副作用2 (1/3)

その次の日。自然と目が覚めた少年は、いつものように背伸びをしてあくびをかく。そして、少しぼーっとしたあと、思い出した。

「あ、元に戻ってる……」自分の体を見ると、服が破れている以外は普段どおりのものに戻っていた。ただ、手足がやけに細く、肌も色白になっている。股間を確認すると、そこだけは元に戻っていないことがはっきり分かった。

薬の副作用で、少年は少女になり、男に戻れなくなっていた。しかも、『オトナになる薬』のハズが、元と同じ年頃の、子供の体で安定していた。

それよりも、少女には緊急の、文字通り課題があった。目覚まし時計を見ると、いつも起きている時間を50分過ぎていた。

「遅刻しちゃう!」少女は飛び起き、パジャマを脱ぎ捨てて学校に行くための服に着替える。学校は電車通勤が必要なほど遠いところにあったが、電車の本数は少ない。通勤ラッシュでも、30分に1本しか来ない。少しの遅れが、致命的な遅刻につながるのだった。

「うぅっ」だが、そんな彼女を、また胸の痛みが襲った。内側から無理に押し広げられるような、痛烈なものだ。見ると、思ったとおり、ぷっくりと胸が膨らんでいる。それと同時に、心臓が少し強めに脈をうっていることにも気づいた。

「もしかして、激しい運動とかすると、成長しちゃうの……?」手指も少し長くなるのを見て、仕方なく遅刻することにした彼女だった。思ったとおり、少し落ち着かせると、その長さは元に戻り、胸の膨らみも消えていた。

「よかった……って、そんな場合じゃないんだって……」少女は、カバンに授業に必要なものを詰め込み、先にでかけていた親が作った弁当を回収すると、学校に向けて出発した。
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副作用

「これが『オトナになる薬』……?」

見た目は、ただの風邪薬のような錠剤。それを手のひらの上に置いて、九歳の少年はじーっと見つめた。二次性徴はまだ始まっていないが、背は低いわけではない。ただ、気になっていた近所の年上の女性に告白したときの反応が彼にこの薬を手にさせた。それは単純明快、『コドモっぽい』と一蹴されたのだった。あまり使い方に慣れていないインターネットで、どういうわけかこの『オトナになる薬』を見つけ、即日で購入、そして今日それが届いたというわけだ。

「えーと、『一日三回、一錠ずつ飲めば一ヶ月で効果が出ます……』」

薬が入っていた瓶にある注意書きを読み上げる。小学生レベルの漢字の知識で読めるように、難しい漢字はふりがなが振ってあった。

「『10錠飲めば一時間で効果が出ますが、副作用については保証できません』……かぁ」

彼は、少しのあいだ逡巡した。副作用でどんなことが起きるかまったく見当がつかない。しかし、この薬を衝動買いさせた焦りが、彼を動かした。10錠で一時間なら、20錠だったら一瞬で効果が出るのではないか。そう憶測した小学生は、瓶から薬をドバっと出した。そして本来なら一週間かけて飲む量を、水と一緒に一気に飲み干した。

「ふぅ……」

あまりにも大量の錠剤で、少し息がつまりかけたが、何とか胃袋に詰め込む。そして、薬は胃袋から身体に吸収されていく。それを、少年は自分の体の中の熱として感じ取った。だが、その熱は少し経つと収まった。

「え……」

時計の音がチクタクと部屋に響く。少年は瓶をボーッと見つめていたが、一分くらいして諦めたのか、瓶のフタを閉じた。

「やっぱり、こんな薬だけで大人になれたら苦労しない……か」

近所のお姉さんが、遠ざかっていく。悲しみよりも、バカバカしさの方が大きかった。考え方だけでも大人になってないかと少し思考したが、何も変わっていなかった。彼は、宿題をするためノートと教科書を取り出し、勉強机に準備して座り、鉛筆を握った。

そのときだった。

《メキメキ……》
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変身描写だけ描きたい!(TS/AP/TF)

「ま、待ちなさい!お前にはまだ!!」
「見ててください……俺の変身!」

俺は師匠に叩き込まれた気功術を発動させた。怪人が一般市民を襲っているのに、俺自身の安全を考えてなどいられない。それに、修行の成果を見せるには絶好のチャンスだ。

「ふんっ!!」

気合をこめると、俺の体がぐにぐにと縮み始める。逆に、髪は長く伸び始め、黒かったものが根本からピンク色に染まっていく。

「く、くぅっ!!」

とどのつまり、俺は魔法少女に変身しようとしていたのだ。なぜ少女に変身しなければならないかと言うと、話せば長くなるが、体に一定量ある魔法を凝縮させるのが一番の目的だ。

「だ、ダメです!!やはりまだ早い!!」

師匠は必死に止めてくるが、その言葉とは裏腹に、俺は思ったとおりの少女の体に近づきつつあった。手足は短く細くなり、筋肉も鳴りを潜めていく。そして、ぶかぶかになった服が変形を始める。変身中に少し発散される魔力が、普段着をフリルたっぷりのコスチュームに変えていくのだ。

「ふふっ、師匠……ちゃんと、俺、変身できましたよ」
「お前……!」

いつもより視線が低い。近くにある窓ガラスに映る俺の姿は、魔法少女そのもの。体は小学生くらいの大きさで、顔も幼くかわいらしく、もともとの面影などどこにもない。体の中は、濃度の高まった魔法で少しぽかぽかする。準備運動にと、体を少し浮かせ、魔法の命中度を高めるためのステッキを作り出す。

「じゃあ、俺、アイツを倒してきま……っ……!?」

怪人に敵意を向けた瞬間だった。いきなり体が熱くなって、心臓がバクバクと激しく鼓動した。

「だから、言ったのに!お前の体は、まだ戦闘向きの魔力に付いていけるようなものではないのだ!」
「じゃあ、元に……!!」

元に戻る気功術を発動させようとするが、体中を駆け回る熱、いや、魔力のせいで集中できない。

《ギュウッ……!!》

なにかに、胸が締め付けられている。いつの間にか怪人に襲われたかと思ったが、違う。服の、胸の部分が前に押し出されていた。そしてそれは俺の見ている前でどんどん大きくなる。

「こ、これって!?」

俺の疑問は、すぐに解決された。その盛り上がりは爆発的に大きくなり、服を破り捨てて飛び出てきた。肌色の、やわらかくすべすべとしたカタマリ。おっぱいだ。それも、子供の胸には釣り合わない、手に余るくらいの大きさだ。

「な、なんで!俺、男なのに!」
「今は、魔法少女でしょう。もう、手遅れです。あなたは、怪人になるのです」
「か、怪人!?この俺が!?うぐぅっ!?」

脚に、急に空気が送り込まれたかのような圧迫感が走り、目線がグイッと上がる。大きな胸で視界が邪魔されて脚はよく見えない。

「お前は木属性の魔法が得意だった……だから……」

ピンク色の髪が、緑色に染まり始め、更に伸びて腰に掛かってくる。背骨がグキグキと伸ばされ、骨盤が広がる。

「だから、植物の怪人になると……?」

指に痛みが走ったと思うと、一本一本が長く細く伸びる。そして、腕が引き伸ばされるように長くなる。

「ええ……」

服はもはやビリビリに破け、俺の体はほとんどが外気にさらされている。さっき幼い少女を映していた窓ガラスには、緑髪の女性が写っている。ほどよく健康的なその体は、こんな危機的状況でなければ、いつまでも眺めていたいくらいだ。

「なんだ、普通の女じゃないか」
「ここで終わると思ったのですか?
「え……うっ、ぐぅっ!!??」

脚に、強烈な痛みが走る。骨が、皮が溶けていく。そして、皮膚は茶色にただれて、形が崩れていく。ささくれだらけの乾いたそれはまるで木の幹のようだ。

「ドリアード、樹の怪物になるようですね……」
「そんな……!!」

その脚は、地面に突き刺さり、その下の土から、養分を吸い出す。俺の目では見えないが、体でそうわかった。そして、ドクン、ドクン、と吸い上げた養分が上半身に蓄えられ始める。

「おいしい……」

無意識にそう声を発していた。大地の恵みは、とても美味だった。こんな街の中でも、地中深い所では自然が残っているのだろう。その恵みで、俺の体は育ち始めた。

「いい、いい……」

肌が、微妙に緑色を帯び始める。巨乳だった胸が、更に大きくなっていく。脚からツルが伸び、体に巻き付いて服のようになる。そして、豊かに育った乳房も、包み込んでいく。

腰には飾りのように花が咲いた。地面に根を張った脚は、いつの間にか人の身長くらいに長くなり、人間と変わらない大きさの上半身と不釣り合いになっていた。師匠の顔が、下の方に見える。

「……思ったとおりの、結果になりましたね……」

その表情は、これまで見たことがないほどに曇っていた。その悲しげな顔が、俺の胸に突き刺さった。

「お、俺は……アイツを倒して……」
「だめです、だめですよ!怪人になっても、心を奪われなければ……!!」

師匠が、必死に俺を止めている。だが俺のプライドが、人間を襲っている怪人を倒せと言っていた。……今思えば、それはドリアードの本性が誘いかけていたのかもしれないが。

どっちにしろ、俺は無我夢中でそいつを攻撃し始めた。脚からつながったツルや樹の根、ありとあらゆる攻撃手段で、狩りをした。殺す、ころす、コロス。それ以外、考えなかった。

そして、怪人が粉々になった頃には、師匠の姿はなかった。もう、魔法少女なんかどうでもよくなっていた。それよりも……

「この大地は、ワタシのモノ……醜い人間の街など、この地から消してしまおう」

そんなワタシの前に、立ちはだかるものなど、なかった。

変身描写だけ書きたい!(AP2)

