びると、座高がキュッと上がり、膨らんだ胸がユサッと揺れ、さらにシャツが横に引っ張られる。そこで成長は終わったが、結子の苦しそうな表情は変わらなかった。

「息が……」

ブラのサイズが合わなくなり、呼吸を妨げていたのだった。

「結子!?」
「え、ええいっ!!」

結子は余裕がなくなった制服の腕を無理やり前に動かした。すると、背中の縫い目がプツプツとほつれると同時に、ぷつっという音がして、胸がブルッと揺れた。ブラが壊れたようだった。

「ふぅ…ふぅ…」

成長した結子の体は、やはり汗で濡れている。美優は体が冷えてはいけないと、ハンカチでその体を拭いた。

「み、美優ちゃん…ありがと」
「ごめんね、私のせいで結子ちゃんまで」

しかしハンカチだけでは足りなかった。美優が拭くものを探していると、真っ白なタオルが差し出された。伍樹が、美優の近くに来ていた。

「これ、部活用のだけど、使って」
「あ、ありがと…」

美優は受け取ったタオルで結子の体を拭き、服から汗を吸い出した。すぐに、汗は綺麗になくなった。

「洗濯はいいよ、俺も今日の部活でつかわなくちゃならないし、部室に洗濯機あるから」
「そ、そう?ごめんね。伍樹くん」
「ありがとうございます…」

結子は今起こったことが信じられないで、ワナワナと震えていた。