「だ、だめ……」
「今こそ、君の力を解放するべきときなんだ……この街の皆を、守るためにも」

強固な城壁に囲まれたトバという街。だが、その城壁ですら今や破られ、壁の防護隊も風前の灯火となっていた。
小さい子供の姿をした『彼女』はその街の上級魔法使いなのだが、これまでも、その枠を大きく超える力を解放し、幾度となく魔族に襲われる、この街を救ってきていた。防衛隊長はその小さな子供によりすがり、街の防護を懇願していた。

「今は、だめ……この街が滅んでも、私の力は使っちゃだめ!」

その解放のトリガーは、異性との抱擁。彼女の意思に関係なく、抱きしめられると他に類を見ない規模の防護魔法が発動させるのだ。だが、今の彼女は様子がおかしかった。

「この街以外に、俺達に何があるっていうんだ!」
「あなたには言っても分からない!それに、他の魔法使いの力を使えば、今回の侵攻は食い止められるはずよ!」

防衛隊長は、上層部の魔法使いが彼女の力を過信し、自分たちの手を出すことを拒んでいることと、彼女も何が理由か分からないが手を貸してくれないことが重なり、部下を多く失っていた。上はどうしても動かない。それなら、彼女を無理にでも抱きしめて防護魔法を発動させるしか、選択肢がなかった。

「ええい、うるさい、さっさと……!!」
「きゃぁっ」

焦りのあまり、甲冑を着たままで力強く彼女の体を締め上げてしまった。肋骨が二、三本折れたような音がしたが、それくらいは後で治癒魔法を使えばいいだけ。

「もう……おさえ……きれない……!!うわああああっ!!!!」

彼女が叫び声を上げると、その体から衝撃波が生じた。隊長は遠くまで吹き飛ばされ、彼女の周りの地面はえぐれた。服も一気にちぎれさり、彼女は一糸まとわぬ姿を晒していた。

「うっ……ぐううっ……!!!」

隊長は、吹き飛ばされた衝撃はともかく、いつもの防護魔法とは全く異なる性質を持った衝撃波にうろたえた。なにか、恐ろしいことが起きようとしている。

「だめ、だめ、だめだめだめぇっ!!!」

彼女は、自分の体を抱きしめている。そして、その体が、グワッと一回り大きくなった。

「なにが起こっていると言うんだ……!」

また、一回り大きくなる彼女。8歳くらいだったその体が、成長を早回しするかのように、大人のものへと変わり始めていた。

「出てきちゃう……あいつが……!」

白い生肌に、なにかシミのようなものが現れ始めた。普通のシミと違うのは、それが青く光っていることだった。そして、それが急に明るくなったと思うと、彼女の尻がグググッと膨れ、その上にシミ……いや、何かの紋章が細かく刻まれていく。それを体を捻って確認した彼女は、諦めの表情を浮かべた。

「また、滅ぼしてしまう……」
「な、なにっ!?」

隊長は遠巻きながらにその言葉を聞き取り、彼女のもとに駆け寄った。その間にも、また、彼女の体が大きくなり、紋章がさらに刻まれていく。

「隊長さん、今まで、楽しかった……」
「なにを言ってる、防護魔法を出せばこれからも同じ生活が……」
「う、ううっ!!」

彼女の悲鳴が言葉を遮る。髪がバサッと伸び、腰にかかる。その先では、スレンダーだったももに一気に肉が付き、ここにもやはり入れ墨が入っていく。そして、彼女の虚ろな瞳は、最後に隊長をじっと見つめた。

「も、もう……私が……私じゃなくなるから……さよ……なら……」
「しっかり、しっかりしろ!!」

隊長はその華奢な肩を揺さぶる。だが、彼女の瞳から赤い光が放たれると、ひるんでしまう。

「ふ、ふふっ……愚かな人間ども……また、やってしまったのね」
「なんだと!?」

彼女の口からは、これまでの清楚なものとは対極の、女王のように傲慢な言葉が発せられる。

「あらあら、この子も中々貧相だったのね?」

さらけ出された胸を、彼女は撫で始める。すると、膨らみも何もなかったものが盛り上がり始め、手の動きに合わせてムニュンムニュンと形を歪ませながらどんどん膨らんでいくではないか。隊長は危機的状況にも関わらず、その柔らかな動きに息を呑んでしまう。

「う、うふふっ……こんなに力が……たまってると……っ」

そして、また彼女の体全体が大きくなり、その国でも一番大きいと言っても過言ではないほどの身長と、胸と、尻を持ち合わせた女性となっていた。さらに、胸はどんどん大きくなり、頭ほどのサイズになってしまった。

「一つの国くらい、滅ぼしてしまうかも?」
「な、なななな、なにを、貴様は……!」

彼女の体の上の紋章が、明るくなった。と同時に、上空に青い光球が生まれ、またたく間に巨大化していく。

「私は、この世の魔族を統制する者。他にも、同じ存在がいるのだけど……これまで、私の力で魔族を倒してきたのでしょう?」
「おまえの、力……?防護魔法ではなく、魔族を統制する力だというのか……?」

「防護魔法?ああ、私の力は、この街をエサにして、ある程度の量の魔族が集まってきたら発動して、全ての魔族の魂を吸収するんだから、防護しているように見えなくもないわね」
「この街が……エサ……?」
「ふふ、おかげさまで沢山の魂の力が私の中を駆け巡ってるわ……使い方を間違えれば世界を終わらせるほどのね……でもっ、ふぅっ……!!」

彼女の胸が、さらに大きくなる。他の部分の肉付きもさらによくなり、その体を見せるだけで精を出し切ってしまう男もいるほどのものになった。

「そろそろ、出さないと、器が壊れちゃうからっ!」
「出す……だと……」

いつの間にか、青い光球も明るすぎて太陽が見劣りするくらいのものとなっていた。

「コスモに送り出すのだけど、その反動でこの国は爆発四散する、そういう運命なの。じゃあね」

こうして、魔族の魂の統制に巻き込まれ、一つの国が跡形もなく滅んだ。

トキシフィケーション~毒の力~ 温泉編

ここは山奥の温泉。寂れた宿屋に、3人の家族が訪れていた。父親と、母親と、小学生の子供だ。

「やっとついた……こんな秘境、よく見つけたな……」
「ええ、そうね……」

父親、大介(だいすけ)は30代のサラリーマン。妻の花菜(かな)がチラシのスミに書かれていた宣伝を見て、子供の真波(まなみ)と一緒に行きたがったことで、近くの街から車で1時間もかかるこの宿に行くこととなった。

「イラッシャイマセー」出迎えるのは、アメリカ人のような背の高い男性。多少なまっているが、和服を着て落ち着いた雰囲気だ。

「あら、外国の方なのね」
「マズハ、オチャデモー」
玄関で靴を脱いだ三人を見て、靴を下駄箱に入れながら中に案内する。朽ちた外観とは裏腹に、内装は都心の宿に引けを取らない近代的なものだった。

「古宿に泊まるのは、少し不安があったけど、これなら大丈夫そうね、ね?真波?」
「うん!でも私、もう疲れた……」

真波は、そのロングヘアを手ぐしでときながら、小さなあくびをした。

「あらあら、じゃあお茶は後にして、お風呂でも入ってくる?」
「どうしよう、一人で大丈夫かな」

「ソレナラ、オチャヲ イレタアトニ ワタシガ ゴイッショシマスヨー」
宿の主人が、宿泊部屋に案内しながら、ニコニコと微笑んで言った。両親は荷物をおろしつつ、その主人の善意の笑みを信頼することにした。

「それでは、よろしくお願いします」

「デハ、オチャヲ オモチシマース。ゴユックリー」
「ありがとうございます」
主人は、ふすまを閉じて立ち去っていった。大介は早速テレビを付けて、椅子に座りくつろぎ始めた。

「ふう、こんな田舎に、ここまで綺麗な宿があるとはね」
「そうね……」

その部屋は、つい最近につくられたと思えるほど整っていた。テレビも最新型の4Kモニターで、エアコンは変色の一つもしていないピカピカの新品だ。

「ねえ、なにかおかしいと思わない?」
「そうか?別にそんなことないだろ。おい、真波、お風呂にいく支度をしておいて」
「あ、はい、お父さん」

大介は立ち上がると、荷物の鍵を開けて、その口を開けた。真波は、それを見て自分の下着を取り出した。

「あ、真波、浴衣も持っていきなさい」
「うん」

と、そこで部屋のふすまが開き、主人がお茶を持って入ってきた。
「オマタセシマシター」
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とある日の急成長~夜更け編~

ここはとある一軒家の子供部屋。二人の小学生の兄妹が寝るところだった。

「じゃあ電気消すね」
「うん、あ……ちょっと待って」

兄の和登(かずと)は、妹の果耶(かや)に、ビニールに包まれた飴玉を渡した。

「これ、近所のおばさんから貰ったの」
「へー」

果耶は、渡された飴を包み紙から出した。その飴は、虹色をした球の形をしていた。

「あ、分かった!近所のいっつも白衣着てるあのおばさんだよね」
「え、なんでわかったの!?」
「あのおばさん、いつも綺麗な色の瓶を持ってるから、そうかなって!」
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覚醒の夢 4話 ~魚沼 結月 後編~

「じゃあ、続きはじめるね」

結月は、弟が持っているお盆から、食べかけのマフィンを持ち上げ、残りをほおばる。そして、もぐもぐと食べるとエプロンの胸の部分の膨らみが大きくなっていく。ゴクッと飲み込むと、体が一回り大きくなる。食べたおなかを擦ると、尻がプリッと震え、膨らんだ。

「もう一つ……、いや二つ……」

いつもの落ち着いた様子をかなぐり捨て、マフィンを口に流しこむ。その度、四肢が伸び、那月との身長差が開いていく。エプロンの横から膨らみが確認できるほどに乳房が成長し、尻の膨らみは張りを保ったまま成長する。ゴクリゴクリとマフィンを飲み込むごとに、ムクッムクッと結月は、中学生の体からスタイルの良い高校生へと大きくなっていく。

「ふぅ~、いつも通り、おいしいマフィン……」

自分のマフィンの味に、そして自分の成長に陶酔している結月。やはり魔王の魔力の影響か、性格まで歪んでいるようだ。

「あなたは、これどう思う?」

――私が成長した時に比べたら、こんな大きさなんて……
と菜津葉が考えてしまう乳房は、スイカよりも大きくなる菜津葉のものと比較するなら確かに小さいものである。だがそれは、平均的な女性のものを超えている。少し前まで小学生だった結月からすれば、大きな変化であった。そして、自然な反応は……

「おっ……きぃ……」
――えっ?

菜津葉の口を突いて出るフリューの言葉に、菜津葉自身が驚く。
「でしょ……?でもまだこれからなんだよ?」
「そ、そんな……」
――ま、当然そうだよね……

結月をあざむくための演技を続けるフリューに対して、本音しか『吐かない』菜津葉――さぞかし、演技の邪魔になっているだろう。
『あのですね、この子のスキを探すために幼稚園生になりきってるのに、菜津葉ちゃんが協力してくれないと気が散っちゃいます』フリューの脳内ボイスもどことなく苛立ちを含んでいる。
――あー、分かったよ……

「ねえねえ、姉ちゃん、そろそろ僕の方も始めてよ」

マフィンのお盆をテーブルに置き、結月に何かをねだる那月。
「そうだね~、私も結構大きくなったから、そろそろだね」

結月は、那月のズボンのチャックを下ろし、ブリーフをおろして小さな男の象徴を眺める。
「成長なしだと小さいね、けど」

胸を寄せ上げ、作った谷間でエプロン越しに那月を慰める。
「ん、んっ……」
「ちょっと小さすぎるかな……」

那月の膨らみ方を見て、不服そうな結月である。那月も申し訳なさそうにするが、結月がマフィンを手に取ったのを見て顔色が変わった。

「や、やめ……て、あれは……」
「だめだよ、そうしなきゃまたお菓子作れないじゃない」

そして、優しい笑顔のまま那月の小さい口をこじ開け、無理矢理突っ込んだ。

「ん、んんんっ……!!」

すると、那月の小さかったそれが、ドクンドクンと脈動し始め、赤黒く、不自然に膨らみ始めたではないか。那月はそれが膨らむ痛みに苦悶しながら、再開された胸のマッサージに、快楽と苦痛が混じった複雑な表情を浮かべる。あっという間に、成人男性でも大きいくらいに、それは成長した。
「おちんちん、い、いたいよぉっ……!でも、また、あれがきちゃうよぉっ!」
「いいんだよ、きちゃっても」

結月は弟の息子を胸でもみながら、さらにマフィンを食べる。ムニュッムニュッと揉まれるたびに大きくなっていくそれは、結月の口に出口を向けたまま怒張している肉の棒を包み込み、メロンサイズとなって快感を送り込み続ける。
「いたい、けど、きもちいいよぉ……!また、おもらししちゃうぅっ!」
「大丈夫、出たものは全部私が飲んであげるから」

『な、なんですかあのプレイ……私もしてみたいです……』
――見てられないよぉっ、目を閉じてよ!
過激になっていく姉弟の遊びを、ただただ凝視する姿は幼稚園生、頭は妖艶なフリューと、やっぱり頭も小学生な菜津葉。そして……

ドピュゥッ!

「ひゃっ!」
ついに那月から飛び出した精の子が、結月の顔に襲いかかった。白いヌルヌルまみれになった結月だが、恍惚の面持ちだ。

「もっと、ちょうだい……」
その液体をペロッと舐めると、今度は肉棒を口に入れ舐め回す。
「んんっ、もっと出ちゃうぅっ!」
口の中にさらに液体が排出されているのか、結月はゴクゴクと飲んでいる。

『だ、だだだ、ダメですよ、菜津葉ちゃんはまだこういうのは早いから!』
――だったら目を閉じてってさっきから言ってるでしょ!ああ、駄目だこの人。
やっぱり、女の体をしていても、女の声でも喋り方でも、中身はあのマッチョマンなのだ。目を閉じるどころか、食い入るように見つめてしまっている。菜津葉は必死に意識をそらした。

『あ、菜津葉ちゃん、あの子の胸、張ってきてます!』
――はぁっ!?

結月が喉に熱い液体を流し込む、その度に、胸に何かが詰まっている。柔らかそうだったおっぱいが、硬さを帯びて、さらに那月を強く刺激していた。
「んーふふ、ぷはぁっ……ちょっと作りすぎちゃったかな……」

ある程度たまったところで、結月は口を離した。行き場を失った白い噴水は、フローリングを汚してしまう。
「ね、姉ちゃん……っ、もっと、して……」
「ちょっとだけ待っててね、那月」

結月はキッチンへ向かった。その間に那月は腰が砕けたように地面にへたっと座り、菜津葉の方を恥ずかしそうに見つめた。
「おしっこ止まらないよぉ……」

結月は、雑巾とバケツ、そして大きめのジャム用のビンを2つ持ってきた。
「那月、あとで私が片付けてあげるから、気にしないでいいよ……それより、もう、出ちゃいそう……」
パンパンに張った乳房の先が、少し湿っている。結月はそれを覆うようにビンをかぶせ、そして――

ブシャァッ!!!

体の方に押し付けて、溜まった液体を絞り出した。一瞬で、瓶は母乳で一杯になり、結月は器用に蓋を締めてテーブルの上においた。
「おっぱい、出しきれなかったなぁ」
張りが残ったのか、その顔は不安そうであったが、ハッとしたあと、一瞬で笑顔に戻り、それは菜津葉に向けられた。

「そうだ、あなたには特別、直接飲ませてあげる」

菜津葉に寒気が走ったときにはもう小さな体は持ち上げられ、おっぱいに口をつけさせられていた。

「んぐううっ!!」

菜津葉、そしてフリューは必死に抵抗したが、うふっ、と結月が笑うと、大量の母乳が菜津葉の中に流れ込んできた。
『いけません、菜津葉さん!この母乳は魔力の塊になっています!』
――じゃあ、どうしたら!
フリューが他人事のように、菜津葉に怒鳴る。その間にも、母乳が菜津葉の体内に侵入をしかけてくる。

「これであなたも、母乳たっぷりのおいしいマフィンが作れるようになるよ」

――体が、熱くなってきたぁっ……
『菜津葉ちゃん』
――え?
『私を、信じてください……』

「んんっ!」
ついに菜津葉の体が、魔力の影響で大きくなり始めた。
「んあああっっ!!!」
そして、大量の魔力のせいか、体よりも先に手足がグンッ!と急速に長くなる。わずか2秒ほどで、長さは4倍、太さは3倍程度になった。

「ちょっと、すごい勢い……」
結月すら仰天するが、その間にも、胴の部分も一気に大きくなり、小学生用の児童服を勢い良く破る。これには、結月の方も重さに耐えられなくなり、菜津葉の体を放した。
「ど、どうしたの、一体……」

「おっぱい、もっとちょうだいぃっ!」
フリューは、ほとんど母乳を出し切った乳房から口を離し、もう一つの方もギュッギュッと絞るようにして、勢い良く吸い出す。
「ひゃんっ!」

「んんんっ!」
すると、菜津葉の成長しているが真っ平らだった胸板に、ブルンッとリンゴ大の乳房があらわれ、さらにメロンの大きさまでボヨンッ!と大きくなって、同時に張り詰めていく。
「おっぱい、出ちゃうっ!」
「すごいね、もう出ちゃうの……?」

菜津葉の中で無尽蔵に生産されていく母乳は、あっという間に容量の限界点を突破し――

ブッシャアアアッ!!!

部屋中に、勢い良くまかれ、何もかもを白く濡らした。だが、それが出切るとプシューッと空気が抜けるように乳房も縮んでしまった。

「お姉ちゃん、まだ、足りないよ……」
「うーん、仕方がないね」
結月は、マフィンをまた一つ口に入れる。すると、また乳房に張りが戻る。

「ほら、おっぱいあげるよ……あれ?」
だが、今度は体が小さくなっていた。体から何かが染み出していくように、乳房が体中から何かを吸い出すように、その分母乳が生産されていたのだ。
「おっぱい、ちょうだい!」

ここぞとばかりに、フリューは結月の乳房に吸い付き、もう一つはガシッと掴んで、たまったものを出させた。
「あっ、やめてっ!離して!」
体が大人から高校生、高校生から中学生へと小さくなっていく結月は、母乳を飲んでさらに成長する菜津葉からは逃げられない。

『ふふ、これが狙いだったんですよ。母乳で急激に成長したのは、半分は菜津葉ちゃんの魔力のおかげ。それで、入ってきた母乳と菜津葉ちゃんの魔力を混ぜ合わせ、またこちらも母乳として噴出、魔力の根源となっているであろうマフィンに噴射し、そちらでも魔力を混ぜ合わせる。もう、結月ちゃんがマフィンを食べても……』

「こ、こうなったらっ!むぐぐぅっ!」
結月は、信じられない速度でマフィンを食べだした。再び体が大人のものへと戻り、母乳の勢いが増す。
「んぎゅぅっ!」

『そんなっ、菜津葉ちゃん、マフィンが無くなるまで、耐えてっ!』
結月の魔力に対抗するため、さらに体を大きくするフリュー。全身がドクンッドクンッと脈動しながら、菜津葉はさながら結月のミルクを貯めるミルクタンクのように、手が、足が、胸が、大きくなる。そして、もう片方の乳房から出るミルクは、どんどん周りに撒き散らされる。
――ミルク、いっぱい、おかしくなっちゃう、よ……

身長が160cmから180cm、さらに2mの大台へと近づき、菜津葉は150cm前後を行き来している結月に合わせるため、膝立ちになる。スネに、母乳の洪水による冷たさが伝わってくる。

そして、必死に結月の体にしがみついてはいるが、ビーチボール級に膨らんだ乳房が二人の間に挟まり、それを邪魔してくる。もう限界かと思ったその時――

「あっ、なくなっちゃった……」

プシューと体が小さくなる結月。菜津葉の口に入ってくる液体の流量が急激に減る。そして、それが出終わった頃には、結月の体は元の小学生に戻っていて、菜津葉はいつの間にか結月を持ち上げていた。
「結月ちゃん、ごめんっ!」
「えっ!?……むぅっ」

待っていましたと言わんばかりに結月の乳首から口へと、自分の口を動かす……というより、結月の体を動かして口づけをする菜津葉。何かが出ていく感触がする。

「あああああぁぁぁぁああっ!!!!!」
浄化が始まると、結月は鼓膜が破れそうなほどの悲鳴を上げ、頭を抱えた。菜津葉は、未だ自分の中にある魔力の脈動を感じながら、その行く末を見守る。

少しすると、頭を抱えるのをやめ、結月は自分の手を見て、自身の姿を確認した。
「ゆ、づきちゃん……?」
「あ……うん……私、どうしたのかな……キスされたら……もやもやが晴れた……」
菜津葉や、三奈が見ていたピンクの霧のことだろう。洗脳が解けたのだ。

「よかった、結月ちゃん……」
「お姉さん、だれ……?」
「あっ……」
未だに自分のことがバレていないのは、フリューの演技のおかげだろう。しかし、二人は、ここにいるのが結月と菜津葉(とフリュー)だけでないことをすっかり忘れていた。

「うわっ……わああぁぁぁっ!!!!」
「な、那月!」
部屋を洪水状態にしていたミルクが、那月に迫って……その口から、自分自身を押し込むように入りだしたのだ。そして、同時に菜津葉の胸が膨れだし、ミルクが飛び出し、そのまま那月の体に飛び込むように入っていく。

ブクブクブクーッ!!!!

当然、それが貯められる場所――腹部が、暴力的に膨らむ。そしてその膨らみは、人体の限界に、急速に近づいていく。行き場を失った魔力が、もうひとりの結月を作ろうとしたのは良いものの、完全に暴走してしまっていた。

「結月ぃっ!!」

その流入現象は那月が破裂する前に終わった。だが――

ドクンッ!!!

那月の体がビクンッと跳ね、膨らみきった腹部が、脈動した。成長は、これからのようだった。那月は、ドクンッドクンッという腹部の脈動とともに、ポンプで膨らまされる風船人形のように――

ボインッ!ギュワンッ!

女性のように成長していく。段階的に、しかし爆発するように大きくなる体に、服は一気に千切れ去り、その下にできゆく体は、筋肉より皮下脂肪が、骨より巨大な乳が目立つ、見まごうこともない女のものだ。

「そんな、どうしてっ!」
「これじゃ、私も浄化できない……!」
幾分小さくなったものの、まだ身長が180cmくらいある菜津葉だが、那月の急激な成長はもうその大きさに届こうとしていた。そして、結月は自分を菜津葉と気づいていないだろうが、これしか言えなかった。
「結月しか、何もできない……ううん、結月ちゃんなら、何とかできる……できるよ、結月ちゃんっ!」
「えっ……?」

2m、2m40cmとさらに巨大化する那月を前に、結月はうろたえるだけだ。その手を、菜津葉はギュッと掴んだ。
「キス、するんだよ」
「キ……ス……?」

ガタンッ!!ガッシャーンッ!!!

家具や家電を壊しながら体積を増やしていく那月。もう一刻の猶予もなかった。
「早く!完全に那月くんが魔力に飲み込まれちゃう!」
「わ、わかったっ!那月!」

「ねえ……ちゃん……」
「那月……いま、助けてあげるから……」
結月と那月は、優しく唇を重ねた。すると、那月の体全体がぽぉっと、柔らかい光に包まれた。
「ありがと……姉ちゃん……」

光が消えると、そこにいたのは小学生の那月。全てが元通りになったのだった。

「よかった、那月……」

弟を抱きしめる結月を前に、菜津葉も自分の体を元に戻した。

「えっ、菜津葉ちゃん!?」
結月は思いがけない親友の出現に目を丸くして驚いた。
「えへへ、ごめんね、今まで言えなくて……」


――これが、結月が見た夢だった。
――夢の中で、私はお菓子を作っていたの。みんなと一緒に食べるためのクッキーをいつもどおり焼いてた。そしたら……

「あ、このマフィン、おいしそう」

――自分用にも一つだけ、お菓子を作りたくなっちゃって。でもその時、中世ファンタジーで出てくるようなフードをかぶった、知らない男の人が出てきてこういったの。

「お前の魔力を解放せよ!」

――何言ってるのこの人、と思ったら、その、おっぱいが、痒くなって、服を脱いでみたらプクーって膨れだして。慌ててるうちに、お母さんのより大きくなっちゃって。びっくりしたんだけど、揉んでみたら、ミルクが出てきたの。もしかして、これでマフィンを……?と思って作ってみたら美味しくって!でもどんどんミルクが出てくるからどんどんマフィンを作って、自分で食べてたの……美味しかった……


「で、起きたらマフィンが一つ、ベッド際に置いてあった、と」
「んー、そうじゃなくて、起きたらおっぱい大きいままで、絞ったらミルクが出てきたから……とっておいたの」
「なるほどね」
菜津葉は、結月の服をもらって、ビリビリに破けた自分のものの代わりに着なおしていた。結月と菜津葉はそこまで体のサイズが違わないので、ちょうどよかった。

「でもマフィンを作って食べてるところを那月に見られて、当然那月の前で大きくなっちゃったんだけど。そしたら急におなかの下のほうが熱くなってきて……」
「い、言わなくていいよ!」
「ありがとう、菜津葉ちゃん。私を、那月を助けてくれて」

「助けたのは私ですけどね!」
黙って話を聞いていたフリューが水を差した。フリューは、騒動が落ち着いたあとポッと姿を現し、自己紹介までは済ませていた。
「あ、そうでしたね、フリューさん」
「あとね、結月ちゃん、あなたの魔力、ちょっと使用方法を広げておきましたよ。体だけじゃなくて、精神状態も変えられるようにしたんです。『このお菓子を食べると、勉強したくなる』とか、『このお菓子を食べると、私に惚れる』とか」

「えっと……楽しそうですね」
「正しく、常識の範囲内で使ってくださいね」
いたずらっぽい笑みを浮かべるフリューと、呆れている菜津葉に、結月は優しく微笑む。
「じゃあ……『幸せになる』お菓子、作っておきますね」

ミルクショック(後編)

「実は俺の血筋には、封建制時代の奴隷の血が……」
「ちょっと、この子の前で奴隷とか言わないで」

美佐は泣き顔のまま、大きくなった体に合う椅子もなく、床に座り込んで父親の話を聞いている。「奴隷」という単語を聞いたのは初めてらしく、少しキョトンとしている。
「……召使いの血が混ざってて、それはたいそう頭のおかしな主人に仕えていたらしい」
「それで、その人を喜ばせようと……こういう体質にしたのね」
「まあ、飲み水に薬を混ぜられて、本人も望まない形でこうなったらしいがな」

その主人とは実のところ、大きな街の神父であったのだが、豊満な女性の体に魅入られていたのだが、体面を気にしていたらしい。普段は貧相な体つきの人物だけを仕えさせ、その当時は手に入れにくかった牛乳を引き金に、成長する体質にしたそうだ。それを利用して、夜だけの性奴隷を作り出していた。

もはや錬金術の域だが、実際に錬金術師が作った薬でその所業を行ったためだった。
「遠い昔、その子孫が日本にやってきて、根を下ろしたらしい。そのころには、主人の家が没落して、牛乳も飲める環境ではなくなって、体質も忘れ去られ、一個の書物としてだけしか記録に残っていなかった」
「ちょっとまって、それならあなたはどうなのよ?」
「俺の場合も、牛乳を飲むと……」

そのまま牛乳に手を伸ばしかけた父親の手を、母親が止める。
「い、いいわ……分かったから……今日は仕事もあるんだし。確かにあなた、牛乳飲まないものね……」
「うむ。ただし、一人の『体質持ち』に子供が複数人生まれた場合、ほとんどは一人だけに体質が遺伝するらしい」
「じゃあ、和佐(かずさ)は大丈夫ってこと?」

和佐は美佐の弟だ。歳は近く、もう少しで幼稚園に入園する時期だ。
「そう……あっ、もうこんな時間だっ!美佐は数時間経てば治るだろうから、今日は幼稚園は休ませて!くれぐれも病院とかには連れて行くなよ!じゃあ行ってくる!」
「あ、あなた、お弁当……!!行っちゃったわ」
母親は、たぷんたぷんと揺れる豊かに育った自分の乳房を、憮然として見つめている美佐を見て、どうしていいものか途方に暮れた。

その間にも、和佐が大きな音に目を覚ましたのか、リビングに姿を現した。

「んー……」
寝ぼけ眼のまま机に向かう少年は、見る影もなくなっている姉の前も素通りして、乾き始めてもいない白い水たまり――美佐の母乳が溜まったもの――に足を踏み入れた。
「ああっ!!」
「カズちゃんっ!」
そして、漫画のごとくズルっと足を滑らせ、顔をビチャッと水たまりに突っ込ませた。
「うぷっ……これ、なに……?」

和佐の顔いっぱいに、美佐の母乳が付いて、まるで白い仮面をかぶっているようになった。

「大丈夫?カズちゃ……」
「おなか、熱いよっ……」
和佐は、急に体を抱えて苦しみだす。その小さな体がブルブルと震えだし、そして……

ビリビリッ……

服が破れる音がし始める。和佐の体が、急激に大きくなっているのだ。しかも、男であるはずの和佐の胸がビクビクと震えながら確実に膨らんでいた。小学生の体になる頃には、リンゴ大に膨らんだ乳房が服をパンパンに張り詰めさせ、乳頭もかなり大きくなっていた。

「カズ……ちゃん……?」
「う、なんか、出てきちゃうぅっ」

じわりじわりと成長を続ける乳房は、膨張する速度を上げ、プクーッと存在感が増していく。

「だ、だめぇっ!!」

和佐は、自分の胸から飛び出そうとする何か――美佐と同じく、母乳であった――を、抑えようとするように思いっきり手を胸に押し付けた。しかし、それは、乳腺の中で、勢いを溜め込んでいた噴出を抑制するどころか、その引き金となってしまうのだった。

ブシャアアッ!!

「んあああっ!!!」

和佐はその刺激のあまりのけぞってしまう。美佐のときよりは勢いが弱かったが、白い液体が服越しに撒き散らされ、さらに悪い事に……

「んっ」

ぼーっと見ていた美佐に、容赦なく液体が降り掛かったのだ。

「また、大きくなっちゃうよぅぅっ……!!」

すでに180cm近い身長になっていた美佐は、言葉の通りに、母乳の力で体を押し広げられ始めた。

「とまっ……て……」

胸をきつく抱きしめ、自らの成長を止めようとする美佐……だが、その表情が困惑から変化し始める。

「う、う……」
「美佐……?」

突如、顔が赤くなり、まるで上気したかのような、快感につつまれた淫らな表情を浮かべる美佐。これまでの無垢な美佐がどこかに消えてしまったようだった。

「あ、あはは……アハハハハッ」
「おねえ……ちゃん……?」

特異体質のもう一つの特徴、発情とも言える性欲の爆発が起こり始めていたのだ。いくら体が大きくても、行為をしなくては意味がない、そう考えた過去の主人が仕込んだ媚薬の効果が現れ始めていた。

「おっぱい大きくなるの、気持ちいいよぉ……」

特大スイカサイズに達し、なお大きくなる胸をもみしだき、恍惚の表情を浮かべる美佐。その視線の先に、母乳を出し終わったものの、豹変した姉に腰を抜かしている弟の姿が映った。

「あは……かずちゃん、私のおっぱい、飲んで?」

またも母乳がたまり始め、張りが強くなりつつある巨大な乳房を垂らし、四つん這いになって和佐に近づく美佐。その姿は、獲物を追い詰めるネコのようでもあった。

「や……やだ……っ」
「つーかまーえたっ♥」

そして、和佐の肩をガシッとつかみ、強く張った双球の一つを、口に押し付けた。

「たーんと、めしあがれ!」

口で押さえられていなかった方の先端から、白い液体が噴き出し、床にポロポロとこぼれおちる。同時に、和佐の中にも同じ液体が流れ込む。

「んんっ!んんんん~っ!」

和佐は、姉の拘束から逃れようと必死になるが、大きな体格差には勝てない。その間にもさらなる変化が始まる。濃厚な母乳に反応して、強烈なまでの成長ホルモン、そして女性ホルモンが和佐の体中を駆け巡り始めた。

すでに大きくなっていた乳頭がビクンッビクンッと動き、その体に不釣り合いなほどに乳房が成長していく。母乳が体に染み込んでいき、体中がドクンッ、ドクンッと長くなり、太くなっていく。そして巨大な姉に負けずとも劣らない、莫大な体積を、和佐の体が占めていく。リンゴ大だった乳房は、中に生成された母乳を蓄えながら、ムリムリと膨張し、いつしか美佐のものに追いつき、追い越して、地面につきそうなくらいの途方もない大きさとなる。髪もさらさらと伸び、腰まで伸びるロングヘアになった。

「かずちゃんもすごい……」

その先からぴゅるぴゅると白い液体を出し始めたそれを眺めて恍惚の表情を浮かべる美佐。そして、乳房を和佐の口から離した。

「うふふ、おいしそう❤」
「おねえちゃん、かず、どうなって……うあっ、ああっ!」
美佐と同じく、和佐の意識もピンク色に上塗りされていく。

「おっぱい……おねえちゃんよりおっきくなっちゃった」

ちょうどそこに、弁当を忘れたことに気づいた父親が玄関の扉を開ける音が聞こえてきた。
「おーい、弁当取ってきてくれないか!」父親が呼ぶ声がするが、二人とも何かに操られるかのように息を潜めた。「誰も居ないのか?」父親の足音が近づいてくる。

「かずちゃん、おっぱいまだ出る?」足音を聞いて立ち上がった美佐は、和佐の腕を引っ張って立ち上がらせた。
「たっくさんでるよ?」姿勢を整えた和佐は、両腕で胸を揉みしだいた。先端から出る母乳の一部は、美佐にもかかり、またも美佐の乳房はそれに反応して母乳を蓄えていった。

「じゃあ、お父さんに飲ませよう」いよいよ部屋に入る扉の裏に足音が近づいてきたのを聞いて、パンパンに張ってきたおっぱいを両腕で抱えた美佐。和佐も、ニヤニヤしながら頷いた。

「おい、誰か……」
扉を開けた父親に迫ってきたのは4つのおっぱいだった。
「「せーのっ!」」
そのうちの二つが、巨大な質量で父親を押し倒した。

「な、なんだっ、ぶふぅっ!」
倒れた父親の顔の上に乳房が押し付けられ、容赦なく吹き付けられる二人の母乳。息をしようものなら、沢山の量が口の中に入ってくる。

「たーんと召し上がれ、お父さん❤」
「おいしいよ?」

その二人の下で、父親の体にも変化が始まった。メタボ気味の盛り上がった腹がグイグイと中に引き込まれ、逆にズボンの中ではムチムチと肉が付いていく。つかの間にズボンはパンパンになり、更に大きく膨れていく尻の部分はビリッと破れた。

「ん、ぶ、んぅっ!」
父親は必死に抵抗するが、それも二人の下で胸が膨らみ始め、髪が黒から赤に変わると流れが変わっていく。父親はできるだけ閉じていた口を大きく開けて、苦しい顔は快楽に溺れる顔に変わっていく。顔は魅惑的な女性のものになり、白く透き通ったものになっていた手は二人の子供の乳房を撫で回す。

「おとうさん、もっと欲しいの?でも、もう終わりだよ」
吹き出し続けていた母乳は、美佐が言うとおり勢いを弱め、数秒後にはほぼ止まった。

「あら?そうなのぉ?」元の性格の欠片もない、色欲にまみれた女性の声で答えた父親は、唇を舌で舐め、最後の数滴を味わった。「でも、おいしかったわよ」

二人の『子供』が立ち上がると、胸の大きさでは負けるものの、仕草は格段に艶めかしい『父親』もそれに続いた。180cmの身長もさることながら、ゆるいカールがかかった赤く長い髪は日本人離れしていて、体にまとわりつきながらボロボロになっていた地味なスーツが完全に浮いていた。

「この姿になったのも久しぶりね……」Gカップ並の胸の柔らかさを確かめるように持ち上げる父親。「でも、変身した後の若さは、いつまでも変わらないわ……あなたたちも若いけど、そんなにおっぱい大きいと、変よ」
美佐の、頭二つくらい入りそうな乳房をつつく。「これじゃ、お牛さんだわ」

「慣れたら、もっとちゃんとできるの?」つつかれた胸を守りながら、美佐は尋ねた。
「ふふ、あと2回変身したら大丈夫よ。……そっちの……和佐は、美佐のおっぱいを飲んじゃったのね?」父親は、仕草が美佐よりも子供に近いもう一人に、赤い瞳を向ける。
「そうだよ、ボク、おっきくなるの気持ちよかった……」

「普通の牛乳なら大丈夫だけど、血が繋がったあなたに美佐の母乳が入り込むと、体質まで感染っちゃうのよね……そっか、こうなったらぁ……」

いつの間にか、大きな女性三人に唖然として立ち尽くしていた母親に、父親はギロッと視線を向ける。

「みんなで、楽しみましょ……?」
「や、やだ、そんな体になんてっ!」
母親は逃げようとするが、その肩をガシッと掴んだのは美佐だった。

「大丈夫だよ、おかあさん。変身したら、絶対に楽しいから……」
「み、美佐……!!放して、そんなの、いいから!!」
その後ろから、牛乳パックから直接牛乳を飲んで母乳を溜め込んでいく和佐が近づいてきた。
「ボクのおっぱい、いっぱい飲んでね」

そのパンパンに張った乳房の先端を口に当てられた母親は、全てを諦めた。

かくして、一家四人は全員、牛乳を飲むと悪魔のような女性に変身するようになってしまったのだった。

性的興奮の子

俺の高校の、隣の席にはメタモルフォーゼ症候群の生徒が座っている。楠 洋子(くすのき ようこ)が、そいつの名前。なんでも、性的興奮で体が大きくなるようになってしまったらしい。

初めて症状が発現したのは、この教室だった。そのときは、少し体が大きくなったあとは、敏感な部分が服に圧迫されたせいで、連鎖的に快感を感じてしまい、服が破れるまで止まることなく成長してしまった。机の上に躍り出た巨大なおっぱいに、俺の息子は……、いや、そんなことはどうでもいい。

ともかく、そのあと一週間、楠は学校に来なかった。聞くところによると、担任がストップを出したらしく、楠自身は登校の意思を強く示していたらしい。それもあってか、その後登校してきた楠はケロッとして、何事もなかったかのように授業を受けていた。

ただ、その症状と原因がわかってからは……つまり、興奮を覚えれば体が大きくなることが分かったクラスメートたちは、悪ふざけをし始めた。恋話に、その後の行為のことを混ぜるとか、もう直接、(もともとは平らに近い)胸をまさぐりに行くとか。幼稚な落書きを見せて興奮させようとするやつも居たが、それは効かなかった。むしろ、そいつのクラスでの立場が危うくなっただけだ。

楠の方はと言うと、最初は症状の暴走を抑えきれずに制服を何着もビリビリ破いていたが――もちろんこれは後で弁償する決まりになった――今はそれも慣れたのか、服の中が胸肉でパンパンになった状態でもそのあと元に戻れるようになった。

だが……

「んっ……」

隣の席で、楠の胸が膨らむのが見える。胸の部分のシルエットが変わるし、本人は気づかないふりをしてペンを握り続けるんだから、横からだとあからさまにわかるのだ。

橘は、変なことを吹き込まれまくった結果、どんなときでも少し興奮してしまう状態になってしまったのだ。でもさっき言ったとおり、それをやり過ごすのもうまくなったので、楠の胸は巨乳になったり貧乳になったり、身長は高くなったり低くなったりを繰り返す。

俺もそろそろ慣れて、それと知られずに楠の体の変化を観察することが可能になった。

「くぅっ……」

お、いつもよりも大きく成長しているな……制服がミチッミチッと音を立てて、爆乳レベルに大きくなったおっぱいを何とか押し込めている。机の下に伸びる足も、心なしかいつもよりもムチムチと太い気がする。

少しだけ楠の机を覗くと、SNSアプリが表示されているようだ。それに、メッセージが送られてきている。誰かが、官能小説の一端か何かを楠に送信しているのだろうか。それを見る楠の顔が少し紅潮していて、いつの間にか顔全体を楠に向けていた俺に気づく様子がない。

ミチッ、ブツッ……という制服の縫い目がほつれる音がし始めたところで、楠はやっとアプリを閉じたが、その時点でおっぱいは制服を引きちぎろうとしていた。その下に着ているブラウスの襟から、肌色がこぼれだそうとしている。

だが、SNSを閉じたことで落ち着いたのか、その膨らみはだんだんと小さくなる……と思いきや、一気にバインッと大きくなり、ブラウスがビリッと破れ、襟から胸肉が吹き出した。

「そんな……だめ、でもっ、続きが気になるのぉ……!」

楠は本当に変わったんだなあ。たった2ヶ月前はそういう話をされただけで顔を真っ赤にして耳をふさいでいたのに、今は続きを自分で考えてしまうなんて。誰かに洗脳でもされたんだろうかと思うほどの変貌っぷりだ。

そんなことを考えている間にも、ブラウスはさらに破かれ、おっぱいが溢れ出してくる。身長は俺よりも高くなり、スカートも引きちぎりそうなくらいに、尻が膨張していく。多分、元ネタよりエロいこと考えてるぞ、こいつ。

「た、田中……くんっ♥」

田中、とは、俺の、ことだ。楠は、膨らむのをやめない胸を、授業そっちのけではだけて、俺に見せつけるようにつき出した。

「ごめん、止まらないの、なんとか、してぇっ」
「は、はぁ」

言いたいことがわからない。もっと興奮したらどんどん体が大きくなるのに。でも、いいか……と思わせる何か――多分、フェロモン――が、楠の体から出ていたとしか思えない。

とりあえずチャックを開け、俺のものを取り出した。楠が大きくなるのをまじまじと観察していたお陰ですでに準備済みだ。

「男の人って、こういうこと、してほしいんだよね?」

もはや顔の大きさくらいになった胸が、俺の息子を蹂躙する。とてもやわらかいから、柔躙……なのかもしれないが。

「おっ……うまいな、楠……」

うまいな、じゃないだろ俺。授業中だぞ。周りも止めに入れよ。と思ったが、教室の他の連中は全員俺たちを無視している。それこそ、洗脳レベルの無視。

「私ね、すごく勉強したんだよ……最初は、これを抑えるために慣れようとしたんだけどっ!」

今度は、胸の谷間をペニスを貫通させ、口でこいてくる。乳房が大きすぎて、あまりうまくくわえられてないが、さっきから、熱いものが飛び出してきそうな感覚だったのに、そんなことされたら……

「んんんっ!!」

口の中に出してしまった。その瞬間、楠のカラダが更に一回り大きくなる。

「ごくん……えへ、田中くんのでもっと大きくなっちゃった……」
「いいぞ、もっと大きくなるんだ楠――」

<>

「田中……くん?」
「ハッ……」

頭の中に残るモヤのようなもの。どうやら俺は、居眠りしていたようだ。しかも、夢精してる。

「俺としたことが……」
「あのね、田中くん……」

隣から、ブチブチと服が破れる音が聞こえる。

「寝言、聞いてたら興奮しちゃった……責任、とってくれる?」

楠はすでに、とんでもなく大きくなっていた。

「せ、せき……保健室まで連れていきますね!!!」

俺より重い楠を、何とか保健室に連れて行く頃には、第二ラウンドの準備ができていた。俺が耐えられたかどうかは、想像におまかせする。

淫らの写し身

この作品は『あむぁいおかし製作所』様で投稿させていただいたものになります。イラストは『製作所』様管理者であるあむぁい様を通じ、まこも葦乃様(https://twitter.com/0w0_CaO)に制作していただきました。
投稿先URL:
http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-20424.html
http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-20425.html
http://okashi.blog6.fc2.com/blog-entry-20426.html

町外れの森の中、県道にほど近い小道に、一軒の古い木造の家があった。表札もなく、駐車場には草が生い茂り何年も使われていないことがうかがえた。明らかに誰も出入りしていない家の周りには、蜘蛛の巣が至るところに張られている。

その家の前に二人の小学生の男の子が立っている。大きい方は健二(けんじ)。パーカーを着て、背丈は学年でも高い方で、中学生に見られてもおかしくないほどだった。もう一人は、望(のぞむ)。男子にしては髪は長めで、柔らかい顔立ちは中性的だが、身長は普通の男子と変わらない。町から二時間くらい歩き、やっと到着した喜びに、声変わり前の子供の声で、望ははしゃいで、健二に満面の笑みを見せた。

「やっとついた!ここが、芳雄(よしお)が教えてくれた空き家だね!さあ行こう、健!」
「あ、ああ……本当にあったんだな。なあ、望、なんかすごく寒気がするんだけど」

早めの声変わりが終わった健二が、低い声で答える。
望は好奇心旺盛だった。それで、小学校の友達である芳雄に肝試しとは名ばかりの、きつい遠出をさせるための口車に乗せられてしまったのだった。そして、健二はというと、単に望についてきたのだ。というのも、少し興味があったのと、小さい望が田舎道を一人で歩いて行くのに不安を感じたからだ。

「何行ってるのさ、最初に行こうっていったのは健二じゃん!先に行っちゃうぞ」
「それはそうなんだが……」

威勢よく廃屋の中に入っていこうとする望。だが、それとは対照的に、あまりにも古く、人気のない民家に怖気づいたのか、大柄であるはずの健二は尻込みしてしまっている。

「ほらほら!」

望は玄関の扉を引っ張った。鍵はかかっておらず、周りの古さからは信じられないほど扉は軽快に開いた。

「よし!……あれ?なんだろうこのシール……」

望が開いた扉の枠には、ビッシリとシール……ではなく、神社にあるような紙の御札が貼ってあった。難しい漢字の塊でうめつくされた御札の意味は、望に分かるはずもなかった。

「なあ、まずいんじゃないか?オレ、もうこれくらいでいいからさ……っておい!」

小声で望にささやいた健二。しかし、望は御札に気を取られていたのか、そのまま中に入っていってしまった。健二も仕方なく、親友の身を案じて中に入っていくことにした。

「望……?うわ……な、なんだこれ」

御札が張られていたのは扉の枠だけではなかった。玄関の壁という壁、床にも天井にも、御札が所狭しと貼られている。あまりの異様さに、吐き気まで覚える健二を差し置いて、望はケータイの照明を使って、興味津々と言った様子でどんどん奥へと進んでいってしまう。健二はもう自暴自棄になって、望にくっついていくことにした。

「ここには何があるのかな?」
「おい、おい!」

望は、どんな引き戸も、障子も、躊躇なく開けていく。だが、雰囲気とは裏腹に、居間、書庫、台所、便所。窓さえも埋め尽くす御札以外は、いたって普通の民家だった。だが、最後の一部屋だけは違った。

「うわー、なんだろうこの縄……」
「これ、本当にヤバイやつだろ」

部屋の入り口のふすまが御札の付いたロープのような何かで固く閉ざされているのだ。健二は、これに触ったら嫌なことしか起こらない、たたりでも下るんじゃないか、という予感がした。

「もう帰ろうって!御札が貼ってある以外なんにも面白く無いぞ!」
「……でも、この中に何があるか見てみたいな」
「はぁ!?」

望は、扉を開けるのに邪魔になっている綱をぐいっと引っ張った。すると、とても子供の手では千切れなさそうな綱が、いとも簡単にビリっと切れてしまった。

「あ、これで入れる!」
「ちょ、ちょっとまて……」

健二が制止する暇もなく、望は扉をバッと開けてしまった。健二は、中から怪物が飛び出してきたかのように、ワーッと叫んで地面に倒れたが、ふすまの奥にあったのは、何の事はない、少し広めの部屋だった。

「健二、大丈夫?」
「あ、ああ……」
「さっきから変だよ?」
「そ、そうだな……ただのボロ家で、なにビビってんだろうな」

望と健二は、大部屋へとそろりそろりと入っていく。中には、これまであったような御札はなかったが、窓に貼られた障子からは日光が一切差し込んでこない。

「ん?あれはなんだ?」

部屋の真ん中に、幕がかかった、大きな鏡台のような物があった。鏡自体は巨大な布で覆い隠されていた。

「なんだろ……あの布外してみようか」
「ああ……」

二人の体よりも大きい幕を、二人でひっぱり外し、中にある鏡面が見えた、その時だった。

《ガタンッ!!カタッ!》

二人が入ってきた扉が、勢い良く閉められ、おまけに鍵がかかる音がしたのだ。

「や、やっぱりヤバイって!!早く逃げようぜ!」
「あ、うんっ」

扉に向かって走りだし、体当たりで開けようとする健二。だが、木でできた脆そうな扉は、健二の突撃で壊れるどころか、少年の体を跳ね返した。健二は思わず床に倒れてしまった。

「ってて……ど、どういうことだ……」
「健二……なんか、この鏡変だよ……」
「そんなのもう分かりきってるだろ!」
「いや、でも……」

望は鏡に近づいていく。普通の鏡だったら望が映るはずだった。しかし、映ったのは望の小さい体ではなく、ボンデージを身にまとった、背が高く、スタイル抜群の女性だった。長い黒髪に金色の目は、どこか現実離れした魅力を放っていた。

「ボク、じゃない……」
「な、ななな……」

目の前で起きるわけのわからない事態に頭が混乱し、体が動かなくなってしまう健二と、鏡を見つめるほかない望。

『ふふ……やっとこの部屋まで侵入できる能力がある器が……って子供じゃないの』

突然、鏡の中の像がしゃべりだした。望は、一瞬ビクッと体を震わせたが、すぐに気を取り直したのか、鏡の中の女性に話しかけた。

「あなたは、誰ですか?ボク、よく分からなくて……」
『アタシ?そうねぇ、魔女、って言ったらいいかしら』

魔女は、望を品定めするようにジロジロと見つめた。

『すごい神通力ね……』
「お姉さん、なんで鏡の中に……」
『ふん、アタシが望んで入ってるわけないじゃない。もっといろんな男の精を吸い取りたいのに。あのクソ霊媒師が……』

ブツブツと独り言を始めた魔女。望はおそるおそる声をかけた。

「あの……」
『あら、悪かったわね。子供にこんな口調で話すもんじゃないわね。アタシは、今の言葉で言うと、江戸時代の生まれよ。ひょんなことから魔女になって、男達のチカラを吸収して強くなったの。でも、まぁいろいろあって……要するに、アタシはちょっとやりすぎちゃったのよ。誰それ構わず襲って、絞りかすにしてやって……』
「……?」
『分かってないようね。いいけど。どうせ、アタシの器になる存在なんだから、すぐに自分の体で分かるでしょ』

魔女が指をぱちんと鳴らすと、鏡の中に望の像が現れた。

『これでよしと。じゃあいくわよ』
「な、何をするんですか……?器って……?」
『こう、するのよ』

そう言った魔女は、鏡の中の望の像にギュイイッと吸い込まれ、いや、望の背中から入り込むように自分を押し込み始めた。

「んっ、うううっ」

と同時に、望は背中から何かが押し込まれる感覚に襲われた。それは、望の体にグイグイと潜り込んでくる。手足がその衝撃で震えているかのように、ピクピクと痙攣する。さらに、中にはいった何かは、望の体を中から押し広げていく。

「んんっ……」

その感覚に呼応するように、望の手のひらが、痙攣しながらメキッメキッと大きくなる。腕全体も引き伸ばされるように長くなって、シャツの中からクイックイッと飛び出していく。足も長くなり、望の目線が上がっていく。ただ、伸びた手足には筋肉の代わりに薄く皮下脂肪が付き、まるで女性のような、柔らかい印象のものになっている。

「あ、頭が……」

望が痒みを感じて頭を押さえると、少し耳に掛かる程度だった髪がサラサラと伸び、背中にかかるほどまで伸長した。

「ボク、どうなってるの……?」

鏡に映る望の容姿は、ほっそりとした女性のそれとほとんど変わらなくなっていた。顔も、幼い子供の顔から、清楚な思春期の少女のものになっている。

「(きれいな体じゃないの……)」
「えっ」

望に、先ほどの女性の声が頭の中から聞こえたような気がした。と同時に、望の体が望の意思とは関係なく動き始めた。

「うふ、でもこれじゃ足りないわ……えっ、や、やだ、やめて……」

魔女の言葉が、望の口から直接飛び出てきた。望は恐怖に震えるが、体の自由は全くきかない。

「もうちょっと、魅力的にしなくちゃね……ん、んんっ……!」

胸の突起に指を当てると、それはプクッと膨れた。望は、自分を今の姿まで成長させた何かが胸に集まってくるのを感じた。

「ん、いい、いいわぁ……っ!」

望の胸の中の器官が、魔女の力に影響され、成長し始めると、平らだった胸板に膨らみが見え始め、シャツを盛り上げながら、トクン、トクンと育っていく。そしてたった数秒で、自分が見慣れた母親の小ぶりのものよりも、自分のもののほうが大きくなってしまった。それは、呼吸とともにフルフルと揺れるようになり、望の中で幼い性欲が掻き立てられていく。着ていたプリントシャツの文字が、丸みを帯びながら横に大きく広がり、その大きさを物語っていた。

「おっぱいだけじゃなくて、おしりも、太ももも大きく……っ!」

スレンダーだった足や腰回りが、ムチッ、ムチッと音を立てながら膨らみ、元の倍、いや3倍ほどまでに大きくなる。おかげで、履いていたトランクスやズボンがビリビリと破れてしまった。

「ぼ、ボク、女の人になっちゃうっ!!」
「(まだ男よね。だけど、あそこに付いてるものがなくなれば、それも分からなくなるわね!)」
「え、えっ……!?」

望は、自分の得物を見ようとするが、Gカップはあろうかという乳房に視界を遮られた。仕方なく鏡を使って、左右から引っ張られ千切れる寸前のズボンのジッパーを慌てておろし、破れたトランクスから突き立っていた男性器を確認した。

「よかった……」

消えているかと思われた男の象徴がそこにあると分かって、安心する望だったが、

「(ふふっ)」
「ぐぅっ!!?」

魔女の一声とともに、メキョメキョという音を立てて、それは潰れるように小さくなり、股間の中に押し込まれていってしまった。残ったのはスッと入った筋だけで、そこにペニスがあった跡など何もなかった。

「う、うぅ……!」
「(最後の仕上げねっ)」

望の中に、子宮が形作られていく。尻にもう一つの穴が空けられると、すぐに新しくできたヒダで隠された。最後に、潤んでいた望の瞳の色が、黒から燃えるような赤に変わり、顔の作りも、可憐な少女から、目はキッと長くなり、唇は厚くなって、魅惑的な美女のものに変わった。

「(ふふ……これであなたはアタシのもの……あら?)」
「あれ?ボクの体、動かせる?」

いつの間にか、奪われた体の主導権が、望に戻っていた。望は、自分の手のひらを開いたり閉じたりして、その事を確かめる。

「はぁ……」
「(ちっ……力を使いすぎてコントロール出来なくなったわね……)」

魔女の声は不満げだ。安心したのか、胸に手をおいてため息をつく望。だが、女性化したことには変わりなく、背が高くなったせいもあるが、これまでとかなり違う視界に、戸惑いを覚えたままだった。

「これから、どうすれば……」

望は、胸から手を下ろして、考えをまとめようとした。だが、その拍子に胸の先端を手で強く叩いてしまった。

「ひゃんっ!」

なんとも言えない快感が、望の幼い精神を襲った。

「な、なんなの……?」

望は、その快感の源を探ろうと、シャツに浮き上がっている突起を、指でくいっとつまんだ。

「ひゃぅうっ!!」

再び襲う快感。望は、その場にへなへなと座り込んでしまった。

「き、きもちいいよぉ……」
「(こんなことしてる場合じゃないんだけど……この子、なかなか……)」
「あんっ!んっ!」

さらに何回もつまんだり、突起を手のひらで撫でてみたりと、新しい感覚に溺れていく。そして、この快感を別のところでも感じられないかと、熱くなっていた下腹部に手を伸ばした。

「ん、ねちょねちょしてる……」

 

望が股間に手を当てると、男の時にはなかったヒダの中から、ねっとりとした液体が出ているのに気づいた。これが愛液であることなど、幼い望には分からない。だが好奇心と快感への欲望から、ヒダの中に手を突っ込み、そして、クリトリスに乱暴に手を当ててしまった。

「んっっ………!!!」

ついさっきまでの感覚とは比べ物にならないほどの強さで、全身に衝撃が伝わった。

「女の人のカラダって……すごいぃ……」

普通なら恐怖を覚えて立ち止まるところを、望はさらにクリクリとそれをつまんだ。

「んひゃっ……!あんっ……!!」

腰を抜かしたままの親友がすぐそこにいることも忘れ、女として初めての絶頂に達しようとする望。

「んん、き、きちゃうぅぅ!!!!」

子宮で生み出された愛液が、ブシャァッ!と股間から吹き出すと、ついに限界が来たのか、望は床の上に倒れてしまった。

「ん……あは……」
「(すごい子ね……さ、そろそろ……)」

魔女は、意識が遠のいた望の体を乗っ取った。恍惚としたものになっていた望の表情が、悪意に満ちた笑みに支配された。

「あなたを、食べる時が来たようね……?」

健二の方に向き直った魔女が、彼の体を舐め回すように見つめた。

「ひ、ひぃっ!殺さないでっ!」
「あはっ、カワイイ子……」

変わり果てた望の体で、魔女が健二に四つん這いになって近づいていく。

「や、やめてっ……」
「そんなこと言ったって……」

健二のズボンのジッパーを、ズルズルとおろし、中身を探る魔女。

「こんなにいきり立ってるじゃないの……?」
「う、うぅ……」

肉感的な女性の魅力に勝てなかったのか、引きずり出された健二のイチモツは、赤黒く膨らみ、固くなっていた。

「どんなことしてあげようかしら……?」

美女に迫られ、健二の中で恐怖よりも、興奮が上回っていく。

「やっぱり、最初はこれよね……?」

魔女は、健二の男性器を、まるでソフトクリームでも食べるかのようになめまわし始めた。

「ん、んうっ!」
「素直でいい子ね……」

少しでも強く魔女に蹴りをかませば、健二は逃げられるはずだった。だが、もっと気持ちよくなりたい、されたいという欲望が、彼にそれを許さなかった。

「くちゅっ……ん、はぁっ……」
「おふっ」

魔女は、さらに行為をエスカレートさせ、口ですっぽりとソレを覆い、ベロベロと舐めた。二次性徴を迎えたとはいえ、性行為などまだ数年先の話の健二を襲ったのは、思いもよらない感覚だった。

「気持ち……いい……」
「んふっ、気に入ってくれたかしら……?」

健二は、その感覚に溺れそうになったが、その時、ついさっきの望の痴態を思い出した。絶頂し、床に横たわる親友の姿を。

「だ、だめだ……」
「あらあら」
「の、望!助けてくれ!」

自分ではどうしようもない。そう思った健二は、魔女の中にいるはずの望に、必死で助けを求めたのだった。すると、魔女は苦痛に顔をゆがめた。

「んぁっ!!あ、だめぇっ、アタシ……ぼ、ボクは、何を……?」
「望!」

望は姿勢を変えずに、周りをキョロキョロと見回した。

「健二、くん?」
「よ、よかった……」

だが、健二が安心したのもつかの間、望はタプンタプンと揺れる胸を垂らしたまま、健二に少し近づいた。そして、シャツ越しに、豊満な果実が、勃起したままの健二のペニスを包み込んだ。

「うおっ!の、望、離れてくれっ……!」
「え、なんで?」

望はもっと健二に近づく。健二の男性器を胸とシャツで擦り上げながら。

「んおおおっ!!や、やめろぉ!」
「そんなことより、これ、気持ちいいんだよ?」

望はなにを思ったか、シャツをまくり上げ、露出した下乳でペニスを挟み込んだ。

「お、お前、何するつもりだっ!」
「え、何って、次の、サービスだよ。ボクが気持よくしてあげる」

そこで、健二は気づいた。健二が喋りかけていたのは、単に口調を変えて演技しただけの魔女だったのだと。

「ま、魔女めっ……!」
「あ、気づいた?じゃあ、聞きたいんだけど、ボクの話し方と……アタシの攻め方、どっちがいいかしら?」

答えを待たずに、乳ごしに健二をマッサージし始める魔女。

「んひぃっ!そろそろ、で、出てくるっ……!」
「早いわねぇ……、でも、まだ答えを聞いてないよ?」
「ふおおっっ!!!」

ついに耐え切れず、ぶしゃぁっと胸の中に出してしまう健二。それは勢い余って胸の間から飛び出し、望のシャツにかかった。魔女は少し驚いたようだったが、すぐにニヤリと笑った。

「元気いいね……でももうちょっと欲しいわね……」

口調をコロコロと変える魔女。まるで望と魔女、二つの人格が同時に健二を攻め立てているようだった。

「も、もうやめてくれ……」
「いやよ」

魔女は体を起こすと、縫い目がほつれ、ボロボロになっていたシャツを破り捨てた。

「えいっ」
「うわぁっ!」

そして、健二を押し倒すと、パーカーのジッパーを降ろし、中に来ていたシャツを破って、筋肉が発達した胸板の上に直接のしかかった。巨大な胸は、健二の上でムニッと形を歪めた。

「おほっ……」
「どう?ボクのおっぱい、大きいでしょ?……これでイカせてあげる」
「の、望の口真似は、やめろっ!」
「そんなに強く言わなくたって、やめてあげるわよ」

魔女は、ムチムチとした太ももを、健二の足に絡めるようにしてこすり付けたり押し付けたりした。一回射精したものの興奮が収まらない健二は、もともと自分より小さかったとは思えない親友の体に包まれ、もうどうすることもできなかった。

「ん、んうううっ!!!」

さっきよりも強い勢いで、ブッシャァアアッっと飛び出る白濁液とともに、健二の意識も飛んでしまった。

「ふふっ、子供の割にはがんばったじゃない……」

自分の足や、床に撒き散らされた精液を見て、魔女は感心したような声をだす。そして、自分の胸に向かって声をかけた。

「さぁ、そろそろ起きなさいよ」
「(ん、んっ……あれ、ボク、どうしたの……?)」

今度はまぎれもない望の精神が、魔女の中で目を覚ました。

「キミの親友の、健二、だったっけ。おいしかったわよ」
「(け、健二!?この魔女め、体を返せ!)」
「ムリよ。それに……」

魔女は、さらけ出された自分の乳首や、クリトリスをなでた。

「あぁんっ……」
「(ひゃんんっ!!!)」

快感が共有され、自分で触った時よりも強い快感に魔女の中で望は必死に耐えた。

「(だ、ダメだ、ボクは男なんだ……)」
「オンナになったほうが、気持ちいいわよ?んんっ……」

魔女は、自慰を続け、望の精神に攻撃を仕掛ける。

「(ああっ!ひゃっ……や、だぁっ……)」
「ほらほらぁ……」

容赦なく続く魔女の攻めに、疲弊していた望はついに自分を投げ出してしまった。

「(ん、くぅっ……きもち、いいの……もっとほしい……)」
「うふふっ、いいわ……でも、次は自分で、ね……?」
「(うん……自分で……獲物……見つける……)」
「そう、見つけるのよ……」

望と魔女の精神が同化を始め、望の純真さが、魔女に殺され、そして記憶を読まれ、操作される。

「(キミの友達、芳雄……そう、芳雄がいい……)」
「芳雄がいい……」

瞳の色が赤から、青に変わる。体がシュルシュルと元に戻っていき、大きかった胸や尻は引っ込むように無くなり、髪も短くなる。背の高さも元の小さいものに戻ると、破れていた服が魔法のように繋ぎ合わされ、修復された。望は無言でそれを着ると、そばでう~んと呻きながら倒れている健二に声をかけた。

「健二、行こうか」

魔女と同化を終えた望の言葉は、強い魔力を帯びていた。そして、健二の体がぐいっと立ち上がった。開かれた目は虚ろだった。

「マスター……」
「さ、帰ろう、おいしいご飯が待ってる……」

望の青い瞳が、不気味に光る。望が指をパチッとならすと、二人の姿がフッと消えた。

ところ変わって、ここは二人の住む街の路地裏。

「あいつら、こんなに暑い中を遠くまで行ったんだろうな。いい気味だぜ、あの森の中にそんな家あるわけないっつーの!」

そこには、二人を魔女の廃屋に行くように仕向けた芳雄の姿があった。炎天下を、自分の家にいればいいものの、汗だくで歩いている。

「あ、俺、なんでこんなところにいるんだ?」

そう、彼も魔女の魔力に操られ、自分の意志とは無関係に、路地裏にふらふらと歩いてきたのだ。そんな芳雄の背後から、望の声が囁いた。

「ボクが、呼んだからだよ」
「ひぇっ!!?望、それに健二!?」

遠くにいるはずの二人が急に自分の後ろにあらわれ、心臓が飛び出そうなほど驚かされる芳雄。

「お、お前ら、廃屋は行ったのかよ!まさか、ビビって途中で帰ってきたわけじゃねーだろうな!」

光っているようにも見える望の青い瞳と、何の感情も示さないで、望の後ろに立っている健二の姿にたじろぎながら、芳雄は叫んだ。その声は、恐怖で裏返っている。

「まさかぁ。ボクたちに教えてくれたのに、行かないわけないじゃないか。ねぇ、健二」
「あ……ぁ……」

芳雄が知っている明朗なものとは違う、ねっとりとした語調で望は言葉を発し、魂の抜けたような声で健二が応える。

「な、なんなんだよお前ら……っ、なにか、なにかおかしい!」
「なにか……って?例えば……」

恐怖に震える芳雄の前で、望の姿が変わり始めた。手足がメキメキと伸び、身長が同じはずだった芳雄を見下ろすくらいに背が伸びる。

「ボクがこんなに背が高かったりとか?」
「な、なななっ!!!???」

芳雄は、急に大きくなった望を前に、腰を抜かしてその場で倒れてしまう。

「こんなに、髪が長かったり、……声が、大人っぽかったり……?」

ざわざわと伸びる髪。そして、子供のものから女性の大人のものに変わる声。芳雄の理解を超えた現象が、現実となって彼に襲いかかる。

「お、おまえ、まるで、女じゃ……」
「え?これくらい健二でもできるよ……?でしょ?健二?」
「はい、マスター……」

望の後ろで、健二も姿を変えていく。髪が長くなり、体格が華奢になって、あっという間に三人と同世代の少女に変身した。

「け、健二!?」
「……なぁに?……芳雄くん?」

透き通った声にも、誘惑的なしゃべり方にも、健二の面影はない。逃げ場を完全に失った芳雄の前で、望の胸がむくむくと膨らんでいき、ものの数秒で芳雄が見たことのないほどの大きさまでに成長する。

「の、望……そ、それは、お、女の、おっぱい、なのか……?」
「他に、何があるの?」

ゆさゆさと揺れる巨大な乳房と、大きく押し上げられたプリントシャツに浮き上がる突起に、思わず興奮してしまう芳雄。それに気を取られている隙に、芳雄は望に取り押さえられた。そして少女に姿を変えた健二が、芳雄に襲いかかろうとしていた。

「さぁ、芳雄。存分に、精をちょうだいね」
「や、やめろ!健二、お願いだから!」
「……いただき……まぁす」

健二の虚ろな目は、芳雄にロックオンしていた。

「うぎゃああああっ!!!」

救いようのない芳雄の絶叫が、街にこだました。